カンドルコホモロジー(quandle cohomology)とは、カンドル $X$ の元の組から作るラック鎖複体を、隣り合う 2 つの元が等しい組で割った鎖複体のコホモロジーである。2 次のコサイクルは $\phi(x,z)+\phi(x\ast z,y\ast z)=\phi(x,y)+\phi(x\ast y,z)$ と $\phi(x,x)=0$ をみたす関数で、結び目の図式の彩色ごとに交差での値を符号付きで足して集めた状態和は Reidemeister 移動で変わらず、コホモロジー類だけで決まる結び目の不変量(コサイクル不変量)になる。自明カンドルからは絡み数が得られ、4 元の Alexander カンドルでは三葉結び目の値が彩色の数だけでは決まらない。
カンドルコホモロジー(quandle cohomology)は、カンドル $X$ から作る鎖複体のコホモロジーである。$X$ の元の $n$ 個組を生成元とし、組の 1 つの元を取り除く操作と、その元で手前の元に作用してから取り除く操作の差をとって境界写像を作る。隣り合う 2 つの元が等しい組(退化した組)を割ると、カンドルコホモロジーが得られる。割る前のものは ラック についても定義でき、ラックコホモロジーと呼ばれる。
2 次のコサイクル $\phi\colon X\times X\to A$ は等式
$$
\phi(x,z)+\phi(x\ast z,y\ast z)=\phi(x,y)+\phi(x\ast y,z),\qquad\phi(x,x)=0
$$
をみたす関数である。結び目の図式を $X$ で彩色し(カンドル彩色)、各交差に $\phi$ の値を符号付きで置いて足し、すべての彩色について集めたものが、J. S. Carter、D. Jelsovsky、鎌田聖一(Seiichi Kamada)、L. Langford、Masahico Saito によるコサイクル不変量(状態和)である。この記事では、境界写像の 2 回の合成が $0$ であること、コサイクル不変量が Reidemeister 移動で変わらないこと、コホモロジー類だけで決まることを証明する。例として、自明カンドルからは絡み数が、4 元の Alexander カンドルからは三葉結び目の非自明な値が得られ、3 元の二面体カンドルの 2 次コホモロジーは消えることを計算する。
$X$ をラックとする。$n\ge1$ について、$X^n$ の元を基底とする自由アーベル群を $C^R_n(X)$ とし、$C^R_n(X)=0$($n\le0$)とする。$1\le i\le n$ について、$C^R_n(X)\to C^R_{n-1}(X)$ を
$$
d_i^0(x_1,\dots,x_n):=(x_1,\dots,\widehat{x_i},\dots,x_n),
$$
$$
d_i^1(x_1,\dots,x_n):=(x_1\ast x_i,\dots,x_{i-1}\ast x_i,\widehat{x_i},x_{i+1},\dots,x_n)
$$
で定める($\widehat{x_i}$ は取り除くことを表す)。
$n\ge2$ について
$$
\partial_n:=\sum_{i=1}^n(-1)^i\bigl(d_i^0-d_i^1\bigr)\colon C^R_n(X)\to C^R_{n-1}(X)
$$
とし、$n\le1$ では $\partial_n:=0$ とする。$i=1$ の項は $d_1^0=d_1^1$ なので $0$ である。
$1\le i< j\le n$、$\kappa,\lambda\in\{0,1\}$ について、$C^R_n(X)$ の上で $d_i^\kappa d_j^\lambda=d_{j-1}^\lambda d_i^\kappa$ である。
両辺とも $x_i,x_j$ を取り除き、$k>j$ の成分はそのままにする。$i< k< j$ の成分は、両辺とも $\lambda=1$ のときだけ $x_k\ast x_j$ になる(左辺では先に $d_j^\lambda$ が作用し、右辺では $d_i^\kappa$ の後も $x_j$ は $j-1$ 番目に残っている)。$k< i$ の成分は、$\kappa=\lambda=1$ のとき左辺で $(x_k\ast x_j)\ast (x_i\ast x_j)$、右辺で $(x_k\ast x_i)\ast x_j$ になり、自己分配律で等しい。$\kappa=1,\lambda=0$ なら両辺とも $x_k\ast x_i$、$\kappa=0,\lambda=1$ なら両辺とも $x_k\ast x_j$、$\kappa=\lambda=0$ なら $x_k$ である。$\square$
$\partial_{n-1}\circ\partial_n=0$ である。したがって $(C^R_\bullet(X),\partial)$ は 鎖複体 である。
$n\ge3$ とする。$\partial_{n-1}\partial_n=\sum_{i,j}\sum_{\kappa,\lambda}(-1)^{i+j+\kappa+\lambda}d_i^\kappa d_j^\lambda$ である($1\le i\le n-1$、$1\le j\le n$)。$i< j$ の項 $(i,j,\kappa,\lambda)$ を $(i',j',\kappa',\lambda'):=(j-1,i,\lambda,\kappa)$ に対応させると、$i'\ge j'$ となり、これは $i\ge j$ の項全体への全単射である(逆は $(i',j')\mapsto(j',i'+1)$)。lem-qcoh-cubical により対応する 2 項の写像は等しく、符号は $(-1)^{i+j}$ と $(-1)^{i+j-1}$ で逆なので、すべて打ち消し合う。$\square$
$X$ がカンドルのとき、ある $k$ で $x_k=x_{k+1}$ となる組で生成される部分群 $C^D_n(X)$ は $\partial(C^D_n)\subset C^D_{n-1}$ をみたし、部分複体である。
$x_k=x_{k+1}$ とする。$i\notin\{k,k+1\}$ なら、$d_i^\kappa$ の像でも $k,k+1$ 番目から来た 2 つの成分は等しい(両方がそのままか、両方が同じ $x_i$ で作用される)。$i=k,k+1$ については、$d_k^0$ と $d_{k+1}^0$ の像は同じ組である。$d_{k+1}^1$ は $x_k$ に $x_{k+1}=x_k$ で作用させて $x_k\ast x_k=x_k$ を残し、それより前の成分には $d_k^1$ と同じく $x_k$ で作用するので、$d_k^1$ と同じ組を与える。符号 $(-1)^k$ と $(-1)^{k+1}$ でこれらは打ち消し合う。$\square$
アーベル群 $A$ について、$C^n_R(X;A):=\operatorname{Hom}(C^R_n(X),A)$(関数 $X^n\to A$ の全体)、$\delta:=\operatorname{Hom}(\partial,A)$ とし、そのコホモロジーをラックコホモロジー $H^n_R(X;A)$ という。$X$ がカンドルのとき、退化した組で $0$ になる関数のなす部分複体 $C^n_Q(X;A)$ のコホモロジーをカンドルコホモロジー $H^n_Q(X;A)$ という。これは商複体 $C^R/C^D$ の $\operatorname{Hom}$ である。
低い次数を書き下す。$\psi\colon X\to A$ について $\partial(x,y)=(x)-(x\ast y)$ なので $\delta\psi(x,y)=\psi(x)-\psi(x\ast y)$ である。$\partial(x,y,z)=(x,z)-(x\ast y,z)-(x,y)+(x\ast z,y\ast z)$ なので、$\phi\in C^2_Q(X;A)$ がコサイクルであることは
$$
\phi(x,z)+\phi(x\ast z,y\ast z)=\phi(x,y)+\phi(x\ast y,z)\qquad(x,y,z\in X)
$$
と $\phi(x,x)=0$ である。$C^1_Q=C^1_R$ で、$C^0=0$ なので $B^1=0$ である。
カンドル $X$ について、$H^1_Q(X;A)$ は $X$ の軌道(カンドル の定義「内部自己同型群と連結性」)の上の関数 $\operatorname{Orb}(X)\to A$ の全体と同型である。
$\psi$ がコサイクルであることは、すべての $x,y$ で $\psi(x\ast y)=\psi(x)$、すなわち $\psi\circ S_y=\psi$ であることと同値で、このとき $\psi\circ S_y^{-1}=\psi$ でもある。よってコサイクルは軌道の上で一定な関数で、$B^1=0$ なので $H^1_Q=Z^1_Q$ である。$\square$
自明カンドル $T_n=\{1,\dots,n\}$($x\ast y=x$)では、$\delta\psi=0$ でコサイクル条件は両辺が等しく自明なので、$H^2_Q(T_n;A)$ は $\phi(x,x)=0$ をみたす関数 $T_n\times T_n\to A$ の全体、すなわち $A^{n(n-1)}$ である。
$R_3=\mathbb{Z}/3$($x\ast y=2y-x$)について、任意のアーベル群 $A$ で $H^2_Q(R_3;A)=0$ である。
$R_3$ では $x\ne y$ なら $x\ast y=y\ast x$ は第 3 の元である。$(x,y,z)$ を $\{0,1,2\}$ の並べ替えとしてコサイクル条件に入れると、$x\ast z=y$、$y\ast z=x$、$x\ast y=z$ なので
$$
\phi(x,z)+\phi(y,x)=\phi(x,y)
$$
を得る。$a:=\phi(0,1)$、$b:=\phi(0,2)$ と置くと、並べ替え $(0,1,2)$、$(0,2,1)$、$(1,0,2)$、$(1,2,0)$ の式から順に
$$
\phi(1,0)=a-b,\quad\phi(2,0)=b-a,\quad\phi(1,2)=-b,\quad\phi(2,1)=-a
$$
が出る(たとえば $(1,0,2)$ の式は $\phi(1,2)+\phi(0,1)=\phi(1,0)$)。一方 $\psi(0):=0$、$\psi(1):=-b$、$\psi(2):=-a$ とすると、$\delta\psi(x,y)=\psi(x)-\psi(x\ast y)$ は
$$
\delta\psi(0,1)=\psi(0)-\psi(2)=a,\quad\delta\psi(0,2)=\psi(0)-\psi(1)=b,
$$
$$
\delta\psi(1,0)=\psi(1)-\psi(2)=a-b,\quad\delta\psi(1,2)=\psi(1)-\psi(0)=-b,
$$
$$
\delta\psi(2,0)=\psi(2)-\psi(1)=b-a,\quad\delta\psi(2,1)=\psi(2)-\psi(0)=-a
$$
で、対角では $0$ である。よって $\phi=\delta\psi$ で、すべての 2 次コサイクルはコバウンダリである。$\square$
$D$ を向き付けられた絡み目の図式とし、交差の符号 $\varepsilon_\tau$ は Wirtinger表示 の定義「弧と交差の符号」に、右の弧・左の弧は 結び目カンドル の言い方に従う($\varepsilon_\tau=1$ は下の線が上の弧の右から左へくぐること)。有限カンドル $X$ による彩色は、各交差で $c(\text{左の弧})=c(\text{右の弧})\ast c(\text{上の弧})$ をみたす写像で、その全体を $\operatorname{Col}_X(D)$ と書く(カンドル彩色 の定義「カンドル彩色」)。アーベル群 $A$ の群環 $\mathbb{Z}[A]$ の基底を $[a]$($a\in A$)と書く。
$\phi\in Z^2_Q(X;A)$ とする。彩色 $c$ と交差 $\tau$ について、重みを
$$
W_\phi(\tau,c):=\varepsilon_\tau\,\phi\bigl(c(\text{右の弧}),\,c(\text{上の弧})\bigr)\in A
$$
とし、図式の状態和を
$$
\Phi_\phi(D):=\sum_{c\in\operatorname{Col}_X(D)}\Bigl[\,\sum_{\tau}W_\phi(\tau,c)\Bigr]\in\mathbb{Z}[A]
$$
と定める。$A$ を乗法的に書く文献では、重みの積の和として表される。
図式 $D'$ が $D$ に Reidemeister 移動(結び目カンドル の定義「Reidemeister 移動」の I 型・II 型・III 型)を 1 回施したものなら、$\Phi_\phi(D')=\Phi_\phi(D)$ である。
ラック の定理「移動と彩色」により、彩色は移動の前後で円板の外の色を保って 1 対 1 に対応する。円板の外の交差の重みは変わらないので、対応する彩色について円板の中の重みの和が等しいことを示せばよい。
I 型。 カンドルでは、よじれの交差の上の弧と 2 本の下の弧はどれも同じ色 $a$ である(ラック の定理「移動と彩色」の 2 で $\pi=\mathrm{id}$)。重みは $\pm\phi(a,a)=0$ である。
II 型。 2 つの交差で上の弧は同じ(色 $c$)で、右の弧の色も同じである(両端の弧が右側なら両方とも $a=a'$、中央の弧が右側なら両方ともその弧)。下の線は上の線を一度は右から左へ、一度は左から右へ横切るので符号は逆で、重みは打ち消し合う。
III 型。 ラック の証明「III 型」の記号 $T,M,B$、$z$、$y_{\mathrm R}=y$、$y_{\mathrm L}=y\ast z$、正方形の彩色 $\beta$ を使い、$s(\mathrm R):=1$、$s(\mathrm L):=-1$ とする。$B$ の中央の弧の象限を $(\sigma,\tau)$ とすると、$B\cap M$ での右の弧は象限 $(\mathrm R,\tau)$ に、$B\cap T$ での右の弧は象限 $(\sigma,\mathrm R)$ にある。そこで
$$
w_M(\tau):=\phi\bigl(\beta(\mathrm R,\tau),y_\tau\bigr),\qquad w_T(\sigma):=\phi\bigl(\beta(\sigma,\mathrm R),z\bigr)
$$
と置くと、この 2 つの交差の重みは $\varepsilon_p w_M(\tau)$ と $\varepsilon_q w_T(\sigma)$ である($\varepsilon_p,\varepsilon_q$ はそれぞれの符号)。$M\cap T$ の交差の重み $\pm\phi(y,z)$ は移動で変わらない。$x:=\beta(\mathrm R,\mathrm R)$ とするとコサイクル条件
$$
\phi(x,y)+\phi(x\ast y,z)=\phi(x,z)+\phi(x\ast z,y\ast z)
$$
は $w_M(\mathrm R)+w_T(\mathrm L)=w_T(\mathrm R)+w_M(\mathrm L)$ と同じなので、$\Delta:=w_M(\mathrm R)-w_M(\mathrm L)=w_T(\mathrm R)-w_T(\mathrm L)$ と置ける。
移動で中央の象限は $(\bar\sigma,\bar\tau)$(両方とも反対側)に替わり、各線の向きは変わらないので符号 $\varepsilon_p,\varepsilon_q$ も変わらない。重みの和の変化は
$$
\varepsilon_p\bigl(w_M(\tau)-w_M(\bar\tau)\bigr)+\varepsilon_q\bigl(w_T(\sigma)-w_T(\bar\sigma)\bigr)=\Delta\bigl(\varepsilon_p s(\tau)+\varepsilon_q s(\sigma)\bigr)
$$
である。$B$ が象限 $(\bar\sigma,\tau)$ から中央 $(\sigma,\tau)$ を通って $(\sigma,\bar\tau)$ へ進むとすると、$M$ を $\bar\sigma$ 側から $\sigma$ 側へ横切るので $\varepsilon_p=-s(\sigma)$、$T$ を $\tau$ 側から $\bar\tau$ 側へ横切るので $\varepsilon_q=s(\tau)$ である(逆向きに進むなら両方の符号が変わる)。よって $\varepsilon_ps(\tau)+\varepsilon_qs(\sigma)=0$ で、変化は $0$ である。$\square$
結び目カンドル の定理「Reidemeisterの定理」により、同値な結び目の図式は平面イソトピーと Reidemeister 移動の有限列で移り合う(平面イソトピーは弧・交差・左右・符号を保つ)。したがって $\Phi_\phi$ は結び目の不変量で、これをコサイクル不変量という。絡み目でも、図式の移動について同じ定理が成り立つことを認めれば不変量になる(CJKLS03 Theorem 4.4)。上の証明は向きの組み合わせをすべて同時に扱っており、符号の付き方の違う III 型を別に調べる必要がない。
$\psi\in C^1_Q(X;A)$ について $\Phi_{\phi+\delta\psi}(D)=\Phi_\phi(D)$ である。とくに $\phi$ がコバウンダリなら $\Phi_\phi(D)=\lvert\operatorname{Col}_X(D)\rvert\,[0]$ である。
彩色 $c$ を固定する。$\delta\psi$ の重みは $\varepsilon_\tau\bigl(\psi(c(\text{右}))-\psi(c(\text{左}))\bigr)$ である。$\varepsilon_\tau=1$ なら下の線は右の弧から入って左の弧へ出るので、これは $\psi(c(\text{入る弧}))-\psi(c(\text{出る弧}))$ に等しい。$\varepsilon_\tau=-1$ でも左右が入れ替わって同じ式になる。各弧は(下をくぐる交差をもつ成分では)ちょうど 1 つの交差から出てちょうど 1 つの交差へ入るので、交差についての和は打ち消し合って $0$ になる。下をくぐらない成分は寄与しない。$\square$
prop-qcoh-r3 と合わせると、$R_3$ の 2 次コサイクルによる状態和はつねに彩色の数(Fox の 3 彩色の数)の $[0]$ 倍で、それ以上の情報をもたない。
$L=K_1\cup K_2$ を 2 成分の絡み目、$X=T_2=\{1,2\}$、$a\in A$ とし、$\phi(1,2):=a$、ほかの値を $0$ とする。このとき
$$
\Phi_\phi(L)=2\,[0]+2\,\bigl[\operatorname{lk}(K_1,K_2)\,a\bigr]
$$
である。
$T_2$ では条件は $c(\text{左})=c(\text{右})$ なので、彩色は各成分を 1 色で塗るもので、4 つある。重みが $0$ でない交差は、右の弧(下の成分)の色が $1$、上の弧の色が $2$ のものだけである。$K_1$ を $1$、$K_2$ を $2$ で塗った彩色では、それは $K_2$ が $K_1$ の上を通る交差で、符号の和は 絡み数 の定理「交差の符号による公式」により $\operatorname{lk}(K_1,K_2)$ である。$K_1$ を $2$、$K_2$ を $1$ で塗った彩色では、それは $K_1$ が $K_2$ の上を通る交差で、符号の和は同じ定理によりやはり $\operatorname{lk}(K_1,K_2)$ である。両成分を同じ色で塗った 2 つの彩色では重みはすべて $0$ である。$\square$
$A=\mathbb{Z}$、$a=1$ とすると、Hopf 絡み目(絡み数 $\pm1$)の値は $2[0]+2[\pm1]$、2 成分の自明な絡み目の値は $4[0]$ で、彩色の数は同じでも状態和が両者を区別する。自明カンドルは結び目には何も与えないが、成分の間の絡みを検出する。
Alexanderカンドル $S_4=\mathbb{F}_4$($x\ast y=\omega x+(1+\omega)y$、$\omega^2=\omega+1$)と $A=\mathbb{Z}/2$ をとり、$\phi$ を 6 つの組
$$
(0,1),\ (1,0),\ (1+\omega,0),\ (0,1+\omega),\ (1,1+\omega),\ (1+\omega,1)
$$
で $1$、ほかで $0$ とする。$\phi$ がコサイクル条件をみたすことは $4^3$ 組の $(x,y,z)$ について確かめられる(有限の計算)。三葉結び目の図式(結び目カンドル の例「交差のない図式と三葉結び目」)の彩色の条件は $c_0=c_2\ast c_1$、$c_1=c_0\ast c_2$、$c_2=c_1\ast c_0$ で、重みの和は $\phi(c_2,c_1)+\phi(c_0,c_2)+\phi(c_1,c_0)$ である(係数が $\mathbb{Z}/2$ なので符号は効かない)。彩色は 16 個で(Alexanderカンドル の例「三葉結び目」)、定数の 4 個の重みは $0$、残りの 12 個($c_0\ne c_2$ を任意に選び $c_1=c_0\ast c_2$)の重みはすべて $1$ である。よって
$$
\Phi_\phi(\text{三葉結び目})=4\,[0]+12\,[1]
$$
で、$[0]$ の整数倍ではない。prop-qcoh-cohomologous により $\phi$ はコバウンダリでなく、$H^2_Q(S_4;\mathbb{Z}/2)\ne0$ である。
$(c_0,c_1,c_2)$ と 3 つの重み $\phi(c_2,c_1),\phi(c_0,c_2),\phi(c_1,c_0)$ は次のとおりで、どれも和は $1\pmod 2$ である。$(0,1+\omega,1)$:$1,1,1$。$(0,1,\omega)$:$0,0,1$。$(0,\omega,1+\omega)$:$0,1,0$。$(1,\omega,0)$:$0,1,0$。$(1,1+\omega,\omega)$:$0,0,1$。$(1,0,1+\omega)$:$1,1,1$。$(\omega,1+\omega,0)$:$1,0,0$。$(\omega,0,1)$:$1,0,0$。$(\omega,1,1+\omega)$:$1,0,0$。$(1+\omega,1,0)$:$1,1,1$。$(1+\omega,\omega,1)$:$0,1,0$。$(1+\omega,0,\omega)$:$0,0,1$。演算は $x\ast y=\omega x+(1+\omega)y$ で、たとえば $0\ast1=1+\omega$、$1\ast0=\omega$、$\omega\ast1=0$ である。
同じコサイクルで 8 の字結び目の値も $4[0]+12[1]$ である(CJKLS03 Theorem 8.12、p. 22。この記事では証明しない)。
3 次のコサイクル $\theta\in Z^3_Q(X;A)$ からも結び目の不変量が作られる。弧に加えて図式が平面を分ける領域にも $X$ の元を塗り、隣り合う 2 つの領域のうち弧の左側の領域の色を、右側の領域の色に弧の色で $\ast$ を施したものとする(影の彩色)。各交差に、右の弧と上の弧のどちらから見ても右側にある領域 $y$ をとって重み $\varepsilon_\tau\theta(c(y),c(\text{右の弧}),c(\text{上の弧}))$ を置き、和を集める(Kam02 §5、pp. 111–112。この記事では証明しない)。
$R_3$ と $A=\mathbb{Z}/3$ の 3 次コサイクル $\theta$ を、6 つの組 $(0,1,2),(0,2,1),(1,0,1),(1,0,2),(2,0,1),(2,0,2)$ で $1$、ほかで $0$ とすると(コサイクル条件は $3^4$ 組で確かめられる有限の計算)、この不変量は三葉結び目とその鏡像を区別する(Rourke–Sanderson、Kam02 Theorem 6.1、p. 114)。カンドルの彩色の数だけでは、結び目と鏡像は区別できない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $\phi(x,x)=0$ | 1 元のカンドル $\{e\}$ と $\phi(e,e)=a\ne0$ | I 型での不変性 |
| コサイクル条件 | $R_3$ で $\phi(0,1)=1$、ほかで $0$ | III 型の前後で対応する彩色の重みが等しいこと |
| 重みの符号 $\varepsilon_\tau$ | prop-qcoh-linking の $T_2$ と $\phi$ で符号を付けない重み | II 型での不変性 |
1 行目:コサイクル条件は両辺とも $2a$ で成り立つ。円の図式の値は $[0]$、符号 $1$ のよじれを 1 つ加えると $[a]$ になる。
2 行目:$(x,y,z)=(0,1,2)$ で $\phi(0,2)+\phi(1,0)=0\ne1=\phi(0,1)+\phi(2,2)$ である。prf-thm-qcoh-invariance の計算では、重みの変化はこの差の $\pm1$ 倍になる。
3 行目:$K_1$ を $K_2$ の下に 2 回くぐらせる II 型の移動で、$K_1$ を $1$、$K_2$ を $2$ で塗った彩色の重みが $2a$ 増える。
鎖複体とコホモロジーの定義は CJKLS03 §3(pp. 4–5)、状態和とその不変性は同 Definition 4.2–4.3・Theorem 4.4・Proposition 4.5(pp. 7–8)、$R_3$ の 2 次コホモロジーが $\mathbb{Z}$ 係数で消えることは同 Lemma 6.6(pp. 14–15)、自明カンドルと絡み数は同 Proposition 8.2(p. 19)にある。同論文は積を法線の向く側の弧に置き、重みを積でない側の下の弧の色で取っており、この記事の規約と合う。退化部分複体による短完全列が鎖複体として分裂し $H^n_R\cong H^n_Q\oplus H^n_D$ となること(Litherland–Nelson)は Kam02 Theorem 4.3(p. 110)に引かれている。ラックの 2 次コサイクルを使えば、I 型を除いた移動で不変な、枠付き絡み目の不変量が作られる(同 Remark 6.6、p. 115)。この不変量は 4 次元空間の曲面結び目にも 3 次コサイクルで拡張され、2 回ひねりのスパン三葉結び目がその向きを逆にしたものと異なることが示された(CJKLS03、Kam02 Theorem 6.4、p. 115)。
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