Frobeniusの定理(可積分性)(Frobenius theorem)とは、多様体 $M$ 上の階数 $k$ の分布 $D$(各点の接空間の $k$ 次元部分空間の滑らかな族)について、$D$ に値をとるベクトル場が Lie 括弧で閉じていること(包合性)と、各点のまわりに $D=\operatorname{span}\{\partial/\partial y^1,\dots,\partial/\partial y^k\}$ となる局所座標があること、各点を通る積分多様体があることが同値であるという定理である。$k=1$ の場合は整流定理である。$\mathbb{R}^3$ の $\partial_x$ と $\partial_y+x\,\partial_z$ が張る平面の族は包合的でなく、どの点を通る積分曲面ももたない。大域版は葉層構造を与える。
多様体の各点に接空間の $k$ 次元部分空間 $D_p$ を滑らかに指定したもの(分布)が与えられたとき、「接空間がつねに $D$ に一致する $k$ 次元の部分多様体」(積分多様体)で多様体を局所的に埋めつくせるかを問う。$k=1$ なら、0 にならないベクトル場の積分曲線がそれを与えるので、答えはいつも肯定的である。$k\ge2$ ではそうはいかず、$\mathbb{R}^3$ の各点に平面を指定しても、それらに接する曲面がないことがある。Frobenius の定理(Frobenius theorem)は、積分多様体で局所的に埋めつくせるための必要十分条件が、$D$ に値をとるベクトル場が Lie括弧 で閉じていること(包合性)であると述べる。このとき、分布は適当な局所座標で座標平面の族 $\{y^{k+1},\dots,y^n=\text{一定}\}$ の接空間の族になる。包合性は各点での Lie 括弧の計算だけで確かめられる条件であり、定理はこれを「曲面が存在する」という情報に変える。この記事では局所の形を完全に証明し、多様体全体での形(葉層)は案内にとどめる。
以下、$M$ を $n$ 次元の滑らかな多様体(可微分多様体)、$0\le k\le n$ とする。開集合 $U\subset M$ 上の滑らかなベクトル場の全体を $\mathfrak{X}(U)$ と書く。
各点 $p\in M$ に $T_pM$ の $k$ 次元部分空間 $D_p$ を対応させたもの $D$ が、階数 $k$ の(滑らかな)分布であるとは、各点 $p$ に開近傍 $U$ と $X_1,\dots,X_k\in\mathfrak{X}(U)$ があって、すべての $q\in U$ で $X_1(q),\dots,X_k(q)$ が $D_q$ の基底になることをいう。この $X_1,\dots,X_k$ を $U$ 上の $D$ の局所枠という。ベクトル場 $X\in\mathfrak{X}(U)$ がすべての $q\in U$ で $X_q\in D_q$ をみたすとき、$X$ は $D$ に値をとるといい、そのようなもの全体を $\Gamma(U,D)$ と書く。
分布 $D$ が包合的(involutive)であるとは、任意の開集合 $U$ と $X,Y\in\Gamma(U,D)$ について $[X,Y]\in\Gamma(U,D)$ となることをいう。
平板座標 $(V;y)$ があれば、各 $c\in\mathbb{R}^{n-k}$ について $V$ の切り口 $\{q\in V\mid(y^{k+1}(q),\dots,y^n(q))=c\}$ は(空でなければ)$D$ の積分多様体である($z:=y-(0,c)$ を (i) の座標にとればよい)。包合性は局所枠だけで確かめられる。
$X_1,\dots,X_k$ を開集合 $U$ 上の $D$ の局所枠とする。
(R1) $X\in\Gamma(U',D)$($U'\subset U$ は開集合)は、$U'$ 上の滑らかな関数 $f^1,\dots,f^k$ によってただ 1 通りに $X=\sum_if^iX_i$ と書ける。
(R2) $D$ が包合的であることと、$M$ を覆う局所枠のそれぞれについて、すべての $i,j$ で $[X_i,X_j]\in\Gamma(U,D)$ となることは同値である。
(i):各点 $q$ で $X_q\in D_q$ は基底 $X_i(q)$ の 1 次結合としてただ 1 通りに書けるので、係数 $f^i(q)$ が定まる。滑らかさを示す。$q_0\in U'$ のまわりの局所座標で $X_i=\sum_aX_i^a\,\partial_a$、$X=\sum_aX^a\,\partial_a$ と書くと、$n\times k$ 行列 $(X_i^a)$ は各点で階数 $k$ なので、$q_0$ で正則な $k$ 次の小行列 $\Delta$ があり、連続性から $q_0$ の近くでも正則である。$X=\sum_if^iX_i$ の成分のうち $\Delta$ の行にあたる $k$ 本の式は $(f^i)$ についての連立 1 次方程式で、Cramer の公式から $f^i$ は成分 $X_i^a$、$X^a$ の有理式(分母は $\det\Delta\ne0$)であり、滑らかである。
(ii):前者から後者は定義そのものである。逆を示す。$X,Y\in\Gamma(U',D)$ とする。Lie 括弧の値は各点の近くのベクトル場だけで決まるので、$U'$ が 1 つの局所枠の定義域に含まれるとしてよい。(i) により $X=\sum_if^iX_i$、$Y=\sum_jg^jX_j$ と書け、Lie括弧の記事の命題「Lie 括弧の基本性質」の (i)(iii) により
$$
[X,Y]=\sum_{i,j}\Bigl(f^ig^j\,[X_i,X_j]+f^i\,(X_ig^j)\,X_j-g^j\,(X_jf^i)\,X_i\Bigr)
$$
である。仮定から右辺の各項は $D$ に値をとるので、$[X,Y]\in\Gamma(U',D)$ である。$\square$
$M$ 上の階数 $k$ の分布 $D$ について、次は同値である。
(R1) $D$ は包合的である。
(R2) $D$ は完全積分可能である(各点のまわりに平板座標がある)。
(R3) $D$ は積分可能である(各点を通る積分多様体がある)。
(ii)⇒(iii) は定義の後で見たとおりである(平板座標の切り口)。(iii)⇒(i) を次の節で、(i)⇒(ii) を「包合的な分布の平板座標」の節で示す。後者が定理の本体である。
$D$ が積分可能なら、$D$ は包合的である。より詳しく、点 $p$ を通る積分多様体 $S$ があれば、$p$ の近くで $D$ に値をとる任意の $X,Y$ について $[X,Y]_p\in D_p$ である。
$X,Y\in\Gamma(U,D)$、$p\in U$ とし、$p$ を通る積分多様体 $S$ をとる。$S\cap U$ は開集合 $U$ の中の部分多様体であり、その各点 $q$ で $X_q,Y_q\in D_q=T_qS$、すなわち $X$、$Y$ は $S\cap U$ に接する。Lie括弧の記事の命題「積分曲面に接するベクトル場の括弧」(多様体 $U$ と部分多様体 $S\cap U$ に使う)により、$[X,Y]_p\in T_pS=D_p$ である。$p$ は任意なので $[X,Y]\in\Gamma(U,D)$ である。$\square$
この命題は「1 点を通る積分多様体があるだけで、その点での括弧が $D$ に入る」ことを言っている。したがって包合的でない分布では、括弧が $D_p$ から外れる点 $p$ を通る積分多様体は 1 つもない(ex-fr-counterexamples の 1 行目)。
証明は $k$ についての帰納法である。まず局所枠の 1 本 $X_1$ をベクトル場の流れの記事の定理「整流定理」で $\partial/\partial y^1$ にまっすぐにし、残りの枠を $y^1$ を変えない形に取り替える。すると残りの枠は切り口 $\{y^1=0\}$ の上の階数 $k-1$ の包合的な分布を定めるので、帰納法の仮定が使える。最後に、切り口で得た座標を $y^1$ の方向に延ばしたものが平板座標になることを、線形の常微分方程式の解の一意性で示す。
段 0(帰着).主張は局所的なので、$p$ のまわりの局所座標で、$M$ は $\mathbb{R}^n$ の開集合、$p=0$ としてよい。「任意の $n$、$\mathbb{R}^n$ の任意の開集合上の包合的な階数 $k$ の分布は、各点のまわりに平板座標をもつ」ことを $k$ についての帰納法で示す。$k=0$ なら $D=0$ であり、任意の局所座標が平板座標である。$k\ge1$ とし、$k-1$ では成り立つとする。
段 1(1 本目をまっすぐにする).$0$ の近くの局所枠 $X_1,\dots,X_k$ をとる。$X_1(0)\ne0$ なので、整流定理により $0$ のまわりの局所座標 $(V;y^1,\dots,y^n)$ で、$V$ 上 $X_1=\partial/\partial y^1$ となるものがある。平行移動して $y(0)=0$ とし、$V$ を小さくとり直して、$y(V)=(-a,a)\times Q$($a>0$、$Q$ は $\mathbb{R}^{n-1}$ の $0$ を中心とする開球)としてよい。以下、$V$ の点を座標 $(y^1,u)$($u=(y^2,\dots,y^n)\in Q$)で表す。
段 2(枠の取り替え).$Y_1:=X_1$、$Y_i:=X_i-(X_iy^1)\,X_1$($2\le i\le k$)とおく。$Y_1,\dots,Y_k$ は $X_i$ から正則な三角行列で移ったものなので、$V$ 上の $D$ の局所枠であり、$Y_1y^1=1$、$Y_iy^1=0$($i\ge2$)である。包合性と lem-fr-frame (i) により、滑らかな関数 $c_{ij}^l$ で $[Y_i,Y_j]=\sum_{l=1}^kc_{ij}^lY_l$ と書ける。両辺を $y^1$ に施すと、左辺は $Y_i(Y_jy^1)-Y_j(Y_iy^1)$ で、$j\ge2$ なら($Y_jy^1=0$、$Y_iy^1$ は定数 $0$ または $1$ なので)$0$ であり、右辺は $c_{ij}^1$ である。よって
$$
[Y_i,Y_j]=\sum_{l=2}^kc_{ij}^l\,Y_l\qquad(1\le i\le k,\ 2\le j\le k)
$$
である。
段 3(切り口の分布).$i\ge2$ では $Y_iy^1=0$ なので、$Y_i$ の $\partial/\partial y^1$ の成分は $0$ であり、$Y_i=\sum_{a\ge2}Y_i^a\,\partial/\partial y^a$ と書ける。切り口 $\{y^1=0\}$ を $Q$ と同一視し、$Q$ 上のベクトル場 $\widehat Y_i:=\sum_{a\ge2}Y_i^a(0,u)\,\partial/\partial u^a$($2\le i\le k$)を考える。$Y_i(0,u)$ たちは 1 次独立なので $\widehat Y_i(u)$ たちも 1 次独立であり、$\widehat D:=\operatorname{span}\{\widehat Y_2,\dots,\widehat Y_k\}$ は $Q$ 上の階数 $k-1$ の分布である。Lie括弧の記事の命題「局所座標での成分」の式で $[Y_i,Y_j]$ の成分を計算すると、$Y_i$、$Y_j$ は $\partial/\partial y^1$ の成分をもたないので $y^1$ についての微分は現れず、$y^1=0$ で
$$
[\widehat Y_i,\widehat Y_j](u)=\sum_{a\ge2}[Y_i,Y_j]^a(0,u)\,\frac{\partial}{\partial u^a}=\sum_{l=2}^kc_{ij}^l(0,u)\,\widehat Y_l(u)
$$
である。lem-fr-frame (ii) により $\widehat D$ は包合的である。帰納法の仮定により、$0$ の開近傍 $Q'\subset Q$ 上の局所座標 $(z^2,\dots,z^n)$ で、$Q'$ 上 $\widehat D=\operatorname{span}\{\partial/\partial z^2,\dots,\partial/\partial z^k\}$ となるものがある。とくに $\widehat Y_iz^j=0$($2\le i\le k< j\le n$)である。
段 4(座標を延ばす).$V':=\{(y^1,u)\mid\lvert y^1\rvert< a,\ u\in Q'\}$ の上で
$$
w^1:=y^1,\qquad w^j:=z^j(u)\quad(2\le j\le n)
$$
とおく。$(y^1,u)\mapsto(y^1,z(u))$ は $(-a,a)\times Q'$ から開集合 $(-a,a)\times z(Q')$ への微分同相写像なので、$(V';w)$ は局所座標である。$j>k$ を固定し、$g_i:=Y_iw^j$($2\le i\le k$)とおく。$y^1=0$ では、$Y_i$ の成分が $\widehat Y_i$ の成分と一致するので $g_i(0,u)=\widehat Y_iz^j(u)=0$ である。また $Y_1=\partial/\partial y^1$ と $Y_1w^j=0$($w^j$ は $y^1$ によらない)、段 2 の式から
$$
\frac{\partial g_i}{\partial y^1}=Y_1(Y_iw^j)=[Y_1,Y_i]\,w^j+Y_i(Y_1w^j)=\sum_{l=2}^kc_{1i}^l\,g_l
$$
である。$u\in Q'$ を固定すると、$s\mapsto G(s):=(g_2,\dots,g_k)(s,u)$ は $(-a,a)$ 上の線形の方程式 $G'=C(s)G$($C(s):=(c_{1i}^l(s,u))$ は連続)の解で $G(0)=0$ をみたす。線形の方程式の解は初期値で決まる(常微分方程式の記事の定理「線形方程式の解の大域存在と解空間」の (ii))ので $G\equiv0$ である。よって $V'$ 上 $Y_iw^j=0$($2\le i\le k< j$)であり、$Y_1w^j=0$ と合わせて、すべての $i\le k< j$ で $Y_iw^j=0$ である。
段 5(結論).$q\in V'$ とする。座標 $w$ に関して、接ベクトル $v$ の $\partial/\partial w^j$ の成分は $v(w^j)$ である。段 4 により $D_q=\operatorname{span}\{Y_i(q)\}$ の元はすべて $j>k$ の成分が $0$ であり、$D_q\subset\operatorname{span}\{\partial/\partial w^1|_q,\dots,\partial/\partial w^k|_q\}$ である。両辺とも $k$ 次元なので等号が成り立ち、$(V';w)$ は $D$ の平板座標である。$\square$
段 2 で括弧の $Y_1$ の係数 $c_{ij}^1$ が消えることが、切り口に落とした分布が再び包合的になり(段 3)、さらに切り口での性質が $y^1$ の方向に伝わる(段 4)ことの両方を支えている。包合性はこの 2 か所で使われた。
平板座標の中では、積分多様体は切り口の一部に限られる。
$(V;w)$ を $D$ の平板座標、$S\subset V$ を連結な積分多様体とする。このとき $w^{k+1},\dots,w^n$ は $S$ の上で一定であり、$S$ は 1 つの切り口 $\{(w^{k+1},\dots,w^n)=c\}$ に含まれる。
$j>k$ とし、$h:=w^j|_S$ を $S$ 上の関数とみる。$q\in S$ と $v\in T_qS=D_q$ について $dh_q(v)=v(w^j)$ は $v$ の $\partial/\partial w^j$ の成分であり、$D_q=\operatorname{span}\{\partial/\partial w^1,\dots,\partial/\partial w^k\}$ なので $0$ である。したがって $S$ の局所座標で $h$ のすべての偏導関数は $0$ であり、$h$ は各点の近く(座標球の上)で一定である。$h$ が値 $h(q_0)$ をとる点の集合は $S$ の開集合かつ閉集合であり、$S$ は連結なので $S$ 全体に等しい。$\square$
$X$ が $M$ 上の 0 にならないベクトル場なら、$D_p:=\operatorname{span}\{X_p\}$ は階数 1 の分布で、$X$ 自身が局所枠である。$[X,X]=0$ なので lem-fr-frame (ii) により $D$ はつねに包合的であり、Frobenius の定理の $k=1$ の場合は、ベクトル場の流れの記事の定理「整流定理」そのものである。積分多様体は $X$ の積分曲線(の像の一部)である。
$M:=\mathbb{R}^3\setminus\{0\}$ の点 $p$ に、$p$ に直交する平面 $D_p:=p^\perp$ を対応させる。$p$ を通る球面 $\{\lvert x\rvert=\lvert p\rvert\}$ の $p$ での接平面は $p^\perp$ なので、球面は $D$ の積分多様体であり、$D$ は積分可能である。極座標($x=r\sin\theta\cos\phi$、$y=r\sin\theta\sin\phi$、$z=r\cos\theta$、$z$ 軸を除き $\phi$ の範囲を長さ $2\pi$ 未満の開区間に限った範囲)を $(\theta,\phi,r)$ の順に並べたものは平板座標で、$D=\operatorname{span}\{\partial/\partial\theta,\partial/\partial\phi\}$ である($\theta$、$\phi$ を動かしても $r=\lvert p\rvert$ は変わらないので、$\partial/\partial\theta$、$\partial/\partial\phi$ は球面に接し、1 次独立である)。
包合性を括弧で確かめることもできる。$e_1,e_2,e_3$ を標準基底として、回転の場 $L_i(p):=e_i\times p$、すなわち
$$
L_1=y\,\partial_z-z\,\partial_y,\qquad L_2=z\,\partial_x-x\,\partial_z,\qquad L_3=x\,\partial_y-y\,\partial_x
$$
はどれも $D$ に値をとり($e_i\times p\perp p$)、各点で $D_p$ を張る。成分の式から $[L_1,L_2]=-L_3$ であり、括弧は再び $D$ に値をとる。$(e_1\times p)\times(e_2\times p)=z\,p$ なので、$e_1\times p$ と $e_2\times p$ は $z\ne0$ の点で 1 次独立であり、そこで $L_1,L_2$ は局所枠であり、lem-fr-frame (ii) の条件がみたされる(他の点では別の 2 本を枠にとる)。
$\mathbb{R}^3$ で $D:=\operatorname{span}\{X,Y\}$、$X:=\partial_x+y\,\partial_z$、$Y:=\partial_y+x\,\partial_z$ とする。$D_q$ は 1-形式 $dz-y\,dx-x\,dy=d(z-xy)$ の核である。成分の式から
$$
[X,Y]=(\partial_xx)\,\partial_z-(\partial_yy)\,\partial_z=0
$$
なので $D$ は包合的である。実際、関数 $f:=z-xy$ について $Xf=y-y=0$、$Yf=x-x=0$ なので、曲面 $\{z=xy+c\}$ は積分多様体であり、$(x,y,z-xy)$ が平板座標である。次の反例の表の 1 行目は、1-形式を $dz-x\,dy$ に変えただけで包合性が失われる例である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 包合的 | $\mathbb{R}^3$ の $\operatorname{span}\{\partial_x,\ \partial_y+x\,\partial_z\}$ | 積分多様体の存在(どの点を通るものもない) |
| 包合性をすべての点で要求する(1 点だけにする) | $\mathbb{R}^3$ の $\operatorname{span}\{\partial_x,\ \partial_y+x^2\partial_z\}$ と原点 | 原点を通る積分多様体の存在 |
| 階数が一定 | $\mathbb{R}^2$ の $\operatorname{span}\{\partial_x,\ \rho(x)\,\partial_y\}$($\rho$ は下の関数) | 原点を通る積分多様体の存在 |
1 行目:$X:=\partial_x$、$Y:=\partial_y+x\,\partial_z$ は各点で 1 次独立で、階数 2 の分布 $D_q=\{(a,b,bx)\}$ を定める(満たす性質:滑らかな分布)。$[X,Y]=\partial_z$ であり、$(0,0,1)=(a,b,bx)$ となる $a,b$ はないので $\partial_z\notin D_q$ である(満たさない性質:包合的)。prop-fr-necessary により、どの点 $q$ を通る積分多様体もない。破れる含意は「滑らかな平面の族には積分曲面がある」である。この $D$ は 1-形式 $dz-x\,dy$ の核であり、Lie括弧の記事の反例の表の 3 行目と同じ例である。
2 行目:$X:=\partial_x$、$Y:=\partial_y+x^2\partial_z$ について $[X,Y]=2x\,\partial_z$ である。原点では $[X,Y]_0=0\in D_0$ だが(満たす性質:原点での括弧の条件)、$x\ne0$ の点では $\partial_z\notin D_q$ なので $[X,Y]_q\notin D_q$ である(満たさない性質:包合性)。
原点を通る積分多様体 $S$ があったとする。$T_0S=D_0=\operatorname{span}\{\partial_x,\partial_y\}$ なので、$S$ の原点のまわりの局所座標 $(s^1,s^2)$ で、関数 $x|_S$ の微分は原点で $0$ でない。したがって $x|_S$ は原点のどの近傍でも定数でなく、原点のいくらでも近くに $x\ne0$ となる $S$ の点 $q$ がある。その点で prop-fr-necessary を使うと $[X,Y]_q\in D_q$ となるが、これは上で見たことに反する。
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