λ環

同義語:λ-ringラムダ環λ-環

概要

λ環(λ-ring)とは、可換環 $R$ に演算の列 $\lambda^n\colon R\to R$ を添え、ベクトル束や表現の外冪 $\bigwedge^n$ の計算規則を公理化した構造である。加法との両立 $\lambda^n(x+y)=\sum_{i+j=n}\lambda^i(x)\lambda^j(y)$ だけを課したものを pre-λ環、さらに積 $\lambda^n(xy)$ と反復 $\lambda^n(\lambda^m(x))$ が普遍多項式で書けることを課したものを(特殊)λ環という。代表例は二項係数 $\binom{a}{n}$ を入れた $\mathbb{Z}$、外冪を入れた K 群 $K_0(X)$ と表現環 $R(G)$ である。冪和に当たる Adams 演算 $\psi^k$ が定まる。Grothendieck が Chern 類の理論で導入した。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 可換環, 形式的冪級数, 対称多項式, 二項係数, Grothendieck群

定義

λ環は、ベクトル束や群の表現の外冪 $\bigwedge^n$ がもつ代数的性質を、可換環の上の演算の列 $\lambda^0,\lambda^1,\lambda^2,\dots$ として公理化したものである。まず加法との両立だけを要求する pre-λ環を定め、次に対称多項式から作る普遍多項式を用いて、積と反復に関する条件を加えた(特殊)λ環を定める。以下、環はすべて単位元をもつ可換環とし、$R[\![t]\!]$ で $R$ 係数の形式的冪級数環、$\mathbb{N}=\{0,1,2,\dots\}$ で非負整数の全体を表す。

pre-λ環

可換環 $R$ と写像の列 $\lambda^n\colon R\to R$($n\in\mathbb{N}$)の組が pre-λ環(pre-λ-ring)であるとは、すべての $x,y\in R$ について次が成り立つことをいう。

  1. $\lambda^0(x)=1$。
  2. $\lambda^1(x)=x$。
  3. $\lambda^n(x+y)=\sum_{i+j=n}\lambda^i(x)\lambda^j(y)$($n\in\mathbb{N}$)。
    写像 $\lambda^n$ を λ演算(λ-operation)という。$x\in R$ に対し形式的冪級数
    $$ \lambda_t(x):=\sum_{n\ge0}\lambda^n(x)\,t^n=1+xt+\lambda^2(x)t^2+\cdots\in R[\![t]\!] $$
    を $x$ の全λ類(total λ-class)という。

条件 3 は、外冪の分解 $\bigwedge^n(V\oplus W)\cong\bigoplus_{i+j=n}\bigwedge^iV\otimes\bigwedge^jW$ の形を写したものである。全λ類を使えば、この条件は級数の積の等式にまとまる。

全λ類による言い換え

$R$ を可換環、$\lambda^n\colon R\to R$($n\in\mathbb{N}$)を写像の列とし、$\lambda_t(x):=\sum_{n\ge0}\lambda^n(x)t^n$ とおく。次は同値である。

  1. $(R,(\lambda^n)_n)$ は pre-λ環である。
  2. $\lambda_t$ は、加法群 $(R,+)$ から、$R[\![t]\!]$ の定数項 $1$ の級数のなす乗法群 $\Lambda(R):=1+tR[\![t]\!]$ への群準同型であり、すべての $x\in R$ について $\lambda_t(x)\equiv1+xt\pmod{t^2}$ を満たす。
    このとき $\lambda^n(0)=0$($n\ge1$)、$\lambda_t(-x)=\lambda_t(x)^{-1}$ である。

まず $\Lambda(R)$ が乗法群であることを確かめる。定数項 $1$ の級数どうしの積は定数項 $1$ である。$f=1+\sum_{n\ge1}a_nt^n$ に対し、$b_0=1$、$b_n=-\sum_{k=1}^{n}a_kb_{n-k}$($n\ge1$)で係数を帰納的に定めて $g=\sum_{n\ge0}b_nt^n$ とおくと、$fg$ の $t^n$ の係数は $n\ge1$ で $b_n+\sum_{k=1}^na_kb_{n-k}=0$ なので $fg=1$ である。よって $\Lambda(R)$ は $R[\![t]\!]^\times$ の部分群である。
1 ⇒ 2:条件 1・2 は $\lambda_t(x)\equiv1+xt\pmod{t^2}$ そのものである。級数の積 $\lambda_t(x)\lambda_t(y)$ の $t^n$ の係数は $\sum_{i+j=n}\lambda^i(x)\lambda^j(y)$ なので、条件 3 は $\lambda_t(x+y)=\lambda_t(x)\lambda_t(y)$ と同値であり、$\lambda_t$ は群準同型である。
2 ⇒ 1:同じ係数比較を逆にたどればよい。
最後の主張。群準同型は単位元を単位元に、逆元を逆元に送るので、$\lambda_t(0)=1$ すなわち $\lambda^n(0)=0$($n\ge1$)、および $\lambda_t(-x)=\lambda_t(x)^{-1}$ である。$\square$

積と反復に関する条件を書くために、対称多項式から普遍多項式を作る。

λ環の普遍多項式

変数 $x_1,\dots,x_p$ の $k$ 次基本対称式を $e_k(x)$ と書く($k>p$ のとき $e_k(x)=0$)。$n,m\ge1$ とし、$p,q\ge n$(第 2 式では $p\ge nm$)として、整数係数の多項式 $P_n$、$P_{n,m}$ を
$$ \prod_{i=1}^{p}\prod_{j=1}^{q}(1+x_iy_jt)=\sum_{k\ge0}P_k\bigl(e_1(x),\dots,e_k(x);e_1(y),\dots,e_k(y)\bigr)\,t^k, $$
$$ \prod_{1\le i_1<\cdots< i_m\le p}(1+x_{i_1}\cdots x_{i_m}t)=\sum_{k\ge0}P_{k,m}\bigl(e_1(x),\dots,e_{km}(x)\bigr)\,t^k $$
の $t^n$ の係数として定める。これらが存在して一意であり、変数の個数 $p,q$ によらないことは lem-lambda-ring-universal-polynomials による。小さい場合は
$$ P_1=e_1e_1',\qquad P_2=e_1^2e_2'+e_2e_1'^2-2e_2e_2',\qquad P_{n,1}=e_n,\qquad P_{2,2}=e_1e_3-e_4 $$
である($e_k=e_k(x)$、$e_k'=e_k(y)$)。

普遍多項式の存在と一意性

def-lambda-ring-universal-polynomials の $P_n$、$P_{n,m}$ は整数係数多項式として存在し一意であり、変数の個数 $p,q$ の取り方($p,q\ge n$、第 2 式では $p\ge nm$)によらない。

第 1 式の左辺の $t^n$ の係数 $c_n$ は、$pq$ 個の積 $x_iy_j$ の $n$ 次基本対称式であり、$x_1,\dots,x_p$ の置換でも $y_1,\dots,y_q$ の置換でも不変な整数係数多項式である。対称多項式の基本定理(対称多項式)により、$x$ について対称な $\mathbb{Z}[y_1,\dots,y_q][x_1,\dots,x_p]$ の元は $e_1(x),\dots,e_p(x)$ の $\mathbb{Z}[y]$ 係数多項式として一意に書け、その各係数は $y$ について対称なので、さらに $e_1(y),\dots,e_q(y)$ の整数係数多項式として一意に書ける。$c_n$ は $x$ について $n$ 次斉次(斉次多項式)であり、$e_{k_1}(x)\cdots e_{k_r}(x)$ は $k_1+\cdots+k_r$ 次斉次なので、一意性から表示には $k_1+\cdots+k_r=n$ の単項式しか現れず、とくに $e_k(x)$($k>n$)は現れない。$y$ についても同様である。$p$ によらないこと:$x_{p+1}=0$ を代入すると左辺は $p$ 変数の式に戻り、$e_k(x_1,\dots,x_p,0)=e_k(x_1,\dots,x_p)$ なので、$p+1$ 変数で得た多項式は $p$ 変数でも同じ等式を満たし、一意性により一致する。$q$ についても同じである。第 2 式も、$m$ 個の変数の積すべての $n$ 次基本対称式が $x$ の置換で不変であることから同じ議論で従い、$x$ について $nm$ 次斉次なので $e_k(x)$($k>nm$)は現れない。$\square$

λ環と線元

pre-λ環 $R$ が λ環(λ-ring。特殊λ環、special λ-ring ともいう)であるとは、すべての $x,y\in R$ と $n,m\ge1$ について次が成り立つことをいう。

  1. $\lambda^n(1)=0$($n\ge2$)。
  2. $\lambda^n(xy)=P_n\bigl(\lambda^1(x),\dots,\lambda^n(x);\lambda^1(y),\dots,\lambda^n(y)\bigr)$。
  3. $\lambda^n(\lambda^m(x))=P_{n,m}\bigl(\lambda^1(x),\dots,\lambda^{nm}(x)\bigr)$。
    pre-λ環の間の環準同型 $f\colon R\to S$ で $f\circ\lambda^n=\lambda^n\circ f$($n\in\mathbb{N}$)を満たすものを λ準同型(λ-homomorphism)という。pre-λ環 $R$ の元 $\ell$ が線元(line element)であるとは、$\lambda_t(\ell)=1+\ell t$、すなわち $\lambda^n(\ell)=0$($n\ge2$)が成り立つことをいう。

条件 2・3 は、$x$ が線元 $\ell_1,\dots,\ell_p$ の和、$y$ が線元 $m_1,\dots,m_q$ の和であるときに $xy=\sum_{i,j}\ell_im_j$、$\lambda^m(x)=\sum_{i_1<\cdots< i_m}\ell_{i_1}\cdots\ell_{i_m}$ が線元の和であってほしい、という要請を、線元に分解できない元にも普遍多項式の形で課したものである。λ環では $1$ は線元であり、線元の積は線元である。実際、条件 2 を $\lambda^k(\ell)=\lambda^k(m)=0$($k\ge2$)に適用すると、$P_n(\ell,0,\dots;m,0,\dots)$ は $x=(\ell,0,\dots,0)$、$y=(m,0,\dots,0)$ を代入した $\prod_{i,j}(1+x_iy_jt)=1+\ell mt$ の $t^n$ の係数なので、$\lambda^n(\ell m)=0$($n\ge2$)である。

用語の対応

λ環の概念は Grothendieck が Chern類の理論の中で導入した(Gro58 §4)。そこでは条件 1〜3 を課さないもの(本記事の pre-λ環)を λ-anneau、課したものを λ-anneau spécial と呼んでいる。Atiyah–Tall AT69 と Knutson Knu73 もこれに従い、λ-ring と special λ-ring という語を使う。一方、Yau Yau10 をはじめ近年の文献では、条件を課さないものを pre-λ-ring、課したものを単に λ-ring と呼ぶ。本記事は後者に従う。文献を読むときは、「λ環」が特殊性を含むかどうかをその文献の定義で確かめる必要がある。

直感

ベクトル束や表現の外冪 $\bigwedge^n$ は、直和を「畳み込み」の形で分配し、線束(1 次元表現)の $2$ 次以上の外冪は消える。λ環は、この計算規則だけを抜き出して環の上の演算にしたものである。全λ類 $\lambda_t$ は「加法を積に変える」写像であり、線元は $\lambda_t(\ell)=1+\ell t$ という最も短い全λ類をもつ元である。分裂原理により、ベクトル束の Chern 類や外冪の計算は「線束の和」の場合に帰着できる。λ環の条件 2・3 は、その帰着で得られる対称式の恒等式を、線元の和に分解できない元にまで公理として要請したものである。したがってλ環では、任意の元をあたかも線元 $\ell_1,\dots,\ell_p$ の和であるかのように扱い、$\lambda^n(x)$ を「$\ell_i$ の $n$ 次基本対称式」、Adams演算 $\psi^k(x)$ を「冪和(冪和対称多項式)$\sum_i\ell_i^k$」とみなして計算できる。

例と反例

整数環の二項係数によるλ構造

整数環 $\mathbb{Z}$ に $\lambda^n(a):=\binom{a}{n}=\dfrac{a(a-1)\cdots(a-n+1)}{n!}$(二項係数。$a\in\mathbb{Z}$、$n\in\mathbb{N}$)と定めると、$\mathbb{Z}$ はλ環である。線元は $0$ と $1$ だけである。さらに、任意のλ環 $R$ に対し、単位射 $\mathbb{Z}\to R$ はλ準同型であり、$\lambda_t(a\cdot1_R)=(1+t)^a$ である。

pre-λ環であること。$a\mapsto(1+t)^a$ は加法群 $\mathbb{Z}$ から乗法群 $\Lambda(\mathbb{Z})$ への群準同型であり、$(1+t)^a\equiv1+at\pmod{t^2}$ である。$(1+t)^a$ の $t^n$ の係数は、$a\ge0$ なら二項定理により $\binom an$ であり、$a=-b<0$ なら $(1+t)^{-1}=\sum_{n}(-1)^nt^n$ の $b$ 乗の係数として $(-1)^n\binom{b+n-1}{n}=\binom{-b}{n}$ である。よって prop-lambda-ring-total-class により、$\lambda^n(a)=\binom an$ は pre-λ構造である。
条件 1。$\lambda^n(1)=\binom1n=0$($n\ge2$)。
条件 2。まず $a,b\ge0$ とする。def-lambda-ring-universal-polynomials の第 1 式で $p,q\ge\max\{a,b,n\}$ をとり、$x_1=\cdots=x_a=1$、$x_{a+1}=\cdots=x_p=0$、$y_1=\cdots=y_b=1$、$y_{b+1}=\cdots=y_q=0$ を代入する。$e_k(x)=\binom ak=\lambda^k(a)$、$e_k(y)=\binom bk=\lambda^k(b)$ であり、左辺は $(1+t)^{ab}$ になる($x_iy_j=1$ となる対がちょうど $ab$ 組あり、他の因子は $1$)。$t^n$ の係数を比べると
$$ \lambda^n(ab)=\binom{ab}{n}=P_n\bigl(\lambda^1(a),\dots,\lambda^n(a);\lambda^1(b),\dots,\lambda^n(b)\bigr) $$
が $a,b\ge0$ で成り立つ。両辺は $a,b$ の有理数係数多項式である。$\mathbb{Q}[a,b]$ の元 $F$ が $\mathbb{N}^2$ 上で消えるなら $F=0$ である。実際、各 $a\in\mathbb{N}$ について $F(a,b)$ は $b$ の多項式として無限個の根をもつので $0$ であり、したがって $F$ を $b$ の冪で整理したときの各係数($a$ の多項式)は無限個の根をもつので $0$ である。よって等式は任意の $a,b\in\mathbb{Z}$ で成り立つ。
条件 3。$a\ge0$ とし、第 2 式で $p\ge\max\{a,nm\}$、$x_1=\cdots=x_a=1$、$x_{a+1}=\cdots=x_p=0$ を代入する。積 $x_{i_1}\cdots x_{i_m}$ は $\{i_1,\dots,i_m\}\subset\{1,\dots,a\}$ のとき $1$、そうでないとき $0$ なので、左辺は $(1+t)^{\binom am}$ である。$t^n$ の係数を比べると $\lambda^n(\lambda^m(a))=\binom{\binom am}{n}=P_{n,m}(\binom a1,\dots,\binom a{nm})$ が $a\ge0$ で成り立ち、両辺は $a$ の有理数係数多項式なので、任意の $a\in\mathbb{Z}$ で成り立つ。
線元。$\lambda^2(a)=\binom a2=a(a-1)/2$ が $0$ になるのは $a=0,1$ のときだけであり、そのとき $\lambda_t(a)=(1+t)^a$ は $1$、$1+t$ である。
最後の主張。λ環 $R$ では条件 1 により $1_R$ は線元なので $\lambda_t(1_R)=1+t$ であり、$\lambda_t$ が群準同型であることから $\lambda_t(a\cdot1_R)=(1+t)^a$ である。この $t^n$ の係数は $\binom an\cdot1_R$ なので、単位射は λ演算と可換である。$\square$

反例:特殊でない pre-λ構造

$\mathbb{Z}$ に $\lambda_t(a):=(1+t+t^2)^a$ で pre-λ構造を入れる。$a\mapsto(1+t+t^2)^a$ は群準同型で $(1+t+t^2)^a\equiv1+at\pmod{t^2}$ なので、prop-lambda-ring-total-class によりこれは pre-λ構造である。しかし $\lambda^2(1)=1\ne0$ なので def-lambda-ring-special の条件 1 を満たさず、条件 2 も $\lambda^2(1\cdot1)=1$ に対し $P_2(1,1;1,1)=1+1-2=0$ なので破れる。この例は「pre-λ環である」という性質を満たし、「λ環である」という性質を満たさず、「pre-λ環ならばλ環である」という含意を破る。同じ環 $\mathbb{Z}$ に prop-lambda-ring-integers とは別の pre-λ構造が入ることも示している。
また、$0$ でない環 $R$ で「すべての元が線元」となる pre-λ構造は存在しない。$\lambda_t(x)=1+xt$ がすべての $x$ で成り立てば $\lambda_t(x+y)=1+(x+y)t$ と $\lambda_t(x)\lambda_t(y)=1+(x+y)t+xyt^2$ が等しいので $xy=0$、とくに $1=1\cdot1=0$ となるからである。

ベクトル束のK群

$X$ をスキームとし、$K_0(X)$ を $X$ 上の有限階数ベクトル束(局所自由 $\mathcal{O}_X$ 加群、局所自由層)のGrothendieck群とする。すなわち、ベクトル束の同型類を生成元とし、短完全列 $0\to E'\to E\to E''\to0$ ごとに関係 $[E]=[E']+[E'']$ を課したアーベル群であり、テンソル積 $[E][F]:=[E\otimes F]$ により可換環になる。外冪により
$$ \lambda^n([E]):=[\textstyle\bigwedge^nE] $$
と定める。これが $K_0(X)$ の上で定まることを示す。同型類を生成元とする自由アーベル群 $F$ から $\Lambda(K_0(X))$ への群準同型を $E\mapsto\sum_n[\bigwedge^nE]t^n$ で定める(各係数は $K_0(X)$ の一つの元なので、これは形式的冪級数として意味をもつ)。短完全列 $0\to E'\to E\to E''\to0$ に対し、$\bigwedge^nE$ は部分束による減少フィルトレーション $\bigwedge^nE=F^0\supset F^1\supset\cdots\supset F^{n+1}=0$ で $F^i/F^{i+1}\cong\bigwedge^iE'\otimes\bigwedge^{n-i}E''$ となるものをもつ(Har77 II, Exercise 5.16)。$[\,\cdot\,]$ は短完全列について加法的なので $[\bigwedge^nE]=\sum_{i+j=n}[\bigwedge^iE'][\bigwedge^jE'']$、すなわち $E$ の像は $E'$ の像と $E''$ の像の積である。よってこの群準同型は関係 $[E]-[E']-[E'']$ を消し、群準同型 $\lambda_t\colon K_0(X)\to\Lambda(K_0(X))$ を誘導する。$t$ の係数は $[\bigwedge^1E]=[E]$ なので $\lambda_t(x)\equiv1+xt\pmod{t^2}$ であり、prop-lambda-ring-total-class により $K_0(X)$ は pre-λ環である。線束 $L$ は $\bigwedge^nL=0$($n\ge2$)なので線元である。
$X=\operatorname{Spec}k$($k$ は体)のときは、階数 $K_0(k)\to\mathbb{Z}$ が環同型であり、$\dim\bigwedge^nk^r=\binom rn$ なので、prop-lambda-ring-integers のλ環 $\mathbb{Z}$ に戻る。位相空間上の複素ベクトル束の K 群 $K^0(X)$(K理論)も同じ構成で pre-λ環になる。

ベクトル束のK群はλ環

$X$ を任意のスキーム(またはコンパクトHausdorff空間)とする。ex-lambda-ring-k0 の pre-λ構造により $K_0(X)$ はλ環である。

K群の特殊性の出典

証明は分裂原理による。任意の有限個のベクトル束に対し、それらの引き戻しがすべて線束の逐次拡大になるような射 $f\colon X'\to X$ で $f^*\colon K_0(X)\to K_0(X')$ が単射なもの(旗束)が存在する。旗束(旗多様体の相対版)の構成は Ful98 §3.2、$f^*$ の単射性は射影束定理(階数 $r$ の $E$ について $K_0(\mathbb{P}(E))$ が $K_0(X)$ 上 $1,\xi,\dots,\xi^{r-1}$ を基底とする自由加群であること。SGA6)による。$K_0(X')$ の中で各ベクトル束の類は線元の和になり、$1=[\mathcal{O}_{X'}]$ は線元、線元(線束の類)の積は線元なので、後述の prop-lambda-ring-verification が適用できる。スキームの K 群のλ環構造は SGA6(Exposé V のλ環の一般論と、それに続く射影束定理による $K_0(X)$ への適用)、位相的 K 理論については AT69 §1 を参照。Gro58 §4 は、階数と全 Chern 類の組を対応させる完備 Chern 類が $K_0(X)$ からのλ準同型になることを、この構造の応用として述べている。

有限群の表現環

$G$ を有限群とし、$R(G)$ を $G$ の有限次元複素群の表現の Grothendieck 群(表現環)とする。Maschkeの定理により複素表現の短完全列はすべて分裂するので、$R(G)$ は既約表現の同型類を基底とする自由アーベル群であり、関係は $[V'\oplus V'']=[V']+[V'']$ だけである。テンソル積で環になり、$\lambda^n([V]):=[\bigwedge^nV]$ と定める。表現の同型 $\bigwedge^n(V'\oplus V'')\cong\bigoplus_{i+j=n}\bigwedge^iV'\otimes\bigwedge^jV''$ により $\lambda_t(V'\oplus V'')=\lambda_t(V')\lambda_t(V'')$ なので、ex-lambda-ring-k0 と同じ議論で $R(G)$ は pre-λ環である。1 次元表現は線元である。
$V$ の指標を $\chi_V$ とすると、$g\in G$ は $V$ の上で対角化可能で、その固有値を $\zeta_1,\dots,\zeta_d$ とすれば $\chi_{\bigwedge^nV}(g)=e_n(\zeta_1,\dots,\zeta_d)$、すなわち
$$ \lambda_t(\chi_V)(g)=\det\bigl(1+t\,\rho_V(g)\bigr)=\prod_{i=1}^d(1+\zeta_it) $$
である。$R(G)$ がλ環であることは prop-lambda-ring-representation-ring で示す。

性質

普遍λ環と検証原理

λ環の条件 2・3 を個々の環で直接確かめるのは煩雑である。標準的な方法は、任意の可換環 $A$ に対して $\Lambda(A)=1+tA[\![t]\!]$ 自身がλ環になるという Grothendieck の定理を経由することである。

普遍λ環

$A$ を可換環とし、$\Lambda(A)=1+tA[\![t]\!]$ の元 $f=1+\sum_{n\ge1}f_nt^n$ の係数を $f_n$ と書く。$\Lambda(A)$ に、加法を級数の積、乗法 $\circ$ を「$f\circ g$ の $t^n$ の係数が $P_n(f_1,\dots,f_n;g_1,\dots,g_n)$」、λ演算を「$\lambda^n_\Lambda(f)$ の $t^m$ の係数が $P_{m,n}(f_1,\dots,f_{mn})$」で定める。このとき $\Lambda(A)$ は、加法単位 $1$、乗法単位 $1+t$ をもつλ環であり、$1+at$($a\in A$)はその線元で $(1+at)\circ(1+bt)=1+abt$ を満たす。さらに、pre-λ環 $R$ がλ環であることは、$\lambda_t\colon R\to\Lambda(R)$ がλ準同型であることと同値である。

普遍λ環の出典

$\circ$ が結合的・可換・分配的であることと条件 2・3 の検証は、$P_n$、$P_{n,m}$ を対称関数の恒等式として確かめる計算であり、証明は Knu73 Chapter I、AT69 §1、Yau10 に譲る。対称関数の言葉では、$\Lambda(A)$ は対称関数環 $\mathbb{Z}[e_1,e_2,\dots]$ の表す関手 $A\mapsto\operatorname{Hom}(\mathbb{Z}[e_1,e_2,\dots],A)$ であり、加法と $\circ$ は対称関数環の 2 つの余積($e_n\mapsto\sum_{i+j=n}e_i\otimes e_j$ と、$\prod_{i,j}(1+x_iy_jt)$ の展開で定まるもの)に、$\lambda^n_\Lambda$ はプレチズム(対称関数の合成)に対応する(Mac95 Chapter I)。線元に関する主張は、$f=1+at$ では $f_k=0$($k\ge2$)なので、$P_n(a,0,\dots;b,0,\dots)$ と $P_{m,n}(a,0,\dots)$ がそれぞれ $1+abt$ と $1$ の係数になることから、定義だけで従う。最後の同値は、$\lambda_t$ が環準同型であることが「$\lambda_t(1)=1+t$ と $\lambda_t(xy)=\lambda_t(x)\circ\lambda_t(y)$」すなわち条件 1・2 であり、λ演算と可換であることが「$\lambda_t(\lambda^n(x))=\lambda^n_\Lambda(\lambda_t(x))$」すなわち条件 3 であることから、係数比較で直ちに従う。

線元のモノイド環はλ環

$M$ を可換モノイドとし、モノイド環 $\mathbb{Z}[M]$ に、各 $m\in M$ を線元とする pre-λ構造、すなわち $\lambda_t\bigl(\sum_mc_mm\bigr):=\prod_{m}(1+mt)^{c_m}$ を入れる。このとき $\mathbb{Z}[M]$ はλ環である。

$\mathbb{Z}[M]$ の加法群は $M$ を基底とする自由アーベル群なので、$m\mapsto1+mt$ は群準同型 $\lambda_t\colon\mathbb{Z}[M]\to\Lambda(\mathbb{Z}[M])$ に一意に延び、$t$ の係数は $\sum_mc_mm$ である。よって prop-lambda-ring-total-class により pre-λ構造である。thm-lambda-ring-universal-lambda により、$\lambda_t$ はλ準同型であればよい。乗法性:$\lambda_t(m)\circ\lambda_t(m')=(1+mt)\circ(1+m't)=1+mm't=\lambda_t(mm')$ であり、$\lambda_t$ は加法的、$\circ$ は加法(級数の積)について双線型なので、$\lambda_t(xy)=\lambda_t(x)\circ\lambda_t(y)$ が $M$ の元の整数係数一次結合 $x,y$ すべてで成り立つ。$\lambda_t(1)=1+t$ は $1\in M$ が線元であることそのものである。λ演算との可換性:$\lambda_t$ は環準同型なので、係数ごとに $\lambda_t$ を施す写像 $(\lambda_t)_*\colon\Lambda(\mathbb{Z}[M])\to\Lambda(\Lambda(\mathbb{Z}[M]))$ が定まり、これは級数の積を保つ。示すべき $\lambda_t(\lambda^n(x))=\lambda^n_\Lambda(\lambda_t(x))$($n\in\mathbb{N}$)は、新しい変数 $s$ を使って $(\lambda_t)_*(\lambda_s(x))=\lambda^\Lambda_s(\lambda_t(x))$ と一つの等式にまとまる。両辺は $x$ について、加法群 $\mathbb{Z}[M]$ から乗法群 $\Lambda(\Lambda(\mathbb{Z}[M]))$ への群準同型である。左辺は群準同型 $\lambda_s$ と積を保つ $(\lambda_t)_*$ の合成であり、右辺は群準同型 $\lambda_t$ と、$\Lambda(\mathbb{Z}[M])$ が pre-λ環であることによる群準同型 $\lambda^\Lambda_s$ の合成だからである。したがって生成元 $m\in M$ で確かめれば十分である。$\Lambda(\Lambda(\mathbb{Z}[M]))$ の元は、$\Lambda(\mathbb{Z}[M])$ の乗法単位 $1+t$ を定数項とする $s$ の級数である。左辺は $\lambda_s(m)=1+ms$ の係数に $\lambda_t$ を施したもの、すなわち $\lambda_t(1)=1+t$ を定数項、$\lambda_t(m)=1+mt$ を $s$ の係数とする $(1+t)+(1+mt)s$ である。右辺は、$\lambda^n_\Lambda(1+mt)$ が $n=0$ で $1+t$、$n=1$ で $1+mt$、$n\ge2$ で $1$($\Lambda(\mathbb{Z}[M])$ の加法単位)なので、同じく $(1+t)+(1+mt)s$ である。$\square$

検証原理

$R$ を pre-λ環とする。$R$ の有限個の元 $x_1,\dots,x_r$ に対し、pre-λ環 $R'$ と単射λ準同型 $\iota\colon R\to R'$ で、$R'$ において $1$ が線元、線元の積が線元であり、各 $\iota(x_i)$ が $R'$ の線元の整数係数一次結合になるものが存在するとする。このとき $x_1,\dots,x_r$ について def-lambda-ring-special の条件 1〜3 が成り立つ。とくに、$R$ の任意の有限個の元に対してこのような $(R',\iota)$ がとれるなら、$R$ はλ環である。

$\iota(x_i)=\sum_jc_{ij}\ell_{ij}$($\ell_{ij}$ は $R'$ の線元)と書き、$M$ を $R'$ の乗法モノイドの中で $1$ と $\ell_{ij}$ が生成する部分モノイドとする。仮定により $M$ の元はすべて線元である。包含 $M\to R'$ は環準同型 $\pi\colon\mathbb{Z}[M]\to R'$ に延び、$\pi$ はλ準同型である。実際、$\pi$ を係数ごとに施す写像を $\pi_*$ と書くと、$\lambda_t^{R'}(\pi(\sum_mc_mm))=\prod_m\lambda_t^{R'}(m)^{c_m}=\prod_m(1+mt)^{c_m}=\pi_*(\lambda_t(\sum_mc_mm))$ であり、係数を比べれば $\lambda^n\circ\pi=\pi\circ\lambda^n$ である。prop-lambda-ring-monoid-ring により $\mathbb{Z}[M]$ はλ環なので、$u,v\in\mathbb{Z}[M]$ に対し
$$ \lambda^n(\pi(u)\pi(v))=\pi(\lambda^n(uv))=\pi\bigl(P_n(\lambda^1u,\dots;\lambda^1v,\dots)\bigr)=P_n(\lambda^1\pi u,\dots;\lambda^1\pi v,\dots) $$
であり、同様に $\lambda^n(\lambda^m(\pi u))=P_{n,m}(\lambda^1\pi u,\dots)$、$\lambda^n(1)=\lambda^n(\pi(1))=0$($n\ge2$)である。$\iota(x_i)$ は $\pi$ の像に属するので、$R'$ の中で $\iota(x_1),\dots,\iota(x_r)$ について条件 1〜3 が成り立つ。$\iota$ はλ演算と可換な単射環準同型なので、条件 1〜3 は $R$ の中で $x_1,\dots,x_r$ について成り立つ。$\square$

有限群の表現環はλ環

ex-lambda-ring-representation-ring の pre-λ構造により、有限群 $G$ の表現環 $R(G)$ はλ環である。

$G$ の巡回群である部分群 $C$ すべてにわたる制限写像の積 $\iota\colon R(G)\to R':=\prod_CR(C)$ を考える。制限は環準同型であり、$\operatorname{Res}\bigwedge^nV=\bigwedge^n\operatorname{Res}V$ なので生成元 $[V]$ の上で $\lambda_t$ と可換であり、両辺とも加法を積に変えるので $R(G)$ 全体で λ演算と可換である。よって、成分ごとの λ演算で $R'$ は pre-λ環、$\iota$ はλ準同型である。$\iota$ は単射である。実際、$R(G)$ の元は既約指標の整数係数一次結合であり、既約指標は一次独立なので、$R(G)$ の元 $x$ はその指標 $\chi_x$(類関数)で決まる(Ser77 §2.3)。$\iota(x)=0$ なら各 $g\in G$ について $\chi_x$ の $\langle g\rangle$ への制限が $0$ なので $\chi_x(g)=0$、よって $x=0$ である。
$R'$ の線元は、各成分が線元であるような組である。実際、$\lambda^n$ は成分ごとに働くので $\lambda^n((y_C)_C)=(\lambda^n(y_C))_C$ である。$1=(1)_C$ は各成分が自明表現なので線元であり、線元の積は成分ごとの積なので線元である(各 $R(C)$ で 1 次元表現の積は 1 次元表現)。最後に、巡回群 $C$ の複素表現は 1 次元表現の直和なので(Ser77 §3.1)、$R(C)$ の元は 1 次元表現の類の整数係数一次結合であり、$R'$ の元 $(y_C)_C$ は $y_C=\sum_ia_{C,i}\ell_{C,i}$ と書けば $\sum_C\sum_ia_{C,i}\,e_C\ell_{C,i}$($e_C$ は $C$ 成分が $1$、他が $0$ の元)と書ける。$e_C\ell_{C,i}$ は $C$ 成分が線元、他の成分が $0$($\lambda_t(0)=1$ なので $0$ は線元)の組であり、$R'$ の線元である。よって prop-lambda-ring-verification の仮定がすべて満たされ、$R(G)$ はλ環である。$\square$

Adams演算

λ環の元を「線元 $\ell_1,\dots,\ell_p$ の和」とみなすとき、$\lambda^n$ が基本対称式 $e_n(\ell)$ に当たるのに対し、冪和 $\sum_i\ell_i^k$ に当たる演算が Adams 演算である。基本対称式と冪和を結ぶ Newtonの恒等式をそのまま定義に使う。

Adams演算の定義

$R$ を pre-λ環とする。$x\in R$ に対し、$\lambda_{-t}(x)=\sum_n(-1)^n\lambda^n(x)t^n$ は $\Lambda(R)$ の元なので $R[\![t]\!]$ で可逆である。$\dfrac{d}{dt}$ を $t$ についての形式的微分(導分)として
$$ \psi_t(x):=-t\,\frac{\frac{d}{dt}\lambda_{-t}(x)}{\lambda_{-t}(x)}=\sum_{k\ge1}\psi^k(x)\,t^k $$
とおき、$\psi^k\colon R\to R$($k\ge1$)を Adams 演算(Adams operation)という。

Adams演算の基本性質

$R$ を pre-λ環とする。

  1. $\psi^1=\mathrm{id}$ であり、$n\ge2$ について Newton の恒等式
    $$ \psi^n(x)=\lambda^1(x)\psi^{n-1}(x)-\lambda^2(x)\psi^{n-2}(x)+\cdots+(-1)^{n}\lambda^{n-1}(x)\psi^1(x)+(-1)^{n+1}n\lambda^n(x) $$
    が成り立つ。とくに $\psi^2(x)=x^2-2\lambda^2(x)$、$\psi^3(x)=x^3-3x\lambda^2(x)+3\lambda^3(x)$ である。
  2. 各 $\psi^k$ は加法的である:$\psi^k(x+y)=\psi^k(x)+\psi^k(y)$。
  3. 線元 $\ell$ に対し $\psi^k(\ell)=\ell^k$ である。
  4. $R=\mathbb{Z}$(prop-lambda-ring-integers)では $\psi^k=\mathrm{id}$ である。有限群の表現環 $R(G)$ では $\psi^k$ は指標の上で $\chi(g)\mapsto\chi(g^k)$ で働く。

1:定義の分母を払うと $\psi_t(x)\lambda_{-t}(x)=-t\frac{d}{dt}\lambda_{-t}(x)$ である。右辺は $\sum_{j\ge1}(-1)^{j+1}j\lambda^j(x)t^j$、左辺の $t^n$ の係数は $\sum_{k=1}^{n}(-1)^{n-k}\lambda^{n-k}(x)\psi^k(x)$ である。$n=1$ で $\psi^1(x)=\lambda^1(x)=x$。一般の $n$ で、$k=n$ の項 $\psi^n(x)$ を残して他を右辺へ移し、$j=n-k$ とおけば主張の式になる。$\psi^2,\psi^3$ の式はこれを順に展開したものである。
2:$D=\frac{d}{dt}$ は Leibniz則 $D(fg)=(Df)g+f(Dg)$ を満たすので、可逆な $f,g$ について $\frac{D(fg)}{fg}=\frac{Df}{f}+\frac{Dg}{g}$ である。$f=\lambda_{-t}(x)$、$g=\lambda_{-t}(y)$ とすれば、prop-lambda-ring-total-class により $fg=\lambda_{-t}(x+y)$ なので $\psi_t(x+y)=\psi_t(x)+\psi_t(y)$ である。
3:$\lambda_{-t}(\ell)=1-\ell t$、$D(1-\ell t)=-\ell$ なので $\psi_t(\ell)=\dfrac{\ell t}{1-\ell t}=\sum_{k\ge1}\ell^kt^k$ である。
4:$\mathbb{Z}$ では $\lambda_{-t}(a)=(1-t)^a$、$D(1-t)^a=-a(1-t)^{a-1}$ なので $\psi_t(a)=\dfrac{at}{1-t}=\sum_{k\ge1}at^k$ である。$R(G)$ では、指標をとる写像 $R(G)\to\operatorname{Cl}(G)$(類関数の環)は単射環準同型であり、$R(G)[\![t]\!]\to\operatorname{Cl}(G)[\![t]\!]$ に延びて $D$ と商を保つ。ex-lambda-ring-representation-ring の式から $\lambda_{-t}(\chi_V)(g)=\prod_i(1-\zeta_it)$ なので、3 と同じ計算で $\psi_t(\chi_V)(g)=\sum_i\dfrac{\zeta_it}{1-\zeta_it}=\sum_{k\ge1}\Bigl(\sum_i\zeta_i^k\Bigr)t^k=\sum_{k\ge1}\chi_V(g^k)t^k$ である。$\square$

λ環のAdams演算

$R$ をλ環とする。各 $\psi^k$ は環準同型であり、$\psi^k\circ\psi^l=\psi^{kl}$、$\psi^1=\mathrm{id}$ を満たす。素数 $p$ について $\psi^p(x)\equiv x^p\pmod{pR}$ である。λ準同型は Adams 演算と可換である。

Adams演算の性質の出典

証明は AT69 §1、Knu73 Chapter I、Yau10 に譲る。筋は次のとおりである。λ環の元 $x,y$ についての恒等式は、生成元 $x,y$ をもつ自由λ環で確かめれば十分であり、その自由λ環は $\lambda^i(x)$、$\lambda^j(y)$ を変数とする多項式環、すなわち 2 組の対称関数環のテンソル積 $\mathbb{Z}[e_1,e_2,\dots]\otimes\mathbb{Z}[e_1^{\prime},e_2^{\prime},\dots]$ である(AT69 §1、Knu73 Chapter I)。有限個の $\lambda^i$ しか含まない恒等式は、変数の個数 $N$ を十分大きくとり、prop-lambda-ring-monoid-ring のλ環 $\mathbb{Z}[x_1,\dots,x_N,y_1,\dots,y_N]$ の中で $x=\sum_ix_i$、$y=\sum_jy_j$ について確かめれば十分である($e_1,\dots,e_N$ の代数的独立性による。分裂原理の代数版)。そこでは $\lambda_t(x)=\prod_i(1+x_it)$ なので、prop-lambda-ring-adams-basic の 2・3 と同じ計算で $\psi^k(x)=\sum_ix_i^k$ となり、$\psi^k(xy)=\sum_{i,j}(x_iy_j)^k=\psi^k(x)\psi^k(y)$、$\psi^k(\psi^l(x))=\sum_ix_i^{kl}$、$\psi^p(x)=\sum_ix_i^p\equiv(\sum_ix_i)^p\pmod p$ が直接確かめられる。λ準同型が Adams 演算と可換なことだけは、$\psi^k$ が λ演算の整数係数多項式で書けること(prop-lambda-ring-adams-basic の 1)から pre-λ環でも直ちに従う。

補足

pre-λ環 $R$ には $\gamma_t(x):=\lambda_{t/(1-t)}(x)$ で定まる γ演算 $\gamma^n$ もあり、$\gamma_t$ も加法を積に変える。$K_0(X)$ では $\gamma^n(x-\operatorname{rank}x)$ を用いた γフィルトレーションが定義され、その次数付き商が Chern 類を通じて Chow環と比較される(SGA6 Exposé V、Gro58 §4)。Chern 類の言葉では、ex-lambda-ring-k0 の $K_0(X)$ から、階数と全 Chern 類の組 $(\operatorname{rank}E,c(E))$ を対応させる完備 Chern 類が、Chow 環の完備化 $\mathbb{Z}\times(1+\prod_{i\ge1}CH^i(X))$ に入るλ環構造へのλ準同型になる。この構造では加法が全 Chern 類の積(Whitney和公式)、乗法がテンソル積の Chern 類の普遍公式、λ演算が外冪の Chern 類の普遍公式に当たる。位相的 K 理論では Adams 演算が Hopf不変量 1 の問題やベクトル場の問題に用いられ、その代数的枠組みが AT69 のλ環論である。対称群の表現論との関係(対称関数環 $\bigoplus_nR(S_n)$ が自由λ環になること)は Knu73、Mac95 Chapter I を参照。

関連項目

参考文献

[4]
Donald Yau, Lambda-Rings, World Scientific, 2010, λ環の定義・普遍λ環・Adams 演算
[7]
William Fulton, Intersection Theory, Springer, 1998, §3.2(分裂原理と旗束)
[8]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer, 1977, II, Exercise 5.16(外冪のフィルトレーション)
[9]
Jean-Pierre Serre, Linear Representations of Finite Groups, Springer, 1977, §2.3(指標の一次独立性)、§3.1(アーベル群の表現)

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