Eilenberg–MacLane空間

同義語:Eilenberg–MacLane spaceEilenberg-MacLane空間アイレンベルグ・マクレーン空間

概要

Eilenberg–MacLane空間(Eilenberg–MacLane space)とは、$n\ge1$ と群 $G$ に対し、$n$ 次ホモトピー群が $G$ に同型でほかのホモトピー群がすべて自明な弧状連結空間 $K(G,n)$ のことである。$n\ge2$ なら $G$ が可換群であることが必要で、この条件のもとで、球面の一点和に円板を貼って $G$ を作り、高い次数のホモトピー群を円板で消していくことで CW 複体の $K(G,n)$ が構成できる。CW 複体の $K(G,n)$ はホモトピー同値を除いて一意であり、これは胞体ごとに作った写像に Whitehead の定理を使って示される。円周、実射影空間、複素射影空間が基本的な例で、離散群の分類空間、群のコホモロジー、コホモロジーの表現などに使われる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ホモトピー群, 基本群, CW複体, Whiteheadの定理

Eilenberg–MacLane 空間 $K(G,n)$ は、ただ一つの次数 $n$ にだけ自明でないホモトピー群をもち、その群が $G$ である弧状連結な空間である。円周 $S^1$ は $K(\mathbb{Z},1)$、無限次元実射影空間 $\mathbb{R}P^\infty$ は $K(\mathbb{Z}/2,1)$、無限次元複素射影空間 $\mathbb{C}P^\infty$ は $K(\mathbb{Z},2)$ である。
中心になる事実は二つある。一つは、$n\ge1$ と群 $G$($n\ge2$ なら可換群)を与えるごとに、$K(G,n)$ となる CW複体が存在すること。もう一つは、CW 複体の $K(G,n)$ はホモトピー同値を除いてただ一つに決まることである。存在は球面と円板を貼る構成で、一意性は胞体ごとに作った写像と Whiteheadの定理 で示す。こうして $K(G,n)$ は、空間のホモトピー論と群・コホモロジーの代数とをつなぐ。

定義

Eilenberg–MacLane 空間

$n\ge1$ を整数、$G$ を群とする。弧状連結な位相空間 $X$ が $K(G,n)$($G$ と $n$ に対する Eilenberg–MacLane 空間)であるとは、点 $x_0\in X$ について
$$ \pi_n(X,x_0)\cong G,\qquad\pi_i(X,x_0)=0\quad(i\ge1,\ i\ne n) $$
が成り立つことをいう。

$X$ は弧状連結なので、ホモトピー群の同型類は基点の選び方によらず(ホモトピー群の記事の命題「被覆空間と$n$-単純性」)、条件は一つの基点で確かめれば足りる。$n\ge2$ のとき $\pi_n$ は可換群なので(同記事の命題「$n\geq2$のときホモトピー群はアーベル群である」)、$K(G,n)$ が存在するには $G$ が可換群であることが必要である。$n=1$ では $G$ は任意の群でよい。$K(G,1)$ を $K(\pi,1)$ 空間、あるいは非球面的な空間(aspherical space)ということもある。

普遍被覆による言い換え

弧状連結な空間 $X$ が普遍被覆 $\tilde X\to X$ をもつとき、$i\ge2$ について $\pi_i(\tilde X)\cong\pi_i(X)$ であり(ホモトピー群の記事の命題「被覆空間と$n$-単純性」)、$\tilde X$ は単連結である。よって $X$ が $K(G,1)$ であることは、$\pi_1(X)\cong G$ かつ $\tilde X$ のすべてのホモトピー群が自明であることと同値である。$\tilde X$ が CW 複体なら、後者は $\tilde X$ が可縮であることと同値になる(Whiteheadの定理の記事の例「すべてのホモトピー群が自明な CW 複体」)。Hat02 §1.B(p. 87)はこちらを $K(G,1)$ の定義としている。

主張

Eilenberg–MacLane 空間の存在

$n\ge1$、$G$ を群とし、$n\ge2$ なら $G$ は可換群とする。このとき $K(G,n)$ である CW 複体 $K$ が存在する。さらに $K$ は、$0$ 胞体 $x_0$ をただ一つもち、次の形の部分複体 $X$ を含み、$K\setminus X$ の胞体の次元がすべて $n+2$ 以上であるようにとれる。
$$ X=\Bigl(\bigvee_{\alpha}S^n_\alpha\Bigr)\cup\bigcup_\beta e^{n+1}_\beta\qquad(\text{各 }e^{n+1}_\beta\text{ の接着写像は基点 }x_0\text{ を保つ}) $$

証明の所在

証明は節「存在の証明」「一意性の証明」で与える。

Eilenberg–MacLane 空間の一意性

$K$ と $K'$ がともに CW 複体で $K(G,n)$ ならば($G$ と $n$ は共通)、$K$ と $K'$ はホモトピー同値である。

これらは Hat02 §4.2 の Eilenberg–MacLane 空間の構成(p. 365)と Proposition 4.30(p. 366)であり、$n=1$ の一意性は同書 §1.B Theorem 1B.8(p. 90)でもある。

準備

この記事で引用する事実

次の三つはこの記事では証明せず、所在を示して使う。

引用する事実

(a) 弧状連結な CW 複体 $Z$ と弧状連結な部分複体 $A$ があり、$Z\setminus A$ の胞体の次元がすべて $m$ より大きいとき、包含が誘導する $\pi_i(A)\to\pi_i(Z)$ は $1\le i< m$ で同型、$i=m$ で全射である(CW近似の記事の補題「高い次元の胞体はホモトピー群を低い次数で変えない」。Hat02 §4.1 Corollary 4.12, p. 351)。
(b) 球面の一点和 $\bigvee_\alpha S^n_\alpha$ の基点を $x_0$、各球面の包含の類を $[\iota_\alpha]\in\pi_n(\bigvee_\alpha S^n_\alpha,x_0)$ とする。$n\ge2$ なら $\pi_n(\bigvee_\alpha S^n_\alpha,x_0)$ は $[\iota_\alpha]$ を基底とする自由可換群であり(Hat02 §4.2 Example 4.26, p. 363)、$n=1$ なら $[\iota_\alpha]$ を生成元とする自由群である(同書 §1.2 Example 1.21, p. 43。円周二つの場合は Van Kampenの定理の記事の例「円周のウェッジ和」)。
(c) 基点を保つ写像 $\varphi_\beta\colon S^n\to\bigvee_\alpha S^n_\alpha$ を接着写像として $(n+1)$ 胞体 $e^{n+1}_\beta$ を貼った CW 複体を $X$ とする。$n\ge2$ なら、包含が誘導する $\pi_n(\bigvee_\alpha S^n_\alpha,x_0)\to\pi_n(X,x_0)$ は全射で、その核は $[\varphi_\beta]$ たちで生成される部分群である(Hat02 §4.2 Example 4.29, pp. 364–365)。$n=1$ なら、$\pi_1(X,x_0)$ は生成元 $[\iota_\alpha]$ と、$\varphi_\beta$ を $[\iota_\alpha]$ の語として書いたものを関係子とする群の表示をもつ(同書 §1.2 Proposition 1.26, p. 50 と Corollary 1.28, p. 52)。

円板への延長

球面からの写像の延長

$k\ge1$ とし、$Y$ を弧状連結な空間で、$k\ge2$ のときはさらに $\pi_{k-1}(Y)=0$ とする。このとき任意の連続写像 $\varphi\colon S^{k-1}\to Y$ は、連続写像 $D^k\to Y$ に延長できる。

要点:$k=1$ は道で、$k\ge2$ は基点付きの零ホモトピーから円板への延長を作る。

詳しい証明を開く

$k=1$:$S^0=\{-1,1\}$ であり、$Y$ は弧状連結なので $\varphi(-1)$ から $\varphi(1)$ への道 $\delta\colon[0,1]\to Y$ がある。$D^1=[-1,1]$ 上で $t\mapsto\delta\bigl((t+1)/2\bigr)$ とおけば延長になる。

$k\ge2$:$S^{k-1}$ の基点を $s_0$、$y:=\varphi(s_0)$ とおくと、$\varphi$ は基点付き写像 $(S^{k-1},s_0)\to(Y,y)$ である。$Y$ は弧状連結なので $\pi_{k-1}(Y,y)$ はほかの基点での群と同型であり、自明である。よって $[\varphi]=0\in\pi_{k-1}(Y,y)$ であり、CW近似の記事の補題「円板への延長と零ホモトピー」により $\varphi$ は $D^k$ に延長できる。$\square$

胞体ごとの延長

$Z$ を CW 複体、$A$ をその部分複体、$Y$ を弧状連結な空間、$f\colon A\to Y$ を連続写像とする。$Z\setminus A$ が $k$ 胞体をもつようなすべての $k\ge2$ について $\pi_{k-1}(Y)=0$ ならば、$f$ は連続写像 $F\colon Z\to Y$ に延長できる。

要点:骨格の次元の順に、接着写像との合成を lem-em-extend-disk で円板へ延ばし、胞体ごとの判定で連続性を確かめる。

詳しい証明を開く

$Z^k$ を $Z$ の $k$ 骨格とし、$Z_k:=A\cup Z^k$($Z_{-1}:=A$)とおく。$Z_k$ は部分複体であり、$Z_k\setminus Z_{k-1}$ は $Z\setminus A$ の $k$ 胞体からなる。$k=0,1,2,\dots$ の順に、連続写像 $F_k\colon Z_k\to Y$ で $F_k|_{Z_{k-1}}=F_{k-1}$($F_{-1}:=f$)となるものを作る。

$k=0$ では、$Z\setminus A$ の $0$ 胞体の行き先を $Y$ の任意の点に決めればよい。$k\ge1$ では、$Z\setminus A$ の $k$ 胞体 $e_\alpha$ の特性写像を $\Phi_\alpha\colon D^k\to Z$、接着写像を $\varphi_\alpha:=\Phi_\alpha|_{S^{k-1}}\colon S^{k-1}\to Z^{k-1}\subset Z_{k-1}$ とする。$k=1$ では $Y$ が弧状連結であること、$k\ge2$ では $\pi_{k-1}(Y)=0$ により、lem-em-extend-disk から $F_{k-1}\circ\varphi_\alpha$ の延長 $\Psi_\alpha\colon D^k\to Y$ がある。$Z_k$ は $Z_{k-1}$ と開胞体 $e_\alpha=\Phi_\alpha(\operatorname{int}D^k)$ の非交和で、$\Phi_\alpha$ は $\operatorname{int}D^k$ の上で単射なので、$Z_{k-1}$ 上で $F_{k-1}$、$e_\alpha$ 上で $F_k(\Phi_\alpha(p)):=\Psi_\alpha(p)$ とおけば写像 $F_k$ が定まる。$p\in S^{k-1}$ では $\Psi_\alpha(p)=F_{k-1}(\varphi_\alpha(p))$ なので $F_k\circ\Phi_\alpha=\Psi_\alpha$ が $D^k$ 全体で成り立つ。$Z_k$ の各胞体の特性写像との合成は $F_{k-1}\circ\Phi$ か $\Psi_\alpha$ で連続なので、CW複体の記事の定理「胞体ごとの判定」により $F_k$ は連続である。

$F\colon Z\to Y$ を、各 $Z_k$ の上で $F_k$ と定める。$Z$ の各胞体はある $Z_k$ に含まれ、特性写像との合成は $F_k$ との合成で連続なので、同じ定理により $F$ は連続であり、$F|_A=f$ である。$\square$

これは Hat02 §4.1 Lemma 4.7(p. 348)である。

存在の証明

第 1 段:$\pi_n$ が $G$ の $(n+1)$ 次元複体。 $n=1$ のとき、$G$ の表示 $G\cong\langle g_\alpha\ (\alpha\in A)\mid r_\beta\ (\beta\in B)\rangle$ をとる(群の表示の記事の命題「すべての群は表示を持つ」)。円周の一点和 $\bigvee_{\alpha\in A}S^1_\alpha$ に、各 $\beta$ について語 $r_\beta$ をたどる基点付きループを接着写像として $2$ 胞体 $e^2_\beta$ を貼り、$X$ とする。rem-em-cited の (c) により $\pi_1(X,x_0)\cong G$ である。この $X$ は表示の 群の表示複体 であり、$\pi_1(X,x_0)\cong G$ は同記事の定理「表示複体の基本群」で証明する。
$n\ge2$ のとき、$G$ は可換群である。集合 $A$ と全射準同型 $\rho\colon\bigoplus_{\alpha\in A}\mathbb{Z}\to G$ をとり(たとえば $A=G$ とし、$\alpha$ 番目の基底を $\alpha$ に写す)、$\operatorname{Ker}\rho$ の生成系 $(r_\beta)_{\beta\in B}$ を選ぶ。rem-em-cited の (b) により $\pi_n(\bigvee_\alpha S^n_\alpha,x_0)$ を $\bigoplus_\alpha\mathbb{Z}$($[\iota_\alpha]$ を $\alpha$ 番目の基底)と同一視でき、各 $r_\beta$ を表す基点付き写像 $\varphi_\beta\colon S^n\to\bigvee_\alpha S^n_\alpha$ がある。これを接着写像として $(n+1)$ 胞体 $e^{n+1}_\beta$ を貼り、$X$ とする。(c) により
$$ \pi_n(X,x_0)\cong\Bigl(\bigoplus_\alpha\mathbb{Z}\Bigr)\Big/\langle r_\beta\mid\beta\in B\rangle=\Bigl(\bigoplus_\alpha\mathbb{Z}\Bigr)\Big/\operatorname{Ker}\rho\cong G $$
である。
どちらの場合も $X$ は弧状連結な CW 複体で、$0$ 胞体は $x_0$ だけ、ほかの胞体の次元は $n$ と $n+1$ である。rem-em-cited の (a) を $A=\{x_0\}$、$m=n-1$ に使うと、$1\le i\le n-1$ で $\pi_i(\{x_0\})=0\to\pi_i(X,x_0)$ は全射なので、$\pi_i(X,x_0)=0$ である。
第 2 段:高い次数のホモトピー群を消す。 $k\le n+1$ では $X_k:=X$ とおく。$k\ge n+1$ について、次元 $k$ 以下の CW 複体 $X_k$ が作られたとして、$\pi_k(X_k,x_0)$ の各元 $\gamma$ について代表の基点付き写像 $\psi_\gamma\colon S^k\to X_k$ を選び、これを接着写像として $(k+1)$ 胞体 $e^{k+1}_\gamma$ を貼ったものを $X_{k+1}$ とする。$X_k$ は次元 $k$ 以下なので、その全体が $k$ 骨格であり、$X_{k+1}$ は $X_k$ を部分複体とする次元 $k+1$ 以下の CW 複体である。
$X_{k+1}\setminus X_k$ の胞体は $(k+1)$ 次元なので、rem-em-cited の (a)($m=k$)により包含 $\iota\colon X_k\hookrightarrow X_{k+1}$ は $\pi_k$ に全射を誘導する。一方、各 $\gamma$ について $\iota\circ\psi_\gamma$ は胞体 $e^{k+1}_\gamma$ の特性写像 $D^{k+1}\to X_{k+1}$ に延長されるので、CW近似の記事の補題「円板への延長と零ホモトピー」により $\iota_*\gamma=[\iota\circ\psi_\gamma]=0$ である。全射 $\iota_*$ の像がすべて $0$ なので、$\pi_k(X_{k+1},x_0)=0$ である。
第 3 段:極限。 $K:=\bigcup_kX_k$ に、各 $X_k$($k\ge n+1$)を部分複体とする CW 複体の位相を入れる。$K$ は弧状連結で、$K\setminus X$ の胞体の次元は $n+2$ 以上である。$i\ge1$ をとり、$k:=\max\{i+1,\,n+1\}$ とおく。$K\setminus X_k$ の胞体の次元は $k+1$ 以上で $k$ より大きいので、(a)($m=k$)により $\pi_i(X_k,x_0)\to\pi_i(K,x_0)$ は同型である($i< k$)。

  • $i< n$ のとき:$X_k=X$ であり、第 1 段により $\pi_i(K)\cong\pi_i(X)=0$ である。
  • $i=n$ のとき:$X_k=X$ であり、$\pi_n(K)\cong\pi_n(X)\cong G$ である。
  • $i>n$ のとき:$k=i+1$ であり、第 2 段により $\pi_i(K)\cong\pi_i(X_{i+1})=0$ である。
    よって $K$ は $K(G,n)$ である CW 複体で、主張の形をもつ。$\square$

第 2 段は CW近似の記事の定理「CW 近似の存在」と同じ手法である(Hat02 §4.1 Example 4.16, p. 354)。

一意性の証明

写像の構成

$(n+1)$ 次元複体からの写像

$n\ge1$ とし、$X$ を thm-em-existence の形の CW 複体($n$ 球面の一点和に、基点を保つ接着写像で $(n+1)$ 胞体を貼ったもの)、$Y$ を弧状連結な空間、$y_0\in Y$ とする。このとき任意の準同型 $\psi\colon\pi_n(X,x_0)\to\pi_n(Y,y_0)$ について、基点付き写像 $f\colon(X,x_0)\to(Y,y_0)$ で $f_*=\psi$ となるものがある。

$W:=\bigvee_\alpha S^n_\alpha$ を $X$ の $n$ 骨格、$j\colon W\hookrightarrow X$ を包含とする。各 $\alpha$ について $\psi(j_*[\iota_\alpha])\in\pi_n(Y,y_0)$ の代表 $h_\alpha\colon(S^n,s_0)\to(Y,y_0)$ を選び、$f_W\colon W\to Y$ を $S^n_\alpha$ の上で $h_\alpha$ と定める。$f_W$ は基点付き写像で、ウェッジ和の記事の定理「点付き空間の圏の余積」により連続である。
二つの準同型 $(f_W)_*$ と $\psi\circ j_*\colon\pi_n(W,x_0)\to\pi_n(Y,y_0)$ は、$(f_W)_*[\iota_\alpha]=[h_\alpha]=\psi(j_*[\iota_\alpha])$ により $[\iota_\alpha]$ の上で一致する。rem-em-cited の (b) により $[\iota_\alpha]$ たちは $\pi_n(W,x_0)$ を($n\ge2$ なら可換群として、$n=1$ なら群として)生成するので、$(f_W)_*=\psi\circ j_*$ である。
各 $(n+1)$ 胞体 $e^{n+1}_\beta$ の接着写像を $\varphi_\beta\colon(S^n,s_0)\to(W,x_0)$ とする。$j\circ\varphi_\beta$ は $e^{n+1}_\beta$ の特性写像に延長されるので、CW近似の記事の補題「円板への延長と零ホモトピー」により $j_*[\varphi_\beta]=0$ であり、
$$ [f_W\circ\varphi_\beta]=(f_W)_*[\varphi_\beta]=\psi\bigl(j_*[\varphi_\beta]\bigr)=0 $$
となる。同じ補題により $f_W\circ\varphi_\beta$ は $D^{n+1}$ に延長でき、lem-em-extension の証明と同じく胞体ごとに定義して、連続な基点付き写像 $f\colon X\to Y$ で $f\circ j=f_W$ となるものが得られる。
最後に、$f_*\circ j_*=(f_W)_*=\psi\circ j_*$ である。$X\setminus W$ の胞体は $(n+1)$ 次元なので、rem-em-cited の (a)($m=n$)により $j_*\colon\pi_n(W,x_0)\to\pi_n(X,x_0)$ は全射であり、$f_*=\psi$ が従う。$\square$

これは Hat02 §4.2 Lemma 4.31(p. 366)である。

$K(G,n)$ への写像

$K$ を thm-em-existence の形の CW 複体 $K(G,n)$ とし、$Y$ を弧状連結な空間で $i>n$ について $\pi_i(Y)=0$ となるもの、$y_0\in Y$ とする。このとき任意の準同型 $\psi\colon\pi_n(K,x_0)\to\pi_n(Y,y_0)$ について、基点付き写像 $f\colon K\to Y$ で $f_*=\psi$ となるものがある。

$X\subset K$ を thm-em-existence の部分複体、$\iota\colon X\hookrightarrow K$ を包含とする。$K\setminus X$ の胞体の次元は $n+2$ 以上なので、rem-em-cited の (a)($m=n+1$)により $\iota_*\colon\pi_n(X,x_0)\to\pi_n(K,x_0)$ は同型である。lem-em-map を準同型 $\psi\circ\iota_*$ に使って、$f_X\colon X\to Y$ で $(f_X)_*=\psi\circ\iota_*$ となるものをとる。$K\setminus X$ が $k$ 胞体をもつなら $k\ge n+2$ で $k-1>n$ なので $\pi_{k-1}(Y)=0$ であり、lem-em-extension により $f_X$ は $f\colon K\to Y$ に延長できる。$f_*\circ\iota_*=(f_X)_*=\psi\circ\iota_*$ で $\iota_*$ は同型なので、$f_*=\psi$ である。$\square$

定理の証明

thm-em-existence の形の CW 複体 $K_0$ で $K(G,n)$ となるものを一つ固定する。CW 複体 $K'$ が $K(G,n)$ ならば $K'$ は $K_0$ とホモトピー同値であることを示せば、ホモトピー同値は同値関係なので、定理が従う。
$x_0\in K_0$、$y_0\in K'$ を基点とし、群の同型 $\psi\colon\pi_n(K_0,x_0)\cong G\cong\pi_n(K',y_0)$ をとる。$K'$ は弧状連結で $i>n$ について $\pi_i(K')=0$ なので、prop-em-map-to-k により基点付き写像 $f\colon K_0\to K'$ で $f_*=\psi$ となるものがある。$f_*$ は $\pi_n$ で同型であり、$i\ne n$ では $\pi_i(K_0)$ と $\pi_i(K')$ がどちらも自明なので同型である。$K_0$ と $K'$ は弧状連結な CW 複体なので、Whiteheadの定理の記事の系「連結な CW 複体の場合」により $f$ はホモトピー同値である。$\square$

準同型を実現する写像

$n\ge1$、$\varphi\colon G\to H$ を群の準同型($n\ge2$ なら可換群の準同型)とする。$K$ を thm-em-existence の形の $K(G,n)$、$L$ を任意の空間の $K(H,n)$ とすると、同型 $\pi_n(K)\cong G$、$\pi_n(L)\cong H$ のもとで $\varphi$ を誘導する基点付き写像 $K\to L$ がある。

$\pi_n(K,x_0)\cong G\xrightarrow{\varphi}H\cong\pi_n(L,y_0)$ の合成を $\psi$ として、prop-em-map-to-k を $Y=L$ に使えばよい。$\square$

$n=1$ ではこの写像は基点付きホモトピーを除いて一意である(Hat02 §1.B Proposition 1B.9, p. 90。この記事では証明しない)。

例

直積

$X,Y$ を弧状連結な空間、$x_0\in X$、$y_0\in Y$ とし、射影を $p\colon X\times Y\to X$、$q\colon X\times Y\to Y$ とする。$i\ge1$ について
$$ (p_*,q_*)\colon\pi_i(X\times Y,(x_0,y_0))\to\pi_i(X,x_0)\times\pi_i(Y,y_0) $$
は群の同型である。とくに $X$ が $K(G,n)$、$Y$ が $K(H,n)$ なら、$X\times Y$ は $K(G\times H,n)$ である。

要点:直積への写像とホモトピーは成分の組と一対一に対応する。

詳しい証明を開く

基点付き写像 $a\colon(S^i,s_0)\to(X\times Y,(x_0,y_0))$ は、基点付き写像の組 $(p\circ a,q\circ a)$ と一対一に対応し(直積位相の性質)、基点付きホモトピー $S^i\times I\to X\times Y$ も同様に組と対応する。よって $(p_*,q_*)$ は全単射である。$p_*$、$q_*$ はそれぞれ群の準同型なので、$(p_*,q_*)$ は群の同型である。$X\times Y$ は弧状連結であり、後半は前半から従う。$\square$

これは Hat02 §4.1 Proposition 4.2(p. 343)であり、$i=1$ は基本群の記事の命題「直積の基本群」である。

円周とトーラス

円周 $S^1$ は $K(\mathbb{Z},1)$ である。$\pi_1(S^1)\cong\mathbb{Z}$ は基本群の記事の定理「円周の基本群」による。被覆写像 $\mathbb{R}\to S^1$ は $i\ge2$ で $\pi_i$ の同型を誘導し(ホモトピー群の記事の命題「被覆空間と$n$-単純性」)、$\mathbb{R}$ は可縮なので、$i\ge2$ で $\pi_i(S^1)=0$ である。prop-em-product により、$m$ 次元トーラス $T^m=(S^1)^m$ は $K(\mathbb{Z}^m,1)$ である。$T^m$ は有限 CW 複体の積として CW 複体である(Hat02 Appendix, Theorem A.6, p. 524)。より一般に、弧状連結なグラフは自由群の $K(G,1)$ であり、球面と実射影平面を除く閉曲面も $K(G,1)$ である(同書 §1.B Example 1B.1・1B.2, p. 88)。

射影空間とレンズ空間

無限次元実射影空間 $\mathbb{R}P^\infty$ は、可縮な $S^\infty$ を普遍被覆にもつので $K(\mathbb{Z}/2,1)$ であり(Hat02 §1.B Example 1B.3, p. 88)、無限次元レンズ空間 $S^\infty/(\mathbb{Z}/m)$ は $K(\mathbb{Z}/m,1)$ である(同 Example 1B.4。レンズ空間の記事も参照)。無限次元複素射影空間 $\mathbb{C}P^\infty$ は、ファイブレーション $S^1\to S^\infty\to\mathbb{C}P^\infty$ のホモトピー完全列により $K(\mathbb{Z},2)$ である(同書 §4.2 Example 4.50, p. 380)。この記事ではこれらを証明しない。
$G$ がねじれ元(単位元でない有限位数の元)をもつと、有限次元の CW 複体の $K(G,1)$ は存在しない(Hat02 §2.2 Proposition 2.45, p. 149)。したがって $K(\mathbb{Z}/2,1)$ を $\mathbb{R}P^\infty$ より小さい有限次元の複体に取り替えることはできない。

球面の一点和から作る $K(\mathbb{Z}/m,n)$

$n\ge1$、$m\ge2$ とし、$G=\mathbb{Z}/m$ に thm-em-existence の構成を当てはめる。$n\ge2$ では全射 $\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/m$ の核が $m$ で生成されること、$n=1$ では表示 $\langle a\mid a^m\rangle$ を使うと、第 1 段の $X$ は $S^n$ に、写像度 $m$ の写像 $S^n\to S^n$ を接着写像として $(n+1)$ 胞体を一つ貼った複体であり、$\pi_n(X)\cong\mathbb{Z}/m$ である。$X$ 自身は一般に $K(\mathbb{Z}/m,n)$ ではない($m=2$、$n=1$ の $X$ は実射影平面で、被覆 $S^2\to X$ により $\pi_2(X)\cong\mathbb{Z}$)。第 2 段で胞体を貼り足して初めて $K(\mathbb{Z}/m,n)$ になる。

条件を外した反例

thm-em-uniqueness と thm-em-existence の仮定を一つずつ外す。

外す条件反例成り立たなくなること
空間が CW 複体であることワルシャワ円 $W$ と一点(どちらも自明群の $K(0,n)$)ホモトピー型が $G$ と $n$ で決まること
$i>n$ の $\pi_i$ が消えること$S^2$ と $\mathbb{C}P^\infty$($\pi_1=0$、$\pi_2\cong\mathbb{Z}$)ホモトピー型が $\pi_n$ と低い次数の群で決まること
$i< n$ の $\pi_i$ が消えること$S^1\times\mathbb{C}P^\infty$ と $\mathbb{C}P^\infty$($\pi_2\cong\mathbb{Z}$、$i>2$ で $\pi_i=0$)ホモトピー型が $\pi_n$ と高い次数の群で決まること
$n\ge2$ で $G$ が可換群であること$n=2$、$G$ を 3 次対称群 $S_3$ とする$K(G,n)$ の存在
反例の確かめ

1 行目:位相幾何学者の正弦曲線の記事の命題「ワルシャワ円のホモトピー群と可縮性」により、$W$ は弧状連結ですべての $\pi_i$ が自明であり、可縮でない。よって $W$ は任意の $n$ について自明群の $K(0,n)$ であるが、同じく $K(0,n)$ である一点とホモトピー同値でない。$W$ は CW 複体でなく、CW 複体のホモトピー型ももたない。
2 行目:$S^2$ は CW 複体で、$\pi_1(S^2)=0$、$\pi_2(S^2)\cong\mathbb{Z}$ である(ホモトピー群の記事の例「球面の次元未満の群 $\pi_k(S^n)=0\ (1\leq k< n)$」と例「球面自身: $\pi_n(S^n)\cong\mathbb{Z}$」)。$\mathbb{C}P^\infty$ は CW 複体の $K(\mathbb{Z},2)$ である(ex-em-projective)。しかし $\pi_3(S^2)\cong\mathbb{Z}$(同記事の例「低次元球面の非自明な高次ホモトピー: $\pi_3(S^2)\cong\mathbb{Z}$(Hopf写像)」)、$\pi_3(\mathbb{C}P^\infty)=0$ であり、ホモトピー同値はすべてのホモトピー群に同型を誘導するので、両者はホモトピー同値でない。$S^2$ は $\pi_3$ が消えないので $K(\mathbb{Z},2)$ でない。
3 行目:$S^1$ はコンパクトなので $S^1\times\mathbb{C}P^\infty$ は CW 複体であり(Hat02 Appendix, Theorem A.6, p. 524)、prop-em-product により弧状連結で、$\pi_1\cong\mathbb{Z}$、$\pi_2\cong\mathbb{Z}$、$i\ge3$ で $\pi_i=0$ である。$\mathbb{C}P^\infty$ とは $\pi_2$ と高い次数の群が一致するが、$\pi_1$ が異なるのでホモトピー同値でない。$S^1\times\mathbb{C}P^\infty$ は $\pi_1$ が消えないので $K(\mathbb{Z},2)$ でない。
4 行目:$n\ge2$ のホモトピー群は可換群なので(ホモトピー群の記事の命題「$n\geq2$のときホモトピー群はアーベル群である」)、$\pi_2(X)\cong S_3$ となる空間 $X$ はない。$S_3$ は可換でない。

使われ方

分類空間の記事で扱う離散群 $G$ の分類空間 $BG$ は $K(G,1)$ であり(Hat02 §1.B Example 1B.7, p. 89)、一意性によりそのホモトピー型は $G$ だけで決まる。そのため $K(G,1)$ のホモロジーやコホモロジーは群 $G$ の不変量になり、群コホモロジーを位相的に定義できる。ブレイド群の記事にある配置空間も $K(\pi,1)$ 空間の例である。
$n\ge1$ と可換群 $G$ について、CW 複体 $X$ のコホモロジーは $K(G,n)$ への基点付きホモトピー類の集合として表される。
$$ H^n(X;G)\cong[X,K(G,n)]_* $$
(Hat02 §4.3 Theorem 4.57, p. 393。この記事では証明しない)。第1Chern類の記事では、$\mathbb{C}P^\infty$ が $K(\mathbb{Z},2)$ であることから、複素直線束の同型類と $H^2(X;\mathbb{Z})$ の対応を導いている。また、空間のホモトピー群をある次数より上で消した複体を並べる Postnikov 塔(同書 §4.1 Example 4.16, p. 354)も、thm-em-existence の第 2 段と同じく円板を貼ってホモトピー群を消す構成で作られ、同書 §4.3 でその各段が Eilenberg–MacLane 空間を通じて調べられる。

関連項目

参考文献

[1]
Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002, §1.2 Example 1.21, p. 43、Proposition 1.26, p. 50、Corollary 1.28, p. 52、§1.B(K(G,1) の定義 p. 87、Example 1B.1–1B.4, p. 88、Example 1B.7, p. 89、Theorem 1B.8・Proposition 1B.9, p. 90)、§2.2 Proposition 2.45, p. 149、§4.1 Proposition 4.2, p. 343、Lemma 4.7, p. 348、Corollary 4.12, p. 351、Example 4.16, p. 354、§4.2 Example 4.26, p. 363、Example 4.29, pp. 364–365、Eilenberg–MacLane 空間の構成 p. 365、Proposition 4.30・Lemma 4.31, p. 366、Example 4.50, p. 380、§4.3 Theorem 4.57, p. 393、Appendix Theorem A.6, p. 524

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する