Lebesgueの微分定理

同義語:ルベーグの微分定理Lebesgue differentiation theorem

概要

Lebesgueの微分定理(Lebesgue differentiation theorem)とは、$\mathbb{R}^n$ 上の局所可積分関数 $f$ について、ほとんどすべての点 $x$ で $|f-f(x)|$ の $x$ を中心とする球の上の平均が半径 $r\to0$ で $0$ に収束し($x$ が Lebesgue 点であり)、とくに $f$ の平均が $f(x)$ に収束するという定理である。Vitali の $5r$ 被覆補題から導く Hardy–Littlewood の極大不等式と、連続関数による近似から証明される。球を、球の一定の割合を占めながら $x$ に縮む集合の列に替えても成り立ち、1 変数の不定積分がほとんど至るところ微分可能で導関数が $f$ になることや、可測集合の密度定理が従う。この割合の条件を外した近傍の列では成り立たない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Lebesgue測度, Lebesgue積分, 局所可積分関数, Vitaliの被覆定理

Lebesgue の微分定理(Lebesgue differentiation theorem)は、$\mathbb{R}^n$ 上の局所可積分関数 $f$ について、ほとんどすべての点 $x$ で、$x$ を中心とする球の上の $f$ の平均値が、半径を $0$ に近づけると $f(x)$ に収束することを主張する定理である。1 変数では、不定積分 $F(x)=\int_a^xf$ がほとんど至るところ微分可能で $F'=f$ となることと同じ内容であり、連続関数についての微分積分学の基本定理を、連続性を仮定しない可積分関数へ広げたものにあたる。
証明の要は、すべての半径の平均を一度に抑える Hardy–Littlewoodの極大関数 の弱 $(1,1)$ 型評価である。連続関数では主張は明らかなので、一般の関数を連続関数で近似し、その誤差を極大関数で一様に抑える。この記事では、Vitaliの被覆定理 の $5r$ 被覆補題から極大不等式を導き、それを使って定理を証明する。続いて、球の代わりに「正則に縮む」集合の族でも同じ結論が成り立つことを示し、その系として不定積分の微分と Lebesgue の密度定理を導く。最後に、正則性を外した近傍の族では結論が破れる例を挙げる。
以下、$|E|$ は $\mathbb{R}^n$ の Lebesgue 測度、$B(x,r):=\{y\mid|y-x|< r\}$ は開球、$\overline B(x,r):=\{y\mid|y-x|\le r\}$ は閉球、$v_n:=|B(0,1)|$ とする。$|B(x,r)|=v_nr^n$ であり、$B(x,r)\subset\overline B(x,r)\subset B(x,r+\varepsilon)$ から $|\overline B(x,r)|=v_nr^n$ でもある(Lebesgue測度 の注意「$\mathbb{R}^n$ の Lebesgue 測度の性質」)。関数は複素数値とし、$L^1_{\mathrm{loc}}(\mathbb{R}^n)$ は 局所可積分関数 の定義「局所可積分関数と局所 $L^p$ 空間」のとおり、すべてのコンパクト集合の上で $|f|$ の積分が有限な可測関数の全体とする(Lebesgue 点は値 $f(x)$ を使うので、ここではほとんど至るところ一致する関数を同一視せず、関数そのものを考える)。

主張

Lebesgue 点

$f\in L^1_{\mathrm{loc}}(\mathbb{R}^n)$ とする。点 $x\in\mathbb{R}^n$ が $f$ の Lebesgue 点(Lebesgue point)であるとは
$$ \lim_{r\to+0}\frac1{|B(x,r)|}\int_{B(x,r)}|f(y)-f(x)|\,dy=0 $$
が成り立つことをいう。

Lebesgue の微分定理

$f\in L^1_{\mathrm{loc}}(\mathbb{R}^n)$ とする。ほとんどすべての $x\in\mathbb{R}^n$ は $f$ の Lebesgue 点である。とくに、ほとんどすべての $x$ で
$$ \lim_{r\to+0}\frac1{|B(x,r)|}\int_{B(x,r)}f(y)\,dy=f(x) $$
が成り立つ。

証明の位置と後半

証明は極大不等式を準備したあと、節「主定理の証明」で与える。後半は前半から $\bigl|\frac1{|B|}\int_Bf-f(x)\bigr|\le\frac1{|B|}\int_B|f-f(x)|$ によって従う。

$f$ が $x$ で連続なら $x$ は Lebesgue 点である(被積分関数が $B(x,r)$ の上で $\sup_{|y-x|< r}|f(y)-f(x)|$ 以下になる)。定理の内容は、連続性が成り立たない関数でも、平均をとる限りほとんどすべての点で連続関数と同じことが起こる、という点にある。
開集合 $\Omega\subset\mathbb{R}^n$ 上の局所可積分関数についての同じ主張は、$\mathbb{R}^n$ の場合から 局所可積分関数 の定理「局所可積分関数の Lebesgue 点」として導かれる。$f$ を零集合 $N$ の上で変えても積分は変わらないので、Lebesgue 点の集合は $N$ の中でしか変わらない。「ほとんどすべて」を「すべて」に強めることはできない(Hardy–Littlewoodの極大関数 の例「反例:すべての点では成り立たない」)。

極大関数と極大不等式

中心をもつ極大関数

$f\in L^1_{\mathrm{loc}}(\mathbb{R}^n)$ に対し
$$ Mf(x):=\sup_{r>0}\frac1{|B(x,r)|}\int_{B(x,r)}|f(y)|\,dy\in[0,\infty] $$
とおく。$n=1$ では Hardy–Littlewoodの極大関数 の定義「Hardy–Littlewood の極大関数」と一致する。

定義から $M(f+g)\le Mf+Mg$、$M(cf)=|c|\,Mf$($c\in\mathbb{C}$)である。

上方の集合は開集合

$f\in L^1_{\mathrm{loc}}(\mathbb{R}^n)$、$\lambda\ge0$ について $\{x\mid Mf(x)>\lambda\}$ は開集合である。とくに $Mf$ は Borel 可測である。

$Mf(x)>\lambda$ なら、ある $r>0$ で $\int_{B(x,r)}|f|>\lambda v_nr^n$ である。$\delta>0$ を $\int_{B(x,r)}|f|>\lambda v_n(r+\delta)^n$ となるように小さくとる。$|x'-x|< \delta$ なら $B(x,r)\subset B(x',r+\delta)$ なので
$$ Mf(x')\ge\frac1{v_n(r+\delta)^n}\int_{B(x',r+\delta)}|f|\ge\frac1{v_n(r+\delta)^n}\int_{B(x,r)}|f|>\lambda $$
である。よって $x$ の近傍 $B(x,\delta)$ は集合に含まれる。$\square$

Hardy–Littlewood の極大不等式

$f\in L^1(\mathbb{R}^n)$ と $\lambda>0$ について
$$ |\{x\in\mathbb{R}^n\mid Mf(x)>\lambda\}|\le\frac{5^n}\lambda\|f\|_1 . $$

$5r$ 被覆補題で互いに交わらない球を選ぶ

$E:=\{Mf>\lambda\}$ とおく(prop-ld-open により可測)。各 $x\in E$ について $\int_{B(x,r_x)}|f|>\lambda|B(x,r_x)|$ となる $r_x>0$ を 1 つ選ぶ。$\lambda v_nr_x^n< \|f\|_1$ なので、半径 $r_x$ は $x$ によらない定数 $(\|f\|_1/(\lambda v_n))^{1/n}$ 以下である。閉球の族 $\mathcal{F}:=\{\overline B(x,r_x)\mid x\in E\}$ に Vitaliの被覆定理 の系「$5r$ 被覆補題」を使うと、閉球が互いに交わらない部分族 $\mathcal{G}\subset\mathcal{F}$ で
$$ E\subset\bigcup_{\overline B(a,r_a)\in\mathcal{G}}\overline B(a,5r_a) $$
となるものがある。閉球は内部が空でないので、Vitaliの被覆定理 の命題「可分空間における非交差族の可算性」により $\mathcal{G}$ は高々可算である。開球 $B(a,r_a)$($\overline B(a,r_a)\in\mathcal{G}$)は互いに交わらないので
$$ |E|\le\sum_{\mathcal{G}}|\overline B(a,5r_a)|=5^n\sum_{\mathcal{G}}|B(a,r_a)|\le\frac{5^n}\lambda\sum_{\mathcal{G}}\int_{B(a,r_a)}|f|\le\frac{5^n}\lambda\|f\|_1 $$
である。$\square$

同じ定数 $5^n$ の評価は Bass24 Theorem 14.2(p. 124)にある。$n=1$ では有限個の区間の選択で定数を $3$ にできる(Hardy–Littlewoodの極大関数 の定理「Hardy–Littlewood の極大不等式」)。中心をとらない球の極大関数に対する評価(定数 $8^n$)は、倍加測度の一般論として 倍加測度 の定理「極大関数の弱 $(1,1)$ 型評価」にあり、被覆から球を選ぶ代わりに二進立方体の停止時間で示す方法(定数は大きい)は Calderón–Zygmund分解 にある。$Mf$ 自身は $f$ がほとんど至るところ $0$ というわけでなければ可積分にならないので($\int_{B(0,R)}\lvert f\rvert=a>0$ となる $R$ をとると、$B(x,\lvert x\rvert+R)\supset B(0,R)$ からすべての $x$ で $Mf(x)\ge a/(v_n(\lvert x\rvert+R)^n)$ となり、右辺は $\lvert x\rvert\to\infty$ で $\lvert x\rvert^{-n}$ の程度でしか減らないので $\mathbb{R}^n$ で可積分でない。$n=1$ の具体例は Hardy–Littlewoodの極大関数 の例「区間の指示関数の極大関数」)、$L^1$ ノルムの評価ではなく、上の弱型の評価が使われる。

主定理の証明

連続関数で近似し、誤差を極大関数で抑える

$N\in\mathbb{N}$ を固定し、$K:=\overline B(0,N+1)$ とおく。$x\in B(0,N)$、$0< r< 1$ なら $B(x,r)\subset K$ である。$B(0,N)$ のほとんどすべての点が Lebesgue 点であることを示せば、$N$ についての可算個の零集合を合わせて定理を得る。
$\varepsilon>0$ とする。局所可積分関数 の定理「台がコンパクトな滑らかな関数の稠密性」($p=1$、$\Omega=\mathbb{R}^n$)により、$\varphi\in C_c^\infty(\mathbb{R}^n)$ で $\|(f-\varphi)1_K\|_1< \varepsilon$ となるものがある。$e:=(f-\varphi)1_K$ とおくと $e\in L^1(\mathbb{R}^n)$、$\|e\|_1< \varepsilon$ である。$x\in B(0,N)$、$0< r< 1$ なら $B(x,r)$ と $x$ の上で $f=\varphi+e$ なので、$|f(y)-f(x)|\le|e(y)|+|\varphi(y)-\varphi(x)|+|e(x)|$ から
$$ \frac1{|B(x,r)|}\int_{B(x,r)}|f(y)-f(x)|\,dy\le Me(x)+\sup_{|y-x|< r}|\varphi(y)-\varphi(x)|+|e(x)| $$
である。左辺の $r\to+0$ での上極限を $L(x)\in[0,\infty]$ とする。$\varphi$ は連続なので右辺の中央の項は $r\to+0$ で $0$ に近づき、$L(x)\le Me(x)+|e(x)|$ である。したがって $\lambda>0$ について
$$ \{x\in B(0,N)\mid L(x)>2\lambda\}\subset\{Me>\lambda\}\cup\{|e|>\lambda\} $$
であり、thm-ld-maximal と、Chebyshevの不等式 の定理「Markov の不等式」を $|e|$ に使った $|\{|e|>\lambda\}|\le\|e\|_1/\lambda$ から右辺の測度は $(5^n+1)\varepsilon/\lambda$ 以下である。左辺の集合は $\varepsilon$ によらないので、その外測度は $0$ である。$\lambda=1/k$($k=1,2,\dots$)について和をとれば、$B(0,N)$ の中で $L(x)>0$ となる点の全体は零集合である。$L(x)=0$ は $x$ が Lebesgue 点であることにほかならない。$\square$

この証明の形は次のようにまとめられる。稠密な関数のクラス(ここでは連続関数)では極限についての主張が直接に確かめられ、残りの誤差は極大関数で一様に抑えられ、極大関数には弱型評価がある。$\mathbb{R}^n$ の場合の証明は Bass24 Theorem 14.3・14.4(pp. 125–126)にもあり、$n=1$ は Axl26 4.10(p. 108)にある。

Lebesgue 点についての補足

$L^p$ 版の Lebesgue 点

$1\le p<\infty$、$f\in L^p_{\mathrm{loc}}(\mathbb{R}^n)$ とする。ほとんどすべての $x$ で
$$ \lim_{r\to+0}\frac1{|B(x,r)|}\int_{B(x,r)}|f(y)-f(x)|^p\,dy=0 $$
が成り立つ。

可算個の定数との差に主定理を使う

$D:=\mathbb{Q}+i\mathbb{Q}$ は $\mathbb{C}$ の可算な稠密部分集合である。$c\in D$ について $|f-c|^p\le2^{p-1}(|f|^p+|c|^p)$ なので $|f-c|^p\in L^1_{\mathrm{loc}}$ であり、thm-ld-main の後半により、零集合 $N_c$ の外で $\frac1{|B(x,r)|}\int_{B(x,r)}|f-c|^p\to|f(x)-c|^p$($r\to+0$)である。$x\notin\bigcup_{c\in D}N_c$、$\eta>0$ とし、$|f(x)-c|< \eta$ となる $c\in D$ をとる。$t\mapsto t^p$ の凸性から $|f(y)-f(x)|^p\le2^{p-1}(|f(y)-c|^p+|c-f(x)|^p)$ なので
$$ \limsup_{r\to+0}\frac1{|B(x,r)|}\int_{B(x,r)}|f(y)-f(x)|^p\,dy\le2^{p-1}\bigl(|f(x)-c|^p+|f(x)-c|^p\bigr)< 2^p\eta^p $$
である。$\eta$ は任意なので主張を得る。$\square$

$p=1$ では、この議論は主定理の前半を後半(平均の収束)から導く別の道でもある(Bass24 Theorem 14.4 の証明はこの形である)。

正則に縮む集合の族

球の中心が $x$ であることは本質的でない。必要なのは、集合が $x$ のまわりの小さな球に入り、しかもその球の一定の割合を占めることである。

正則に縮む族

$x\in\mathbb{R}^n$ とする。正の数の列 $r_k\to0$ と Borel 集合の列 $E_k$ が $x$ に正則に縮む(shrink regularly)とは、$k$ によらない定数 $c>0$ があって、すべての $k$ で
$$ E_k\subset B(x,r_k),\qquad|E_k|\ge c\,|B(x,r_k)| $$
が成り立つことをいう。$x\in E_k$ は要求しない。

正則に縮む族での微分

$f\in L^1_{\mathrm{loc}}(\mathbb{R}^n)$ とし、$x$ を $f$ の Lebesgue 点とする。$x$ に正則に縮む任意の列 $(E_k)$ について
$$ \lim_{k\to\infty}\frac1{|E_k|}\int_{E_k}|f(y)-f(x)|\,dy=0,\qquad\text{とくに}\qquad\lim_{k\to\infty}\frac1{|E_k|}\int_{E_k}f(y)\,dy=f(x) $$
が成り立つ。

定数 $c$ をとると、$E_k\subset B(x,r_k)$ と $|E_k|\ge c|B(x,r_k)|$ から
$$ \frac1{|E_k|}\int_{E_k}|f(y)-f(x)|\,dy\le\frac1{c}\cdot\frac1{|B(x,r_k)|}\int_{B(x,r_k)}|f(y)-f(x)|\,dy $$
であり、$x$ が Lebesgue 点なので右辺は $k\to\infty$ で $0$ に近づく。後半は thm-ld-main の後と同じ不等式による。$\square$

除外される零集合(Lebesgue 点でない点の集合)は $f$ だけで決まり、列 $(E_k)$ や定数 $c$ によらない。これが thm-ld-main を球の平均から一般の族へ移すときの要点である。

正則に縮む族の例

次の列はどれも、半径 $r_k\to0$ に対して $x$ に正則に縮む。

  1. $x$ を含む立方体。 座標軸に平行で辺の長さ $\ell_k\to0$ の立方体 $Q_k\ni x$(閉・開・半開のどれでもよい)。$Q_k$ の点 $y$ は各座標で $x$ と $\ell_k$ 以下しか違わないので $|y-x|\le\sqrt n\,\ell_k$ であり、$r_k:=2\sqrt n\,\ell_k$ とすると $Q_k\subset B(x,r_k)$、$|Q_k|=\ell_k^n=c|B(x,r_k)|$($c=1/(v_n(2\sqrt n)^n)$)である。$x$ を含む二進立方体の列はこの形である。
  2. $x$ を含む球。 $x\in B(a_k,s_k)$、$s_k\to0$ なら $B(a_k,s_k)\subset B(x,2s_k)$、$|B(a_k,s_k)|=2^{-n}|B(x,2s_k)|$ である。
  3. 片側の区間($n=1$)。 $h_k\ne0$、$h_k\to0$ とし、$I_k$ を $x$ と $x+h_k$ を端点とする閉区間とすると、$I_k\subset B(x,2|h_k|)$、$|I_k|=|h_k|=\frac14|B(x,2|h_k|)|$ である。
  4. $x$ を含まない集合。 円環 $\{y\mid r_k/2\le|y-x|< r_k\}$ の測度は $(1-2^{-n})|B(x,r_k)|$ である。
不定積分の微分

$f\in L^1_{\mathrm{loc}}(\mathbb{R})$、$a\in\mathbb{R}$ とし、$F(x):=\int_a^xf(t)\,dt$($x< a$ では $-\int_x^af$)とおく。$f$ の Lebesgue 点 $x$ では $F$ は微分可能で $F'(x)=f(x)$ である。とくに $F$ はほとんど至るところ微分可能で、ほとんど至るところ $F'=f$ である。

$h\ne0$ について、$I_h$ を $x$ と $x+h$ を端点とする閉区間とすると
$$ \Bigl|\frac{F(x+h)-F(x)}h-f(x)\Bigr|=\Bigl|\frac1h\int_x^{x+h}\bigl(f(t)-f(x)\bigr)\,dt\Bigr|\le\frac1{|I_h|}\int_{I_h}|f(t)-f(x)|\,dt $$
である。$h_k\ne0$、$h_k\to0$ となる任意の列について、$(I_{h_k})$ は ex-ld-regular-examples の 3 により $x$ に正則に縮むので、thm-ld-regular から右辺は $0$ に近づく。列は任意なので $h\to0$ の極限として $F'(x)=f(x)$ である。後半は thm-ld-main による。$\square$

$f$ が $x$ で連続なら $x$ は Lebesgue 点なので、これは連続関数の場合の 微積分学の基本定理 を含む。$f\in L^1(\mathbb{R})$ の場合は Bass24 Theorem 14.5(p. 127)、Axl26 4.19(p. 111)にある。絶対連続関数が不定積分で表されることと合わせた議論は 絶対連続関数 にある。

Lebesgue の密度定理

$E\subset\mathbb{R}^n$ を Lebesgue 可測集合とする。ほとんどすべての $x\in E$ で
$$ \lim_{r\to+0}\frac{|E\cap B(x,r)|}{|B(x,r)|}=1 $$
であり、ほとんどすべての $x\notin E$ でこの極限は $0$ である。

$1_E$ はコンパクト集合 $K$ の上で $\int_K1_E\le|K|<\infty$ を満たすので局所可積分であり、$\frac1{|B(x,r)|}\int_{B(x,r)}1_E=\frac{|E\cap B(x,r)|}{|B(x,r)|}$ である。thm-ld-main の後半を $f=1_E$ に使えば、ほとんどすべての $x$ でこの比は $1_E(x)$ に収束する。$\square$

極限が $1$ になる点を $E$ の 密度点(density point)という。$n=1$ の場合は Axl26 4.24(p. 113)、$\mathbb{R}^n$ の場合は Bass24 p. 127 にある。可測集合はほとんどすべての点で「ほぼ全部」か「ほぼ空」に見える。一方、すべての有界開区間 $I$ について $0<|E\cap I|<|I|$ となる Borel 集合 $E\subset\mathbb{R}$ が存在する(Axl26 4.25、p. 113。この記事では証明しない)。そのような $E$ でも、密度が $0$ と $1$ 以外になる点は零集合しかない。

密度が $0$ でも $1$ でもない点

$n=2$、$0<\beta\le\pi$ とし、極座標で $E:=\{(t\cos\theta,t\sin\theta)\mid t>0,\ 0<\theta<\beta\}$(中心角 $\beta$ の扇形の領域)とおく。$|E\cap B(0,r)|=\frac\beta2r^2$、$|B(0,r)|=\pi r^2$ なので、原点での比は $\frac\beta{2\pi}$ である。また、境界の半直線 $\theta=0$ 上の点 $x=(s,0)$($s>0$)では、$r< s\sin\min\{\beta,\frac\pi2\}$ のとき、$B(x,r)$ の点の偏角は $\arcsin(r/s)$ 未満(絶対値)なので、$E\cap B(x,r)$ は $B(x,r)$ の上半分($x$ を通る水平線より上の部分)になり、比は $\frac12$ である。例外の点は $E$ の境界の上にあり、境界は零集合である。

反例:条件を外すと成り立たない

外す条件反例成り立たなくなること
$f$ の局所可積分性($f$ は可測で値は有限)ex-ld-not-integrable の $\sum_k2^{-k}\lvert x-q_k\rvert^{-1}$平均の収束(すべての $x$、$r$ で平均が $\infty$)
「ほとんどすべての $x$」Hardy–Littlewoodの極大関数 の例「反例:すべての点では成り立たない」の $1_{[0,1]}$ と点 $0$点 $0$ で平均が $f(0)$ に収束すること
def-ld-regular の $\lvert E_k\rvert\ge c\lvert B(x,r_k)\rvert$ex-ld-biased の太った Cantor 集合 $K$ と $1_K$$K$ の各点で $E_k$ の上の平均が $1_K(x)$ に収束すること
def-ld-regular の $E_k\subset B(x,r_k)$ex-ld-not-shrinking の $1_{(0,\infty)}$ と $B(x+1,1/k)$$(-1,0)$ の各点で平均が $f(x)$ に収束すること
反例:偏った近傍の族

$K\subset[0,1]$ を、Cantor集合 の例「反例:測度が正の疎な閉集合」の閉集合とする。$K$ は内部が空で $|K|=\frac12$ である。$f:=1_K$ とし、$x\in K$、$k\ge1$ とする。区間 $(x-\frac1k,x+\frac1k)$ は $K$ に含まれないので $K$ の外の点 $y$ を含み、$\mathbb{R}\setminus K$ は開集合なので、$y$ を含む開区間 $I_k(x)\subset(x-\frac1k,x+\frac1k)\setminus K$ がとれる。$E_k(x):=I_k(x)$ とすると、$E_k(x)\subset B(x,\frac1k)$、$|E_k(x)|>0$ であり、
$$ \frac1{|E_k(x)|}\int_{E_k(x)}f=0\qquad(k=1,2,\dots) $$
だが $f(x)=1$ である。よって測度 $\frac12$ の集合 $K$ のすべての点で、この族の上の平均は $f(x)$ に収束しない。集合は $x$ に縮んでいるが、球の一定の割合を占めるという条件だけが破れている。実際 thm-ld-regular によれば、$K$ のほとんどすべての点 $x$($1_K$ の Lebesgue 点)で $k\,|I_k(x)|\to0$ でなければならない。
$x$ 自身の近傍を含めても事情は変わらない。$\delta_k:=\frac12\min\{\frac1k,\ \frac1k|I_k(x)|\}$ とし、$E_k'(x):=I_k(x)\cup(x-\delta_k,x+\delta_k)$ とおくと $E_k'(x)\subset B(x,\frac1k)$ であり、$\int_{E_k'(x)}f\le2\delta_k$、$|E_k'(x)|\ge|I_k(x)|$ から平均は $\frac{2\delta_k}{|I_k(x)|}\le\frac1k\to0$ である。

反例:局所可積分でない関数

$(q_k)_{k\ge1}$ を有理数の全体の数え上げとし、$A_k:=\{x\mid|x-q_k|< 2^{-k/2}\}$ とおく。$\sum_k|A_k|=\sum_k2\cdot2^{-k/2}<\infty$ なので、$Z:=\bigcap_m\bigcup_{k\ge m}A_k$ は $|Z|\le\sum_{k\ge m}|A_k|\to0$ から零集合である。$x\notin Z\cup\mathbb{Q}$ なら、ある $m$ から先の $k$ で $|x-q_k|\ge2^{-k/2}$ なので、
$$ f(x):=\sum_{k\ge1}2^{-k}|x-q_k|^{-1} $$
の第 $k$ 項は $2^{-k/2}$ 以下であり、残りの有限個の項も有限なので $f(x)<\infty$ である。$Z\cup\mathbb{Q}$ の上では $f:=0$ とおく。$f$ は可測で、すべての点で有限の値をとる。一方、どの $x$、$r>0$ についても区間 $(x-r,x+r)$ はある $q_k$ を含み、$q_k$ の近くで $\int|y-q_k|^{-1}\,dy=\infty$ なので($Z\cup\mathbb{Q}$ は零集合なので積分は変わらない)
$$ \frac1{2r}\int_{x-r}^{x+r}f(y)\,dy\ge\frac{2^{-k}}{2r}\int_{x-r}^{x+r}\frac{dy}{|y-q_k|}=\infty $$
である。よって平均はすべての $x$、$r$ で $\infty$ になり、$f(x)$ には収束しない。

反例:縮まない族

$n=1$、$f:=1_{(0,\infty)}$ とし、$x\in(-1,0)$ について $E_k:=B(x+1,\frac1k)$ とおく。$|E_k|=|B(x,\frac1k)|$ なので測度の条件は満たすが、$E_k$ は $x$ のまわりの小さな球に入らない。$\frac1k< x+1$ なら $E_k\subset(0,\infty)$ なので平均は $1$ で、$f(x)=0$ に収束しない。$(-1,0)$ は測度 $1$ をもつ。

一般の測度での微分定理

thm-ld-maximal の証明では、拡大した球の測度がもとの球の測度の一定倍で抑えられること($|\overline B(a,5r)|=5^n|B(a,r)|$)を使った。この性質を仮定として取り出すか、被覆の議論を取り替えると、Lebesgue 測度以外の測度でも同じ形の定理が得られる。

  • 倍加測度。 距離空間 $X$ 上の Borel 測度 $\mu$ が、すべての球で $0<\mu(B(x,r))<\infty$ かつ $\mu(B(x,2r))\le C\mu(B(x,r))$ を満たすとき、$f\in L^1_{\mathrm{loc}}(\mu)$ の $\mu$-ほとんどすべての点で $\frac1{\mu(B(x,r))}\int_{B(x,r)}|f-f(x)|\,d\mu\to0$ が成り立つ。証明は同じ筋で、倍加測度 の定理「Lebesgue の微分定理」にある。
  • $\mathbb{R}^n$ 上の Radon 測度。 倍加性をもたない Radon 測度 $\mu$ でも、閉球 $\overline B(x,r)$ の上の $\mu$ による平均について同じ結論が $\mu$-ほとんどすべての点で成り立つ。ここでは $5r$ 被覆補題の代わりに、球を拡大せずに重なりの回数を抑える Besicovitch の被覆定理を使う。主張と所在は Besicovitchの被覆定理 の定理「Lebesgue–Besicovitch の微分定理」にある。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する