グラフの概形と漸近線(curve sketching and asymptotes)とは、増減・凹凸・対称性に加えて、グラフが遠くで限りなく近づく直線(漸近線)を調べて、関数のグラフの形を描く方法である。$x\to c\pm0$ で $f(x)\to\pm\infty$ なら $x=c$ は縦の漸近線、$f(x)-(mx+k)\to0$($x\to\infty$)なら $y=mx+k$ は漸近線である。後者は、$\frac{f(x)}{x}\to m$ と $f(x)-mx\to k$ がともに実数として成り立つことと同値で、この 2 つの極限で傾きと切片を求める。分数関数では割り算の商が 1 次以下なら商が漸近線になり、2 次以上なら $x\to\pm\infty$ での漸近線はない。グラフは漸近線と交わってもよく、導関数が漸近線の傾きに近づくとは限らない。
前提知識: 関数の増減と極値, 接線・法線と曲線の凹凸, 極限とε-δ, 多項式の筆算と組立除法
数学 III では、関数のグラフの概形を、導関数の符号(増減)、第 2 次導関数の符号(凹凸)、そして漸近線を調べて描く。漸近線は、グラフが遠くへ行くときに限りなく近づく直線である。増減と凹凸は 関数の増減と極値 と 接線・法線と曲線の凹凸 で扱った。この記事は、漸近線の求め方と、漸近線をもつための条件を主題にする。
$f(x)=\dfrac{x^2}{x-1}$($x\ne1$)とする。
段 1(割り算)。$x^2$ を $x-1$ で割ると、商は $x+1$、余りは $1$ である($x^2=(x-1)(x+1)+1$)。よって
$$
f(x)=x+1+\frac1{x-1}
$$
である。
段 2(増減)。$f'(x)=1-\dfrac1{(x-1)^2}=\dfrac{(x-1)^2-1}{(x-1)^2}=\dfrac{x(x-2)}{(x-1)^2}$ である。分母は正なので、$f'$ の符号は $x(x-2)$ の符号と同じである。$f(0)=0$、$f(2)=\dfrac42=4$ である。
段 3(凹凸)。$f''(x)=\dfrac2{(x-1)^3}$ なので、$x<1$ で $f''<0$(上に凸)、$x>1$ で $f''>0$(下に凸)である。
| $x$ | $\cdots$ | $0$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ | $2$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $f'(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | なし | $-$ | $0$ | $+$ |
| $f''(x)$ | $-$ | $-$ | $-$ | なし | $+$ | $+$ | $+$ |
| $f(x)$ | 増加・上に凸 | 極大 $0$ | 減少・上に凸 | なし | 減少・下に凸 | 極小 $4$ | 増加・下に凸 |
段 4(遠くと、$x=1$ の近く)。段 1 の式で、$x\to\pm\infty$ のとき $\dfrac1{x-1}\to0$ なので、$f(x)-(x+1)\to0$ である。グラフは直線 $y=x+1$ に限りなく近づく。たとえば $x=10$ では $f(x)-(x+1)=\frac19=0.111\ldots$、$x=100$ では $\frac1{99}=0.0101\ldots$ である。また $x\to1+0$ で $f(x)\to\infty$、$x\to1-0$ で $f(x)\to-\infty$ で、グラフは直線 $x=1$ に沿って上下に伸びる。
直線 $y=x+1$ と $x=1$ を、このグラフの漸近線という(図1)。極大値 $0$ が極小値 $4$ より小さいことも、2 つの枝が漸近線で分かれていることから説明がつく。
$y=\frac{x^2}{x-1}$ のグラフ。斜めの漸近線 $y=x+1$(赤)と縦の漸近線 $x=1$(緑)、極大点 $(0,0)$、極小点 $(2,4)$、2 本の漸近線の交点 $(1,2)$ を見る図。グラフは $(1,2)$ に関して点対称である。
$g(x)=xe^{-x}$ とする。積の微分(積の微分とLeibnizの公式)により $g'(x)=e^{-x}-xe^{-x}=(1-x)e^{-x}$、$g''(x)=-e^{-x}-(1-x)e^{-x}=(x-2)e^{-x}$ である。$e^{-x}>0$ なので、$x<1$ で増加、$x>1$ で減少し、$x=1$ で極大値 $\dfrac1e=0.367\ldots$ をとる。$x<2$ で上に凸、$x>2$ で下に凸で、点 $\Bigl(2,\dfrac2{e^2}\Bigr)=(2,\,0.270\ldots)$ は変曲点である。
$x\to\infty$ では $g(x)=\dfrac x{e^x}\to0$ である(定数分離と方程式の実数解の個数 の補題「指数関数と対数関数の増え方」)。グラフは右へ行くと $x$ 軸に近づく。一方、$x\to-\infty$ では $x\to-\infty$、$e^{-x}\to\infty$ なので $g(x)\to-\infty$ で、しかも $\dfrac{g(x)}x=e^{-x}\to\infty$ である。左へ行くと、グラフはどんな直線よりも急に落ちていく(図2)。
$y=xe^{-x}$ のグラフ。右では横の漸近線 $y=0$ に近づき、極大点 $(1,\frac1e)$ と変曲点 $(2,\frac2{e^2})$ をもち、左では漸近線をもたずに下へ落ちることを見る図。
2 つの例から、次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| 割り算して $f=x+1+\frac1{x-1}$ | 差が $0$ に近づく直線が漸近線 | def-csa-asymptote |
| $m=\lim\frac{f(x)}x$、$k=\lim\{f(x)-mx\}$ | 漸近線があることと 2 つの極限があることは同値 | thm-csa-slant |
| 分母の次数と分子の次数を比べる | 分数関数の漸近線は割り算の商で決まる | prop-csa-rational |
| 増減表に凹凸と漸近線を書き込む | 概形を描く手順 | rem-csa-procedure |
| 双曲線の漸近線 $y=\pm\frac bax$ | 無限遠点での接線(射影平面) | rem-csa-projective |
関数 $f$ について、
2 は「グラフと直線の縦の差が $0$ に近づく」という条件である。グラフと直線の距離(点から直線に下ろした垂線の長さ)は、縦の差に $\dfrac1{\sqrt{1+m^2}}$ を掛けたものなので、縦の差が $0$ に近づくことと距離が $0$ に近づくことは同じである。
割り算で $f(x)=(\text{1 次式})+(\text{0 に近づく部分})$ と書ければ、漸近線はすぐ読める。そうできない関数では、次の定理で $m$ と $k$ を順に求める。
関数 $f$ と実数 $m$、$k$ について、次の 2 つは同値である。
方針:1 から 2 は、差 $f(x)-mx-k$ を $x$ で割った式と、そのままの式の極限を見る。2 から 1 は $k$ を移項するだけである。
段 1(1 ならば 2:傾き)。$r(x)=f(x)-mx-k$ とおくと、1 から $x\to\infty$ で $r(x)\to0$ である。$x>0$ で
$$
\frac{f(x)}x=\frac{mx+k+r(x)}x=m+\frac kx+\frac{r(x)}x
$$
である。$x\to\infty$ で $\dfrac kx\to0$、$\dfrac{r(x)}x\to0$(分子が $0$ に、分母が $\infty$ に近づく)なので、$\dfrac{f(x)}x\to m$ である。
段 2(1 ならば 2:切片)。$f(x)-mx=k+r(x)\to k$ である。
段 3(2 ならば 1)。2 から $f(x)-mx\to k$ なので、$f(x)-(mx+k)=\{f(x)-mx\}-k\to k-k=0$ である。これは 1 である。
段 4(1 本しかない)。$y=mx+k$ と $y=m'x+k'$ がどちらも $x\to\infty$ での漸近線なら、段 1・段 2 から $m$ と $m'$ はどちらも同じ極限 $\lim\frac{f(x)}x$ に等しく、$k$ と $k'$ はどちらも $\lim\{f(x)-mx\}$ に等しい。極限は 1 つしかないので、$m=m'$、$k=k'$ である。$\square$
定理の 2 は「まず $\frac{f(x)}x$ の極限で傾き $m$ を決め、次に $f(x)-mx$ の極限で切片 $k$ を決める」という手順を表す。どちらかの極限が(実数として)存在しなければ、その方向に漸近線はない。
$y=\sqrt{x^2+1}$ は双曲線 $y^2-x^2=1$ の上半分である。一般の双曲線でも同じ計算ができる。双曲線そのものの性質(焦点と準線)は 2次曲線の焦点と準線 で扱う。
$a>0$、$b>0$ とし、双曲線 $\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{y^2}{b^2}=1$ の $x\ge a$、$y\ge0$ の部分を考える。$y$ について解くと $y=f(x)=\dfrac ba\sqrt{x^2-a^2}$ である。
$\dfrac{f(x)}x=\dfrac ba\sqrt{1-\dfrac{a^2}{x^2}}\to\dfrac ba$ であり、
$$
f(x)-\frac bax=\frac ba\bigl(\sqrt{x^2-a^2}-x\bigr)=\frac ba\cdot\frac{-a^2}{\sqrt{x^2-a^2}+x}\to0
$$
である。よって漸近線は $y=\dfrac bax$ である。ほかの部分も、$x$ を $-x$ に、$y$ を $-y$ に置きかえる対称性から、漸近線は 2 本の直線 $y=\pm\dfrac bax$ である。たとえば $a=3$、$b=2$、$x=30$ のとき、$f(30)-\frac23\cdot30=\frac23(\sqrt{891}-30)=-0.1002\ldots$ で、差はすでに小さい。
多項式 $P$、$Q$($Q$ は $0$ でない)で $f(x)=\dfrac{P(x)}{Q(x)}$ と書ける関数を分数関数(有理関数)という。分数関数の漸近線は、割り算で完全に分かる。多項式の割り算は 多項式の筆算と組立除法 で扱った。
$P$、$Q$ を多項式とし、$Q$ の次数を $d\ge1$ とする。$P$ を $Q$ で割った商を $S$、余りを $R$ とする($P=QS+R$、$R$ は $0$ か次数 $d-1$ 以下)。$f(x)=\dfrac{P(x)}{Q(x)}$ とおく。
方針:1 は分母・分子を $x^d$ で割る。2 は thm-csa-slant の傾きの極限がないことを示す。3 は分母だけが $0$ に近づくことを使う。
段 1(1 の証明)。$R=0$ なら $\frac RQ=0$ なので、極限も $0$ である。$R\ne0$ とし、$R(x)=r_{d-1}x^{d-1}+\cdots+r_0$、$Q(x)=q_dx^d+\cdots+q_0$($q_d\ne0$)と書く。$x\ne0$ で分母・分子を $x^d$ で割ると
$$
\frac{R(x)}{Q(x)}=\frac{\dfrac{r_{d-1}}x+\dfrac{r_{d-2}}{x^2}+\cdots+\dfrac{r_0}{x^d}}{q_d+\dfrac{q_{d-1}}x+\cdots+\dfrac{q_0}{x^d}}
$$
である。$x\to\pm\infty$ で分子は $0$ に、分母は $q_d\ne0$ に近づくので、$\dfrac RQ\to0$ である。$f=S+\dfrac RQ$ なので、$f(x)-S(x)\to0$ で、$S$ が 1 次以下なら $y=S(x)$ は漸近線である。
段 2(2 の証明)。$S$ の次数を $s\ge2$、最高次の係数を $c_s\ne0$ とする。$x\ne0$ で
$$
\frac{f(x)}x=\frac{S(x)}x+\frac1x\cdot\frac{R(x)}{Q(x)}
$$
である。右辺の第 2 項は段 1 から $0$ に近づく。第 1 項 $\frac{S(x)}x$ は、$c_sx^{s-1}$ に $x$ の次数の低い項を加えた式を、$x^{s-1}$ でくくった形 $x^{s-1}\bigl(c_s+(\text{0 に近づく項})\bigr)$ に書けるので、$s-1\ge1$ から絶対値が限りなく大きくなる。よって $\frac{f(x)}x$ は実数の極限をもたず、thm-csa-slant により漸近線はない。
段 3(3 の証明)。$Q(c)=0$ とする。仮定から $x-c$ は $P$ の因数ではないので、剰余の定理と因数定理 により $P(c)\ne0$ である。$x\to c$ で $P(x)\to P(c)\ne0$、$Q(x)\to0$ なので、$\left|\dfrac{P(x)}{Q(x)}\right|$ は限りなく大きくなる。$c$ の片側では $Q$ の符号は一定である($Q$ の $0$ になる点は有限個なので、$c$ に十分近い片側には $Q$ の $0$ がなく、連続な $Q$ はその区間で符号を変えない)ので、$x\to c+0$ では $f(x)$ は $\infty$ か $-\infty$ のどちらかに近づく。よって $x=c$ は縦の漸近線である。$\square$
分数関数以外では、thm-csa-slant の 2 つの極限を直接調べる。傾きの極限があっても、切片の極限がないことがある。
$h(x)=\dfrac{x^3}{x^2-1}$ とする。
段 1(定義域と対称性)。$x\ne\pm1$ で定義される。$h(-x)=\dfrac{-x^3}{x^2-1}=-h(x)$ なので、グラフは原点に関して対称である。$h(x)=0$ となるのは $x=0$ だけである。
段 2(増減)。商の微分により
$$
h'(x)=\frac{3x^2(x^2-1)-x^3\cdot2x}{(x^2-1)^2}=\frac{x^4-3x^2}{(x^2-1)^2}=\frac{x^2(x^2-3)}{(x^2-1)^2}
$$
である。$h'$ の符号は $x^2-3$ の符号と同じで($x=0$ では $h'=0$)、$|x|>\sqrt3$ で増加、$|x|<\sqrt3$($x\ne\pm1$)で減少する。$x=\sqrt3$ で極小値 $h(\sqrt3)=\dfrac{3\sqrt3}{3-1}=\dfrac{3\sqrt3}2=2.598\ldots$、$x=-\sqrt3$ で極大値 $-\dfrac{3\sqrt3}2$ をとる。$x=0$ では $h'=0$ だが、前後で $h'<0$ なので極値ではない。
段 3(凹凸)。計算すると $h''(x)=\dfrac{2x(x^2+3)}{(x^2-1)^3}$ である。$x^2+3>0$ なので、$h''$ の符号は $\dfrac x{(x^2-1)^3}$ の符号と同じで、$x<-1$ で $-$、$-1< x<0$ で $+$、$0< x<1$ で $-$、$x>1$ で $+$ である。$x=0$ の前後で符号が変わるので、原点は変曲点である。
段 4(漸近線)。$x^3=(x^2-1)x+x$ なので $h(x)=x+\dfrac x{x^2-1}$ で、prop-csa-rational により $y=x$ は両側の漸近線、$x=\pm1$ は縦の漸近線である。$x\to1+0$ では分子 $1$、分母は正のまま $0$ に近づくので $h\to\infty$、$x\to1-0$ では $h\to-\infty$ である。
段 5(表)。$x\ge0$ の部分は次のとおりで、$x<0$ の部分は原点に関して対称に描く(図3)。
| $x$ | $0$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ | $\sqrt3$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| $h'(x)$ | $0$ | $-$ | なし | $-$ | $0$ | $+$ |
| $h''(x)$ | $0$ | $-$ | なし | $+$ | $+$ | $+$ |
| $h(x)$ | $0$(変曲点) | 減少・上に凸、$-\infty$ へ | なし | $\infty$ から減少・下に凸 | 極小 $\frac{3\sqrt3}2$ | 増加・下に凸、$y=x$ に近づく |
$y=\frac{x^3}{x^2-1}$ のグラフ。縦の漸近線 $x=\pm1$、斜めの漸近線 $y=x$、極小点 $(\sqrt3,\frac{3\sqrt3}2)$、極大点 $(-\sqrt3,-\frac{3\sqrt3}2)$、変曲点の原点をもち、原点に関して対称であることを見る図。
ex-csa-start-rational のグラフも点対称である。$x=1+t$ とおくと $f(1+t)=t+2+\dfrac1t$ なので、$t\ne0$ について $f(1+t)+f(1-t)=\Bigl(t+2+\dfrac1t\Bigr)+\Bigl(-t+2-\dfrac1t\Bigr)=4$ となり、グラフは 2 本の漸近線の交点 $(1,2)$ に関して対称である。点対称の考え方は 3次関数のグラフ でも使った。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| $\frac{f(x)}x$ の極限に加えて、$f(x)-mx$ も実数に収束する | $y=f(x)$ は傾き $m$ の漸近線をもつ(thm-csa-slant) | ex-csa-no-asymptote の 1・2 |
| 商 $S$ の次数が $1$ 以下 | 分数関数は $x\to\pm\infty$ で漸近線をもつ(prop-csa-rational の 1) | ex-csa-rational-degree の 3 |
| $P$ と $Q$ が共通の因数をもたない | $Q(c)=0$ なら $x=c$ は縦の漸近線(prop-csa-rational の 3) | ex-csa-rational-degree の 4 |
| $f'(x)$ が $x\to\infty$ で極限をもつ | 漸近線 $y=mx+k$ があれば $f'(x)\to m$(prop-csa-derivative-limit) | ex-csa-slope-oscillates |
$f$ はある $A$ より大きいすべての $x$ で微分可能で、直線 $y=mx+k$ が $x\to\infty$ での漸近線であるとする。さらに $\displaystyle\lim_{x\to\infty}f'(x)=L$($L$ は実数)が存在するなら、$L=m$ である。
方針:$f(x+1)-f(x)$ を 2 通りに表し、極限を比べる。
段 1(漸近線から)。$r(x)=f(x)-mx-k$ とおくと $r(x)\to0$ である。$f(x+1)-f(x)=m+r(x+1)-r(x)$ なので、$x\to\infty$ で $f(x+1)-f(x)\to m$ である。
段 2(平均値の定理から)。$x>A$ とすると、$f$ は $[x,x+1]$ で微分可能なので連続でもあり、平均値の定理(Leb26 Theorem 4.2.4、p. 164。本記事では証明しない)により、$f(x+1)-f(x)=f'(\xi_x)$ となる $\xi_x$ が $x<\xi_x< x+1$ にある。$x\to\infty$ で $\xi_x\to\infty$ なので、$f'(\xi_x)\to L$ である。
段 3(比べる)。段 1・段 2 は同じ量 $f(x+1)-f(x)$ の極限なので、$L=m$ である。$\square$
$f(x)=x+\dfrac{\sin x^2}x$($x>0$)とする。$\left|\dfrac{\sin x^2}x\right|\le\dfrac1x\to0$ なので、$y=x$ は $x\to\infty$ での漸近線である。一方、導関数は
$$
f'(x)=1+\frac{2x\cos x^2\cdot x-\sin x^2}{x^2}=1+2\cos x^2-\frac{\sin x^2}{x^2}
$$
である。$x=\sqrt{2n\pi}$($n$ は正の整数)では $\cos x^2=1$、$\sin x^2=0$ なので $f'(x)=3$、$x=\sqrt{(2n+1)\pi}$ では $\cos x^2=-1$、$\sin x^2=0$ なので $f'(x)=-1$ である。どちらの $x$ もいくらでも大きくとれるので、$f'(x)$ は $x\to\infty$ で極限をもたない。グラフは直線 $y=x$ のまわりを細かく揺れながら近づき、接線の傾きは $1$ に近づかない(図4の右)。prop-csa-derivative-limit は「$f'$ に極限があるなら」という仮定のもとでだけ成り立つ。
$f(x)=\dfrac{\sin x}x$($x>0$)は、$\left|\dfrac{\sin x}x\right|\le\dfrac1x\to0$ なので、$y=0$ を $x\to\infty$ での横の漸近線にもつ。しかし $x=n\pi$($n$ は正の整数)では $f(x)=0$ で、グラフは漸近線と無限回交わる(図4の左)。漸近線の定義(def-csa-asymptote)は「差が $0$ に近づく」ことだけを求めていて、「交わらない」ことは求めていない。ex-csa-start-rational のように交わらない場合が多いが、それは定義から出ることではない。
左は $y=\frac{\sin x}x$ で、漸近線 $y=0$ と $x=n\pi$ で何度も交わる。右は $y=x+\frac{\sin x^2}x$ で、漸近線 $y=x$ に近づきながら細かく揺れ、接線の傾きが $1$ に近づかないことを見る図。
ex-csa-start-rational の曲線 $y=\dfrac{x^2}{x-1}$ は、分母を払うと $y(x-1)=x^2$、つまり
$$
F(x,y)=x^2-xy+y=0
$$
と書ける($x=1$ を代入すると $1=0$ となるので、この式を満たす点で $x=1$ のものはない)。$x$ と $y$ の 2 次式で表される曲線(2 次曲線)の漸近線は、微分を使わずに求めることもできる。
ex-csa-substitute で起きていることは、射影平面 で見ると見通しがよい。平面の点 $(x,y)$ を、3 つの数の比 $(X:Y:Z)$($x=\frac XZ$、$y=\frac YZ$)で表す(同次座標)。$Z=0$ となる点 $(X:Y:0)$ は、方向 $(X,Y)$ の「無限の遠く」にある点で、無限遠点 という。
曲線 $x^2-xy+y=0$ は $X^2-XY+YZ=0$ となり、$Z=0$ とおくと $X(X-Y)=0$ である。無限遠点は $(0:1:0)$(縦の方向)と $(1:1:0)$(傾き $1$ の方向)の 2 つで、曲線はそこで「無限の遠くに届く」。同次座標での接線の求め方(3 つの偏導関数を係数にする方法)は大学で学ぶので、ここでは結果だけを述べる。この 2 点での接線を計算すると、$(1:1:0)$ では $X-Y+Z=0$、つまり $y=x+1$、$(0:1:0)$ では $X=Z$、つまり $x=1$ となり、2 本の漸近線そのものが出てくる。漸近線は、曲線の無限遠点での接線である。ex-csa-substitute で「交点が 2 つとも消える」直線を探したのは、交点が 2 つとも無限遠点に重なる直線、すなわち無限遠点で接する直線を探したことにあたる。
2 次曲線と無限遠点の関係は、次のようにまとめられる(ここでは紹介だけで、証明しない)。双曲線は無限遠点を 2 つもち、漸近線は 2 本ある。放物線 $y=x^2$ は $YZ=X^2$ となり、無限遠点は $(0:1:0)$ の 1 つだけで、そこでの接線は無限遠の直線 $Z=0$ そのものなので、普通の平面の中には漸近線がない。楕円は実数の無限遠点をもたない。無限遠点の方向の数が 2 次の部分の判別式で決まることは、2次曲線と2次形式 でも触れている。
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