指数関数の微分

同義語:derivative of the exponential function

概要

指数関数の微分(derivative of the exponential function)とは、ネイピア数 $e=\lim_{n\to\infty}(1+\frac1n)^n$ を底とする指数関数が微分しても変わらない($(e^x)'=e^x$)ことである。$(1+\frac1n)^n<e<(1+\frac1n)^{n+1}$ の $m$ 乗根をとると $1+\frac1m<e^{1/m}<1+\frac1{m-1}$ となり、ここから $\lim_{h\to0}\frac{e^h-1}h=1$ が従う。$a>0$ では $(a^x)'=(\log a)\,a^x$ なので、すべての $x$ で $(a^x)'=a^x$ となる底は $e$ だけである。また $(\log x)'=\frac1x$ であり、実数全体で $f'=f$ を満たす微分可能な関数は $f(0)e^x$ に限る。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: (1+1/n)^nの極限, 微分係数と導関数の定義(高校数学), 指数関数, 対数関数

高校での出発点:微分しても変わらない関数

高校の数学 III では、$e=2.71828\ldots$ を底とする指数関数について
$$ (e^x)'=e^x $$
を習う。微分しても形が変わらない関数である。ほかの底 $a>0$ では $(a^x)'=a^x\log a$ となり、係数 $\log a$ が付く(以下、$\log$ は $e$ を底とする自然対数を表す)。
まず、底を変えると何が違うのかを数値で見る。$y=a^x$ のグラフの点 $(0,1)$ での接線の傾きは、差分商 $\frac{a^h-1}h$ の $h\to0$ での極限である。

3 つの底で 0 での差分商を計算する

次の値は数値計算による(小数第 4 位まで。以下切り捨て)。

$h$$\frac{2^h-1}h$$\frac{e^h-1}h$$\frac{3^h-1}h$
$0.1$$0.7177$$1.0517$$1.1612$
$0.01$$0.6955$$1.0050$$1.1046$
$0.001$$0.6933$$1.0005$$1.0992$

$2^x$ では $0.693\ldots$、$3^x$ では $1.098\ldots$ に近づき、$e^x$ ではちょうど $1$ に近づいているように見える。

2^x、e^x、3^x と点 (0,1) での接線 2^x、e^x、3^x と点 (0,1) での接線
図 1 の 3 本の曲線は、どれも点 $(0,1)$ を通る。そこでの接線(点線)の傾きは、$2^x$ では $1$ より小さく、$3^x$ では $1$ より大きい。傾きがちょうど $1$ になる底が、その間にある $e$ である。
教科書では、$e$ は $(1+h)^{\frac1h}$ や $\bigl(1+\frac1n\bigr)^n$ の極限として定義される。すると次の疑問がわく。

  • 極限で定義した数 $e$ を底にすると、なぜ $0$ での傾きがちょうど $1$ になるのか。→ lem-dex-root、thm-dex-derivative-at-zero
  • 傾きが $1$ になる底は、$e$ のほかにないのか。→ thm-dex-unique-base
  • 微分しても変わらない関数は、$e^x$ のほかにないのか。→ cor-dex-ode
    本記事ではこの 3 つに証明をつける。
    $e$ についての記事の全体と読む順番は、入口の記事 eはなぜ特別か にまとめてある。本記事は「微分」の場面を扱う。
    高校の公式と本記事のボックスの対応は次のとおりである。
    高校の公式本記事のボックス
    $\lim_{h\to0}\frac{e^h-1}h=1$、$(e^x)'=e^x$thm-dex-derivative-at-zero
    $(a^x)'=a^x\log a$thm-dex-unique-base
    $(\log x)'=\frac1x$cor-dex-log-derivative

前提とする事実

前提とする事実

極限の基本的な計算規則(和・積・商の極限、はさみうち)のほかに、次を前提にする。

  1. $e$ を挟む不等式:すべての正の整数 $n$ について $\bigl(1+\frac1n\bigr)^n< e<\bigl(1+\frac1n\bigr)^{n+1}$ である。これは (1+1/n)^nの極限の記事で証明した。
  2. 実数乗:$a>0$ と実数 $x$ に対して $a^x>0$ が定まり、指数法則 $a^{x+y}=a^xa^y$、$(a^x)^y=a^{xy}$ が成り立つ。$a>1$ なら $x\mapsto a^x$ は狭義単調増加である。正の整数 $m$ について、$t\mapsto t^{1/m}$ は $t>0$ で狭義単調増加である。
  3. 自然対数:$x\mapsto e^x$ は実数全体から正の実数全体への狭義単調増加な全単射であり、その逆関数 $\log$ は連続関数である。
  4. 微分:連鎖律(高校数学)、積の微分法、および「区間上で導関数がつねに $0$ の関数は定数」(平均値の定理の帰結。Leb26 Proposition 4.2.6、p. 165)。導関数の符号と増減の関係。
    2・3 の証明は 指数関数と対数関数はどう定義するかの記事の主題であり、本記事では扱わない。

鍵となる不等式:$e$ の $\frac1m$ 乗

$\lim_{h\to0}\frac{e^h-1}h=1$ の証明の鍵は、「$e^{\frac1m}$ は $1+\frac1m$ にほぼ等しい」という不等式である。先に数値で見ておく。

$e$ の $\frac{1}{m}$ 乗を $1+\frac{1}{m}$ と比べる

次の値は数値計算による。

$m$$1+\frac1m$$e^{\frac1m}$$1+\frac1{m-1}$
$2$$1.5$$1.6487\ldots$$2$
$3$$1.3333\ldots$$1.3956\ldots$$1.5$
$10$$1.1$$1.10517\ldots$$1.1111\ldots$

どの行でも $e^{\frac1m}$ は両端の間にあり、$m$ が大きいほど両端は近づく。

$e$ の $\frac{1}{m}$ 乗の評価

$2$ 以上の整数 $m$ について
$$ 1+\frac1m< e^{\frac1m}<1+\frac1{m-1} $$
である。

挟み込みの $m$ 乗根をとる

段 1(左の不等式)。rem-dex-premises の 1 で $n=m$ とすると $\bigl(1+\frac1m\bigr)^m< e$ である。
段 2(右の不等式)。rem-dex-premises の 1 で $n=m-1$($m\ge2$ なので正の整数)とすると
$$ e<\Bigl(1+\frac1{m-1}\Bigr)^{(m-1)+1}=\Bigl(1+\frac1{m-1}\Bigr)^m $$
である。
段 3($m$ 乗根をとる)。段 1・段 2 から $\bigl(1+\frac1m\bigr)^m< e<\bigl(1+\frac1{m-1}\bigr)^m$ である。3 つの数はどれも正であり、$t\mapsto t^{1/m}$ は狭義単調増加なので(rem-dex-premises の 2)、$\frac1m$ 乗しても不等号の向きは変わらない。$\bigl((1+\frac1m)^m\bigr)^{1/m}=1+\frac1m$ などに注意すると、主張を得る。$\square$

主定理 1:指数関数の 0 での微分係数

証明の前に、$h=0.3$ と $h=0.01$ で、証明と同じ挟み方をしてみる。

$h$ を $\frac{1}{m}$ の間に挟む

$h=0.3$ のとき、$\frac14=0.25<0.3\le\frac13=0.333\ldots$ なので $m=3$ である。証明の段 3・段 4 で出てくる両端は
$$ \frac m{m+1}=\frac34=0.75,\qquad\frac{m+1}{m-1}=\frac42=2 $$
であり、実際の値 $\frac{e^{0.3}-1}{0.3}=1.1661\ldots$(数値計算)はその間にある。
$h=0.01$ のとき、$\frac1{101}<0.01\le\frac1{100}$ なので $m=100$ である。両端は $\frac{100}{101}=0.9900\ldots$ と $\frac{101}{99}=1.0202\ldots$ であり、実際の値 $1.0050\ldots$ はその間にある。$h$ を小さくすると $m$ が大きくなり、両端がともに $1$ に近づく。

指数関数の 0 での微分係数

$$ \lim_{h\to0}\frac{e^h-1}h=1 $$
である。したがって $e^x$ はすべての実数 $x$ で微分可能で、$(e^x)'=e^x$ である。

$\frac{1}{m}$ の間に $h$ を挟む

方針:$h>0$ のときは $h$ を $\frac1{m+1}$ と $\frac1m$ の間に挟み、lem-dex-root で上下から評価する。$h<0$ のときは $h>0$ の場合に帰着する。
段 1($m$ の選び方)。$0< h\le\frac12$ とする。$\frac1h\ge2$ なので、$m\le\frac1h< m+1$ を満たす整数 $m\ge2$ がただ 1 つある($\frac1h$ の整数部分)。逆数をとると $\frac1{m+1}< h\le\frac1m$ である。また $m>\frac1h-1$ なので、$h\to+0$ のとき $m\to\infty$ である。
段 2($e^h$ を挟む)。$e>1$ なので $x\mapsto e^x$ は狭義単調増加であり(rem-dex-premises の 2)、段 1 から
$$ e^{\frac1{m+1}}< e^h\le e^{\frac1m} $$
である。
段 3(上からの評価)。段 2 の右側と lem-dex-root から $e^h-1\le e^{\frac1m}-1<\frac1{m-1}$ である。また段 1 から $\frac1h< m+1$ である。どちらも正の数なので掛け合わせて
$$ \frac{e^h-1}h=(e^h-1)\cdot\frac1h<\frac1{m-1}\cdot(m+1)=\frac{m+1}{m-1} $$
である。
段 4(下からの評価)。段 2 の左側と lem-dex-root($m$ の代わりに $m+1$ を使う)から $e^h-1>e^{\frac1{m+1}}-1>\frac1{m+1}$ である。また段 1 から $\frac1h\ge m$ である。掛け合わせて
$$ \frac{e^h-1}h>\frac1{m+1}\cdot m=\frac m{m+1} $$
である。
段 5(右からの極限)。$\frac m{m+1}=1-\frac1{m+1}$、$\frac{m+1}{m-1}=1+\frac2{m-1}$ は、$m\to\infty$ でどちらも $1$ に近づく。段 1 より $h\to+0$ のとき $m\to\infty$ なので、はさみうちにより $\frac{e^h-1}h\to1$($h\to+0$)である。同じく段 2 と lem-dex-root から $1< e^h<1+\frac1{m-1}$ なので、$e^h\to1$($h\to+0$)もわかる。
段 6(左からの極限)。$h=-t$($t>0$)とおく。指数法則から $e^{-t}e^t=e^0=1$ なので $e^{-t}=\frac1{e^t}$ であり、
$$ \frac{e^{-t}-1}{-t}=\frac{1-e^{-t}}t=\frac{e^{-t}(e^t-1)}t=e^{-t}\cdot\frac{e^t-1}t $$
である(3 つ目の等号では $1=e^{-t}e^t$ を使った)。$t\to+0$ のとき、段 5 から $e^t\to1$ なので $e^{-t}=\frac1{e^t}\to1$ であり、$\frac{e^t-1}t\to1$ である。よってこの値も $1$ に近づく。
段 7(導関数)。任意の実数 $x$ について、指数法則 $e^{x+h}=e^xe^h$ から
$$ \frac{e^{x+h}-e^x}h=e^x\cdot\frac{e^h-1}h\to e^x\cdot1=e^x\qquad(h\to0) $$
である。$\square$

「$e$ は $\bigl(1+\frac1n\bigr)^n$ の極限」と「$e^x$ の $0$ での傾きは $1$」をつないでいるのは、lem-dex-root の「$e^{1/m}$ は $1+\frac1m$ にほぼ等しい」という一点である。$e^{1/m}-1$ が $\frac1m$ にほぼ等しいので、差分商 $\frac{e^{1/m}-1}{1/m}$ が $1$ に近い。

主定理 2:微分しても変わらない底は $e$ だけ

指数関数の導関数と底の一意性

$a>0$ とする。関数 $a^x$ はすべての実数 $x$ で微分可能で
$$ (a^x)'=(\log a)\,a^x $$
である。特に、すべての $x$ で $(a^x)'=a^x$ となるのは $a=e$ のときに限る。

底を $e$ に取り替える

方針:$a^x$ を $e^{cx}$ の形に書き直し、thm-dex-derivative-at-zero と合成関数の微分法を使う。
段 1(底の取り替え)。$c:=\log a$ とおく。$\log$ は $e^x$ の逆関数なので $e^c=a$ である。指数法則 $(e^c)^x=e^{cx}$ から
$$ a^x=(e^c)^x=e^{cx} $$
である。
段 2(微分)。$g(x)=cx$ とおくと $g'(x)=c$ であり、thm-dex-derivative-at-zero より $(e^u)'=e^u$ である。合成関数の微分法から
$$ (a^x)'=(e^{g(x)})'=e^{g(x)}\cdot g'(x)=c\,e^{cx}=(\log a)\,a^x $$
である。
段 3(底の一意性)。すべての $x$ で $(a^x)'=a^x$ とする。段 2 から $(\log a)\,a^x=a^x$ であり、$a^x>0$ なので両辺を $a^x$ で割って $\log a=1$ である。$e^x$ は単射で $e^1=e$ なので、$\log a=1$ は $a=e$ を意味する。逆に $a=e$ なら $\log e=1$ なので、段 2 から $(e^x)'=e^x$ である。$\square$

いろいろな底の導関数

thm-dex-unique-base から、次のようになる($\log$ の値は数値計算)。

  • $(2^x)'=(\log2)\,2^x=0.6931\ldots\times2^x$。
  • $(10^x)'=(\log10)\,10^x=2.3025\ldots\times10^x$。
  • $\bigl((\tfrac12)^x\bigr)'=(\log\tfrac12)(\tfrac12)^x=-0.6931\ldots\times(\tfrac12)^x$。係数が負なので、$(\frac12)^x$ は減少関数である。
    $x=0$ での接線の傾きは $\log a$ であり、ex-dex-difference-quotients の表の値($2^x$ で $0.693\ldots$、$3^x$ で $1.098\ldots$)と合っている。$0< a<1$ なら $\log a<0$、$a>1$ なら $\log a>0$ で、傾きがちょうど $1$ になるのは $a=e$ のときだけである。

$e$ を底に選ぶと、微分の公式から係数 $\log a$ が消える。このことが、$e$ を「自然な底」とみなす理由の 1 つである。

対数関数の導関数

同じ極限から、自然対数の導関数も求まる。

自然対数の導関数

$x>0$ について $(\log x)'=\frac1x$ である。

対数の差を指数関数の差に書き直す

方針:$\log(x+h)-\log x$ を $u$ とおき、$h$ を $u$ で表して thm-dex-derivative-at-zero に帰着する。
段 1(置き換え)。$x>0$ を固定し、$h\ne0$、$x+h>0$ とする。$u:=\log(x+h)-\log x$ とおく。$\log$ は単射なので、$x+h\ne x$ から $u\ne0$ である。また $\log(x+h)=\log x+u$ の両辺を $e$ の肩に乗せると、指数法則により $x+h=x\,e^u$、すなわち $h=x(e^u-1)$ である。
段 2(差分商の書き直し)。段 1 から
$$ \frac{\log(x+h)-\log x}h=\frac u{x(e^u-1)}=\frac1x\cdot\frac1{\frac{e^u-1}u} $$
である。
段 3(極限)。$\log$ は連続なので(rem-dex-premises の 3)、$h\to0$ のとき $u=\log(x+h)-\log x\to0$ である。$u\ne0$ なので thm-dex-derivative-at-zero から $\frac{e^u-1}u\to1$ であり、段 2 の値は $\frac1x\cdot\frac11=\frac1x$ に近づく。$\square$

対数の導関数を使う
  • $\log3x=\log3+\log x$ なので、$(\log3x)'=0+\frac1x=\frac1x$ である。$\log3x$ と $\log x$ のグラフは上下に平行移動した関係にあるので、傾きは同じである。
  • $f(x)=\frac{\log x}x$($x>0$)を商の微分法で微分すると
    $$ f'(x)=\frac{\frac1x\cdot x-\log x\cdot1}{x^2}=\frac{1-\log x}{x^2} $$
    である。これは次の例で使う。
$\pi^e$ と $e^\pi$ の大小

$f(x)=\frac{\log x}x$ の導関数 $f'(x)=\frac{1-\log x}{x^2}$(ex-dex-log-derivative)は、$0< x< e$ では $\log x<1$ なので正、$x>e$ では $\log x>1$ なので負である。よって $f$ は $0< x\le e$ で狭義増加、$x\ge e$ で狭義減少であり、$x=e$ で最大値 $f(e)=\frac1e$ をとる。
$e<3<\pi$ である($e<3$ は、rem-dex-premises の 1 で $n=5$ として $e<\bigl(\frac65\bigr)^6=2.985984$ から従う)。よって $f(\pi)< f(e)$、すなわち $\frac{\log\pi}\pi<\frac1e$ である。両辺に $e\pi>0$ を掛けて $e\log\pi<\pi$、両辺を $e$ の肩に乗せて $e^{e\log\pi}=\pi^e$ に注意すると
$$ \pi^e< e^\pi $$
である。数値では $\pi^e=22.459\ldots$、$e^\pi=23.140\ldots$ である。
同じ理由で、$x^{1/x}=e^{f(x)}$ は $x=e$ で最大値 $e^{1/e}=1.4446\ldots$ をとる。正の整数 $n$ に限ると、$f$ は $n\le2$ で増加、$n\ge3$ で減少なので、最大の候補は $n=2,3$ である。$2^{1/2}=1.4142\ldots<3^{1/3}=1.4422\ldots$ なので、$n^{1/n}$ は $n=3$ で最大となる。

y = log x / x のグラフ y = log x / x のグラフ
図 2 で、$\frac{\log x}x$ の山の頂上は $x=e$ にあり、$x=\pi$ での値はそれより低い。$x=2$ と $x=4$ での値が等しい($\frac{\log2}2=\frac{2\log2}4=\frac{\log4}4$)ことは、$2^4=4^2=16$ に対応している。

系:微分しても変わらない関数

$e^x$ は微分しても変わらない。では、そういう関数はほかにあるか。$e^x$ の定数倍 $Ce^x$ も、$(Ce^x)'=Ce^x$ を満たす。実はそれしかない。

$f'=f$ を満たす関数

$f\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が微分可能で、すべての $x$ で $f'(x)=f(x)$ を満たすならば、$f(x)=f(0)\,e^x$ である。

$e^{-x}$ を掛けて定数を取り出す

方針:$f$ を $e^x$ で割った関数の導関数が $0$ になることを示す。
段 1($e^{-x}$ の導関数)。合成関数の微分法と thm-dex-derivative-at-zero から $(e^{-x})'=e^{-x}\cdot(-1)=-e^{-x}$ である。
段 2(割った関数の導関数)。$g(x):=f(x)e^{-x}$ とおく。積の微分法と段 1、仮定 $f'=f$ から
$$ g'(x)=f'(x)e^{-x}+f(x)\cdot(-e^{-x})=f(x)e^{-x}-f(x)e^{-x}=0 $$
である。
段 3(定数になる)。$\mathbb{R}$ は区間なので、rem-dex-premises の 4 により $g$ は定数である。$g(0)=f(0)e^0=f(0)$ なので、すべての $x$ で $f(x)e^{-x}=f(0)$ である。両辺に $e^x$ を掛けると、$e^{-x}e^x=1$ より $f(x)=f(0)e^x$ である。$\square$

$f'=f$ の解の例
  • $f(x)=5e^x$ は $f'=f$ を満たし、$f(0)=5$ である。cor-dex-ode の形 $f(0)e^x=5e^x$ と一致する。
  • $f(x)=e^{x+2}$ も、合成関数の微分法から $f'(x)=e^{x+2}$ を満たす。cor-dex-ode によれば $f(x)=f(0)e^x=e^2e^x$ のはずであり、確かに指数法則から $e^{x+2}=e^2e^x$ である。

$f'=kf$($k$ は定数)のような一般の形や、2 階の微分方程式は、微分方程式としての指数関数・三角関数の記事で扱う。

例と反例

外した仮定崩れる主張ボックス
初期値 $f(0)=1$$f'=f$ なら $f=e^x$ex-dex-ode-no-initial
定義域が区間であること$f'=f$ なら $f=Ce^x$ex-dex-ode-not-interval
底が正であること$a^x$ が実数全体で定まるex-dex-negative-base
反例:初期値がなければ $e^x$ に決まらない

$f(x)=2e^x$ も $f(x)=0$ も、$f'=f$ を満たす。cor-dex-ode が言うのは $f=f(0)e^x$ までであり、$f=e^x$ と決めるには $f(0)=1$ という条件が要る。

反例:定義域が区間でなければ定数倍に決まらない

$0$ を除いた実数全体の上で、$x<0$ では $f(x)=e^x$、$x>0$ では $f(x)=2e^x$ と定める。$f$ は定義域の各点で微分可能で $f'=f$ を満たすが、1 つの定数 $C$ で $f(x)=Ce^x$ と書くことはできない。
cor-dex-ode の証明の $g=fe^{-x}$ は、$x<0$ で $1$、$x>0$ で $2$ である。導関数は $0$ なのに定数でない。「導関数が $0$ なら定数」は、定義域が区間であることを使っており(rem-dex-premises の 4)、定義域が 2 つの区間に分かれていると成り立たない。

反例:負の底では実数乗が定まらない

$a=-2$ とすると、$(-2)^{1/2}$ は $2$ 乗して $-2$ になる実数であるが、実数の $2$ 乗は $0$ 以上なので、そのような実数はない。したがって $(-2)^x$ は実数全体で定まる関数にならず、thm-dex-unique-base の対象にならない。$\log a$ が $a>0$ でしか定まらないこととも合っている。

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関連項目

参考文献

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