3次関数のグラフ

同義語:graphs of cubic functions

概要

3次関数のグラフ(graphs of cubic functions)とは、$y=ax^3+bx^2+cx+d$($a\ne0$)のグラフで、次の共通の性質をもつ。$p=-\frac{b}{3a}$ とおくと $f(p+t)=f(p)+f'(p)t+at^3$ となり、グラフは変曲点 $(p,f(p))$ に関して点対称で、対称の中心はこの点だけである。導関数を平方完成すると $f'(x)=3a(x-p)^2-\frac{D}{3a}$($D=b^2-3ac$)となり、極値をもつための必要十分条件は $D>0$ である。$D=0$ なら変曲点で接線が水平、$D<0$ なら単調で、グラフは上下の向きを除いて 3 つの型に分かれる。極値があるとき、極値の点を結ぶ線分の中点は変曲点で、極値の点を通る水平な直線は $x=p\mp2s$(極値の点は $x=p\pm s$)で再びグラフと交わる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 関数の増減と極値, 判別式(高校数学), グラフの平行移動と対称移動

高校での出発点:増減表で 3 次関数をかく

数学 II では、3 次関数 $y=ax^3+bx^2+cx+d$($a\ne0$)のグラフを、導関数の符号を調べて増減表を作ってかく。増減表の作り方と、「導関数の符号が $+$ から $-$ に変われば極大」という判定は 関数の増減と極値 で扱った。この記事では、3 次関数のグラフに共通する形の性質を取り出す。まず 2 つの例をかく。

例 1:極大と極小がある 3 次関数

$f(x)=x^3-3x^2+2$ とする。導関数は
$$ f'(x)=3x^2-6x=3x(x-2) $$
である。$f'(x)=0$ となるのは $x=0$ と $x=2$ で、$x<0$ と $x>2$ では $f'(x)>0$、$0< x<2$ では $f'(x)<0$ である(2 つの因数 $x$、$x-2$ の符号から決まる)。値は $f(0)=2$、$f(2)=8-12+2=-2$ である。

$x$$\cdots$$0$$\cdots$$2$$\cdots$
$f'(x)$$+$$0$$-$$0$$+$
$f(x)$↗極大 $2$↘極小 $-2$↗

極大の点 $(0,2)$ と極小の点 $(2,-2)$ を結ぶ線分の中点は $(1,0)$ で、$f(1)=1-3+2=0$ なので、この中点はグラフの上にある(図2)。

例 2:極値がない 3 次関数

$f(x)=x^3+3x$ とする。$f'(x)=3x^2+3$ で、$x^2\ge0$ なので $f'(x)\ge3>0$ である。$f$ はずっと増加し、極大も極小もない。$f'(x)=0$ となる $x$ もない。
一方、$f(x)=x^3$ では $f'(x)=3x^2$ で、$f'(0)=0$ だが、$x\ne0$ では $f'(x)>0$ なので、やはりずっと増加し、極値はない(図1 中央)。

2 つの例から、次の問いが出てくる。

  1. 例 1 で、極大と極小の点の中点がグラフに乗ったのは偶然か。→ thm-cub-symmetry、cor-cub-extrema
  2. 3 次関数が極値をもつかどうかは、係数からどう判定できるか。→ thm-cub-types
  3. 3 次関数のグラフの形は、何種類あるのか。→ thm-cub-types、rem-cub-affine
  4. 同じ性質は、2 次関数や 4 次関数にもあるのか。→ ex-cub-quadratic、ex-cub-quartic
    高校の計算この記事での見方ボックス
    増減表をかく導関数 $3ax^2+2bx+c$ の平方完成thm-cub-types
    $f'(x)=0$ の判別式グラフの型(3 種類)を決める量 $b^2-3ac$thm-cub-types
    $x=p+t$ と置きかえる対称の中心へ平行移動して奇関数 $at^3+mt$ にするthm-cub-symmetry
    極値の差・等間隔の性質奇関数の対称性から出る計算cor-cub-extrema

3 次関数のグラフは点対称

点対称の定義

点に関して対称なグラフ

関数 $f$ はすべての実数で定義されているとする。点 $\mathrm P(p,q)$ について、すべての実数 $t$ で
$$ f(p+t)+f(p-t)=2q $$
が成り立つとき、$y=f(x)$ のグラフは点 P に関して対称(点対称)であるといい、P を対称の中心という。
この式は、グラフ上の 2 点 $(p+t,\,f(p+t))$ と $(p-t,\,f(p-t))$ の中点が、いつも P であることを表す。P を中心にグラフを $180^\circ$ 回転すると、グラフは自分自身に重なる。この言いかえ(点に関する対称移動との関係)は グラフの平行移動と対称移動 で証明している。$p=q=0$ のときは $f(-t)=-f(t)$、つまり $f$ が奇関数であることと同じである。

点対称を式で確かめる
  1. $f(x)=x^3$ は $f(-t)=(-t)^3=-t^3=-f(t)$ を満たす奇関数なので、グラフは原点に関して対称である。
  2. ex-cub-start-two-extrema の $f(x)=x^3-3x^2+2$ で、$x=1+t$ を代入する。$(1+t)^3=1+3t+3t^2+t^3$、$(1+t)^2=1+2t+t^2$ なので
    $$ f(1+t)=(1+3t+3t^2+t^3)-3(1+2t+t^2)+2=t^3-3t $$
    である。$t^2$ の項が $3t^2-3t^2=0$ と消え、定数項も $1-3+2=0$ となった。$t$ を $-t$ にかえると $f(1-t)=-t^3+3t$ なので、$f(1+t)+f(1-t)=0=2\cdot0$ である。グラフは点 $(1,0)$ に関して対称である。たとえば $t=3$ では $f(4)=18$、$f(-2)=-18$ で、和は $0$ である。

対称の中心は変曲点

ex-cub-check-symmetry の 2 では、$x=1+t$ と置くと $t^2$ の項がちょうど消えた。一般の 3 次関数でも、$t^2$ の項が消えるように平行移動の量 $p$ を選べる。

3 次関数のグラフの対称の中心

$f(x)=ax^3+bx^2+cx+d$($a\ne0$)とし、
$$ p=-\frac{b}{3a},\qquad m=f'(p) $$
とおく。このとき次が成り立つ。

  1. すべての実数 $t$ について $f(p+t)=f(p)+mt+at^3$ である。
  2. $y=f(x)$ のグラフは点 $\mathrm P(p,f(p))$ に関して対称である。
  3. グラフの対称の中心は P だけである。
  4. 第 2 次導関数は $f''(x)=6a(x-p)$ で、$x=p$ の前後で符号が変わる。つまり P はグラフの変曲点(下に凸と上に凸が入れかわる点)である。
$x=p+t$ を代入して $t$ について整理する

方針:$f(p+t)$ を $t$ の 3 次式として展開し、$t^2$ の係数が $0$ になることを確かめる。すると $f(p+t)-f(p)$ は $t$ の奇関数になる。
段 1(展開)。$(p+t)^3=p^3+3p^2t+3pt^2+t^3$、$(p+t)^2=p^2+2pt+t^2$ なので
$$ f(p+t)=a(p^3+3p^2t+3pt^2+t^3)+b(p^2+2pt+t^2)+c(p+t)+d $$
である。$t$ の次数ごとにまとめると
$$ f(p+t)=at^3+(3ap+b)t^2+(3ap^2+2bp+c)t+(ap^3+bp^2+cp+d) $$
となる。
段 2(係数を読む)。定数項は $ap^3+bp^2+cp+d=f(p)$ である。$t$ の係数は $f'(x)=3ax^2+2bx+c$ に $x=p$ を入れた値 $f'(p)=m$ である。$t^2$ の係数は、$p=-\frac b{3a}$ より $3ap+b=-b+b=0$ である。よって $f(p+t)=f(p)+mt+at^3$ となり、1 が成り立つ。
段 3(対称性)。1 の $t$ を $-t$ にかえると $f(p-t)=f(p)-mt-at^3$ である。1 と足すと $f(p+t)+f(p-t)=2f(p)$ である。これは def-cub-point-symmetric の式で $q=f(p)$ としたものなので、2 が成り立つ。
段 4(中心はただ 1 つ)。点 $(r,w)$ も対称の中心だとする。段 1 と同じ計算を $p$ のかわりに $r$ で行うと、$f(r+t)=at^3+(3ar+b)t^2+f'(r)t+f(r)$ である。$t$ を $-t$ にかえて足すと、奇数次の項が消えて
$$ f(r+t)+f(r-t)=2(3ar+b)t^2+2f(r) $$
となる。これがすべての $t$ で $2w$ に等しいので、$t=0$ から $f(r)=w$、$t=1$ から $2(3ar+b)+2f(r)=2w$ を得て、$3ar+b=0$、つまり $r=-\frac b{3a}=p$ である。よって中心は P だけで、3 が成り立つ。
段 5(変曲点)。$f''(x)=(3ax^2+2bx+c)'=6ax+2b=6a\bigl(x+\frac b{3a}\bigr)=6a(x-p)$ である。$a>0$ なら $x< p$ で $f''<0$(上に凸)、$x>p$ で $f''>0$(下に凸)である。$a<0$ なら符号は逆である。どちらでも $x=p$ の前後で $f''$ の符号が変わるので、P は変曲点である。$\square$

変曲点の定義と、第 2 次導関数の符号と凹凸の関係は 接線・法線と曲線の凹凸 で扱っている。定理の 1 は、グラフを $x$ 軸方向に $-p$、$y$ 軸方向に $-f(p)$ だけ平行移動すると、奇関数 $y=at^3+mt$ のグラフになるという意味である。

対称の中心を求める
  1. $f(x)=x^3-3x^2+2$:$a=1$、$b=-3$ なので $p=-\frac{-3}{3}=1$、$f(1)=0$、$m=f'(1)=3-6=-3$ である。定理の 1 は $f(1+t)=t^3-3t$ で、ex-cub-check-symmetry の 2 の計算と一致する。
  2. $f(x)=2x^3+6x^2-1$:$a=2$、$b=6$ なので $p=-\frac{6}{6}=-1$、$f(-1)=-2+6-1=3$ である。$f'(x)=6x^2+12x$ なので $m=f'(-1)=6-12=-6$ で、定理の 1 は
    $$ f(-1+t)=3-6t+2t^3 $$
    である。$t=1$ で確かめると、左辺は $f(0)=-1$、右辺は $3-6+2=-1$ である。$t=-1$ では左辺 $f(-2)=-16+24-1=7$、右辺 $3+6-2=7$ である。$f(0)+f(-2)=-1+7=6=2\cdot3$ で、中心 $(-1,3)$ に関して対称になっている。

極値をもつ条件とグラフの 3 つの型

3 次関数の導関数 $f'(x)=3ax^2+2bx+c$ は 2 次関数である。その平方完成から、グラフの型が決まる。

3 次関数のグラフの 3 つの型

$f(x)=ax^3+bx^2+cx+d$($a\ne0$)とし、$p=-\frac b{3a}$、$D=b^2-3ac$ とおく。$D$ は 2 次方程式 $f'(x)=3ax^2+2bx+c=0$ の判別式 $(2b)^2-4\cdot3a\cdot c$ の $\frac14$ である。

  1. すべての $x$ で $f'(x)=3a(x-p)^2-\dfrac{D}{3a}$ である。とくに変曲点での接線の傾きは $f'(p)=-\dfrac D{3a}$ である。
  2. $D>0$ のとき、$s=\dfrac{\sqrt D}{3|a|}$ とおくと、$f$ は $x=p-s$ と $x=p+s$ で極値をとる。$a>0$ なら $x=p-s$ で極大、$x=p+s$ で極小であり、$a<0$ なら逆である。
  3. $D=0$ のとき、$f'(x)=3a(x-p)^2$ で、$f$ は実数全体で増加($a>0$)または減少($a<0$)し、極値をもたない。変曲点での接線は水平である。
  4. $D<0$ のとき、$f'(x)$ はいつも $a$ と同じ符号で $0$ にならず、$f$ は実数全体で増加($a>0$)または減少($a<0$)し、極値をもたない。
    したがって、$f$ が極値をもつための必要十分条件は $D=b^2-3ac>0$ である。
導関数を平方完成して符号を調べる

方針:$f'$ を平方完成して「$3a(x-p)^2+$ 定数」の形にし、定数の符号で場合を分ける。増減と極値の判定は 関数の増減と極値 の定理(導関数の符号と増減、導関数の符号の変化による極値の判定、導関数が有限個の点で $0$ になる場合の増加)を使う。これらは平均値の定理から出る。前の 2 つは大学の教科書では Leb26 Proposition 4.2.8、4.2.9 にある。3 つ目(導関数が有限個の点で $0$ になる場合)は Proposition 4.2.8 には含まれないが、関数の増減と極値 で、区間を例外の点で分けて 4.2.8 と(端点の扱いを除いて)同じ定理(導関数の符号と増減)から導いている。本記事で使うのは例外の点が 1 つの場合だけなので、段 3 でその議論を直接書く。まず $a>0$ の場合を示し、最後に $a<0$ を $-f$ に帰着する。
段 1(平方完成)。$3a(x-p)^2=3a\bigl(x+\frac b{3a}\bigr)^2=3ax^2+2bx+\dfrac{b^2}{3a}$ なので
$$ f'(x)=3ax^2+2bx+c=3a(x-p)^2+c-\frac{b^2}{3a}=3a(x-p)^2-\frac{b^2-3ac}{3a}=3a(x-p)^2-\frac{D}{3a} $$
である。$x=p$ を入れると $f'(p)=-\frac D{3a}$ である。これで 1 が示せた。
段 2($a>0$、$D>0$)。$\frac{D}{3a}=3a\cdot\frac{D}{9a^2}=3as^2$($s^2=\frac{D}{9a^2}$ だから)なので、段 1 の式は
$$ f'(x)=3a\bigl\{(x-p)^2-s^2\bigr\}=3a\bigl(x-(p-s)\bigr)\bigl(x-(p+s)\bigr) $$
となる。$s>0$ なので $p-s< p+s$ であり、$3a>0$ だから、$f'(x)$ は $x< p-s$ で正、$p-s< x< p+s$ で負、$x>p+s$ で正である。導関数の符号が $x=p-s$ で $+$ から $-$ に、$x=p+s$ で $-$ から $+$ に変わるので、$x=p-s$ で極大、$x=p+s$ で極小である。
段 3($a>0$、$D=0$)。段 1 から $f'(x)=3a(x-p)^2$ で、$x\ne p$ では $f'(x)>0$、$x=p$ だけで $f'(p)=0$ である。導関数が $0$ になる点が 1 つだけで、ほかでは正なので、$f$ は実数全体で増加する。実際、$x\le p$ の範囲(区間の端点 $p$ 以外では $f'>0$)と $x\ge p$ の範囲(同じく)では、それぞれ導関数の符号と増減の定理から $f$ は増加する。$x< y$ のとき、両方が同じ範囲にあればこれで $f(x)< f(y)$ であり、$x< p< y$ なら $f(x)< f(p)< f(y)$ である。増加する関数では、どの点 $x_0$ についても、$x_0$ のすぐ左に $f(x_0)$ より小さい値、すぐ右に大きい値があるので、$x_0$ は極大でも極小でもない。$f'(p)=0$ なので、変曲点 $(p,f(p))$ での接線は水平である。
段 4($a>0$、$D<0$)。$-\frac{D}{3a}>0$ なので、段 1 から $f'(x)\ge-\frac D{3a}>0$ がすべての $x$ で成り立つ。$f$ は実数全体で増加し、段 3 と同じ理由で極値をもたない。
段 5($a<0$)。$g(x)=-f(x)=-ax^3-bx^2-cx-d$ の係数から作る $D$ は $(-b)^2-3(-a)(-c)=b^2-3ac$ で、$f$ と同じである。また $p=-\frac{-b}{3(-a)}=-\frac b{3a}$ も同じである。$-a>0$ なので段 2〜4 が $g$ に使える。$f=-g$ では増加と減少、極大と極小が入れかわるので、2〜4 の $a<0$ の場合が得られる。$\square$

判定の量 $D$ で型を分ける
  1. $y=x^3-3x$:$a=1$、$b=0$、$c=-3$ で $D=0-3\cdot1\cdot(-3)=9>0$。$p=0$、$s=\frac{\sqrt9}{3}=1$ なので、$x=-1$ で極大 $2$、$x=1$ で極小 $-2$ である。変曲点 $(0,0)$ での接線の傾きは $-\frac93=-3$ である(図1 左)。
  2. $y=x^3$:$D=0$。極値はなく、原点での接線は $y=0$(水平)である(図1 中央)。
  3. $y=x^3+3x$:$D=0-3\cdot1\cdot3=-9<0$。極値はなく、変曲点 $(0,0)$ での接線の傾きは $-\frac{-9}{3}=3$ である(図1 右)。
  4. $y=-x^3+3x$:$a=-1$、$b=0$、$c=3$ で $D=0-3\cdot(-1)\cdot3=9>0$、$s=\frac{3}{3}=1$ である。$a<0$ なので $x=p-s=-1$ で極小 $f(-1)=1-3=-2$、$x=p+s=1$ で極大 $f(1)=-1+3=2$ である。
  5. ex-cub-start-two-extrema の $y=x^3-3x^2+2$:$a=1$、$b=-3$、$c=0$ で $D=9>0$、$p=1$、$s=1$ である。極値の $x$ 座標 $p\pm s$ は $0$ と $2$ で、増減表と一致する。

3 次関数のグラフの 3 つの型(!FORMULA[327][36197589][0])。左は !FORMULA[328][35333650][0] で極大と極小(緑の点)がある。中央は !FORMULA[329][35332689][0] で極値はなく、変曲点での接線(赤の破線)が水平である。右は !FORMULA[330][35331728][0] で極値はなく、変曲点での接線の傾きも正である。黒い点はどれも変曲点(対称の中心)であることを見る図。 3 次関数のグラフの 3 つの型($a>0$)。左は $D>0$ で極大と極小(緑の点)がある。中央は $D=0$ で極値はなく、変曲点での接線(赤の破線)が水平である。右は $D<0$ で極値はなく、変曲点での接線の傾きも正である。黒い点はどれも変曲点(対称の中心)であることを見る図。
$a<0$ のグラフは、$a>0$ のグラフを $x$ 軸に関して折り返した形になる。したがって、3 次関数のグラフは、上下の向きを除けば、図1 の 3 つの型のどれかである。$D=b^2-3ac$ の符号は、thm-cub-types の 1 から、変曲点での接線の傾き $m=f'(p)$ の符号と逆($a>0$ のとき)になっている。「変曲点での接線が右下がりなら、曲線は一度下がってから上がり直す」と読める。

極値についての計算

極値がある場合($D>0$)には、対称性からいくつかの便利な等式が出る。

極値の点と等間隔の性質

thm-cub-types の 2 の場合($D>0$)に、$s=\frac{\sqrt D}{3|a|}$ とする。このとき次が成り立つ。

  1. 2 つの極値の点を結ぶ線分の中点は、変曲点 $\mathrm P(p,f(p))$ である。つまり $f(p-s)+f(p+s)=2f(p)$ である。
  2. 極大値と極小値の差は $|f(p-s)-f(p+s)|=4|a|s^3$ である。
  3. すべての $x$ について
    $$ f(x)-f(p+s)=a\bigl(x-(p+s)\bigr)^2\bigl(x-(p-2s)\bigr),\qquad f(x)-f(p-s)=a\bigl(x-(p-s)\bigr)^2\bigl(x-(p+2s)\bigr) $$
    である。とくに、極値の点を通る水平な直線は、グラフともう 1 点 $x=p\mp2s$ で交わり、5 つの数 $p-2s,\ p-s,\ p,\ p+s,\ p+2s$ は等間隔に並ぶ。
中心に移した奇関数 $at^3+mt$ で計算する

方針:$x=p+t$ とおき、$g(t)=f(p+t)-f(p)$ を使う。thm-cub-symmetry の 1 から $g(t)=at^3+mt$ で、$m=f'(p)$ である。
段 1($m$ を $s$ で書く)。thm-cub-types の 1 から $m=-\frac{D}{3a}$ で、その証明の段 2 と同じ計算で $\frac D{3a}=3as^2$ なので、$m=-3as^2$ である。よって $g(t)=at^3-3as^2t$ である。
段 2(極値の値)。$g(s)=as^3-3as^3=-2as^3$、$g(-s)=-as^3+3as^3=2as^3$ である。
段 3(1 と 2)。段 2 から $g(s)+g(-s)=0$、つまり $f(p+s)+f(p-s)=2f(p)$ で、1 が成り立つ。また $g(-s)-g(s)=4as^3$ で、$f(p-s)-f(p+s)=g(-s)-g(s)$ なので、2 が成り立つ(絶対値をとると $a$ の符号によらない)。
段 4(3 の前半)。$a(t-s)^2(t+2s)$ を展開すると
$$ a(t^2-2st+s^2)(t+2s)=a(t^3+2st^2-2st^2-4s^2t+s^2t+2s^3)=a(t^3-3s^2t+2s^3) $$
で、これは $at^3-3as^2t+2as^3=g(t)-g(s)$ に等しい。$t=x-p$ を戻すと、$g(t)-g(s)=f(x)-f(p+s)$、$t-s=x-(p+s)$、$t+2s=x-(p-2s)$ なので、前半の式になる。
段 5(3 の後半)。段 4 の $s$ を $-s$ にかえても $g(t)=at^3-3a(-s)^2t$ は変わらないので、$g(t)-g(-s)=a(t+s)^2(t-2s)$ である。$t=x-p$ を戻すと後半の式になる。
段 6(等間隔)。前半の式の右辺が $0$ になるのは $x=p+s$(2 重)と $x=p-2s$ だけなので、直線 $y=f(p+s)$ はグラフと $x=p+s$ で接し、$x=p-2s$ で交わる。後半も同じで、直線 $y=f(p-s)$ は $x=p+2s$ で交わる。5 つの数の間隔はどれも $s$ である。$\square$

極値の計算と等間隔の性質
  1. $f(x)=x^3-3x^2+2$:$p=1$、$s=1$、$a=1$ である。極大値 $f(0)=2$ と極小値 $f(2)=-2$ の和は $0=2f(1)$、差は $4=4\cdot1\cdot1^3$ である。直線 $y=2$ はグラフと $x=p+2s=3$ でも交わり、$f(3)=27-27+2=2$ である。直線 $y=-2$ は $x=p-2s=-1$ で交わり、$f(-1)=-1-3+2=-2$ である。5 つの数 $-1,0,1,2,3$ は等間隔である(図2)。因数分解の式は $f(x)-2=x^2(x-3)$、$f(x)+2=(x-2)^2(x+1)$ である。
  2. $f(x)=2x^3+6x^2-1$:$a=2$、$b=6$、$c=0$ で $D=36$、$s=\frac{6}{6}=1$、$p=-1$ である。極大値 $f(-2)=7$、極小値 $f(0)=-1$ で、和 $6=2f(-1)$、差 $8=4\cdot2\cdot1^3$ である。直線 $y=7$ は $x=p+2s=1$ で交わり $f(1)=2+6-1=7$、直線 $y=-1$ は $x=p-2s=-3$ で交わり $f(-3)=-54+54-1=-1$ である。

!FORMULA[421][-88308420][0] のグラフ。極大の点 !FORMULA[422][-1218750643][0] と極小の点 !FORMULA[423][930553918][0] を結ぶ線分(赤)の中点が変曲点 !FORMULA[424][-1217829044][0] であり、極値を通る水平な直線(緑の点線)がグラフと再び交わる点の !FORMULA[425][38352][0] 座標 !FORMULA[426][1117276][0]、!FORMULA[427][36213][0] を含めて、!FORMULA[428][-1210026719][0] が等間隔に並ぶことを見る図。 $y=x^3-3x^2+2$ のグラフ。極大の点 $(0,2)$ と極小の点 $(2,-2)$ を結ぶ線分(赤)の中点が変曲点 $(1,0)$ であり、極値を通る水平な直線(緑の点線)がグラフと再び交わる点の $x$ 座標 $-1$、$3$ を含めて、$x=-1,0,1,2,3$ が等間隔に並ぶことを見る図。

閉区間での最大・最小に使う

$f(x)=x^3-3x^2+2$ の $-1\le x\le k$ での最大値を、$k>-1$ について考える。閉区間での最大値は、両端での値と、区間の内部で $f'(x)=0$ となる点(この $f$ では $x=0$ と $x=2$ のうち区間の内部にあるもの)での値をすべて比べて決める(関数の増減と極値 の「最大・最小をとる点の候補」)。左端の値は $f(-1)=-2$、$x=0$ での値は $f(0)=2$、$x=2$ での値は $f(2)=-2$ である。

  • $-1< k\le0$ のとき:区間の内部に $f'(x)=0$ となる点はないので、候補は両端だけである。$f$ は $x\le0$ で増加するので $f(-1)< f(k)$ で、最大値は $f(k)=k^3-3k^2+2$ である。
  • $0< k\le3$ のとき:候補は $f(-1)=-2$、$f(0)=2$、($k>2$ なら)$f(2)=-2$、右端の $f(k)$ である。右端については、cor-cub-extrema の 3 から $f(k)-2=k^2(k-3)\le0$ なので $f(k)\le2$ である。よって候補の中で最大なのは $f(0)=2$ で、これが最大値である。(候補を使わずに直接確かめることもできる。区間のすべての $x$ で $x\le3$ なので、$f(x)-2=x^2(x-3)\le0$、つまり $f(x)\le2$ で、等号は $x=0$ のときだけ($k=3$ なら $x=3$ でも)である。)
  • $k>3$ のとき:候補は $f(-1)=-2$、$f(0)=2$、$f(2)=-2$、$f(k)$ で、$f(k)-2=k^2(k-3)>0$ から $f(k)>2$ なので、最大値は $f(k)$ である。(直接には、$-1\le x\le3$ では上と同じく $f(x)\le2< f(k)$ で、$3\le x\le k$ では $x>2$ で $f'(x)=3x(x-2)>0$ だから $f$ は増加し、$f(x)\le f(k)$ である。)
    右端の値だけ、あるいは極大値だけを見て最大値を決めてはいけない。どの場合も、両端と内部の $f'=0$ の点の値をすべて並べて比べている。場合の境目 $k=3$ は、等間隔の性質で $p+2s=1+2\cdot1$ と求まる。たとえば $k=2.5$ では $f(2.5)=15.625-18.75+2=-1.125$ で最大値は $2$、$k=3.5$ では $f(3.5)=42.875-36.75+2=8.125$ で最大値は $8.125$ である。

例と反例

この記事の主張で仮定を外すと、何が崩れるかをまとめる。

外した仮定崩れる主張ボックス
$a\ne0$(3 次関数であること)グラフが点対称ex-cub-quadratic
次数が 3グラフが点対称(4 次では変曲点に関しても対称でない。偶数次ではいつも崩れ、5 次以上の奇数次では崩れることも崩れないこともある)ex-cub-quartic
$D>0$($D\ge0$ に弱める)極値をもつex-cub-types の 2
$D>0$$f'(x)=0$ の解で極値をとるex-cub-types の 2

最後の行は、「$f'(x)=0$ となる $x$ があれば、そこで極値をとる」が誤りであることを表す。$y=x^3$ では $f'(0)=0$ だが、$x=0$ は極値の点ではない。thm-cub-types の 3 のとおり、極値をもつかどうかは $f'(x)=0$ の解の有無ではなく、$f'$ の符号が変わるかどうか($D>0$ かどうか)で決まる。

反例:2 次関数のグラフは点対称でない

$f(x)=x^2$ とする。どんな点 $(r,w)$ についても
$$ f(r+t)+f(r-t)=(r^2+2rt+t^2)+(r^2-2rt+t^2)=2r^2+2t^2 $$
で、これは $t$ によって変わる($t=0$ で $2r^2$、$t=1$ で $2r^2+2$)。すべての $t$ で $2w$ に等しくはなれないので、放物線はどの点に関しても対称でない。放物線がもつのは、軸に関する線対称である(2次関数の最大・最小)。

反例:4 次関数は変曲点に関して対称とは限らない

$f(x)=x^4-2x^2$ とする。$f''(x)=12x^2-4$ は $x=\pm\frac1{\sqrt3}$ の前後で符号が変わるので、変曲点は $\left(\pm\frac1{\sqrt3},\,-\frac59\right)$ の 2 つである($f\bigl(\frac1{\sqrt3}\bigr)=\frac19-\frac23=-\frac59$)。
どんな点 $(r,w)$ についても、$(r+t)^4+(r-t)^4=2r^4+12r^2t^2+2t^4$ と $(r+t)^2+(r-t)^2=2r^2+2t^2$ から
$$ f(r+t)+f(r-t)=2r^4+12r^2t^2+2t^4-2(2r^2+2t^2)=2f(r)+(12r^2-4)t^2+2t^4 $$
である。$t^4$ の係数 $2$ は $r$ によらず $0$ でないので、これがすべての $t$ で一定になることはない。よって、このグラフはどの点に関しても対称でない。変曲点 $r=\frac1{\sqrt3}$ では $12r^2-4=0$ なので、$f(r+t)+f(r-t)-2f(r)=2t^4$ で、$t=1$ なら $2$ だけずれる(図3)。

4 次関数 !FORMULA[529][1574755651][0](青)と、それを変曲点 !FORMULA[530][-66631539][0] に関して点対称に移したもの(橙の破線)。変曲点の近くでは重なって見えるが、離れると食い違い、グラフは点対称でないことを見る図。白丸はもう 1 つの変曲点 !FORMULA[531][-1569069454][0] である。 4 次関数 $y=x^4-2x^2$(青)と、それを変曲点 $\left(\frac1{\sqrt3},-\frac59\right)$ に関して点対称に移したもの(橙の破線)。変曲点の近くでは重なって見えるが、離れると食い違い、グラフは点対称でないことを見る図。白丸はもう 1 つの変曲点 $\left(-\frac1{\sqrt3},-\frac59\right)$ である。
3 次関数で $f(p+t)+f(p-t)-2f(p)$ が $0$ になったのは、$f(p+t)$ に $t^4$ 以上の項がなく、消すべき偶数次の項が $t^2$ の 1 つだけで、それが $p$ の選び方で消えるからである。$f(p+t)+f(p-t)$ では $t$ の奇数次の項は打ち消し合い、偶数次の項だけが 2 倍になって残るので、点 $(p,q)$ に関して対称であることは、$f(p+t)$ の $t^2,t^4,\ldots$ の係数がすべて $0$ であること(そのとき $q=f(p)$)と同じである。次数が 3 より大きいときは、次のようになる。

  • 次数 $n$ が偶数($4,6,\ldots$)のとき:$f(p+t)$ の $t^n$ の係数は $f$ の最高次の係数 $a\ne0$ のままなので、$f(p+t)+f(p-t)$ に $2at^n$ が残る。よって、どの点に関しても対称にならない(ex-cub-quartic)。2 次(ex-cub-quadratic)も同じ理由である。
  • 次数 $n$ が $5$ 以上の奇数のとき:最高次の項は打ち消し合うが、$t^{n-1},t^{n-3},\ldots,t^2$ の係数を 1 つの文字 $p$ の選び方だけで全部 $0$ にする必要があり、できる場合とできない場合がある。$f(x)=x^5$ は奇関数で、原点に関して対称である。一方 $f(x)=x^5+x^2$ では、$f(p+t)$ の $t^4$ の係数は $5p$ なので $p=0$ とするしかないが、そのとき $f(t)+f(-t)=2t^2$ が残るので、どの点に関しても対称でない。

大学数学で見る:グラフの形はアフィン変換で 3 種類

thm-cub-symmetry の 1 で、3 次関数のグラフは平行移動で $y=at^3+mt$ のグラフになった。さらに $t$ の目盛りと $y$ の目盛りを伸び縮みさせると、係数をそろえられる。

目盛りを変えて標準形にする

$g(t)=at^3+mt$ で $m\ne0$ とする。$k=\sqrt{\dfrac{|m|}{3|a|}}$(正の数)とおき、$t=ku$ と置きかえると
$$ g(ku)=ak^3u^3+mku=ak^3\Bigl(u^3+\frac{m}{ak^2}u\Bigr) $$
である。$k^2=\frac{|m|}{3|a|}$ なので $\dfrac{m}{ak^2}=\dfrac{3m|a|}{a|m|}$ で、これは $\frac ma<0$ なら $-3$、$\frac ma>0$ なら $3$ である。よって $g(ku)=ak^3(u^3-3u)$ または $ak^3(u^3+3u)$ となる。

  1. $y=x^3-12x$:$a=1$、$m=-12$、$k=\sqrt{\frac{12}3}=2$ で、$x=2u$ とおくと $8u^3-24u=8(u^3-3u)$ である。
  2. $y=2x^3+6x^2-1$:ex-cub-center から $y=3-6t+2t^3$($t=x+1$)で、$a=2$、$m=-6$、$k=\sqrt{\frac6{6}}=1$ なので $y=2(t^3-3t)+3$ である。
  3. $y=x^3+3x$:$m=3$、$k=1$ で、そのまま $u^3+3u$ である。
大学数学で見ると:アフィン変換による分類と判別式

平行移動と、座標軸ごとの拡大・縮小(と $x$ 軸に関する折り返し)を組み合わせた変換 $(x,y)\mapsto(\alpha x+\beta,\ \gamma y+\delta)$($\alpha\ne0$、$\gamma\ne0$)は、アフィン変換 の特別なものである。thm-cub-symmetry と ex-cub-normal-form から、どの 3 次関数のグラフも、この形の変換で次の 3 つのグラフのどれか 1 つに移る。
$$ y=u^3-3u\quad(D>0),\qquad y=u^3\quad(D=0),\qquad y=u^3+3u\quad(D<0) $$
型を決めるのは $D=b^2-3ac$ の符号である($m=-\frac D{3a}$ なので、$\frac ma$ の符号は $D$ の符号と逆)。この変換は、極値をもつかどうかと、傾き $0$ の接線をもつかどうかを変えない(接線の傾きは $\frac\gamma\alpha$ 倍になるだけである)。$y=u^3-3u$ だけが極値をもち、$y=u^3$ には傾き $0$ の接線があって $y=u^3+3u$ にはないので、3 つのグラフは互いに移り合わない。
$x^2$ の項を消す置きかえ $x=t-\frac b{3a}$ は、3 次方程式を解く Cardanoの公式 の最初の一歩と同じである。実際、$x=p+t$ とおいて方程式 $f(x)=0$ の両辺を $a$ で割ると、thm-cub-symmetry の 1 から $t^3+Pt+Q=0$($P=\frac ma$、$Q=\frac{f(p)}a$)となる(ここで $P,Q$ を新しい文字にしたのは、$m=f'(p)$ と区別するためである。$a=1$ なら $P=m$ である)。この方程式の 多項式の判別式 は $\Delta=-4P^3-27Q^2$ で、$P<0$ のとき $\Delta$ は $t^3+Pt+Q$ の極大値と極小値の積の $-27$ 倍に等しい(証明は 3次方程式と多項式の判別式)。$\Delta>0$(異なる 3 つの実数解)なら $-4P^3>27Q^2\ge0$ から $P<0$、つまり $\frac ma<0$ で、上で見たとおりグラフは $D>0$ の型である。グラフの型を決める $D$ と、実数解の個数を決める $\Delta$ は、このようにつながっている。

さらに先へ

  • 3 次方程式 $f(x)=k$ の実数解の個数は、グラフと水平な直線 $y=k$ の交点の数で数えられる。cor-cub-extrema の等間隔の性質は、交点の位置の見当をつけるのに使える。この方法は 定数分離と方程式の実数解の個数 で扱う。
  • 3 次関数のグラフに曲線の外の点から引ける接線の本数は、曲線そのものと変曲点での接線を境に変わる。接線・法線と曲線の凹凸 で扱っている。
  • 3 次関数のグラフと接線で囲まれた部分の面積は、1/6公式とベータ積分 の 1/12 公式で求まる。

関連項目

参考文献

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