Weierstrassの近似定理(Weierstrass approximation theorem)とは、閉区間 $[a,b]$ 上の任意の連続関数 $f$ と任意の $\varepsilon>0$ に対し、$\sup_{a\le x\le b}|f(x)-p(x)|<\varepsilon$ となる多項式 $p$ がある、という定理である。$f$ が実数値なら $p$ は実数係数にとれ、$[0,1]$ 上では Bernstein 多項式 $\sum_k f(k/n)\binom nk x^k(1-x)^{n-k}$ が $f$ に一様収束する。ここから、連続関数が積率 $\int_a^b f(x)x^k\,dx$ の全体で決まることなどが従う。区間が有界な閉区間でない場合や、複素平面の円板上の $z$ の多項式では成り立たず、一般化は Stone–Weierstrass の定理である。
閉区間上の連続関数は、どんなに角が多く、どんなに激しく振動していても、多項式でいくらでも精密に近似できる。しかも近似の誤差は、区間の全体にわたって一斉に小さくできる。これが Weierstrass の近似定理 である。多項式は足し算と掛け算だけで値が計算でき、何回でも微分・積分できる最も扱いやすい関数なので、この定理は「連続関数について成り立つことを、多項式で確かめてから極限をとる」という論法の土台になる。
この記事では、定理を確率論に由来する Bernstein 多項式で証明し(thm-wa-bernstein)、山形の多項式との畳み込みによる 2 つ目の証明も与える。続いて、積率(モーメント)による連続関数の決定(cor-wa-moments)と、関数と導関数を同時に近似する形(cor-wa-c1)を導き、区間が閉じていない場合・有界でない場合・複素平面の円板の場合に定理が成り立たないことを反例で確かめる。
閉区間 $[a,b]$($a< b$)上の関数 $g$ について、$\|g\|:=\sup_{a\le x\le b}|g(x)|$ を一様ノルムという。関数列 $(p_n)$ が $f$ に $[a,b]$ 上で 一様収束 することは、$\|p_n-f\|\to0$ と同じである(一様収束 の記事の命題「差の上限による言い換え」)。
$f\colon[a,b]\to\mathbb{C}$ を連続関数とする。このとき多項式の列 $(p_n)$ で、$[a,b]$ 上で $f$ に一様収束するものがある。すなわち、任意の $\varepsilon>0$ に対し
$$
\sup_{a\le x\le b}|f(x)-p(x)|<\varepsilon
$$
となる多項式 $p$ がある。$f$ が実数値なら、$p$ は実数係数にとれる。
証明は次の節で行う。まず $[0,1]$ 上で Bernstein 多項式が一様収束することを示し(thm-wa-bernstein)、1 次式の変数変換で一般の $[a,b]$ に移す(prf-wa-main)。複素数値の $f$ も、Bernstein 多項式の係数を複素数にするだけで同じ証明が通る。
言い換えると、$[a,b]$ 上の連続関数全体 $C([a,b])$ に一様ノルムの距離を入れた空間で、多項式全体は 稠密 である(稠密 の記事の例「多項式による近似」)。閉区間上の多項式による一様近似というこの形は、Weierstrass が最初に見出した形である(Rud76 Theorem 7.26 の直後の注意、p. 159)。ここで近似する多項式の次数は $\varepsilon$ に応じて大きくなってよい。次数を固定すると、近似できる関数は限られる(ex-wa-counterexamples の 5 行目)。
Bernstein 多項式による証明は、次の確率の話を式にしたものである。表の出る確率が $x$ の硬貨を $n$ 回投げ、表の出た回数がちょうど $k$ になる確率は $\binom nkx^k(1-x)^{n-k}$ であり、大数の法則により、$n$ が大きいと表の割合 $k/n$ はほぼ確実に $x$ の近くにある。そこで、割合 $k/n$ での値 $f(k/n)$ をこの確率で重みづけて平均すると、$f$ が連続なら平均値は $f(x)$ に近い。この平均値は $x$ の多項式である。証明では大数の法則の代わりに、割合 $k/n$ の $x$ からのずれの 2 乗平均が $x(1-x)/n$ であるという計算(lem-wa-moments)を使う。
関数 $f\colon[0,1]\to\mathbb{C}$ と正の整数 $n$ に対し、
$$
b_{n,k}(x):=\binom nkx^k(1-x)^{n-k}\quad(k=0,1,\dots,n),\qquad (B_nf)(x):=\sum_{k=0}^nf\!\left(\frac kn\right)b_{n,k}(x)
$$
とおく。$B_nf$ を $f$ の $n$ 次の Bernstein 多項式 という。$B_nf$ は次数 $n$ 以下の多項式で、$f$ が実数値なら係数は実数である。
$0\le x\le1$ では $b_{n,k}(x)\ge0$ である。
すべての $x\in\mathbb{R}$ について次が成り立つ。
$$
\sum_{k=0}^nb_{n,k}(x)=1,\qquad \sum_{k=0}^nk\,b_{n,k}(x)=nx,\qquad \sum_{k=0}^n(k-nx)^2\,b_{n,k}(x)=nx(1-x).
$$
1 つ目は 二項定理 により $\sum_k\binom nkx^k(1-x)^{n-k}=(x+(1-x))^n=1$ である。2 つ目は、$k\ge1$ で $k\binom nk=n\binom{n-1}{k-1}$ を使うと
$$
\sum_{k=0}^nk\,b_{n,k}(x)=nx\sum_{k=1}^n\binom{n-1}{k-1}x^{k-1}(1-x)^{n-k}=nx\,(x+(1-x))^{n-1}=nx
$$
である。同様に $k\ge2$ で $k(k-1)\binom nk=n(n-1)\binom{n-2}{k-2}$ なので $\sum_kk(k-1)b_{n,k}(x)=n(n-1)x^2$ であり($n=1$ でも両辺 $0$ で成り立つ)、$\sum_kk^2b_{n,k}(x)=n(n-1)x^2+nx$ である。よって
$$
\sum_k(k-nx)^2b_{n,k}=\bigl(n(n-1)x^2+nx\bigr)-2nx\cdot nx+n^2x^2\cdot1=nx-nx^2=nx(1-x)
$$
である。
$f\colon[0,1]\to\mathbb{C}$ が連続なら、$B_nf$ は $[0,1]$ 上で $f$ に一様収束する。
$M:=\sup_{[0,1]}|f|$ とする(連続関数なので有限である)。$\varepsilon>0$ をとる。$f$ は閉区間上で連続なので一様連続であり(一様連続 の記事の定理「Heine–Cantorの定理」)、$|s-t|<\delta$ なら $|f(s)-f(t)|<\varepsilon$ となる $\delta>0$ がある。
$x\in[0,1]$ を固定する。lem-wa-moments の 1 つ目の式から $f(x)=\sum_kf(x)b_{n,k}(x)$ なので
$$
|(B_nf)(x)-f(x)|=\Bigl|\sum_{k=0}^n\Bigl(f\!\left(\tfrac kn\right)-f(x)\Bigr)b_{n,k}(x)\Bigr|\le\sum_{k=0}^n\Bigl|f\!\left(\tfrac kn\right)-f(x)\Bigr|\,b_{n,k}(x)
$$
である($b_{n,k}(x)\ge0$ を使った)。右辺の和を、$|k/n-x|<\delta$ となる $k$ の部分 $\Sigma_1$ と、$|k/n-x|\ge\delta$ となる $k$ の部分 $\Sigma_2$ に分ける。$\Sigma_1$ では各項の $|f(k/n)-f(x)|$ が $\varepsilon$ 未満なので、$\Sigma_1\le\varepsilon\sum_kb_{n,k}(x)=\varepsilon$ である。$\Sigma_2$ では $|f(k/n)-f(x)|\le2M$ であり、$1\le(k/n-x)^2/\delta^2$ なので、lem-wa-moments の 3 つ目の式を $n^2$ で割ったものから
$$
\Sigma_2\le2M\sum_{|k/n-x|\ge\delta}b_{n,k}(x)\le\frac{2M}{\delta^2}\sum_{k=0}^n\Bigl(\frac kn-x\Bigr)^2b_{n,k}(x)=\frac{2M}{\delta^2}\cdot\frac{x(1-x)}n\le\frac{M}{2n\delta^2}
$$
である($x(1-x)\le\frac14$)。よって $n\ge\frac{M}{2\delta^2\varepsilon}$ なら、すべての $x\in[0,1]$ で $|(B_nf)(x)-f(x)|\le2\varepsilon$ である。$\delta$ は $x$ によらないので、これは一様収束である。
$g(t):=f(a+(b-a)t)$($0\le t\le1$)は $[0,1]$ 上の連続関数である。thm-wa-bernstein により $\|B_ng-g\|\to0$($[0,1]$ 上)である。$p_n(x):=(B_ng)\bigl(\frac{x-a}{b-a}\bigr)$ は $x$ の多項式で、$x\mapsto\frac{x-a}{b-a}$ は $[a,b]$ を $[0,1]$ に全単射で移すので
$$
\sup_{a\le x\le b}|p_n(x)-f(x)|=\sup_{0\le t\le1}|(B_ng)(t)-g(t)|\to0
$$
である。$f$ が実数値なら $g$ も実数値で、$B_ng$ の係数は実数であり、1 次式を代入した $p_n$ の係数も実数である。
この証明は Dur19 Example 2.2.4(p. 58)の、大数の弱法則の証明の評価をそのまま使う形を、確率の言葉を使わずに書き直したものである。Bernstein 多項式の収束の速さは、$f$ の滑らかさで測れる。
$f\colon[0,1]\to\mathbb{C}$ が定数 $K$ の Lipschitz連続($|f(s)-f(t)|\le K|s-t|$)なら、すべての $n$ について
$$
\sup_{0\le x\le1}|(B_nf)(x)-f(x)|\le\frac{K}{2\sqrt n}
$$
である。
prf-wa-bernstein の最初の評価と Lipschitz 条件から $|(B_nf)(x)-f(x)|\le K\sum_k|k/n-x|\,b_{n,k}(x)$ である。$\sqrt{b_{n,k}}\cdot|k/n-x|\sqrt{b_{n,k}}$ と見て Cauchy–Schwarzの不等式 を使い、lem-wa-moments を当てると
$$
\sum_k\Bigl|\frac kn-x\Bigr|b_{n,k}(x)\le\Bigl(\sum_kb_{n,k}(x)\Bigr)^{1/2}\Bigl(\sum_k\Bigl(\frac kn-x\Bigr)^2b_{n,k}(x)\Bigr)^{1/2}=\sqrt{\frac{x(1-x)}n}\le\frac1{2\sqrt n}
$$
である。
$f(x)=x^2$ とする。prf-wa-moments の計算から $\sum_kk^2b_{n,k}(x)=n(n-1)x^2+nx$ なので
$$
(B_nf)(x)=\sum_{k=0}^n\frac{k^2}{n^2}b_{n,k}(x)=x^2+\frac{x(1-x)}n
$$
である。誤差 $\frac{x(1-x)}n$ の最大値は $x=\frac12$ での $\frac1{4n}$ で、$n\to\infty$ で $0$ に近づくが、$f$ 自身が多項式なのに $B_nf\ne f$ である。Bernstein 多項式は近似の存在を示すには便利だが、与えられた次数で最もよい近似を与えるわけではない。
$f(x)=|2x-1|$ は $[0,1]$ 上で定数 $2$ の Lipschitz 連続な関数で、$x=\frac12$ で微分できない。prop-wa-lipschitz により $\|B_nf-f\|\le\frac1{\sqrt n}$ であり、たとえば $n=10^4$ 次の Bernstein 多項式で誤差は $0.01$ 以下になる。滑らかでない点をもつ関数でも、多項式で一様に近似できる。言い換えると、何回でも微分できる多項式の一様極限は、微分可能とは限らない。
thm-wa-main は、Bernstein 多項式を使わず、山形の多項式との畳み込みで示すこともできる。
この証明は Rud76 Theorem 7.26(pp. 159–160)と Leb26b Theorem 11.7.1(pp. 179–182)による。要点:$Q_n(t)=c_n(1-t^2)^n$ は $t=0$ のまわりに集中する面積 $1$ の山で、$\int g(x+t)Q_n(t)\,dt$ は $g$ の $x$ の近くでの重みつき平均であり、しかも $x$ の多項式である。
段 1(帰着).prf-wa-main と同じく $[a,b]=[0,1]$ としてよい。さらに $g(x):=f(x)-f(0)-x(f(1)-f(0))$ を考えると $g(0)=g(1)=0$ で、$g$ を多項式で近似できれば $f=g+(\text{1 次式})$ も近似できる。$g$ を $[0,1]$ の外で $0$ と定めると、$g$ は $\mathbb{R}$ 上で連続、$[-1,2]$ 上で一様連続である。$M:=\sup|g|$ とする。
段 2(山).$c_n:=\bigl(\int_{-1}^1(1-t^2)^n\,dt\bigr)^{-1}$、$Q_n(t):=c_n(1-t^2)^n$ とおくと、$Q_n\ge0$($|t|\le1$)、$\int_{-1}^1Q_n=1$ である。$0\le t\le1$ で $1-t\le1-t^2$ なので $c_n^{-1}=2\int_0^1(1-t^2)^n\,dt\ge2\int_0^1(1-t)^n\,dt=\frac2{n+1}$、よって $c_n\le\frac{n+1}2\le n$ である。$0<\delta<1$ と $\delta\le|t|\le1$ について $Q_n(t)\le n(1-\delta^2)^n$ であり、右辺は $n\to\infty$ で $0$ に近づく(比 $\frac{n+1}n(1-\delta^2)$ の極限が $1-\delta^2<1$)。
段 3(多項式であること).$x\in[0,1]$ について $p_n(x):=\int_0^1g(s)Q_n(s-x)\,ds$ とおく。$Q_n(s-x)$ を展開すると $\sum_{j=0}^{2n}a_j(s)x^j$($a_j$ は $s$ の多項式)の形なので、$p_n(x)=\sum_j\bigl(\int_0^1g(s)a_j(s)\,ds\bigr)x^j$ は $x$ の多項式で、$g$ が実数値なら係数は実数である。$t=s-x$ と置き換え、$g$ が $[0,1]$ の外で $0$、$Q_n$ が偶関数であることを使うと $p_n(x)=\int_{-1}^1g(x+t)Q_n(t)\,dt$ である($x\in[0,1]$ では $s-x\in[-1,1]$)。
段 4(評価).$\varepsilon>0$ に対し、$|u-v|<\delta$($u,v\in[-1,2]$)なら $|g(u)-g(v)|<\frac\varepsilon2$ となる $\delta\in(0,1)$ をとる。$\int Q_n=1$ から $p_n(x)-g(x)=\int_{-1}^1(g(x+t)-g(x))Q_n(t)\,dt$ なので、$|t|<\delta$ の部分は $\frac\varepsilon2$ 以下、$\delta\le|t|\le1$ の部分は $2M\cdot2n(1-\delta^2)^n$ 以下である。$4Mn(1-\delta^2)^n<\frac\varepsilon2$ となる $n$ から先、すべての $x\in[0,1]$ で $|p_n(x)-g(x)|<\varepsilon$ である。
2 つの証明は、どちらも「$x$ の近くの値の重みつき平均」をとり、重みを $x$ に集中させていく点で同じ形をしている。Bernstein 多項式では重みが格子点 $k/n$ に乗った二項分布、2 つ目の証明では連続な山 $Q_n$ である。
多項式で一様に近似できることから、連続関数についての主張を多項式についての主張に帰着できる。積分の値と一様収束の関係は 一様収束 の記事の定理「一様収束と積分の交換」による。
$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ を連続関数とし、すべての $k=0,1,2,\dots$ について
$$
\int_a^bf(x)\,x^k\,dx=0
$$
とする。このとき $f$ は恒等的に $0$ である。とくに、$[a,b]$ 上の 2 つの連続関数がすべての積率 $\int_a^bf(x)x^k\,dx$ を共有すれば、2 つの関数は等しい。
仮定から、すべての多項式 $p$ について $\int_a^bf(x)p(x)\,dx=0$ である(積分の線形性)。thm-wa-main により、実数係数の多項式 $p_n$ で $\|p_n-f\|\to0$ となるものがある。$M:=\sup|f|$ とすると
$$
\Bigl|\int_a^bf^2\,dx\Bigr|=\Bigl|\int_a^bf\,(f-p_n)\,dx\Bigr|\le(b-a)M\|f-p_n\|\to0
$$
なので $\int_a^bf(x)^2\,dx=0$ である(積分の絶対値の評価は Riemann積分 の記事の命題「積分の単調性と絶対値の評価」)。ある $x_0$ で $f(x_0)\ne0$ なら、連続性から $x_0$ を含む長さ $\ell>0$ の区間 $J\subset[a,b]$ で $f(x)^2\ge\frac12f(x_0)^2$ となり、$\int_a^bf^2\,dx\ge\frac12f(x_0)^2\ell>0$ となって矛盾する。よって $f\equiv0$ である。後半は差 $f-g$ に当てはめればよい。
$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ が $C^1$ 級(微分可能で $f'$ が連続、端点では片側微分)なら、任意の $\varepsilon>0$ に対して、多項式 $p$ で
$$
\sup_{[a,b]}|f-p|<\varepsilon,\qquad \sup_{[a,b]}|f'-p'|<\varepsilon
$$
を同時に満たすものがある。
$\eta:=\varepsilon/(b-a+1)$ とおく。thm-wa-main を連続関数 $f'$ に使い、$\|f'-q\|<\eta$ となる多項式 $q$ をとる。$p(x):=f(a)+\int_a^xq(t)\,dt$ は多項式で $p'=q$ である。微分積分学の基本定理 により $f(x)=f(a)+\int_a^xf'(t)\,dt$ なので、$x\in[a,b]$ について
$$
|f(x)-p(x)|=\Bigl|\int_a^x\bigl(f'(t)-q(t)\bigr)\,dt\Bigr|\le(b-a)\eta<\varepsilon
$$
であり、$|f'-p'|=|f'-q|<\eta\le\varepsilon$ である。
同じ論法をくり返せば、$C^k$ 級の関数は $k$ 階までの導関数をまとめて多項式で近似できる。
多項式全体が稠密であることから、有理数係数の多項式全体という可算集合も $C([a,b])$ で稠密になり、$C([a,b])$ は 可分空間 である(可分空間 の記事の例「一様収束位相を入れた連続関数の空間」、Leb26b Corollary 11.7.2、p. 182)。
thm-wa-main の仮定は「定義域が有界な閉区間」「$f$ が連続」の 2 つで、近似に使うのは「次数に制限のない」「実変数の」多項式である。どれを変えても結論は崩れる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 区間が有界 | $\mathbb{R}$ 上の $\sin x$ | 一様誤差 $1$ 未満の多項式がある |
| 区間が閉じている | $(0,1)$ 上の $1/x$ | 一様誤差 $1$ 未満の多項式がある |
| $f$ が連続 | $[-1,1]$ 上の符号関数($x<0$ で $-1$、$x\ge0$ で $1$) | 多項式の列の一様極限になる |
| 実数の区間上で考える | 複素平面の閉円板 $\lvert z\rvert\le1$ 上の $\overline z$ と、$z$ の複素係数多項式 | 一様誤差 $1$ 未満の多項式がある |
| 次数に制限がない | 次数 $N$ 以下の多項式だけで $[0,1]$ 上の $e^x$ を近似する | 多項式の列の一様極限になる |
1 行目:多項式 $p$ が $\mathbb{R}$ 上で $|p(x)-\sin x|<1$ を満たすとすると $|p(x)|<2$ なので、$p$ は $\mathbb{R}$ 上で有界であり、定数 $c$ でなければならない(次数が 1 以上の多項式は $|x|\to\infty$ で絶対値が限りなく大きくなる)。$x=\frac\pi2$ で $|c-1|<1$ から $c>0$、$x=-\frac\pi2$ で $|c+1|<1$ から $c<0$ となり矛盾する。
2 行目:多項式 $p$ は $[0,1]$ 上で連続なので有界であり、$|p|\le K$ とする。$|p(x)-1/x|<1$ が $(0,1)$ で成り立てば $1/x< K+1$ となるが、$x\to0$ で $1/x\to\infty$ なので矛盾する。
3 行目:多項式は連続であり、連続関数の一様極限は連続である(一様収束 の記事の定理「連続関数の一様極限の連続性」)。符号関数は $0$ で連続でないので、多項式の列の一様極限にならない。
4 行目:多項式 $p(z)=\sum_ja_jz^j$ について、単位円 $z=e^{it}$ に沿った積分 $I(p):=\int_0^{2\pi}p(e^{it})\,ie^{it}\,dt$ は、$\int_0^{2\pi}e^{i(j+1)t}\,dt=0$($j\ge0$)から $0$ である。一方 $\overline z=e^{-it}$ では $I=\int_0^{2\pi}i\,dt=2\pi i$ である。単位円上で $|p(z)-\overline z|<1$ なら $|I(p)-2\pi i|\le\int_0^{2\pi}|p(e^{it})-e^{-it}|\,dt<2\pi$ となり、$|0-2\pi i|=2\pi$ に矛盾する。円板の境界の円の上でさえ、$\overline z$ との一様誤差は $1$ 未満にできない。$\overline z$ は連続で、実部と虚部を 2 変数の関数と見れば連続関数なので、反例が破っているのは「$z$ の多項式」に限ったことである。
5 行目:次数 $N$ 以下の多項式 $p_n$ が $[0,1]$ 上で $f$ に一様収束したとする。相異なる $N+1$ 個の点 $t_0,\dots,t_N\in[0,1]$ をとると、Lagrange補間 の記事の定理「Lagrange 補間」により $p_n=\sum_{j=0}^Np_n(t_j)L_j$($L_j$ は次数 $N$ の Lagrange の基本多項式)である。右辺は $\sum_jf(t_j)L_j=:p$ に一様収束する($|p_n-p|\le\sum_j|p_n(t_j)-f(t_j)|\,\|L_j\|$)ので、極限の一意性から $f=p$ は次数 $N$ 以下の多項式である。$e^x$ は $(N+1)$ 階導関数が $e^x\ne0$ なので次数 $N$ 以下の多項式でなく、次数 $N$ 以下の多項式の一様極限にならない。
thm-wa-main は次のように一般化される。$X$ をコンパクト距離空間とし、$X$ 上の実数値連続関数からなる集合 $\mathcal{A}$ が、和・積・実数倍で閉じ(実数の多元環)、点を分離し($x\ne y$ なら $g(x)\ne g(y)$ となる $g\in\mathcal{A}$ がある)、どの点でも消えない(各 $x$ に $g(x)\ne0$ となる $g\in\mathcal{A}$ がある)なら、$\mathcal{A}$ は $C(X,\mathbb{R})$ で一様ノルムについて稠密である(Leb26b Theorem 11.7.12、p. 185。この記事では証明しない)。$X=[a,b]$ と多項式全体の場合が thm-wa-main の実数値の場合である。$X$ を $\mathbb{R}^m$ の有界閉集合にとれば、$m$ 変数の多項式で連続関数を一様近似できることが分かる。詳しくは Stone–Weierstrassの定理 の記事で扱う。上の 4 行目の反例は、複素数値の場合には共役で閉じるという追加の条件が要ることを示している。
各 $n$ について、$\|f-p\|$ を最小にする次数 $n$ 以下の多項式(最良近似多項式)がある。次数 $n$ 以下の多項式の全体は有限次元の線形空間で、$\|p\|\le2\|f\|$ を満たすものの全体はその有界閉集合なのでコンパクトであり、$p\mapsto\|f-p\|$ は連続なのでそこで最小値をとる(それ以外の $p$ では $\|f-p\|\ge\|p\|-\|f\|>\|f\|=\|f-0\|$ である)。thm-wa-main は、その最小値 $E_n(f)$ が $n\to\infty$ で $0$ に近づくことと同じである。ex-wa-square が示すように、Bernstein 多項式は最良近似ではなく、prop-wa-lipschitz の評価 $\frac K{2\sqrt n}$ も最良近似の誤差の上界にすぎない。
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