Weierstrassの楕円関数

同義語:Weierstrass elliptic functionWeierstrassのペー関数Weierstrass ℘ functionワイエルシュトラスの楕円関数ペー関数

概要

Weierstrassの楕円関数(Weierstrass elliptic function)とは、複素平面の格子 $\Lambda$ に対し $\wp(z)=z^{-2}+\sum_{\omega\ne0}((z-\omega)^{-2}-\omega^{-2})$ で定義される、$\Lambda$ の点だけを 2 位の極にもつ $\Lambda$ 周期的な有理型関数である。$g_2=60\sum\omega^{-4}$、$g_3=140\sum\omega^{-6}$ に対し $\wp'^2=4\wp^3-g_2\wp-g_3$ を満たし、$z\mapsto(\wp(z),\wp'(z))$ は複素トーラス $\mathbb{C}/\Lambda$ から楕円曲線 $y^2=4x^3-g_2x-g_3$ への群の同型を与える。楕円関数は $\wp$ と $\wp'$ の有理式で書ける。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 複素数, 正則関数, 有理型関数, Laurent展開, Liouvilleの定理(複素解析), 留数定理,

定義

Weierstrass の楕円関数 $\wp$ は、複素平面(複素数全体 $\mathbb{C}$)の格子 $\Lambda$ を周期にもつ有理型関数のうち最も基本的なもので、格子の点だけを 2 位のにもつ。定義の前に、格子と楕円関数の言葉と、格子上の和の収束についての補題を用意する。

複素平面の格子と楕円関数

$\omega_1,\omega_2\in\mathbb{C}$$\mathbb{R}$線形独立(すなわち $\omega_2/\omega_1\notin\mathbb{R}$)であるとき、
$$ \Lambda:=\mathbb{Z}\omega_1+\mathbb{Z}\omega_2=\{m\omega_1+n\omega_2\mid m,n\in\mathbb{Z}\} $$
$\mathbb{C}$格子(lattice)といい、$\omega_1,\omega_2$ をその基底という。$\Lambda$ は加法群 $\mathbb{C}$部分群であり、$\mathbb{C}$ の離散部分集合(任意の有界集合と有限個の点でしか交わらない。離散群)である。集合
$$ P:=\{s\omega_1+t\omega_2\mid 0\le s<1,\ 0\le t<1\} $$
を(基底 $\omega_1,\omega_2$ に関する)基本平行四辺形という。$\mathbb{C}$ の各点は $P$ の点と $\Lambda$ の点の和として一意に表される。
$\mathbb{C}$ 上の有理型関数 $f$$\Lambda$ に関する楕円関数(elliptic function。楕円関数)であるとは、任意の $\omega\in\Lambda$ について $f(z+\omega)=f(z)$ が成り立つことをいう。$\omega_1,\omega_2$ の 2 つを周期にもつことと同値なので、二重周期関数ともいう。$\Lambda$ に関する楕円関数の全体は、和・積・商について閉じており、$\mathbb{C}$ を含むをなす。これを $\Lambda$楕円関数体といい $\mathcal{M}(\Lambda)$ と書く。

格子は平行四辺形 $\omega+P$$\omega\in\Lambda$)で $\mathbb{C}$ を隙間も重なりもなく敷き詰める。この敷き詰めを使って、格子の点を数える。

格子上の冪和の収束

$\Lambda$ を格子、$s$実数とする。級数
$$ \sum_{\omega\in\Lambda\setminus\{0\}}\frac{1}{|\omega|^{s}} $$
$s>2$ のとき収束し、$s\le2$ のとき発散する。

$A>0$ を基本平行四辺形 $P$ の面積、$d$$P$ の直径($P$ の 2 点の距離の上限)とし、$R>0$ に対して $N(R):=\#\{\omega\in\Lambda\mid|\omega|\le R\}$ とおく。まず
$$ \frac{\pi(R-d)^2}{A}\le N(R)\le\frac{\pi(R+d)^2}{A}\qquad(R\ge d) $$
を示す。平行四辺形 $\omega+P$$|\omega|\le R$)は互いに交わらず、それぞれ面積 $A$ で、すべて閉円板 $\{|w|\le R+d\}$ に含まれる($w\in\omega+P$ なら $|w|\le|\omega|+d$)。面積を比べて $N(R)A\le\pi(R+d)^2$ を得る。逆に、閉円板 $\{|w|\le R-d\}$ の各点 $w$ はある $\omega+P$ に属し、そのとき $|\omega|\le|w|+d\le R$ である。よってこの円板は $|\omega|\le R$ なる $\omega+P$ の和集合に含まれ、$\pi(R-d)^2\le N(R)A$ を得る。
級数を 2 進のブロックに分ける。$R\ge d$ に対し、$R<|\omega|\le2R$ なる $\omega$ の個数は $N(2R)-N(R)$ であり、
$$ N(2R)-N(R)\le N(2R)\le\frac{\pi(2R+d)^2}{A}\le\frac{9\pi R^2}{A},\qquad N(2R)-N(R)\ge\frac{\pi\bigl((2R-d)^2-(R+d)^2\bigr)}{A}=\frac{\pi(3R^2-6Rd)}{A}\ge\frac{2\pi R^2}{A}\quad(R\ge6d) $$
である。$R_0\ge\max\{6d,1\}$ をとり $R_k:=2^kR_0$ とおく。
$s>2$ のとき。$R_k<|\omega|\le R_{k+1}$ なる $\omega$ については $|\omega|^{-s}\le R_k^{-s}$ なので、
$$ \sum_{|\omega|>R_0}\frac{1}{|\omega|^s}\le\sum_{k\ge0}\frac{9\pi R_k^2}{A}\,R_k^{-s}=\frac{9\pi R_0^{2-s}}{A}\sum_{k\ge0}\bigl(2^{2-s}\bigr)^k<\infty $$
であり、$|\omega|\le R_0$ なる $\omega\ne0$ は有限個だから級数は収束する。
$s\le2$ のとき。$R_k<|\omega|\le R_{k+1}$ なる $\omega$ については、$|\omega|\ge R_k\ge1$ だから $|\omega|^{-s}\ge|\omega|^{-2}\ge R_{k+1}^{-2}=\tfrac14R_k^{-2}$ である。したがって各ブロックの和は $\frac{2\pi R_k^2}{A}\cdot\frac{1}{4R_k^2}=\frac{\pi}{2A}$ 以上である。正の定数がブロックの個数だけ足されるので級数は発散する。$\square$

$\sum_{\omega\ne0}\omega^{-2}$絶対収束しないことは、以下の定義で $1/(z-\omega)^2$ に補正項 $-1/\omega^2$ を付ける理由である(ex-weierstrass-p-counterexample-naive)。

Weierstrassの楕円関数の定義

$\Lambda$$\mathbb{C}$ の格子とする。Weierstrass の楕円関数(Weierstrass elliptic function)または Weierstrass の $\wp$ 関数$\wp$ はドイツ文字の p で「ペー」と読む)とは、
$$ \wp(z)=\wp(z;\Lambda):=\frac{1}{z^2}+\sum_{\omega\in\Lambda\setminus\{0\}}\left(\frac{1}{(z-\omega)^2}-\frac{1}{\omega^2}\right)\qquad(z\in\mathbb{C}\setminus\Lambda) $$
で定義される関数である。右辺の級数が $\mathbb{C}\setminus\Lambda$ の任意のコンパクト(コンパクト空間)部分集合上で絶対かつ一様に収束し、$\wp$$\Lambda$ を周期にもつ有理型関数であることは prop-weierstrass-p-convergence で示す。

収束・偶関数性・周期性

$\Lambda$ を格子とする。

  1. $\wp$ を定める級数は、$\mathbb{C}\setminus\Lambda$ の任意のコンパクト部分集合上で絶対かつ一様に収束する。したがって $\wp$$\mathbb{C}$ 上の有理型関数で、その極は $\Lambda$ の点にちょうど 2 位の極としてあり、それ以外に極をもたない。各 $\omega\in\Lambda$ において $\wp(z)-1/(z-\omega)^2$ は正則である。
  2. $\wp$ は偶関数(偶関数)である:$\wp(-z)=\wp(z)$
  3. $\wp$導関数
    $$ \wp'(z)=-2\sum_{\omega\in\Lambda}\frac{1}{(z-\omega)^3} $$
    であり($\omega=0$ の項を含む)、奇関数で、$\Lambda$ に関する楕円関数である。
  4. $\wp$$\Lambda$ に関する楕円関数である。

1:$r>0$ を固定し、$|z|\le r$ かつ $|\omega|\ge2r$ とする。このとき $|z-\omega|\ge|\omega|-|z|\ge|\omega|/2$$|2\omega-z|\le2|\omega|+|z|\le\tfrac52|\omega|$ なので
$$ \left|\frac{1}{(z-\omega)^2}-\frac{1}{\omega^2}\right|=\frac{|z|\,|2\omega-z|}{|\omega|^2|z-\omega|^2}\le\frac{r\cdot\tfrac52|\omega|}{|\omega|^2\cdot\tfrac14|\omega|^2}=\frac{10r}{|\omega|^3} $$
である。lem-weierstrass-p-lattice-sum$s=3$)により $\sum_{|\omega|\ge2r}10r|\omega|^{-3}<\infty$ なので、WeierstrassのM判定法により、$|\omega|\ge2r$ にわたる部分和は閉円板 $\{|z|\le r\}$ 上で絶対かつ一様に収束し、正則関数の一様収束極限としてそこで正則である。残る $|\omega|<2r$ なる項は有限個で、それぞれ $\omega$ だけに 2 位の極をもつ有理型関数である。$r$ は任意なので、$\wp$$\mathbb{C}$ 上の有理型関数であり、極は $\Lambda$ の各点にちょうど 2 位($\omega$ における主要部は $1/(z-\omega)^2$)で、他に極はない。
2:$\omega\mapsto-\omega$$\Lambda\setminus\{0\}$全単射であり、絶対収束する級数は項の順序を変えてよいので、
$$ \wp(-z)=\frac{1}{z^2}+\sum_{\omega\ne0}\left(\frac{1}{(-z-\omega)^2}-\frac{1}{\omega^2}\right)=\frac{1}{z^2}+\sum_{\omega\ne0}\left(\frac{1}{(z-(-\omega))^2}-\frac{1}{(-\omega)^2}\right)=\wp(z) $$
である。
3:1 で示したコンパクト集合上の一様収束により、級数は項別に微分できる(Weierstrassの二重級数定理)。各項の導関数は $-2/(z-\omega)^3$ であり、$\omega=0$ の項 $1/z^2$ の導関数 $-2/z^3$ も同じ形なので、主張の式を得る。この級数は、$|z|\le r$$|\omega|\ge2r$ のとき $|z-\omega|^{-3}\le8|\omega|^{-3}$ なので、やはり lem-weierstrass-p-lattice-sum によりコンパクト集合上で絶対一様収束する。$\omega_0\in\Lambda$ に対し $\omega\mapsto\omega-\omega_0$$\Lambda$ の全単射だから
$$ \wp'(z+\omega_0)=-2\sum_{\omega\in\Lambda}\frac{1}{(z+\omega_0-\omega)^3}=-2\sum_{\omega'\in\Lambda}\frac{1}{(z-\omega')^3}=\wp'(z) $$
であり、$\wp'$ は楕円関数である。奇関数であることは 2 と同様に $\omega\mapsto-\omega$ で従う(あるいは偶関数の導関数は奇関数であることによる)。
4:$i=1,2$ とする。3 により $\frac{d}{dz}\bigl(\wp(z+\omega_i)-\wp(z)\bigr)=\wp'(z+\omega_i)-\wp'(z)=0$ なので、連結(連結空間)な領域 $\mathbb{C}\setminus\Lambda$ 上で $\wp(z+\omega_i)-\wp(z)=c_i$ は定数である。$\omega_i/2\notin\Lambda$ である($\omega_1/2=m\omega_1+n\omega_2$ とすると $\omega_1,\omega_2$$\mathbb{R}$ 上の線形独立性から $n=0$$m=1/2$ となり $m\in\mathbb{Z}$ に反する。$\omega_2$ も同様)。よって $z=-\omega_i/2$ を代入でき、2 により
$$ c_i=\wp(\omega_i/2)-\wp(-\omega_i/2)=0 $$
である。$\omega_1,\omega_2$$\Lambda$ を生成するので、$\wp$ はすべての $\omega\in\Lambda$ について $\wp(z+\omega)=\wp(z)$ を満たす。$\square$

$\wp$ の原点のまわりでの Laurent 展開の係数は、格子だけで決まる次の量で書ける。

Eisenstein級数と不変量

格子 $\Lambda$整数 $k\ge2$ に対し、
$$ G_{2k}(\Lambda):=\sum_{\omega\in\Lambda\setminus\{0\}}\frac{1}{\omega^{2k}} $$
を(重さ $2k$ の)Eisenstein 級数Eisenstein級数)という。lem-weierstrass-p-lattice-sum により絶対収束する。奇数冪の和 $\sum_{\omega\ne0}\omega^{-(2k+1)}$ は、$\omega\mapsto-\omega$ で項が符号を変えるので $0$ である。$\Lambda$不変量
$$ g_2=g_2(\Lambda):=60\,G_4(\Lambda),\qquad g_3=g_3(\Lambda):=140\,G_6(\Lambda) $$
とおき、$\Delta=\Delta(\Lambda):=g_2^3-27g_3^2$$\Lambda$判別式判別式)という。

原点でのLaurent展開

$\rho:=\min\{|\omega|\mid\omega\in\Lambda\setminus\{0\}\}$ とおく。$0<|z|<\rho$ において
$$ \wp(z)=\frac{1}{z^2}+\sum_{k\ge1}(2k+1)\,G_{2k+2}(\Lambda)\,z^{2k} =\frac{1}{z^2}+3G_4z^2+5G_6z^4+7G_8z^6+\cdots $$
が成り立つ。特に $\wp(z)-1/z^2$$z=0$ で正則で、そこで値 $0$ をとる。

$|z|<|\omega|$ のとき、等比級数 $\frac{1}{1-u}=\sum_{n\ge0}u^n$$|u|<1$)を項別微分した $\frac{1}{(1-u)^2}=\sum_{n\ge0}(n+1)u^n$$u=z/\omega$ を代入して
$$ \frac{1}{(z-\omega)^2}-\frac{1}{\omega^2}=\frac{1}{\omega^2}\left(\frac{1}{(1-z/\omega)^2}-1\right)=\sum_{n\ge1}\frac{(n+1)z^n}{\omega^{n+2}} $$
を得る。$0<|z|<\rho$ なら任意の $\omega\ne0$ について $|z|<|\omega|$ なので、
$$ \wp(z)=\frac{1}{z^2}+\sum_{\omega\ne0}\sum_{n\ge1}\frac{(n+1)z^n}{\omega^{n+2}} $$
である。和の順序を交換するために絶対収束を確かめる。各項の絶対値の二重和は $\sum_{\omega\ne0}\bigl(\frac{1}{(|\omega|-|z|)^2}-\frac{1}{|\omega|^2}\bigr)$ に等しく、$|\omega|\ge2|z|$ の項は prf-weierstrass-p-convergence と同じ評価で $10|z|\,|\omega|^{-3}$ 以下、残りは有限個なので有限である。よって和を交換でき、
$$ \wp(z)=\frac{1}{z^2}+\sum_{n\ge1}(n+1)\Bigl(\sum_{\omega\ne0}\omega^{-(n+2)}\Bigr)z^n $$
である。$n$ が奇数のとき $n+2$ も奇数で内側の和は $0$$n=2k$ のとき内側の和は $G_{2k+2}$ である。$\square$

直感

$\wp$ は「格子のすべての点に 2 位の極をもつ、最も簡単な周期関数」を作ろうとして得られる。素朴な候補 $\sum_\omega(z-\omega)^{-2}$ は格子点が平面に 2 次元的に広がるため収束しない(ex-weierstrass-p-counterexample-naive)が、各項から定数 $1/\omega^2$ を引いて減衰を $|\omega|^{-3}$ に速めると収束する。引いた定数のせいで周期性は級数の形からは見えなくなるが、導関数 $\wp'$ には定数が現れないので $\wp'$ は明らかに周期的で、そこから $\wp$ の周期性が回復する。
$\wp$ の重要性は、楕円関数のすべてが $\wp$$\wp'$ の有理式で書けること(thm-weierstrass-p-field)と、$\wp$$\wp'$ が 3 次曲線 $y^2=4x^3-g_2x-g_3$ の方程式を満たすこと(thm-weierstrass-p-ode)にある。後者により、複素トーラス(複素トーラス$\mathbb{C}/\Lambda$楕円曲線という、一方は解析的で他方は代数的な 2 つの対象が同一視される(thm-weierstrass-p-uniformization)。$\wp$ は複素トーラス上の「座標関数」であり、$\wp'$ はその「もう 1 つの座標」で、両者を結ぶ 1 本の代数方程式がトーラスを平面 3 次曲線として実現する。

例と反例

格子の相似変換

$c\in\mathbb{C}\setminus\{0\}$ とすると $c\Lambda=\{c\omega\mid\omega\in\Lambda\}$ も格子であり、
$$ \wp(cz;c\Lambda)=c^{-2}\wp(z;\Lambda),\qquad G_{2k}(c\Lambda)=c^{-2k}G_{2k}(\Lambda),\qquad g_2(c\Lambda)=c^{-4}g_2(\Lambda),\qquad g_3(c\Lambda)=c^{-6}g_3(\Lambda) $$
が成り立つ。実際、$\omega\mapsto c\omega$$\Lambda\setminus\{0\}$ から $c\Lambda\setminus\{0\}$ への全単射なので
$$ \wp(cz;c\Lambda)=\frac{1}{c^2z^2}+\sum_{\omega\ne0}\left(\frac{1}{(cz-c\omega)^2}-\frac{1}{c^2\omega^2}\right)=c^{-2}\wp(z;\Lambda) $$
であり、$G_{2k}$ の式も同様である。特に $\Lambda$ の基底を $\omega_1,\omega_2$ とし $\tau:=\omega_2/\omega_1$(必要なら順序を入れ替えて $\operatorname{Im}\tau>0$ とする)とおくと、$\Lambda=\omega_1(\mathbb{Z}+\mathbb{Z}\tau)$ なので、$\wp$ の研究は上半平面$\tau$ に関する格子 $\mathbb{Z}+\mathbb{Z}\tau$ に帰着する。$g_2$$g_3$$\tau$ の関数とみたものが重さ $4$$6$モジュラー形式である。

Gauss整数の格子では $g_3=0$

$\Lambda=\mathbb{Z}[i]=\mathbb{Z}+\mathbb{Z}i$(正方格子。Gauss整数)とする。$i\Lambda=\Lambda$ なので、ex-weierstrass-p-homogeneity により
$$ G_6(\Lambda)=G_6(i\Lambda)=i^{-6}G_6(\Lambda)=-G_6(\Lambda) $$
であり、$G_6(\Lambda)=0$、したがって $g_3(\Lambda)=0$ である。また $\overline{\Lambda}=\Lambda$複素共役)なので $\overline{G_4(\Lambda)}=\sum\overline{\omega}^{-4}=G_4(\Lambda)$ となり $g_2$ は実数である。thm-weierstrass-p-discriminant により $\Delta=g_2^3\ne0$ なので $g_2\ne0$ である。数値的には $g_2(\mathbb{Z}[i])\approx189.07$ である。同じ理由で $\wp(iz)=\wp(iz;i\Lambda)=i^{-2}\wp(z)=-\wp(z)$ が成り立つ。
対応する 3 次曲線は $y^2=4x^3-g_2x=4x\bigl(x-\tfrac{\sqrt{g_2}}{2}\bigr)\bigl(x+\tfrac{\sqrt{g_2}}{2}\bigr)$ で、半周期での値 $e_1,e_2,e_3$thm-weierstrass-p-discriminant)は $\pm\sqrt{g_2}/2$$0$ である。この楕円曲線は自己同型 $(x,y)\mapsto(-x,iy)$ をもち、虚数乗法をもつ楕円曲線の最も簡単な例である。$j$ 不変量(j不変量$j=1728\,g_2^3/\Delta$$1728$ である。

Eisenstein整数の格子では $g_2=0$

$\rho:=e^{2\pi i/3}=\frac{-1+\sqrt{-3}}{2}$ とし、$\Lambda=\mathbb{Z}[\rho]=\mathbb{Z}+\mathbb{Z}\rho$(正三角格子。Eisenstein整数)とする。$\rho^2=-1-\rho\in\Lambda$ なので $\rho\Lambda=\Lambda$ であり、
$$ G_4(\Lambda)=G_4(\rho\Lambda)=\rho^{-4}G_4(\Lambda)=\rho^{2}G_4(\Lambda) $$
である($\rho^{-4}=\rho^{-4}\rho^{6}=\rho^2$)。$\rho^2\ne1$ なので $G_4(\Lambda)=0$、すなわち $g_2(\Lambda)=0$ である。$\overline{\rho}=\rho^2\in\Lambda$ から $\overline{\Lambda}=\Lambda$ なので $g_3$ は実数であり、$\Delta=-27g_3^2\ne0$ から $g_3\ne0$ である。数値的には $g_3(\mathbb{Z}[\rho])\approx820.82$ である。また $\wp(\rho z)=\rho^{-2}\wp(z)=\rho\,\wp(z)$ が成り立つ。
対応する 3 次曲線は $y^2=4x^3-g_3$ で、$e_1,e_2,e_3$$(g_3/4)^{1/3}$ の 3 つの複素立方根であり、この曲線は位数 $6$ の自己同型 $(x,y)\mapsto(\rho x,-y)$ をもつ。$j$ 不変量は $0$ である。
$\mathbb{Z}[i]$$\mathbb{Z}[\rho]$ は、$\Lambda$ を保つ回転 $c\Lambda=\Lambda$$|c|=1$$c\ne\pm1$)が存在する格子であり、そのような格子は相似を除いてこの 2 つに限る(Sil09 III §10、Lan87 第 1 章)。それ以外の格子では $g_2\ne0$ かつ $g_3\ne0$ である。

Laurent展開の係数の間の関係

prop-weierstrass-p-laurent の展開を thm-weierstrass-p-ode の微分方程式に代入すると、高次の Eisenstein 級数が $G_4$$G_6$ の多項式で書けることが分かる。$\wp=z^{-2}+3G_4z^2+5G_6z^4+7G_8z^6+9G_{10}z^8+O(z^{10})$ から
$$ \wp'^2=4z^{-6}-24G_4z^{-2}-80G_6+(36G_4^2-168G_8)z^2+O(z^4),\qquad 4\wp^3=4z^{-6}+36G_4z^{-2}+60G_6+(108G_4^2+84G_8)z^2+O(z^4) $$
であり、$\wp'^2-4\wp^3+60G_4\wp+140G_6$$z^2$ の係数は $36G_4^2-168G_8-108G_4^2-84G_8+180G_4^2=108G_4^2-252G_8$ である。これが $0$ であることから
$$ G_8=\frac{3}{7}G_4^2 $$
を得る。同様に $z^4$ の係数から $G_{10}=\frac{5}{11}G_4G_6$ を得る。一般に、$a_k:=(2k+1)G_{2k+2}$ とおいて rem-weierstrass-p-second-order$\wp''=6\wp^2-\tfrac12g_2$ の両辺の $z^{2m}$ の係数($m\ge2$)を比べると
$$ (2m+2)(2m+1)a_{m+1}=12a_{m+1}+6\sum_{i+j=m,\ i,j\ge1}a_ia_j $$
が得られ、$(2m+2)(2m+1)-12=2(2m+5)(m-1)\ne0$ なので $a_{m+1}$$a_1,\dots,a_{m-1}$ から決まる。したがって $G_{2k}$$k\ge4$)はすべて $G_4$$G_6$ の有理数係数の多項式である($m=2$ の場合が上の $G_8$ の式である)。

反例:補正項のない級数は収束しない

$\wp$ の定義で補正項 $-1/\omega^2$ を落とした級数 $\sum_{\omega\in\Lambda}(z-\omega)^{-2}$ は、どの $z\in\mathbb{C}\setminus\Lambda$ でも絶対収束しない。実際、$|\omega|\ge|z|$ なる $\omega$ については $|z-\omega|\le|z|+|\omega|\le2|\omega|$ なので
$$ \sum_{|\omega|\ge|z|}\frac{1}{|z-\omega|^2}\ge\frac14\sum_{|\omega|\ge|z|}\frac{1}{|\omega|^2}=\infty $$
である(lem-weierstrass-p-lattice-sum$s=2$ の場合)。この級数は「各項が $\omega$ に 2 位の極をもつ」という性質は満たすが「絶対収束する」という性質を満たさず、絶対収束しない級数の値は項の順序に依存しうるので、順序を指定せずに関数を定めることはできない。補正項 $-1/\omega^2$ は各項を $O(|\omega|^{-3})$ に減らし、lem-weierstrass-p-lattice-sum$s=3$ の場合が使えるようにするためのものである。同じ理由で、$G_2=\sum_{\omega\ne0}\omega^{-2}$def-weierstrass-p-eisenstein$k\ge2$ の条件から外れており、Eisenstein 級数として意味をもたせるには和の順序の指定が要る。
一方、1 次元の離散部分群 $\mathbb{Z}\omega$ についての級数 $\sum_{n\in\mathbb{Z}}(z-n\omega)^{-2}$ は絶対収束し、$(\pi/\omega)^2\sin^{-2}(\pi z/\omega)$ に等しい(Ahl79 第 5 章)。収束の障害は、格子点の個数が半径 $R$ の円板内で $R^2$ に比例して増えるという 2 次元性にある。

反例:格子以外の平行移動では不変でない

$a\in\mathbb{C}$ について $\wp(z+a)=\wp(z)$ がすべての $z$ で成り立つならば $a\in\Lambda$ である。実際、両辺の極の集合を比べると $\Lambda-a=\Lambda$ となり、$0\in\Lambda$ から $-a\in\Lambda$、よって $a\in\Lambda$ である(prop-weierstrass-p-convergence の 1 により極の集合はちょうど $\Lambda$)。したがって $\wp$ の周期群は $\Lambda$ そのものであり、これより大きくない。たとえば $\omega_1/2$ による平行移動で $\wp$ は不変でない:$\wp(z+\omega_1/2)$$z=\omega_1/2$ に極をもつが $\wp$ はそこで正則である。
また $\wp'$ は偶関数でない。奇関数なので、$\wp'$ が偶でもあれば $\wp'=0$ となって $\wp$ が定数になり、極をもつことに反する。

反例:判別式が $0$ の 3 次式は格子から得られない

$g_2=3$$g_3=1$ とすると $\Delta=g_2^3-27g_3^2=27-27=0$ であり、
$$ 4x^3-3x-1=(x-1)(2x+1)^2 $$
は重根 $x=-1/2$ をもつ。thm-weierstrass-p-discriminant により、どんな格子 $\Lambda$ についても $\Delta(\Lambda)\ne0$ なので、$(g_2(\Lambda),g_3(\Lambda))=(3,1)$ となる格子は存在しない。曲線 $y^2=(x-1)(2x+1)^2$ は点 $(-1/2,0)$ で特異(結節点をもつ)であり、楕円曲線ではない。この例は「任意の $(g_2,g_3)\in\mathbb{C}^2$ がある格子の不変量である」という主張を破り、thm-weierstrass-p-uniformization の仮定 $\Delta\ne0$ が省けないことを示す。

性質

楕円関数に関するLiouvilleの定理群

$\wp$ に固有の性質を導く前に、楕円関数一般について成り立つ基本的な定理を証明する。これらは Liouville による(Ahl79 第 7 章 §2、Sil09 VI §2、Lan87 第 1 章 §1)。

楕円関数についてのLiouvilleの定理

$\Lambda=\mathbb{Z}\omega_1+\mathbb{Z}\omega_2$ を格子、$f$$\Lambda$ に関する楕円関数とする。$a\in\mathbb{C}$ に対し $P_a:=a+P$$P$ は基本平行四辺形)とおく。

  1. $f$ が極をもたなければ $f$ は定数である。
  2. $f$ の極が $P_a$ の境界上にないように $a$ をとると、$P_a$ に含まれる極における留数の総和は $0$ である:$\sum_{p\in P_a}\operatorname{res}_pf=0$
  3. $f$ が定数でないとき、$P_a$ に含まれる $f$ の零点の個数(重複度込み)と極の個数(重複度込み)は等しい。この共通の個数を $f$位数 $\operatorname{ord}f$ という。$\operatorname{ord}f\ge2$ であり、任意の $c\in\mathbb{C}$ に対して $f$$P_a$ 内で値 $c$ をちょうど $\operatorname{ord}f$ 回(重複度込み)とる。
  4. $f$ が定数でないとき、$P_a$ 内の零点の和から極の和を引いたもの(重複度込み)は $\Lambda$ に属する:$\sum_{p\in P_a}\operatorname{ord}_p(f)\,p\in\Lambda$。ここで $\operatorname{ord}_p(f)$$p$ における零点の位数(零点の位数。極では負)である。

1:$f$$\mathbb{C}$ 上正則で、$P$ の閉包 $\overline{P}$ はコンパクトなので、$|f|$$\overline{P}$ 上で有界である。任意の $z\in\mathbb{C}$ はある $\omega\in\Lambda$ について $z-\omega\in P$ を満たし、$f(z)=f(z-\omega)$ なので $|f|$$\mathbb{C}$ 全体で同じ上界をもつ。有界な整関数は定数である(Liouvilleの定理(複素解析))。
2:$f$ の極は離散集合をなすので、コンパクト集合 $\overline{P_a}$ に含まれる極は有限個である。$a$$t(\omega_1+\omega_2)$$0< t<1$)の形にとると、極 $p$$P_a$ の辺 $a+[0,1]\omega_1$ を含む直線上にあるのは $\operatorname{Im}\bigl((p-t(\omega_1+\omega_2))/\omega_1\bigr)=0$、すなわち $t$ が 1 つの値をとるときに限り、他の 3 辺も同様なので、有限個の $t$ を避ければ境界上に極はない。$\partial P_a$ を正の向きに 1 周する閉曲線として留数定理を適用すると
$$ 2\pi i\sum_{p\in P_a}\operatorname{res}_pf=\oint_{\partial P_a}f(z)\,dz $$
である。右辺は 4 辺の積分の和であり、辺 $[a,a+\omega_1]$ と辺 $[a+\omega_2,a+\omega_1+\omega_2]$ は逆向きに現れる。$f(z+\omega_2)=f(z)$ なので
$$ \int_a^{a+\omega_1}f(z)\,dz-\int_{a+\omega_2}^{a+\omega_1+\omega_2}f(z)\,dz=\int_a^{a+\omega_1}\bigl(f(z)-f(z+\omega_2)\bigr)dz=0 $$
であり、残る 2 辺も $f(z+\omega_1)=f(z)$ により打ち消し合う。よって右辺は $0$ である。
3:$f'/f$ は楕円関数であり($f'$ も周期的だから)、$p$ における留数は $\operatorname{ord}_p(f)$ である($f(z)=(z-p)^m g(z)$$g(p)\ne0$ と書けば $f'/f=m/(z-p)+g'/g$偏角の原理)。零点も極も離散集合なので、$a$ を選んで $f'/f$ の極($f$ の零点と極)が $\partial P_a$ 上にないようにでき、2 を $f'/f$ に適用して $\sum_{p\in P_a}\operatorname{ord}_p(f)=0$、すなわち零点の個数と極の個数(いずれも重複度込み)が等しいことを得る。$f$ は定数でないので 1 により極をもち、$\operatorname{ord}f\ge1$ である。$\operatorname{ord}f=1$ とすると、$P_a$ 内の極は 1 つでそれは単純極、その留数は $0$ でないから 2 に反する。よって $\operatorname{ord}f\ge2$ である。最後に $f-c$$f$ と同じ極をもつ楕円関数なので、その零点の個数は $\operatorname{ord}(f-c)=\operatorname{ord}f$ である。
4:3 と同じ $a$ をとり、$g(z):=zf'(z)/f(z)$ を考える。$g$ は楕円関数ではないが $\partial P_a$ 上で正則で、$p$ における留数は $p\operatorname{ord}_p(f)$ である。留数定理により
$$ 2\pi i\sum_{p\in P_a}\operatorname{ord}_p(f)\,p=\oint_{\partial P_a}z\frac{f'(z)}{f(z)}\,dz $$
である。辺 $[a,a+\omega_1]$ と辺 $[a+\omega_2,a+\omega_1+\omega_2]$ の寄与は、$f'/f$ の周期性により
$$ \int_a^{a+\omega_1}\Bigl(z\frac{f'(z)}{f(z)}-(z+\omega_2)\frac{f'(z+\omega_2)}{f(z+\omega_2)}\Bigr)dz=-\omega_2\int_a^{a+\omega_1}\frac{f'(z)}{f(z)}\,dz $$
である。線分 $\gamma=[a,a+\omega_1]$$f$ の零点と極を通らず、$f(a+\omega_1)=f(a)$ なので $f\circ\gamma$$0$ を通らない閉曲線であり、$\int_\gamma f'/f\,dz=\int_{f\circ\gamma}dw/w=2\pi i\,n$$n$$f\circ\gamma$$0$ のまわりの回転数)は $2\pi i$ の整数倍である。残る 2 辺の寄与も同様に $\omega_1\cdot2\pi i\,m$$m\in\mathbb{Z}$)である。よって $\sum_p\operatorname{ord}_p(f)\,p=m\omega_1-n\omega_2\in\Lambda$ である。$\square$

thm-weierstrass-p-liouville の 3 により、$\wp$ は位数 $2$ の楕円関数($P$ 内の極は $0$ における 2 位の極だけ)であり、$\wp'$ は位数 $3$ である。$\wp$ は位数の最小値 $2$ を実現しており、この意味でも最も簡単な楕円関数である。

微分方程式

Weierstrassの微分方程式

格子 $\Lambda$$\wp$ 関数は、$g_2=g_2(\Lambda)$$g_3=g_3(\Lambda)$ に対して
$$ \wp'(z)^2=4\wp(z)^3-g_2\,\wp(z)-g_3 $$
を満たす。

prop-weierstrass-p-laurent により、$0<|z|<\rho$
$$ \wp(z)=z^{-2}+3G_4z^2+5G_6z^4+O(z^6),\qquad\wp'(z)=-2z^{-3}+6G_4z+20G_6z^3+O(z^5) $$
である($O(z^n)$$z=0$ で正則で $n$ 位以上の零点をもつ関数を表す)。これらを掛けて
$$ \wp'(z)^2=4z^{-6}-24G_4z^{-2}-80G_6+O(z^2),\qquad \wp(z)^3=z^{-6}+9G_4z^{-2}+15G_6+O(z^2) $$
を得る($\wp'^2$$z^{-2}$ の係数は $2\cdot(-2)\cdot6G_4$、定数項は $2\cdot(-2)\cdot20G_6$$\wp^3$$z^{-2}$ の係数は $3\cdot3G_4$、定数項は $3\cdot5G_6$)。したがって
$$ f(z):=\wp'(z)^2-4\wp(z)^3+60G_4\,\wp(z)+140G_6 $$
の主要部を計算すると、$z^{-6}$ の係数は $4-4=0$$z^{-2}$ の係数は $-24G_4-36G_4+60G_4=0$、定数項は $-80G_6-60G_6+140G_6=0$ であり、$f(z)=O(z^2)$ である。すなわち $f$$z=0$ で正則で $f(0)=0$ である。$f$$\wp$$\wp'$ の多項式なので楕円関数であり、その極は $\Lambda$ の点にしかありえないが、$0$ で正則なので周期性によりすべての $\omega\in\Lambda$ でも正則である。よって $f$ は極をもたない楕円関数であり、thm-weierstrass-p-liouville の 1 により定数、$f(0)=0$ から $f\equiv0$ である。$g_2=60G_4$$g_3=140G_6$ が主張の式である。$\square$

2 階の微分方程式

thm-weierstrass-p-ode の両辺を微分すると $2\wp'\wp''=12\wp^2\wp'-g_2\wp'$ であり、$\wp'\ne0$ なる点では $\wp''=6\wp^2-\tfrac12g_2$ が成り立つ。$\wp'$ の零点は離散なので、一致の定理によりこの等式は $\mathbb{C}\setminus\Lambda$ 全体で成り立つ。この形は Laurent 係数の漸化式(ex-weierstrass-p-laurent-coefficients)を導くのに便利である。

判別式と半周期での値

半周期での値と判別式

$\Lambda=\mathbb{Z}\omega_1+\mathbb{Z}\omega_2$ を格子とし、$\omega_3:=\omega_1+\omega_2$$e_i:=\wp(\omega_i/2)$$i=1,2,3$)とおく。

  1. $\wp'$ の零点は $\omega_1/2,\omega_2/2,\omega_3/2$$\Lambda$ による平行移動にちょうど一致し、すべて単純零点である。
  2. $e_1,e_2,e_3$ は相異なる。
  3. $4x^3-g_2x-g_3=4(x-e_1)(x-e_2)(x-e_3)$ であり、$e_1+e_2+e_3=0$
  4. $\Delta=g_2^3-27g_3^2=16(e_1-e_2)^2(e_1-e_3)^2(e_2-e_3)^2\ne0$

1:$\wp'$ は奇関数かつ $\Lambda$ 周期的なので、$i=1,2,3$ について
$$ \wp'(\omega_i/2)=\wp'(\omega_i/2-\omega_i)=\wp'(-\omega_i/2)=-\wp'(\omega_i/2) $$
であり、$\wp'(\omega_i/2)=0$ である($\omega_i/2\notin\Lambda$prf-weierstrass-p-convergence の 4 で示した。$\omega_3/2$ についても同様)。3 点 $\omega_1/2,\omega_2/2,\omega_3/2$$\Lambda$ を法として相異なる:たとえば $(\omega_3-\omega_1)/2=\omega_2/2\notin\Lambda$$(\omega_1-\omega_2)/2\in\Lambda$ とすると $\omega_1,\omega_2$ の線形独立性から $1/2\in\mathbb{Z}$ となり矛盾する。$\wp'$ は位数 $3$ の楕円関数なので、thm-weierstrass-p-liouville の 3 により基本平行四辺形内の零点は重複度込みでちょうど 3 個であり、いま見つけた 3 個で尽くされ、いずれも単純である。
2:$\wp-e_i$$\omega_i/2$ で零点をもち、その導関数 $\wp'$ は 1 によりそこで単純零点をもつので、$\wp-e_i$$\omega_i/2$ における零点の位数はちょうど $2$ である。$\wp-e_i$ は位数 $2$ の楕円関数だから、$\Lambda$ を法として他に零点をもたない。もし $i\ne j$$e_i=e_j$ なら $\wp-e_i$$\omega_j/2\not\equiv\omega_i/2$ でも零点をもつことになり矛盾する。
3:thm-weierstrass-p-ode$z=\omega_i/2$ を代入すると $0=\wp'(\omega_i/2)^2=4e_i^3-g_2e_i-g_3$ である。よって相異なる 3 数 $e_1,e_2,e_3$ は 3 次式 $4x^3-g_2x-g_3$ の根であり、これがその根のすべてで、因数定理により $4x^3-g_2x-g_3=4(x-e_1)(x-e_2)(x-e_3)$ である。右辺を展開して $x^2$ の係数を比べると $e_1+e_2+e_3=0$ を得る。
4:3 の展開から $g_2=-4(e_1e_2+e_1e_3+e_2e_3)$$g_3=4e_1e_2e_3$ である。$e_3=-e_1-e_2$ を代入して両辺を多項式として展開すれば、恒等式 $g_2^3-27g_3^2=16(e_1-e_2)^2(e_1-e_3)^2(e_2-e_3)^2$ が直接確かめられる(3 次式 $x^3+px+q$判別式 $-4p^3-27q^2$ が根の差の積の平方に等しいという事実の $p=-g_2/4$$q=-g_3/4$ の場合である)。2 により右辺は $0$ でない。$\square$

複素トーラスと楕円曲線の同型

thm-weierstrass-p-discriminant により、3 次式 $4x^3-g_2x-g_3$ は重根をもたない。したがって射影平面(射影空間$\mathbb{P}^2(\mathbb{C})$ の中で方程式 $y^2=4x^3-g_2x-g_3$ が定める 3 次曲線 $E=E_\Lambda$ は非特異であり、無限遠点 $O=[0:1:0]$ を単位元とする楕円曲線である。$E(\mathbb{C})$ には、$E$ 上の 2 点 $P,Q$ を通る直線($P=Q$ なら接線)が $E$ と交わる第 3 の点を $R$ とし、$R$$x$ 軸に関する鏡映 $(x,y)\mapsto(x,-y)$$P+Q$ とする群構造が入る(弦と接線による加法。$O$ を通る直線は垂直線 $x=$ 定数で、$-P$$P$ の鏡映。Sil09 III §2)。

複素トーラスと楕円曲線の同型

$\Lambda$ を格子、$E=E_\Lambda\colon y^2=4x^3-g_2(\Lambda)x-g_3(\Lambda)$ とし、
$$ \phi\colon\mathbb{C}/\Lambda\to E(\mathbb{C}),\qquad \phi(z)=\begin{cases}[\wp(z):\wp'(z):1],&z\notin\Lambda,\\ O,&z\in\Lambda\end{cases} $$
とおく。$\phi$ は well-defined な全単射であり、加法群 $\mathbb{C}/\Lambda$ から群 $E(\mathbb{C})$ への群の同型である。さらに $\phi$ は複素トーラス $\mathbb{C}/\Lambda$ から複素多様体(複素多様体$E(\mathbb{C})$ への正則同型でもある。

well-defined:$\wp,\wp'$$\Lambda$ 周期的なので $\phi$$z$$\Lambda$ による類だけで決まり、thm-weierstrass-p-ode により $\phi(z)\in E(\mathbb{C})$ である。
単射:$z_1,z_2\notin\Lambda$$\phi(z_1)=\phi(z_2)$ とし、$x_0:=\wp(z_1)=\wp(z_2)$ とおく。$\wp-x_0$ は位数 $2$ の楕円関数で、$z_1$$-z_1$$\wp$ は偶)を零点にもつ。$2z_1\notin\Lambda$ なら $z_1\not\equiv-z_1$ なのでこれらが零点のすべてであり、$z_2\equiv z_1$ または $z_2\equiv-z_1$ である。後者なら $\wp'(z_2)=\wp'(-z_1)=-\wp'(z_1)$$\wp'(z_2)=\wp'(z_1)$ から $\wp'(z_1)=0$ となり、thm-weierstrass-p-discriminant の 1 により $z_1$ は半周期、すなわち $2z_1\in\Lambda$ となって仮定に反する。よって $z_2\equiv z_1$$2z_1\in\Lambda$ なら $\wp'(z_1)=0$ により $\wp-x_0$$z_1$ に 2 位の零点をもち、位数 $2$ だから他に零点はなく、やはり $z_2\equiv z_1$ である。$\phi(z)=O$ となるのは $z\in\Lambda$ のときだけなので、$\phi$ は単射である。
全射:$(x_0,y_0)\in E(\mathbb{C})$ をアフィン部分の点とする。thm-weierstrass-p-liouville の 3 により $\wp$ は値 $x_0$ をとるので、$\wp(z_0)=x_0$ なる $z_0\notin\Lambda$ がある。thm-weierstrass-p-ode により $\wp'(z_0)^2=4x_0^3-g_2x_0-g_3=y_0^2$ なので $\wp'(z_0)=\pm y_0$ であり、符号が負なら $z_0$$-z_0$ に取り替えて $\wp'(-z_0)=-\wp'(z_0)=y_0$ とすればよい。$O=\phi(0)$ も像に入る。
準同型:まず $-\phi(z)=(\wp(z),-\wp'(z))=(\wp(-z),\wp'(-z))=\phi(-z)$ である。$z_1,z_2\in\mathbb{C}$ について $\phi(z_1+z_2)=\phi(z_1)+\phi(z_2)$ を示す。$z_1\in\Lambda$ または $z_2\in\Lambda$ なら両辺とも $\phi$ のもう一方の値である。$z_1+z_2\in\Lambda$ なら $\phi(z_2)=\phi(-z_1)=-\phi(z_1)$ なので両辺とも $O$ である。以下 $z_1,z_2,z_1+z_2\notin\Lambda$ とし、$P_1=\phi(z_1)=(x_1,y_1)$$P_2=\phi(z_2)=(x_2,y_2)$ とおく。
$z_1\not\equiv z_2$ のとき、$x_1\ne x_2$ である。実際 $x_1=x_2$ なら、単射性の議論と同じく $z_2\equiv\pm z_1$ であり、$z_2\not\equiv z_1$ から $z_2\equiv-z_1$、すなわち $z_1+z_2\in\Lambda$ となって仮定に反する。そこで $P_1,P_2$ を通る直線を $\ell\colon y=\alpha x+\beta$$\alpha=(y_1-y_2)/(x_1-x_2)$ とする。$z_1\equiv z_2$ のとき、$2z_1\notin\Lambda$ なので thm-weierstrass-p-discriminant の 1 により $y_1=\wp'(z_1)\ne0$ であり、$P_1$ における $E$ の接線は垂直でなく $\ell\colon y=\alpha x+\beta$$\alpha=(12x_1^2-g_2)/(2y_1)=\wp''(z_1)/\wp'(z_1)$ と書ける(rem-weierstrass-p-second-order)。どちらの場合も、$\ell$$E$ の交点の $x$ 座標は 3 次式
$$ h(x):=4x^3-g_2x-g_3-(\alpha x+\beta)^2=4(x-x_1)(x-x_2)(x-x_3) $$
の根であり(接線の場合は $x_1=x_2$ が重根で、$h'(x_1)=12x_1^2-g_2-2\alpha y_1=0$ による)、第 3 の交点は $R=(x_3,\alpha x_3+\beta)$ である。
楕円関数 $f(z):=\wp'(z)-\alpha\wp(z)-\beta$ を考える。$f$$0$ だけに 3 位の極をもつので位数 $3$ であり、$f(z_1)=f(z_2)=0$ である(接線の場合は $f'(z_1)=\wp''(z_1)-\alpha\wp'(z_1)=0$ なので $z_1$ は 2 位以上の零点)。よって $f$ の零点は重複度込みで $z_1,z_2,z_3$ の 3 つであり、thm-weierstrass-p-liouville の 4 により $z_1+z_2+z_3\in\Lambda$(極は $0$ に 3 重なので極の和は $0$)、すなわち $z_3\equiv-(z_1+z_2)$ である。
$\wp(z_3)=x_3$ を示す。$\wp'(z)+\alpha\wp(z)+\beta=-f(-z)$ なので、
$$ g(z):=\wp'(z)^2-(\alpha\wp(z)+\beta)^2=-f(z)f(-z) $$
であり、一方 thm-weierstrass-p-ode により $g(z)=h(\wp(z))=4\prod_{i=1}^3(\wp(z)-x_i)$ である。$g$ は位数 $6$ の楕円関数で、前者の表示からその零点($\Lambda$ を法として重複度込み)は $\pm z_1,\pm z_2,\pm z_3$ であり、後者の表示からは、各 $i$ について $\wp(w_i)=x_i$ なる $w_i$ をとると $\pm w_1,\pm w_2,\pm w_3$ である($\wp-x_i$ は位数 $2$ で零点は $\pm w_i$$2w_i\in\Lambda$ のときは $w_i$ での 2 位の零点として数える)。2 つの多重集合は一致するので、$\wp$ の値の多重集合 $\{\wp(z_1),\wp(z_2),\wp(z_3)\}$$\{x_1,x_2,x_3\}$ は一致し、$\wp(z_1)=x_1$$\wp(z_2)=x_2$ から $\wp(z_3)=x_3$ を得る。すると $\wp'(z_3)=\alpha\wp(z_3)+\beta=\alpha x_3+\beta$ なので $\phi(z_3)=R$ であり、
$$ \phi(z_1)+\phi(z_2)=-R=-\phi(z_3)=\phi(-z_3)=\phi(z_1+z_2) $$
である。
正則同型:$\phi$$\mathbb{C}\setminus\Lambda$ 上で $\wp,\wp'$ により正則であり、$0$ の近傍では $[\wp:\wp':1]=[z^3\wp:z^3\wp':z^3]=[z+O(z^5):-2+O(z^4):z^3]$ と書けて $O$ の近傍でも正則である。単射な正則写像は局所的に $z\mapsto z^k$$k\ge2$)の形をとりえないので導関数が消えず、その逆写像は正則である(開写像定理(複素解析)逆関数定理)。$\square$

加法定理と倍角公式

$z_1,z_2\notin\Lambda$$z_1\pm z_2\notin\Lambda$ のとき
$$ \wp(z_1+z_2)=-\wp(z_1)-\wp(z_2)+\frac14\left(\frac{\wp'(z_1)-\wp'(z_2)}{\wp(z_1)-\wp(z_2)}\right)^2 $$
であり、$2z\notin\Lambda$ のとき
$$ \wp(2z)=-2\wp(z)+\frac14\left(\frac{\wp''(z)}{\wp'(z)}\right)^2 $$
である。

prf-weierstrass-p-uniformization の記号で、$h(x)=4x^3-\alpha^2x^2-(2\alpha\beta+g_2)x-(\beta^2+g_3)=4(x-x_1)(x-x_2)(x-x_3)$$x^2$ の係数を比べると(根と係数の関係$x_1+x_2+x_3=\alpha^2/4$ である。$\wp(z_1+z_2)=\wp(-z_3)=\wp(z_3)=x_3$ なので、$\alpha$ の 2 つの表示を代入すれば主張の 2 式を得る。$\square$

一意化定理

$g_2,g_3\in\mathbb{C}$$\Delta=g_2^3-27g_3^2\ne0$ を満たすならば、$g_2(\Lambda)=g_2$$g_3(\Lambda)=g_3$ となる格子 $\Lambda\subset\mathbb{C}$ がただ 1 つ存在する。したがって $\mathbb{C}$ 上のすべての楕円曲線は、ある格子 $\Lambda$ について thm-weierstrass-p-uniformization$E_\Lambda$ と同型であり、複素トーラス $\mathbb{C}/\Lambda$ として実現される。2 つの格子 $\Lambda,\Lambda'$ について $E_\Lambda\cong E_{\Lambda'}$ であることと、$\Lambda'=c\Lambda$ なる $c\in\mathbb{C}^\times$ が存在することは同値である。

一意化定理の出典

証明は Sil09 VI §5($j$ 不変量が上半平面上の関数として $\mathbb{C}$ の値をすべてとることによる)または Ahl79 第 7 章 §3(モジュラー関数 $\lambda(\tau)$ の写像性質による)に譲る。同型と相似の対応は Sil09 VI §4 による。この定理により、$\mathbb{C}$ 上の楕円曲線の同型類は格子の相似類、すなわち上半平面の $\operatorname{SL}_2(\mathbb{Z})$ 軌道と 1 対 1 に対応し、$j$ 不変量 $j(\Lambda)=1728\,g_2^3/\Delta$ がその完全な不変量になる(j不変量モジュラー形式)。

楕円関数体

楕円関数体の生成

$\Lambda$ を格子とする。

  1. $\Lambda$ に関する偶な楕円関数は $\wp$ の有理関数である:$\mathcal{M}(\Lambda)^{\text{even}}=\mathbb{C}(\wp)$
  2. $\mathcal{M}(\Lambda)=\mathbb{C}(\wp,\wp')$ であり、任意の楕円関数 $f$$\wp$ の有理関数 $R_1,R_2$ を用いて $f=R_1(\wp)+\wp'R_2(\wp)$ と一意に書ける。
  3. $\mathbb{C}(\wp,\wp')$$\mathbb{C}(\wp)$ の 2 次拡大であり、thm-weierstrass-p-ode により楕円曲線 $E_\Lambda$関数体 $\operatorname{Frac}\bigl(\mathbb{C}[x,y]/(y^2-4x^3+g_2x+g_3)\bigr)$ に同型である。
楕円関数体の定理の証明の筋

証明は Sil09 VI §3、Ahl79 第 7 章 §3、Lan87 第 1 章 §2 に譲り、筋だけ述べる。1:$f$ を偶な楕円関数とし、$\Lambda$ を法として零点・極 $a$$\pm a$ の組に分ける。各組について $\wp(z)-\wp(a)$ の冪を使って零点・極の位数を消す($2a\in\Lambda$ のときは $f$ の位数が偶数であることを偶関数性から使う)。原点での位数は $\wp$ の冪で調整する。得られた楕円関数は零点も極ももたず、thm-weierstrass-p-liouville の 1 により定数である。2:$f(z)=\frac{f(z)+f(-z)}2+\wp'(z)\cdot\frac{f(z)-f(-z)}{2\wp'(z)}$ と分ければ、第 1 項と $\wp'$ の係数はどちらも偶な楕円関数なので 1 が使える。一意性は、$\wp'$ が奇なので $R_1(\wp)+\wp'R_2(\wp)=0$ の偶部分と奇部分を分ければよい。3:$\wp'\notin\mathbb{C}(\wp)$(奇関数だから)と thm-weierstrass-p-ode から拡大次数は $2$ であり、$\operatorname{Frac}\bigl(\mathbb{C}[x,y]/(y^2-4x^3+g_2x+g_3)\bigr)\to\mathbb{C}(\wp,\wp')$$x\mapsto\wp$$y\mapsto\wp'$ が体の同型を与える。この同型は thm-weierstrass-p-uniformization$\phi$ による関数の引き戻しにほかならない。

補足

Weierstrass の ζ 関数と σ 関数

$\wp$ を積分して得られる関数
$$ \zeta(z):=\frac1z+\sum_{\omega\in\Lambda\setminus\{0\}}\left(\frac{1}{z-\omega}+\frac1\omega+\frac{z}{\omega^2}\right),\qquad \sigma(z):=z\prod_{\omega\in\Lambda\setminus\{0\}}\left(1-\frac z\omega\right)e^{z/\omega+z^2/(2\omega^2)} $$
は、それぞれ $\zeta'=-\wp$$\sigma'/\sigma=\zeta$ を満たす(収束は lem-weierstrass-p-lattice-sum$s=3$ による。$\zeta$ は Riemann の ゼータ関数とは別物である)。$\zeta$ は楕円関数ではなく、$\zeta(z+\omega_i)=\zeta(z)+\eta_i$$\eta_i$ は定数、擬周期)を満たす。$\operatorname{Im}(\omega_2/\omega_1)>0$ のとき Legendre の関係
$$ \eta_1\omega_2-\eta_2\omega_1=2\pi i $$
が成り立つ。これは thm-weierstrass-p-liouville の 2 の証明と同じく $\zeta$$\partial P_a$ に沿って積分し、$0$ における留数が $1$ であることを使えば得られる(Ahl79 第 7 章 §3、Sil09 VI §3 の練習問題)。$\sigma$$\Lambda$ にちょうど単純零点をもつ整関数で、任意の楕円関数は $\sigma$ の平行移動の積の商として表せる。

微分形式と周期

thm-weierstrass-p-uniformization$\phi$ により、$E_\Lambda$ 上の代数的な微分形式 $dx/y$$x\,dx/y$ はそれぞれ $dz$$\wp(z)\,dz$ に引き戻される。$dx/y$$E$ 上いたるところ正則で零点をもたない(不変微分)。$x\,dx/y=\wp(z)\,dz$$O$ にだけ 2 位の極をもち、$\wp$ の Laurent 展開に $z^{-1}$ の項がないのでそこでの留数は $0$ である(第 2 種の微分)。閉路 $\gamma_i$$z_0$ から $z_0+\omega_i$ への道の像)に沿う積分は
$$ \int_{\gamma_i}\frac{dx}{y}=\omega_i,\qquad\int_{\gamma_i}\frac{x\,dx}{y}=\int_{z_0}^{z_0+\omega_i}\wp(z)\,dz=-\eta_i $$
であり、Legendre の関係はこの周期行列の行列式が $\pm2\pi i$ であることを言う。これらの周期は楕円曲線の代数的 de Rham コホモロジー(de Rhamコホモロジー)と特異コホモロジーの比較同型を具体的に与え、周期の超越性(周期(代数多様体))の研究の出発点になる。
楕円関数の名は、楕円の弧長を表す楕円積分の逆関数として現れたことによる。$dz=dx/y$ なので、$\wp$ の逆関数は(平方根の分枝と符号の選び方を除いて)楕円積分 $\int_{\wp(z)}^\infty dx/\sqrt{4x^3-g_2x-g_3}$ である(Sil09 VI §1)。Jacobi が Theta関数の商として構成した楕円関数(Jacobiの楕円関数)と $\wp$ は互いに他方の有理式で表され、どちらを使っても楕円関数体は同じである(Ahl79 第 7 章、Lan87 序文)。

関連項目

参考文献

[1]
Joseph H. Silverman, The Arithmetic of Elliptic Curves, Graduate Texts in Mathematics 106, 2nd edition, Springer, 2009, III §2(弦と接線による群構造)、III §10(自己同型群)、VI §1(楕円積分)、VI §2(Liouville の定理群)、VI §3($\wp$ 関数の構成、楕円関数体、微分方程式、複素トーラスとの同型、$\zeta$・$\sigma$ 関数の練習問題)、VI §4(トーラスの間の写像)、VI §5(一意化定理)
[2]
Lars V. Ahlfors, Complex Analysis, 3rd ed., McGraw-Hill, 1979, 第 5 章 §2($\pi^2/\sin^2\pi z$ の部分分数展開)、第 7 章 §2(二重周期関数と Liouville の定理群)、第 7 章 §3(Weierstrass の理論:$\wp$、$\zeta$、$\sigma$、微分方程式、モジュラー関数 $\lambda$)
[3]
Serge Lang, Elliptic Functions, Graduate Texts in Mathematics 112, 2nd edition, Springer, 1987, 序文、第 1 章 §1(Liouville の定理群)、§2(Weierstrass 関数)、§3(加法定理)、§4(同型類)

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