Cantor空間(Cantor space)とは、0 と 1 の無限列全体 $\{0,1\}^{\mathbb N}$ に二点離散空間の可算直積の位相を入れた空間で、Cantor 集合と同相である。空でないコンパクトな距離化可能空間で完全不連結かつ孤立点をもたないものはすべてこの空間と同相である(Brouwer の定理)。空でないコンパクト距離空間はすべてこの空間からの連続な全射の像であり、可分距離空間はその部分集合の連続像、コンパクト距離化可能で完全不連結な空間はその閉集合と同相である。
Cantor 空間(Cantor space)とは、$0$ と $1$ の無限列全体の集合 $\{0,1\}^{\mathbb N}$ に、二点の離散空間 $\{0,1\}$ の可算個の直積位相を入れた空間である。具体的な実数の集合である Cantor集合 はこの空間と同相であり、Cantor 空間はその位相的な骨格を取り出したものといえる。
Cantor 空間が特別なのは、次の二つの意味で「位相的に一つに決まり、しかも普遍的」だからである。第一に、空でないコンパクトな距離化可能空間で、完全不連結かつ孤立点をもたないものは、すべて Cantor 空間と同相である(Brouwer の定理)。第二に、空でないコンパクト距離空間はすべて Cantor 空間からの連続な全射の像であり(Alexandroff–Hausdorff の定理)、可分距離空間はすべて Cantor 空間の部分集合からの連続な全射の像である。この記事では、これらの定理を完全に証明し、それぞれの仮定と結論の射程の違い(部分集合か閉集合か全体か、連続像か同相か)を比べる。
関連する空間との役割の分担は次のとおりである。Cantor集合 は $[0,1]$ から中央の $1/3$ を取り除いていく具体的な構成と、その測度・Cantor 関数を扱う。Cantor立方体 は任意の基数 $\kappa$ についての $\{0,1\}^\kappa$ を扱い、重さ $\kappa$ の一般の場合の普遍性を述べる。Baire空間(記述集合論) は自然数列の空間 $\mathbb N^{\mathbb N}$ を扱う。本記事は可算個の直積 $\{0,1\}^{\mathbb N}$ に固有の性質、つまり距離化可能性を使って初めて言える特徴づけを主題にする。
以下 $\mathbb N=\{0,1,2,\dots\}$ とする。$0,1$ からなる長さ $n$ の有限列全体を $\{0,1\}^n$、有限列全体を $\{0,1\}^{< \mathbb N}=\bigcup_{n}\{0,1\}^n$ と書き、有限列 $s$ の長さを $|s|$ と書く(空列の長さは $0$)。有限列 $s$ と $i\in\{0,1\}$ について、$s$ の後ろに $i$ を付けた列を $si$ と書く。無限列 $x=(x_0,x_1,\dots)$ の最初の $n$ 項からなる有限列を $x|n$ と書く。
直積位相の開基は有限個の座標の値を指定する集合であり、そのような集合は筒集合の有限個の和である。したがって筒集合の全体は $\mathcal C$ の開基をなす。文献によっては、$\mathcal C$ と同相な空間を一般に「Cantor 空間」とよぶこともある。
$\mathcal C$ の点は、根から出発して各段で左($0$)か右($1$)を選び続ける無限二分木の枝である。筒集合 $[s]$ は「途中まで $s$ のとおりに進んだ枝の全体」であり、どの枝も各段で二つに分かれ続けるので孤立した枝はない(孤立点がない)。異なる二本の枝はどこかで別れ、その先は互いに交わらない部分木に入る(完全不連結)。そして、有限の段数までの選び方で枝の行き先がほとんど決まる(コンパクト)。
以下の定理はどれも、ある空間の点を「有限の情報を一つずつ確定させていく枝」として符号化する、という同じ考え方による。Alexandroff–Hausdorff の定理では、コンパクト距離空間を有限個の小さな集合に分け続けて木を作り、Brouwer の定理では、空間を開閉集合で二つずつに分け続けて二分木そのものを作る。
最も簡単な例として、$\mathcal C$ を区間 $[0,1]$ の上に写す写像を見る。
$$
\beta\colon\mathcal C\to[0,1],\qquad \beta(x):=\sum_{n\ge0}x_n2^{-(n+1)}
$$
は連続な全射である(Cantor立方体 の補題「2進展開の写像」)。どの点が同じ値に写るかを正確に決めておく。
$x\neq y$ とする。$\beta(x)=\beta(y)$ となるのは、ある有限列 $s$ について $\{x,y\}=\{s0111\cdots,\ s1000\cdots\}$ となる場合に限る。したがって $\beta$ の各ファイバーは高々 2 点であり、2 点になるのは値が $(0,1)$ の 2 進有理数 $m/2^k$ のときに限る。また、$x$ と $y$ の最初の相異なる項で $x_n=0$、$y_n=1$ なら $\beta(x)\le\beta(y)$ である。
$n=n(x,y)$ とし、$x_n=0$、$y_n=1$ としてよい。最初の $n$ 項は等しいので
$$
\beta(y)-\beta(x)=2^{-(n+1)}+\sum_{j>n}(y_j-x_j)2^{-(j+1)}.
$$
各項で $y_j-x_j\ge-1$ なので、和は $-\sum_{j>n}2^{-(j+1)}=-2^{-(n+1)}$ 以上であり、$\beta(y)-\beta(x)\ge0$ である。等号はすべての $j>n$ で $y_j-x_j=-1$、すなわち $y_j=0$、$x_j=1$ のときに限る。これは $s=x|n=y|n$ について $x=s0111\cdots$、$y=s1000\cdots$ であることにほかならない。このとき共通の値は $\beta(s1000\cdots)=\sum_{j< n}s_j2^{-(j+1)}+2^{-(n+1)}$ で、分母が $2^{n+1}$ の $(0,1)$ の 2 進有理数である。逆に $(0,1)$ の 2 進有理数 $m/2^k$($m$ 奇数)は、末尾が $1000\cdots$ と $0111\cdots$ の二通りの 2 進展開をもつ。$\square$
$\beta$ を ex-cantor-space-ternary の $q$ で Cantor 集合 $C$ に移すと、$C$ から $[0,1]$ への連続な全射 $\beta\circ q^{-1}$ が得られる。prop-cantor-space-binary-fiber によれば、$C$ の 2 点が同じ値に写るのは、それらが構成で取り除いた同じ開区間の両端であるときに限る。
$x=(0,1,1,0,0,0,\dots)$ と $y=(0,1,0,1,1,1,\dots)$ は $s=(0,1)$ について prop-cantor-space-binary-fiber の形をしている。$q(x)$ は 3 進表示 $0.022000\cdots_3=8/27$、$q(y)$ は $0.020222\cdots_3=7/27$ であり、これは第 3 段で取り除く開区間 $(7/27,8/27)$ の両端である。値はどちらも $\beta(x)=1/4+1/8=3/8$、$\beta(y)=1/4+\sum_{j\ge3}2^{-(j+1)}=3/8$ である(GO03 第 8 章 Example 14)。
$\beta$ は単射でない。実際、もし単射なら、コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全単射は同相写像なので(同相写像 の定理「コンパクト空間からHausdorff空間への連続全単射は同相」)、完全不連結な $\mathcal C$ と連結な $[0,1]$ が同相になってしまう。prop-cantor-space-binary-fiber はこの非単射性を、どの 2 点が重なるかまで含めて決めている。
$X$ を空でないコンパクト距離空間とする。このとき $\mathcal C$ から $X$ への連続な全射が存在する。逆に、$\mathcal C$ の連続像で距離化可能なものは空でないコンパクト空間である。
証明の考え方:$X$ を直径 $2^{-1}$ 以下の有限個の閉集合で覆い、それぞれをさらに直径 $2^{-2}$ 以下の有限個で覆い、…と有限分岐の木を作る。$\mathcal C$ の点を有限の長さのブロックに区切り、各ブロックで「どの子に進むか」を読む。各段の子の個数が有限なので、十分長いブロックで全部の子を指定できる。
木の構成。正の整数の有限列 $u$ ごとに、空でないコンパクト集合 $F_u\subset X$ を、深さ($u$ の長さ)について帰納的に定める。$F_\emptyset:=X$ とする。長さ $n$ の $u$ について $F_u$ が空でないコンパクト集合として定まったとき、開球 $B(c,2^{-n-3})$($c\in F_u$)の全体は $F_u$ を覆うので、有限個の中心 $c_1,\dots,c_k\in F_u$($k=k_u\ge1$)で $F_u\subset\bigcup_iB(c_i,2^{-n-3})$ となるものがある。$i=1,\dots,k_u$ について $$F_{ui}:=F_u\cap\{z\in X\mid d(z,c_i)\le2^{-n-3}\}$$ とおく。$F_{ui}$ は $c_i$ を含むので空でなく、コンパクト集合の閉部分集合なのでコンパクトであり、直径は $2\cdot2^{-n-3}\le2^{-(n+1)}$ 以下である。また $F_u=\bigcup_{i\le k_u}F_{ui}$ である($i>k_u$ については $F_{ui}$ を定めない)。各深さで定まる $F_u$ は有限個である。
ブロックへの符号化。各 $n\ge0$ について、深さ $n$ のすべての $u$ について $2^{m_{n+1}}\ge k_u$ となる正の整数 $m_{n+1}$ を選び、全射 $\sigma_u\colon\{0,1\}^{m_{n+1}}\to\{1,\dots,k_u\}$ を固定する。$M_n:=m_1+\dots+m_n$($M_0=0$)とおき、$x\in\mathcal C$ の第 $M_n$ 項から第 $M_{n+1}-1$ 項までのブロックを $b_{n+1}(x)\in\{0,1\}^{m_{n+1}}$ と書く。$u_0(x):=\emptyset$、$u_{n+1}(x):=u_n(x)\,\sigma_{u_n(x)}(b_{n+1}(x))$ と定めると、$F_{u_0(x)}\supset F_{u_1(x)}\supset\cdots$ は空でないコンパクト集合の減少列で、$n\ge1$ では直径が $2^{-n}$ 以下である。
写像の定義。空でないコンパクト集合の減少列の共通部分は空でない(空なら、補集合の開集合の族が $F_{u_0(x)}=X$ を覆い、有限個で覆えるので、ある $F_{u_n(x)}$ が空になって矛盾する)。直径が $0$ に近づくので共通部分はちょうど 1 点であり、それを $P(x)$ とおく。
連続性。$x,x'$ が最初の $M_n$ 項で一致すれば、最初の $n$ 個のブロックが一致して $u_n(x)=u_n(x')$ となり、$P(x),P(x')\in F_{u_n(x)}$ から $d(P(x),P(x'))\le2^{-n}$ である。$\{x'\mid x'|M_n=x|M_n\}$ は $x$ の近傍なので、$P$ は連続である。
全射性。$z\in X$ とする。$u_0=\emptyset$ から始め、$u_n$ が定まり $z\in F_{u_n}$ のとき、$F_{u_n}=\bigcup_iF_{u_ni}$ から $z\in F_{u_ni}$ となる $i$ を選び、$\sigma_{u_n}(b)=i$ となるブロック $b$ を選んで $u_{n+1}:=u_ni$ とする。選んだブロックを順に並べた列 $x$ について $u_n(x)=u_n$ がすべての $n$ で成り立ち、$z\in\bigcap_nF_{u_n}$ なので $P(x)=z$ である。
逆。コンパクト空間の連続像はコンパクトであり(コンパクト空間)、空でない空間の像は空でない。
$X$ が 1 点や有限集合のときも、$k_u=1$ を許して同じ構成が働く。$\square$
この定理は、コンパクト距離化可能空間が「Cantor 空間を貼り合わせて得られる」ことを意味する。Cantor立方体 の定理「コンパクトHausdorff空間は連続像」は重さ $\kappa$ の一般の場合に $\{0,1\}^\kappa$ の閉部分空間からの全射を与えるが、可算の場合には thm-cantor-space-compact-image のとおり $\mathcal C$ 全体からの全射がとれる。仮定の「空でない」は外せない。空でない空間から空集合への写像はないからである。
コンパクト性を外すと、$\mathcal C$ 全体からの連続な全射はもはや存在しない(像がコンパクトになってしまう)。しかし定義域を $\mathcal C$ の部分集合にまで広げれば、可分距離空間がすべて現れる。
$X$ を空でない可分な距離空間(可分空間)とする。このとき、$\mathcal C$ の部分集合 $A$ と、$A$ から $X$ への連続な全射が存在する。逆に、$\mathcal C$ の部分集合の連続像で距離化可能なものは可分である。
可算な稠密集合を列 $(c_j)_{j\in\mathbb N}$ に並べる(有限なら同じ点を繰り返す)。自然数列の空間 $\mathcal N=\mathbb N^{\mathbb N}$(Baire空間(記述集合論))の部分集合 $$B:=\{\alpha\in\mathcal N\mid \text{ある }z\in X\text{ がすべての }n\text{ で }d(c_{\alpha(n)},z)\le2^{-n}\text{ を満たす}\}$$ を考え、$\alpha\in B$ にこの $z$ を対応させる写像を $F$ とする。$z,z'$ がともに条件を満たせば $d(z,z')\le2^{1-n}$ がすべての $n$ で成り立つので $z=z'$ であり、$F$ は定まる。各 $z\in X$ について、稠密性から $d(c_{\alpha(n)},z)< 2^{-n}$ となる $\alpha(n)$ を各 $n$ で選べるので、$F\colon B\to X$ は全射である。$\alpha,\alpha'\in B$ が最初の $n+1$ 項で一致すれば、$F(\alpha),F(\alpha')$ はどちらも $c_{\alpha(n)}$ から $2^{-n}$ 以内にあるので $d(F(\alpha),F(\alpha'))\le2^{1-n}$ であり、$F$ は連続である。$X$ の完備性は使っていない。$X$ の中に実際に極限をもつ列だけを $B$ に入れたからである。
Baire空間(記述集合論) の命題「Cantor 空間の中の $\mathcal{N}$」により、$\alpha\mapsto0^{\alpha(0)}1\,0^{\alpha(1)}1\cdots$ で定まる写像 $h$ は $\mathcal N$ から $\mathcal C$ の部分集合($1$ を無限個含む列の全体)への同相写像である。$A:=h(B)$ とおけば、$F\circ h^{-1}|_A\colon A\to X$ が求める連続な全射である。
逆:$\mathcal C$ は可算な開基をもつので、その部分集合 $A$ も可算な開基をもち可分である。可分空間の連続像は、稠密集合の像が稠密なので可分である。$\square$
定義域 $A$ を閉集合やコンパクト集合に強めることはできない。$\mathcal C$ の閉集合はコンパクトなので、その連続像もコンパクトになり、$\mathbb R$ や $\mathbb Q$ のようなコンパクトでない空間は現れないからである。
$X$ をコンパクトな距離化可能空間とし、完全不連結とする。このとき $X$ の各点 $x$ と、$x$ を含む開集合 $O$ について、$x\in C\subset O$ となる開閉集合 $C$ がある。すなわち開閉集合の全体は $X$ の開基をなす。
これはコンパクト Hausdorff 空間についての 完全不連結空間 の系「局所コンパクトな完全不連結空間は零次元」の特別な場合である。距離を使うと、次のように直接示せる。
$X$ に距離 $d$ を固定する。$\varepsilon>0$ について、$y,z\in X$ が「$y=y_0,y_1,\dots,y_m=z$ で各 $d(y_{j},y_{j+1})< \varepsilon$ となる有限列($\varepsilon$-鎖)で結べる」ことを $y\sim_\varepsilon z$ と書く。これは同値関係である。各同値類は、その各点を中心とする半径 $\varepsilon$ の開球を含むので開集合であり、補集合も他の同値類の和として開集合なので、各同値類は開閉集合である。鎖の途中の点も同じ同値類に属する。
$x$ の $\sim_{2^{-n}}$ による同値類を $C_n$ とする。$2^{-(n+1)}$-鎖は $2^{-n}$-鎖でもあるので $C_0\supset C_1\supset\cdots$ であり、各 $C_n$ はコンパクト空間の閉集合としてコンパクトである。$F:=\bigcap_nC_n$ とおく。
$F$ は連結である。そうでないとすると、$F$ は空でない二つの交わらない相対開集合 $A,B$ の和である。$A,B$ は閉集合 $F$ の相対閉集合なのでコンパクトであり、$\delta:=\min\{d(a,b)\mid a\in A,b\in B\}>0$ である。$U:=\{z\mid d(z,A)< \delta/3\}$、$V:=\{z\mid d(z,B)< \delta/3\}$ とおくと、$u\in U$、$v\in V$ について三角不等式から $d(u,v)>\delta/3$ である。コンパクト集合の減少列 $C_n\setminus(U\cup V)$ の共通部分は $F\setminus(U\cup V)=\emptyset$ なので、ある番号から先で $C_n\setminus(U\cup V)=\emptyset$ となる(空でないコンパクト集合の減少列の共通部分は空でない)。そのような $n$ で $2^{-n}< \delta/3$ となるものをとる。$a\in A$ と $b\in B$ は $C_n$ に属するので $2^{-n}$-鎖で結べ、鎖の点はすべて $C_n\subset U\cup V$ にある。鎖は $U$ から始まり $V$ で終わるので、$U$ の点から $V$ の点へ移る一歩があるが、その長さは $\delta/3$ を超え、$2^{-n}$ 未満であることに反する。
結論。$F$ は $x$ を含む連結集合なので、完全不連結性から $F=\{x\}$ である。$O$ を $x$ を含む開集合とすると、コンパクト集合の減少列 $C_n\setminus O$ の共通部分は $\{x\}\setminus O=\emptyset$ なので、ある $n$ で $C_n\subset O$ となる。この $C_n$ が求める開閉集合である。$\square$
コンパクトな距離化可能空間 $X$ について、次は同値である。
1 ⇒ 2 は lem-cantor-space-clopen-base である。
2 ⇒ 3:距離 $d$ を固定する。各 $n\ge1$ について、半径 $1/n$ の開球の有限個で $X$ が覆えるので、それらの開球を $n$ にわたって集めた可算族は開基である。よって $X$ の重さは $\aleph_0$ 以下であり、Cantor立方体 の補題「開閉集合の開基の大きさ」($\kappa=\aleph_0$)により、開閉集合からなる可算な開基 $\{B_k\}_{k\in\mathbb N}$ がある(有限個しかなければ同じものを繰り返す)。$X$ は距離空間なので $T_0$ であり、Baire空間(記述集合論) の命題「零次元空間の埋め込み」により、$e(x)_k:=1\ (x\in B_k)$、$e(x)_k:=0\ (x\notin B_k)$ で定まる $e\colon X\to\mathcal C$ は像への同相写像である。像 $e(X)$ はコンパクトなので、Hausdorff 空間 $\mathcal C$ の閉集合である。
3 ⇒ 1:$\mathcal C$ は完全不連結であり(prop-cantor-space-basic の 5)、完全不連結性は部分空間に遺伝する(完全不連結空間 の命題「部分空間への遺伝」)。$\square$
2 と 3 の同値は、Cantor立方体 の系「0次元コンパクト空間」の $\kappa=\aleph_0$ の場合でもある。本記事で新しいのは 1 との同値、すなわち距離化可能なコンパクト空間では「連結な部分集合が 1 点しかない」という弱そうな条件が開閉集合の豊富さを導くことである。コンパクト性を外すと 1 ⇒ 2 は成り立たない(完全不連結空間 の表の Erdős の空間)。
空でないコンパクトな距離化可能空間 $X$ が、完全不連結で孤立点をもたないならば、$X$ は $\mathcal C$ と同相である。逆に $\mathcal C$ はこれらの性質をすべてもつ。
証明の考え方:thm-cantor-space-closed-embed で $X$ を $\mathcal C$ の閉集合 $F$ と見なす。$F$ の点の座標のうち、最初に値が揃わない座標で $F$ を二つに分け、各部分を同じ規則で分け続ける。孤立点がないので、どの部分も分け続けられる。こうして $F$ 自身の中に完全な二分木が現れる。
逆の主張は prop-cantor-space-basic の 2〜5 である。
thm-cantor-space-closed-embed により、$X$ は $\mathcal C$ の閉集合 $F$ と同相である。$F$ は空でなくコンパクトで、同相写像は孤立点を保つので、$F$ は孤立点をもたない。
分割。有限列 $u\in\{0,1\}^{< \mathbb N}$ ごとに、$F$ の空でない相対開閉集合 $F_u$ を帰納的に定める。$F_\emptyset:=F$ とする。$F_u$ が定まったとき、$F_u$ は孤立点をもたない空間 $F$ の空でない開集合なので 2 点以上を含む(1 点 $\{y\}$ なら $y$ は $F$ の孤立点になる)。よって $F_u$ の上で一定でない座標があり、その最小のものを $k_u$ とする。
$$F_{u0}:=\{y\in F_u\mid y_{k_u}=0\},\qquad F_{u1}:=\{y\in F_u\mid y_{k_u}=1\}$$
とおく。これらは空でなく、互いに交わらず、和が $F_u$ であり、$F$ の相対開閉集合である。
直径。$k_u$ の最小性から、$F_u$ の点は座標 $0,\dots,k_u-1$ で一致し、子 $F_{ui}$ の点は座標 $0,\dots,k_u$ で一致する。したがって $k_{ui}>k_u$ であり、帰納法で $k_u\ge|u|$ が成り立つ。よって長さ $n\ge1$ の $u$ について、$F_u$ の点は座標 $0,\dots,n-1$ で一致し、prop-cantor-space-basic の距離で $F_u$ の直径は $2^{-n}$ 以下である。
写像。$b\in\mathcal C$ について、$F_{b|0}\supset F_{b|1}\supset\cdots$ は空でないコンパクト集合(コンパクト集合 $F$ の閉集合)の減少列で、直径が $0$ に近づくので、共通部分はちょうど 1 点である。それを $\psi(b)$ とおく。$b\neq b'$ で $n=n(b,b')$ なら、$F_{b|(n+1)}$ と $F_{b'|(n+1)}$ は同じ $F_{b|n}$ の二つの子で交わらないので、$\psi(b)\neq\psi(b')$ である。$y\in F$ について、各段で $y$ を含む子はちょうど一つなので、それをたどる $b$ について $\psi(b)=y$ である。$b,b'$ が最初の $n$ 項で一致すれば $\psi(b),\psi(b')\in F_{b|n}$ なので距離は $2^{-n}$ 以下であり、$\psi$ は連続である。
以上で $\psi\colon\mathcal C\to F$ は連続な全単射であり、コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全単射なので同相写像である(同相写像 の定理「コンパクト空間からHausdorff空間への連続全単射は同相」)。$X\cong F\cong\mathcal C$ である。$\square$
次の空間はどれも $\mathcal C$ と同相である。
どれも空でなく、thm-cantor-space-brouwer の仮定を確かめればよい。
4 により、$\mathcal C$ と同相な $\mathbb R$ の部分集合でも Lebesgue 測度は $0$ とは限らない。Cantor 集合 $C$ の測度が $0$ であること(Cantor集合)は位相的な性質ではなく、実数直線への入り方による性質である。
thm-cantor-space-brouwer の五つの仮定は、どれも一つだけ外すと結論が崩れる。各行の空間は、外した仮定以外の四つをすべて満たす。
| 外す仮定 | 反例 | $\mathcal C$ と同相でない理由 |
|---|---|---|
| 空でない | 空集合 $\emptyset$ | $\mathcal C$ は空でない |
| コンパクト | 有理数の空間 $\mathbb Q$ | $\mathcal C$ はコンパクト |
| 孤立点がない | $L:=\{0\}\cup\{1/k\mid k\ge1\}\subset\mathbb R$ | $L$ は孤立点 $1/k$ をもつ |
| 完全不連結 | 閉区間 $[0,1]$ | $[0,1]$ は連結 |
| 距離化可能 | 非可算個の直積 $\{0,1\}^{\omega_1}$ | $\mathcal C$ は距離化可能 |
thm-cantor-space-compact-image と thm-cantor-space-brouwer の違いは、連続な全射が保つ性質と同相写像が保つ性質の違いでもある。
| 性質 | 連続な全射(最後の行は同相写像)で保たれるか | 反例・理由 |
|---|---|---|
| コンパクト | 保たれる | 像の開被覆を引き戻して有限部分被覆をとる |
| 連結 | 保たれる | 像の分離を引き戻すと定義域の分離になる |
| 完全不連結 | 保たれない | $\beta\colon\mathcal C\to[0,1]$(prop-cantor-space-binary-fiber) |
| 孤立点がない | 保たれない | $\mathcal C$ から 1 点への定値写像 |
| $\mathbb R$ の中で Lebesgue 測度 $0$ | 同相でも保たれない | $C\cong\mathcal C\cong K$(cor-cantor-space-models の 4) |
$\beta\circ q^{-1}\colon C\to[0,1]$ は、内部が空の集合 $C$ の像が内部をもつ例でもある。連続な全射が完全不連結性も孤立点のなさも保たないからこそ、Alexandroff–Hausdorff の定理は連結な空間や孤立点をもつ空間を含むあらゆるコンパクト距離空間に届く。
本記事の四つの定理は、どれも「Cantor 空間は普遍的である」という言い方でまとめられることがあるが、仮定と結論の強さはそれぞれ違う。
| 空間 $X$ の仮定 | $\mathcal C$ の側 | 写像 | 定理 |
|---|---|---|---|
| 空でない可分距離空間 | 部分集合 | 連続な全射 | thm-cantor-space-separable-image |
| 空でないコンパクト距離空間 | 全体 | 連続な全射 | thm-cantor-space-compact-image |
| コンパクト距離化可能、完全不連結 | 閉集合 | 同相写像 | thm-cantor-space-closed-embed |
| 空でなく、コンパクト距離化可能、完全不連結、孤立点なし | 全体 | 同相写像 | thm-cantor-space-brouwer |
どの行でも、結論から仮定が逆に従う(可分性・コンパクト性・完全不連結性・孤立点のなさは、それぞれの写像で $\mathcal C$ の側から移る)ので、各行は対応する空間のクラスの特徴づけになっている。四つの主張は GO03 第 8 章 Example 14 にまとめて述べられている。
逆向きに、$\mathcal C$ はどの「大きな」空間にも入っている。孤立点をもたない空でない完備距離空間には、$\mathcal C$ から像への同相写像になる連続な単射がある(孤立点 の定理「完全集合への Cantor 集合の埋め込み」。可分な場合は Mos09 系 1A.3)。とくに $\mathbb R$ の非可算な閉集合は $\mathcal C$ と同相な部分集合を含む(Cantor–Bendixsonの定理)。$\mathcal C$ はまた、記述集合論で Borel階層 が有限の段で止まらないことを示す舞台にもなる。
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