Poitou–Tate双対(Poitou–Tate duality)とは、大域体 $K$ と、$S$ の外で不分岐な Galois 群 $G_S$ の上の有限な加群 $M$(位数が $S$ 整数環の単元)について、大域的な Galois コホモロジーと各素点の局所的な Galois コホモロジーとを結ぶ双対定理である。局所的にすべて消える 1 次の類の群 $Ш^1_S(K,M)$ と、双対加群の 2 次の同様の群 $Ш^2_S(K,M^D)$ が有限で互いに双対であり、大域・局所のコホモロジーが 9 項の完全列をなす。局所体の Tate 双対を大域体へ貼り合わせたもので、Brauer 群の局所大域の完全列や Tate–Shafarevich 群の Cassels–Tate 対の構成の基礎になる。
前提知識: Galoisコホモロジー, 大域体, 局所体, ノルム剰余記号
Poitou–Tate 双対(Poitou–Tate duality)は、大域体の Galois コホモロジーと、その各素点での局所的な Galois コホモロジーとを結ぶ双対定理である。有限な Galois 加群 $M$ について、大域的なクラスで「すべての素点で局所的に消えるもの」の群 $Ш^1(M)$ と、双対加群 $M^D$ の 2 次の同様の群 $Ш^2(M^D)$ とが互いの双対になること、そして大域・局所のコホモロジーが 9 項の完全列に組み上がることを述べる。局所体の Tate 双対を大域体に貼り合わせたものとみることができ、類体論の相互法則、Brauer 群の局所大域原理、Tate–Shafarevich群 の Cassels–Tate 対の構成などがこの枠組みに入る。証明は長く、この記事では主定理を所在付きで述べるにとどめ、その代わりに、定理を構成する写像の性質(局所化の像が制限積に入ること)、$Ш^1$ が消える十分条件、Brauer 群の完全列の導出、そして $\mathbb Q$ と $\mu_2$ の場合の 9 項完全列の中央部分の完全性を、Hilbert 記号の計算によって証明する。
$K$ を大域体とする。$S$ を $K$ の素点の空でない集合とし、$K$ が代数体なら $S$ はアルキメデス的な素点をすべて含むとする。$K$ の分離閉包の中で、$S$ の外で分岐しない最大の拡大を $K_S$、$G_S:=\operatorname{Gal}(K_S/K)$ とし、$R_{K,S}$ を $S$ 整数環($S$ の外のすべての素点で整な元の環)とする。各素点 $v$ について完備化 $K_v$ と分解群 $G_v:=\operatorname{Gal}(K_v^{\mathrm s}/K_v)\to G_S$ を固定する。
$M$ を有限な離散 $G_S$ 加群で、位数 $|M|$ が $R_{K,S}$ の単元であるもの($|M|$ を割る素数の上の素点がすべて $S$ に入るもの)とする。双対加群 を
$$
M^D:=\operatorname{Hom}(M,K_S^\times)
$$
とする。$|M|$ が可逆なので $M^D=\operatorname{Hom}(M,\mu)$($\mu$ は 1 の冪根の群)であり、$M^{DD}=M$ である。たとえば $(\mathbb Z/n\mathbb Z)^D=\mu_n$ である。
$v$ が非アルキメデス的なら $H^r(K_v,M):=H^r(G_v,M)$ とし、$v$ がアルキメデス的なら $\operatorname{Gal}(\mathbb C/\mathbb R)$ などの Tate コホモロジー $\hat H^r(G_v,M)$ をとる(とくに $H^0(\mathbb R,M)=M^{G_v}/N_{\mathbb C/\mathbb R}M$、$H^0(\mathbb C,M)=0$)。$v\in S$ が非アルキメデス的で $M$ が $v$ で不分岐(惰性群 $I_v$ が自明に作用する)とき、$H^r(G_v/I_v,M)\to H^r(K_v,M)$ の像を $H^r_{\mathrm{un}}(K_v,M)$ と書く。$H^r(K_v,M)$($v\in S$)の、部分群 $H^r_{\mathrm{un}}(K_v,M)$ に関する制限積を $P^r_S(K,M)$ とし、局所化写像を
$$
\beta^r\colon H^r(G_S,M)\to P^r_S(K,M)
$$
と書く(lem-pt-restricted)。その核
$$
Ш^r_S(K,M):=\operatorname{Ker}\beta^r
$$
を Tate–Shafarevich 群 という。$S$ が有限なら $P^r_S(K,M)=\prod_{v\in S}H^r(K_v,M)$ である。
$Ш^1_S(K,M)$ は、局所的にはどの素点でも自明だが大域的には自明でない「ねじれ」を測る。$S$ がすべての素点からなるとき $G_S=\operatorname{Gal}(K^{\mathrm s}/K)$ であり、添字の $S$ を省く。
$\xi\in H^r(G_S,M)$ について、有限個の $v\in S$ を除いて、$\xi$ の $H^r(K_v,M)$ での像は $H^r_{\mathrm{un}}(K_v,M)$ に属する。
Galoisコホモロジー の定理「一般論の基本事項」の 1 により、$\xi$ は、$K_S$ に含まれる $K$ の有限次 Galois 拡大 $L$ について、$H^r(\operatorname{Gal}(L/K),M^{\operatorname{Gal}(K_S/L)})$ の元 $\xi'$ のインフレーションである。$L$ を大きくとって $\operatorname{Gal}(K_S/L)$ が $M$ に自明に作用するとしてよい。$L$ で分岐する素点は有限個である。$v$ が $L$ で分岐しない非アルキメデス的な素点なら、$G_v\to\operatorname{Gal}(L/K)$ は $I_v$ を自明に移すので $G_v/I_v$ を経由し、$M$ も $v$ で不分岐である。局所化はコホモロジーの関手性と可換なので、$\xi$ の $H^r(K_v,M)$ での像は $H^r(G_v/I_v,M)$ の元の像であり、$H^r_{\mathrm{un}}(K_v,M)$ に属する。$\square$
主定理の前提は、各局所体での Tate の双対定理である。非アルキメデス的な $v$ について、カップ積と不変量写像
$$
H^r(K_v,M)\times H^{2-r}(K_v,M^D)\to H^2(K_v,K_v^{\mathrm s\times})=\operatorname{Br}(K_v)\xrightarrow{\ \mathrm{inv}_v\ }\mathbb Q/\mathbb Z
$$
は有限群の非退化な対である(Mil06 Chapter I, Corollary 2.3, p. 28。この記事では証明しない)。アルキメデス的な $v$ でも Tate コホモロジーで同様の対が非退化である(同 Theorem 2.13, p. 35)。これらを合わせると、$P^r_S(K,M)$ は $P^{2-r}_S(K,M^D)$ の代数的かつ位相的な双対になる(同 p. 56)。そこで $\beta^{2-r}$($M^D$ についての)の双対写像を
$$
\gamma^r\colon P^r_S(K,M)\to H^{2-r}(G_S,M^D)^\vee,\qquad \gamma^r\bigl((x_v)_v\bigr)(y)=\sum_{v\in S}\mathrm{inv}_v\bigl(x_v\cup y_v\bigr)
$$
と定める。ここで $(\ )^\vee:=\operatorname{Hom}_{\mathrm{cont}}(\ ,\mathbb Q/\mathbb Z)$、$y_v$ は $y$ の局所化である。
$K,S,M$ を上の通りとする。
この定理はこの記事では証明しない。Mil06 Chapter I, Theorem 4.10(pp. 56–57、証明は pp. 58–65)、NSW20 Theorem (8.6.7)(p. 485)と (8.6.10)(p. 489)に証明がある。NSW20 p. 503 によれば、定理は Tate が発表し、$S$ がすべての素点からなる場合の証明を Poitou が与えた。各項の位相は次の通りである(Mil06 p. 57)。
| $H^r(G_S,M)$ | $P^r_S(K,M)$ | $H^{2-r}(G_S,M^D)^\vee$ | |
|---|---|---|---|
| $r=0$ | 有限 | コンパクト | コンパクト |
| $r=1$ | 離散 | 局所コンパクト | コンパクト |
| $r=2$ | 離散 | 離散 | 有限 |
$K$ を代数体、$m\ge2$ とし、$S$ をアルキメデス的な素点をすべて含む素点の集合で、$S$ に属する非アルキメデス的な素点の集合が $1/2$ より大きい Dirichlet 密度をもつものとする。$\mathbb Z/m\mathbb Z$ に $G_S$ が自明に作用するとき、$Ш^1_S(K,\mathbb Z/m\mathbb Z)=0$ である。ここでは $m$ が $R_{K,S}$ の単元であることは仮定しない(def-pt-sha の $Ш^1_S$ の定義はこの場合もそのまま意味をもつ)。
作用が自明なので、$H^1(G_S,\mathbb Z/m\mathbb Z)$ は連続準同型 $\chi\colon G_S\to\mathbb Z/m\mathbb Z$ の群であり、$H^1(K_v,\mathbb Z/m\mathbb Z)$ は $G_v$ からの連続準同型の群で、局所化は $G_v\to G_S$ との合成である(アルキメデス的な $v$ でも 1 次の Tate コホモロジーは通常のものと同じである)。$\chi\in Ш^1_S(K,\mathbb Z/m\mathbb Z)$ とし、$L$ を $\operatorname{Ker}\chi$ の固定体、$d:=[L:K]=|\operatorname{Im}\chi|$ とする。$L/K$ は $K_S$ に含まれる巡回拡大である。
$v\in S$ が非アルキメデス的なら、$\chi$ の $G_v$ への制限が $0$ なので、$G_v$ の $\operatorname{Gal}(L/K)$ での像、すなわち $v$ の上の $L$ の素イデアルの分解群は自明である。よって $v$ は $L$ で完全分解する。したがって $S$ の非アルキメデス的な素点の集合は $\operatorname{Spl}(L/K)$ に含まれる。Dirichlet 密度の定義の和は部分集合で小さくなるので、Chebotarevの密度定理 の命題「完全分解する素イデアルの密度」により
$$
\frac12< d\bigl(S\text{ の非アルキメデス的な素点}\bigr)\le d\bigl(\operatorname{Spl}(L/K)\bigr)=\frac1d
$$
であり、$d=1$ である。よって $\chi=0$ である。$\square$
$K$ を代数体、$n\ge2$ とし、$S$ をすべての素点の集合とする。次は完全列である。
$$
0\to\operatorname{Br}(K)[n]\to\bigoplus_{v}\operatorname{Br}(K_v)[n]\xrightarrow{\ \sum_v\mathrm{inv}_v\ }\tfrac1n\mathbb Z/\mathbb Z\to0
$$
とくに、$K$ 上の中心的単純環の類で位数が $n$ を割るものは、すべての完備化で分裂すれば分裂する。
$M=\mu_n$ とすると $M^D=\mathbb Z/n\mathbb Z$(自明な作用)である。Galoisコホモロジー の命題「1の $n$ 乗根の係数のコホモロジー」により $H^2(K,\mu_n)=\operatorname{Br}(K)[n]$、同様に非アルキメデス的な $v$ で $H^2(K_v,\mu_n)=\operatorname{Br}(K_v)[n]$ であり、アルキメデス的な $v$ でも 2 次の Tate コホモロジーは通常のものと同じなので同様である。$M$ が有限なので、$M$ が不分岐な $v$ では $H^2_{\mathrm{un}}(K_v,M)=0$ となり、$P^2_S(K,\mu_n)=\bigoplus_vH^2(K_v,\mu_n)$ である(Mil06 Chapter I, §4, p. 55。この記事では証明しない)。
thm-pt-main の 2 の末尾は $H^2(K,\mu_n)\xrightarrow{\beta^2}\bigoplus_v\operatorname{Br}(K_v)[n]\xrightarrow{\gamma^2}H^0(K,\mathbb Z/n\mathbb Z)^\vee\to0$ である。$\operatorname{Ker}\beta^2=Ш^2(K,\mu_n)$ は、thm-pt-main の 1 により $Ш^1(K,\mathbb Z/n\mathbb Z)$ の双対であり、prop-pt-sha-vanishing(すべての素点の集合の密度は $1$)により $0$ である。よって $\beta^2$ は単射である。$H^0(K,\mathbb Z/n\mathbb Z)=\mathbb Z/n\mathbb Z$ は $1$ で生成され、$\gamma^2$ の定義から $\gamma^2((x_v))(1)=\sum_v\mathrm{inv}_v(x_v\cup1)=\sum_v\mathrm{inv}_v(x_v)$ である。準同型 $\mathbb Z/n\mathbb Z\to\mathbb Q/\mathbb Z$ を $1$ での値で表せば、$H^0(K,\mathbb Z/n\mathbb Z)^\vee=\frac1n\mathbb Z/\mathbb Z$ で、$\gamma^2$ は $\sum_v\mathrm{inv}_v$ になる。最後の主張は単射性の言い換えである(Brauer群)。$\square$
$K=\mathbb Q$、$M=\mu_2=\{\pm1\}$、$S=\{2,\infty\}$ とする。$|M|=2$ は $R_{\mathbb Q,S}=\mathbb Z[1/2]$ の単元である。$\mu_2\cong\mathbb Z/2\mathbb Z$ なので $M^D\cong\mathbb Z/2\mathbb Z\cong M$ である。
要点:$H^1(G_S,\mu_2)$ の元は、$S$ の外で不分岐な 2 次体に対応し、そのような 2 次体は $\mathbb Q(\sqrt d)$($d=-1,\pm2$)に限る。
1:Galoisコホモロジー の定理「一般論の基本事項」の 3 により、インフレーション $H^1(G_S,\mu_2)\to H^1(\mathbb Q,\mu_2)$ は単射である($\mu_2$ には $\operatorname{Gal}(\overline{\mathbb Q}/\mathbb Q_S)$ が自明に作用する)。$H^1(\mathbb Q,\mu_2)=\operatorname{Hom}(G_{\mathbb Q},\mu_2)$ で、$d\in\mathbb Q^\times$ に対応する準同型は $\sigma\mapsto\sigma(\sqrt d)/\sqrt d$ であり、その核の固定体は $\mathbb Q(\sqrt d)$ である(Galoisコホモロジー の命題「1の $n$ 乗根の係数のコホモロジー」)。準同型が $G_S$ を経由することは、$\mathbb Q(\sqrt d)\subset\mathbb Q_S$、すなわち $\mathbb Q(\sqrt d)$ が $2$ 以外の素数で不分岐であることと同値である。$d$ を平方因子をもたない $1$ でない整数とすると、2次体 の系「分岐する素数」により、$d$ を割る奇素数は $\mathbb Q(\sqrt d)$ で分岐し、それ以外の奇素数は分岐しない。よって $d\in\{-1,2,-2\}$ であり、$d=1$ と合わせて像は $W_0$ である。
2:Kummer 同型により $H^1(\mathbb Q_2,\mu_2)=\mathbb Q_2^\times/(\mathbb Q_2^\times)^2$ は位数 $8$(p進数体 の系「平方数の判定と平方類」)、$H^1(\mathbb R,\mu_2)=\mathbb R^\times/(\mathbb R^\times)^2=\{\pm1\}$ は位数 $2$ である。$-1$ は負なので $\mathbb R$ で平方でなく、$\pm2$ は $2$ 進付値が奇数なので $\mathbb Q_2$ で平方でない。よって $W_0$ の $1$ 以外の元の局所化は $1$ でなく、$\beta^1$ は単射である。$\square$
この例で、$W:=\beta^1(H^1(G_S,\mu_2))\subset P^1_S(\mathbb Q,\mu_2)$ について $\operatorname{Im}\beta^1=\operatorname{Ker}\gamma^1$ が成り立つ。すなわち、局所的な類の組 $(x_2,x_\infty)\in\mathbb Q_2^\times/(\mathbb Q_2^\times)^2\times\mathbb R^\times/(\mathbb R^\times)^2$ が大域的な類から来るための必要十分条件は、すべての $b\in\{-1,2\}$ について
$$
(x_2,b)_2\,(x_\infty,b)_\infty=1
$$
となることである。ここで $(\ ,\ )_v$ は 2 次の Hilbert 記号である。
この定理は、局所双対の対が Hilbert 記号であることを使えば、thm-pt-main の 2 の $P^1$ での完全性をこの場合に確かめたものになる。
局所の対の同定。 $M=M^D=\mu_2$($\mu_2\cong\mathbb Z/2\mathbb Z$ と同一視)について、局所の対 $H^1(K_v,\mu_2)\times H^1(K_v,\mathbb Z/2\mathbb Z)\to\operatorname{Br}(K_v)[2]\xrightarrow{\mathrm{inv}_v}\frac12\mathbb Z/\mathbb Z$ を Kummer 同型で $K_v^\times/(K_v^\times)^2$ の上の対とみると、$(a,b)$ の値は、$b$ が $K_v(\sqrt a)$ からのノルムであるときに限って $0$ になる(Ser79 Chapter XIV, §2, Proposition 4 の iii と Proposition 5, pp. 206–207)。ノルム剰余記号 の 2 次の Hilbert 記号も同じ条件で $1$ になり(同記事の命題「Hilbert記号の基本性質」の (iii) と交代性 (v)。$n=2$ では値が $\pm1$ なので対称である)、値は 2 通りしかないので、乗法的に書けば局所の対は Hilbert 記号 $(a,b)_v$ に一致する。$\mathbb R$ でも Serre の判定はそのまま使え(同書 §2 は一般の体を扱う)、$\mathbb C$ からのノルムは正の実数なので、対の値が $0$ でないのは $a,b<0$ のときに限る。これは $(a,b)_\infty=-1$ となる条件と同じなので、$\mathbb R$ でも局所の対は Hilbert 記号に一致する。よって $\gamma^1((x_v))(y)=0$ は $(x_2,y)_2(x_\infty,y)_\infty=1$ と同じであり、rem-pt-reading の通り $\operatorname{Ker}\gamma^1=W^\perp$($W$ の、この対の和についての直交補空間)である。
$W\subset W^\perp$。 $a,b\in\{-1,2\}$ について、奇素数 $p$ では $a,b$ が $p$ 進単数なので $(a,b)_p=1$ であり(ノルム剰余記号 の系「$p$ 進数体の 2 次のHilbert記号($p$ は奇素数)」)、ノルム剰余記号 の定理「Hilbertの積公式(有理数体)」により $(a,b)_2(a,b)_\infty=\prod_v(a,b)_v=1$ である。Hilbert 記号は各変数について乗法的なので、$W$ の任意の 2 元の対の和は $0$ であり、$W\subset W^\perp$ である。
位数。 $\mathbb Q_2$ の 2 次の Hilbert 記号は非退化であり(ノルム剰余記号 の命題「Hilbert記号の基本性質」の (vi))、$\mathbb R$ では $(-1,-1)_\infty=-1$ なので非退化である。よって $P:=P^1_S(\mathbb Q,\mu_2)$ の上の対は非退化で、$P\to P^\vee$ は位数 $16$ の有限群の同型である。$W^\perp$ はこの同型で $(P/W)^\vee$ に対応するので、$|W^\perp|=|P|/|W|=16/4=4$ である(prop-pt-example-h1)。$W\subset W^\perp$ で位数が等しいので $W=W^\perp$、すなわち $\operatorname{Im}\beta^1=\operatorname{Ker}\gamma^1$ である。$\square$
この例で、9 項の各項の位数は順に $2,4,2,4,16,4,2,4,2$ である。$H^0(G_S,\mu_2)=\mu_2$、$P^0=H^0(\mathbb Q_2,\mu_2)\times\hat H^0(\mathbb R,\mu_2)$($N_{\mathbb C/\mathbb R}$ は $\mu_2$ の上で 2 乗写像なので $\hat H^0(\mathbb R,\mu_2)=\mu_2$)、$P^2=\operatorname{Br}(\mathbb Q_2)[2]\times\operatorname{Br}(\mathbb R)[2]$ の位数はそれぞれ $2,4,4$ であり、双対の項は $M^D\cong M$ から同じ位数をもつ。完全列では位数の交代積が $1$ になるので、$|H^2(G_S,\mu_2)|=2$ が thm-pt-main から従う。
$16$ は $2$ 以外のすべての素点 $v$ で $\mathbb Q_v$ の 8 乗数だが、$\mathbb Q$ の 8 乗数ではない。実際、
$$
X^8-16=(X^2-2)(X^2+2)(X^2-2X+2)(X^2+2X+2)
$$
であり、後ろの 2 つは $(X\mp1)^2+1$ なので、$X^8-16$ は $2,-2,-1$ のどれかの平方根があれば根をもつ。奇素数 $p$ について、Legendre 記号の積 $\left(\frac2p\right)\left(\frac{-2}p\right)\left(\frac{-1}p\right)=\left(\frac{4}p\right)=1$ なので、どれか 1 つは $1$ であり、その数は $\mathbb F_p$ の平方数である。$p$ は奇数で、その数は $p$ 進単数なので、Henselの補題 の命題「奇素数での単元の平方根」により $\mathbb Q_p$ で平方数になる。$\mathbb R$ では $16=(\sqrt2)^8$ である。一方 $16$ の $2$ 進付値は $4$ で $8$ の倍数でないので、$16$ は $\mathbb Q_2$ の 8 乗数でなく、したがって $\mathbb Q$ の 8 乗数でもない。Kummer 同型 $H^1(\mathbb Q,\mu_8)\cong\mathbb Q^\times/(\mathbb Q^\times)^8$ で言えば、$16$ の類は $2$ 以外のすべての素点で局所的に消えるが $0$ でない。局所化を見る素点から、$|M|=8$ を割る素数 $2$ の上の素点を除くと、局所大域原理が成り立たなくなる例である。
次の表は、この記事の定理の仮定を 1 つずつ外したときに何が崩れるかを示す。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| thm-pt-main の $\lvert M\rvert$ が $R_{K,S}$ の単元 | $K=\mathbb Q$、$M=\mathbb Z/2\mathbb Z$、$S=\{\infty\}$ | 9 項の列の $P^1$ での完全性 |
| prop-pt-sha-vanishing の密度が $1/2$ より大きい | $K=\mathbb Q(\sqrt{-5})$、$m=2$、$S=$ 無限素点と $K(i)$ で完全分解する素イデアル | $Ш^1_S(K,\mathbb Z/2\mathbb Z)=0$ |
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