Euler–Maclaurinの公式(高校数学)

同義語:オイラー・マクローリンの公式(高校数学)

概要

Euler–Maclaurinの公式(高校数学)では、和と積分の差を積分で表す公式を扱う。整数 $a<b$ と、$f'$ が連続な $f$ について $\sum_{k=a}^bf(k)=\int_a^bf\,dx+\frac{f(a)+f(b)}2+\int_a^bP_1f'\,dx$($P_1(x)=x-\lfloor x\rfloor-\frac12$)であり、$f''$ が連続なら、もう一度の部分積分で $\frac{f'(b)-f'(a)}{12}$ の項が出る。これで $\sum k^2$ の公式の各項の意味が分かる。$\frac1x$ に使うと、Euler の定数 $\gamma$ の積分表示、$\gamma>\frac12$、$-\frac1{8n^2}\le H_n-\log n-\gamma-\frac1{2n}\le0$ が得られる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 定積分, 部分積分, 床関数, 対数関数
和 $\sum_{k=a}^bf(k)$ と積分 $\int_a^bf(x)\,dx$ の差を、積分の形で正確に表す公式がある。Euler–Maclaurin の公式という。この記事では、1 次と 2 次の Euler–Maclaurin の公式を、部分積分だけで証明する(部分積分の使い方は 部分積分の使い方 にまとめてある)。これを使うと、$\sum_{k=0}^nk^2=\frac{n^3}3+\frac{n^2}2+\frac n6$ の 3 つの項の意味や、調和数 $H_n$ と $\log n$ の差がくわしく分かる。
この記事は 積分と和の類似 から始まる 5 本の記事の最後(5 本目)である。前の Stieltjes積分(高校数学) では、和と積分を 1 つの式 $\int f\,d\alpha$ で書いた。この記事は、その見方を出発点にする。ただし、証明には Stieltjes 積分を使わないので、この記事だけでも読める。大学の解析学での Euler–Maclaurin の公式は、大学向けの記事 Euler–Maclaurinの公式 で扱う。

高校での出発点

2 乗の和の公式の 3 つの項

高校の公式を $k=0$ から書くと
$$ \sum_{k=0}^nk^2=\frac{n(n+1)(2n+1)}6=\frac{n^3}3+\frac{n^2}2+\frac n6 $$
である($k=0$ の項は $0$)。$f(x)=x^2$ とすると、右辺の 3 つの項は次のように読める。

  • $\frac{n^3}3=\int_0^nx^2\,dx$(積分)。
  • $\frac{n^2}2=\frac{f(0)+f(n)}2$(両端の値の平均)。
  • $\frac n6=\frac1{12}\bigl(f'(n)-f'(0)\bigr)$($f'(x)=2x$ なので $\frac1{12}(2n-0)=\frac n6$)。
    $n=3$ なら左辺は $0+1+4+9=14$、右辺は $9+4.5+0.5=14$ である。
調和数のくわしい近似

$H_n=1+\frac12+\cdots+\frac1n$ と $\log n$ の差は Euler の定数 $\gamma=0.5772156649\cdots$ に近づく(和と積分の差)。さらに $\frac1{2n}$ を足すと、近似が格段によくなる。$n=10$ では(小数第 7 位まで)

近似式値値 $-H_{10}$($H_{10}=2.9289683$)
$\log10+\gamma$$2.8798008$$-0.0491675$
$\log10+\gamma+\frac1{20}$$2.9298008$$0.0008325$
$\log10+\gamma+\frac1{20}-\frac1{1200}$$2.9289674$$-0.0000008$

である。$\frac1{2n}$ と $-\frac1{12n^2}$ はどこから来るのか。

2 つの例で現れる $\frac12$ と $\frac1{12}$ は同じ出どころをもつ。この記事で答える問いは次のとおりである。

  1. 和と積分の差を式で表せるか。→ thm-emf-em1、thm-emf-em2
  2. $\sum k^2$ の公式の 3 つの項は、なぜそうなるのか。→ ex-emf-em2-squares
  3. Euler の定数 $\gamma$ を積分で表せるか。$\gamma$ はどの範囲にあるか。→ ex-emf-gamma-integral、prop-emf-gamma-half
  4. $H_n$ を $\log n$ でどこまで精密に近似できるか。→ prop-emf-harmonic
    高校の計算大学の概念ボックス
    台形の面積で積分を近似する1 次の Euler–Maclaurin の公式thm-emf-em1
    $\sum k^2$、$\sum k^3$ の公式2 次の Euler–Maclaurin の公式thm-emf-em2
    $H_n-\log n$ の極限Euler の定数の積分表示ex-emf-gamma-integral
    $\log n!$ の見積もりStirling の公式ex-emf-stirling

和と積分の差を積分で書く

Stieltjes積分(高校数学) で見たように、$f$ が連続なら、和は床関数に関する Stieltjes 積分として $\sum_{a< k\le b}f(k)=\int_a^bf\,d\lfloor x\rfloor$ と書け、積分は $\int_a^bf\,dx$ である。2 つの式の違いは $\lfloor x\rfloor$ と $x$ の違いだけなので、和と積分の差を調べるには、$x-\lfloor x\rfloor$ を調べればよい。$x-\lfloor x\rfloor$ は $x$ の小数部分で、$0$ 以上 $1$ 未満の値をとる。その平均が $\frac12$ なので、$\frac12$ を引いて平均を $0$ にしたものを使う。

のこぎり波 P1 と P2

実数 $x$ について
$$ P_1(x):=x-\lfloor x\rfloor-\frac12,\qquad P_2(x):=\frac12\left(t^2-t+\frac16\right)\quad(t=x-\lfloor x\rfloor) $$
とおく。$t=x-\lfloor x\rfloor$ は $x$ の小数部分である。

のこぎり波の値
  • $P_1(0)=-\frac12$、$P_1(0.25)=-0.25$、$P_1(0.5)=0$、$P_1(0.9)=0.4$、$P_1(1)=-\frac12$。$P_1$ は整数から整数まで $-\frac12$ から $\frac12$ 近くまで直線的に増え、整数で $-\frac12$ に跳び下がる。
  • $P_2(0)=\frac12\cdot\frac16=\frac1{12}$、$P_2\left(\frac12\right)=\frac12\left(\frac14-\frac12+\frac16\right)=\frac12\cdot\left(-\frac1{12}\right)=-\frac1{24}$、$P_2(1)=\frac1{12}$。
    どちらも周期 $1$ の関数である($x$ を $x+1$ にしても小数部分は変わらない)。
のこぎり波の性質

整数 $k$ と $k\le x\le k+1$ について $Q_1(x):=x-k-\frac12$、$Q_2(x):=\frac12\left((x-k)^2-(x-k)+\frac16\right)$ とおく。

  1. $k\le x< k+1$ では $P_1(x)=Q_1(x)$、$k\le x\le k+1$ では $P_2(x)=Q_2(x)$ である。
  2. $Q_2'(x)=Q_1(x)$、$Q_2(k)=Q_2(k+1)=\frac1{12}$ である。
  3. $\int_k^{k+1}Q_1(x)\,dx=0$、$\int_k^{k+1}Q_2(x)\,dx=0$ である。
  4. すべての実数 $x$ で $-\frac12\le P_1(x)<\frac12$、$-\frac1{24}\le P_2(x)\le\frac1{12}$ である。
小数部分を t とおいて計算する

1 について。$k\le x< k+1$ なら $\lfloor x\rfloor=k$ なので、定義から $P_1(x)=x-k-\frac12=Q_1(x)$、$P_2(x)=Q_2(x)$ である。$x=k+1$ では $\lfloor x\rfloor=k+1$、小数部分は $0$ なので $P_2(k+1)=\frac1{12}$ であり、$Q_2(k+1)=\frac12\left(1-1+\frac16\right)=\frac1{12}$ と一致する。
2 について。$t=x-k$ とおくと $Q_2=\frac12\left(t^2-t+\frac16\right)$ で、$\frac{dt}{dx}=1$ なので $Q_2'(x)=\frac12(2t-1)=t-\frac12=Q_1(x)$ である。$Q_2(k)$ は $t=0$、$Q_2(k+1)$ は $t=1$ での値で、どちらも $\frac12\cdot\frac16=\frac1{12}$ である。
3 について。$t=x-k$ と置換すると
$$ \int_k^{k+1}Q_1\,dx=\int_0^1\left(t-\frac12\right)dt=\frac12-\frac12=0,\qquad\int_k^{k+1}Q_2\,dx=\frac12\int_0^1\left(t^2-t+\frac16\right)dt=\frac12\left(\frac13-\frac12+\frac16\right)=0 $$
である。
4 について。小数部分 $t$ は $0\le t<1$ なので、$P_1=t-\frac12$ は $-\frac12\le P_1<\frac12$ である。$P_2$ は平方完成すると
$$ P_2=\frac12\left(\left(t-\frac12\right)^2-\frac14+\frac16\right)=\frac12\left(\left(t-\frac12\right)^2-\frac1{12}\right) $$
である。$0\le t<1$ では $0\le\left(t-\frac12\right)^2\le\frac14$ なので、$P_2$ は $\frac12\left(0-\frac1{12}\right)=-\frac1{24}$ 以上、$\frac12\left(\frac14-\frac1{12}\right)=\frac12\cdot\frac16=\frac1{12}$ 以下である。$\square$

図1:P_1(青、のこぎり波)と P_2(赤)。P_1 の各線分は、左端(高さ −1/2、黒丸)を含み、右端(高さ 1/2、白丸)を含まない。P_2 は連続で、傾きが P_1 に等しく、値は −1/24 と 1/12 の間にある 図1:P_1(青、のこぎり波)と P_2(赤)。P_1 の各線分は、左端(高さ −1/2、黒丸)を含み、右端(高さ 1/2、白丸)を含まない。P_2 は連続で、傾きが P_1 に等しく、値は −1/24 と 1/12 の間にある
定義から $\lfloor x\rfloor=x-\frac12-P_1(x)$ である。定数 $\frac12$ は増え方に影響しないので、形式的には
$$ \sum_{a< k\le b}f(k)=\int_a^bf\,d\lfloor x\rfloor\quad\text{「}=\text{」}\quad\int_a^bf\,dx-\int_a^bf\,dP_1 $$
となりそうである。$P_1$ は増加関数ではないので、Stieltjes積分(高校数学) の定義($\alpha$ は増加関数)では、右の最後の積分を考えられない。そこで、この見通しを普通の部分積分で正確に述べ直す。
$P_1$ は整数で跳ぶが、$Q_1$ は各小区間 $[k,k+1]$ の上で連続である。そこで、$a< b$ が整数のとき
$$ \int_a^bP_1(x)g(x)\,dx:=\sum_{k=a}^{b-1}\int_k^{k+1}Q_1(x)g(x)\,dx $$
と約束する($g$ は連続関数)。各小区間の右端 $k+1$ だけで $P_1$ と $Q_1$ の値が違うが、1 点での値は積分に影響しないので、これは自然な約束である。

1 次の Euler–Maclaurin の公式

$a< b$ を整数とし、$f$ は $[a,b]$ で微分できて導関数 $f'$ が連続とする。このとき
$$ \sum_{k=a}^bf(k)=\int_a^bf(x)\,dx+\frac{f(a)+f(b)}2+\int_a^bP_1(x)f'(x)\,dx $$
である。

各小区間で部分積分する

方針:小区間 $[k,k+1]$ で $Q_1(x)f'(x)$ を部分積分すると「台形の面積 $-$ 積分」が出る。それを足し合わせる。
段 1(1 つの小区間)。$Q_1'(x)=1$ なので、部分積分により
$$ \int_k^{k+1}Q_1(x)f'(x)\,dx=\Bigl[Q_1(x)f(x)\Bigr]_k^{k+1}-\int_k^{k+1}Q_1'(x)f(x)\,dx=Q_1(k+1)f(k+1)-Q_1(k)f(k)-\int_k^{k+1}f(x)\,dx $$
である。$Q_1(k+1)=\frac12$、$Q_1(k)=-\frac12$ なので
$$ \int_k^{k+1}Q_1(x)f'(x)\,dx=\frac{f(k)+f(k+1)}2-\int_k^{k+1}f(x)\,dx $$
である。
段 2(足し合わせる)。段 1 の式を $k=a,\dots,b-1$ について足す。左辺の和は、約束により $\int_a^bP_1f'\,dx$ である。右辺の積分の和は、加法性により $\int_a^bf\,dx$ である。右辺の残りは
$$ \sum_{k=a}^{b-1}\frac{f(k)+f(k+1)}2=\frac12\Bigl(f(a)+2f(a+1)+2f(a+2)+\cdots+2f(b-1)+f(b)\Bigr) $$
である。$a+1,\dots,b-1$ での値は、隣り合う 2 つの項に 1 回ずつ現れるので係数が $2$ になる。これは $\sum_{k=a}^bf(k)-\frac{f(a)+f(b)}2$ に等しい。以上から
$$ \int_a^bP_1f'\,dx=\sum_{k=a}^bf(k)-\frac{f(a)+f(b)}2-\int_a^bf\,dx $$
であり、移項すると定理の式になる。$\square$

段 1 の $\frac{f(k)+f(k+1)}2$ は、底辺 $1$、2 つの辺の長さが $f(k)$ と $f(k+1)$ の台形の面積である。つまり thm-emf-em1 は、「台形の面積の和と積分の差は $\int P_1f'\,dx$ である」と言っている(図 2)。$f$ の値の和は、台形の面積の和に両端の半分 $\frac{f(a)+f(b)}2$ を足したものである。
図2:y=1/x(1≦x≦5)と台形。台形の面積の和 1.68333 と、曲線の下の面積 log 5=1.60944 の差 0.07390 が、∫P_1(x)f'(x)dx に当たる 図2:y=1/x(1≦x≦5)と台形。台形の面積の和 1.68333 と、曲線の下の面積 log 5=1.60944 の差 0.07390 が、∫P_1(x)f'(x)dx に当たる

1 次式と 2 次式で確かめる
  • $f(x)=x$、$a=0$、$b=n$。$f'=1$ なので、prop-emf-sawtooth の 3 から $\int_k^{k+1}Q_1\cdot1\,dx=0$ で、最後の項は $0$ である。よって $\sum_{k=0}^nk=\frac{n^2}2+\frac{0+n}2=\frac{n(n+1)}2$ で、高校の公式と一致する。
  • $f(x)=x^2$。$f'(x)=2x$ で、$t=x-k$ と置換すると
    $$ \int_k^{k+1}Q_1(x)\cdot2x\,dx=\int_0^1\left(t-\frac12\right)2(k+t)\,dt=2k\int_0^1\left(t-\frac12\right)dt+2\int_0^1\left(t^2-\frac t2\right)dt=0+2\left(\frac13-\frac14\right)=\frac16 $$
    である。$k=0,\dots,n-1$ の $n$ 個を足すと $\int_0^nP_1\cdot2x\,dx=\frac n6$ なので
    $$ \sum_{k=0}^nk^2=\frac{n^3}3+\frac{0+n^2}2+\frac n6 $$
    となり、ex-emf-squares の 3 つの項がそのまま出てくる。
1/x の和と台形

$f(x)=\frac1x$、$a=1$、$b=5$ とする。$H_5=1+\frac12+\frac13+\frac14+\frac15=\frac{137}{60}=2.28333$、$\int_1^5\frac{dx}x=\log5=1.60944$、$\frac{f(1)+f(5)}2=\frac{1+0.2}2=0.6$ である(小数第 5 位まで)。thm-emf-em1 から
$$ \int_1^5P_1(x)\cdot\left(-\frac1{x^2}\right)dx=H_5-\log5-0.6=2.28333-1.60944-0.6=0.07390 $$
である。台形の面積の和は $H_5-0.6=1.68333$ で、$\log5$ より $0.07390$ 大きい。$\frac1x$ のグラフは下に凸なので、台形の上の辺(弦)が曲線より上にあり、台形の方が大きくなる。

Euler の定数を積分で表す

高校数学の記事 和と積分の差 では、$H_n-\log n$ が $n\to\infty$ である数 $\gamma$(Euler の定数)に収束し、$0<\gamma<1$ であることを示した。この節では、まずこの事実を使って $\gamma$ を積分で表し、$\gamma>\frac12$ と $H_n\le\log n+\gamma+\frac1{2n}$ を示す。

Euler の定数の積分表示

thm-emf-em1 を $f(x)=\frac1x$、$a=1$、$b=n$ で使う。$f'(x)=-\frac1{x^2}$ なので
$$ H_n=\log n+\frac{1+\frac1n}2-J_n,\qquad J_n:=\int_1^n\frac{P_1(x)}{x^2}\,dx $$
である。thm-emf-em1 を使えるのは $a< b$、つまり $n\ge2$ のときだが、$n=1$ でも $J_1=\int_1^1\frac{P_1(x)}{x^2}\,dx=0$ なので、この式は $H_1=1=\log1+\frac{1+1}2-0$ として直接成り立つ。$J_n$ について解くと $J_n=\frac12+\frac1{2n}-\left(H_n-\log n\right)$ である。$n\to\infty$ で $\frac1{2n}\to0$、$H_n-\log n\to\gamma$ なので、$J_n$ は $\frac12-\gamma$ に収束する。この極限を $\int_1^\infty\frac{P_1(x)}{x^2}\,dx$ と書くと
$$ \gamma=\frac12-\int_1^\infty\frac{P_1(x)}{x^2}\,dx $$
である。数値積分で右辺を計算すると $0.5772156649\cdots$ となり、$\gamma$ と一致する。

Euler の定数は 1/2 より大きい

$\gamma>\frac12$ である。また、すべての正の整数 $n$ について $H_n\le\log n+\gamma+\frac1{2n}$ である。

左右対称な点を組にする

方針:各小区間 $[k,k+1]$ での $\frac{P_1(x)}{x^2}$ の積分が負であることを示す。$P_1$ は小区間の左半分で負、右半分で正だが、$\frac1{x^2}$ は左の方が大きいので、負の部分が勝つ。
段 1(1 つの小区間の積分は負)。$k$ を正の整数とし、$c_k:=\int_k^{k+1}\frac{Q_1(x)}{x^2}\,dx$ とおく。$x=k+t$ と置換すると $c_k=\int_0^1\frac{t-\frac12}{(k+t)^2}\,dt$ である。これを $0\le t\le\frac12$ と $\frac12\le t\le1$ に分け、後者で $t=1-s$ と置換すると($dt=-ds$、$t=\frac12\to s=\frac12$、$t=1\to s=0$)
$$ \int_{1/2}^1\frac{t-\frac12}{(k+t)^2}\,dt=\int_0^{1/2}\frac{\frac12-s}{(k+1-s)^2}\,ds $$
である。積分の変数を $s$ にそろえて前半と合わせると
$$ c_k=\int_0^{1/2}\left(\frac12-s\right)\left(\frac1{(k+1-s)^2}-\frac1{(k+s)^2}\right)ds $$
である。$0\le s<\frac12$ では $\frac12-s>0$ であり、$k+s< k+1-s$ なので $\frac1{(k+1-s)^2}<\frac1{(k+s)^2}$、つまり 2 つ目のかっこは負である。よって被積分関数は $0\le s<\frac12$ で負の連続関数であり、$c_k<0$ である。
段 2($\gamma>\frac12$)。$J_n=c_1+c_2+\cdots+c_{n-1}$ で、各 $c_k$ は負なので、$J_n$ は $n$ について減少する。$n\ge2$ で $J_n\le J_2=c_1<0$ なので、極限 $\frac12-\gamma=\lim J_n$ も $c_1$ 以下で、負である。よって $\gamma>\frac12$ である。
段 3(不等式)。ex-emf-gamma-integral の $H_n=\log n+\frac12+\frac1{2n}-J_n$ と $\gamma=\frac12-\lim_{m\to\infty}J_m$ を引くと
$$ H_n-\log n-\gamma-\frac1{2n}=\lim_{m\to\infty}J_m-J_n $$
である。$m\ge n$ なら $J_m\le J_n$(段 2 で $J$ は減少)なので、右辺は $0$ 以下である。$\square$

Euler の定数を下から評価する

prf-emf-gamma-half の段 2 から $\frac12-\gamma\le c_1$、つまり $\gamma\ge\frac12-c_1$ である。$c_1$ を計算する。$1\le x<2$ では $P_1(x)=x-1-\frac12=x-\frac32$ なので
$$ c_1=\int_1^2\frac{x-\frac32}{x^2}\,dx=\int_1^2\left(\frac1x-\frac3{2x^2}\right)dx=\left[\log x+\frac3{2x}\right]_1^2=\left(\log2+\frac34\right)-\left(0+\frac32\right)=\log2-\frac34 $$
である。$\log2=0.69315$ なので $c_1=-0.05685$ であり(小数第 5 位まで)
$$ \gamma\ge\frac12-c_1=\frac54-\log2=0.55685 $$
まで言える。実際の値 $\gamma=0.57722$ とくらべると、差は $0.02$ ほどである。和と積分の差 の図 3 で、どの隙間もその帯の半分より多くを占めていたのは、prf-emf-gamma-half の段 1 の $c_k<0$ と同じことである。実際、$k$ 番目の隙間の面積 $\frac1k-\int_k^{k+1}\frac{dx}x$ から帯の面積の半分 $\frac12\left(\frac1k-\frac1{k+1}\right)$ を引くと、台形の面積と積分の差 $\frac12\left(\frac1k+\frac1{k+1}\right)-\int_k^{k+1}\frac{dx}x$ になり、これは thm-emf-em1 を $[k,k+1]$ で使うと $-c_k$ に等しい。この $-c_k>0$ を $k=1,2,\dots$ について合計したものが $\gamma-\frac12$ である。

この記事だけで γ の存在も分かる

ex-emf-gamma-integral では、$\gamma$ の存在を 和と積分の差 から借りた。実は、この記事の中だけでも示せる。

  • prf-emf-gamma-half の段 1 から、各 $c_k$ は負なので、$J_n=c_1+\cdots+c_{n-1}$ は $n$ について減少する。
  • prop-emf-sawtooth の 4 から $P_1(x)\ge-\frac12$ なので、$\frac{P_1(x)}{x^2}\ge-\frac1{2x^2}$ である。積分の単調性から
    $$ J_n\ge-\frac12\int_1^n\frac{dx}{x^2}=-\frac12\left(1-\frac1n\right)>-\frac12 $$
    である。
  • 減少し、下に有界な数列は収束する(実数の連続性。高校では証明せずに認めて使う)ので、$J_n$ は収束する。
    ex-emf-gamma-integral の $H_n-\log n=\frac12+\frac1{2n}-J_n$ から、$H_n-\log n$ も収束する。その極限が $\gamma$ であり、$\lim J_n\ge-\frac12$ から $\gamma\le1$ も分かる。

2 次の Euler–Maclaurin の公式

thm-emf-em1 の最後の積分 $\int P_1f'\,dx$ を、もう一度部分積分する。prop-emf-sawtooth の 2 から $Q_2'=Q_1$ なので、$Q_1f'$ を「$Q_2$ の導関数 × $f'$」と見て部分積分できる。

2 次の Euler–Maclaurin の公式

$a< b$ を整数とし、$f$ は $[a,b]$ で 2 回微分できて $f''$ が連続とする。このとき
$$ \sum_{k=a}^bf(k)=\int_a^bf(x)\,dx+\frac{f(a)+f(b)}2+\frac{f'(b)-f'(a)}{12}-\int_a^bP_2(x)f''(x)\,dx $$
である。

もう一度部分積分する

方針:thm-emf-em1 の $\int_k^{k+1}Q_1f'\,dx$ を、$Q_1=Q_2'$ を使って部分積分する。$Q_2$ が両端で同じ値 $\frac1{12}$ をとるので、足すと望遠鏡和になる。
段 1(1 つの小区間)。prop-emf-sawtooth の 2 により $Q_2'=Q_1$、$Q_2(k)=Q_2(k+1)=\frac1{12}$ なので、部分積分により
$$ \int_k^{k+1}Q_1(x)f'(x)\,dx=\Bigl[Q_2(x)f'(x)\Bigr]_k^{k+1}-\int_k^{k+1}Q_2(x)f''(x)\,dx=\frac{f'(k+1)-f'(k)}{12}-\int_k^{k+1}Q_2(x)f''(x)\,dx $$
である。
段 2(足し合わせる)。$k=a,\dots,b-1$ について足す。左辺の和は $\int_a^bP_1f'\,dx$ である。右辺の第 1 項の和は
$$ \frac1{12}\Bigl(\bigl(f'(a+1)-f'(a)\bigr)+\bigl(f'(a+2)-f'(a+1)\bigr)+\cdots+\bigl(f'(b)-f'(b-1)\bigr)\Bigr)=\frac{f'(b)-f'(a)}{12} $$
である(途中の項が打ち消し合う)。右辺の第 2 項の和は、prop-emf-sawtooth の 1($[k,k+1]$ で $P_2=Q_2$)と加法性により $\int_a^bP_2f''\,dx$ である。よって
$$ \int_a^bP_1f'\,dx=\frac{f'(b)-f'(a)}{12}-\int_a^bP_2f''\,dx $$
であり、これを thm-emf-em1 の式に代入すると定理の式になる。$\square$

2 乗の和:公式がちょうど終わる

$f(x)=x^2$、$a=0$、$b=n$ とする。$f'(x)=2x$、$f''(x)=2$ である。prop-emf-sawtooth の 3 から $\int_k^{k+1}Q_2\cdot2\,dx=0$ なので、最後の積分は $0$ である。よって
$$ \sum_{k=0}^nk^2=\frac{n^3}3+\frac{0+n^2}2+\frac{2n-0}{12}=\frac{n^3}3+\frac{n^2}2+\frac n6 $$
である。ex-emf-squares の 3 つの項は、積分・両端の平均・導関数の差の $\frac1{12}$ であり、余りの積分はちょうど $0$ になる。

3 乗の和

$f(x)=x^3$、$a=0$、$b=n$ とする。$f'(x)=3x^2$、$f''(x)=6x$ である。$t=x-k$ と置換すると
$$ \int_k^{k+1}Q_2(x)\cdot6x\,dx=6k\int_0^1\frac12\left(t^2-t+\frac16\right)dt+3\int_0^1\left(t^3-t^2+\frac t6\right)dt=0+3\left(\frac14-\frac13+\frac1{12}\right)=0 $$
である(1 つ目の積分は prop-emf-sawtooth の 3 で $0$)。よって最後の積分は $0$ で
$$ \sum_{k=0}^nk^3=\frac{n^4}4+\frac{n^3}2+\frac{3n^2-0}{12}=\frac{n^4+2n^3+n^2}4=\left(\frac{n(n+1)}2\right)^2 $$
である。$n=3$ なら左辺は $0+1+8+27=36$、右辺は $\left(\frac{3\cdot4}2\right)^2=36$ である。

調和数の精密な評価

すべての正の整数 $n$ について
$$ -\frac1{8n^2}\le H_n-\log n-\gamma-\frac1{2n}\le0 $$
である。

2 次の公式と P2 の範囲を使う

方針:右の不等式は prop-emf-gamma-half で示した。左の不等式は、thm-emf-em2 を $\frac1x$ に使い、$P_2$ の範囲 $-\frac1{24}\le P_2\le\frac1{12}$ で余りの積分を押さえる。
段 1(2 次の公式を使う)。$f(x)=\frac1x$ では $f'(x)=-\frac1{x^2}$、$f''(x)=\frac2{x^3}$ である。thm-emf-em2 を $a=1$、$b=n$ で使うと
$$ H_n=\log n+\frac{1+\frac1n}2+\frac{-\frac1{n^2}+1}{12}-K_n,\qquad K_n:=\int_1^n\frac{2P_2(x)}{x^3}\,dx $$
である。整理すると
$$ H_n-\log n-\frac1{2n}+\frac1{12n^2}=\frac12+\frac1{12}-K_n=\frac7{12}-K_n $$
である。thm-emf-em2 を使えるのは $a< b$、つまり $n\ge2$ のときだが、$n=1$ でも $K_1=\int_1^1\frac{2P_2(x)}{x^3}\,dx=0$ なので、この式は $1-\log1-\frac12+\frac1{12}=\frac7{12}-0$ として直接成り立つ。
段 2($K_n$ の極限)。$n\to\infty$ で左辺は $\gamma$ に近づく($\frac1{2n}\to0$、$\frac1{12n^2}\to0$)。よって $K_n$ は $\frac7{12}-\gamma$ に収束する。この極限を $K$ とすると、段 1 の式から
$$ H_n-\log n-\gamma-\frac1{2n}+\frac1{12n^2}=K-K_n=\lim_{m\to\infty}\bigl(K_m-K_n\bigr)=\lim_{m\to\infty}\int_n^m\frac{2P_2(x)}{x^3}\,dx $$
である。
段 3(余りの積分を押さえる)。$m>n$ とする。$x\ge1$ で $\frac2{x^3}>0$ であり、$P_2(x)\ge-\frac1{24}$ なので、積分の単調性から
$$ \int_n^m\frac{2P_2(x)}{x^3}\,dx\ge-\frac1{24}\int_n^m\frac2{x^3}\,dx=-\frac1{24}\left(\frac1{n^2}-\frac1{m^2}\right)\ge-\frac1{24n^2} $$
である($\int_n^m\frac2{x^3}\,dx=\left[-\frac1{x^2}\right]_n^m=\frac1{n^2}-\frac1{m^2}$)。$m\to\infty$ としても不等式は保たれるので、段 2 の式の値は $-\frac1{24n^2}$ 以上である。
段 4(まとめ)。段 2・段 3 から
$$ H_n-\log n-\gamma-\frac1{2n}\ge-\frac1{12n^2}-\frac1{24n^2}=-\frac{2+1}{24n^2}=-\frac1{8n^2} $$
である。右の不等式 $H_n-\log n-\gamma-\frac1{2n}\le0$ は prop-emf-gamma-half である。$\square$

調和数の評価を数値で確かめる

$E_n:=H_n-\log n-\gamma-\frac1{2n}$ とおく。prop-emf-harmonic は $-\frac1{8n^2}\le E_n\le0$ を主張する。数値は

$n$$1$$2$$10$$100$
$E_n$$-0.077216$$-0.020363$$-0.000833$$-0.0000083$
$-\frac1{8n^2}$$-0.125$$-0.03125$$-0.00125$$-0.0000125$
$-\frac1{12n^2}$$-0.083333$$-0.020833$$-0.000833$$-0.0000083$

で、たしかに $-\frac1{8n^2}$ と $0$ の間にある。実際の値は $-\frac1{12n^2}$ にとても近い。
逆に、$\gamma$ を $H_n$ から求めることもできる。$n=10$ で $\gamma\approx H_{10}-\log10-\frac1{20}+\frac1{1200}=0.5772165$ で、真の値 $0.5772157$ との差は $0.0000008$ しかない。10 個の分数の和だけで、誤差が $10^{-6}$ より小さい近似値が得られる。

一般の Euler–Maclaurin の公式(紹介)

部分積分をさらに続けると、$f$ の高い階数の導関数の項が順に現れる。結果だけを紹介する(この記事では証明しない。GKP94 第 9.5 節。そこでの形は、和の範囲のとり方などの見かけが少し違うが、同じ内容を表す)。

Euler–Maclaurin の公式の一般形

$a< b$ を整数、$m$ を正の整数とし、$f$ は $[a,b]$ で $2m$ 回微分できて $f^{(2m)}$ が連続とする。このとき
$$ \sum_{k=a}^bf(k)=\int_a^bf(x)\,dx+\frac{f(a)+f(b)}2+\sum_{j=1}^m\frac{B_{2j}}{(2j)!}\Bigl(f^{(2j-1)}(b)-f^{(2j-1)}(a)\Bigr)+R_m $$
が成り立つ。ここで $B_2=\frac16$、$B_4=-\frac1{30}$、$B_6=\frac1{42}$、$\dots$ は Bernoulli 数であり、余り $R_m$ は $f^{(2m)}$ と周期 $1$ の関数の積の積分で書ける。

一般形についての注意
  • $m=1$ では $\frac{B_2}{2!}=\frac1{12}$ で、thm-emf-em2 の $\frac{f'(b)-f'(a)}{12}$ の項と一致する(余りは $R_1=-\int_a^bP_2f''\,dx$)。
  • $f$ が $d$ 次の多項式なら、$2m\ge d+1$ のとき $f^{(2m)}=0$ で余りが $0$ になり、和が有限個の項で正確に表せる。冪の指数を $p$ として、$\sum k^p$ の公式(Faulhaber の公式)はこうして得られる($f(x)=x^p$ では $d=p$ なので、$2m\ge p+1$ となる $m$ をとればよい)。Bernoulli 数とべき和の公式については、高校数学の記事 数列の和と差分 を参照。
  • $f(x)=\frac1x$ に使うと、$H_n=\log n+\gamma+\frac1{2n}-\frac1{12n^2}+\frac1{120n^4}-\cdots$ が得られる。ただし、右辺の項を限りなく続けた級数は収束しない。途中で打ち切った式が、$n$ が大きいときによい近似になる(漸近展開)。
階乗の対数と Stirling の公式

$f(x)=\log x$、$a=1$、$b=n$ として thm-emf-em1 を使う。$\sum_{k=1}^n\log k=\log n!$、$\int_1^n\log x\,dx=n\log n-n+1$(部分積分)、$\frac{f(1)+f(n)}2=\frac{\log n}2$、$f'(x)=\frac1x$ なので
$$ \log n!=\left(n+\frac12\right)\log n-n+1+\int_1^n\frac{P_1(x)}x\,dx $$
である。最後の積分は $n\to\infty$ で収束する(thm-emf-em2 と同じ部分積分で示せるが、ここでは証明しない)。その極限を使って $1+\int_1^\infty\frac{P_1(x)}x\,dx=\log\sqrt{2\pi}$ となることが、Wallis の公式から分かる(高校数学の記事 階乗の大きさの見積もり で証明している。ここでは引用する)。したがって
$$ \log n!-\left(\left(n+\frac12\right)\log n-n+\log\sqrt{2\pi}\right)\to0 $$
であり、これは Stirling の公式 $n!\sim\sqrt{2\pi n}\left(\frac ne\right)^n$ の対数をとったものである(Stirlingの公式)。数値で確かめると

$n$$5$$10$$100$
$\log n!$$4.78749$$15.10441$$363.73938$
$\left(n+\frac12\right)\log n-n+\log\sqrt{2\pi}$$4.77085$$15.09608$$363.73854$
差$0.01664$$0.00833$$0.00083$

で、差はほぼ $\frac1{12n}$ である($n=10$ で $\frac1{120}=0.00833$)。これは一般形 thm-emf-em-general の $j=1$ の項 $\frac1{12}\left(\frac1n-1\right)$ のうち、$n$ によって変わる部分 $\frac1{12n}$ から来ている(定数 $-\frac1{12}$ は $\log\sqrt{2\pi}$ の中に入る)。

さらに先へ

  • 大学向けの記事 Euler–Maclaurinの公式 では、一般形の証明と余りの評価を、Bernoulli 多項式を使って扱う。
  • 部分積分をくり返して、近似の誤差(剰余項)を積分で書く考え方は、Taylor の定理の積分形の剰余項(高校数学の記事 関数の近似とテイラー展開)と同じである。
  • Euler–Maclaurin の公式は、数値積分(台形公式の誤差の評価)や、$\zeta(s)$ の値の計算にも使われる(Riemannゼータ関数)。
  • $\log n!$ の見積もりは、Wallis 積分から出発する別の道すじでも得られる。高校数学の記事 Wallis積分からStirlingの公式へ がその入口である。

関連項目

参考文献

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