三角形の面積の公式(formulas for the area of a triangle)とは、三角形の面積 $S$ を、分かっている量に応じて表す公式の総称である。辺の長さを $a,b,c$、$a$ の向かいの角を $A$、$s=\frac{a+b+c}{2}$、内接円と外接円の半径を $r,R$ とすると、$S=\frac12bc\sin A=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}=rs=\frac{abc}{4R}$ であり、原点と $(x_1,y_1)$、$(x_2,y_2)$ を頂点とする三角形では $S=\frac12|x_1y_2-x_2y_1|$ である。3 辺で表す式は Heron の公式と呼ばれ、三平方の定理だけで高さを求めて導ける。根号の中が正であることは三角不等式と同じで、4 辺の四角形では辺だけで面積は決まらない。
前提知識: 三角比と鈍角への拡張, 正弦定理(高校数学), 余弦定理(高校数学), 三平方の定理
三角形 $\mathrm{ABC}$ で、頂点 $\mathrm A,\mathrm B,\mathrm C$ の角の大きさを $A,B,C$、それぞれの向かいの辺の長さを $a=\mathrm{BC}$、$b=\mathrm{CA}$、$c=\mathrm{AB}$ と書く。面積を $S$、周の長さの半分を $s=\dfrac{a+b+c}2$ と書く。この記事では、この書き方を断りなく使う。
三角形の面積は、小学校で習うとおり「底辺 × 高さ ÷ 2」である。三角形を 2 つ並べると、同じ底辺と高さの平行四辺形になるからである(Euclid『原論』第 I 巻 命題 41。Hea56)。ところが、実際の問題では高さが直接分からないことが多い。
$\mathrm B(0,0)$、$\mathrm C(14,0)$、$\mathrm A(5,12)$ を頂点とする三角形では、底辺 $\mathrm{BC}=14$ は $x$ 軸の上にあり、高さは $\mathrm A$ の $y$ 座標 $12$ である。よって
$$
S=\frac12\cdot14\cdot12=84
$$
である。3 辺の長さは、2 点間の距離の公式で
$$
a=\mathrm{BC}=14,\qquad b=\mathrm{CA}=\sqrt{(14-5)^2+12^2}=\sqrt{225}=15,\qquad c=\mathrm{AB}=\sqrt{5^2+12^2}=\sqrt{169}=13
$$
である。この 3 辺 $13,14,15$ の三角形を、この記事では何度も使う。
3 辺が $4,5,6$ の三角形の面積はいくつだろうか。辺 $6$ を底辺にしても、向かいの頂点から下ろした垂線の長さはすぐには分からない。3 辺の長さだけから面積を出す方法が要る。答えは $S=\dfrac{15\sqrt7}4$ で、ex-taf-heron で求める。
2 つの例のように、「何が分かっているか」によって面積の求め方は変わる。この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 分かっている量 | 面積の公式 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 底辺 $a$ と高さ $h$ | $S=\dfrac12ah$ | 面積の定義 |
| 2 辺 $b,c$ と間の角 $A$ | $S=\dfrac12bc\sin A$ | 外積の大きさ |
| 3 辺 $a,b,c$ | $S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}$ | Cayley–Menger 行列式 |
| 内接円の半径 $r$ と $s$ | $S=rs$ | 面積を 3 つに分ける |
| 3 辺と外接円の半径 $R$ | $S=\dfrac{abc}{4R}$ | 正弦定理 |
| 頂点の座標 | $S=\dfrac12\lvert x_1y_2-x_2y_1\rvert$ | 行列式、符号付き面積 |
三角形 $\mathrm{ABC}$ について
$$
S=\frac12bc\sin A=\frac12ca\sin B=\frac12ab\sin C
$$
が成り立つ。
この公式は 正弦定理(高校数学) の系「面積と外接円の半径」でも示している。ここでは、高さの求め方に絞って証明を書く。
方針:辺 $\mathrm{AB}$ を底辺とし、頂点 $\mathrm C$ から直線 $\mathrm{AB}$ に下ろした垂線の長さ(高さ)$h$ が $b\sin A$ に等しいことを示す。$A$ が直角・鋭角・鈍角の 3 つの場合に分ける。
段 1(垂線の足)。$\mathrm C$ から直線 $\mathrm{AB}$ に下ろした垂線の足を $\mathrm H$ とし、$h=\mathrm{CH}$ とおく。底辺 $c$、高さ $h$ なので $S=\dfrac12ch$ である。
段 2($A=90^\circ$)。$\mathrm{CA}\perp\mathrm{AB}$ なので $\mathrm H=\mathrm A$ で、$h=\mathrm{CA}=b$ である。$\sin90^\circ=1$ なので $h=b\sin A$ である。
段 3($A$ が鋭角)。$\mathrm H\ne\mathrm A$ である($\mathrm H=\mathrm A$ なら $\mathrm{CA}\perp\mathrm{AB}$ で $A=90^\circ$ となる)。$\mathrm H$ は $\mathrm A$ から $\mathrm B$ の向きに延びる半直線の上にある。もし反対側にあれば、直角三角形 $\mathrm{AHC}$ の $\mathrm A$ での角は $180^\circ-A$ で鈍角になるが、直角三角形の直角でない角は鋭角なので、これは起こらない。よって直角三角形 $\mathrm{AHC}$ の $\mathrm A$ での角は $A$ で、斜辺は $\mathrm{CA}=b$ なので、三角比の定義から $h=b\sin A$ である。
段 4($A$ が鈍角)。段 3 と同じ理由で $\mathrm H\ne\mathrm A$ であり、今度は $\mathrm H$ は反対側の半直線の上にある(同じ側にあれば、直角三角形 $\mathrm{AHC}$ の $\mathrm A$ での角が鈍角の $A$ になってしまう)。直角三角形 $\mathrm{AHC}$ の $\mathrm A$ での角は $180^\circ-A$ なので、$h=b\sin(180^\circ-A)$ である。三角比と鈍角への拡張 の定理「$180^\circ-\theta$ と $90^\circ-\theta$ の三角比」により $\sin(180^\circ-A)=\sin A$ なので、$h=b\sin A$ である。
段 5(まとめ)。どの場合も $h=b\sin A$ なので、段 1 から $S=\dfrac12c\cdot b\sin A=\dfrac12bc\sin A$ である。頂点の名前を付け替えれば、残りの 2 つの式も同じように得られる。$\square$
2 辺 $b,c$ を固定して間の角 $A$ だけを動かすと、$\sin A\le1$ なので $S\le\dfrac12bc$ で、等号は $A=90^\circ$ のときに限る($0^\circ< A<180^\circ$ で $\sin A=1$ となるのは $A=90^\circ$ だけ)。たとえば $b=4$、$c=5$ なら、面積は $A=90^\circ$ のときの $10$ が最大で、$A=150^\circ$ では ex-taf-sine の (1) のとおり $5$、$A=30^\circ$ でも $5$ である。$A$ と $180^\circ-A$ で面積が同じになるのは、$\sin(180^\circ-A)=\sin A$ だからである。
3 辺が分かれば、余弦定理(高校数学) の系「3 辺で角が決まる」により角も決まるので、面積も 3 辺で決まるはずである。実際に 3 辺で書いたものが次の公式で、Heron の公式(Heronの公式)と呼ばれる。
三角形 $\mathrm{ABC}$ について、$s=\dfrac{a+b+c}2$ とすると
$$
S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}
$$
が成り立つ。同じことを 2 乗して $16$ 倍した形で書くと
$$
16S^2=(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)
$$
である。
余弦定理(高校数学) では、$S=\dfrac12bc\sin A$ から余弦定理で $\sin A$ を消して、この公式を導いている(命題「面積の 2 乗を 3 辺で表す」)。ここでは三角比を使わず、三平方の定理 だけで高さを求める証明を書く。
3 辺 13, 14, 15 の三角形を、B を原点、C を x 軸上におく。A(p, q) の y 座標 q が高さで、垂線の足 H は (p, 0) である
方針:辺 $\mathrm{BC}$ を $x$ 軸の上におき、$\mathrm A$ の座標 $(p,q)$ を 3 辺で表す。$q$ が高さなので $S=\dfrac12aq$ である。$q^2$ を 2 乗の差の因数分解で積に直す(図 1)。
段 1(座標をおく)。$\mathrm B(0,0)$、$\mathrm C(a,0)$ とし、$\mathrm A(p,q)$ は $x$ 軸より上にある($q>0$)ようにおく。$\mathrm A$ から $x$ 軸に下ろした垂線の足は $\mathrm H(p,0)$ で、高さは $q$ なので、$S=\dfrac12aq$ である。$p$ は負でも $a$ より大きくてもよい($B$ や $C$ が鈍角のときに起こる)。座標を使うので、この場合分けは要らない。
段 2(2 つの距離の式)。2 点間の距離の公式(三平方の定理 から従う)により
$$
c^2=\mathrm{AB}^2=p^2+q^2,\qquad b^2=\mathrm{AC}^2=(p-a)^2+q^2
$$
である。
段 3($p$ を求める)。1 つ目の式から 2 つ目の式を引くと、$q^2$ が消えて
$$
c^2-b^2=p^2-(p-a)^2=p^2-(p^2-2ap+a^2)=2ap-a^2
$$
となる。$a>0$ なので $p=\dfrac{a^2+c^2-b^2}{2a}$ である。
段 4($q^2$ を積に直す)。段 2 の 1 つ目の式から $q^2=c^2-p^2=(c-p)(c+p)$ である。段 3 の $p$ を代入して、分母を $2a$ にそろえると
$$
c-p=\frac{2ac-a^2-c^2+b^2}{2a}=\frac{b^2-(a-c)^2}{2a},\qquad c+p=\frac{2ac+a^2+c^2-b^2}{2a}=\frac{(a+c)^2-b^2}{2a}
$$
である。ここで $a^2-2ac+c^2=(a-c)^2$ と $a^2+2ac+c^2=(a+c)^2$ を使った。
段 5(2 乗の差をもう一度)。$X^2-Y^2=(X+Y)(X-Y)$ により
$$
b^2-(a-c)^2=(b+a-c)(b-a+c),\qquad (a+c)^2-b^2=(a+c+b)(a+c-b)
$$
である。段 4 の 2 つの式を掛けると、分母は $2a\cdot2a=4a^2$ なので
$$
q^2=(c-p)(c+p)=\frac{(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)}{4a^2}
$$
である。
段 6(面積に直す)。段 1 の $S=\dfrac12aq$ を 2 乗して $16$ 倍すると $16S^2=16\cdot\dfrac14a^2q^2=4a^2q^2$ である。段 5 の式の両辺に $4a^2$ を掛けると
$$
16S^2=4a^2q^2=(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)
$$
を得る。
段 7($s$ で書く)。$a+b+c=2s$、$-a+b+c=2s-2a=2(s-a)$、$a-b+c=2(s-b)$、$a+b-c=2(s-c)$ なので、右辺は $16s(s-a)(s-b)(s-c)$ である。$16$ で割って正の平方根をとると $S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}$ である。$\square$
thm-taf-heron の $16S^2$ の 4 つの因数のうち、$a+b+c$ はいつも正である。残りの 3 つ $-a+b+c$、$a-b+c$、$a+b-c$ がすべて正であることは、3 つの三角不等式 $a< b+c$、$b< c+a$、$c< a+b$ がすべて成り立つことと同じである。三角形があれば三角不等式が成り立つので、根号の中は正である。3 つの長さが三角形をつくらないときの様子は ex-taf-no-triangle で見る。3 つの正の数から三角形がつくれるための条件(三角不等式)は、余弦定理(高校数学) の反例「三角形にならない 3 つの長さ」で証明している。
三角形の 3 辺すべてに接する円を 内接円 といい、その中心を 内心、半径を 内接円の半径 という。内接円の半径をふつう $r$ で表す。内接円がただ 1 つあること、内心が 3 つの角の二等分線の交点で三角形の内部にあることは、三角形の内心と傍心 で証明している。ここではそれを使う。3 頂点を通る円(外接円、半径 $R$)については 正弦定理(高校数学) と 三角形の外心 で扱う。
13, 14, 15 の三角形の内接円(中心 I、半径 r = 4)。I と 3 頂点を結ぶと、底辺 a, b, c、高さ r の 3 つの三角形に分かれる。頂点から接点までの長さは 6, 7, 8 である
三角形 $\mathrm{ABC}$ の内接円の半径を $r$ とすると
$$
S=rs
$$
が成り立つ。つまり $r=\dfrac Ss$ である。
$S=rs$ と、次の prop-taf-tangent の接点までの長さは、三角形の内心と傍心 の命題「内接円・傍接円の半径と面積」「接点までの長さ」でも示している(傍接円の半径 $r_a=\dfrac S{s-a}$ もそこにある)。ここでは Heron の公式の読みに使うために証明を書く。
方針:内心 $\mathrm I$ と 3 頂点を結び、三角形を 3 つに分けて面積を足す(図 2)。
段 1(分ける)。内心 $\mathrm I$ は三角形の内部にあるので、線分 $\mathrm{IA}$、$\mathrm{IB}$、$\mathrm{IC}$ で三角形 $\mathrm{ABC}$ は三角形 $\mathrm{IBC}$、$\mathrm{ICA}$、$\mathrm{IAB}$ の 3 つに重なりなく分かれる。したがって $S$ はこの 3 つの面積の和である。
段 2(高さは r)。内接円は辺 $\mathrm{BC}$ に接するので、$\mathrm I$ から直線 $\mathrm{BC}$ までの距離は半径 $r$ に等しい。よって三角形 $\mathrm{IBC}$ は底辺 $a$、高さ $r$ で、面積は $\dfrac12ar$ である。同じく三角形 $\mathrm{ICA}$、$\mathrm{IAB}$ の面積は $\dfrac12br$、$\dfrac12cr$ である。
段 3(足す)。$S=\dfrac12ar+\dfrac12br+\dfrac12cr=\dfrac{a+b+c}2\,r=rs$ である。$\square$
内接円の接点は、各辺を決まった長さに分ける。その長さを使うと、Heron の公式の $s-a$、$s-b$、$s-c$ の意味が見える。
内接円が辺 $\mathrm{BC}$、$\mathrm{CA}$、$\mathrm{AB}$ に接する点を $\mathrm D$、$\mathrm E$、$\mathrm F$ とすると
$$
\mathrm{AE}=\mathrm{AF}=s-a,\qquad \mathrm{BF}=\mathrm{BD}=s-b,\qquad \mathrm{CD}=\mathrm{CE}=s-c
$$
である。
方針:1 つの点から円に引いた 2 本の接線の長さが等しいことを使い、3 つの長さについての連立方程式を解く。
段 1(接線の長さは等しい)。直角三角形 $\mathrm{AIE}$ と $\mathrm{AIF}$ を比べる。接線は接点を通る半径に垂直なので、$\angle\mathrm{AEI}=\angle\mathrm{AFI}=90^\circ$ である。斜辺 $\mathrm{AI}$ は共通で、$\mathrm{IE}=\mathrm{IF}=r$ である。三平方の定理から $\mathrm{AE}^2=\mathrm{AI}^2-r^2=\mathrm{AF}^2$ なので $\mathrm{AE}=\mathrm{AF}$ である。同じく $\mathrm{BF}=\mathrm{BD}$、$\mathrm{CD}=\mathrm{CE}$ である。
段 2(連立方程式)。$x=\mathrm{AE}=\mathrm{AF}$、$y=\mathrm{BF}=\mathrm{BD}$、$z=\mathrm{CD}=\mathrm{CE}$ とおく。接点は辺の上にあるので
$$
y+z=a,\qquad z+x=b,\qquad x+y=c
$$
である。3 つを足すと $2(x+y+z)=a+b+c=2s$、つまり $x+y+z=s$ である。
段 3(解く)。$x=(x+y+z)-(y+z)=s-a$ である。同じく $y=s-b$、$z=s-c$ である。$\square$
prop-taf-tangent の $x=s-a$、$y=s-b$、$z=s-c$ を使うと、$s=x+y+z$ なので、Heron の公式は
$$
S=\sqrt{(x+y+z)\,xyz}
$$
と書ける。根号の中は、3 つの接線の長さの和と積の積である。さらに prop-taf-inradius の $S=rs$ と比べると、$r^2s^2=S^2=sxyz$ なので
$$
r^2=\frac{xyz}{x+y+z}
$$
である。3 辺 $13,14,15$ では $x=7$、$y=6$、$z=8$(図 2)で、$r^2=\dfrac{7\cdot6\cdot8}{21}=\dfrac{336}{21}=16$、$r=4$ となり、ex-taf-inradius と一致する。三角不等式 $a< b+c$ は $y+z<(z+x)+(x+y)$、つまり $x>0$ と同じである。三角形があることと、3 つの接線の長さがすべて正であることが対応している。
三角形 $\mathrm{ABC}$ の外接円の半径を $R$ とすると
$$
S=\frac{abc}{4R}
$$
が成り立つ。つまり $R=\dfrac{abc}{4S}$ である。
方針:thm-taf-sine の $\sin A$ に、正弦定理(高校数学) の $\dfrac a{\sin A}=2R$ を代入する。
正弦定理から $\sin A=\dfrac a{2R}$ である。thm-taf-sine に代入すると $S=\dfrac12bc\cdot\dfrac a{2R}=\dfrac{abc}{4R}$ である。$\square$
頂点の座標が分かっているときは、高さも角も求めずに面積が出る。
原点 $\mathrm O$ と 2 点 $\mathrm P(x_1,y_1)$、$\mathrm Q(x_2,y_2)$ が一直線上にないとき、三角形 $\mathrm{OPQ}$ の面積は
$$
S=\frac12\lvert x_1y_2-x_2y_1\rvert
$$
である。
方針:thm-taf-sine の $S=\dfrac12\,\mathrm{OP}\cdot\mathrm{OQ}\sin\angle\mathrm{POQ}$ を 2 乗し、$\sin^2=1-\cos^2$ と余弦定理で成分の式に直す。
段 1(2 乗する)。$\theta=\angle\mathrm{POQ}$ とおく。$\mathrm{OP}^2=x_1^2+y_1^2$、$\mathrm{OQ}^2=x_2^2+y_2^2$ である。thm-taf-sine から
$$
4S^2=\mathrm{OP}^2\,\mathrm{OQ}^2\sin^2\theta=\mathrm{OP}^2\,\mathrm{OQ}^2-(\mathrm{OP}\cdot\mathrm{OQ}\cos\theta)^2
$$
である。
段 2(余弦を成分で書く)。余弦定理 $\mathrm{PQ}^2=\mathrm{OP}^2+\mathrm{OQ}^2-2\,\mathrm{OP}\cdot\mathrm{OQ}\cos\theta$ と、$\mathrm{PQ}^2=(x_2-x_1)^2+(y_2-y_1)^2=\mathrm{OP}^2+\mathrm{OQ}^2-2(x_1x_2+y_1y_2)$ を比べると、$\mathrm{OP}\cdot\mathrm{OQ}\cos\theta=x_1x_2+y_1y_2$ である。
段 3(展開する)。段 1・段 2 から
$$
4S^2=(x_1^2+y_1^2)(x_2^2+y_2^2)-(x_1x_2+y_1y_2)^2
$$
である。右辺を展開すると、$x_1^2x_2^2$ と $y_1^2y_2^2$ は打ち消し合い、残りは
$$
x_1^2y_2^2+y_1^2x_2^2-2x_1x_2y_1y_2=(x_1y_2-x_2y_1)^2
$$
である。$S>0$ なので、正の平方根をとって $2S=\lvert x_1y_2-x_2y_1\rvert$ を得る。$\square$
段 2 の $x_1x_2+y_1y_2$ はベクトルの内積である(ベクトルの内積(高校数学))。段 1 の式 $S=\dfrac12\sqrt{\lvert\vec p\rvert^2\lvert\vec q\rvert^2-(\vec p\cdot\vec q)^2}$ は空間のベクトルでもそのまま使える。原点を頂点にもたない三角形は、頂点の 1 つが原点に来るように平行移動してから使えばよい。
多角形の面積を頂点の座標から求める 靴ひも公式 は、この公式を三角形ごとに足したものである。絶対値を外した $\dfrac12(x_1y_2-x_2y_1)$ が向きを表す符号をもつことは ex-taf-signed で見る。
どの公式も同じ面積を表しているので、分かっている量に合わせて選べばよい。3 辺 $13,14,15$ の三角形で、6 通りの計算を並べてみる。
$\mathrm B(0,0)$、$\mathrm C(14,0)$、$\mathrm A(5,12)$、$a=14$、$b=15$、$c=13$、$s=21$ とする。
| 分かっている量 | 公式 | 計算 |
|---|---|---|
| 底辺 $a=14$、高さ $12$ | $\dfrac12ah$ | $\dfrac12\cdot14\cdot12=84$ |
| $c=13$、$a=14$、$\sin B=\dfrac{12}{13}$ | $\dfrac12ca\sin B$ | $\dfrac12\cdot13\cdot14\cdot\dfrac{12}{13}=84$ |
| 3 辺 | $\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}$ | $\sqrt{21\cdot7\cdot6\cdot8}=84$ |
| $r=4$、$s=21$ | $rs$ | $4\cdot21=84$ |
| 3 辺と $R=\dfrac{65}8$ | $\dfrac{abc}{4R}$ | $\dfrac{2730}{65/2}=84$ |
| 座標 | $\dfrac12\lvert x_1y_2-x_2y_1\rvert$ | $\dfrac12\lvert14\cdot12-5\cdot0\rvert=84$ |
$r=4$ は内心 $(6,4)$ から 3 辺の直線までの距離として(ex-taf-inradius の (1) の後半)、$R=\dfrac{65}8$ は外心の座標から(ex-taf-circumradius)、面積を使わずに求めた値である。6 通りの計算はすべて $84$ になる。逆に、面積を 1 つの方法で求めておけば、$r=\dfrac Ss$、$R=\dfrac{abc}{4S}$、高さ $h_b=\dfrac{2S}b=\dfrac{168}{15}=\dfrac{56}5$ などがすぐに出る。
面積を 2 通りに表して等しいとおくことは、長さを求める道具にもなる。
3 辺 $4,5,6$ の三角形で、辺 $4$ に下ろした高さ $h$ を求める。ex-taf-heron の (3) で $S=\dfrac{15\sqrt7}4$ だったので、$\dfrac12\cdot4\cdot h=\dfrac{15\sqrt7}4$ から
$$
h=\frac{15\sqrt7}8
$$
である。同じく、内接円の半径は $r=\dfrac Ss=\dfrac{15\sqrt7/4}{15/2}=\dfrac{\sqrt7}2$、外接円の半径は $R=\dfrac{4\cdot5\cdot6}{4S}=\dfrac{120}{15\sqrt7}=\dfrac8{\sqrt7}=\dfrac{8\sqrt7}7$ である。
同じ「面積を 2 通りに表す」考え方は、三角形の面積比 や 三角形の内心と傍心 の証明でも使う。三角形がどの量で決まるか(何が分かれば面積も含めてすべてが決まるか)は、三角形の決定と解の個数 で扱う。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 3 つの長さが三角不等式を満たすこと | 根号の中が正で、面積が求まる | ex-taf-no-triangle |
| 角が 2 辺の 間の 角であること | $S=\dfrac12bc\sin A$ | ex-taf-wrong-angle |
| 絶対値をとること | $\dfrac12(x_1y_2-x_2y_1)$ が面積に等しい | ex-taf-signed |
| 三角形であること(辺が 3 本) | 辺の長さだけで面積が決まる | ex-taf-quadrilateral |
3 辺 $3,4,5$ の直角三角形($a=3$、$b=4$、$c=5$、$C=90^\circ$)の面積は $\dfrac12\cdot3\cdot4=6$ である。角 $A$ は辺 $b$ と $c$ の間の角で、$\sin A=\dfrac35$ である。$A$ を辺 $a=3$ と $b=4$ の組に使って $\dfrac12ab\sin A$ を計算すると $\dfrac12\cdot3\cdot4\cdot\dfrac35=\dfrac{18}5$ となり、$6$ と違う。prf-taf-sine で高さが $b\sin A$ になったのは、$A$ が底辺 $c$ と辺 $b$ の間の角だったからである。正しくは $\dfrac12bc\sin A=\dfrac12\cdot4\cdot5\cdot\dfrac35=6$ である。
ex-taf-coord の (1) で、平行移動後の 2 点の順番を入れ替え、$\mathrm P(1,3)$、$\mathrm Q(4,1)$ として絶対値を外した式を計算すると
$$
\frac12(x_1y_2-x_2y_1)=\frac12(1\cdot1-4\cdot3)=-\frac{11}2
$$
で、負になる。順番が $(4,1)$、$(1,3)$ のときは $+\dfrac{11}2$ だった。原点から見て $\mathrm P$ から $\mathrm Q$ へ反時計回りに回るとき正、時計回りのとき負になる。この符号付きの値を 符号付き面積 という(1次変換と行列式:面積の拡大率)。面積そのものが欲しいときは絶対値をとる。多角形の面積を求める 靴ひも公式 では、逆にこの符号を利用して、三角形の符号付き面積を足し引きする。
4 辺がすべて 1 の正方形とひし形。辺の長さは同じでも、面積は 1 と 1/2 で違う
4 辺がすべて $1$ の四角形を考える。正方形なら面積は $1$ である。1 つの角が $30^\circ$ のひし形は、対角線で 2 つの合同な三角形に分けると、どちらも 2 辺 $1,1$ と間の角 $30^\circ$ の三角形なので、thm-taf-sine により面積は $2\cdot\dfrac12\cdot1\cdot1\cdot\sin30^\circ=\dfrac12$ である(図 3)。辺の長さが同じでも面積は違う。三角形では 3 辺で形が 1 つに決まる(余弦定理(高校数学) の系「3 辺で角が決まる」)ので Heron の公式があるが、四角形は 4 辺を決めても角を変えて変形できるので、4 辺だけの面積の公式はない。円に内接する四角形に限ると形が決まり、Brahmagupta の公式がある(rem-taf-brahmagupta)。
thm-taf-heron の右辺を展開すると
$$
16S^2=2(a^2b^2+b^2c^2+c^2a^2)-(a^4+b^4+c^4)
$$
となる(3 辺 $13,14,15$ では両辺とも $112896=16\cdot84^2$ である)。右辺は $a^2,b^2,c^2$ の多項式で、しかも $a,b,c$ を入れ替えても変わらない(対称式)。面積の 2 乗は、辺の長さの 2 乗の対称な多項式で書けるということである。
この式は行列式で書ける。
$$
16S^2=-\det\begin{pmatrix}0&1&1&1\\ 1&0&c^2&b^2\\ 1&c^2&0&a^2\\ 1&b^2&a^2&0\end{pmatrix}
$$
右辺の行列式を展開して整理すると、左辺の式になる(展開すれば確かめられる有限の計算で、この記事では証明しない)。これを Cayley–Menger 行列式 という。点どうしの距離の 2 乗を並べた行列の行列式で、四面体の体積(行列を 5 行 5 列にする)、さらに高い次元の単体の体積も同じ形で表せる(Heronの公式とCayley–Menger行列式。四面体・高い次元の場合もこの記事では証明しない)。
prop-taf-coord の $x_1y_2-x_2y_1$ は、2 つのベクトル $(x_1,y_1)$、$(x_2,y_2)$ を並べた行列の行列式 $\det\begin{pmatrix}x_1&x_2\\y_1&y_2\end{pmatrix}$ である。行列式は、2 つのベクトルが張る平行四辺形の符号付き面積を表し、その半分が三角形の符号付き面積になる。行列式が面積の拡大率を表すことは 1次変換と行列式:面積の拡大率 で、空間では 3 つのベクトルの行列式が平行六面体の体積になることは 空間の平面と法線ベクトル で扱う。空間の三角形の面積は、外積の大きさ $\lvert\vec p\times\vec q\rvert$ の半分で、これは prf-taf-coord の段 1 の $\dfrac12\sqrt{\lvert\vec p\rvert^2\lvert\vec q\rvert^2-(\vec p\cdot\vec q)^2}$ に等しい。
円に内接する四角形の 4 辺を $a,b,c,d$、$s=\dfrac{a+b+c+d}2$ とすると、面積は $\sqrt{(s-a)(s-b)(s-c)(s-d)}$ である。これを Brahmagupta の公式 という(証明は用語解説 Heronの公式 の系「Brahmaguptaの公式」にある。この記事では証明しない)。$d=0$ とすると四角形は三角形につぶれ、$s-d=s$ となって Heron の公式に戻る。ex-taf-quadrilateral で見たように、円に内接するという条件がないと、4 辺だけでは面積は決まらない。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する