Stone–Weierstrassの定理

同義語:Stone-Weierstrassの定理ストーン–ワイエルシュトラスの定理Stone–Weierstrass theoremStone-Weierstrass theorem

概要

Stone–Weierstrassの定理(Stone–Weierstrass theorem)とは、コンパクト空間 $X$ 上の実数値連続関数からなる関数の代数 $\mathcal{A}$ が、点を分離し、どの点でも $0$ にならないなら、$\mathcal{A}$ は連続関数全体の中で一様収束について稠密であるという定理である。複素数値の場合は、$\mathcal{A}$ が複素共役で閉じていることを加えれば同じ結論が成り立つ。証明は、閉包の中で絶対値と最大・最小がとれること、2 点での値を指定できること、コンパクト性による有限化を組み合わせる。Weierstrass の多項式近似定理を含み、有界閉集合上の多変数の多項式近似、周期関数の三角多項式による一様近似、2 変数の関数の積の和による近似などを一度に与える。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: コンパクト空間, 一様収束, Weierstrassの近似定理, 稠密

Weierstrassの近似定理 は、閉区間の上の連続関数が多項式でいくらでもよく一様に近似できることを述べる。では、多項式のどの性質がこの近似を可能にしているのだろうか。多項式全体は和・積・定数倍で閉じていて、関数 $x$ が異なる 2 点を見分け、定数 $1$ がどの点でも $0$ にならない。Stone–Weierstrass の定理(Stone–Weierstrass theorem)は、これだけの性質をもつ関数の集まりなら、どんなコンパクトな空間の上でも連続関数をいくらでもよく一様に近似できることを述べる。
この形にしておくと、使える場面が大きく広がる。$\mathbb{R}^m$ の有界閉集合の上での多変数の多項式、周期関数に対する三角多項式 $\sum c_ke^{ikx}$、2 変数の関数に対する $\sum g_i(x)h_i(y)$ の形の和などが、どれも 1 つの定理から一様に近似の道具になる。証明は、閉包の中で絶対値がとれること、それによって最大値・最小値がとれること、2 点での値を指定できることを組み合わせ、最後にコンパクト性で有限個にまとめる、という組み立てである。証明は多項式による近似を前提にせず、$\lvert x\rvert$ の近似という 1 変数の具体的な構成だけを使うので、Weierstrass の近似定理の別証明にもなっている。

定義

$X$ を位相空間とし、$\mathbb{K}$ を $\mathbb{R}$ または $\mathbb{C}$ とする。$X$ 上の $\mathbb{K}$ に値をとる連続関数の全体を $C(X,\mathbb{K})$ と書く。$X$ がコンパクトなら、連続関数 $\lvert f\rvert$ は最大値をとるので(コンパクト空間 の定理「最大値・最小値の存在」)、
$$ \| f\|:=\sup_{x\in X}\lvert f(x)\rvert $$
は有限であり、$\| f-g\|$ は $C(X,\mathbb{K})$ の距離である。この距離での収束は一様収束にほかならない。部分集合 $\mathcal{A}\subset C(X,\mathbb{K})$ の閉包 $\overline{\mathcal{A}}$ は、$\mathcal{A}$ の元の列の一様極限になる関数の全体であり、$\overline{\mathcal{A}}=C(X,\mathbb{K})$ のとき $\mathcal{A}$ は稠密であるという。

関数の代数と点の分離

$X$ を集合とし、$\mathcal{A}$ を $X$ 上の $\mathbb{K}$ 値関数の集合とする。

  1. $\mathcal{A}$ が $f+g$、$fg$、$cf$($f,g\in\mathcal{A}$、$c\in\mathbb{K}$)で閉じているとき、$\mathcal{A}$ を($\mathbb{K}$ 上の)関数の代数という。定数関数 $1$ を含むことは要求しない。
  2. $\mathcal{A}$ が点を分離するとは、$x\ne y$ を満たす任意の $x,y\in X$ について、$f(x)\ne f(y)$ となる $f\in\mathcal{A}$ があることをいう。
  3. $\mathcal{A}$ がどの点でも消えないとは、任意の $x\in X$ について $f(x)\ne0$ となる $f\in\mathcal{A}$ があることをいう。
  4. $\mathbb{K}=\mathbb{C}$ のとき、$f\in\mathcal{A}$ ならば複素共役 $\overline f$($\overline f(x):=\overline{f(x)}$)も $\mathcal{A}$ に属するとき、$\mathcal{A}$ は共役で閉じているという。

定数関数 $1$ を含む関数の代数は、どの点でも消えない。閉区間 $[a,b]$ 上の実数係数の多項式関数の全体は、$1$ を含み、関数 $x$ が点を分離するので、2 と 3 を満たす実数上の関数の代数である。

主定理

Stone–Weierstrassの定理(実数値)

$X$ をコンパクト空間とし、$\mathcal{A}\subset C(X,\mathbb{R})$ を実数上の関数の代数とする。$\mathcal{A}$ が点を分離し、どの点でも消えないならば、$\mathcal{A}$ は $C(X,\mathbb{R})$ で稠密である。すなわち、任意の $f\in C(X,\mathbb{R})$ と $\varepsilon>0$ に対して、すべての $x\in X$ で $\lvert f(x)-g(x)\rvert<\varepsilon$ となる $g\in\mathcal{A}$ がある。

$X$ の Hausdorff 性は仮定していない。もっとも、連続関数が点を分離すれば $X$ は自動的に Hausdorff空間である。$f(x)\ne f(y)$ なら、$f(x)$ と $f(y)$ の交わらない近傍の逆像が $x$ と $y$ の交わらない近傍になるからである。
証明のために 3 つの補題を用意し、そのあとで thm-sw-real を証明する。

閉包は閉じた関数の代数

$X$ をコンパクト空間、$\mathcal{A}\subset C(X,\mathbb{K})$ を関数の代数とする。このとき $\overline{\mathcal{A}}$ も関数の代数であり、$\overline{\mathcal{A}}$ の元の一様極限は $\overline{\mathcal{A}}$ に属する。

連続関数の一様極限は連続なので(一様収束 の定理「連続関数の一様極限の連続性」)、$\overline{\mathcal{A}}\subset C(X,\mathbb{K})$ である。$f_n\to f$、$g_n\to g$(一様収束、$f_n,g_n\in\mathcal{A}$)とすると、$f_n+g_n\to f+g$、$cf_n\to cf$ は明らかである。積については
$$ \| f_ng_n-fg\|\le\| f_n\|\,\| g_n-g\|+\| g\|\,\| f_n-f\| $$
であり、$\| f_n\|\le\| f\|+\| f_n-f\|$ は有界なので、右辺は $0$ に近づく。よって $\overline{\mathcal{A}}$ は関数の代数である。後半は、閉包が閉集合であること($\overline{\mathcal{A}}$ の元 $h_k\to h$ なら、各 $h_k$ に $\frac1k$ 以内の $\mathcal{A}$ の元をとれば $h$ に一様収束する)による。$\square$

絶対値と最大・最小

$X$ をコンパクト空間、$\mathcal{A}\subset C(X,\mathbb{R})$ を実数上の関数の代数とする。$f,g\in\overline{\mathcal{A}}$ ならば、$\lvert f\rvert$、$\max\{f,g\}$、$\min\{f,g\}$ も $\overline{\mathcal{A}}$ に属する。

Diniの定理 の系「$\lvert x\rvert$ の多項式による一様近似」により、多項式 $P_n(x)=p_n(x^2)$ は $[-1,1]$ 上で $\lvert x\rvert$ に一様収束する。ここで $p_n$ は $p_0=0$、$p_{n+1}(t)=p_n(t)+\frac12(t-p_n(t)^2)$ で定まる多項式であり、帰納法で $p_n(0)=0$ が分かるので、$P_n$ は定数項をもたない。$P_n(x)=\sum_{k=1}^{d_n}c_{n,k}x^k$ と書く。
$f\in\overline{\mathcal{A}}$ とし、$M:=\| f\|$ とおく。$M=0$ なら $\lvert f\rvert=0=f$ である。$M>0$ なら、$h_n:=MP_n(f/M)=\sum_{k=1}^{d_n}c_{n,k}M^{1-k}f^k$ は定数項がないので、lem-sw-closure により $\overline{\mathcal{A}}$ に属する。$\lvert f(x)/M\rvert\le1$ なので
$$ \bigl\lvert h_n(x)-\lvert f(x)\rvert\bigr\rvert=M\,\Bigl\lvert P_n\Bigl(\frac{f(x)}M\Bigr)-\Bigl\lvert\frac{f(x)}M\Bigr\rvert\Bigr\rvert\le M\sup_{\lvert s\rvert\le1}\bigl\lvert P_n(s)-\lvert s\rvert\bigr\rvert $$
であり、右辺は $x$ によらず $0$ に近づく。よって $\lvert f\rvert\in\overline{\mathcal{A}}$ である。最大と最小は
$$ \max\{f,g\}=\frac{f+g+\lvert f-g\rvert}2,\qquad\min\{f,g\}=\frac{f+g-\lvert f-g\rvert}2 $$
から従う。$\square$

帰納法により、$\overline{\mathcal{A}}$ の有限個の元の最大・最小も $\overline{\mathcal{A}}$ に属する。$\mathcal{A}$ が定数を含むとは限らないので、定数項のない多項式で近似することが要点である。

2 点での補間

$\mathcal{A}$ を集合 $X$ 上の $\mathbb{K}$ 値関数の代数で、点を分離し、どの点でも消えないものとする。$x\ne y$ を満たす $x,y\in X$ と $a,b\in\mathbb{K}$ に対して、$h(x)=a$、$h(y)=b$ となる $h\in\mathcal{A}$ がある。

$g(x)\ne g(y)$ となる $g\in\mathcal{A}$ と、$u(x)\ne0$、$v(y)\ne0$ となる $u,v\in\mathcal{A}$ をとる。
$$ h_1:=(g-g(y))\,u=gu-g(y)u,\qquad h_2:=(g-g(x))\,v=gv-g(x)v $$
とおくと、右辺の形から $h_1,h_2\in\mathcal{A}$ である。$h_1(y)=0$、$h_1(x)=(g(x)-g(y))u(x)\ne0$、$h_2(x)=0$、$h_2(y)=(g(y)-g(x))v(y)\ne0$ なので、$h:=\frac a{h_1(x)}h_1+\frac b{h_2(y)}h_2$ が求めるものである。$\square$

下から抑え、次に上から抑える

$X=\emptyset$ なら主張は自明なので、$X\ne\emptyset$ とする。$\mathcal{B}:=\overline{\mathcal{A}}$ とおき、$f\in C(X,\mathbb{R})$ と $\varepsilon>0$ を固定する。$\| f-g\|<\varepsilon$ となる $g\in\mathcal{B}$ を作れば、$\mathcal{B}$ は閉集合なので $f\in\mathcal{B}$ となり、$\mathcal{B}=C(X,\mathbb{R})$ が分かる。
第 1 段(下から抑える)。 点 $x\in X$ を固定する。各 $y\in X$ について、$h_y\in\mathcal{A}$ で $h_y(x)=f(x)$、$h_y(y)=f(y)$ となるものをとる。$y\ne x$ なら lem-sw-interpolation による。$y=x$ なら、$u(x)\ne0$ となる $u\in\mathcal{A}$ をとって $h_x:=\frac{f(x)}{u(x)}u$ とおけばよい。$h_y-f$ は連続なので
$$ V_y:=\{z\in X\mid h_y(z)>f(z)-\varepsilon\} $$
は開集合で、$y\in V_y$ である。$X$ はコンパクトなので、有限個の $y_1,\dots,y_m$ で $X=V_{y_1}\cup\cdots\cup V_{y_m}$ となる。$g_x:=\max\{h_{y_1},\dots,h_{y_m}\}$ とおくと、lem-sw-lattice により $g_x\in\mathcal{B}$ であり、
$$ g_x(x)=f(x),\qquad g_x(z)>f(z)-\varepsilon\quad(z\in X) $$
が成り立つ。前者は各 $h_{y_i}(x)=f(x)$ から、後者は $z$ を含む $V_{y_i}$ をとれば $g_x(z)\ge h_{y_i}(z)>f(z)-\varepsilon$ となることから従う。
第 2 段(上から抑える)。 各 $x\in X$ について $W_x:=\{z\in X\mid g_x(z)< f(z)+\varepsilon\}$ は開集合で、$g_x(x)=f(x)$ より $x\in W_x$ である。コンパクト性により、有限個の $x_1,\dots,x_k$ で $X=W_{x_1}\cup\cdots\cup W_{x_k}$ となる。$g:=\min\{g_{x_1},\dots,g_{x_k}\}$ とおくと、lem-sw-lattice により $g\in\mathcal{B}$ である。各 $z\in X$ について、$z\in W_{x_j}$ となる $j$ をとれば $g(z)\le g_{x_j}(z)< f(z)+\varepsilon$ であり、各 $g_{x_i}(z)>f(z)-\varepsilon$ なので $g(z)>f(z)-\varepsilon$ である。よって各点で $\lvert f(z)-g(z)\rvert<\varepsilon$ であり、連続関数 $\lvert f-g\rvert$ はコンパクトな $X$ 上で最大値をとるので、$\| f-g\|<\varepsilon$ である。$\square$

第 1 段は「点 $x$ でちょうど一致し、ほかの点では下から $\varepsilon$ 以内」の関数を、第 2 段はそれらを集めて「上からも $\varepsilon$ 以内」の関数を作っている。どちらの段でもコンパクト性を使って、無限個の関数の最大・最小を有限個に減らしている。

複素数値の場合

Stone–Weierstrassの定理(複素数値)

$X$ をコンパクト空間とし、$\mathcal{A}\subset C(X,\mathbb{C})$ を複素数上の関数の代数とする。$\mathcal{A}$ が点を分離し、どの点でも消えず、共役で閉じているならば、$\mathcal{A}$ は $C(X,\mathbb{C})$ で稠密である。

$\mathcal{A}_{\mathbb{R}}:=\mathcal{A}\cap C(X,\mathbb{R})$ とおくと、これは実数上の関数の代数である。$f\in\mathcal{A}$ について、共役で閉じていることから
$$ \operatorname{Re}f=\frac{f+\overline f}2,\qquad\operatorname{Im}f=\frac{f-\overline f}{2i} $$
は $\mathcal{A}_{\mathbb{R}}$ に属する。$f(x)\ne f(y)$ なら実部か虚部が $x,y$ で異なり、$f(x)\ne0$ なら実部か虚部が $x$ で $0$ でないので、$\mathcal{A}_{\mathbb{R}}$ は点を分離し、どの点でも消えない。thm-sw-real により、$F=u+iv\in C(X,\mathbb{C})$($u,v$ は実数値)と $\varepsilon>0$ に対して $\| u-p\|<\varepsilon/2$、$\| v-q\|<\varepsilon/2$ となる $p,q\in\mathcal{A}_{\mathbb{R}}$ がある。$p+iq\in\mathcal{A}$ であり、$\| F-(p+iq)\|\le\| u-p\|+\| v-q\|<\varepsilon$ である。$\square$

共役で閉じているという条件は外せない(ex-sw-counterexamples の 5 行目)。

帰結

多変数の多項式

多変数の多項式による近似

$K\subset\mathbb{R}^m$ を有界閉集合とする。$K$ 上の実数値連続関数は、$m$ 変数の実数係数の多項式によって $K$ 上でいくらでもよく一様に近似できる。複素数値連続関数は、複素数係数の多項式によって同様に近似できる。

$K$ はコンパクトである(コンパクト空間 の定理「有界閉集合とコンパクト性の一致」)。$K$ 上の実数係数の多項式関数の全体は $1$ を含む関数の代数であり、$x\ne y$ ならある座標 $x_j\ne y_j$ があるので、座標関数 $x\mapsto x_j$ が点を分離する。thm-sw-real により稠密である。複素数係数の多項式関数の全体も $1$ を含み点を分離し、$K$ の点は実数の組なので、多項式 $\sum a_\alpha x^\alpha$ の共役は係数を共役にした多項式 $\sum\overline{a_\alpha}x^\alpha$ である。thm-sw-complex により稠密である。$\square$

$m=1$、$K=[a,b]$ とすれば Weierstrassの近似定理 が得られる。Weierstrassの近似定理 の記事は Bernstein 多項式で近似多項式を具体的に作るのに対し、この証明は $\lvert x\rvert$ の近似と補間を組み合わせるだけで、近似する多項式の形は追わない。

三角多項式

$\sum_{k=-N}^Nc_ke^{ikx}$($c_k\in\mathbb{C}$)の形の関数を三角多項式という。$e^{ikx}=\cos kx+i\sin kx$ なので、実数値の三角多項式は $a_0+\sum_{k=1}^N(a_k\cos kx+b_k\sin kx)$($a_k,b_k\in\mathbb{R}$)の形の関数と同じものである。

三角多項式による一様近似

$f\colon\mathbb{R}\to\mathbb{C}$ を周期 $2\pi$ の連続関数とする。任意の $\varepsilon>0$ に対して、すべての $x\in\mathbb{R}$ で $\lvert f(x)-T(x)\rvert<\varepsilon$ となる三角多項式 $T$ がある。$f$ が実数値なら、$T$ も実数値にとれる。

単位円周 $S^1:=\{z\in\mathbb{C}\mid\lvert z\rvert=1\}$ は $\mathbb{C}=\mathbb{R}^2$ の有界閉集合なので、コンパクトである。$e(x):=e^{ix}$ は $[0,2\pi]$ から $S^1$ への連続な全射で、$e(x)=e(x')$ となるのは $x=x'$ か $\{x,x'\}=\{0,2\pi\}$ のときに限る。$f$ の周期性から $f(0)=f(2\pi)$ なので、$F(e^{ix}):=f(x)$ によって $F\colon S^1\to\mathbb{C}$ が定まる。
$F$ は連続である。実際、閉集合 $C\subset\mathbb{C}$ について、$F^{-1}(C)=e(D)$、$D:=\{x\in[0,2\pi]\mid f(x)\in C\}$ である。$D$ はコンパクトな $[0,2\pi]$ の閉集合なのでコンパクトであり、その連続像 $e(D)$ はコンパクト、したがって Hausdorff 空間 $S^1$ の閉集合である(コンパクト空間 の命題「保存と閉性」)。
$S^1$ 上の関数 $\sum_{k=-N}^Nc_kz^k$ の全体を $\mathcal{A}$ とすると、$z^jz^k=z^{j+k}$ から $\mathcal{A}$ は複素数上の関数の代数であり、$1$ を含み、関数 $z$ が点を分離する。$\lvert z\rvert=1$ なら $\overline{z^k}=z^{-k}$ なので、$\mathcal{A}$ は共役で閉じている。thm-sw-complex により、$\| F-P\|<\varepsilon$ となる $P(z)=\sum_{k=-N}^Nc_kz^k\in\mathcal{A}$ がある。$T(x):=P(e^{ix})=\sum c_ke^{ikx}$ とおけば、$x\in[0,2\pi]$ で $\lvert f(x)-T(x)\rvert<\varepsilon$ であり、両辺の周期性からすべての $x\in\mathbb{R}$ で成り立つ。$f$ が実数値なら、$\operatorname{Re}T$ は実数値の三角多項式で、$\lvert f-\operatorname{Re}T\rvert=\lvert\operatorname{Re}(f-T)\rvert\le\lvert f-T\rvert<\varepsilon$ である。$\square$

$[-\pi,\pi]$ 上の連続関数 $g$ で $g(-\pi)=g(\pi)$ を満たすものは、周期 $2\pi$ の連続関数に延ばせるので、この系は 無限次元のピタゴラスの定理 の記事が引用している定理「三角多項式による一様近似」を含む。ここから三角関数系の完全性、すなわち Parsevalの等式 が導かれる。一方、連続関数の Fourier級数 そのものは一様収束するとは限らず、各点で収束しないことさえある(Leb26b Example 11.7.14(p. 188)。この記事では証明しない)。系が述べるのは、各 $\varepsilon$ ごとに $T$ を選び直せば近似できるということであり、$T$ を Fourier 級数の部分和にとれるという主張ではない。

2 変数の関数

積の和による近似

$(X,d_X)$、$(Y,d_Y)$ をコンパクトな距離空間とする。$X\times Y$ 上の実数値連続関数 $F$ と $\varepsilon>0$ に対して、有限個の $g_i\in C(X,\mathbb{R})$、$h_i\in C(Y,\mathbb{R})$ で、すべての $(x,y)$ について
$$ \Bigl\lvert F(x,y)-\sum_{i=1}^ng_i(x)h_i(y)\Bigr\rvert<\varepsilon $$
となるものがある。

$X\times Y$ は直積位相でコンパクトである(Tychonoffの定理)。$\sum_ig_i(x)h_i(y)$ の形の関数の全体 $\mathcal{A}$ は、$(g(x)h(y))(g'(x)h'(y))=(gg')(x)(hh')(y)$ から関数の代数であり、$1=1\cdot1$ を含む。$(x,y)\ne(x',y')$ とし、たとえば $x\ne x'$ なら、$g(z):=d_X(x,z)$ は $g(x)=0\ne g(x')$ を満たすので、$g(x)\cdot1$ が 2 点を分離する。$y\ne y'$ の場合も同様である。thm-sw-real による。$\square$

距離空間の代わりにコンパクト Hausdorff 空間でも、Urysohnの補題 によって点を分離する連続関数がとれるので、同じ結論が成り立つ。この系により、連続関数の 2 重積分を 1 変数の積分の積の和で近似できるなど、2 変数の問題を 1 変数の問題に分解できる。

仮定の役割:反例

外す条件反例成り立たなくなること
$X$ がコンパクト$X=(0,1]$ と多項式全体$\sin(1/x)$ が多項式の一様極限になる
点を分離する$X=[-1,1]$ と $x^2$ の多項式(偶関数の多項式)全体$x$ との一様誤差を $1$ 未満にできる
どの点でも消えない$X=[0,1]$ と定数項 $0$ の多項式全体定数 $1$ との一様誤差を $1$ 未満にできる
積で閉じている(関数の代数)$X=[0,1]$ と 1 次式 $a+bx$ の全体$x^2$ が一様極限になる
共役で閉じている(複素数値)単位円周 $S^1$ と $z$ の複素係数多項式全体$\overline z$ との一様誤差を $1$ 未満にできる
反例の確かめ

1 行目:多項式全体は $1$ を含み点を分離する関数の代数である。多項式の列 $p_n$ が $(0,1]$ 上で $\sin(1/x)$ に一様収束したとすると、$(p_n)$ は $(0,1]$ 上で一様に Cauchy 列であり、多項式は $[0,1]$ 上連続なので $\sup_{[0,1]}\lvert p_n-p_m\rvert=\sup_{(0,1]}\lvert p_n-p_m\rvert$ である。よって $p_n$ は $[0,1]$ 上の連続関数 $q$ に一様収束し、$(0,1]$ で $q=\sin(1/x)$ となる。しかし $x=\frac1{n\pi}$ では $\sin(1/x)=0$、$x=\frac1{2n\pi+\pi/2}$ では $1$ なので、$\sin(1/x)$ は $x\to0$ で極限をもたず、$q$ の $0$ での連続性に反する。
2 行目:$x^2$ の多項式全体は $1$ を含む関数の代数だが、$q(x^2)$ は $x$ と $-x$ で同じ値をとるので点を分離しない。$\lvert1-q(1)\rvert<1$ と $\lvert-1-q(1)\rvert<1$ は同時に成り立たないので、一様誤差は $1$ 以上である。
3 行目:定数項 $0$ の多項式全体は関数の代数で、$x$ が点を分離するが、$0$ で消える。$\lvert1-p(0)\rvert=1$ なので、一様誤差は $1$ 以上である。
4 行目:1 次式の全体は和と定数倍で閉じ、$1$ を含み点を分離するが、$x\cdot x$ を含まない。$a_n+b_nx$ が $x^2$ に一様収束すれば、$x=0,\frac12,1$ での値から $a_n\to0$、$a_n+\frac{b_n}2\to\frac14$、$a_n+b_n\to1$ となるが、前の 2 つから $b_n\to\frac12$、前と後から $b_n\to1$ となり矛盾する。
5 行目:$z$ の多項式全体は $1$ を含み点を分離する複素数上の関数の代数だが、$\overline z$ を含まない。一様誤差が $1$ 以上になることは、Weierstrassの近似定理 の例「反例の確認」の 4 行目で、単位円周に沿った積分を使って確かめた。

補足

定理の形と文献

Eng89 Theorem 3.2.21(p. 144)は、コンパクト空間上の実数値連続関数の環で、定数を含み、点を分離し、一様収束で閉じたものは連続関数全体に一致するという形で述べ、Lemma 3.2.19・3.2.20(pp. 143–144)で $\sqrt t$ の多項式近似から最大・最小を導いている。thm-sw-real の証明の第 1 段・第 2 段は同書の証明と同じ筋である。同書の Example 3.2.22(p. 145)は、コンパクト性を外すと結論が成り立たない例を挙げている。Leb26b Theorem 11.7.12(p. 185)は、コンパクト距離空間上で「どの点でも消えない」という形の仮定で述べ、Proposition 11.7.11(p. 185)で 2 点での補間を示している。lem-sw-interpolation の証明はそこでの式と同じ組み立てである。複素数値の形は Leb26b Theorem 11.7.16(p. 188)、2 変数の関数への応用は同書 Example 11.7.17(p. 189)にある。

近似の道具としての位置づけ

Stone–Weierstrass の定理は、扱いやすい関数の代数の上で性質を確かめ、一様極限で連続関数全体に広げるという論法の出発点になる。たとえば $C(X,\mathbb{R})$ 上の 2 つの線形な汎関数で、一様収束について連続なものが $\mathcal{A}$ の上で一致すれば、$C(X,\mathbb{R})$ 全体で一致する。Weierstrassの近似定理 の系「積率による連続関数の決定」はこの論法の 1 変数の例であり、cor-sw-polynomials を使えば $\mathbb{R}^m$ の有界閉集合の上で同じ論法が使える。Diniの定理 とは、絶対値の近似(lem-sw-lattice)を通じてつながっている。

関連項目

参考文献

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