Borel集合(Borel set)とは、位相空間の開集合全体が生成する σ-代数(Borel σ-代数)の元のことである。開集合から補集合・可算個の和集合・可算個の共通部分を何度とっても Borel 集合であり、実数では閉集合、$F_\sigma$ 集合、$G_\delta$ 集合、有理数全体、Cantor 集合などが Borel 集合である。実数の Borel σ-代数は区間や半直線 $(-\infty,a]$ の全体からも生成され、連続写像による Borel 集合の逆像は Borel 集合である。Lebesgue 測度や確率分布を定める共通の土台であるが、Borel 集合でない実数の集合も存在する。
位相空間では開集合が基本の対象である。開集合は任意個の和集合で閉じているが、補集合や可算個の共通部分では閉じていない。長さ・確率のような可算加法的な量を扱うには、開集合から出発して、補集合と可算個の和集合・共通部分を何度とってもはみ出さない集合の族が必要になる。それが開集合全体の生成する σ-代数 であり、その元を Borel 集合(Borel set)という。開集合・閉集合、閉集合の可算個の和($F_\sigma$ 集合)、開集合の可算個の共通部分($G_\delta$ 集合)、有理数全体、Cantor 集合など、解析学に自然に現れる実数の集合はほとんどが Borel 集合である。Borel 集合は位相だけから決まるので、Lebesgue測度 や確率分布のような測度を定義する共通の土台になり、確率変数 については「値が Borel 集合 $B$ に入る」という事象 $\{X\in B\}$ がつねに確率をもつ。
以下、位相空間 $X$ の部分集合の族 $\mathcal{A}$ が生成する σ-代数($\mathcal{A}$ を含む最小の σ-代数)を $\sigma(\mathcal{A})$ と書く(σ-代数 の記事の定義「生成される σ-代数」)。
$\mathcal{B}(X)$ は開集合全体を含む最小の σ-代数である。したがって、開集合を含み補集合と可算個の和集合で閉じた族は、すべての Borel 集合を含む。σ-代数は補集合と可算個の共通部分でも閉じている(σ-代数 の記事の命題「σ-代数で閉じている演算」)ので、閉集合(開集合の補集合)、閉集合の可算個の和、開集合の可算個の共通部分なども Borel 集合である。
$X=\mathbb{R}^n$(通常の位相)の Borel σ-代数を $\mathcal{B}(\mathbb{R}^n)$、特に $\mathcal{B}(\mathbb{R})$ と書く。$\mathcal{B}(\mathbb{R})$ は Lebesgue測度 の記事で $\mathcal{B}$ と書かれている族と同じものであり、Axler20 2.29・5.37、Tao11 Definition 1.4.16 の定義とも一致する(Tao は Borel 集合を「Borel 可測な集合」と呼ぶ)。
位相空間 $X,Y$ の間の写像 $f\colon X\to Y$ が Borel 可測であるとは、すべての $B\in\mathcal{B}(Y)$ について $f^{-1}(B)\in\mathcal{B}(X)$ であることをいう。$Y=\mathbb{R}$ のとき、Borel 可測な $f\colon X\to\mathbb{R}$ を Borel 関数ともいう。
これは可測空間 $(X,\mathcal{B}(X))$ から $(Y,\mathcal{B}(Y))$ への可測写像(σ-代数 の記事の定義「可測写像」)のことである。Axler20 2.40 は $X$ が $\mathbb{R}$ の Borel 集合の場合にこの定義を置いている(prop-borel-set-subspace により、このとき $\mathcal{B}(X)$ は $X$ に含まれる $\mathbb{R}$ の Borel 集合の全体である)。
一般の集合 $X$ に σ-代数 $\mathcal{S}$ が与えられているとき、関数 $f\colon X\to\mathbb{R}$ が $\mathcal{S}$-可測であるとは、すべての Borel 集合 $B\subset\mathbb{R}$ について $f^{-1}(B)\in\mathcal{S}$ であることをいう(Axler20 2.35)。Lebesgue積分 の記事の定義「可測関数」は「すべての $a$ について $\{f>a\}\in\mathcal{F}$」を条件としているが、下の thm-borel-set-generators と σ-代数 の記事の定理「逆像と生成系」により、実数値関数ではこの 2 つは同値である。
位相空間 $X$ の次の集合は Borel 集合である。
$f,g\colon X\to\mathbb{R}$ を位相空間 $X$ 上の連続関数とする。零点集合 $f^{-1}(\{0\})$、$\{x\mid f(x)\le g(x)\}$ は閉集合、$\{x\mid f(x)< g(x)\}$ は開集合なので、どれも Borel 集合である。たとえば単位円周 $\{(x,y)\in\mathbb{R}^2\mid x^2+y^2=1\}$ や閉円板 $\{x^2+y^2\le1\}$ は $\mathcal{B}(\mathbb{R}^2)$ に属する。
$(\Omega,\mathcal{F},P)$ を確率空間とし、$X\colon\Omega\to\mathbb{R}$ を確率変数(すべての実数 $a$ について $\{X\le a\}\in\mathcal{F}$ を満たす関数)とする。このとき、すべての Borel 集合 $B\subset\mathbb{R}$ について $\{X\in B\}=X^{-1}(B)\in\mathcal{F}$ である。半直線 $(-\infty,a]$ の全体は $\mathcal{B}(\mathbb{R})$ を生成する(thm-borel-set-generators)ので、σ-代数 の記事の定理「逆像と生成系」の 3 からこれが従う。したがって $P(X\in B)$ はすべての Borel 集合 $B$ について定まり、$B\mapsto P(X\in B)$ は $\mathcal{B}(\mathbb{R})$ 上の確率を与える($X$ の分布。確率空間 の記事の注意「確率変数と分布」)。たとえば「$X$ の値が有理数である」「$X$ の値が Cantor 集合に入る」も事象である。
同じ集合でも、位相が変われば Borel 集合の族も変わる。
空でない開集合は補集合が可算なので $\mathcal{C}$ に属し、$\mathcal{C}$ は σ-代数である(σ-代数 の記事の例「可算集合と補集合が可算な集合」)から $\mathcal{B}(X)\subset\mathcal{C}$ である。逆に、1 点集合は補集合が開集合なので閉集合であり、Borel 集合である。$\mathcal{C}$ は 1 点集合全体が生成する σ-代数である(同じ例)から $\mathcal{C}\subset\mathcal{B}(X)$ である。
$\mathcal{B}(\mathbb{R})$ は開集合全体で生成されるが、もっと単純な集合の族でも生成される。どの生成系を使ってもよいことは、測度や分布を区間の上の値だけで調べるときの出発点になる。
$\mathcal{B}(\mathbb{R})$ は、次のどの族からも生成される。
1〜4 の族を $\mathcal{J}_1,\dots,\mathcal{J}_4$ とする。2 つの族が同じ σ-代数を生成することを示すには、それぞれが相手の生成する σ-代数に含まれることを示せばよい(σ-代数 の記事の定義「生成される σ-代数」の後の箇条書き)。
($\mathcal{B}(\mathbb{R})=\sigma(\mathcal{J}_1)$)開区間は開集合なので $\sigma(\mathcal{J}_1)\subset\mathcal{B}(\mathbb{R})$ である。逆に、開集合 $U$ は、$U$ に含まれる有理数端点の開区間 $(p,q)$ 全体の和集合に等しい。実際、$x\in U$ なら $(x-\varepsilon,x+\varepsilon)\subset U$ となる $\varepsilon>0$ があり、$x-\varepsilon< p< x< q< x+\varepsilon$ となる有理数 $p,q$ をとれば $x\in(p,q)\subset U$ である。有理数の対 $(p,q)$ は可算個しかない($\mathbb{Q}\times\mathbb{Q}$ は可算集合)ので、$U$ は $\mathcal{J}_1$ の元の可算個の和集合であり、$U\in\sigma(\mathcal{J}_1)$ である。よって $\mathcal{B}(\mathbb{R})\subset\sigma(\mathcal{J}_1)$ である。
($\mathcal{J}_2,\mathcal{J}_3,\mathcal{J}_4\subset\mathcal{B}(\mathbb{R})$)閉区間と $(-\infty,a]$ は閉集合であり、$(a,b]=\bigcap_{k\ge1}(a,b+1/k)$ は開集合の可算個の共通部分である。
($\mathcal{J}_1\subset\sigma(\mathcal{J}_i)$)$a< b$ とし、$k_0$ を $2/k_0< b-a$ となる正の整数とすると
$$
(a,b)=\bigcup_{k\ge k_0}\Bigl[a+\frac1k,\ b-\frac1k\Bigr]=\bigcup_{k\ge k_0}\Bigl(a,\ b-\frac1k\Bigr],\qquad (a,b]=(-\infty,b]\setminus(-\infty,a]
$$
である。1 つ目の式から $\mathcal{J}_1\subset\sigma(\mathcal{J}_2)$、2 つ目から $\mathcal{J}_1\subset\sigma(\mathcal{J}_3)$、3 つ目から $\mathcal{J}_3\subset\sigma(\mathcal{J}_4)$、したがって $\mathcal{J}_1\subset\sigma(\mathcal{J}_3)\subset\sigma(\mathcal{J}_4)$ である。以上から $\sigma(\mathcal{J}_i)=\sigma(\mathcal{J}_1)=\mathcal{B}(\mathbb{R})$($i=2,3,4$)である。
(有理数端点)端点を有理数に限っても、上の式はそのまま使える。
1 の段で使ったのは有理数端点の開区間だけである。2・3 の式の $a,b$ が有理数なら、右辺の区間の端点も有理数である。4 については、実数 $a$ に対し $(-\infty,a]=\bigcap\{(-\infty,q]\mid q\in\mathbb{Q},\ q>a\}$ は可算個の共通部分なので、$(-\infty,q]$($q\in\mathbb{Q}$)全体が生成する σ-代数は 4 の族を含む。有理数端点の区間・半直線は可算個である。$\square$
$\mathcal{B}(\mathbb{R})$ は $(a,\infty)$ の全体からも生成される($(a,\infty)$ は $(-\infty,a]$ の補集合)。Axler20 2.39 の証明はこの形を使い、Tao11 Exercise 1.4.14 は $\mathbb{R}^d$ で開集合・閉集合・コンパクト集合・開球・箱などがどれも Borel σ-代数を生成することを演習にしている。$\mathbb{R}^n$ でも、開集合は有理数を座標とする中心と有理数の辺の長さをもつ開立方体の可算個の和集合なので、$\mathcal{B}(\mathbb{R}^n)$ は開立方体の全体から生成される(Axler20 5.38)。
$X,Y,Z$ を位相空間とする。
2 から、たとえば $x\mapsto -x$、$x\mapsto x+t$、$x\mapsto cx$($c\neq0$)は $\mathbb{R}$ の Borel 集合を Borel 集合に写す。Borel 集合の族は位相だけから定まるので、同相写像で保たれるのは当然ともいえる。1 が述べているのは逆像についてであり、連続写像による像については何も言っていない。
Borel 関数 $f\colon X\to\mathbb{R}$ と連続関数 $g\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ の合成 $g\circ f$ は、1 と 3 により Borel 関数である。たとえば $\lvert f\rvert$、$f^2$、$-f$ は Borel 関数である(Axler20 2.44・2.45)。Borel 関数 $f,g$ の和・差・積も Borel 関数である(Axler20 2.46。$\{f+g>a\}=\bigcup_{r\in\mathbb{Q}}\bigl(\{f>r\}\cap\{g>a-r\}\bigr)$ と 4 による)。
$X$ を位相空間、$Y\subset X$ に相対位相を入れる。このとき
$$
\mathcal{B}(Y)=\{B\cap Y\mid B\in\mathcal{B}(X)\}
$$
である。さらに $Y\in\mathcal{B}(X)$ ならば、$\mathcal{B}(Y)=\{B\in\mathcal{B}(X)\mid B\subset Y\}$ であり、$Y$ の Borel 集合はそのまま $X$ の Borel 集合である。
相対位相の開集合は $U\cap Y$($U$ は $X$ の開集合)の形の集合である(相対位相 の記事の定義「相対位相」)。σ-代数 の記事の系「部分集合への制限」の最後の等式を、$X$ の開集合全体 $\mathcal{O}_X$ に使うと
$$
\{B\cap Y\mid B\in\mathcal{B}(X)\}=\sigma(\mathcal{O}_X)|_Y=\sigma(\{U\cap Y\mid U\in\mathcal{O}_X\})=\mathcal{B}(Y)
$$
となる。$Y\in\mathcal{B}(X)$ のときの主張は、同じ系の 2 つ目の主張である。$\square$
Tao11 Exercise 1.4.12 は σ-代数の制限が σ-代数であることを演習にしている。この命題により、「$\mathbb{R}$ の部分集合 $Y$ 上の Borel 集合」を、$Y$ の相対位相から定めても、$\mathbb{R}$ の Borel 集合との共通部分として定めても同じになる。たとえば区間 $[0,1]$ の Borel 集合は、$[0,1]$ に含まれる $\mathbb{R}$ の Borel 集合のことである。
拡大実数 $[-\infty,\infty]=\mathbb{R}\cup\{-\infty,\infty\}$ に、$(a,b)$、$[-\infty,a)$、$(a,\infty]$($a,b\in\mathbb{R}$)を基とする順序位相を入れる。$\mathbb{R}$ はその開集合で、$\mathbb{R}$ の相対位相は通常の位相であり、1 点集合 $\{-\infty\}$、$\{\infty\}$ は閉集合である。このとき $C\subset[-\infty,\infty]$ について
$$
C\in\mathcal{B}([-\infty,\infty])\iff C\cap\mathbb{R}\in\mathcal{B}(\mathbb{R})
$$
が成り立つ。これは Axler20 2.50 が $[-\infty,\infty]$ の Borel 集合の定義として採っている条件であり、位相から定めた Borel 集合と一致する。
(⇒) prop-borel-set-subspace の前半を $Y=\mathbb{R}$ に使う。(⇐) $\mathbb{R}$ は開集合なので $\mathcal{B}([-\infty,\infty])$ に属し、prop-borel-set-subspace の後半により $C\cap\mathbb{R}\in\mathcal{B}([-\infty,\infty])$ である。$C\cap\{-\infty,\infty\}$ は閉集合の有限個の和なので Borel 集合であり、$C$ はこの 2 つの和集合である。
$[-\infty,\infty]$ に値をとる関数 $f$ についても、「すべての $a\in\mathbb{R}$ について $\{f>a\}$ が Borel 集合」が Borel 可測性と同値になる。$(a,\infty]$($a\in\mathbb{R}$)の全体が $\mathcal{B}([-\infty,\infty])$ を生成するからである($\{\infty\}=\bigcap_n(n,\infty]$、$(a,b]=(a,\infty]\setminus(b,\infty]$、$\{-\infty\}=[-\infty,\infty]\setminus\bigcup_n(-n,\infty]$ と上の例、thm-borel-set-generators から確かめられる)。Lebesgue積分 の記事の定義「可測関数」が $[-\infty,\infty]$ 値の関数を $\{f>a\}$ で扱っているのはこの形である。
$B_1\in\mathcal{B}(\mathbb{R}^m)$、$B_2\in\mathcal{B}(\mathbb{R}^n)$ ならば $B_1\times B_2\in\mathcal{B}(\mathbb{R}^{m+n})$ である。
射影 $\pi_1\colon\mathbb{R}^{m+n}\to\mathbb{R}^m$、$\pi_2\colon\mathbb{R}^{m+n}\to\mathbb{R}^n$ は連続なので、thm-borel-set-continuous の 1 により $B_1\times\mathbb{R}^n=\pi_1^{-1}(B_1)$ と $\mathbb{R}^m\times B_2=\pi_2^{-1}(B_2)$ は $\mathbb{R}^{m+n}$ の Borel 集合である。$B_1\times B_2$ はこの 2 つの共通部分である。$\square$
Tao11 Exercise 1.4.17 は同じ主張を、箱の場合から Remark 1.4.15 の論法で示す演習にしている。たとえば $\mathbb{Q}\times[0,1]$ や $C\times C$($C$ は Cantor 集合)は $\mathcal{B}(\mathbb{R}^2)$ に属する。
連続関数の列の極限は連続とは限らないが、Borel 集合・Borel 関数の範囲には留まる。
$X$ を位相空間、$f_0,f_1,\ldots\colon X\to\mathbb{R}$ を連続関数の列とする。
$a\in\mathbb{R}$ とする。$x\in C$ について、$f(x)>a$ であることと、「ある $j\ge1$ と $N$ があって、すべての $k\ge N$ で $f_k(x)>a+1/j$」であることは同値である。実際、$f(x)>a$ なら $f(x)>a+2/j$ となる $j$ をとれば、十分大きい $k$ で $f_k(x)>a+1/j$ である。逆に後者が成り立てば、$k\to\infty$ として $f(x)\ge a+1/j>a$ である。したがって $$\{x\in C\mid f(x)>a\}=C\cap\bigcup_{j\ge1}\bigcup_{N\in\mathbb{N}}\bigcap_{k\ge N}\Bigl\{x\in X\ \Big|\ f_k(x)>a+\frac1j\Bigr\}$$ であり、右辺の $\{\cdots\}$ は開集合なので、右辺は $X$ の Borel 集合と $C$ の共通部分である。prop-borel-set-subspace によりこれは $\mathcal{B}(C)$ の元であり、thm-borel-set-continuous の 4 (c) により $f$ は Borel 可測である。$\square$
1 の集合は、閉集合の可算個の和($F_\sigma$ 集合)の可算個の共通部分という形をしている。2 の論法は Axler20 2.48・2.49 と同じである。この命題から、たとえば各点収束する連続関数の列の極限(Baire 第 1 級関数)はすべて Borel 関数である。
Borel 集合の族は大きいが、「すべて」ではなく、また位相に依存する。
| 期待しがちな含意 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| Borel 集合かどうかは集合 $X$ だけで決まる | $\mathbb{R}$ の密着位相・通常の位相・離散位相 | 同じ集合の同じ部分集合が、位相によって Borel 集合になったりならなかったりする |
| Borel 集合は開集合の可算個の共通部分か、閉集合の可算個の和集合である | $A=(\mathbb{Q}\cap(-\infty,0))\cup\bigl((0,\infty)\setminus\mathbb{Q}\bigr)$ | $A$ は Borel 集合だが、$G_\delta$ 集合でも $F_\sigma$ 集合でもない |
| Lebesgue 可測集合は Borel 集合である | Cantor 集合の部分集合(濃度の比較) | $\mathcal{B}(\mathbb{R})\subsetneq\mathcal{L}$($\mathcal{L}$ は Lebesgue 可測集合全体) |
| $\mathbb{R}$ の部分集合はすべて Borel 集合である | Vitali 集合(選択公理を使う) | $\mathcal{B}(\mathbb{R})\subsetneq\mathcal{P}(\mathbb{R})$ |
1 行目は ex-borel-set-topologies で確かめた(通常の位相で Borel 集合でない集合があることは 3・4 行目による)。2・3・4 行目を次に確かめる。
$A:=(\mathbb{Q}\cap(-\infty,0))\cup\bigl((0,\infty)\setminus\mathbb{Q}\bigr)$(負の有理数と正の無理数の全体)は、$F_\sigma$ 集合と $G_\delta$ 集合の和集合なので Borel 集合である。しかし $A$ は $G_\delta$ 集合でも $F_\sigma$ 集合でもない。したがって、開集合から「可算個の共通部分」または「可算個の和集合」を 1 回ずつとるだけでは、Borel 集合は尽きない。
($G_\delta$ でない)$A$ が $G_\delta$ 集合なら、開集合 $(-\infty,0)$ との共通部分 $\mathbb{Q}\cap(-\infty,0)$ も $G_\delta$ 集合であり、同相写像 $x\mapsto-x$ による像 $\mathbb{Q}\cap(0,\infty)$ も $G_\delta$ 集合である。$\{0\}$ は閉集合で、距離空間の閉集合は $G_\delta$ 集合なので、$\mathbb{Q}=(\mathbb{Q}\cap(-\infty,0))\cup\{0\}\cup(\mathbb{Q}\cap(0,\infty))$ は $G_\delta$ 集合の有限個の和として $G_\delta$ 集合になる(G_δ-集合 の記事の命題「可算共通部分・有限和・逆像に関する閉包性」「距離空間の閉集合は $G_\delta$-集合」)。これは F_σ-集合 の記事の命題「有理数全体は $G_\delta$-集合でない」に反する。
($F_\sigma$ でない)$A$ が $F_\sigma$ 集合なら、開集合 $(0,\infty)$(距離空間の開集合なので $F_\sigma$ 集合)との共通部分 $(0,\infty)\setminus\mathbb{Q}$ も $F_\sigma$ 集合であり(F_σ-集合 の記事の命題「$G_\delta$-集合との双対性」の 2・3)、$x\mapsto-x$ による像 $(-\infty,0)\setminus\mathbb{Q}$ も $F_\sigma$ 集合である。$0$ は有理数なので、無理数全体はこの 2 つの和集合であり $F_\sigma$ 集合になる。これは同じ記事の注意「反例:無理数全体」に反する。
同相写像が $G_\delta$ 集合・$F_\sigma$ 集合を保つことは、それぞれの定義(開集合の可算個の共通部分、閉集合の可算個の和集合)と、同相写像が開集合・閉集合を保ち共通部分・和集合と交換することからわかる。
$\mathcal{B}(\mathbb{R})$ に属さない $\mathbb{R}$ の部分集合は 2 種類の方法で得られる。
$\mathcal{B}(\mathbb{R})$ の濃度は連続体濃度 $2^{\aleph_0}$ に等しい。1 点集合 $\{x\}$ は閉集合なので、$x\mapsto\{x\}$ は $\mathbb{R}$ から $\mathcal{B}(\mathbb{R})$ への単射であり、$\lvert\mathcal{B}(\mathbb{R})\rvert\ge\lvert\mathbb{R}\rvert=2^{\aleph_0}$ である(基数 の記事の例「連続体の濃度」)。逆向きの $\lvert\mathcal{B}(\mathbb{R})\rvert\le2^{\aleph_0}$ は、生成系から出発して補集合と可算個の和集合をとる操作を可算順序数の回数だけくり返すと生成される σ-代数が得られることを使い、各段の集合を数えて示す。濃度 $\kappa$ の無限個の集合が生成する σ-代数の濃度は $\kappa^{\aleph_0}$ 以下であり、$\mathcal{B}(\mathbb{R})$ の場合は $2^{\aleph_0}$ 以下になる(Tao11 Exercise 1.4.15・1.4.16。選択公理を仮定している。証明は割愛する)。一方 $\lvert\mathcal{P}(\mathbb{R})\rvert=2^{2^{\aleph_0}}$ は 冪集合 の記事の定理「Cantorの定理」により $2^{\aleph_0}$ より真に大きい。したがって $\mathcal{B}(\mathbb{R})\subsetneq\mathcal{P}(\mathbb{R})$ であり、Borel 集合でない実数の集合がある。これに対して離散位相の $\mathbb{R}$ ではすべての部分集合が Borel 集合である(ex-borel-set-topologies)。
Borel 集合は「個数」の点でも性質がよい。$\mathbb{R}$ の非可算な Borel 集合は Cantor 集合と同じ構造(空でない完全集合)を含み、したがって $\mathbb{R}$ と対等である。つまり、連続体仮説の反例になる集合は Borel 集合の中にはない(連続体仮説 の記事の注意「定義可能な集合と連続体仮説」)。
Borel 集合を開集合から段階的に作ると、開集合・閉集合、$F_\sigma$ 集合・$G_\delta$ 集合、$F_\sigma$ 集合の可算個の共通部分($F_{\sigma\delta}$ 集合)・$G_\delta$ 集合の可算個の和集合($G_{\delta\sigma}$ 集合)、…と続く階層ができる。これを Borel 階層という(Tao11 Remark 1.4.17、F_σ-集合 の記事の補足)。ex-borel-set-neither は第 2 段で尽きないことの例であり、prop-borel-set-convergence の集合 $C$ は $F_{\sigma\delta}$ 集合である。$\mathbb{R}$ ではこの階層は有限の段階では終わらず(Axler20 2.30 の後の説明)、可算順序数の段階まで続けてはじめて $\mathcal{B}(\mathbb{R})$ 全体が得られる(Tao11 Exercise 1.4.15)。
$\mathcal{B}(X)$ の上の測度を Borel 測度という。Borel 集合の族は位相だけから決まるので、位相空間の上の自然な測度は Borel 集合の上で定義されることが多い。
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