魔方陣(magic squares)とは、マス目に数を並べたもので、行・列・2 本の対角線の和がすべて同じ数(定和)になるものである。$3\times3$ の場合、8 本の条件を 9 マスと定和 $S$ の連立 1 次方程式として掃き出すと、自由に選べる数は 3 つである。中央は $m=\frac S3$ で、魔方陣はちょうど、実数 $u$、$v$ により上の行から $m+u,\ m-u-v,\ m+v$/$m-u+v,\ m,\ m+u-v$/$m-v,\ m+u+v,\ m-u$ と書ける並びである。1 から 9 を 1 回ずつ使うものは $m=5$、$\{\lvert u\rvert,\lvert v\rvert\}=\{1,3\}$ に限られ、ちょうど 8 個あり、どれも 1 つの魔方陣を回転・裏返ししたものである。対角線の条件を外すと中央は $\frac S3$ とは限らない。
前提知識: 連立1次方程式と掃き出し法, 場合の数の数え方の体系
$3\times3$ のマスに $1$ から $9$ までの数を 1 回ずつ入れて、縦・横・斜めのどの 3 つの和も等しくしたい。まず、そのような並びが 1 つあることを確かめる。
$$
\begin{array}{|c|c|c|}\hline 4&9&2\\ \hline 3&5&7\\ \hline 8&1&6\\ \hline\end{array}
$$
横の 3 行は $4+9+2=15$、$3+5+7=15$、$8+1+6=15$。縦の 3 列は $4+3+8=15$、$9+5+1=15$、$2+7+6=15$。2 本の対角線は $4+5+6=15$、$2+5+8=15$。8 本の和がすべて $15$ である(図 1)。
行・列・対角線の 8 本の和がどれも 15 になる 3×3 の並び。中央は 5
和が $15$ になるのは偶然ではない。$1$ から $9$ までの和は $45$ で、3 本の行はマス全体を 1 回ずつ覆うので、行の和がそろうなら 1 本あたり $45\mathbin{÷}3=15$ でなければならない。
では、このような並びはいくつあるのか。中央はいつも $5$ なのか。ex-msq-start を回したり裏返したりしても条件は保たれるが、それ以外の並びはあるのか。この記事では、8 本の条件を連立 1 次方程式とみて掃き出し法(連立1次方程式と掃き出し法)で解き、次の問いに答える。
| 高校の見方 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 8 本の和が等しい | 8 本の 1 次方程式 | 係数行列の階数 $7$ |
| 自由に決めてよい数 | $m$、$u$、$v$ の 3 つ | 3 次元のベクトル空間 |
| 回転・裏返し | 正方形の 8 つの対称性 | 対称性の群の作用 |
$3\times3$ のマスに実数を入れた並び
$$
\begin{array}{|c|c|c|}\hline a&b&c\\ \hline d&e&f\\ \hline g&h&i\\ \hline\end{array}
$$
で、3 本の行、3 本の列、2 本の対角線の、あわせて 8 本の和がすべて同じ数 $S$ に等しいものを 魔方陣(方陣)といい、$S$ をその 定和 という。$1$ から $9$ までを 1 回ずつ使う魔方陣を 1 から 9 の魔方陣 と呼ぶ。同じように、$n\times n$ のマスに実数を入れた並びで、$n$ 本の行、$n$ 本の列、2 本の対角線の、あわせて $2n+2$ 本の和がすべて同じ数に等しいものを $n$ 次の魔方陣 といい、$1$ から $n^2$ までを 1 回ずつ使うものを 1 から $n^2$ の魔方陣 と呼ぶ。この記事ではおもに $n=3$ を扱う。行と列の 6 本の和だけが等しいもの(対角線は問わない)を 半魔方陣 という。
8 本の条件を式で書くと、
$$
\begin{aligned}
&a+b+c=S,\quad d+e+f=S,\quad g+h+i=S &&(\text{行})\\
&a+d+g=S,\quad b+e+h=S,\quad c+f+i=S &&(\text{列})\\
&a+e+i=S,\quad c+e+g=S &&(\text{対角線})
\end{aligned}
$$
である。未知数は 9 つのマスと $S$ の 10 個、式は 8 本の連立 1 次方程式である。
(1)(2)(3) のどれも、中央の数は定和の $\frac13$($5$、$10$、$m$)になっている。これが最初の定理の出発点である。
定和 $S$ の $3\times3$ の魔方陣の中央の数 $e$ は $e=\dfrac S3$ である。
中央を通る 4 本、つまり真ん中の行 $d+e+f$、真ん中の列 $b+e+h$、2 本の対角線 $a+e+i$、$c+e+g$ を足す。どれも $S$ なので和は $4S$ である。一方、この 4 本はマス全体を覆い、中央 $e$ だけを 4 回、ほかの 8 マスを 1 回ずつ数えるので、
$$
4S=\underbrace{(a+b+c+d+e+f+g+h+i)}_{\text{全体の和}}+3e
$$
である。全体の和は 3 本の行の和の合計なので $3S$ である。よって $4S=3S+3e$、つまり $e=\dfrac S3$ である。
中央を $m=\dfrac S3$ とおく。残り 8 マスのうち、左上 $a$ と右上 $c$ を決めると、ほかがすべて決まることを示す。
$3\times3$ の数の並びが定和 $S$ の魔方陣であるのは、$m=\dfrac S3$ と、ある実数 $u$、$v$ を使って
$$
\begin{array}{|c|c|c|}\hline m+u&m-u-v&m+v\\ \hline m-u+v&m&m+u-v\\ \hline m-v&m+u+v&m-u\\ \hline\end{array}
$$
と書けるとき、そしてそのときに限る。特に、$3\times3$ の魔方陣は 3 つの数 $S$、$u$、$v$ を自由に選ぶごとにちょうど 1 つ決まる。
中央 m と、左上の m+u、右上の m+v を決めると、ほかの 6 マスが決まる
方針:前半は、魔方陣の 8 本の式から、$a=m+u$、$c=m+v$ とおいて残りのマスを 1 つずつ求める(掃き出しで未知数を消していくことを、手で行う)。後半は、この形が 8 本の式をすべて満たすことを確かめる。
段 1(魔方陣ならこの形).定和 $S$ の魔方陣とする。lem-msq-center により $e=m$ である。$u=a-m$、$v=c-m$ とおくと $a=m+u$、$c=m+v$ である。残りのマスを、式を 1 本ずつ使って求める。
段 1 で使ったのは 8 本のうち 6 本(2 本の対角線、上下の行、左右の列)と、lem-msq-center の証明で使った中央を通る 4 本の和である。真ん中の行と真ん中の列の式は、段 2 で自動的に成り立った。8 本の式は互いに独立ではなく、実質的な条件は 7 本である。
未知数を $a,b,c,d,e,f,g,h,i,S$ の順に並べ、8 本の式を「左辺 $-S=0$」の形にした係数行列($8\times10$)を掃き出すと、先頭の 1 は $a$ から $g$ までの 7 列にでき、8 行目は零の行になる。$h$、$i$、$S$ の列には先頭の 1 がないので、連立1次方程式と掃き出し法 の定理「簡約な階段の形と解の読み方」により、自由な文字は $h$、$i$、$S$ の 3 個($10-7=3$)である。簡約な階段の形から読むと、例えば $e=\frac13S$、$a=\frac23S-i$、$b=\frac23S-h$ となる。自由な文字の選び方は本文の $(S,u,v)$ と違うが、個数 $3$ は同じである。
1 から 9 の魔方陣はちょうど 8 個ある。それらは ex-msq-start の魔方陣を、回転・裏返ししたものである。
証明の前に、回転と裏返しが thm-msq-general の $(u,v)$ をどう変えるかを見る。正方形を時計回りに $90^\circ$ 回すと、左上のマスには左下のマスの数 $m-v$ が、右上のマスには左上の数 $m+u$ が来る。新しい左上は $m+(-v)$、右上は $m+u$ なので、$(u,v)$ は $(-v,u)$ に変わる。左右を裏返すと、左上と右上が入れ替わるので $(u,v)$ は $(v,u)$ に変わる。回転と裏返しを組み合わせた 8 つの動きについてまとめると、次の表になる。
| 動き | $(u,v)$ の変わり方 | ex-msq-start の $(-1,-3)$ の行き先 |
|---|---|---|
| そのまま | $(u,v)$ | $(-1,-3)$ |
| $90^\circ$ 回転 | $(-v,u)$ | $(3,-1)$ |
| $180^\circ$ 回転 | $(-u,-v)$ | $(1,3)$ |
| $270^\circ$ 回転 | $(v,-u)$ | $(-3,1)$ |
| 左右の裏返し | $(v,u)$ | $(-3,-1)$ |
| 裏返して $90^\circ$ 回転 | $(-u,v)$ | $(1,-3)$ |
| 裏返して $180^\circ$ 回転 | $(-v,-u)$ | $(3,1)$ |
| 裏返して $270^\circ$ 回転 | $(u,-v)$ | $(-1,3)$ |
8 つの動きで、$(u,v)$ は「成分の入れ替え」と「符号の付け替え」を組み合わせたすべての形 $(\pm u,\pm v)$、$(\pm v,\pm u)$ に移る。行き先の 8 組はすべて異なる(図 3)。
1 から 9 の魔方陣 8 個。上の段は回転、下の段は裏返してから回転したもので、下に一般の形の u、v を記した
方針:thm-msq-general で 1 から 9 の魔方陣を $(u,v)$ で表し、「9 マスが 1 から 9 を 1 回ずつ使う」という条件を満たす $(u,v)$ を数える。
段 1(中央と定和).1 から 9 の和は $45$ なので、3 本の行の和から $3S=45$、$S=15$ である。lem-msq-center により中央は $m=5$ である。
段 2(8 つのずれ).thm-msq-general により、中央以外の 8 マスは $5\pm u$、$5\pm v$、$5\pm(u+v)$、$5\pm(u-v)$ である。これが $5$ 以外の $1,2,3,4,6,7,8,9$ に 1 回ずつなるので、$5$ からのずれ
$$
\pm u,\quad \pm v,\quad \pm(u+v),\quad \pm(u-v)
$$
の 8 つが、$\pm1,\pm2,\pm3,\pm4$ に 1 回ずつ一致する。特にずれはすべて整数で、$0$ でなく、互いに異なる。したがって 4 つの数 $\lvert u\rvert$、$\lvert v\rvert$、$\lvert u+v\rvert$、$\lvert u-v\rvert$ は $1,2,3,4$ を並べかえたものである。
段 3(絶対値を決める).$p=\lvert u\rvert$、$q=\lvert v\rvert$ とおく。$u$ と $v$ が同符号なら $\lvert u+v\rvert=p+q$、$\lvert u-v\rvert=\lvert p-q\rvert$、異符号ならその逆である。どちらの場合も
$$
\{\lvert u+v\rvert,\ \lvert u-v\rvert\}=\{p+q,\ \lvert p-q\rvert\}
$$
なので、4 つの数は $p$、$q$、$p+q$、$\lvert p-q\rvert$ である。このうち $p+q$ がいちばん大きいので $p+q=4$ である。$p$、$q$ は $1$ 以上の異なる整数($p=q$ なら $\lvert p-q\rvert=0$ になってしまう)で和が $4$ なので、$\{p,q\}=\{1,3\}$ である。このとき $\lvert p-q\rvert=2$ で、4 つの数は確かに $1,3,4,2$ になる。
段 4(数える).$(u,v)$ は、$\lvert u\rvert$ と $\lvert v\rvert$ が $1$ と $3$ のどちらか(2 通り)、$u$ の符号(2 通り)、$v$ の符号(2 通り)で、$2\times2\times2=8$ 通りである。逆にこの 8 通りはどれも、段 3 のとおりずれが $\pm1,\pm2,\pm3,\pm4$ になるので、1 から 9 の魔方陣を与える。thm-msq-general の段 3 により、異なる $(u,v)$ からは異なる魔方陣が得られるので、1 から 9 の魔方陣はちょうど 8 個である。
段 5(回転・裏返し).ex-msq-start は $(u,v)=(-1,-3)$ である。表のとおり、8 つの動きはこれを $(\pm1,\pm3)$、$(\pm3,\pm1)$ の 8 組すべてに移す。これは段 4 の 8 組と同じなので、8 個の魔方陣はどれも ex-msq-start を回転・裏返ししたものである。
段 5 の表の 8 つの動きが、どれも魔方陣を魔方陣に移すことは、図形の見方からも分かる。回転・裏返しは 3 本の行と 3 本の列を「行と列」の 6 本の中で入れかえ、2 本の対角線を 2 本の対角線に移すので、8 本の和が等しいという条件は保たれる。正方形を自分自身に重ねる動きがこの 8 つであることは、回転・鏡映と行列の群 で扱う。
1 から 9 の魔方陣で、中央を $5$ 以外、例えば $1$ にしようとすると、lem-msq-center の証明の式 $4S=3S+3e$ から $e=\frac S3=5$ となり矛盾する。中央を通る 4 本の和 $4\times15=60$ は、全体の和 $45$ に中央の $3$ 回分を足したものなので、$45+3\times1=48\ne60$ である。
同じ連立 1 次方程式の見方で、条件を減らしたり、使う数を決めたりしたときの「自由に選べる数」と「1 から 9 を使うものの個数」を比べる。
| 条件 | 式の数 | 係数行列の階数 | 自由に選べる数 | 1 から 9 を使うものの個数 |
|---|---|---|---|---|
| 半魔方陣(行と列) | 6 | 5 | 5 | 72 |
| 魔方陣(行・列・対角線) | 8 | 7 | 3 | 8 |
未知数はどちらも 9 マスと $S$ の 10 個で、自由に選べる数は $10-(\text{階数})$ である。半魔方陣で階数が $6$ でなく $5$ なのは、「3 本の行の和の合計」と「3 本の列の和の合計」がどちらもマス全体の和で、6 本の式のうち 1 本が残りから出るからである。1 から 9 を使う半魔方陣が 72 個あることは、$9!=362880$ 通りの並べ方を計算機ですべて調べて確かめた数で、この記事では手で数える証明はしない。
対角線の条件は、lem-msq-center で中央を決めるのに使った。対角線の条件を外すと、中央は定和の $\frac13$ とは限らなくなる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 対角線の和も $S$ | 中央が $7$ の半魔方陣(ex-msq-semi) | 中央は $\frac S3$(lem-msq-center) |
| 対角線の和も $S$(中央が $\frac S3$ でも代わりにならない) | 中央が $0$ で対角線の和が $\pm1$ の半魔方陣(ex-msq-semi) | 中央が $\frac S3$ の半魔方陣は魔方陣 |
| マスの数が $3\times3$ | $2\times2$ の並び(ex-msq-2x2) | 異なる数で魔方陣が作れる |
$2\times2$ の並び $\begin{array}{|c|c|}\hline a&b\\ \hline c&d\\ \hline\end{array}$ で、2 本の行・2 本の列・2 本の対角線の和がすべて $S$ だとする。上の行と左の列から $a+b=a+c$ で $b=c$。上の行と対角線 $a+d$ から $a+b=a+d$ で $b=d$。上の行ともう 1 本の対角線 $b+c$ から $a+b=b+c$ で $a=c$。よって $a=b=c=d$ である。異なる数を使う $2\times2$ の魔方陣はない。
$3\times3$ より大きい魔方陣もある。$4\times4$ で $1$ から $16$ を 1 回ずつ使う場合、定和は全体の和 $136$ の $\frac14$ で $34$ である。作り方の 1 つを示す。
$1$ から $16$ を左上から順に並べ(図 4)、2 本の対角線の上の 8 つの数 $x$ だけを $17-x$ に取り替える(図 5)。
$$
\begin{array}{|c|c|c|c|}\hline 1&2&3&4\\ \hline 5&6&7&8\\ \hline 9&10&11&12\\ \hline 13&14&15&16\\ \hline\end{array}
\quad\longrightarrow\quad
\begin{array}{|c|c|c|c|}\hline 16&2&3&13\\ \hline 5&11&10&8\\ \hline 9&7&6&12\\ \hline 4&14&15&1\\ \hline\end{array}
$$
右の並びの行は $16+2+3+13=34$、$5+11+10+8=34$、$9+7+6+12=34$、$4+14+15+1=34$、列は $16+5+9+4=34$、$2+11+7+14=34$、$3+10+6+15=34$、$13+8+12+1=34$、対角線は $16+11+6+1=34$、$13+10+7+4=34$ である。対角線の上の数 $\{1,4,6,7,10,11,13,16\}$ は $x\mapsto17-x$ で互いに入れ替わるだけなので、$1$ から $16$ を 1 回ずつ使うことも保たれる。
上から $i$ 行目($i=0,1,2,3$)には $4i+1,\ 4i+2,\ 4i+3,\ 4i+4$ が並び、和は $16i+10$ である。この行の対角線の上のマスは $i$ 列目と $3-i$ 列目(左端を $0$ 列目とする)で、数は $5i+1$ と $3i+4$ である。$x$ を $17-x$ にすると和は $17-2x$ だけ増えるので、増える量は $(17-2(5i+1))+(17-2(3i+4))=24-16i$ で、新しい和は $16i+10+24-16i=34$ である。$j$ 列目($j=0,1,2,3$)も同様で、もとの和は $28+4j$、対角線の上の数は $5j+1$ と $13-3j$、増える量は $(15-10j)+(6j-9)=6-4j$ で、新しい和は $34$ である。
1 から 16 を左上から順に並べた 4×4 の並び。黄色は 2 本の対角線のマス
黄色のマスの数 x を 17−x に替えると、行・列・対角線の和がすべて 34 になる
魔方陣を 2 つ足しても、実数倍しても、また魔方陣になる(8 本の和が等しいという条件は 1 次式だから)。つまり $3\times3$ の魔方陣の全体は、足し算と実数倍について閉じた集まり、ベクトル空間 である(ベクトル空間)。thm-msq-general は、この空間が 3 つの魔方陣
$$
\underbrace{\begin{array}{|c|c|c|}\hline 1&1&1\\ \hline 1&1&1\\ \hline 1&1&1\\ \hline\end{array}}_{m\text{ の方向}}\qquad
\underbrace{\begin{array}{|c|c|c|}\hline 1&-1&0\\ \hline -1&0&1\\ \hline 0&1&-1\\ \hline\end{array}}_{u\text{ の方向}}\qquad
\underbrace{\begin{array}{|c|c|c|}\hline 0&-1&1\\ \hline 1&0&-1\\ \hline -1&1&0\\ \hline\end{array}}_{v\text{ の方向}}
$$
の $m$ 倍・$u$ 倍・$v$ 倍の和でただ 1 通りに書けること、つまり 3 次元であることを言っている。これは 空間ベクトルと1次独立 の「1 次独立な 3 つのベクトルの 1 次結合」と同じ形で、係数行列の階数 $7$ と未知数 $10$ から $10-7=3$ と読むのが 行列の階数 の見方である。
1 から $n^2$ を 1 回ずつ使う $n\times n$ の魔方陣は、$n=2$ では作れず(ex-msq-2x2)、$n=3$ では回転・裏返しを除いて 1 個(thm-msq-normal)である。$n=4$ では、回転・裏返しを区別すると $7040$ 個、区別しないと $880$ 個ある(計算機で数えた結果で、Wei26 の表と一致する。この記事では証明しない)。Wei26 によれば、$n=5$ では回転・裏返しを除いて $275305224$ 個で、$n=6$ の個数は知られておらず、確率的な計算による推定値がある。
$n$ を 3 以上の奇数とし、行と列に上から・左から $0,1,\ldots,n-1$ の番号をつける。$i$ 行 $j$ 列のマスに
$$x_{ij}=n\cdot A_{ij}+B_{ij}+1,\qquad A_{ij}\equiv i+j+\tfrac{n+1}2,\quad B_{ij}\equiv i-j+\tfrac{n-1}2\pmod n$$
($A_{ij}$、$B_{ij}$ は $0$ 以上 $n-1$ 以下にとる)を入れると、1 から $n^2$ の魔方陣になる。$n=3$ では上の行から $8,1,6$/$3,5,7$/$4,9,2$ で、ex-msq-start を上下に裏返したものである。
理由(合同式の計算規則 を使う).(1) $x_{ij}$ は $1$ から $n^2$ の整数で、$(A,B)$ が決まれば $x$ が決まり、逆も成り立つ。$(A_{ij},B_{ij})$ から $i+j$ と $i-j$ の $n$ で割った余りが分かり、足し引きして $2i$、$2j$ の余りが分かる。$n$ は奇数なので $2$ で割れて($2\cdot\frac{n+1}2\equiv1$)、$i$、$j$ が決まる。よって異なるマスには異なる数が入り、1 から $n^2$ を 1 回ずつ使う。(2) 1 本の行($i$ を固定)では、$j$ が $0$ から $n-1$ を動くと $A$ も $B$ も $0$ から $n-1$ を 1 回ずつとるので、和は $n\cdot\frac{n(n-1)}2+\frac{n(n-1)}2+n=\frac{n(n^2+1)}2$ である。列も同じである。(3) 対角線 $i=j$ では $B$ は一定値 $\frac{n-1}2$、$A\equiv2i+\frac{n+1}2$ は $0$ から $n-1$ を 1 回ずつとる。一定値 $\frac{n-1}2$ を $n$ 回足すと $\frac{n(n-1)}2$ で、$0$ から $n-1$ の和と等しいので、和はやはり $\frac{n(n^2+1)}2$ である。もう 1 本の対角線 $j=n-1-i$ では $A\equiv n-1+\frac{n+1}2\equiv\frac{n-1}2$ が一定値で、$B\equiv2i-\frac{n-1}2$ が $0$ から $n-1$ を 1 回ずつとるので、同じく和は $\frac{n(n^2+1)}2$ である。
$3\times3$ の魔方陣で、左上が $8$、中央が $6$、右上が $3$ である。残りのマスと定和を求めよ。
$m=6$ で定和は $S=18$。$u=8-6=2$、$v=3-6=-3$ で、thm-msq-general の形から、上の行 $8,\ 6-2+3=7,\ 3$、中の行 $6-2-3=1,\ 6,\ 6+2+3=11$、下の行 $6+3=9,\ 6+2-3=5,\ 6-2=4$。検算:行 $8+7+3$、$1+6+11$、$9+5+4$、列 $8+1+9$、$7+6+5$、$3+11+4$、対角線 $8+6+4$、$3+6+9$ はすべて $18$。
1 から 9 の魔方陣では、$1$ は必ず辺の真ん中のマス(角でも中央でもないマス)に入ることを示せ。
thm-msq-normal の証明の段 3・段 4 により $\{\lvert u\rvert,\lvert v\rvert\}=\{1,3\}$ である。角のマスは $5+u$、$5+v$、$5-v$、$5-u$ なので、$5\pm1$ と $5\pm3$、つまり $2,4,6,8$ である。中央は $5$ なので、$1$(と $3,7,9$)は辺の真ん中のマスに入る。
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