2次形式と2次曲線の判別式は、2 変数の 2 次形式 $q=ax^2+bxy+cy^2$ の判別式 $D=b^2-4ac$ を扱う。$D<0$ なら $q$ は原点以外で $a$ と同じ符号(定値)、$D=0$ なら 1 次式の 2 乗の定数倍、$D>0$ なら 2 つの 1 次式の積で正負両方の値をとる。$x=\alpha X+\beta Y$、$y=\gamma X+\delta Y$ と置き換えると判別式は $(\alpha\delta-\beta\gamma)^2$ 倍になり、回転では変わらない。2 次曲線では、2 次の部分の判別式の符号が漸近方向の本数 0・1・2 を決め、楕円・放物線・双曲線の区別に対応する。整数係数なら $D$ を 4 で割った余りは 0 か 1 で、同値な形式は判別式が等しいが、逆は成り立たない($x^2+5y^2$ と $2x^2+2xy+3y^2$)。
前提知識: 2次方程式の判別式の正体, 2次曲線, 整数
高校では、「$x^2+xy+y^2\ge0$ を示せ」のような問題を、$x$ の 2 次式とみて判別式を使って解くことがある。1 変数の 2 次方程式の判別式 $b^2-4ac$ と同じ式が、2 つの文字を含む式 $ax^2+bxy+cy^2$ にも現れる。この記事では、この 2 変数の判別式が何を判定しているのかを調べる。
$q(x,y)=x^2+xy+y^2$ とする。
平方完成すると
$$
x^2+xy+y^2=\left(x+\frac y2\right)^2+\frac34y^2
$$
である(右辺を展開すると $x^2+xy+\dfrac{y^2}4+\dfrac34y^2=x^2+xy+y^2$)。2 つの 2 乗の和なので $0$ 以上で、$0$ になるのは $y=0$ かつ $x+\dfrac y2=0$、つまり $x=y=0$ のときだけである。
$x$ の 2 次式 $x^2+y\cdot x+y^2$ とみると、判別式は $y^2-4\cdot1\cdot y^2=-3y^2$ である。$y\ne0$ なら負なので、$x^2$ の係数 $1$ が正であることと合わせて、どの $x$ でも値は正である。1 変数の判別式 $1^2-4\cdot1\cdot1=-3$ が、ちょうど $y^2$ の係数になっている。
図 1 は、3 つの式の値が正の部分(赤)と負の部分(青)、値が $0$ になる直線(緑)を描いたものである。
図1:3 つの 2 次形式の符号。左から判別式 1(2 本の直線で正負に分かれる)、0(1 本の直線上だけ 0)、−3(原点以外で正。灰色は値が 1, 3, 6 の曲線)
3 つの例では、$b^2-4ac$ が負・$0$・正のときに、式の値の様子が「原点以外で正」「$0$ 以上で直線上だけ $0$」「正にも負にもなる」と分かれている。この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| $x$ の 2 次式とみて判別式を使う | 2 次形式の判別式 | 2次形式の判別式(行列式の $-4$ 倍) |
| 2 乗の和に直して $\ge0$ を示す | 正定値・負定値・不定 | 2 次形式の符号数 |
| 回転して $xy$ の項を消す | 変数変換で判別式は(行列式)$^2$ 倍 | 判別式の不変性 |
| 楕円・放物線・双曲線 | 値が $0$ になる向きの本数 | 2 次曲線の分類 |
| $x^2+y^2$ で表せる整数 | 整数の 2 次形式の同値 | Gauss の 2 次形式の理論 |
実数 $a,b,c$($(a,b,c)\ne(0,0,0)$。どれか 1 つが $0$ でなければよい)について、$x,y$ の式
$$
q(x,y)=ax^2+bxy+cy^2
$$
を(2 変数の)2 次形式 といい、
$$
D:=b^2-4ac
$$
をその 判別式 という。また、
2 次形式は、どの項も $x,y$ について 2 次である式である(1 次の項や定数項がない)。$x$ と $y$ を同時に $t$ 倍すると、値は $t^2$ 倍になる。
| 2 次形式 | $a$ | $b$ | $c$ | $D=b^2-4ac$ |
|---|---|---|---|---|
| $x^2+y^2$ | $1$ | $0$ | $1$ | $-4$ |
| $x^2+xy+y^2$ | $1$ | $1$ | $1$ | $-3$ |
| $x^2-y^2$ | $1$ | $0$ | $-1$ | $4$ |
| $2x^2+3xy-2y^2$ | $2$ | $3$ | $-2$ | $9+16=25$ |
| $3xy+2y^2$ | $0$ | $3$ | $2$ | $9$ |
| $x^2+5y^2$ | $1$ | $0$ | $5$ | $-20$ |
| $2x^2+2xy+3y^2$ | $2$ | $2$ | $3$ | $4-24=-20$ |
$2x^2+3xy-2y^2=(2x-y)(x+2y)$、$3xy+2y^2=y(3x+2y)$ のように、判別式が正の例は 1 次式の積に分解できている。
1 変数の 2 次式との関係は次のとおりである。$y\ne0$ のとき $t=\dfrac xy$ とおくと
$$
q(x,y)=y^2\left(a\left(\frac xy\right)^2+b\,\frac xy+c\right)=y^2\,(at^2+bt+c)
$$
となる。つまり 2 次形式の判別式は、1 変数の 2 次式 $at^2+bt+c$ の判別式そのものである。$at^2+bt+c=0$ の実数解 $t$ は、$q$ が $0$ になる直線 $x=ty$ の傾き(の逆数)を与える。
2 次形式 $q=ax^2+bxy+cy^2$ は、対称行列 $A=\begin{pmatrix}a&b/2\\ b/2&c\end{pmatrix}$ を使って
$$
q(x,y)=\begin{pmatrix}x&y\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a&b/2\\ b/2&c\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\ y\end{pmatrix}
$$
と書ける。$A$ の行列式は $ac-\dfrac{b^2}4=-\dfrac D4$ なので、$D=-4\det A$ である。整数論の文献では $b^2-4ac$ を判別式と呼ぶのが伝統であり、一般の $n$ 変数の 2 次形式では行列式のほうを判別式と呼ぶ流儀もあるので、どちらの意味かを確かめる必要がある(Cla15 §15.4)。Gauss は $ax^2+2bxy+cy^2$ の形で考え、$b^2-ac$ を形式の「行列式」(determinans)と呼んだ(Gau01 第 154 条)。
$q(x,y)=ax^2+bxy+cy^2$ を実数係数の 2 次形式とし、$D=b^2-4ac$ とする。
方針:$a\ne0$ のときは、次の恒等式を使う。
$$
4a\,q(x,y)=(2ax+by)^2-D\,y^2\qquad(\ast)
$$
(右辺を展開すると $4a^2x^2+4abxy+b^2y^2-b^2y^2+4acy^2=4a(ax^2+bxy+cy^2)$ である。)$a=0$ のときは直接調べる。3 つの結論(定値、符号が一定で原点以外でも $0$ になる、不定)は互いに両立しないので、「$D$ の符号 ⇒ 結論」を示せば、1 と 3 の逆向きが従う(2次方程式の判別式の正体 の主定理 2 と同じ論法、段 5)。2 の逆向き「1 次式の 2 乗の定数倍 ⇒ $D=0$」は係数を直接計算して示す(段 6)。
段 1($D<0$ の場合)。$D=b^2-4ac<0$ なら $4ac>b^2\ge0$ なので $a\ne0$ である。$(\ast)$ の右辺は $(2ax+by)^2+(-D)y^2$ で、$-D>0$ なので $0$ 以上である。右辺が $0$ になるのは $y=0$ かつ $2ax+by=0$、つまり $y=0$ かつ $x=0$ のときだけである。よって $(x,y)\ne(0,0)$ なら $4a\,q(x,y)>0$ であり、$q(x,y)$ は $a$ と同じ符号をもつ。
段 2($D=0$、$a\ne0$ の場合)。$(\ast)$ から $q(x,y)=\dfrac{(2ax+by)^2}{4a}=a\left(x+\dfrac b{2a}y\right)^2$ で、1 次式の 2 乗の定数倍である。値は $a$ と同じ符号か $0$ で、$0$ になるのは直線 $2ax+by=0$ の上である。
段 3($D>0$、$a\ne0$ の場合)。$d=\sqrt D>0$ とすると、$(\ast)$ は和と差の積に分解できて
$$
4a\,q(x,y)=\bigl(2ax+(b-d)y\bigr)\bigl(2ax+(b+d)y\bigr)
$$
である。2 つの 1 次式は $y$ の係数が $b-d\ne b+d$ で $x$ の係数が同じなので、比例しない。したがって $q$ は 2 本の異なる直線の上で $0$ になる。符号については、
$$
q(1,0)=a,\qquad q(-b,2a)=ab^2-2ab^2+4a^2c=-a(b^2-4ac)=-aD
$$
で、$D>0$ なので $q(1,0)$ と $q(-b,2a)$ は符号が逆である。よって $q$ は不定である。
段 4($a=0$ の場合)。$D=b^2\ge0$ なので $D<0$ にはならない。$D=0$ なら $b=0$ で、$(a,b,c)\ne(0,0,0)$ より $c\ne0$ なので、$q=cy^2$ は 1 次式 $y$ の 2 乗の定数倍であり、直線 $y=0$ の上でだけ $0$ になる。$D>0$ なら $b\ne0$ で、$q=y(bx+cy)$ は比例しない 2 つの 1 次式の積である。$y=1$ とおくと $q(x,1)=bx+c$ は、$x$ を大きくしたときと小さくしたときで符号が逆になるので、$q$ は不定である。
段 5(1 と 3 の逆向き)。「定値」「いつも $0$ 以上(またはいつも $0$ 以下)で、原点以外の点でも $0$ になる」「不定」の 3 つは、どの 2 つも同時には成り立たない。段 1〜4 で $D<0,\ D=0,\ D>0$ のそれぞれからこの順に結論が出た。したがって、$q$ が定値なら、$D=0$ だと原点以外の点で $0$ になり、$D>0$ だと不定になって、どちらも矛盾するので $D<0$ である。$q$ が不定なら、$D<0$ だと定値、$D=0$ だといつも $0$ 以上かいつも $0$ 以下になって、どちらも矛盾するので $D>0$ である。
段 6(2 の逆向き)。$q$ が 1 次式の 2 乗の定数倍、つまり $q=k(ux+vy)^2$($k\ne0$、$(u,v)\ne(0,0)$)と書けるとする。展開すると
$$
q=ku^2x^2+2kuv\,xy+kv^2y^2
$$
なので $a=ku^2$、$b=2kuv$、$c=kv^2$ であり、
$$
D=(2kuv)^2-4\cdot ku^2\cdot kv^2=4k^2u^2v^2-4k^2u^2v^2=0
$$
である。$\square$
thm-fdsc-sign の 1 は、$D<0$、$a>0$ の 2 次形式が $\dfrac1{4a}\bigl((2ax+by)^2+(-D)y^2\bigr)$ という「2 つの 2 乗の正の数倍の和」に書けることを示している。高校で $x^2+xy+y^2\ge0$ を平方完成で示したのは、この特別な場合である。不等式への応用は 判別式で示す不等式 で扱う。同じ考え方(いつも $0$ 以上の 2 次式は判別式が $0$ 以下)は、Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学) の証明でも使う。正定値かどうかの判定は、行列の言葉で 2次曲線と2次形式 でも扱う。
2 次曲線を回転したり、整数の組を別の整数の組に取り替えたりするとき、2 次形式の変数を 1 次式で置き換える。そのとき判別式がどう変わるかを調べる。まず例を見る。
$q(x,y)=ax^2+bxy+cy^2$ に、実数 $\alpha,\beta,\gamma,\delta$ を使って
$$
x=\alpha X+\beta Y,\qquad y=\gamma X+\delta Y
$$
を代入した式を $q'(X,Y)=a'X^2+b'XY+c'Y^2$ とする。このとき
$$
b'^2-4a'c'=(\alpha\delta-\beta\gamma)^2\,(b^2-4ac)
$$
である。
方針:$a',b',c'$ を $a,b,c$ と $\alpha,\beta,\gamma,\delta$ で書き、$b'^2-4a'c'$ を $a^2,b^2,c^2,ab,ac,bc$ の係数ごとに整理する。
段 1(新しい係数)。$q(\alpha X+\beta Y,\ \gamma X+\delta Y)$ を展開して $X^2$、$XY$、$Y^2$ の係数を集める。$(\alpha X+\beta Y)^2$ は $\alpha^2X^2+2\alpha\beta XY+\beta^2Y^2$、$(\alpha X+\beta Y)(\gamma X+\delta Y)$ は $\alpha\gamma X^2+(\alpha\delta+\beta\gamma)XY+\beta\delta Y^2$、$(\gamma X+\delta Y)^2$ は $\gamma^2X^2+2\gamma\delta XY+\delta^2Y^2$ なので
$$
a'=a\alpha^2+b\alpha\gamma+c\gamma^2,\qquad b'=2a\alpha\beta+b(\alpha\delta+\beta\gamma)+2c\gamma\delta,\qquad c'=a\beta^2+b\beta\delta+c\delta^2
$$
である。
段 2(係数ごとに比べる)。$b'^2$ と $4a'c'$ を展開し、$a,b,c$ の 2 次の単項式ごとに係数を並べる。
| 単項式 | $b'^2$ での係数 | $4a'c'$ での係数 | 差 |
|---|---|---|---|
| $a^2$ | $4\alpha^2\beta^2$ | $4\alpha^2\beta^2$ | $0$ |
| $c^2$ | $4\gamma^2\delta^2$ | $4\gamma^2\delta^2$ | $0$ |
| $b^2$ | $(\alpha\delta+\beta\gamma)^2$ | $4\alpha\beta\gamma\delta$ | $(\alpha\delta-\beta\gamma)^2$ |
| $ab$ | $4\alpha\beta(\alpha\delta+\beta\gamma)$ | $4(\alpha^2\beta\delta+\alpha\beta^2\gamma)$ | $0$ |
| $bc$ | $4\gamma\delta(\alpha\delta+\beta\gamma)$ | $4(\alpha\gamma\delta^2+\beta\gamma^2\delta)$ | $0$ |
| $ac$ | $8\alpha\beta\gamma\delta$ | $4(\alpha^2\delta^2+\beta^2\gamma^2)$ | $-4(\alpha\delta-\beta\gamma)^2$ |
各行の求め方は次のとおりである。
$\alpha\delta-\beta\gamma$ は、置き換えの係数を並べた行列 $\begin{pmatrix}\alpha&\beta\\ \gamma&\delta\end{pmatrix}$ の行列式である。ex-fdsc-substitution の (1) では $-2$、(2) では $1$ だった。行列式が図形の面積を何倍にするかを表すことは 1次変換と行列式:面積の拡大率 で、回転を行列で表すことは 回転・鏡映と行列の群 で扱う。この定理は、Gauss が整数の 2 次形式について示した関係(Gau01 第 157 条)と同じものである。
1 では $\alpha=\cos\theta$、$\beta=-\sin\theta$、$\gamma=\sin\theta$、$\delta=\cos\theta$ なので、$\alpha\delta-\beta\gamma=\cos^2\theta+\sin^2\theta=1$ である。2 では $(\alpha\delta-\beta\gamma)^2=1$ である。どちらも thm-fdsc-invariance により $b'^2-4a'c'=b^2-4ac$ である。$\square$
$\theta=45^\circ$ では $x=\dfrac{X-Y}{\sqrt2}$、$y=\dfrac{X+Y}{\sqrt2}$ である。
(1) $x^2-y^2=\dfrac{(X-Y)^2-(X+Y)^2}2=\dfrac{-4XY}2=-2XY$。判別式は $4$ のままである($0^2-4\cdot1\cdot(-1)=4$、$(-2)^2-0=4$)。
(2) $5x^2-6xy+5y^2$ は、$x^2=\dfrac{X^2-2XY+Y^2}2$、$xy=\dfrac{X^2-Y^2}2$、$y^2=\dfrac{X^2+2XY+Y^2}2$ を代入して
$$
\frac{5(X^2-2XY+Y^2)-6(X^2-Y^2)+5(X^2+2XY+Y^2)}2=\frac{4X^2+16Y^2}2=2X^2+8Y^2
$$
となる。判別式は $36-100=-64$ から $0-4\cdot2\cdot8=-64$ で、変わらない。回転で $xy$ の項が消えても、判別式は $-4\times2\times8$ として残る。
$x,y$ の 2 次方程式
$$
ax^2+bxy+cy^2+dx+ey+f=0\qquad\bigl((a,b,c)\ne(0,0,0)\bigr)
$$
が表す図形を 2 次曲線 という。その 2 次の部分 $q(x,y)=ax^2+bxy+cy^2$ の判別式が、曲線の形の大まかな種類を決める。鍵は、直線と曲線の交わりを調べたときに現れる 2 次の係数である。
$F(x,y)=q(x,y)+dx+ey+f$、$q(x,y)=ax^2+bxy+cy^2$ とし、点 $(x_0,y_0)$ を通り向き $(u,v)\ne(0,0)$ の直線 $(x,y)=(x_0+tu,\ y_0+tv)$ を考える。
方針:1 は展開して $t^2$ の項だけを集める。2 は thm-fdsc-sign で $q=0$ となる点の集合を読む。
段 1。$t^2$ を含む項は $q$ の部分からしか出ない($dx+ey+f$ は $t$ について 1 次以下)。
$$
a(x_0+tu)^2,\qquad b(x_0+tu)(y_0+tv),\qquad c(y_0+tv)^2
$$
の $t^2$ の係数はそれぞれ $au^2$、$buv$、$cv^2$ なので、合計は $au^2+buv+cv^2=q(u,v)$ である。
段 2。$q(u,v)=0$ となる $(u,v)\ne(0,0)$ の集合は、thm-fdsc-sign により、$D<0$ なら空(定値なので原点以外で $0$ にならない)、$D=0$ なら原点を通る 1 本の直線から原点を除いたもの、$D>0$ なら原点を通る 2 本の直線から原点を除いたものである。向きとしては、それぞれ $0$ 本、$1$ 本、$2$ 本である。$\square$
ここで「接する」の意味を決めておく。放物線 $y=ax^2+bx+c$ と直線 $y=mx+k$ については、「接する(傾きが導関数の値に等しい)⇔ 連立した 2 次方程式が重解をもつ」を 2次方程式の判別式の正体 で証明した。一般の 2 次曲線(楕円・双曲線など)については、高校の教科書と同じく、直線を代入した $t$ の方程式が本当の 2 次方程式で、重解をもつこと を「直線が 2 次曲線に接する」の意味として使う。微分で定める接線(陰関数の接線)とこの意味が一致することは、この記事では証明しない。
この意味で、$q(u,v)\ne0$ の向きの直線では、交点の $t$ は本当の 2 次方程式の解なので、「接する ⇔ 重解 ⇔ その 2 次方程式の判別式が $0$」となる(後の 2 つの同値は 2次方程式の判別式の正体 の、判別式が $0$ と重解が同値であることによる)。$q(u,v)=0$ の向きでは $t$ の方程式は 1 次以下になり、交点が 1 つでも接しているとはいわない。この特別な向きを 漸近方向 と呼ぶ。
楕円 $\dfrac{x^2}4+y^2=1$ の 2 次の部分は $\dfrac14x^2+y^2$ で、$D=0-4\cdot\dfrac14\cdot1=-1<0$ なので漸近方向はない。直線 $y=x+k$ を代入して $4$ 倍すると
$$
x^2+4(x+k)^2-4=5x^2+8kx+4k^2-4=0
$$
である。$x^2$ の係数 $5$ は $4\,q(1,1)=4\cdot\dfrac54$ である。判別式を $4$ で割ると
$$
\frac{D_1}4=(4k)^2-5(4k^2-4)=20-4k^2
$$
なので、直線が接するのは $k^2=5$、つまり $k=\pm\sqrt5$ のとき、2 点で交わるのは $|k|<\sqrt5$、交わらないのは $|k|>\sqrt5$ のときである。$k=\sqrt5$ の接点は重解 $x=-\dfrac{4\sqrt5}5$、$y=x+\sqrt5=\dfrac{\sqrt5}5$ で、$\dfrac{x^2}4+y^2=\dfrac{16}{20}+\dfrac15=1$ である。$k=1$ では $5x^2+8x=0$ から $x=0,\ -\dfrac85$ の 2 点で交わる。
図2:楕円 x²/4 + y² = 1 と傾き 1 の直線 y = x + k。k = ±√5 で接し、|k| < √5 で 2 点で交わる
双曲線 $x^2-y^2=1$ の 2 次の部分 $x^2-y^2$ は $D=4>0$ で、$q(u,v)=u^2-v^2=0$ となる向きは $(1,1)$ と $(1,-1)$ の 2 本である。これは漸近線 $y=\pm x$ の向きである。
(1) 直線 $y=x+1$(漸近方向):代入すると $x^2-(x+1)^2=1$、つまり $-2x-1=1$ で、$x^2$ の項が消えて 1 次方程式になる。交点は $x=-1$、$(x,y)=(-1,0)$ の 1 つだけだが、直線は双曲線を横切っていて接していない。
(2) 直線 $y=2x+\sqrt3$(漸近方向でない):代入すると
$$
x^2-(2x+\sqrt3)^2-1=-3x^2-4\sqrt3\,x-4=0
$$
で、$\dfrac{D_1}4=(2\sqrt3)^2-3\cdot4=12-12=0$ なので接する。接点は $x=-\dfrac{2\sqrt3}3$、$y=2x+\sqrt3=-\dfrac{\sqrt3}3$ で、$x^2-y^2=\dfrac43-\dfrac13=1$ である。
図3:双曲線 x² − y² = 1 と漸近線 y = ±x。漸近線に平行な直線 y = x + 1 は 1 点で交わるが接しない。y = 2x + √3 は接する
楕円・放物線・双曲線を、漸近方向の本数で見ると次のようになる。
| 2 次の部分の判別式 | 漸近方向 | 曲線の種類(退化しない場合) |
|---|---|---|
| $D<0$ | なし | 楕円(円を含む) |
| $D=0$ | 1 本 | 放物線(軸の向きが漸近方向) |
| $D>0$ | 2 本 | 双曲線(漸近線の向き) |
放物線 $y=x^2$ では 2 次の部分が $x^2$($D=0$)で、漸近方向は $(0,1)$、つまり $y$ 軸の向きである。$y$ 軸に平行な直線 $x=1$ は放物線と 1 点 $(1,1)$ で交わるが、接していない(2次方程式の判別式の正体 の反例と同じ現象)。
表の「曲線の種類」は、回転で $xy$ の項を消し(cor-fdsc-rotation により判別式は変わらない)、平行移動で標準形に直すことで証明される。その証明と、$D<0$ でも点や空集合になる、$D>0$ でも 2 本の直線になるといった退化の場合の判定は 2次曲線と2次形式 にある。この記事で示したのは、prop-fdsc-directions の「漸近方向の本数が判別式の符号で決まる」ことまでである。
係数 $a,b,c$ が整数で、$x,y$ にも整数だけを入れる 2 次形式は、「どんな整数が $x^2+y^2$ の形に書けるか」のような整数の問題に現れる。ここでも判別式が基本的な量になる。同じ $x^2+y^2$ を、整数ではなく有理数の点について調べる話は ピタゴラス数と円の有理点 で扱う。
$a,b,c$ が整数なら、$D=b^2-4ac$ を $4$ で割った余りは $0$ か $1$ である。
方針:$4ac$ は $4$ の倍数なので、$D$ を $4$ で割った余りは $b^2$ を $4$ で割った余りに等しい。$b^2$ の余りを $b$ の偶奇で調べる。
段 1。$b$ が偶数なら $b=2m$($m$ は整数)と書けて、$b^2=4m^2$ の余りは $0$ である。
段 2。$b$ が奇数なら $b=2m+1$ と書けて、$b^2=4m^2+4m+1=4(m^2+m)+1$ の余りは $1$ である。$\square$
$x^2+y^2$ は $D=-4=4\cdot(-1)+0$ で余り $0$、$x^2+xy+y^2$ は $D=-3=4\cdot(-1)+1$ で余り $1$、$x^2-2y^2$ は $D=8$ で余り $0$、$x^2+xy-y^2$ は $D=1+4=5$ で余り $1$ である。たとえば判別式が $-1$ や $2$(余り $3$ や $2$)になる整数係数の 2 次形式はない。
整数の問題では、$x,y$ を整数から整数への置き換えで取り替えても、同じ整数が表せるようにしたい。そこで次のように定める。
$a,b,c$ が整数の 2 次形式を 整数係数の 2 次形式 という。整数 $\alpha,\beta,\gamma,\delta$ で $\alpha\delta-\beta\gamma=\pm1$ を満たすものを使って
$$
x=\alpha X+\beta Y,\qquad y=\gamma X+\delta Y
$$
を代入すると $q(x,y)$ が $q'(X,Y)$ になるとき、2 つの整数係数の 2 次形式 $q$ と $q'$ は 同値 であるという。また、整数 $x,y$ を使って $n=q(x,y)$ と書けるとき、$q$ は整数 $n$ を 表す という。
整数係数の 2 次形式 $q$ と $q'$ が同値なら、次が成り立つ。
方針:1 は thm-fdsc-invariance から出る。2 は、置き換えとその逆がどちらも整数の組を整数の組に写すことを使う。
段 1(判別式)。$\alpha\delta-\beta\gamma=\pm1$ なので $(\alpha\delta-\beta\gamma)^2=1$ であり、thm-fdsc-invariance により判別式は等しい。
段 2($q'$ が表す数は $q$ も表す)。$n=q'(X_0,Y_0)$($X_0,Y_0$ は整数)とする。$x_0=\alpha X_0+\beta Y_0$、$y_0=\gamma X_0+\delta Y_0$ は整数で、$q'$ の作り方から $q(x_0,y_0)=q'(X_0,Y_0)=n$ である。
段 3(逆の置き換え)。$e:=\alpha\delta-\beta\gamma=\pm1$ とし、整数 $x_0,y_0$ に対して
$$
X_0=e(\delta x_0-\beta y_0),\qquad Y_0=e(-\gamma x_0+\alpha y_0)
$$
とおく。これらは整数である。$e^2=1$ を使うと
$$
\alpha X_0+\beta Y_0=e\bigl((\alpha\delta-\beta\gamma)x_0\bigr)=e^2x_0=x_0,\qquad \gamma X_0+\delta Y_0=e\bigl((\alpha\delta-\beta\gamma)y_0\bigr)=e^2y_0=y_0
$$
である(たとえば 1 つ目は $e(\alpha\delta x_0-\alpha\beta y_0-\beta\gamma x_0+\alpha\beta y_0)$ を整理した)。
段 4($q$ が表す数は $q'$ も表す)。$n=q(x_0,y_0)$ とし、段 3 の $X_0,Y_0$ をとる。段 3 により $x_0=\alpha X_0+\beta Y_0$、$y_0=\gamma X_0+\delta Y_0$ なので、$q'(X_0,Y_0)=q(x_0,y_0)=n$ である。$\square$
prf-fdsc-equivalent の段 3 の逆の置き換え $X=e(\delta x-\beta y)$、$Y=e(-\gamma x+\alpha y)$ も整数係数で、その行列式は $e\delta\cdot e\alpha-(-e\beta)(-e\gamma)=e^2(\alpha\delta-\beta\gamma)=e^3=e=\pm1$ である。段 3 の計算から、これを $q'(X,Y)$ に代入すると $q(x,y)$ に戻る。したがって $q$ と $q'$ が同値なら $q'$ と $q$ も同値であり、同値は $q$ と $q'$ について対称な関係である。
$q=x^2+y^2$ に $x=X+Y$、$y=Y$($\alpha\delta-\beta\gamma=1\cdot1-1\cdot0=1$)を代入すると
$$
(X+Y)^2+Y^2=X^2+2XY+2Y^2
$$
である。判別式はどちらも $-4$($4-8=-4$)である。$5=1^2+2^2$ は、段 3 の逆の置き換え $X=x-y$、$Y=y$ で $(X,Y)=(-1,2)$ に対応し、実際 $1-4+8=5$ である。$30$ 以下で 2 つの形式が表す正の整数を数え上げると、どちらも
$$
1,2,4,5,8,9,10,13,16,17,18,20,25,26,29
$$
で一致する。
判別式が等しいことは同値であるための必要条件だが、十分条件ではない。
$q_1=x^2+5y^2$ と $q_2=2x^2+2xy+3y^2$ の判別式は、どちらも $-20$ である($0-20$、$4-24$)。しかし $q_1$ は $1=1^2+5\cdot0^2$ を表すが、$q_2$ は $1$ を表さない。実際、
$$
q_2(x,y)=(x+y)^2+x^2+2y^2
$$
(右辺を展開すると $2x^2+2xy+3y^2$)で、$q_2(x,y)=1$ となる整数 $x,y$ があるとすると、$2y^2\le1$ から $y=0$ で、$q_2=2x^2=1$ となる整数 $x$ はない。prop-fdsc-equivalent の 2 により、$q_1$ と $q_2$ は同値でない。
$30$ 以下で表す正の整数は、$q_1$ が $1,4,5,6,9,14,16,20,21,24,25,29,30$、$q_2$ が $2,3,7,8,10,12,15,18,23,27,28$ で、共通の数が 1 つもない。
$xy$ の係数 $b$ が偶数の正定値の整数係数の 2 次形式は、どれも $|b|\le a\le c$ を満たす形式と同値になることが知られている(Gauss による簡約の理論。この記事では証明しない。Gauss は形式を $ax^2+2Bxy+cy^2$ の形で扱っており、Gau01 第 171 条以降の簡約は $b=2B$ が偶数の場合の主張である)。$b$ が奇数の形式($x^2+xy+y^2$ など)でも同じ形の簡約が成り立つ(Lagrange による)が、ここでは扱わず、証明もしない。判別式 $D$ が $4$ の倍数なら、prf-fdsc-mod4 のとおり $b^2$ を $4$ で割った余りが $0$ なので $b$ は偶数であり、上の主張が使える。判別式 $-20$ でこの条件を満たすものを探すと、$4a^2\le4ac=b^2+20\le a^2+20$ から $a\le2$ で、$(a,b,c)=(1,0,5),(2,2,3),(2,-2,3)$ の 3 つである。$2x^2-2xy+3y^2$ は $x$ を $-x$ に替える置き換え($\alpha\delta-\beta\gamma=-1$)で $2x^2+2xy+3y^2$ になる。したがって、判別式 $-20$ の正定値な形式は $x^2+5y^2$ か $2x^2+2xy+3y^2$ のどちらかと同値で、ex-fdsc-not-equivalent によりこの 2 つは同値でない。判別式 $D<0$ を決めたとき、正定値で、係数 $a,b,c$ の最大公約数が $1$ である(原始的 である)形式を、同値なものどうしでまとめた組の個数を 類数 という。判別式 $-20$ の類数は $2$ である($x^2+5y^2$ と $2x^2+2xy+3y^2$ はどちらも係数の最大公約数が $1$)。負定値の形式($-x^2-5y^2$ など)や、係数に共通の約数をもつ形式を数えないのは、それらが正定値で原始的な形式から符号を変えたり、全体を整数倍したりして得られるからである。行列式 $+1$ の置き換えだけで同値を定める流儀もあり、そのときは数え方が変わることがある(判別式 $-20$ では、$2x^2-2xy+3y^2$ も $x=X+Y$、$y=Y$ という行列式 $1$ の置き換えで $2X^2+2XY+3Y^2$ になるので、どちらの流儀でも $2$ である)。
判別式が正の整数係数の形式は不定なので、正の数も負の数も表す。
$x^2-2y^2$ は $D=8>0$ である。$(x,y)=(1,0),(1,1),(3,2),(7,5),(17,12)$ での値は $1,-1,1,-1,1$ である。$x^2-2y^2=1$ の整数解は無数にあり、$(3+2\sqrt2)^2=17+12\sqrt2$ のように、$(3+2\sqrt2)^k$ を展開した $x+y\sqrt2$ の係数から次々に得られる(Pell方程式。この記事では証明しない)。
整数解が無数にあることは、定値($D<0$)の形式では起こらない。実際、定値な形式では $q(x,y)=n$ の整数解は有限個しかない。prf-fdsc-sign の $(\ast)$ から $4an=(2ax+by)^2+(-D)y^2$ で、右辺の 2 つの項はどちらも $0$ 以上なので、$y^2\le\dfrac{4an}{-D}$ と $(2ax+by)^2\le4an$ により $y$ と $x$ のとりうる範囲が限られるからである。一方、$D\ge0$ の形式では、整数解が無数にあることも有限個のこともある。
| 外した仮定・変えた条件 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| $a>0$ | $D<0$ なら正定値 | ex-fdsc-negative |
| 行列式が $\pm1$ の整数の置き換え | 判別式が変わらない | ex-fdsc-substitution (1) |
| 判別式だけで判定する | 判別式が等しければ同値 | ex-fdsc-not-equivalent |
| 漸近方向でない直線 | 交点が 1 つなら接する | ex-fdsc-hyperbola (1) |
| 定値($D<0$) | $q(x,y)=n$ の整数解は有限個 | ex-fdsc-solutions (1) |
| 退化しない 2 次曲線 | $D<0$ なら楕円 | ex-fdsc-degenerate |
$-x^2-y^2$ は $D=-4<0$ だが、$(x,y)\ne(0,0)$ でいつも負である。thm-fdsc-sign の 1 は「定値」を言うだけで、正か負かは $a$ の符号で決まる。「$D<0$ なら正」とは言えない。
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