定数分離と方程式の実数解の個数(counting real roots by separating the parameter)とは、文字 $a$ を含む方程式を $a=g(x)$ の形に直し、曲線 $y=g(x)$ と直線 $y=a$ の交点の数で異なる実数解を数える方法である。割る式が $0$ になる点は別に調べる。$g$ が開区間で連続かつ増加(または減少)するなら、その区間の解は、$a$ が両端での $g$ の極限の間に(等号なしで)あるとき 1 個、それ以外は 0 個である。指数・対数を含むときは端の極限が要で、$x\to\infty$ で $\frac{e^x}{x}\to\infty$、$\frac{\log x}{x}\to0$ から、$e^x=ax$ の解は $a<0$ で 1 個、$0\le a<e$ で 0 個、$a=e$ で 1 個、$a>e$ で 2 個となる。
文字 $a$ を含む方程式の実数解の個数を調べるとき、方程式を $a=g(x)$ の形に直すことがある。これを定数分離(文字定数の分離)という。解は曲線 $y=g(x)$ と水平な直線 $y=a$ の交点の $x$ 座標なので、$g$ の増減さえ分かれば、すべての $a$ について解の個数が一度に分かる。
2 次方程式・3 次方程式でのこの方法は 解の配置 と 3次関数のグラフ で扱った。多項式では $x\to\pm\infty$ で $g(x)$ がどうなるかは最高次の項で決まる。指数関数や対数関数を含む方程式では、グラフの「端」($x\to\pm\infty$ や、定義されない点の近く)で何が起きるかを、別に確かめる必要がある。この記事はその確かめ方を主題にする。
この記事では、実数解の個数は異なる実数解の個数で数える。曲線と直線が接して交わる点の解も 1 個と数える(解の配置 では重解を 2 個と数える数え方も使っているので、比べるときは注意する)。
$x=0$ は解ではない(左辺 $e^0=1$、右辺 $0$)。そこで $x\ne0$ として両辺を $x$ で割ると、方程式は
$$
3=g(x),\qquad g(x):=\frac{e^x}x\quad(x\ne0)
$$
と同じになる。いくつかの点で $g$ の値を計算する。
| $x$ | $-1$ | $0.5$ | $1$ | $2$ |
|---|---|---|---|---|
| $g(x)$ | $-0.367\ldots$ | $3.297\ldots$ | $2.718\ldots$ | $3.694\ldots$ |
$g(0.5)>3>g(1)$、$g(1)<3< g(2)$ なので、$g$ が連続であることから(中間値の定理)、$0.5< x<1$ と $1< x<2$ に解が少なくとも 1 つずつある。$x<0$ では $e^x>0$、$x<0$ なので $g(x)<0$ で、$g(x)=3$ にはならない。
これで解は少なくとも 2 個と分かった。しかし、ちょうど 2 個だろうか。$x$ がもっと大きいところや、$0$ に近いところで、また $3$ になることはないだろうか。
$x>0$ で考える。両辺を $x$ で割ると $0.2=h(x)$、$h(x):=\dfrac{\log x}x$ となる。
| $x$ | $1$ | $e$ | $10$ | $20$ | $100$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $h(x)$ | $0$ | $0.367\ldots$ | $0.230\ldots$ | $0.149\ldots$ | $0.046\ldots$ |
$h(1)<0.2< h(e)$ と $h(10)>0.2>h(20)$ から、$1< x< e$ と $10< x<20$ に解が少なくとも 1 つずつある。$x=100$ では $h$ はもっと小さい。では、$x$ をさらに大きくしたとき、$h$ がまた増えて $0.2$ に戻ることはないのだろうか。表の値をいくら増やしても、この問いには答えられない。
2 つの例から、次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| $a=g(x)$ と分離し、$y=a$ との交点を数える | 等しい方程式への書き換え(割る式が $0$ にならないか確かめる) | rem-crg-procedure、ex-crg-divide |
| 増減表で「増加」の区間には交点が 1 つ | 狭義単調な区間での解の個数は、端の極限で決まる | thm-crg-monotone-count |
| $x\to\infty$ で $\dfrac{e^x}x\to\infty$ | 指数関数は $x$ の冪より速く増える | lem-crg-growth |
| 極値の値と端の値で $a$ を場合分け | 解の個数が変わるのは臨界値と端の極限だけ | prop-crg-critical-values |
次の事実を使う。
$x$ が $p$ より大きい側から $p$ に近づくことを $x\to p+0$、$q$ より小さい側から近づくことを $x\to q-0$ と書く。「$g(x)\to\infty$」は、$g(x)$ がどんな数よりも大きくなっていくこと(正の無限大に発散すること)を表す。極限の正確な意味は 極限とε-δ で扱う。以下では、区間の端 $p$ が $-\infty$、$q$ が $\infty$ の場合もまとめて扱い、そのときは $x\to p+0$ を $x\to-\infty$、$x\to q-0$ を $x\to\infty$ と読みかえる。
$p< q$ とし($p=-\infty$、$q=\infty$ でもよい)、関数 $g$ は開区間 $(p,q)$ で連続で増加するとする。端での極限
$$
L=\lim_{x\to p+0}g(x),\qquad M=\lim_{x\to q-0}g(x)
$$
が存在するとする($L=-\infty$、$M=\infty$ でもよい)。このとき、実数 $a$ について
方針:増加であることから解は 1 個以下になる。端の極限から $g$ のとる値の範囲を決め、範囲の中の値は中間値の定理で必ずとられることを示す。
段 1(解は 1 個以下)。$x_1< x_2$ がどちらも解だとすると、$g$ は増加なので $g(x_1)< g(x_2)$ である。ところが両方とも $a$ に等しいので矛盾する。よって解は多くても 1 つである。
段 2($g$ の値は $L$ と $M$ の間)。$(p,q)$ の点 $x$ を 1 つとり、$L< g(x)$ を示す。$p< x'< x$ となる $x'$ を 1 つとる。$p< t< x'$ のすべての $t$ で、$g$ は増加なので $g(t)< g(x')$ である。$t\to p+0$ とすると、$g(x')$ より小さい値の極限なので $L\le g(x')$ である($L=-\infty$ のときもこの不等式は成り立つとみる)。さらに $g(x')< g(x)$ なので $L< g(x)$ である。同じように、$x< x''< q$ となる $x''$ をとると $g(x)< g(x'')\le M$ である。したがって $(p,q)$ のすべての $x$ で $L< g(x)< M$ である。
段 3(2 の証明)。$a\le L$ なら、段 2 より $g(x)>L\ge a$ なので $g(x)=a$ となる $x$ はない。$a\ge M$ のときも同様である。
段 4(1 の証明)。$L< a< M$ とする。$x\to p+0$ で $g(x)\to L$ であり $L< a$ なので、$p$ に十分近い $x_1$ では $g(x_1)< a$ となる($L=-\infty$ のときも、$g(x_1)$ はいくらでも小さくなるので、そのような $x_1$ がある)。同じように、$q$ に十分近い $x_2$ では $g(x_2)>a$ となる。$g(x_1)< a< g(x_2)$ で $g$ は増加なので、$x_1< x_2$ である($x_1\ge x_2$ なら $g(x_1)\ge g(x_2)$ となってしまう)。$g$ は閉区間 $[x_1,x_2]$ で連続なので、中間値の定理 により $g(c)=a$ となる $c$ が $x_1< c< x_2$ にある。段 1 と合わせて、解はちょうど 1 つである。
段 5(減少の場合)。$g$ が減少するなら $-g$ は増加し、端の極限は $-L$、$-M$ である。$g(x)=a$ は $-g(x)=-a$ と同じなので、1・2 を $-g$ と $-a$ に使えばよい。$\square$
段 2 で「$L< g(x)$」と等号がつかないことが大切である。$g$ は端の極限の値 $L$、$M$ そのものはとらない。この点は ex-crg-limit-not-attained で使う。
手順の 3 で必要になる極限を、まとめて示す。
方針:1 は差の関数を 2 回微分し、導関数の符号から増加を 2 回使う。2 は 1 とはさみうち、3・4 は $x=e^t$ とおいて 2 に帰着させる。
段 1(1 の証明)。$\varphi(x)=e^x-1-x-\dfrac{x^2}2$ とおく。$\varphi'(x)=e^x-1-x$、$\varphi''(x)=e^x-1$ である。$x>0$ なら $e^x>e^0=1$ なので $\varphi''(x)>0$ である。よって $\varphi'$ は $[0,\infty)$ で増加し(rem-crg-premises の 1)、$x>0$ で $\varphi'(x)>\varphi'(0)=1-1-0=0$ である。すると $\varphi$ も $[0,\infty)$ で増加し、$x>0$ で $\varphi(x)>\varphi(0)=1-1-0-0=0$ である。これが 1 である。
段 2(2 の証明)。$x>0$ で、1 から
$$
\frac{e^x}x>\frac{1+x+\frac{x^2}2}x>\frac{\frac{x^2}2}x=\frac x2
$$
である(2 つ目の不等号は $1+x>0$ から)。$x\to\infty$ で $\dfrac x2\to\infty$ なので、$\dfrac{e^x}x\to\infty$ である。逆数をとると $0<\dfrac x{e^x}<\dfrac2x$ で、$\dfrac2x\to0$ なので、はさみうちにより $\dfrac x{e^x}\to0$ である。
段 3(3 の証明)。$x>0$ で $t=\log x$ とおくと $x=e^t$ で、$\dfrac{\log x}x=\dfrac t{e^t}$ である。$x\to\infty$ のとき $t=\log x\to\infty$ なので、2 から $\dfrac t{e^t}\to0$、つまり $\dfrac{\log x}x\to0$ である。
段 4(4 の証明)。$0< x<1$ で $t=-\log x$ とおくと $t>0$、$x=e^{-t}$ で、$x\log x=e^{-t}\cdot(-t)=-\dfrac t{e^t}$ である。$x\to+0$ のとき $\log x\to-\infty$ なので $t\to\infty$ であり、2 から $-\dfrac t{e^t}\to0$ である。$\square$
| $x$ | $1$ | $2$ | $5$ | $10$ | $20$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $\dfrac{e^x}x$ | $2.718\ldots$ | $3.694\ldots$ | $29.68\ldots$ | $2202.6\ldots$ | $2.42\ldots\times10^7$ |
| $\dfrac x{e^x}$ | $0.367\ldots$ | $0.270\ldots$ | $0.0336\ldots$ | $0.000454\ldots$ | $4.12\ldots\times10^{-8}$ |
| $\dfrac{\log x}x$ | $0$ | $0.346\ldots$ | $0.321\ldots$ | $0.230\ldots$ | $0.149\ldots$ |
$x\log x$ は、$x=0.1$ で $-0.230\ldots$、$x=0.01$ で $-0.0460\ldots$、$x=0.001$ で $-0.00690\ldots$ である。$\dfrac{\log x}x$ は $x=e$ までは増え、その後はゆっくり $0$ に近づく。$\dfrac{e^x}x$ の $x=10$ から $x=20$ への増え方に比べて、$\dfrac{\log x}x$ の減り方はずっと遅い。表の値だけから「$0$ に近づく」と決めることはできず、段 3 のような証明が要る。
分母・分子がともに $\infty$ に発散する形の極限は、$\frac\infty\infty$ の形の l'Hôpital の定理でも求められる(l'Hôpitalの定理(高校数学) では、この形は紹介だけで証明していない)。本記事では、1 のような不等式から直接示した。
ex-crg-start-exp の問いに答える。導関数の計算には商の微分(積の微分とLeibnizの公式)を使う。
実数 $a$ について、方程式 $e^x=ax$ の実数解の個数は次のとおりである。
方針:rem-crg-procedure の 4 つの手順をこの順に行う。
段 1(分離する)。$x=0$ は解ではない($e^0=1\ne0=a\cdot0$)。$x\ne0$ では両辺を $x$ で割って、方程式は
$$
a=g(x),\qquad g(x)=\frac{e^x}x\quad(x\ne0)
$$
と同じになる。
段 2(区間に分ける)。$g$ の定義域は $(-\infty,0)$ と $(0,\infty)$ の 2 つの区間に分かれる。商の微分により
$$
g'(x)=\frac{e^x\cdot x-e^x\cdot1}{x^2}=\frac{(x-1)e^x}{x^2}
$$
である。$e^x>0$、$x^2>0$ なので、$g'(x)$ の符号は $x-1$ の符号と同じである。したがって $g$ は $(-\infty,0)$ で減少、$(0,1]$ で減少、$[1,\infty)$ で増加する。$g(1)=e$ である。
段 3(端を調べる)。
| 区間 | 増減 | 端の値・極限 | $g(x)=a$ の解が 1 つある $a$ |
|---|---|---|---|
| $(-\infty,0)$ | 減少 | $0$ から $-\infty$ へ | $a<0$ |
| $(0,1)$ | 減少 | $\infty$ から $e$ へ | $a>e$ |
| $x=1$ | 極小 | $g(1)=e$ | $a=e$ |
| $(1,\infty)$ | 増加 | $e$ から $\infty$ へ | $a>e$ |
曲線 $y=\frac{e^x}{x}$ と水平な直線 $y=a$。$a=3$ では 2 点、$a=e$ では極小点 $(1,e)$ で接して 1 点、$a=1$ では交わらず、$a=-1$ では $x<0$ の部分と 1 点で交わることを見る図。
分離しないで、$y=e^x$ と原点を通る直線 $y=ax$ の交点を数えることもできる(図2)。直線の傾き $a$ を変えると直線が原点のまわりに回る。$a=e$ のとき直線は点 $(1,e)$ で $y=e^x$ に接する(接線の傾き $e^1=e$、接線 $y=e(x-1)+e=ex$ が原点を通る)。$a>e$ で 2 点、$0\le a< e$ で交わらず、$a<0$ で 1 点という結果は同じである。しかし直線が回ると、どこで交わるかを目で追いにくい。定数分離では直線が水平のまま上下に動くだけなので、増減表だけで数えられる。接線の本数を数える方法は 接線・法線と曲線の凹凸 でも扱う。
$y=e^x$ と原点を通る直線 $y=ax$($a=3,e,1,-1$)。$a=e$ の直線は点 $(1,e)$ での接線で、これを境に交点の数が変わることを見る図。
$\log x$ は $x>0$ でだけ定義されるので、$x>0$ で考える。
段 1(分離する)。$x>0$ なので両辺を $x$ で割ってよく、方程式は $a=h(x)$、$h(x)=\dfrac{\log x}x$ と同じになる。
段 2(区間に分ける)。商の微分により
$$
h'(x)=\frac{\frac1x\cdot x-\log x\cdot1}{x^2}=\frac{1-\log x}{x^2}
$$
である。$1-\log x>0\iff x< e$ なので、$h$ は $(0,e]$ で増加、$[e,\infty)$ で減少する。$h(e)=\dfrac1e=0.3678\ldots$ である。
段 3(端を調べる)。$x\to+0$ では $\log x\to-\infty$、$\dfrac1x\to\infty$ なので、積 $h(x)=\log x\cdot\dfrac1x\to-\infty$ である。$x\to\infty$ では lem-crg-growth の 3 により $h(x)\to0$ である。
段 4(数えて足す)。$(0,e)$ では $h$ は増加し、端の極限は $-\infty$ と $\frac1e$ なので、$a<\frac1e$ のとき解が 1 つある。$(e,\infty)$ では $h$ は減少し、端の極限は $\frac1e$ と $0$ なので、$0< a<\frac1e$ のとき解が 1 つある。$x=e$ は $a=\frac1e$ のときの解である。足すと
曲線 $y=\frac{\log x}{x}$ と水平な直線 $y=a$。$x=e$ で極大値 $\frac1e$ をとり、$x\to\infty$ で $0$ に近づくが $0$ にはならないので、$0< a<\frac1e$ では 2 点、$a\le0$ では 1 点で交わることを見る図。
$a=0$ のとき、$(e,\infty)$ の部分は直線 $y=0$ にいくらでも近づくが、交わらない。$h$ はこの区間で端の極限 $0$ をとらないからである(thm-crg-monotone-count の証明の段 2)。
$a\ne0$ とする。$e^x=ax$ の正の解 $x$ に対して $t=e^x$ とおくと、$t>1$、$x=\log t$ で、方程式は $t=a\log t$、すなわち $\dfrac{\log t}t=\dfrac1a$ になる。逆に、$\dfrac{\log t}t=\dfrac1a$ を満たす $t>1$ から $x=\log t$ とおけば、$e^x=ax$ の正の解が得られる。こうして、$e^x=ax$ の正の解と、$\log t=\frac1a\,t$ の $t>1$ の解は 1 対 1 に対応する。
prop-crg-exp では、$a>e$ のとき正の解が 2 個、$0< a< e$ のとき 0 個、$a=e$ のとき 1 個であった。$b=\frac1a$ とおくと、それぞれ $0< b<\frac1e$、$b>\frac1e$、$b=\frac1e$ にあたる。ex-crg-log で $t>1$ の解だけを数えると、$0< b<\frac1e$ で 2 個、$b>\frac1e$ で 0 個、$b=\frac1e$ で 1 個($t=e$)となり、一致する。$e^x$ と $\log x$ が互いに逆関数であることが、2 つの結果を結びつけている。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 割る式が $0$ にならない(または別に調べる) | 元の方程式と $a=g(x)$ は同じ解をもつ | ex-crg-divide |
| $g$ の定義域が 1 つの区間 | $g'>0$ なら $g(x)=a$ の解は 1 個以下 | ex-crg-not-interval |
| $g$ が連続 | 端の極限の間の $a$ について $g(x)=a$ の解がある | ex-crg-jump |
| $a$ が端の極限と等しくない | 増加(減少)する区間で、$a$ が $g$ の値の範囲の端なら $g(x)=a$ の解がある | ex-crg-limit-not-attained |
方程式 $xe^x=ax$ を考える。両辺を $x$ で割ると $e^x=a$ となり、$a>0$ なら解 $x=\log a$ が 1 つ、$a\le0$ なら解なし、と数えてしまう。しかし $x=0$ は、どんな $a$ についても元の方程式の解である(両辺とも $0$)。$x(e^x-a)=0$ と因数分解して正しく数えると、
$g(x)=x-\dfrac1x$($x\ne0$)は $g'(x)=1+\dfrac1{x^2}>0$ で、定義域のどの点でも導関数が正である。しかし $g(x)=0$ は $x=1$ と $x=-1$ の 2 つの解をもつ($1-1=0$、$-1+1=0$)。$g(-1)=0=g(1)$ なので、$g$ は定義域全体では増加していない。rem-crg-premises の 1 は区間についての定理で、$(-\infty,0)\cup(0,\infty)$ は区間ではない。
区間ごとに thm-crg-monotone-count を使えば正しく数えられる。$(-\infty,0)$ では端の極限が $-\infty$($x\to-\infty$)と $\infty$($x\to0-0$)、$(0,\infty)$ では $-\infty$($x\to0+0$)と $\infty$($x\to\infty$)なので、どんな $a$ でも各区間に 1 つずつ、合わせて 2 個の解がある。実際 $x-\frac1x=a$ は $x^2-ax-1=0$ と同じで、判別式 $a^2+4>0$、2 つの解の積は $-1$ なので、正の解と負の解が 1 つずつある。
$g(x)=x$($x<1$)、$g(x)=x+1$($x\ge1$)とする。$g$ は実数全体で増加し、$x\to-\infty$ で $-\infty$、$x\to\infty$ で $\infty$ に近づく。しかし $g(x)=1.5$ には解がない。$x<1$ なら $g(x)=x<1$、$x\ge1$ なら $g(x)=x+1\ge2$ だからである。$g$ は $x=1$ で値が $1$ から $2$ へ跳ぶ(連続でない)ので、thm-crg-monotone-count の証明の段 4 で使った中間値の定理が使えない。微分可能な関数は連続なので、増減を導関数で調べた関数ではこの問題は起きない。
ex-crg-log の $h(x)=\dfrac{\log x}x$ を $(e,\infty)$ で考える。$h$ は減少し、$x\to\infty$ で $0$ に近づく。$a=0$ とすると、$h(x)=0$ となるのは $\log x=0$、つまり $x=1$ のときだけで、$(e,\infty)$ には解がない。$x$ を大きくすると $h(x)$ は $0$ にいくらでも近づく($x=100$ で $0.046\ldots$、$x=10000$ で $0.00092\ldots$)が、$x>1$ では $\log x>0$ なので $h(x)>0$ のままである。
「$h$ の値は $\frac1e$ から $0$ まで動くから、$0\le a<\frac1e$ なら $(e,\infty)$ に解がある」と数えると、$a=0$ で解を 1 つ多く数えてしまう。端の極限は「近づく値」であって、とる値ではない。
prop-crg-exp と ex-crg-log で、解の個数が変わった $a$ は、$e^x=ax$ では $0$ と $e$、$\log x=ax$ では $0$ と $\frac1e$ だった。これらは極値か、端の極限の値である。このことは一般に成り立つ。
関数 $g$ が微分可能な点 $c$ で $g'(c)=0$ となるとき、$c$ を $g$ の臨界点、値 $g(c)$ を $g$ の臨界値という。
$g$ を開区間 $(p,q)$($p=-\infty$、$q=\infty$ でもよい)で微分可能な関数とし、導関数 $g'$ は連続で、$g'(x)=0$ となる点は有限個 $c_1< c_2<\cdots< c_k$ だけとする($k=0$ でもよい)。端での極限 $\lim_{x\to p+0}g(x)$、$\lim_{x\to q-0}g(x)$ が存在するとする($\pm\infty$ でもよい)。臨界値 $g(c_1),\ldots,g(c_k)$ と、2 つの端の極限のうち実数であるものを集めた有限集合を $S$ とする。
実数 $a$、$b$ がどちらも $S$ に属さず、$a$ と $b$ の間(両端を含む)に $S$ の要素がないなら、$g(x)=a$ と $g(x)=b$ の $(p,q)$ での実数解の個数は等しい。
方針:臨界点で区間を分けると、各区間で $g$ は増加か減少になる。thm-crg-monotone-count により、各区間の解の個数は「$a$ が端の値の真ん中にあるか」だけで決まり、$S$ の要素をまたがなければそれは変わらない。
段 1(区間に分ける)。$c_0=p$、$c_{k+1}=q$ とおき、$J_i=(c_i,c_{i+1})$($i=0,1,\ldots,k$)とする。$J_i$ の中に $g'=0$ の点はない。$J_i$ の中で $g'$ が正の点と負の点の両方があれば、$g'$ は連続なので、中間値の定理 により間に $g'=0$ の点があることになり、矛盾する。よって $J_i$ の中で $g'$ の符号は一定で、$g$ は $J_i$ で増加または減少する(rem-crg-premises の 1)。
段 2(各区間の端の値)。$J_i$ の左端での $g$ の極限を $L_i$、右端での極限を $M_i$ とする。端が $c_j$($1\le j\le k$)なら、$g$ は $c_j$ で連続なので極限は臨界値 $g(c_j)$ である。端が $p$ や $q$ なら、仮定の端の極限である。したがって $L_i$、$M_i$ は $S$ の要素か $\pm\infty$ である。
段 3(解の個数の式)。$a\notin S$ とする。臨界点 $c_j$ は $g(c_j)\in S$ なので $g(x)=a$ の解ではない。よって解はすべてどれかの $J_i$ に入り、thm-crg-monotone-count により、$J_i$ の解の個数は、$a$ が $L_i$ と $M_i$ の間に(等号なしで)あれば 1、そうでなければ 0 である。解の総数は、$a$ が $L_i$ と $M_i$ の間にあるような $i$ の個数である。
段 4(比べる)。$a$、$b$ の間に $S$ の要素がないとする。$L_i$ は $S$ の要素か $\pm\infty$ なので、$a$ と $b$ は $L_i$ の同じ側にある($a< L_i$ と $b< L_i$ が同時に成り立つか、$a>L_i$ と $b>L_i$ が同時に成り立つ)。$M_i$ についても同じである。したがって「$a$ が $L_i$ と $M_i$ の間にある」ことと「$b$ が $L_i$ と $M_i$ の間にある」ことは同値で、段 3 の個数は $a$ と $b$ で等しい。$\square$
$g(x)=\dfrac{e^x}x$ を 2 つの区間 $(-\infty,0)$、$(0,\infty)$ に分けて命題を使う。$(-\infty,0)$ では臨界点はなく、端の極限は $0$ と $-\infty$ なので $S=\{0\}$ である。$(0,\infty)$ では臨界値は $e$、端の極限は $\infty$ と $\infty$ なので $S=\{e\}$ である。合わせると、個数が変わりうるのは $a=0$ と $a=e$ だけで、$a<0$、$0< a< e$、$a>e$ の各範囲では個数が一定である。各範囲から 1 つずつ $a=-1,1,3$ を選んで数えれば、prop-crg-exp の 1 個、0 個、2 個が得られる。$a=0$、$a=e$ は別に調べる。
方程式 $g(x)=a$ の解の集合 $\{x\mid g(x)=a\}$ を、$g$ の $a$ での等位集合という。prop-crg-critical-values は、「$a$ が臨界値でも端の値でもない範囲を動く間は、等位集合の点の個数が変わらない」ことを述べている。
大学では、これが多変数に広がる。たとえば 2 変数の関数 $F(x,y)$ の等位集合 $F(x,y)=a$ は曲線になり、$a$ が臨界値でなければ、その曲線は各点で滑らかである(陰関数定理)。十分なめらかな関数では、臨界値の集合はとても小さく、測度 $0$ の集合になる(Sardの定理。本記事では証明しない)。臨界値をまたぐときに等位集合の形がどう変わるかを調べるのが、Morse理論 の出発点である。
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