中間値の定理

同義語:intermediate value theorem

概要

中間値の定理(intermediate value theorem)とは、閉区間 $[a,b]$ 上の連続な実数値関数 $f$ は $f(a)$ と $f(b)$ の間のすべての値をとる、すなわちその間の各実数 $k$ に対して $f(c)=k$ となる $c\in[a,b]$ が存在するという定理である。たとえば $f(x)=x^3-x-1$ は $f(1)<0<f(2)$ なので $1$ と $2$ の間に根をもつ。証明には実数の上限の存在が本質的に使われ、有理数だけで考えると $x^2-2$ の例のように成り立たない。連続性や、定義域が区間であることを外しても破れる。二分法による根の近似、正の数の冪根の存在、奇数次の実係数多項式が実根をもつことなどを導く。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 実数, 上限と下限, 連続写像, 区間

動機と具体例

$f(x)=x^3-x-1$ という式を考える。$x=1$ では $f(1)=-1<0$、$x=2$ では $f(2)=5>0$ である。グラフを $x=1$ から $x=2$ まで紙から鉛筆を離さずに描くと、負の側から正の側へ移る途中でどこかで横軸を横切るはずであり、$1$ と $2$ の間に $f(c)=0$ となる $c$ がある。区間を半分ずつに絞ると、$f(1.3)=-0.103<0$、$f(1.4)=0.344>0$ なので $c$ は $1.3$ と $1.4$ の間にあり、さらに続けると $c=1.3247\ldots$ が得られる。
身近な形では次のような話になる。ある人が朝 6 時に山のふもとを出て、同じ道を登って夕方 6 時に山頂に着き、山頂で一泊して翌朝 6 時に同じ道を下り始め、夕方 6 時にふもとに着いたとする。このとき、2 日間のどちらでも同じ時刻に同じ地点にいた瞬間が必ずある。登る人と下る人を同じ日に同時に歩かせたと想像すれば、2 人はどこかですれ違うからである(ex-ivt-mountain)。
こうした「途中の値を必ず通る」という主張を正確にしたものが中間値の定理(intermediate value theorem)である。当たり前に見えるが、数の範囲を有理数に限ると成り立たない(ex-ivt-rationals)。証明には実数の上限の存在(実数の連続性)が本質的に使われる。
以下、$\mathbb{R}$ の部分集合 $I$ 上の実数値関数の連続性を次の意味で使う。

実数値関数の連続性

$I\subset\mathbb{R}$ とし、$f\colon I\to\mathbb{R}$ を関数とする。点 $c\in I$ で $f$ が連続であるとは、任意の $\varepsilon>0$ に対してある $\delta>0$ が存在し、$x\in I$ かつ $|x-c|<\delta$ ならば $|f(x)-f(c)|<\varepsilon$ となることをいう。$I$ のすべての点で連続なとき、$f$ は $I$ 上で連続であるという。

これは $I$ に $\mathbb{R}$ からの相対位相を入れたときの連続写像と同じ意味である(連続写像 の記事の定理「距離空間でのε-δ判定」)。多項式、$\sin x$、$e^x$ などは $\mathbb{R}$ 上で連続であり、連続関数の和・差・積も連続である。

符号が変わる場合

中間値の定理(thm-ivt)の主張は「閉区間 $[a,b]$ 上の連続関数は、$f(a)$ と $f(b)$ の間のすべての値をとる」というものである。その核心は、値が $0$ をまたぐ特別な場合(lem-ivt-sign-change)であり、一般の場合はそこへ帰着できる。この節では特別な場合を 3 通りの方法で証明する。まず、証明で何度も使う性質を確かめる。

符号の保存

$f\colon I\to\mathbb{R}$ が点 $c\in I$ で連続で $f(c)>0$ ならば、ある $\delta>0$ が存在して、$x\in I$、$|x-c|<\delta$ を満たすすべての $x$ で $f(x)>0$ である。$f(c)<0$ の場合も同様に、$c$ の近くの $I$ の点で $f(x)<0$ となる。

$\varepsilon$ を $f(c)$ にとる

$f(c)>0$ のとき、def-ivt-continuity で $\varepsilon=f(c)$ とおくと、$x\in I$、$|x-c|<\delta$ ならば $|f(x)-f(c)|< f(c)$、特に $f(x)>f(c)-f(c)=0$ となる $\delta>0$ がとれる。$f(c)<0$ のときは $\varepsilon=-f(c)$ とおけば同様に $f(x)<0$ を得る。

符号が変わる区間の零点

$a< b$ とし、$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ を連続関数とする。$f(a)<0< f(b)$ ならば、$f(c)=0$ となる $c\in(a,b)$ が存在する。

負の値をとる点の上限

$S:=\{x\in[a,b]\mid f(x)<0\}$ とおく。$a\in S$ なので $S$ は空でなく、$b$ は $S$ の上界である。実数の上限性質により $c:=\sup S$ が存在し、$a\leq c\leq b$ である。$f(c)=0$ を示す。
$f(c)<0$ と仮定する。$f(b)>0$ なので $c\ne b$、すなわち $c< b$ である。lem-ivt-sign-persistence により、ある $\delta>0$ について、$x\in[a,b]$、$|x-c|<\delta$ なら $f(x)<0$ となる。$x:=\min\{c+\delta/2,\,b\}$ とおくと $c< x\leq b$、$|x-c|<\delta$ なので $f(x)<0$、すなわち $x\in S$ である。これは $x>c$ と $c$ が $S$ の上界であることに反する。
$f(c)>0$ と仮定する。$f(a)<0$ なので $c\ne a$ である。lem-ivt-sign-persistence により、ある $\delta>0$ について、$x\in[a,b]$、$|x-c|<\delta$ なら $f(x)>0$ となる。$c-\delta$ は $S$ の上界ではない($c$ が最小の上界だから)ので、$c-\delta< s$ となる $s\in S$ がある。$s\leq c$ でもあるので $|s-c|<\delta$ となり $f(s)>0$ であるが、$s\in S$ より $f(s)<0$ であって矛盾する。
以上より $f(c)=0$ である。$f(a)<0$、$f(b)>0$ なので $c\ne a$、$c\ne b$ であり、$c\in(a,b)$ である。

この証明は、零点のうち最も右にあるものではなく、「$f$ が負になる点の上限」をとっている。$f$ が $(a,b)$ で何度も符号を変える場合でも、上限という 1 つの数が零点を与える。

二分法による証明

区間を半分ずつ縮める

数列 $(a_n)$、$(b_n)$ を帰納的に定める。$a_0:=a$、$b_0:=b$ とし、$a_n,b_n$ が定まったとき $m_n:=(a_n+b_n)/2$ とおいて、$f(m_n)\geq0$ なら $a_{n+1}:=a_n$、$b_{n+1}:=m_n$、$f(m_n)<0$ なら $a_{n+1}:=m_n$、$b_{n+1}:=b_n$ とする。帰納法により、すべての $n$ で
$$ a\leq a_n\leq a_{n+1}< b_{n+1}\leq b_n\leq b,\qquad b_n-a_n=\frac{b-a}{2^n},\qquad f(a_n)<0\leq f(b_n) $$
が成り立つ。$(a_n)$ は上に有界な単調増加列、$(b_n)$ は下に有界な単調減少列なので、上限と下限 の記事の定理「単調有界数列の収束」によりそれぞれ極限 $c$、$d$ をもち、$a\leq c\leq d\leq b$ である。$2^n\geq n$ と実数の Archimedes 性により $(b-a)/2^n\to0$ なので、$d-c=\lim(b_n-a_n)=0$、すなわち $c=d$ である。
$f$ は $c$ で連続なので $f(a_n)\to f(c)$、$f(b_n)\to f(c)$ である(任意の $\varepsilon>0$ に対し def-ivt-continuity の $\delta$ をとると、十分大きい $n$ で $|a_n-c|<\delta$ となり、$|f(a_n)-f(c)|<\varepsilon$ となる)。不等式は極限で保たれるので、$f(a_n)<0$ から $f(c)\leq0$、$f(b_n)\geq0$ から $f(c)\geq0$ を得る。よって $f(c)=0$ であり、$f(a)<0< f(b)$ より $c\in(a,b)$ である。

この証明は、零点の近似値を実際に計算する手順(二分法)を兼ねている。$n$ 回の操作で、零点を含む長さ $(b-a)/2^n$ の区間が得られる(ex-ivt-bisection-table)。この形の証明と計算例は Leb §3.3.2 の Lemma 3.3.7 と Example 3.3.9(pp. 132–134)にある。

連結性による証明

区間の連続像は区間

連結空間 の記事の定理「実数直線の連結部分集合」により、$\mathbb{R}$ の部分集合が連結であることと、$s,t\in A$、$s< u< t$ から $u\in A$ が従う(区間である)ことは同値である。特に $[a,b]$ は連結である。同じ記事の定理「連続像は連結」により $f([a,b])$ は連結、したがって区間である。$f(a)<0< f(b)$ で $f(a),f(b)\in f([a,b])$ なので $0\in f([a,b])$、すなわち $f(c)=0$ となる $c\in[a,b]$ がある。$c\ne a,b$ は前の証明と同じである。

この証明は短いが、「区間は連結」という事実の証明に上限性質が使われている(同じ記事の証明「上限による証明」)ので、実数の連続性を使わずに済んでいるわけではない。

定理

中間値の定理

$a< b$ を実数とし、$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ を閉区間 $[a,b]$ 上の連続関数とする。実数 $k$ が $f(a)$ と $f(b)$ の間にある(すなわち $\min\{f(a),f(b)\}\leq k\leq\max\{f(a),f(b)\}$ を満たす)ならば、$f(c)=k$ となる $c\in[a,b]$ が存在する。さらに $k$ が $f(a)$ と $f(b)$ の真に間にある($k\ne f(a)$ かつ $k\ne f(b)$)ならば、$c$ は開区間 $(a,b)$ からとれる。

符号が変わる場合への帰着

$k=f(a)$ なら $c=a$、$k=f(b)$ なら $c=b$ とすればよい。以下 $k$ は $f(a)$ と $f(b)$ の真に間にあるとする。$f(a)< k< f(b)$ のときは $g(x):=f(x)-k$、$f(a)>k>f(b)$ のときは $g(x):=k-f(x)$ とおく。$g$ は $[a,b]$ 上で連続で $g(a)<0< g(b)$ を満たすので、lem-ivt-sign-change により $g(c)=0$ となる $c\in(a,b)$ がある。どちらの場合も $f(c)=k$ である。

仮定は「閉区間の上で連続」の 1 つだけであり、結論は「$c$ が少なくとも 1 つ存在する」である。$c$ がただ 1 つとは限らないし、$c$ の値を式で表すことも主張していない。$k$ が $f(a)$ と $f(b)$ の範囲の外にある場合については何も主張しない(その場合も $f$ が値 $k$ をとることはありうる)。関数の連続性、定義域が区間であること、実数の範囲で考えていることのどれを外しても結論が破れることは、次節の反例で確かめる。

例と反例

二分法による根の近似

$f(x)=x^3-x-1$ は $f(1)=-1<0$、$f(2)=5>0$ である。prf-ivt-sign-change-bisection の手順で中点での符号を調べると、零点を含む区間は
$$ [1,2]\to[1,1.5]\to[1.25,1.5]\to[1.25,1.375]\to[1.3125,1.375]\to[1.3125,1.34375]\to[1.3125,1.328125]\to[1.3203125,1.328125] $$
と縮む($f(1.5)=0.875$、$f(1.25)=-0.296875$、$f(1.375)=0.2246\ldots$、$f(1.3125)=-0.0515\ldots$、$f(1.34375)=0.0826\ldots$、$f(1.328125)=0.0145\ldots$、$f(1.3203125)=-0.0187\ldots$)。7 回の操作で区間の長さは $1/2^7=1/128$ になり、零点 $c=1.3247\ldots$ は $1.3203125$ と $1.328125$ の間にあることが保証される。$f'(x)=3x^2-1>0$($x\geq1$)なので、平均値の定理により $f$ は $[1,2]$ で狭義単調増加であり、この区間の零点はこの 1 つだけである。

山道の問題

冒頭の登山の話を定式化する。朝 6 時からの経過時間を $t\in[0,T]$($T=12$ 時間)とし、ふもとから山頂までの道の長さを $L>0$ とする。1 日目の時刻 $t$ にふもとから道に沿って測った位置を $u(t)$、2 日目の同じ時刻の位置を $d(t)$ とすると、$u$ と $d$ は連続で、$u(0)=0$、$u(T)=L$、$d(0)=L$、$d(T)=0$ である(途中で休んだり引き返したりしてもよい)。$h(t):=u(t)-d(t)$ は連続で $h(0)=-L<0< L=h(T)$ なので、lem-ivt-sign-change により $h(c)=0$、すなわち $u(c)=d(c)$ となる時刻 $c$ がある。この時刻に、2 日間とも同じ地点にいる。

赤道上の正反対の 2 点

赤道上の各点の気温が位置について連続に変わると仮定する。経度を角度 $\theta$ で表し、点 $\theta$ の気温を $T(\theta)$($T(\theta+2\pi)=T(\theta)$)とする。$g(\theta):=T(\theta)-T(\theta+\pi)$ は $[0,\pi]$ 上で連続で、$g(\pi)=T(\pi)-T(2\pi)=T(\pi)-T(0)=-g(0)$ である。$g(0)=0$ なら $\theta=0$ がそのような点であり、そうでなければ $g(0)$ と $g(\pi)$ は符号が逆なので thm-ivt により $g(c)=0$ となる $c\in(0,\pi)$ がある。したがって、赤道上には気温の等しい正反対の 2 点が必ずある。

反例:連続でない関数

$[-1,1]$ 上で $f(x)=-1$($x<0$)、$f(x)=1$($x\geq0$)と定めると、$f(-1)=-1<0<1=f(1)$ だが $f(c)=0$ となる $c$ はない。この $f$ は閉区間上で定義されているが、$x=0$ で連続であるという性質を満たさない。したがって「閉区間上の関数ならば、端点の値の間の値をとる」という含意は、連続性の仮定を外すと成り立たない。

反例:定義域が区間でない場合

$D=[0,1]\cup[2,3]$ 上で $f(x)=x$ とすると、$f$ は $D$ 上で連続で $f(0)=0$、$f(3)=3$ だが、値 $3/2$ をとる点は $D$ にない。$D$ は区間であるという性質を満たさない($0,3\in D$ だが $3/2\notin D$)。連続性だけでは足りず、定義域がつながっていることが必要である。これは prf-ivt-sign-change-connected で使った連結性が破れている例でもある。

反例:有理数だけで考えた場合

$\mathbb{Q}_{[0,2]}:=\{x\in\mathbb{Q}\mid0\leq x\leq2\}$ 上で $f(x)=x^2-2$ を考える。$f$ は def-ivt-continuity と同じ ε-δ の意味で連続であり、$f(0)=-2<0<2=f(2)$ である。しかし $x^2=2$ を満たす有理数は存在しない(無理数 の記事の系「平方数でない整数の平方根」)ので、$f(c)=0$ となる $c\in\mathbb{Q}_{[0,2]}$ はない。$\mathbb{Q}$ は上限性質を満たさない(実数 の記事の例「有理数の切れ目」)。prf-ivt-sign-change-sup で $S=\{x\in\mathbb{Q}_{[0,2]}\mid x^2<2\}$ の上限をとる操作が、$\mathbb{Q}$ の中ではできないことに対応している。中間値の定理は、実数の連続性を使って初めて成り立つ定理である。

反例:途中の値をすべてとるが連続でない関数

中間値の定理の逆は成り立たない。$[-1,1]$ 上で $f(x)=\sin(1/x)$($x\ne0$)、$f(0)=0$ と定める。$f$ は、$[-1,1]$ に含まれる任意の閉区間 $[p,q]$($p< q$)上で $f(p)$ と $f(q)$ の間のすべての値をとる。実際、$0\notin[p,q]$ なら $f$ は $[p,q]$ 上で連続なので thm-ivt による。$0\in[p,q]$ なら、$p<0$ または $0< q$ のどちらかが成り立つ。たとえば $0< q$ のとき、$1/x$ は $(0,q]$ 上で $[1/q,\infty)$ のすべての値をとるので、長さ $2\pi$ の区間 $[1/q,1/q+2\pi]$ の分だけ見ても $\sin(1/x)$ は $[-1,1]$ のすべての値をとる。$f$ の値はすべて $[-1,1]$ に入るので、$f(p)$ と $f(q)$ の間の値もすべてとられる($p<0$ のときも同様)。一方、$x_m=1/(2m\pi+\pi/2)$ とおくと $x_m\to0$ だが $f(x_m)=1\not\to0=f(0)$ なので、$f$ は $0$ で連続でない。したがって「途中の値をすべてとる $\Rightarrow$ 連続」という含意は破れる(Leb Example 3.3.12 と Exercise 3.3.4、pp. 135–136)。

帰結

閉区間の像

閉区間の連続像

$a< b$、$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ を連続関数とする。$f$ の最小値を $m$、最大値を $M$ とすると、$f([a,b])=[m,M]$ である。

最大値・最小値と中間値の定理

$[a,b]$ はコンパクト空間であり(コンパクト空間 の記事の定理「有界閉集合とコンパクト性の一致」)、同じ記事の定理「最大値・最小値の存在」により $f(x_{\min})=m$、$f(x_{\max})=M$ となる $x_{\min},x_{\max}\in[a,b]$ がある。$f([a,b])\subset[m,M]$ は最小値・最大値の定義から明らかである。逆に $k\in[m,M]$ とする。$x_{\min}=x_{\max}$ なら $m=M=k$ でよい。そうでなければ、$x_{\min}$ と $x_{\max}$ を端点とする閉区間に $f$ を制限して thm-ivt を使うと、$f(c)=k$ となる $c$ がその区間、したがって $[a,b]$ にある。

方程式の解の存在

正の数の冪根の存在

$n\geq1$ を整数、$y\geq0$ を実数とすると、$x^n=y$ を満たす実数 $x\geq0$ がただ 1 つ存在する。

両端で値を比べる

$f(x)=x^n$ は $[0,1+y]$ 上で連続である。$f(0)=0\leq y$ であり、$1+y\geq1$ より $f(1+y)=(1+y)^n\geq1+y>y$ である。thm-ivt により $f(x)=y$ となる $x\in[0,1+y]$ がある。一意性:$0\leq x_1< x_2$ なら
$$ x_2^n-x_1^n=(x_2-x_1)(x_2^{n-1}+x_2^{n-2}x_1+\cdots+x_1^{n-1}) $$
で、右辺の第 2 因子は $x_2^{n-1}>0$ 以上なので $x_1^n< x_2^n$ である。したがって $x^n=y$ を満たす $x\geq0$ は 2 つない。

特に $\sqrt2$、$\sqrt[3]{5}$ などの存在は中間値の定理から従う。存在については Leb Example 3.3.11(p. 135)にも、場合分けによる同様の証明がある。

奇数次の多項式の実根

$n$ を奇数とし、$p(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_0$($a_i\in\mathbb{R}$、$a_n\ne0$)とすると、$p(c)=0$ となる実数 $c$ が存在する。

最高次の項が支配する

$a_n$ で割って $a_n=1$ としてよい。$R:=1+|a_{n-1}|+\cdots+|a_0|$ とおく。$|x|\geq R$ ならば $|x|\geq1$ なので
$$ |a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_0|\leq(|a_{n-1}|+\cdots+|a_0|)\,|x|^{n-1}< R\,|x|^{n-1}\leq|x|^n $$
である。したがって $p(x)=x^n+(a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_0)$ の符号は $x^n$ の符号と一致し、$n$ が奇数なので $p(R)>0$、$p(-R)<0$ である。$p$ は $[-R,R]$ 上で連続なので、lem-ivt-sign-change により $p(c)=0$ となる $c\in(-R,R)$ がある。

偶数次ではこの結論は破れる($x^2+1$ は実根をもたない)。偶数次では $p(R)$ と $p(-R)$ がどちらも正になり、符号の変化が起こらないからである。この命題は 代数学の基本定理 の証明の一部(同記事の補題「実数と複素数についての 2 つの事実」)や、実閉体 の特徴づけに使われる。Leb Proposition 3.3.10(p. 134)も同じ主張を示している。

単射と単調性

区間上の連続単射は狭義単調

$I\subset\mathbb{R}$ を区間とし、$f\colon I\to\mathbb{R}$ を連続な単射とする。このとき $f$ は狭義単調増加か狭義単調減少のどちらかである。

2 点を同時に動かす

$f$ が狭義単調増加でも狭義単調減少でもないとする。$f$ は単射なので $x< y$ なら $f(x)\ne f(y)$ であり、ある $x_1< y_1$ で $f(x_1)< f(y_1)$、ある $x_2< y_2$ で $f(x_2)>f(y_2)$ となる(どちらかがなければ $f$ は狭義単調である)。$t\in[0,1]$ に対し
$$ x(t):=(1-t)x_1+tx_2,\qquad y(t):=(1-t)y_1+ty_2 $$
とおくと、$I$ が区間なので $x(t),y(t)\in I$ であり、$y(t)-x(t)=(1-t)(y_1-x_1)+t(y_2-x_2)>0$ である。$g(t):=f(y(t))-f(x(t))$ は $[0,1]$ 上で連続で、$g(0)>0>g(1)$ なので、thm-ivt により $g(c)=0$ となる $c\in(0,1)$ がある。すると $x(c)< y(c)$ かつ $f(x(c))=f(y(c))$ となり、$f$ が単射であることに反する。

不動点

$[a,b]$ から $[a,b]$ への連続写像は不動点 $f(c)=c$ をもつ。これは $g(x)=f(x)-x$ に中間値の定理を使えば示せる(Brouwerの不動点定理 の記事の命題「閉区間の場合」とその証明)。Brouwerの不動点定理 はこれを円板や高次元の球体に一般化したものである。

補足

連結な空間への一般化

prf-ivt-sign-change-connected が示すとおり、中間値の定理の位相的な中身は「連結な空間の連続像は連結」と「$\mathbb{R}$ の連結部分集合は区間」の 2 つである。したがって、$X$ が連結空間、$f\colon X\to\mathbb{R}$ が連続写像で、$f(x_1)< k< f(x_2)$ となる $x_1,x_2\in X$ があれば、$f(c)=k$ となる $c\in X$ がある。たとえば弧状連結空間である平面の円板や球面の上の連続関数についても、2 点での値の間の値は必ずとられる。

導関数の中間値の性質

区間上で微分可能な関数の導関数 $f'$ は連続とは限らないが、それでも途中の値をすべてとる。すなわち $f$ が $[a,b]$ 上で微分可能で $f'(a)< y< f'(b)$ ならば、$f'(c)=y$ となる $c\in(a,b)$ がある(Darboux の定理。Leb Theorem 4.2.11、p. 167)。証明は $g(x)=yx-f(x)$ の最大値をとる点を考えるもので、平均値の定理の証明と同じ種類の議論である。ex-ivt-converse と同様、途中の値をすべてとることは連続性より弱い性質である。

名前

Leb は同じ定理を Bolzano の中間値の定理(Theorem 3.3.8、p. 133)と呼び、単に中間値の定理、あるいは Bolzano の定理と呼ぶこともあると述べている。同書は lem-ivt-sign-change を先に二分法で示し(Lemma 3.3.7)、定理をそこへ帰着させており、本記事の prf-ivt-sign-change-bisection と prf-ivt はこの順序に従っている。

関連項目

参考文献

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