Euler–Maclaurinの公式

同義語:Euler-Maclaurinの公式Euler–Maclaurinの和公式Euler-Maclaurinの和公式Euler–Maclaurin formulaEuler–Maclaurin summation formula

概要

Euler–Maclaurinの公式(Euler–Maclaurin formula)とは、整数 $a< b$ と $C^m$ 級の関数 $f$ について、和 $\sum_{a< k\le b}f(k)$ を、積分 $\int_a^bf\,dx$ と、端点での $f$ の導関数の値に Bernoulli 数を掛けた項と、周期 Bernoulli 関数を使って積分で書いた剰余項との和として正確に表す公式である。$f$ が多項式なら剰余項が消えて冪の和の公式になり、$\frac1x$ や $\log x$ に使うと調和数や $\log n!$ の漸近展開が得られるが、項を無限に続けた級数は一般には発散する。$x^{-s}$ に使うと Riemann ゼータ関数が全平面に延び、$\zeta(-n)=-B_{n+1}/(n+1)$ が導かれる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Bernoulli数, Bernoulli多項式, Riemann積分, 部分積分

和 $\sum_{k}f(k)$ と積分 $\int f(x)\,dx$ はよく似ているが、等しくはない。たとえば $\sum_{k=1}^nk^2=\frac{n^3}3+\frac{n^2}2+\frac n6$ の最初の項 $\frac{n^3}3$ は積分 $\int_0^nx^2\,dx$ で、残りの $\frac{n^2}2+\frac n6$ が和と積分の差である。この差を、端点での $f$ とその導関数の値、および Bernoulli 数で書き表すのが Euler–Maclaurin の公式(Euler–Maclaurin formula)である。誤差は周期的な Bernoulli 関数との積の積分として正確に書ける(thm-eml-main)。
この公式は、和を積分で、あるいは積分を和で近似するときの基本の道具である。$f$ が多項式なら誤差は $0$ になって冪の和の公式が得られ、$f(x)=\frac1x$、$\log x$ に使うと調和数や $\log n!$ の漸近展開が得られる。$f(x)=x^{-s}$ に使うと、Riemann ゼータ関数が全平面に解析接続され、負の整数での値が Bernoulli 数で表される(thm-eml-zeta)。1 次と 2 次の場合を部分積分だけで扱った高校向けの記事が Euler–Maclaurinの公式(高校数学) で、この記事はその一般形を扱う。

Bernoulli 多項式と周期 Bernoulli 関数

Bernoulli 数 $B_n$ は $\frac{t}{e^t-1}=\sum_{n\ge0}B_n\frac{t^n}{n!}$ で定まる有理数で、$B_0=1$、$B_1=-\frac12$、$B_2=\frac16$、$B_4=-\frac1{30}$、$B_6=\frac1{42}$ であり、$3$ 以上の奇数 $n$ では $B_n=0$ である(Bernoulli数 の命題「漸化式・奇数番目・大きさ」)。Bernoulli 多項式 $B_n(x)$ は $\frac{te^{xt}}{e^t-1}=\sum_{n\ge0}B_n(x)\frac{t^n}{n!}$ で定まる多項式で、
$$ B_n(x)=\sum_{i=0}^n\binom niB_ix^{n-i},\qquad B_n(x+1)-B_n(x)=nx^{n-1}\quad(n\ge1) $$
をみたす(一般化Bernoulli数 の命題「Bernoulli多項式の基本性質」)。特に $B_1(x)=x-\frac12$、$B_2(x)=x^2-x+\frac16$、$B_n(0)=B_n$ であり、$n\ge2$ なら $B_n(1)=B_n$ である。

周期 Bernoulli 関数

$n\ge0$ について、$\mathbb R$ 上の関数 $P_n$ を $P_n(x):=B_n(x-\lfloor x\rfloor)$ で定め、周期 Bernoulli 関数 という。$P_n$ は周期 $1$ をもち、$[0,1)$ の上では $B_n$ に一致する。

$P_1(x)=x-\lfloor x\rfloor-\frac12$ はのこぎり波で、整数で $\frac12$ から $-\frac12$ へ跳ぶ。$P_2(x)=(x-\lfloor x\rfloor)^2-(x-\lfloor x\rfloor)+\frac16$ は連続で、整数で値 $\frac16$ をとる。

周期 Bernoulli 関数の性質
  1. $n\ge1$ について $B_n'(x)=nB_{n-1}(x)$ である。
  2. $n\ge2$ なら $P_n$ は $\mathbb R$ 上連続で、すべての整数 $k$ について $P_n(k)=B_n$ である。
  3. $n\ge1$ と整数 $k$ について、開区間 $(k,k+1)$ の上で $P_n$ は微分可能で $P_n'=nP_{n-1}$ である。
  4. $C_n:=\max_{0\le x\le1}\lvert B_n(x)\rvert$ とおくと、すべての $x$ で $\lvert P_n(x)\rvert\le C_n$ である。

要点:1 は $B_n(x)$ の展開式を項ごとに微分し、2 は $B_n(1)=B_n(0)$ から、3 は 1 から従う。

詳しい証明を開く

1:$B_n(x)=\sum_{i=0}^{n}\binom niB_ix^{n-i}$ を微分すると、$i=n$ の項は定数なので消え、$\binom ni(n-i)=n\binom{n-1}i$ だから $B_n'(x)=n\sum_{i=0}^{n-1}\binom{n-1}iB_ix^{n-1-i}=nB_{n-1}(x)$ である。

2:$P_n$ は各区間 $[k,k+1)$ の上では多項式 $B_n(x-k)$ なので連続である。整数 $k$ での右極限は $B_n(0)=B_n$、左極限は $B_n(1)$ で、$n\ge2$ なら $B_n(1)=B_n$ だから両者は一致し、$P_n(k)=B_n$ である。

3:$(k,k+1)$ の上では $P_n(x)=B_n(x-k)$ なので、1 により $P_n'(x)=nB_{n-1}(x-k)=nP_{n-1}(x)$ である。

4:$P_n(x)=B_n(x-\lfloor x\rfloor)$ で $0\le x-\lfloor x\rfloor<1$ だから明らかである。

偶数 $n$ では $C_n=\lvert B_n\rvert$ であることが知られている(DLMF24 式 24.9.1)が、この記事では使わない。たとえば $C_1=\frac12$、$C_2=\frac16$ である。

主定理

Euler–Maclaurinの公式

$a< b$ を整数、$m\ge1$ を整数とし、$f\colon[a,b]\to\mathbb C$ を $C^m$ 級の関数とする。このとき
$$ \sum_{a< k\le b}f(k)=\int_a^bf(x)\,dx+\sum_{j=1}^{m}\frac{(-1)^jB_j}{j!}\Bigl(f^{(j-1)}(b)-f^{(j-1)}(a)\Bigr)+R_m $$
が成り立つ。ここで剰余項は
$$ R_m=\frac{(-1)^{m+1}}{m!}\int_a^bP_m(x)\,f^{(m)}(x)\,dx,\qquad\lvert R_m\rvert\le\frac{C_m}{m!}\int_a^b\bigl\lvert f^{(m)}(x)\bigr\rvert\,dx $$
である。$B_1=-\frac12$ と、$3$ 以上の奇数 $j$ で $B_j=0$ であることを使って書き直すと
$$ \sum_{k=a}^{b}f(k)=\int_a^bf(x)\,dx+\frac{f(a)+f(b)}2+\sum_{i=1}^{\lfloor m/2\rfloor}\frac{B_{2i}}{(2i)!}\Bigl(f^{(2i-1)}(b)-f^{(2i-1)}(a)\Bigr)+R_m $$
となる。

$m$ についての帰納法で示す。剰余項の評価は lem-eml-periodic の 4 から従う。
$m=1$ の場合:整数 $k$($a\le k< b$)について、開区間 $(k,k+1)$ の上では $P_1(x)=x-k-\frac12$ であり、$P_1$ はその閉包 $[k,k+1]$ まで連続に延び、端点での値は $-\frac12$ と $\frac12$ である。部分積分 により
$$ \int_k^{k+1}P_1(x)f'(x)\,dx=\Bigl[\Bigl(x-k-\tfrac12\Bigr)f(x)\Bigr]_k^{k+1}-\int_k^{k+1}f(x)\,dx=\frac{f(k)+f(k+1)}2-\int_k^{k+1}f(x)\,dx $$
である。これを $k=a,\dots,b-1$ について足すと、$\sum_{k=a}^{b-1}\frac{f(k)+f(k+1)}2=\sum_{a< k\le b}f(k)-\frac{f(b)-f(a)}2$ だから
$$ \int_a^bP_1f'\,dx=\sum_{a< k\le b}f(k)-\frac{f(b)-f(a)}2-\int_a^bf\,dx $$
となる。$-B_1=\frac12$ なので、これは $m=1$ の主張である。
$m$ から $m+1$ へ:$f$ を $C^{m+1}$ 級とする。lem-eml-periodic の 3 により $(k,k+1)$ の上で $P_m=\frac1{m+1}P_{m+1}'$ であり、$m+1\ge2$ だから 2 により $P_{m+1}$ は連続で、整数での値は $B_{m+1}$ である。各区間 $[k,k+1]$ で部分積分して足し合わせると、端点の項は隣どうしで打ち消し合い、
$$ \int_a^bP_mf^{(m)}\,dx=\frac{B_{m+1}}{m+1}\Bigl(f^{(m)}(b)-f^{(m)}(a)\Bigr)-\frac1{m+1}\int_a^bP_{m+1}f^{(m+1)}\,dx $$
となる。両辺に $\frac{(-1)^{m+1}}{m!}$ を掛けると
$$ R_m=\frac{(-1)^{m+1}B_{m+1}}{(m+1)!}\Bigl(f^{(m)}(b)-f^{(m)}(a)\Bigr)+\frac{(-1)^{m+2}}{(m+1)!}\int_a^bP_{m+1}f^{(m+1)}\,dx $$
である。右辺の第 1 項は主張の和の $j=m+1$ の項、第 2 項は $R_{m+1}$ だから、$m+1$ の場合の主張を得る。
書き直した形は、$j=1$ の項が $-B_1\bigl(f(b)-f(a)\bigr)=\frac{f(b)-f(a)}2$ で、両辺に $f(a)$ を足せば $\frac{f(a)+f(b)}2$ になること、$3$ 以上の奇数 $j$ の項が $0$ であることから従う。

$m=1,2$ の場合が Euler–Maclaurinの公式(高校数学) の 1 次・2 次の公式で、そこでも同じ部分積分で示されている。$m=2$ では $\frac{B_2}{2}=\frac1{12}$ なので、和は「積分+端点の値の平均+$\frac{f'(b)-f'(a)}{12}$+剰余」である。FS09 Note A.7(p. 726)は同じく部分積分を繰り返す方法で、WW20 §7.21(pp. 127–128)は Darboux の公式から、この公式を導いている(WW20 は Bernoulli 数を別の記法で書く)。DLMF2 式 2.10.1 は剰余項を $B_{2m}-P_{2m}(x)$ の積分で書く形で、$m$ を $2m$ にとった主定理と同じ内容である。

冪の和

整数 $p\ge0$、$n\ge1$ について、$a=0$、$b=n$、$f(x)=x^p$、$m=p+1$ とすると $f^{(p+1)}=0$ だから剰余項は $0$ である。$f^{(j-1)}(x)=\frac{p!}{(p-j+1)!}x^{p-j+1}$ は $j\le p$ なら $x=0$ で $0$ で、$j=p+1$ では定数 $p!$ なので差が $0$ になる。$\frac{p!}{j!\,(p-j+1)!}=\frac{1}{p+1}\binom{p+1}j$ だから
$$ \sum_{k=1}^nk^p=\frac1{p+1}\sum_{j=0}^{p}(-1)^j\binom{p+1}jB_j\,n^{p+1-j} $$
を得る($j=0$ の項が積分 $\frac{n^{p+1}}{p+1}$ である)。$p=2$ では $\frac13\bigl(n^3+\frac32n^2+\frac12n\bigr)=\frac{n^3}3+\frac{n^2}2+\frac n6$ となる。和の範囲を $0\le k\le n-1$ にとり直すと $j=1$ の項の符号だけが変わり、Bernoulli数 の例「冪の和」の形になる。

和の漸近展開

$f^{(m)}$ が無限区間で絶対可積分なら、剰余項を $\int_a^\infty$ と $\int_n^\infty$ の差に分けることで、和の $n\to\infty$ での振る舞いが「定数+端点 $n$ での量+小さな誤差」の形に書ける。

和の漸近形

$a$ を整数、$m\ge1$ とし、$f\colon[a,\infty)\to\mathbb C$ を $C^m$ 級で $\int_a^\infty\lvert f^{(m)}(x)\rvert\,dx<\infty$ をみたす関数とする。このとき定数 $C_f$ があって、$a$ より大きいすべての整数 $n$ について
$$ \sum_{a< k\le n}f(k)=\int_a^nf(x)\,dx+C_f+\frac{f(n)}2+\sum_{j=2}^{m}\frac{(-1)^jB_j}{j!}f^{(j-1)}(n)+E_n,\qquad\lvert E_n\rvert\le\frac{C_m}{m!}\int_n^\infty\bigl\lvert f^{(m)}(x)\bigr\rvert\,dx $$
が成り立つ。

要点:主定理の剰余項の積分を $\int_a^\infty-\int_n^\infty$ に分け、$n$ によらない部分を $C_f$ にまとめる。

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$\lvert P_mf^{(m)}\rvert\le C_m\lvert f^{(m)}\rvert$ なので、広義積分 $\int_a^\infty P_mf^{(m)}\,dx$ は絶対収束する。thm-eml-main を $b=n$ として使い、

$$C_f:=-\sum_{j=1}^{m}\frac{(-1)^jB_j}{j!}f^{(j-1)}(a)+\frac{(-1)^{m+1}}{m!}\int_a^\infty P_mf^{(m)}\,dx,\qquad E_n:=-\frac{(-1)^{m+1}}{m!}\int_n^\infty P_mf^{(m)}\,dx$$

とおけば、$R_m=\frac{(-1)^{m+1}}{m!}\int_a^\infty P_mf^{(m)}\,dx+E_n$ であり、主定理の和の $j=1$ の項のうち $n$ の側は $-B_1f(n)=\frac{f(n)}2$ だから主張の等式を得る。$E_n$ の評価は $\lvert P_m\rvert\le C_m$ から従う。

調和数

$H_n:=\sum_{k=1}^n\frac1k$ とし、$\gamma$ を Eulerの定数 とする。整数 $p\ge0$ について、$n\to\infty$ で
$$ H_n=\log n+\gamma+\frac1{2n}-\sum_{i=1}^{p}\frac{B_{2i}}{2i\,n^{2i}}+O\bigl(n^{-2p-1}\bigr)=\log n+\gamma+\frac1{2n}-\frac1{12n^2}+\frac1{120n^4}-\cdots $$
である。

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$a=1$、$f(x)=\frac1x$、$m=2p+1$ として cor-eml-asymptotic を使う。$f^{(j-1)}(x)=(-1)^{j-1}(j-1)!\,x^{-j}$ なので $j$ 番目の項は $\frac{(-1)^jB_j}{j!}(-1)^{j-1}(j-1)!\,n^{-j}=-\frac{B_j}{j\,n^j}$ で、奇数 $j\ge3$ では $0$ である。$\int_n^\infty\lvert f^{(m)}\rvert\,dx=\int_n^\infty m!\,x^{-m-1}\,dx=\frac{(m-1)!}{n^m}$ だから $\lvert E_n\rvert\le\frac{C_m}{m\,n^m}$ である。よって $H_n=1+\log n+C_f+\frac1{2n}-\sum_{i=1}^p\frac{B_{2i}}{2i\,n^{2i}}+O(n^{-2p-1})$ で、$n\to\infty$ とすると $H_n-\log n\to1+C_f$ となる。左辺の極限は $\gamma$ だから $1+C_f=\gamma$ である。

階乗の対数(Stirling 級数)

整数 $p\ge1$ について、$n\to\infty$ で
$$ \log n!=\Bigl(n+\frac12\Bigr)\log n-n+\frac12\log(2\pi)+\sum_{i=1}^{p}\frac{B_{2i}}{2i(2i-1)\,n^{2i-1}}+O\bigl(n^{-2p}\bigr) $$
である。$p=3$ までの項は $\frac1{12n}-\frac1{360n^3}+\frac1{1260n^5}$ である。

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$a=1$、$f(x)=\log x$、$m=2p+1\ge3$ として cor-eml-asymptotic を使う。$j\ge2$ では $f^{(j-1)}(x)=(-1)^{j}(j-2)!\,x^{1-j}$ なので $j$ 番目の項は $\frac{B_j}{j(j-1)\,n^{j-1}}$ である。$\int_n^\infty\lvert f^{(m)}\rvert\,dx=\int_n^\infty(m-1)!\,x^{-m}\,dx=\frac{(m-2)!}{n^{m-1}}$ だから $E_n=O(n^{-2p})$ である。$\int_1^n\log x\,dx=n\log n-n+1$ なので、$\log n!-\bigl(n+\frac12\bigr)\log n+n$ は $1+C_f$ に収束する。一方 Stirlingの公式 の定理「Stirlingの公式」により、この量は $\log\sqrt{2\pi}$ に収束する。よって $1+C_f=\frac12\log(2\pi)$ である。

ex-eml-stirling で $p\to\infty$ とした無限級数は、どの $n$ に対しても発散する。実際 Bernoulli数 の系「符号と大きさ」により $\lvert B_{2i}\rvert>\frac{2\,(2i)!}{(2\pi)^{2i}}$ なので、第 $i$ 項の絶対値は $\frac{2\,(2i-2)!}{(2\pi)^{2i}n^{2i-1}}$ より大きく、$i\to\infty$ で $\infty$ に発散する。Euler–Maclaurin の公式が与えるのは収束級数ではなく、$n$ を大きくすると各段階の誤差が小さくなる 漸近展開 である。$p$ を固定すれば $n$ を大きくするほど誤差は小さくなるが、$n$ を固定して $p$ を増やしても誤差は $0$ に近づかない。$p-1$ 項までの誤差と $p$ 項までの誤差の差は第 $p$ 項で、これが $p\to\infty$ で発散するからである(ex-eml-counterexamples の 3 も参照)。

台形公式の誤差

台形公式の誤差の展開

実数 $a< b$、整数 $N\ge1$、$h:=\frac{b-a}N$ とし、$f\colon[a,b]\to\mathbb C$ を $C^m$ 級とする。台形公式の値を $T_h:=h\Bigl(\frac{f(a)}2+\sum_{k=1}^{N-1}f(a+kh)+\frac{f(b)}2\Bigr)$ とおくと
$$ T_h-\int_a^bf(x)\,dx=\sum_{i=1}^{\lfloor m/2\rfloor}\frac{B_{2i}h^{2i}}{(2i)!}\Bigl(f^{(2i-1)}(b)-f^{(2i-1)}(a)\Bigr)+E,\qquad\lvert E\rvert\le\frac{C_mh^m}{m!}\int_a^b\bigl\lvert f^{(m)}(x)\bigr\rvert\,dx $$
である。

要点:$g(t):=f(a+ht)$ に主定理を区間 $[0,N]$ で使い、全体に $h$ を掛ける。

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$g(t):=f(a+ht)$($0\le t\le N$)は $C^m$ 級で、$g^{(r)}(t)=h^rf^{(r)}(a+ht)$、$\int_0^Ng(t)\,dt=\frac1h\int_a^bf(x)\,dx$ である。thm-eml-main の書き直した形を $g$、$a=0$、$b=N$ に使い、両辺から $\frac{g(0)+g(N)}2$ を引くと

$$\frac{T_h}h=\frac1h\int_a^bf\,dx+\sum_{i=1}^{\lfloor m/2\rfloor}\frac{B_{2i}h^{2i-1}}{(2i)!}\Bigl(f^{(2i-1)}(b)-f^{(2i-1)}(a)\Bigr)+R_m$$

となる。$\lvert R_m\rvert\le\frac{C_m}{m!}\int_0^Nh^m\lvert f^{(m)}(a+ht)\rvert\,dt=\frac{C_mh^{m-1}}{m!}\int_a^b\lvert f^{(m)}\rvert\,dx$ である。両辺に $h$ を掛け、$E:=hR_m$ とおけばよい。

特に $T_h-\int_a^bf\,dx=\frac{h^2}{12}\bigl(f'(b)-f'(a)\bigr)+O(h^4)$($m=4$)である。$f$ が周期 $b-a$ の $C^m$ 級関数を $[a,b]$ に制限したものなら、$f^{(r)}(a)=f^{(r)}(b)$ なので和の部分はすべて消え、誤差は $O(h^m)$ になる。滑らかな周期関数の 1 周期にわたる積分では、台形公式は $m$ をいくら大きくとっても $O(h^m)$ の精度をもつ。

ゼータ関数の解析接続と負の整数での値

Riemann ゼータ関数 $\zeta(s)=\sum_{n\ge1}n^{-s}$ は $\operatorname{Re}s>1$ で収束し、Riemannゼータ関数 の定理「$\operatorname{Re}s>0$ への解析接続」により $\operatorname{Re}s>0$ まで延びる。$f(x)=x^{-s}$ に主定理を使うと、これを全平面に延ばし、負の整数での値を求めることができる。以下 $(s)_0:=1$、$(s)_k:=s(s+1)\cdots(s+k-1)$ とおく。

ゼータ関数の延長と負の整数での値

整数 $m\ge1$ について、$\operatorname{Re}s>1-m$、$s\neq1$ で
$$ \zeta(s)=\frac1{s-1}+\frac12+\sum_{j=2}^{m}\frac{B_j}{j!}(s)_{j-1}-\frac{(s)_m}{m!}\int_1^\infty P_m(x)\,x^{-s-m}\,dx $$
が成り立つ。右辺は $\{\operatorname{Re}s>1-m\}\setminus\{1\}$ 上の正則関数である。したがって $\zeta$ は $\mathbb C\setminus\{1\}$ 上の正則関数に延び、$\zeta(0)=-\frac12$、整数 $n\ge1$ について
$$ \zeta(-n)=-\frac{B_{n+1}}{n+1} $$
である。特に $\zeta(-1)=-\frac1{12}$ で、正の整数 $k$ について $\zeta(-2k)=0$ である。

要点:$\operatorname{Re}s>1$ で $a=1$、$b=N$、$f(x)=x^{-s}$ に主定理を使って $N\to\infty$ とし、得られた右辺が $\operatorname{Re}s>1-m$ で正則であることを確かめる。$s=-n$ では $m=n+2$ にとると $(s)_m=0$ で剰余項が消え、残る有限和が $B_{n+1}(1)$ になる。

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等式:$f(x)=x^{-s}$ について $f^{(r)}(x)=(-1)^r(s)_r\,x^{-s-r}$ である。thm-eml-main を $a=1$、$b=N$ に使うと

$$\sum_{1< k\le N}k^{-s}=\frac{N^{1-s}-1}{1-s}-\sum_{j=1}^m\frac{B_j}{j!}(s)_{j-1}\bigl(N^{1-s-j}-1\bigr)-\frac{(s)_m}{m!}\int_1^NP_m(x)\,x^{-s-m}\,dx$$

である($\frac{(-1)^j}{j!}\cdot(-1)^{j-1}=-\frac1{j!}$、$\frac{(-1)^{m+1}}{m!}\cdot(-1)^m=-\frac1{m!}$)。$\operatorname{Re}s>1$ で $N\to\infty$ とすると $N^{1-s}\to0$、$N^{1-s-j}\to0$ であり、$B_1=-\frac12$ だから主張の等式を得る。

正則性:$\sigma=\operatorname{Re}s$ とすると $\lvert P_m(x)x^{-s-m}\rvert\le C_mx^{-\sigma-m}$ である。$\{\operatorname{Re}s>1-m\}$ のコンパクト集合 $K$ の上では $\sigma\ge\sigma_0>1-m$ となる $\sigma_0$ があり、$\bigl\lvert\int_N^\infty P_mx^{-s-m}\,dx\bigr\rvert\le\frac{C_m}{\sigma_0+m-1}N^{1-\sigma_0-m}$ は $K$ 上一様に $0$ に近づく。各 $\int_1^NP_m(x)x^{-s-m}\,dx$ は、被積分関数が $(x,s)$ について連続で $s$ について正則なので、Fubini の定理と Morera の定理により $s$ の正則関数である。Riemannゼータ関数 の補題「正則関数の一様極限」により、$\int_1^\infty P_m(x)x^{-s-m}\,dx$ は $\operatorname{Re}s>1-m$ で正則である。$(s)_k$ は多項式なので、右辺は $\{\operatorname{Re}s>1-m\}\setminus\{1\}$ で正則である。異なる $m$ の右辺は $\operatorname{Re}s>1$ でどれも $\zeta$ に一致するので、一致の定理 により共通の定義域で一致し、全体として $\mathbb C\setminus\{1\}$ 上の正則関数を定める。

$s=0$:$m=2$ にとる($0>1-m$)。$j\ge2$ なら $(0)_{j-1}$ は因子 $0$ を含むので $0$ で、$(0)_m=0$ だから $\zeta(0)=-1+\frac12=-\frac12$ である。

$s=-n$($n\ge1$):$m=n+2$ とすると $-n>1-m=-n-1$ で、$(-n)_{n+2}=(-n)(-n+1)\cdots0\cdot1=0$ だから剰余項は消える。$j=n+2$ の項も $(-n)_{n+1}=(-n)(-n+1)\cdots0=0$ により消える。$1\le j-1\le n$ では $(-n)_{j-1}=(-1)^{j-1}\frac{n!}{(n+1-j)!}$ なので $\frac{B_j}{j!}(-n)_{j-1}=-\frac{(-1)^j}{n+1}\binom{n+1}jB_j$ である。$j\ge2$ では $(-1)^jB_j=B_j$(奇数 $j\ge3$ では $B_j=0$)だから

$$\zeta(-n)=-\frac1{n+1}\Bigl(1-\frac{n+1}2+\sum_{j=2}^{n+1}\binom{n+1}jB_j\Bigr)=-\frac1{n+1}\sum_{j=0}^{n+1}\binom{n+1}jB_j=-\frac{B_{n+1}(1)}{n+1}$$

となる($B_0=1$、$\binom{n+1}1B_1=-\frac{n+1}2$)。$n+1\ge2$ なので $B_{n+1}(1)=B_{n+1}$ である。$\zeta(-1)=-\frac{B_2}2=-\frac1{12}$ で、$B_{2k+1}=0$ から $\zeta(-2k)=0$ である。

$m=1$ の場合の等式 $\zeta(s)=\frac1{s-1}+\frac12-s\int_1^\infty P_1(x)x^{-s-1}\,dx$($\operatorname{Re}s>0$)は、Riemannゼータ関数 の定理「$\operatorname{Re}s>0$ への解析接続」と同じ延長を与える。Riemannゼータ関数 では $\zeta(0)$、$\zeta(-1)$ を関数等式から求めているが、thm-eml-zeta は関数等式を使わずにすべての負の整数での値を与える。

反例:仮定を外した場合

外す条件反例成り立たなくなること
$a,b$ が整数$a=0$、$b=\frac12$、$f=1$主定理の等式
$\int_a^\infty\lvert f^{(m)}\rvert<\infty$$f(x)=x\sin2\pi x$、$a=0$、$m=1$cor-eml-asymptotic の定数 $C_f$ の存在
$m$ を固定する$f(x)=\log x$ で $m\to\infty$剰余項が $0$ に近づくこと
反例の確かめ
  1. 左辺は $\sum_{0< k\le1/2}1=0$ である。右辺は $\int_0^{1/2}1\,dx=\frac12$ で、$f$ の導関数はすべて $0$、$f(b)-f(a)=0$ だから、右辺は $\frac12$ になる。端点が整数でないと $P_m(a)$、$P_m(b)$ が $B_m$ と異なり、証明の部分積分の端点の項が変わる。
  2. $f(k)=0$ である。部分積分により $\int_0^nx\sin2\pi x\,dx=-\frac n{2\pi}$ なので、$\sum_{0< k\le n}f(k)-\int_0^nf\,dx-\frac{f(n)}2=\frac n{2\pi}$ は $n\to\infty$ で発散し、定数 $C_f$ に収束しない。実際 $f'(x)=\sin2\pi x+2\pi x\cos2\pi x$ は $[0,\infty)$ 上で絶対可積分でない。
  3. 主定理を $a=1$、$b=n\ge2$、$f(x)=\log x$ に使うと、$j\ge2$ の項は $\frac{B_j}{j(j-1)}\bigl(n^{1-j}-1\bigr)$ である。$j=2i$ のとき $\bigl\lvert n^{1-2i}-1\bigr\rvert\ge\frac12$ で、Bernoulli数 の系「符号と大きさ」により $\frac{\lvert B_{2i}\rvert}{2i(2i-1)}>\frac{2\,(2i-2)!}{(2\pi)^{2i}}\to\infty$ だから、この項は $i\to\infty$ で $0$ に近づかない。左辺は $m$ によらないので、剰余項 $R_m$ も $m\to\infty$ で収束しない。Euler–Maclaurin の公式は収束級数を与えない。

関連項目

参考文献

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