最大値・最小値の定理(高校数学)

同義語:extreme value theorem (high school mathematics)

概要

最大値・最小値の定理(extreme value theorem)とは、閉区間 $[a,b]$($a<b$)で連続な関数 $f$ は最大値と最小値をもつ、すなわち $[a,b]$ のすべての $x$ で $f(d)\le f(x)\le f(c)$ となる点 $c$、$d$ が $[a,b]$ にあるという定理である。高校の極限の知識で証明でき、区間を半分に切り、どの値にも負けない値を含む半分を残し続けると、区間は 1 点に集まり、連続性からその点での値が最大値になる。実数の連続性は、単調で有界な数列は収束するという形で 1 か所だけ認めて使う。区間が端点を含まない、区間が有界でない、関数が連続でない、有理数だけで考える、のどれでも、結論が成り立たない例がある。微分で最大値を求めるとき、極値と端点の値を比べてよい理由になる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 関数の連続性と中間値の定理(高校数学), 数列の極限, 2次関数の最大・最小

高校での出発点:最大値はいつでもあるのか

数学 I の 2 次関数では、定義域を閉区間に限って最大値・最小値を求める。数学 III では、閉区間で連続な関数は最大値と最小値をもつ、という 最大値・最小値の定理 を学ぶ。教科書ではこの定理を証明せずに認めることが多い。この記事では、関数の連続性と中間値の定理(高校数学) と同じく、区間を半分にし続ける方法でこの定理を証明する。まず、最大値が「ある場合」と「ない場合」を比べる。

閉区間では最大値も最小値もある

$f(x)=x^2-2x$ を閉区間 $0\le x\le3$ で考える。平方完成すると $f(x)=(x-1)^2-1$ なので、$(x-1)^2\ge0$ から、すべての $x$ で $f(x)\ge-1$ で、等号は $x=1$ のときである。最小値は $f(1)=-1$ である。また、$0\le x\le3$ では $-1\le x-1\le2$ なので $(x-1)^2\le4$、したがって $f(x)\le3$ で、等号は $x=3$ のときである。最大値は $f(3)=3$ である。

開区間では最大値がないことがある

同じ $f(x)=x^2-2x$ を開区間 $0< x<3$ で考える。$x=1$ は区間に入るので、最小値は $-1$ のままである。一方、区間のどの $x$ でも $x<3$ なので $(x-1)^2<4$、つまり $f(x)<3$ である。しかも、$x$ を $3$ に近づけると $f(x)$ は $3$ にいくらでも近づく。たとえば $f(2.9)=2.61$、$f(2.99)=2.9601$、$f(2.999)=2.996001$ である。
$f(x)<3$ なので $3$ は最大値ではない。$3$ より小さい値 $M$ も最大値ではない。$f(x)>M$ となる $x$ が区間の中にあるからである($3$ に十分近い $x$ をとればよい)。したがって、この関数には最大値がない。値は $3$ に「届かない」。

2 つの例の違いは、区間が端点 $3$ を含むかどうかだけである。ここから次の問いが出てくる。

  1. 最大値が「ある」とは、正確にはどういうことか。→ def-evh-max
  2. 閉区間で連続な関数には、いつでも最大値と最小値があるのか。→ thm-evh-main
  3. 証明のどこで、閉区間であることや連続であることを使うのか。→ prf-evh-main、反例の表
  4. 最大値があると分かると、何がうれしいのか。→ ex-evh-candidates、ex-evh-no-endpoint
    高校の言い方この記事での見方ボックス
    最大値は「とる値」の中で一番大きいもの値として実際にとられるdef-evh-max
    閉区間なら最大値・最小値がある最大値・最小値の定理thm-evh-main
    大きい値を含むほうへ絞っていく勝ち残りの区間の二分法lem-evh-halves、prf-evh-main
    極値と端点の値を比べる最大値の存在が、候補の比較を正当にするex-evh-candidates
    値の範囲は最小値から最大値まで中間値の定理と合わせるcor-evh-range

最大値・最小値と有界

最大値・最小値

$f$ を集合 $D$(区間など)で定義された関数とする。$D$ の点 $c$ があって、$D$ のすべての点 $x$ で
$$ f(x)\le f(c) $$
が成り立つとき、$f(c)$ を $f$ の $D$ での 最大値 という。同じく、$D$ の点 $d$ があって、$D$ のすべての点 $x$ で $f(x)\ge f(d)$ が成り立つとき、$f(d)$ を 最小値 という。

大事なのは、最大値が $f(c)$ という「実際にとる値」であることである。ex-evh-start-open の $3$ は、どの値よりも大きいが、とる値ではないので最大値ではない。値の上限を押さえるだけの数には、別の名前を付ける。

上に有界・下に有界

関数 $f$ が集合 $D$ で 上に有界 であるとは、ある定数 $K$ があって、$D$ のすべての点 $x$ で $f(x)\le K$ となることをいう。同じく、ある定数 $K'$ があって、すべての $x$ で $f(x)\ge K'$ となるとき 下に有界 という。上にも下にも有界なとき、単に 有界 という。

最大値・有界の例
  1. ex-evh-start-open の $f(x)=x^2-2x$($0< x<3$)は、$K=3$ で上に有界で、最大値をもたない。有界であっても最大値があるとは限らない。
  2. $f(x)=\dfrac1x$ を $0< x\le1$ で考える。$0< x\le1$ なら $\dfrac1x\ge1$ で、等号は $x=1$ のときなので、最小値は $1$ である。一方、$x=\dfrac1n$($n$ は正の整数)で $f(x)=n$ なので、どんな定数 $K$ をとっても $f(x)>K$ となる $x$ がある。$f$ は上に有界でなく、最大値ももたない。
  3. 最大値 $f(c)$ があれば、$K=f(c)$ として上に有界である。つまり「最大値がある」ほうが「上に有界」より強い。

主定理:最大値・最小値の定理

最大値・最小値の定理

$a< b$ とし、$f$ を閉区間 $[a,b]$ で連続な関数とする。このとき、$f$ は $[a,b]$ で最大値と最小値をもつ。すなわち、$[a,b]$ の点 $c$、$d$ があって、$[a,b]$ のすべての点 $x$ で
$$ f(d)\le f(x)\le f(c) $$
が成り立つ。

定理は「最大値がある」ことを保証するだけで、それが何か、どこでとるかは教えない。それを求めるのは、2 次関数なら平方完成、一般の関数なら微分の仕事である(ex-evh-candidates)。

定理の証明

この記事で認めること

関数の連続性と中間値の定理(高校数学) と同じく、次の事実を認めて使う。

この記事で認める事実
  1. (数列の極限と大小)数列 $(p_n)$、$(q_n)$ が収束し、すべての $n$ で $p_n\le q_n$ なら、$\lim p_n\le\lim q_n$ である。$p_n\le r_n\le q_n$ で $\lim p_n=\lim q_n=\gamma$ なら、$(r_n)$ も $\gamma$ に収束する(はさみうちの原理)。
  2. (連続関数と数列)$f$ が区間 $I$ の点 $c$ で連続で、$I$ の点の数列 $(x_n)$ が $c$ に収束するなら、$f(x_n)$ は $f(c)$ に収束する。
  3. (実数の連続性)単調に増加し上に有界な数列は収束する。単調に減少し下に有界な数列も収束する。
    3 から次の補題が出る。証明は 関数の連続性と中間値の定理(高校数学) の補題「区間縮小法」と同じなので、畳んでおく。
区間縮小法

閉区間の列 $[a_1,b_1],[a_2,b_2],\ldots$ が、すべての $n$ で $a_n\le a_{n+1}\le b_{n+1}\le b_n$、$b_n-a_n=\dfrac{b_1-a_1}{2^{n-1}}$ を満たすなら、$(a_n)$ と $(b_n)$ は同じ値 $c$ に収束し、すべての $n$ で $a_n\le c\le b_n$ である。

要点:左端の列は増加して $b_1$ 以下、右端の列は減少して $a_1$ 以上なので、rem-evh-facts の 3 でどちらも収束する。2 つの極限の差は、区間の長さの極限 $0$ に等しい。

詳しい証明を開く

段 1.$(a_n)$ は単調に増加し、$a_n\le b_n\le b_1$ なので上に有界である。rem-evh-facts の 3 により極限 $c$ をもつ。段 2.$(b_n)$ は単調に減少し、$b_n\ge a_n\ge a_1$ なので下に有界で、極限 $c'$ をもつ。段 3.$b_n=a_n+\dfrac{b_1-a_1}{2^{n-1}}$ の両辺の極限をとると、$c'=c+0=c$ である。段 4.$n$ を決めると、$m\ge n$ で $a_m\le b_m\le b_n$ なので、rem-evh-facts の 1 により $c\le b_n$ である。同じく $m\ge n$ で $b_m\ge a_m\ge a_n$ なので $c\ge a_n$ である。$\square$

勝ち残りの区間

中間値の定理の証明では、「両端で $f-k$ の符号が違う」半分を残した。最大値の証明では、「大きい値を含む」半分を残す。これを正確に言うために、次の言葉を定める。

勝ち残りの区間

$f$ を $[a,b]$ で定義された関数とし、$J$ を $[a,b]$ に含まれる閉区間とする。$[a,b]$ のどの点 $x$ に対しても、$J$ の中に
$$ f(y)\ge f(x) $$
となる点 $y$ があるとき、$J$ を($f$ の)勝ち残りの区間 とよぶ(この記事だけの呼び名)。

勝ち残りの区間とは、「区間全体のどの値にも負けない値を、中に持っている区間」である。$J=[a,b]$ 自身は、$y=x$ ととれば勝ち残りの区間である。最大値をとる点 $c$ があれば、$c$ を含む閉区間は勝ち残りの区間である($y=c$ ととればよい)。ただし、証明では最大値の存在を仮定できないので、この逆向きに、勝ち残りの区間を縮めて最大値の点を見つける。

勝ち残りの区間を半分ずつ絞る

$f(x)=x(2.6-x)$ を $[0,2]$ で考える。$f(x)=-(x-1.3)^2+1.69$ なので、この例では 2 次関数の知識で、各区間での最大値が分かる。区間を半分に切り、2 つの半分での最大値を比べて、大きいほう(等しければ左)を残す。大きいほうの半分は、比べた相手の半分のどの値にも負けない値を持つので、勝ち残りの区間になっている。

回区間左半分の最大値右半分の最大値残す半分
1$[0,\,2]$$f(1)=1.6$$f(1.3)=1.69$$[1,\,2]$
2$[1,\,2]$$f(1.3)=1.69$$f(1.5)=1.65$$[1,\,1.5]$
3$[1,\,1.5]$$f(1.25)=1.6875$$f(1.3)=1.69$$[1.25,\,1.5]$
4$[1.25,\,1.5]$$f(1.3)=1.69$$f(1.375)=1.684375$$[1.25,\,1.375]$
5$[1.25,\,1.375]$$f(1.3)=1.69$$f(1.3125)=1.68984375$$[1.25,\,1.3125]$
6$[1.25,\,1.3125]$$f(1.28125)=1.6896\ldots$$f(1.3)=1.69$$[1.28125,\,1.3125]$

残った区間は $1.3$ を含んだまま縮み(図 1)、両端は最大の点 $x=1.3$ に近づく。

!FORMULA[186][207384328][0] のグラフ(青)と、0 回目から 6 回目までに残した勝ち残りの区間(橙の横棒)。区間が最大の点 !FORMULA[187][1083732631][0](赤の点線)を含んだまま縮むことを見る図。 $y=x(2.6-x)$ のグラフ(青)と、0 回目から 6 回目までに残した勝ち残りの区間(橙の横棒)。区間が最大の点 $x=1.3$(赤の点線)を含んだまま縮むことを見る図。
一般の関数では、各半分での最大値はまだ分からない(それが証明したいことである)。それでも、「どちらかの半分は勝ち残りの区間である」ことは、最大値を使わずに示せる。これが証明の鍵である。

勝ち残りの区間の半分

$J=[p,q]$ を勝ち残りの区間とし、$m=\dfrac{p+q}2$ とする。左半分 $L=[p,m]$ と右半分 $R=[m,q]$ の少なくとも一方は、勝ち残りの区間である。

左半分が負けたら右半分が勝ち残る

方針:左半分 $L$ が勝ち残りの区間でないと仮定し、右半分 $R$ が勝ち残りの区間であることを示す。
段 1($L$ が負ける値)。$L$ が勝ち残りの区間でないとする。定義を否定すると、$[a,b]$ のある点 $x_0$ があって、$L$ のどの点 $y$ でも $f(y)< f(x_0)$ となる。
段 2($x_0$ に負けない点は $R$ にある)。$J$ は勝ち残りの区間なので、$x_0$ に対して、$J$ の点 $y_0$ で $f(y_0)\ge f(x_0)$ となるものがある。段 1 から、$L$ の点はどれも $f< f(x_0)$ なので、$y_0$ は $L$ の点ではない。$J=L\cup R$ なので、$y_0$ は $R$ の点である。
段 3($R$ が勝ち残る)。$[a,b]$ の点 $x$ を任意にとる。$J$ は勝ち残りの区間なので、$J$ の点 $y$ で $f(y)\ge f(x)$ となるものがある。

  • $y$ が $R$ の点なら、この $y$ が求める点である。
  • $y$ が $L$ の点なら、段 1 から $f(y)< f(x_0)$、段 2 から $f(x_0)\le f(y_0)$ なので、$f(x)\le f(y)< f(x_0)\le f(y_0)$ である。$R$ の点 $y_0$ で $f(y_0)\ge f(x)$ となる。
    どちらの場合も、$R$ の中に、$f$ の値が $f(x)$ 以上になる点がある。$x$ は任意なので、$R$ は勝ち残りの区間である。$\square$

この補題には、$f$ の連続性も、区間が閉じていることも使っていない。それらを使うのは、次の定理の証明の段 2(閉区間であること)と段 3(連続性)である。

定理の証明

勝ち残りの区間を 1 点に集める

方針:勝ち残りの区間を半分ずつ選び続け、lem-evh-nested で 1 点 $c$ に集める。$c$ の近くには「どの値にも負けない値」があり、連続性でそれが $f(c)$ に近づくので、$f(c)$ は最大値である。最小値は $-f$ の最大値として得る。
段 1(勝ち残りの区間の列)。$a_1=a$、$b_1=b$ とする。$[a_1,b_1]=[a,b]$ は勝ち残りの区間である。$[a_n,b_n]$ が勝ち残りの区間なら、lem-evh-halves により、その左半分か右半分が勝ち残りの区間なので、それを $[a_{n+1},b_{n+1}]$ とする(両方なら左半分をとる)。こうして、すべての $n$ で $[a_n,b_n]$ は勝ち残りの区間で、$a_n\le a_{n+1}\le b_{n+1}\le b_n$、$b_n-a_n=\dfrac{b-a}{2^{n-1}}$ である。
段 2(1 点に集める)。lem-evh-nested により、$(a_n)$ と $(b_n)$ は同じ値 $c$ に収束し、$a\le a_n\le c\le b_n\le b$ なので $c$ は $[a,b]$ の点である。ここで、区間が端点 $a$、$b$ を含むこと(閉区間であること)を使った。
段 3($f(c)$ はどの値にも負けない)。$[a,b]$ の点 $x$ を 1 つ決める。各 $n$ で $[a_n,b_n]$ は勝ち残りの区間なので、$[a_n,b_n]$ の点 $y_n$ で
$$ f(y_n)\ge f(x) $$
となるものがある。$a_n\le y_n\le b_n$ で、両端はどちらも $c$ に収束するので、rem-evh-facts の 1(はさみうち)により $y_n\to c$ である。$f$ は $c$ で連続なので、rem-evh-facts の 2 により $f(y_n)\to f(c)$ である。すべての $n$ で $f(y_n)\ge f(x)$ なので、rem-evh-facts の 1 により、極限でも
$$ f(c)\ge f(x) $$
である。$x$ は $[a,b]$ の任意の点だったので、$f(c)$ は最大値である。
段 4(最小値)。$g(x)=-f(x)$ も $[a,b]$ で連続である。段 1〜3 を $g$ に使うと、$[a,b]$ の点 $d$ で、すべての $x$ について $-f(d)\ge-f(x)$、すなわち $f(d)\le f(x)$ となるものがある。$f(d)$ は最小値である。$\square$

段 3 は、関数の連続性と中間値の定理(高校数学) の証明の段 4 と同じ形をしている。どちらも「区間の中の点での $f$ の値についての不等式」を、極限をとって点 $c$ での不等式に移している。

閉区間で連続な関数は有界

閉区間 $[a,b]$ で連続な関数は、$[a,b]$ で有界である。

thm-evh-main の $c$、$d$ について、すべての $x$ で $f(d)\le f(x)\le f(c)$ である。$K=f(c)$、$K'=f(d)$ とすれば、def-evh-bounded の条件を満たす。$\square$

定理の使い方

候補を比べてよい理由

微分を使って最大値を求めるとき、「極値をとる点と端点での値を比べ、いちばん大きいものが最大値」と計算する。この計算が正しいのは、最大値が存在することを先に知っているからである。

閉区間での最大値・最小値を微分で求める

$f(x)=xe^{-x}$ を $[0,3]$ で考える。
段 1(存在)。$x$ と $e^{-x}$ は連続なので、積 $f$ も連続である。thm-evh-main により、$f$ は $[0,3]$ で最大値と最小値をもつ。
段 2(候補)。$f'(x)=e^{-x}-xe^{-x}=(1-x)e^{-x}$ である。最大値・最小値をとる点が区間の内側にあれば、そこで $f'=0$ となる(関数の増減と極値 の定理「最大・最小をとる点の候補」)。$f'(x)=0$ となるのは $x=1$ だけなので、候補は端点 $0$、$3$ と、$x=1$ の 3 つである。
段 3(比べる)。
$$ f(0)=0,\qquad f(1)=e^{-1}=0.3678\ldots,\qquad f(3)=3e^{-3}=0.1493\ldots $$
である。段 1 で最大値の存在が分かっていて、最大値をとる点はこの 3 つのどれかなので、最大値は $\dfrac1e$($x=1$)、最小値は $0$($x=0$)である(図 2)。

反例:右端のない区間では候補の比較が誤る

$f(x)=x^3-3x$ を、$x\ge-2$ の範囲(区間 $[-2,\infty)$)で考える。$f'(x)=3x^2-3=3(x+1)(x-1)$ なので、$f'=0$ となるのは $x=\pm1$ である。候補の値は
$$ f(-2)=-8+6=-2,\qquad f(-1)=-1+3=2,\qquad f(1)=1-3=-2 $$
で、ex-evh-candidates と同じように比べると「最大値は $2$」となりそうである。しかし $f(2.5)=15.625-7.5=8.125>2$ であり(図 3)、$x$ を大きくすると $f(x)$ はいくらでも大きくなる($x\ge2$ なら $f(x)=x(x^2-3)\ge x$)。最大値はない。
破れているのは、区間が有界である(右端がある)という仮定である。最大値の存在が保証されないので、「最大値をとる点は候補のどれか」という推論の出発点がない。$f(-1)=2$ は極大値であって、最大値ではない。

!FORMULA[336][-1043926107][0] での !FORMULA[337][-221015292][0] のグラフ。端点 !FORMULA[338][36881821][0]、!FORMULA[339][36881914][0] と極大の点 !FORMULA[340][36881852][0] の 3 つの候補を比べて、最大値 !FORMULA[341][173308906][0] と最小値 !FORMULA[342][36120][0] を決めることを見る図。 $0\le x\le3$ での $y=xe^{-x}$ のグラフ。端点 $x=0$、$x=3$ と極大の点 $x=1$ の 3 つの候補を比べて、最大値 $\frac1e$ と最小値 $0$ を決めることを見る図。
!FORMULA[343][174980217][0] での !FORMULA[344][-1635036329][0] のグラフ。!FORMULA[345][1143334007][0] の極大値 !FORMULA[346][36182][0] より !FORMULA[347][1083762484][0] での値 !FORMULA[348][-762381942][0] のほうが大きく、極大値が最大値でないことを見る図。 $x\ge-2$ での $y=x^3-3x$ のグラフ。$x=-1$ の極大値 $2$ より $x=2.5$ での値 $8.125$ のほうが大きく、極大値が最大値でないことを見る図。

Rolle の定理への橋

微分の平均値の定理は、Rolle の定理「$[a,b]$ で連続、$(a,b)$ で微分可能で $f(a)=f(b)$ なら、$f'(c)=0$ となる $c$ が $a< c< b$ にある」から導かれる。Rolle の定理の証明の第一歩が、この記事の定理である。$f$ が定数なら $(a,b)$ のどの点でも $f'=0$ である。定数でなければ、thm-evh-main の最大値か最小値の少なくとも一方は端点での値 $f(a)=f(b)$ と異なり、それをとる点 $c$ は内側 $a< c< b$ にある。そこでは $f'(c)=0$ である(Fermat の定理、関数の増減と極値)。証明の細部と平均値の定理への続きは 平均値の定理による差の評価 にある。

値の範囲は閉区間

連続関数の値の範囲

$f$ が閉区間 $[a,b]$ で連続で、最小値を $m$、最大値を $M$ とする。このとき、$f$ がとる値の全体はちょうど閉区間 $[m,M]$ である。つまり、$m\le k\le M$ となるどの $k$ にも、$f(x)=k$ となる $[a,b]$ の点 $x$ がある。

最大の点と最小の点の間で中間値の定理

段 1。とる値はすべて $m$ 以上 $M$ 以下なので、値の全体は $[m,M]$ に含まれる。
段 2。逆に $m\le k\le M$ とする。thm-evh-main により $f(d)=m$、$f(c)=M$ となる点 $c$、$d$ がある。$k=m$ なら $x=d$、$k=M$ なら $x=c$ でよい。$m< k< M$ なら $c\ne d$ で、$c$ と $d$ を両端とする閉区間で $f$ は連続であり、両端の値 $m$、$M$ の間に $k$ がある。中間値の定理(関数の連続性と中間値の定理(高校数学))により、その区間の中に $f(x)=k$ となる $x$ がある。$\square$

値の範囲を求める

$f(x)=x+\dfrac1x$ を $\dfrac12\le x\le3$ で考える。$f$ は分母が $0$ にならないこの区間で連続である。
段 1(最小値)。$x>0$ なので、相加平均と相乗平均の関係から $x+\dfrac1x\ge2\sqrt{x\cdot\dfrac1x}=2$ で、等号は $x=\dfrac1x$、すなわち $x=1$ のときである(相加平均と相乗平均)。最小値は $f(1)=2$ である。
段 2(最大値)。$f'(x)=1-\dfrac1{x^2}$ は $x=1$ でだけ $0$ になる。最大値は存在し(thm-evh-main)、その点は端点か $x=1$ なので、$f\bigl(\frac12\bigr)=\dfrac52$、$f(1)=2$、$f(3)=\dfrac{10}3$ を比べて、最大値は $\dfrac{10}3$ である。
段 3(値の範囲)。cor-evh-range により、$f$ のとる値の全体は $\Bigl[2,\dfrac{10}3\Bigr]$ である。たとえば $f(x)=3$ となる $x$ がある。実際、$x+\dfrac1x=3$ を解くと $x^2-3x+1=0$、$x=\dfrac{3\pm\sqrt5}2$ で、$\dfrac{3+\sqrt5}2=2.618\ldots$ は区間の中にある。

正の連続関数は正の数より下に下がらない

$f$ が閉区間 $[a,b]$ で連続で、すべての $x$ で $f(x)>0$ とする。ある正の数 $\varepsilon$ があって、すべての $x$ で $f(x)\ge\varepsilon$ となることを示せ。また、閉区間でない $0< x\le1$ では、$f(x)=x$ が「すべての $x$ で $f(x)>0$」を満たすのに、この結論が成り立たないことを確かめよ。

解答を開く

thm-evh-main により、最小値 $f(d)$ がある。仮定から $f(d)>0$ なので、$\varepsilon=f(d)$ とおけば、すべての $x$ で $f(x)\ge f(d)=\varepsilon$ である。後半:正の数 $\varepsilon$ をどうとっても、$x=\min\bigl(1,\frac\varepsilon2\bigr)$ は $0< x\le1$ を満たし、$f(x)=x\le\frac\varepsilon2<\varepsilon$ となる。したがって、すべての $x$ で $f(x)\ge\varepsilon$ となる正の数 $\varepsilon$ はない。この関数は $0< x\le1$ で最小値をもたない。

反例:仮定を 1 つ外すと崩れる例

thm-evh-main の仮定は、(a) 区間が端点を含む(閉じている)、(b) 区間が有界(両端が有限)、(c) $f$ が連続、(d) 数が実数、の 4 つである。どれを 1 つ外しても、結論が成り立たない例がある。

外す条件反例成り立たなくなること
区間が端点を含む開区間 $(0,1)$ の $f(x)=x$最大値・最小値をもつ(有界ではある)
区間が有界$[0,\infty)$ の $f(x)=x$最大値をもつ・有界である
$f$ が連続$[0,1]$ で $f(0)=0$、$0< x\le1$ で $f(x)=\frac1x$最大値をもつ・有界である
$f$ が連続$[0,1]$ で $0\le x<1$ なら $f(x)=x$、$f(1)=0$最大値をもつ(有界ではある)
実数で考える$1\le x\le2$ の有理数だけで $f(x)=-(x^2-2)^2$最大値をもつ

仮定を 1 つ外した 4 つの反例のグラフ。左上は開区間の !FORMULA[462][-95002766][0]、右上は右端のない区間の !FORMULA[463][-95002766][0]、左下は !FORMULA[464][36120][0] の近くで跳ね上がる関数、右下は !FORMULA[465][36881852][0] で値が !FORMULA[466][36120][0] に落ちる関数で、どれも最大値をもたないことを見る図。 仮定を 1 つ外した 4 つの反例のグラフ。左上は開区間の $f(x)=x$、右上は右端のない区間の $f(x)=x$、左下は $0$ の近くで跳ね上がる関数、右下は $x=1$ で値が $0$ に落ちる関数で、どれも最大値をもたないことを見る図。

反例:開区間

$f(x)=x$ を開区間 $0< x<1$ で考える。$f$ は連続で、$0< f(x)<1$ なので有界である。しかし最大値はない。区間のどの点 $c$ をとっても、$c<\dfrac{c+1}2<1$ なので、点 $\dfrac{c+1}2$ での値が $f(c)$ より大きい。同じく、$0<\dfrac c2< c$ なので、最小値もない。
証明のどこが崩れるか。勝ち残りの区間をとる操作は、閉区間 $[0,1]$ の中で行うと点 $1$ に集まる。点 $1$ は定義域に入らないので、prf-evh-main の段 2 の「$c$ は定義域の点」が成り立たない。

反例:有界でない区間

$f(x)=x$ を $x\ge0$ の範囲で考える。$f$ は連続である。どんな定数 $K$ をとっても、$x=|K|+1$ で $f(x)>K$ なので、上に有界でなく、最大値もない(最小値は $f(0)=0$ である)。区間に右端がないので、「区間を半分に切る」ことが最初からできない。

反例:連続でない関数(有界でない)

$[0,1]$ で $f(0)=0$、$0< x\le1$ で $f(x)=\dfrac1x$ と定める。区間は閉区間だが、$f$ は $x=0$ で連続でない($x\to+0$ で $f(x)$ はいくらでも大きくなり、極限をもたない)。ex-evh-bounded の 2 と同じく、$x=\dfrac1n$ で $f(x)=n$ なので、上に有界でなく、最大値もない。
勝ち残りの区間は $0$ に集まる。prf-evh-main の段 3 の点 $y_n$ は $0$ に近づくが、$f(y_n)\ge f(x)$ を保ったまま大きな値をとり、$f(0)=0$ には近づかない。$f$ が $0$ で連続でないので、段 3 の「$f(y_n)\to f(c)$」が使えない。

反例:連続でない関数(有界だが最大値がない)

$[0,1]$ で、$0\le x<1$ なら $f(x)=x$、$f(1)=0$ と定める。$0\le f(x)<1$ なので有界である。$0\le x<1$ の点 $c$ については、$\dfrac{c+1}2$ での値のほうが大きい。$f(1)=0$ も最大値ではない。よって最大値はない。値は $1$ にいくらでも近づくが、$x=1$ で値が $0$ に落ちるので、$1$ に届かない。$f$ は $x=1$ で連続でない($\lim_{x\to1-0}f(x)=1\ne0=f(1)$)。ex-evh-open の関数に点 $1$ を付け加えても、そこでの値を $1$ より小さくすると、最大値は生まれない($f(1)\ge1$ と決めれば最大値 $f(1)$ ができるが、$f(1)>1$ のときは $x=1$ で連続でない。連続でなくても最大値をもつことはあり、定理の仮定は結論が成り立つための十分条件である)。

反例:有理数だけで考える

$1\le x\le2$ を満たす有理数 $x$ だけを考え、$f(x)=-(x^2-2)^2$ とする。$f$ は多項式なので、有理数の点だけで考えても連続である。$x^2=2$ となる有理数はないので、どの有理数 $x$ でも $x^2-2\ne0$、つまり $f(x)<0$ である。一方、$\sqrt2$ に近づく有理数の列(たとえば $1.4,\ 1.41,\ 1.414,\ \ldots$)をとると、$f(x)$ は $0$ にいくらでも近づく。したがって、$f(c)$ をどの有理数 $c$ でとっても、それより大きい値をとる有理数 $x$ があり、最大値はない。勝ち残りの区間は $\sqrt2$ に向かって縮むが、$\sqrt2$ は有理数でないので、lem-evh-nested が有理数の中では成り立たない。
同じ範囲で $f(x)=\dfrac1{(x^2-2)^2}$ とすると、これも有理数の点では連続だが、上に有界でない。

図 4 の 4 つの反例と有理数の反例は、どれも値が「どこかに向かって近づくが届かない」形をしている。届く先の点が定義域の外にあるか(開区間・有理数)、その点で値が飛ぶか(連続でない)、行き先が無限の遠くか(有界でない区間)のどれかである。

中間値の定理と比べる

中間値の定理最大値・最小値の定理
仮定$[a,b]$ で連続$[a,b]$ で連続
結論$f(a)$ と $f(b)$ の間の値をとる最大値と最小値をとる
二分法で残す半分両端で $f-k$ の符号が違う半分勝ち残りの半分
使う実数の性質区間縮小法(単調有界数列の収束)区間縮小法(単調有界数列の収束)
閉区間を外すと端点を除いても成り立つ成り立たない
区間でない定義域成り立たない有界閉集合なら成り立つ

「閉区間を外すと」の行について補足する。中間値の定理は、区間が端点を含まなくても成り立つ。開区間の 2 点 $p< q$ をとれば、$[p,q]$ は開区間に含まれる閉区間なので、そこで定理を使えばよいからである。一方、最大値・最小値の定理は、端点を 1 つ除くだけで崩れる(ex-evh-open)。最後の行の「有界閉集合」は次の節で述べる。

大学数学で見る

上限を使う標準の証明

大学の教科書では、実数の上限(上に有界な集合の最小の上界)と Bolzano–Weierstrass の定理「有界な数列は収束する部分列をもつ」を使って、2 段で証明することが多い(Leb26 Lemma 3.3.1、Theorem 3.3.2、Theorem 2.3.8)。段 1 で有界であることを示し、段 2 で値の上限が実際にとられることを示す。この記事の勝ち残りの区間の証明は、上限という言葉を使わずに、2 つの段を 1 回の二分法にまとめたものである。

標準の証明の筋を開く

段 1(有界).有界でないと仮定すると、各 $n$ で $f(x_n)\ge n$ となる点 $x_n$ がある。$(x_n)$ は $[a,b]$ の中にあって有界なので、Bolzano–Weierstrass の定理により収束する部分列 $x_{n_i}\to x$ をもち、$[a,b]$ が端点を含むので $x$ も $[a,b]$ の点である。$f$ は $x$ で連続なので $f(x_{n_i})\to f(x)$ となるはずだが、$f(x_{n_i})\ge n_i\ge i$ はいくらでも大きくなり、矛盾する。

段 2(上限がとられる).段 1 から値の集合は上に有界なので、上限 $M$ がある。上限の性質から、各 $n$ で $M-\frac1n< f(x_n)\le M$ となる点 $x_n$ がある。再び収束する部分列 $x_{n_i}\to c$ をとると、$f(x_{n_i})\to M$ かつ $f(x_{n_i})\to f(c)$ なので、$f(c)=M$ である。

コンパクト性

証明で使ったのは、閉区間の 2 つの性質、「有界である」(半分に切り続けられる、区間の列が 1 点に集まる)と「閉じている」(集まった点が定義域に入る)であった。大学の解析学では、この 2 つをもつ集合(有界閉集合)の上の連続関数は、最大値と最小値をもつことを示す。たとえば、平面の閉円板 $x^2+y^2\le1$ の上で連続な 2 変数関数は、最大値と最小値をもつ。条件付きの最大・最小 で、円周の上の関数の最大値を求めるときに、その存在を保証しているのはこの事実である。さらに一般には、有界閉集合の性質は コンパクト性 という言葉で位相空間にまで広げられ、「コンパクトな空間の上の連続関数は最大値と最小値をもつ」という形になる(コンパクト空間)。

さらに先へ

  • 積分の平均値の定理:閉区間で連続な関数の定積分は、最大値と最小値で挟まれる。中間値の定理と組み合わせると、$\displaystyle\int_a^bf(x)\,dx=f(c)(b-a)$ となる $c$ がとれる。積分の平均値の定理 で扱う。
  • 一様連続性:閉区間で連続な関数は、区間全体で同じ精度の近さを保証できる(一様連続)。連続関数が積分できることの証明に使う(区分求積と積分の定義、一様連続)。証明には、この記事と同じく実数の連続性を使う。
  • Rolle の定理と平均値の定理:平均値の定理による差の評価 で、この記事の定理から証明する。

関連項目

参考文献

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