平面を円で分ける領域の数

同義語:円による平面の分割plane division by circles

概要

平面を円で分ける領域の数(plane division by circles)とは、一般の位置にある $n$ 個の円、すなわちどの2つもちょうど2点で交わり、どの3つも共通の点をもたない円が平面に作る領域の数のことで、$n\ge1$ では $n^2-n+2$ である。$n$ 個目の円は先の円と異なる $2(n-1)$ 点で交わって $2(n-1)$ 本の弧に分かれ、各弧が領域を1つずつ増やす。どの3つも1点を通らない $n$ 個の大円で球面を分けた数も同じ式になる。円を接させたり3つの円に1点を共有させたりすると領域は減る。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 平面を直線で分ける領域の数, 2円の位置関係と共通接線, 集合の要素の個数と包除原理

高校での出発点:円を1つずつ描き足す

紙に円を1つ描くと、平面は円の内側と外側の2つに分かれる。2つ目の円を1つ目と2点で交わるように描くと、4つになる。3つ目を先の2つとそれぞれ2点で交わるように描けば、集合の Venn 図でおなじみの8つになる。ここで数える「領域」は、描いた円周を横切らずに歩いて行き来できる範囲である。どこまでも広がる外側の部分も1つの領域として数える。

3つ目の円が作る領域

2つの円が2点で交わり、平面は4つの領域に分かれているとする。3つ目の円を、先の2つの円とそれぞれ2点で交わり、しかもその4点が互いに異なるように描く。3つ目の円の上には交点が4個あり、円周はこの4点で4本の弧に分かれる。各弧は先の円を横切らないので、1つの古い領域の中を通り、その領域を2つに分ける。したがって領域は $4+4=8$ 個になる。
もし3つ目の円が、先の2つの円の交点の1つを通るように描かれると、3つ目の円の上の異なる交点は3個に減る。弧も3本になり、領域は $4+3=7$ 個にとどまる。

平面を直線で分ける領域の数 では、新しい直線の上の交点の数から「増える領域の数」を読み取って漸化式を立てた。円でも同じ考え方が使える。違うのは、直線は両端が無限に伸びるのに対し、円は閉じていることである。この違いが、漸化式の形を少し変える。
この記事の問いは次の2つである。

  1. $n$ 個の円で平面をいくつの領域に分けられるか。→ thm-rpc-total
  2. 球面を大円で切るとどうなるか。→ thm-rpc-sphere
    高校の計算この記事で数えるものつながる見方
    階差数列の和新しい円が増やす領域の数漸化式 $C(n)-C(n-1)=2(n-1)$
    $2\{1+2+\cdots+(n-1)\}$$n$ 個の円の領域の数から2を引いた値交点の総数 $n(n-1)$
    Venn 図3つの円で8つの領域4つの円では足りないこと

一般の位置にある円

一般の位置にある円

平面上の $n$ 個の円について、次の2条件が成り立つとき、これらの円は 一般の位置 にあるという。
(R1) どの2つの円も、ちょうど2点で交わる。
(R1) どの3つの円も、共通の点をもたない。
$n$ 個の円が一般の位置にあるときの領域の数を $C(n)$ と書く。円が1つもないときは平面全体を1つの領域と数え、$C(0)=1$ とする。

条件 (i) は、2つの円が接したり、離れていたり、一方が他方の内部に入っていたりしないことを求める。2円の位置関係と共通接線 で見たとおり、半径 $r_1,r_2$、中心間の距離 $d$ の2円が2点で交わるのは $\lvert r_1-r_2\rvert< d< r_1+r_2$ のときである。条件 (ii) は、3つの円が同じ点を通らないことである。2つの円を選ぶたびに交点が2個でき、別の選び方で同じ交点にはならない。したがって交点は全部で $2\binom n2=n(n-1)$ 個ある。

半径と中心で確かめる

中心 $(0,0)$、半径 $1.3$ の円と、中心 $(1.15,\,0.25)$、半径 $1.2$ の円を考える。中心間の距離は
$$ d=\sqrt{1.15^2+0.25^2}=\sqrt{1.385}=1.176\ldots $$
で、$\lvert1.3-1.2\rvert=0.1< 1.176\ldots< 2.5=1.3+1.2$ を満たす。よってこの2円は2点で交わる。図1の4つの円は、どの2つもこの不等式を満たし、どの交点も残りの円の上にないように選んである。

一般の位置にある円を1つずつ増やした図。赤い円が新しく足した円で、赤い点はその上の交点である。領域は2、4、8、14個と増える 一般の位置にある円を1つずつ増やした図。赤い円が新しく足した円で、赤い点はその上の交点である。領域は2、4、8、14個と増える
円で分けた領域は、直線のときと違って凸とは限らない。たとえば図1の $n=2$ で、2つの円の外側の領域は「くびれた」形をしている。そのため、直線の記事で使った「凸だから異なる部分は異なる領域を通る」という論法は使えない。代わりに、弧を1本ずつ順に描き足していく。

1本の弧が増やす領域

領域の中を通り、両端がその領域の境界の上にある曲線(弧)を1本描き足すと、その領域は2つに分かれ、領域の数はちょうど1つ増える。ただし、描き足す前の図形(すでに描いた円の全体)がつながっていて、弧の両端がその図形の上にあるものとする。

この補題の根拠

この補題は、境界がつながった図形の各領域には穴がないこと(外側の領域は、無限遠の 1 点を付け加えて考える)、そして穴のない領域を境界の2点を結ぶ曲線で切ると2つに分かれること、という平面の図形の性質による。後者は直観的には明らかに見えるが、厳密な証明には位相幾何の道具(Jordan の曲線定理)が要る。この記事では証明しない。直線の記事で「各部分は通る領域を2つに分ける」とした事実の曲線版である(直線の場合は凸性で確かめられる)。

主定理1:領域の総数

一般の位置の $n$ 個の円が作る領域

$n\ge1$ 個の円が一般の位置にあるとき、領域の数は
$$ C(n)=n^2-n+2 $$
である。$n=0$ では $C(0)=1$ で、この式(値 $2$)には合わない。

新しい円の上の交点と弧を数える

方針:$n$ 個目の円が増やす領域の数を数え、得た漸化式の差を足す。
段1($n=1$)。円が1つなら、内側と外側の2つの領域ができる。よって $C(1)=2$ である。
段2(新しい円の上の交点)。$n\ge2$ とし、先の $n-1$ 個の円が描かれているとする。新しい円は、条件 (i) により先の各円とちょうど2点で交わる。条件 (ii) により、これらの交点はすべて異なる(もし新しい円が先の2つの円と同じ点で交われば、3つの円がその点を共有してしまう)。したがって新しい円の上には異なる交点が $2(n-1)$ 個あり、新しい円はこれらの点で $2(n-1)$ 本の弧に分かれる。円は閉じているので、点が $k$ 個あれば弧も $k$ 本である。
段3(弧を1本ずつ描き足す)。先の $n-1$ 個の円は、どの2つも交わるのでつながった1つの図形になっている。新しい円の弧を1本ずつ描き足していく。各弧の内部は先の円と交わらないので、ある1つの領域の中を通り、両端は先の円の上にある。lem-rpc-arc により、弧を1本描き足すたびに領域はちょうど1つ増える。描き足した弧も図形の一部になり、図形はつながったままなので、次の弧にも補題が使える。したがって
$$ C(n)-C(n-1)=2(n-1)\qquad(n\ge2). $$
段4(差を足す)。$n\ge2$ のとき、この式を $2$ から $n$ まで足すと、途中の $C(2),\ldots,C(n-1)$ は打ち消し合う(数列の和と差分)。よって
$$ C(n)-C(1)=2\{1+2+\cdots+(n-1)\}=2\cdot\frac{(n-1)n}2=n^2-n. $$
$C(1)=2$ を入れて $C(n)=n^2-n+2$ を得る。$n=1$ でも $1-1+2=2$ で正しい。$\square$

$$ \underbrace{C(n)-C(n-1)}_{\text{新しい円で増える領域}} =\underbrace{2(n-1)}_{\text{新しい円の上の交点の数}} $$

小さい個数を順に数える

$C(1)=2$ から漸化式に $n=2,3,4,5,6$ を順に入れる。
$$ C(2)=2+2=4,\quad C(3)=4+4=8,\quad C(4)=8+6=14, $$
$$ C(5)=14+8=22,\quad C(6)=22+10=32. $$
たとえば4つ目の円は先の3つの円と6点で交わり、6本の弧に分かれるので、$8$ 個から $14$ 個へ増える(図1の右端)。一般項でも $C(4)=16-4+2=14$ と確かめられる。

この数は 最大 でもある。任意の円の置き方で新しい円を足すとき、先の各円との共有点は高々2個なので、新しい円の上の異なる点は高々 $2(n-1)$ 個である。点が $k\ge1$ 個なら弧は $k$ 本で、1本の弧は領域を高々1つしか増やさない(弧の両側の2つにしか分けられない)。点が1つもなければ、新しい円は1つの領域の中にあり、内側を切り取って1つ増やすだけである。$n\ge2$ では $1\le2(n-1)$ なので、どの場合も増える数は $2(n-1)$ 以下である。Wei26a も最大の領域の数を $n^2-n+2$ と述べている。

4つの円では4集合の Venn 図は描けない

4つの集合の Venn 図は、どの集合に入りどの集合に入らないかの $2^4=16$ 通りのそれぞれに、1つずつ領域を割り当てる図である。円を4つ使うと、置き方によらず領域は高々 $C(4)=14$ 個なので、16 通りすべてを領域として描くことはできない。

3つの集合なら $C(3)=8=2^3$ で、ちょうど足りる。Venn 図と要素の数の関係は 集合の要素の個数と包除原理 で扱っている。

交点・弧・領域で数え直す

漸化式を使わずに、交点と弧と領域の数の関係から同じ答えを出すこともできる。これは Eulerの多面体定理(高校数学) の「頂点 − 辺 + 面 = 2」を、平面に描いた図に当てはめるものである(同記事は辺が線分の図で証明している。辺が円弧でも同じ関係が成り立つことは、この記事では証明しない)。

Euler の関係で検算する

$n\ge2$ 個の円が一般の位置にあるとき、交点は $V=n(n-1)$ 個ある。各円の上には交点が $2(n-1)$ 個あるので、各円は $2(n-1)$ 本の弧に分かれ、弧は全部で $E=2n(n-1)$ 本である。図はつながっているので、平面の図についての Euler の関係 $V-E+F=2$(外側の領域も $F$ に数える)を使うと
$$ F=2-V+E=2-n(n-1)+2n(n-1)=n^2-n+2 $$
となり、thm-rpc-total と一致する。$n=4$ なら $V=12$、$E=24$、$F=2-12+24=14$ である。

直線の記事では、無限に伸びる半直線があるため、無限遠に頂点を1つ足して数えた。円は閉じているので、その工夫なしに $V-E+F=2$ がそのまま使える。

主定理2:球面を大円で分ける

地球儀の赤道や経線のように、球の中心を通る平面で球面を切った切り口の円を 大円 という。2つの異なる大円は、2つの平面の交線が球面と交わる2点、すなわち正反対の2点で必ず交わる。
球面に3つの大円を描いた図。どの2つも正反対の2点で交わり、どの3つも1点を通らない。球面は8つの領域に分かれる 球面に3つの大円を描いた図。どの2つも正反対の2点で交わり、どの3つも1点を通らない。球面は8つの領域に分かれる

球面を大円で分けた領域

球面上に $n\ge1$ 個の異なる大円があり、どの3つも共通の点をもたないとする。このとき球面は $n^2-n+2$ 個の領域に分かれる。

平面の場合と同じ漸化式を立てる

方針:prf-rpc-total の段2と段3が、球面の上でもそのまま成り立つことを確かめる。
段1($n=1$)。1つの大円は球面を2つの半球に分ける。よって領域は2個である。
段2(交点)。$n\ge2$ とする。新しい大円は、先の各大円と正反対の2点でちょうど2回交わる。どの3つも共通の点をもたないので、これらの交点は互いに異なり、新しい大円の上には $2(n-1)$ 個の異なる点がある。大円は閉じているので、$2(n-1)$ 本の弧に分かれる。
段3(弧を描き足す)。先の大円たちはどの2つも交わるので、球面の上でつながった1つの図形になっている。各弧は1つの領域の中を通り、両端は先の大円の上にある。lem-rpc-arc と同じ理由で、弧1本ごとに領域が1つ増える(球面でも、つながった図形の領域を境界の2点を結ぶ曲線で切ると2つに分かれる)。よって領域の数は $2(n-1)$ 増える。
段4(差を足す)。領域の数を $G(n)$ とすると、$G(1)=2$、$G(n)-G(n-1)=2(n-1)$ で、これは prf-rpc-total の漸化式と同じである。したがって $G(n)=n^2-n+2$ である。$\square$

3つの大円と8つの領域

赤道と、互いに直交する2本の経線(たとえば経度 $0^\circ$ と $90^\circ$ の経線を、それぞれ反対側の経度 $180^\circ$・$270^\circ$ の経線と合わせて1つの大円とみる)を考える。2本の経線の大円は北極と南極で交わり、赤道とはそれぞれ赤道上の2点で交わる。どの3つも共通の点をもたない。球面は北半球の4つと南半球の4つ、合わせて $8=3^2-3+2$ 個に分かれる。
4つ目の大円を、どの交点も通らないように加えると、先の3つと6点で交わり、領域は $8+6=14$ 個になる。

平面と球面で同じ数になるのは偶然ではない。球面の1点(どの大円の上にもない点)を取り除いて平面に広げる立体射影という写像を使うと、大円は平面上の円か直線に移る。円と直線を同じ仲間として扱う見方は、円に関する反転 で使ったものである。

一般の位置でない場合

条件を外すと、新しい円の上の異なる点が減り、増える領域も減る。

外す条件反例成り立たなくなること
条件 (i)(2点で交わる)を「接する」に弱める2つの円が1点で外接する領域は $4$ でなく $3$。接点で弧が1本しかできない
条件 (i) を外し、交わらない円を許す一方の円が他方の内部にある領域は $3$。新しい円の上に点がなく、増えるのは1つだけ
条件 (ii)(3つが1点を通らない)3つの円が1点を共有する領域は $8$ でなく $7$
接する2円と、1点を共有する3円

2つの円が外接すると、2つ目の円の上の点は接点の1つだけで、弧は1本(円全体から接点を除いたもの)になる。2つ目の円は1つ目の外側の領域だけを切り、内側と外側に分けるので、領域は $2+1=3$ 個である。
3つの円がすべて点 $P$ を通り、ほかに2つずつ別の点で交わるとする。先の 2 つの円は $P$ ともう 1 点で交わり、領域は 4 個である。3 つ目の円の上の異なる点は、$P$ と、先の 2 つの円との残りの交点 2 個の合わせて 3 個なので、3 つ目の円は 3 本の弧に分かれ、lem-rpc-arc により領域は $4+3=7$ 個になる。一般の位置の $8$ より 1 つ少ない(交点 $V=4$、弧 $E=9$ として $V-E+F=2$ で検算しても $F=7$ である)。

接する場合は、条件 (i) だけが破れている(3つの円が1点を通るわけではない)。内部に入れ子にする場合は、2つの円が交わらないので、lem-rpc-arc の「図形がつながっている」という前提も同時に破れている。

円の代わりに楕円を使う

2つの楕円は、細長い向きを違えると4点で交わるように置ける。どの2つも4点で交わり、どの3つも共通の点をもたない $n$ 個の楕円では、同じ数え方が使える。

4点で交わる楕円の場合

$n\ge1$ 個の楕円が、どの2つもちょうど4点で交わり、どの3つも共通の点をもたないように置かれているとき、領域の数は $2n^2-2n+2$ である。

交点が2倍になった漸化式

1つの楕円は内側と外側の2つに分ける。$n\ge2$ のとき、新しい楕円は先の各楕円と4点で交わり、それらはすべて異なるので、新しい楕円の上には $4(n-1)$ 個の点があり、$4(n-1)$ 本の弧に分かれる。先の楕円たちはつながっているので、lem-rpc-arc により各弧が領域を1つずつ増やす。領域の数を $D(n)$ とすると $D(1)=2$、$D(n)-D(n-1)=4(n-1)$ で、
$$ D(n)=2+4\{1+2+\cdots+(n-1)\}=2+2n(n-1)=2n^2-2n+2.\qquad\square $$

$n=4$ なら $D(4)=26\ge16$ で、楕円なら4集合の Venn 図を描く余地がある。Wei26b も同じ値の列 $2,6,14,26,\ldots$ を挙げている。ただし、この命題は「4点で交わるように置けた場合」の数であり、2つの楕円の共有点が4個以下であることはこの記事では証明しない。

さらに先へ

1つ次元を上げて、空間を平面で切ると、新しい平面の上には先の平面との交線が直線として現れる。その直線たちが新しい平面を分ける数は、平面を直線で分ける領域の数 の答えそのものである。また、空間の平面がすべて1点を通るときは、その点を中心とする球面の切り口が大円になり、この記事の thm-rpc-sphere が使える。この話は 空間を平面で分ける領域の数 で扱う。

関連項目

参考文献

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