有限モデル理論

同義語:finite model theory

概要

有限モデル理論(finite model theory)とは、論理式の真偽を有限構造だけで考え、有限構造のどの性質が論理式で書けるか、論理の基本定理がどう変わるかを調べる数理論理学の分野である。有限構造に制限するとコンパクト性定理は成り立たず、有限充足可能性は決定不能で(Trakhtenbrot の定理)、有限構造で妥当な一階の文の全体は帰納的可算でない。一方、グラフの一階の文は、頂点数 $n$ のグラフ全体の中で成り立つ割合が $n\to\infty$ で $0$ か $1$ に近づき(0-1 法則)、割合が $1$ に近づくのは可算ランダムグラフで真な文のときちょうどである。この帰結として、頂点の個数の偶奇はグラフの一階の文で定義できない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 一階述語論理, Ehrenfeucht–Fraïsséゲーム, コンパクト性定理(一階論理), グラフ

データベース、有限グラフ、有限の語や計算の記録のように、計算機科学や組合せ論で扱う構造はほとんどが有限である。有限モデル理論(finite model theory)は、論理式の真偽を有限構造だけで考えたときに、どの性質が論理式で書けるか、論理の基本定理がどう変わるかを調べる 数理論理学 の分野である。
有限構造に制限すると、一階論理の様子は大きく変わる。コンパクト性定理(一階論理) は成り立たず、有限構造で妥当な文の全体は帰納的可算でなくなる(Trakhtenbrot の定理)。一方で、有限構造に特有の強い定理もある。この記事では、有限構造上の定義可能性と有限充足可能性を定義し、コンパクト性の破れと、有限妥当な文の全体が帰納的可算でないことを示したうえで、主定理として グラフの 0-1 法則(一階の文は、頂点数 $n$ のグラフ全体の中で成り立つ割合が $n\to\infty$ で $0$ か $1$ に近づく)を証明する。その系として、頂点の個数の偶奇がグラフの一階の文で書けないことが従う。

定義

とくに断らない限り、言語 $L$ は有限個の関係記号と定数記号からなる一階言語とし、構造の台集合は空でないとする。台集合が有限な構造を 有限構造 という。

有限構造上の性質と定義可能性

有限な $L$ 構造のクラス $\mathcal K$ で、同型で閉じている($\mathcal M\in\mathcal K$ かつ $\mathcal M\cong\mathcal N$ なら $\mathcal N\in\mathcal K$)ものを、有限構造の 性質 という。$L$ の文 $\sigma$ が $\mathcal K$ を 定義する とは、すべての有限な $L$ 構造 $\mathcal M$ について
$$ \mathcal M\models\sigma\iff\mathcal M\in\mathcal K $$
が成り立つことをいう。一階の文で定義できる性質を 一階定義可能 であるという。

有限充足可能性・有限妥当性・スペクトル

文 $\sigma$ が有限なモデルをもつとき 有限充足可能、すべての有限構造で真であるとき 有限妥当 であるという。$\sigma$ の有限モデルの元の個数の集合 $\operatorname{spec}(\sigma):=\{n\ge1\mid\sigma\text{ は }n\text{ 元のモデルをもつ}\}$ を $\sigma$ の スペクトル という。

有限構造では、すべての文で真偽が一致すれば同型である(初等同値 の定理「有限構造は初等同値なら同型」)。したがって、同型でない 2 つの有限構造は必ずある一階の文で区別できる。有限モデル理論で問題になるのは、大きさを固定しない性質(すべての $n$ にわたる性質)が 1 つの文 で書けるかどうかである。

直感

一階の文は、量化記号の入れ子の深さ $k$(量化子階数)を固定すると、構造を「$k$ 個の元を順に選んで比べる」範囲でしか見られない(Ehrenfeucht–Fraïsséゲーム)。有限構造の性質のうち、元の個数の偶奇や連結性のように、構造全体を見渡さないと決まらないものは、一階の文では捉えにくい。0-1 法則は、この「局所的にしか見えない」ことを確率の言葉で定量化したもので、大きなグラフの局所的な姿はほとんどすべて同じであることを述べる。

一階論理の基本定理が成り立たないこと

コンパクト性

$\theta_n$ を「元が $n$ 個以上ある」を表す文 $\exists x_1\cdots\exists x_n\bigwedge_{i< j}\lnot\,x_i=x_j$ とする。

有限構造でのコンパクト性の破れ

文の集合 $\{\theta_n\mid n\ge1\}$ は、有限部分集合がすべて有限モデルをもつが、それ自身は有限モデルをもたない。

有限部分集合に現れる $\theta_n$ の $n$ の最大値を $N$ とすると、$N$ 元の構造がそのモデルである。全体のモデルは任意の $n$ について $n$ 元以上をもつので無限である。$\square$

コンパクト性定理(一階論理) の反例の表の 1 行目も同じ例である。コンパクト性に頼る一階論理の多くの手法(超準モデルの構成、型の実現)は、有限構造の世界では使えない。

有限妥当性と Trakhtenbrot の定理

一階の文の全体を自然数で符号化しておく。

Trakhtenbrot の定理

入力された一階の文(現れる記号は文ごとに異なってよく、関数記号を含んでもよい)が有限充足可能かどうかを判定する Turing 機械は存在しない。

出典

OLT26 Theorem 32.21(p. 514)である。証明は、Turing 機械の動作を記述する文を作り、機械が停止するときちょうどその文が有限モデルをもつようにして、停止問題 に帰着させる(この記事では証明しない)。

有限妥当な文の全体は帰納的可算でない

有限妥当な一階の文の全体は帰納的可算でない。したがって、証明できる文の全体が帰納的可算になる証明体系で、「$\vdash\sigma\iff\sigma$ は有限妥当」を満たすものはない。

段 1(有限充足可能性は半決定可能). 文 $\sigma$ と $n\ge1$ について、$\sigma$ に現れる記号の、台集合 $\{1,\dots,n\}$ 上の解釈は有限個しかない。各解釈で $\sigma$ が真かどうかは、量化記号を有限集合の上の有限の連言・選言として読めば計算で判定できる。$n=1,2,\dots$ と順に調べ、モデルが見つかれば停止する手順により、有限充足可能な文の全体 $\mathrm{FS}$ は帰納的可算である(帰納的可算集合 の定理「帰納的可算集合の言い換え」の 4)。同型な構造は同じ文を満たすので、$n$ 元のモデルがあれば台集合を $\{1,\dots,n\}$ にとれる。
段 2. 文 $\sigma$ が有限充足可能でないことは、$\lnot\sigma$ が有限妥当であることと同値である。有限妥当な文の全体 $\mathrm{FV}$ が帰納的可算だとすると、$\mathrm{FS}$ の補集合(文の符号でない自然数と、$\lnot\sigma\in\mathrm{FV}$ となる文 $\sigma$ の符号)も帰納的可算になる(帰納的可算集合 の命題「帰納的可算集合の閉包性」)。$\mathrm{FS}$ とその補集合がどちらも帰納的可算なので、$\mathrm{FS}$ は決定可能である(帰納的可算集合 の系「補集合が帰納的可算でない集合」)。これは thm-fmt-trakhtenbrot に反する。
後半は、そのような証明体系があれば $\mathrm{FV}$ が証明できる文の全体に一致して帰納的可算になることから従う。$\square$

すべての構造で妥当な文の全体は、Gödelの完全性定理 により証明を並べ上げて帰納的可算になる(OLT26 Theorem 32.18、p. 512)。有限構造に制限すると、向きが逆になる。段 1 により有限妥当でない文の全体が帰納的可算になり、有限妥当な文の全体は帰納的可算でない。

表現力の限界:ゲームによる方法

一階の文で書けないことを示す標準的な方法は Ehrenfeucht–Fraïsséゲーム である。量化子階数 $k$ の文で区別できない 2 つの有限構造で、片方だけが性質をもつものを各 $k$ について作ればよい。同記事の系「偶奇は一階の文で書けない」は、元が $2^k$ 個と $2^k+1$ 個の有限線形順序を比べて、順序の言語で元の個数の偶奇を定義する文がないことを示している。次の節の 0-1 法則は、グラフについて同じ種類の結論を、確率を使って一挙に与える。

グラフの 0-1 法則

設定

グラフの言語 $L_E:=\{E\}$($E$ は 2 項関係記号)を使い、2 つの文 $\forall x\,\lnot E(x,x)$ と $\forall x\forall y\,(E(x,y)\to E(y,x))$ を $\Gamma_{\mathrm{gr}}$ とする。$\Gamma_{\mathrm{gr}}$ のモデルは(単純)グラフにほかならない。$[n]:=\{1,\dots,n\}$ を頂点集合とするグラフの全体を $\mathcal G_n$ とすると、各グラフは $\binom n2$ 個の 2 元集合 $\{i,j\}$ のどれを辺にするかで決まるので、$\lvert\mathcal G_n\rvert=2^{\binom n2}$ である。$L_E$ の文 $\sigma$ について
$$ \mu_n(\sigma):=\frac{\lvert\{G\in\mathcal G_n\mid G\models\sigma\}\rvert}{\lvert\mathcal G_n\rvert} $$
とおく。$\mathcal G_n$ に一様な確率を入れると、相異なる 2 元集合が辺になる事象は互いに独立で、どれも確率 $\frac12$ である(各 2 元集合を辺にするかしないかを独立に公平な硬貨で決めることと同じ)。

拡大公理

$k,l\ge0$、$k+l\ge1$ について、文
$$ \chi_{k,l}:=\forall x_1\cdots\forall x_k\,\forall y_1\cdots\forall y_l\,\Bigl(\delta(\bar x,\bar y)\to\exists z\,\bigl(\textstyle\bigwedge_i\lnot\,z=x_i\land\bigwedge_j\lnot\,z=y_j\land\bigwedge_iE(x_i,z)\land\bigwedge_j\lnot E(y_j,z)\bigr)\Bigr) $$
を 拡大公理 という。ここで $\delta(\bar x,\bar y)$ は $x_1,\dots,x_k,y_1,\dots,y_l$ が相異なることを表す論理式である。$\chi_{k,l}$ は「相異なる頂点 $x_1,\dots,x_k,y_1,\dots,y_l$ をどう選んでも、$x_i$ のすべてと隣接し $y_j$ のどれとも隣接しない頂点 $z$ がある」ことを表す。$T_{\mathrm{rand}}:=\Gamma_{\mathrm{gr}}\cup\{\chi_{k,l}\mid k,l\ge0,\ k+l\ge1\}$ とおく。

拡大公理の確率

拡大公理はほとんど確実に成り立つ

$m:=k+l$ とする。$n> m$ のとき
$$ \mu_n(\lnot\chi_{k,l})\le n^m\bigl(1-2^{-m}\bigr)^{n-m} $$
であり、とくに $\mu_n(\chi_{k,l})\to1$($n\to\infty$)である。

$G\in\mathcal G_n$ が $\chi_{k,l}$ を満たさないのは、相異なる頂点の組 $(a_1,\dots,a_k,b_1,\dots,b_l)$ で、条件を満たす $z$ がないものがあるときである。そのような組の候補は $n(n-1)\cdots(n-m+1)\le n^m$ 個ある。
組を 1 つ固定する。組に入らない頂点 $c$ は $n-m$ 個あり、$c$ が条件を満たす($c$ がすべての $a_i$ と隣接し、どの $b_j$ とも隣接しない)事象を $A_c$ とする。$A_c$ は $m$ 個の 2 元集合 $\{a_i,c\},\{b_j,c\}$ が辺かどうかだけで決まり、確率は $2^{-m}$ である。$c\ne c'$ なら $A_c$ と $A_{c'}$ が関わる 2 元集合の集まりは交わらないので、事象 $A_c$ たちは独立である。よって条件を満たす $c$ が 1 つもない確率は $(1-2^{-m})^{n-m}$ である。すべての組について和をとれば、示すべき不等式を得る。
$q:=1-2^{-m}< 1$ とおくと、$n^mq^{n-m}=q^{-m}\cdot n^mq^n\to0$ である(多項式は指数関数より遅く増える)。$\square$

ランダムグラフの理論

ランダムグラフの理論の性質
  1. $T_{\mathrm{rand}}$ はモデルをもち、そのモデルはすべて無限である。
  2. $T_{\mathrm{rand}}$ の可算なモデルはすべて同型である。
  3. $T_{\mathrm{rand}}$ は完全である。

1:有限部分集合 $\Sigma\subset T_{\mathrm{rand}}$ に現れる拡大公理を $\chi^{(1)},\dots,\chi^{(r)}$ とする。lem-fmt-extension-prob により、十分大きい $n$ ですべての $i$ について $\mu_n(\lnot\chi^{(i)})< \frac1r$ となり、
$$ \mu_n\bigl(\lnot(\chi^{(1)}\land\cdots\land\chi^{(r)})\bigr)\le\sum_{i=1}^r\mu_n(\lnot\chi^{(i)})< 1 $$
なので、$\mathcal G_n$ のあるグラフが $\Sigma$ を満たす。コンパクト性定理(一階論理) により $T_{\mathrm{rand}}$ はモデルをもつ。$G$ が $n$ 個の頂点をもつ有限のモデルなら、$\chi_{n,0}$ で $x_1,\dots,x_n$ を全頂点とすると、それらと異なる $z$ がなく矛盾する。よってモデルは無限である。
2:$G,H$ を可算なモデルとする。$G$ の有限部分集合から $H$ への単射 $p$ で、定義域の $a,b$ について $E(a,b)\iff E(p(a),p(b))$ を満たすものを 部分同型 とよぶ。部分同型 $p$ と $a\in G$ について、$a$ を定義域に含む部分同型 $q\supset p$ があることを示す。$a$ が定義域にあれば $q=p$ とする。そうでなければ、$p$ の定義域のうち $a$ と隣接する頂点を $a_1,\dots,a_k$、隣接しない頂点を $b_1,\dots,b_l$ とする。$p$ の定義域が空なら $H$ の任意の頂点を $z$ とし、そうでなければ $H$ の拡大公理 $\chi_{k,l}$ を相異なる頂点 $p(a_1),\dots,p(a_k),p(b_1),\dots,p(b_l)$ に使って $z$ を得る。$q:=p\cup\{(a,z)\}$ は、$z$ が $p$ の値と異なり、$a$ と定義域の各頂点の隣接関係を $z$ と像の隣接関係が写すので、部分同型である。$G$ と $H$ を入れ替えれば、値域に指定の頂点を含むように広げることもできる。あとは カテゴリー性 の定理「Cantor の定理」の証明の段 3 と同じく、$G,H$ の元を交互に定義域・値域に入れて広げた部分同型の和をとれば、$G$ から $H$ への同型写像を得る。
3:言語 $L_E$ は有限で、1 により $T_{\mathrm{rand}}$ は無限モデルをもつので可算なモデルをもち(Löwenheim–Skolemの定理)、2 と合わせて $\aleph_0$-範疇的である。有限のモデルはないので、Löwenheim–Skolemの定理 の定理「Łoś–Vaught の判定法」により完全である。$\square$

$T_{\mathrm{rand}}$ の可算なモデルは同型を除いてただ 1 つであり、可算ランダムグラフ(Rado グラフ)とよばれる。

主定理

グラフの 0-1 法則

$L_E$ の任意の一階の文 $\sigma$ について、$\lim_{n\to\infty}\mu_n(\sigma)$ が存在して $0$ または $1$ に等しい。さらに、極限が $1$ であるのは $T_{\mathrm{rand}}\models\sigma$ のときちょうどである。

lem-fmt-trand の 3 により、$T_{\mathrm{rand}}\models\sigma$ か $T_{\mathrm{rand}}\models\lnot\sigma$ のどちらかが成り立つ。
$T_{\mathrm{rand}}\models\sigma$ とする。コンパクト性定理(一階論理) の系「帰結の有限性」により、有限部分集合 $T_0\subset T_{\mathrm{rand}}$ で $T_0\models\sigma$ となるものがある。$T_0$ に現れる拡大公理を $\chi^{(1)},\dots,\chi^{(r)}$ とする。$\mathcal G_n$ のグラフはどれも $\Gamma_{\mathrm{gr}}$ を満たすので、$\sigma$ を満たさないグラフはある $\chi^{(i)}$ を満たさない。よって
$$ 1-\mu_n(\sigma)=\mu_n(\lnot\sigma)\le\sum_{i=1}^r\mu_n(\lnot\chi^{(i)})\to0 $$
であり(lem-fmt-extension-prob)、$\mu_n(\sigma)\to1$ である。
$T_{\mathrm{rand}}\models\lnot\sigma$ なら、同じ議論を $\lnot\sigma$ に使って $\mu_n(\lnot\sigma)\to1$、すなわち $\mu_n(\sigma)\to0$ である。2 つの場合は両立しないので、極限が $1$ であるのは前者のときちょうどである。$\square$

可算ランダムグラフ $R$ は $T_{\mathrm{rand}}$ のモデルで、$T_{\mathrm{rand}}$ は完全なので、$T_{\mathrm{rand}}\models\sigma$ は $R\models\sigma$ と同値である。したがって、一階の文が「ほとんどすべての大きな有限グラフ」で成り立つことと、ただ 1 つの無限グラフ $R$ で成り立つことは同値である。 この定理は Fag76 Theorem 2・Corollary 3・Theorem 4(pp. 52–53)による。同論文は有限個の関係記号からなる任意の言語で、台集合 $[n]$ 上の構造全体の一様な確率について同じ結論を示し(Theorem 4)、グラフの場合を §4 の 6(p. 57)で扱っている。

頂点の個数の偶奇

$L_E$ の一階の文 $\sigma$ で、すべての有限グラフ $G$ について「$G\models\sigma\iff G$ の頂点の個数は偶数」となるものは存在しない。とくに、等号だけの言語の文で元の個数の偶奇を定義するものもない。

そのような $\sigma$ があれば、$\mathcal G_n$ のグラフはすべて頂点が $n$ 個なので、$\mu_n(\sigma)$ は $n$ が偶数なら $1$、奇数なら $0$ であり、極限をもたない。これは thm-fmt-zero-one に反する。等号だけの言語の文は $L_E$ の文でもあり、グラフで頂点の個数の偶奇を定義してしまうので、同じく存在しない。$\square$

ほとんど確実な性質の例
  1. 「三角形をもつ」$\exists x\exists y\exists z\,(E(x,y)\land E(y,z)\land E(x,z))$ は $\mu_n\to1$ である。$T_{\mathrm{rand}}$ のモデルで頂点 $a$ をとり、$\chi_{1,0}$ で $a$ と隣接する $b$ を、$\chi_{2,0}$ で $a,b$ の両方と隣接する $c$ をとれば三角形になるので、$T_{\mathrm{rand}}\models$ この文である。
  2. 「孤立点がある」$\exists x\forall y\,\lnot E(x,y)$ は $\mu_n\to0$ である。$\chi_{1,0}$ によりどの頂点にも隣接する頂点がある。
  3. 「相異なるどの 2 頂点も、ともに隣接する頂点をもつ」(このときグラフの直径は $2$ 以下)は、$\chi_{2,0}$ そのものなので $\mu_n\to1$ である。

0-1 法則は、一階の文が書けない性質を示す道具になる。ある性質の成り立つ割合が $n\to\infty$ で $0$ にも $1$ にも近づかなければ、その性質は一階定義可能でない。逆に、割合が $1$ に近づく性質については、この方法では何も分からない。たとえば直径 $2$ 以下のグラフは連結なので、ex-fmt-examples の 3 により連結なグラフの割合は $1$ に近づき、連結性が一階定義可能でないことは 0-1 法則からは出ない。

反例:条件を外すと成り立たない

外す条件反例成り立たなくなること
thm-fmt-zero-one の「一階の文」二階の文 $\exists P\,\forall x\,\exists!y\,(\lnot\,x=y\land P(x,y)\land P(y,x))$$\mu_n$ が収束すること
thm-fmt-zero-one の言語 $L_E$(関係記号だけ)に定数記号を加える定数記号 $c,d$ を加えた言語の文 $E(c,d)$極限が $0$ か $1$ であること
cor-fmt-finval の「有限構造で妥当」すべての構造で妥当な一階の文の全体帰納的可算でないこと
反例の確かめ

1 行目:$\exists!y$ は「ただ 1 つの $y$ がある」を表す。$n$ が偶数なら、$[n]$ を 2 元ずつの組に分けて同じ組の 2 元を $P$ で結べば文は真である。逆に文が真なら、各 $x$ に対し条件を満たすただ 1 つの $y$ を $f(x)$ とおくと、$y=f(x)$ にとって $x$ も条件を満たすので $f(f(x))=x$、$f(x)\ne x$ である。よって $[n]$ は 2 元集合 $\{x,f(x)\}$ に分かれ、$n$ は偶数である。この文は辺によらないので、$\mu_n$ は $n$ が偶数で $1$、奇数で $0$ である(Fag76 §4 の 1、p. 55)。一階の文では cor-fmt-parity によりこのようなことは起こらない。
2 行目:グラフと 2 頂点 $c,d$ の解釈の組 $(G,c,d)$($G\in\mathcal G_n$、$c,d\in[n]$)の全体に一様な確率を入れる。$c=d$ となる確率は $\frac1n$ で、そのとき $E(c,c)$ は偽である。$c\ne d$ のとき $\{c,d\}$ が辺である確率は $\frac12$ なので、$E(c,d)$ が真である確率は $\frac12\bigl(1-\frac1n\bigr)\to\frac12$ である。
3 行目:Gödelの完全性定理 により、妥当な文は証明可能な文に一致し、証明を順に並べ上げることで帰納的可算になる(OLT26 Theorem 32.18、p. 512)。

関連項目

参考文献

[1]
Ronald Fagin, Probabilities on finite models, The Journal of Symbolic Logic, 1976, §2 の拡大公理の集合 T と Theorem 1(Gaifman)p. 51、Theorem 2・Corollary 3 p. 52、Theorem 4・Corollary 5 p. 53、§4 の 1(二階の文では収束しない例)p. 55、§4 の 6(グラフの場合)p. 57

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