アステロイド

同義語:星芒形astroid

概要

アステロイド(astroid)とは、媒介変数表示 $x=\cos^3t$、$y=\sin^3t$ で表される、4 つの尖点をもつ曲線で、$x^{2/3}+y^{2/3}=1$ を満たす。尖点でない点での接線が 2 本の座標軸で切り取られる線分の長さはつねに $1$ であり、両端を $x$ 軸と $y$ 軸の上に置いた長さ $1$ のはしごの直線の族の包絡線が、アステロイドの第 1 象限の弧になる。床となす角が $\alpha$ のはしごは、下の端から $\sin^2\alpha$ の位置でアステロイドに接する。また、半径 $1$ の円の内側を半径 $\frac14$ の円が滑らずに転がるとき、周の上の点は $\frac34e^{it}+\frac14e^{-3it}$ にあり、3 倍角の公式からアステロイドをえがく。半径を $\frac13$ にすると尖点 3 つのデルトイドになる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 通過領域と包絡線, 加法定理から2倍角・半角・3倍角の公式を導く, カージオイド, 速度と加速度

高校での出発点:壁に立てかけたはしご

長さ $1$ のはしごが、床($x$ 軸)と壁($y$ 軸)に両端をつけたまま滑り落ちていく。はしごの位置をいくつも重ねて描くと、はしごの内側に 1 本の曲線が浮かび上がる(図 1)。この曲線が アステロイド である。
はしごが床となす角を $\alpha$($0<\alpha<\dfrac\pi2$)とすると、下の端は $A_\alpha=(\cos\alpha,0)$、上の端は $B_\alpha=(0,\sin\alpha)$ にある。はしごを含む直線 $\ell_\alpha$ は、$x$ 切片 $\cos\alpha$、$y$ 切片 $\sin\alpha$ の直線
$$ \ell_\alpha:\ \frac x{\cos\alpha}+\frac y{\sin\alpha}=1,\qquad\text{つまり}\qquad x\sin\alpha+y\cos\alpha=\sin\alpha\cos\alpha $$
である(2 つ目の式は、1 つ目の両辺に $\sin\alpha\cos\alpha$ を掛けた)。

隣り合う 2 本のはしごの交点

$\alpha=\dfrac\pi6$ のはしご $\ell_{\pi/6}$ と、角を $h$ だけ大きくしたはしご $\ell_{\pi/6+h}$ の交点を求める。2 本の直線の式を連立 1 次方程式として解くと、次のようになる(数値で解いた)。

$h$$0.1$$0.01$$0.001$
交点$(0.5912,\ 0.1586)$$(0.6439,\ 0.1283)$$(0.6490,\ 0.1253)$

$h$ を小さくすると、交点は点 $(0.6495\ldots,\ 0.125)$ に近づいていく。この点は
$$ \left(\cos^3\frac\pi6,\ \sin^3\frac\pi6\right)=\left(\left(\frac{\sqrt3}2\right)^3,\ \left(\frac12\right)^3\right)=\left(\frac{3\sqrt3}8,\ \frac18\right)=(0.6495\ldots,\ 0.125) $$
である。

長さ 1 のはしご(青)を床となす角を変えて 12 本描くと、内側にアステロイドの弧 x^(2/3)+y^(2/3)=1(赤)が浮かび上がる 長さ 1 のはしご(青)を床となす角を変えて 12 本描くと、内側にアステロイドの弧 x^(2/3)+y^(2/3)=1(赤)が浮かび上がる
通過領域と包絡線 の例「切片の和が 1 の直線の族」と例「$\sqrt{x}+\sqrt{y}=1$ が包絡線になる」では、$x$ 切片と $y$ 切片の 和 が $1$ の直線の族を調べ、包絡線が放物線の一部 $\sqrt x+\sqrt y=1$ になることを見た。この記事のはしごは、切片を結ぶ線分の 長さ が $1$ の直線の族で、別の族である。$\ell_\alpha$ は $\alpha$ の 2 次式の形に書けないので、通過領域と包絡線 の定理「$t$ の 2 次式で書ける直線の族」(判別式で包絡線を求める方法)はそのままでは使えない。この記事では、接線を直接計算して包絡線を求める。
この記事で答える問いは次の 2 つである。

  1. はしごの族が包む曲線は何か。はしごはその曲線のどこに触れるか。→ thm-ast-ladder
  2. その曲線は、転がる円でも作れるか。→ thm-ast-hypo
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    切片の和が $1$ の直線と判別式放物線の弧 $\sqrt x+\sqrt y=1$2 次の族の判別曲線
    長さ $1$ のはしごの直線アステロイド $x^{2/3}+y^{2/3}=1$$F=0$、$\dfrac{\partial F}{\partial\alpha}=0$ で求める包絡線
    3 倍角の公式円の内側を転がる円内サイクロイド
アステロイド

媒介変数表示
$$ x=\cos^3t,\qquad y=\sin^3t\qquad(0\le t\le2\pi) $$
で表される曲線を アステロイド(astroid、星芒形)という。$t=0,\dfrac\pi2,\pi,\dfrac{3\pi}2$ の 4 点 $(1,0)$、$(0,1)$、$(-1,0)$、$(0,-1)$ を 尖点 という。$a>0$ に対し、各点を $a$ 倍した $x=a\cos^3t$、$y=a\sin^3t$ もアステロイドという。

$\cos t=x^{\frac13}$、$\sin t=y^{\frac13}$(実数の 3 乗根)なので、$\cos^2t+\sin^2t=1$ から、アステロイドの点は
$$ x^{\frac23}+y^{\frac23}=1\qquad\left(\text{正確には }\lvert x\rvert^{\frac23}+\lvert y\rvert^{\frac23}=1\right) $$
を満たす。逆にこの式を満たす点 $(x,y)$ では、$c=x^{\frac13}$、$s=y^{\frac13}$ が $c^2+s^2=1$ を満たすので、$c=\cos t$、$s=\sin t$ となる $t$ があり、$(x,y)=(\cos^3t,\sin^3t)$ である。1 周の長さ $6$ は 媒介変数表示と曲線の長さ の例「アステロイド」で、囲む面積 $\dfrac38\pi$ は 媒介変数表示の曲線が囲む面積 で求めている。

アステロイドの点
  1. $t=\dfrac\pi6$:$\left(\dfrac{3\sqrt3}8,\ \dfrac18\right)$。ex-ast-start で交点が近づいた点である。
  2. $t=\dfrac\pi4$:$\left(\left(\dfrac{\sqrt2}2\right)^3,\ \left(\dfrac{\sqrt2}2\right)^3\right)=\left(\dfrac{\sqrt2}4,\ \dfrac{\sqrt2}4\right)$。$\left(\dfrac{\sqrt2}4\right)^{\frac23}=\left(2^{-\frac32}\right)^{\frac23}=2^{-1}=\dfrac12$ なので、$x^{\frac23}+y^{\frac23}=\dfrac12+\dfrac12=1$ である。
  3. $t=\dfrac\pi3$:$\left(\dfrac18,\ \dfrac{3\sqrt3}8\right)$。(1) の $x$ と $y$ を入れかえた点で、アステロイドは直線 $y=x$ について対称である。

主定理 1:はしごの包絡線

媒介変数表示の曲線の点 $\bigl(x(t),y(t)\bigr)$ で速度ベクトル $\bigl(x'(t),y'(t)\bigr)$ が $\vec0$ でないとき、その点を通り速度ベクトルの向きの直線を、その点での 接線 という(速度と加速度)。通過領域と包絡線 の包絡線の定義を、媒介変数表示の曲線に合わせて次のように言いかえる。

直線の族の包絡線(媒介変数表示の曲線)

直線の族 $\ell_\alpha$($\alpha\in I$、$I$ は区間)と、媒介変数表示の曲線 $E(t)$($t\in I$、どの点でも速度ベクトルが $\vec0$ でない)について、どの $\alpha\in I$ でも $\ell_\alpha$ が点 $E(\alpha)$ での $E$ の接線であるとき、曲線 $E$ を族 $\ell_\alpha$ の 包絡線 という。

この定義では、族のどの直線も曲線に接し、曲線のどの点もいずれかの直線の接点になっている。通過領域と包絡線 の放物線の例 $y=x^2$ と接線の族 $y=2tx-t^2$ は、$E(t)=(t,t^2)$ とおけばこの意味でも包絡線である。

はしごの包絡線はアステロイド
  1. アステロイドの尖点でない点 $E(t)=(\cos^3t,\sin^3t)$($t$ は $\dfrac\pi2$ の整数倍でない)での接線は
    $$ x\sin t+y\cos t=\sin t\cos t $$
    で、$x$ 軸と点 $(\cos t,0)$、$y$ 軸と点 $(0,\sin t)$ で交わる。この 2 点を結ぶ線分の長さは $1$ である。
  2. $0<\alpha<\dfrac\pi2$ のとき、はしご $A_\alpha B_\alpha$ を含む直線 $\ell_\alpha$ は、点 $E(\alpha)$ での接線である。$E(\alpha)$ ははしごの上にあり、はしごを $A_\alpha E(\alpha):E(\alpha)B_\alpha=\sin^2\alpha:\cos^2\alpha$ に分ける。
  3. したがって、アステロイドの第 1 象限の弧 $E(t)$($0< t<\dfrac\pi2$)は、はしごの直線の族 $\ell_\alpha$($0<\alpha<\dfrac\pi2$)の包絡線である。
接線を直接計算する

段 1(速度ベクトル)。$x=\cos^3t$、$y=\sin^3t$ を合成関数の微分で微分すると
$$ x'=3\cos^2t\cdot(-\sin t)=-3\sin t\cos^2t,\qquad y'=3\sin^2t\cdot\cos t=3\sin^2t\cos t $$
なので、$\bigl(x',y'\bigr)=3\sin t\cos t\,\bigl(-\cos t,\ \sin t\bigr)$ である。$t$ が $\dfrac\pi2$ の整数倍でなければ $\sin t\cos t\ne0$ で、速度ベクトルは $\vec0$ でなく、向きは $(-\cos t,\ \sin t)$ である。
段 2(接線の式)。$(\sin t,\ \cos t)$ と $(-\cos t,\ \sin t)$ の内積は $-\sin t\cos t+\cos t\sin t=0$ なので、接線は $(\sin t,\ \cos t)$ を法線ベクトルとする直線で、$E(t)$ を通るから
$$ x\sin t+y\cos t=\cos^3t\sin t+\sin^3t\cos t=\sin t\cos t\left(\cos^2t+\sin^2t\right)=\sin t\cos t $$
である。
段 3(切片と長さ)。$y=0$ とおくと $x\sin t=\sin t\cos t$ で、$\sin t\ne0$ から $x=\cos t$ である。$x=0$ とおくと同じく $y=\sin t$ である。2 点 $(\cos t,0)$、$(0,\sin t)$ の距離は $\sqrt{\cos^2t+\sin^2t}=1$ である。これで (1) が示された。
段 4((2) の接点)。$0<\alpha<\dfrac\pi2$ のとき、段 2 の式で $t=\alpha$ としたものは $\ell_\alpha$ の式そのものなので、$\ell_\alpha$ は $E(\alpha)$ での接線である。さらに
$$ \cos^2\alpha\cdot A_\alpha+\sin^2\alpha\cdot B_\alpha=\cos^2\alpha\,(\cos\alpha,0)+\sin^2\alpha\,(0,\sin\alpha)=\left(\cos^3\alpha,\ \sin^3\alpha\right)=E(\alpha) $$
で、係数 $\cos^2\alpha$、$\sin^2\alpha$ は正で和が $1$ である。よって $E(\alpha)=A_\alpha+\sin^2\alpha\,(B_\alpha-A_\alpha)$ は線分 $A_\alpha B_\alpha$ の上にあり、$A_\alpha E(\alpha)=\sin^2\alpha\cdot A_\alpha B_\alpha$、$E(\alpha)B_\alpha=\cos^2\alpha\cdot A_\alpha B_\alpha$ である(点の存在範囲と凸結合)。これで (2) が示された。
段 5((3))。$0< t<\dfrac\pi2$ では段 1 より速度ベクトルは $\vec0$ でなく、段 4 よりどの $\alpha$ でも $\ell_\alpha$ は $E(\alpha)$ での接線である。def-ast-envelope により、弧 $E$ は族 $\ell_\alpha$ の包絡線である。$\square$

$\alpha=\frac\pi6$ のはしご

$\alpha=\dfrac\pi6$ のはしごは $A=\left(\dfrac{\sqrt3}2,0\right)$ と $B=\left(0,\dfrac12\right)$ を結ぶ。接点は $E\left(\dfrac\pi6\right)=\left(\dfrac{3\sqrt3}8,\dfrac18\right)$ である。
(1) 接線の傾き。段 1 の向き $(-\cos t,\sin t)$ から傾きは $-\dfrac{\sin t}{\cos t}=-\tan\dfrac\pi6=-\dfrac1{\sqrt3}$ で、接線は $y-\dfrac18=-\dfrac1{\sqrt3}\left(x-\dfrac{3\sqrt3}8\right)$ である。$y=0$ とおくと $x=\dfrac{3\sqrt3}8+\dfrac{\sqrt3}8=\dfrac{\sqrt3}2$、$x=0$ とおくと $y=\dfrac18+\dfrac38=\dfrac12$ で、切片は $A$、$B$ と一致する。$AB=\sqrt{\dfrac34+\dfrac14}=1$ である。
(2) 分ける比。$AE=\sqrt{\left(\dfrac{\sqrt3}2-\dfrac{3\sqrt3}8\right)^2+\left(\dfrac18\right)^2}=\sqrt{\dfrac3{64}+\dfrac1{64}}=\dfrac14$ で、$\sin^2\dfrac\pi6=\dfrac14$ と一致する。$EB=1-\dfrac14=\dfrac34=\cos^2\dfrac\pi6$ である。

ex-ast-start で見た「隣り合う 2 本の交点が近づく点」が接点になることも、式で確かめられる。

隣り合う 2 本の交点の極限

$\alpha\ne\beta$(どちらも $0$ と $\dfrac\pi2$ の間)のとき、$\ell_\alpha$ と $\ell_\beta$ の交点は
$$ x=\frac{\cos\alpha\cos\beta\,(\sin\alpha-\sin\beta)}{\sin(\alpha-\beta)},\qquad y=\frac{\sin\alpha\sin\beta\,(\cos\beta-\cos\alpha)}{\sin(\alpha-\beta)} $$
である。$\beta\to\alpha$ とすると、$x\to\cos^3\alpha$、$y\to\sin^3\alpha$ となり、交点は接点 $E(\alpha)$ に近づく。

交点の計算と極限を開く

連立方程式 $x\sin\alpha+y\cos\alpha=\sin\alpha\cos\alpha$、$x\sin\beta+y\cos\beta=\sin\beta\cos\beta$ で、1 つ目に $\cos\beta$、2 つ目に $\cos\alpha$ を掛けて引くと、$x(\sin\alpha\cos\beta-\cos\alpha\sin\beta)=\cos\alpha\cos\beta(\sin\alpha-\sin\beta)$ となる。左辺の括弧は加法定理で $\sin(\alpha-\beta)$ である。$y$ も同じように、1 つ目に $\sin\beta$、2 つ目に $\sin\alpha$ を掛けて引いて求める。

極限では、$\beta\to\alpha$ のとき $\dfrac{\sin\alpha-\sin\beta}{\alpha-\beta}\to\cos\alpha$($\sin$ の微分係数)、$\dfrac{\cos\beta-\cos\alpha}{\alpha-\beta}\to-(-\sin\alpha)=\sin\alpha$($\cos$ の微分係数)、$\dfrac{\sin(\alpha-\beta)}{\alpha-\beta}\to1$ を使う。$x=\cos\alpha\cos\beta\cdot\dfrac{(\sin\alpha-\sin\beta)/(\alpha-\beta)}{\sin(\alpha-\beta)/(\alpha-\beta)}\to\cos\alpha\cdot\cos\alpha\cdot\cos\alpha$ で、$y$ も同じく $\sin^3\alpha$ に近づく。

2 つの族を並べて比べる。

切片の和が $1$切片を結ぶ線分の長さが $1$
直線$\dfrac xt+\dfrac y{1-t}=1$($0< t<1$)$\dfrac x{\cos\alpha}+\dfrac y{\sin\alpha}=1$($0<\alpha<\dfrac\pi2$)
媒介変数の式として$t$ の 2 次式$\alpha$ の 2 次式にならない
包絡線の求め方判別式 $=0$接線を直接計算(thm-ast-ladder)
包絡線$\sqrt x+\sqrt y=1$(放物線の一部)$x^{2/3}+y^{2/3}=1$(アステロイドの一部)
傾き $-1$ の直線の接点$\left(\dfrac14,\dfrac14\right)$$\left(\dfrac{\sqrt2}4,\dfrac{\sqrt2}4\right)=(0.3535\ldots,0.3535\ldots)$
記事通過領域と包絡線この記事
切片の和が 1 の直線(青)と、その包絡線 √x+√y=1(赤)。黒い点は傾き −1 の直線の接点 (1/4, 1/4) 切片の和が 1 の直線(青)と、その包絡線 √x+√y=1(赤)。黒い点は傾き −1 の直線の接点 (1/4, 1/4)
切片を結ぶ線分の長さが 1 の直線(青)と、その包絡線のアステロイド(赤)。黒い点は傾き −1 の直線の接点 切片を結ぶ線分の長さが 1 の直線(青)と、その包絡線のアステロイド(赤)。黒い点は傾き −1 の直線の接点

図 2 と図 3 を比べると、長さが $1$ の族の方が外側まで届く。傾き $-1$ の直線は、和の族では切片 $\dfrac12$、長さの族では切片 $\dfrac1{\sqrt2}$ なので、長さの族の方が原点から遠い。

主定理 2:円の内側を転がる円

サイクロイド では直線の上を、カージオイド では円の外側を転がる円を考えた。今度は円の内側を転がす。
次の配置を考える(図 4)。

  • 固定した円:中心 $O$(原点)、半径 $1$。
  • 転がる円:半径 $\dfrac14$。固定した円の内側で接しながら、滑らずに転がる。はじめは中心が $\dfrac34$ にあり、点 $1$($(1,0)$)で接している。
  • 転がる円の周の上の点 $P$:はじめ $1$ にある。
    転がる円の中心 $Q$ が $O$ から見て向き $t$ にあるときの $P$ の位置を、3 段で求める。
    段 1(中心の位置)。内側で接しているので、中心の距離は半径の差 $1-\dfrac14=\dfrac34$ である。よって $Q=\dfrac34e^{it}$ である。
    段 2(接点)。接点 $K$ は、$O$ から見て $Q$ と同じ向きにある固定した円の点 $K=e^{it}$ である。はじめ接点は $1$ にあったので、接点は固定した円の上を長さ $1\cdot t=t$ だけ進んだ。
    段 3(中心から見た $P$)。滑らずに転がるので、転がる円の周の上で接点 $K$ から $P$ までの弧の長さも $t$ で、その中心角は $\dfrac t{1/4}=4t$ である。$Q$ から見た $K$ の向きは $e^{it}$ で、$P$ はそれを時計回りに $4t$ だけ回した向きにある(内側を転がる円は、中心が反時計回りに進むとき時計回りに回り、$P$ は接点の後ろに残る)。よって $Q$ から見た $P$ の向きは $e^{it}\cdot e^{-4it}=e^{-3it}$ で、
    $$ z(t)=\underbrace{\frac34e^{it}}_{O\text{ から見た }Q}+\underbrace{\frac14e^{-3it}}_{Q\text{ から見た }P} $$
    である。$t=0$ で $z=\dfrac34+\dfrac14=1$ となり、はじめの配置と合っている。
    回る向きを速度で確かめる

    カージオイド と同じく、接点にある円の点が一瞬止まっていることで確かめる。段 3 では円の点の向きが $-3t$ の割合で変わる($t$ が $1$ 増えると時計回りに $3$ 回る)ので、接点にある円の点の速度は $\dfrac{dQ}{dt}+\dfrac14\cdot(-3i)\cdot e^{it}=\dfrac34i\,e^{it}-\dfrac34i\,e^{it}=0$ である。逆に反時計回りに $3$ の割合で回るとすると、速度は $\dfrac34i\,e^{it}+\dfrac34i\,e^{it}=\dfrac32i\,e^{it}\ne0$ で、滑ってしまう。

円の内側を転がる円の点はアステロイドをえがく

上の配置で、点 $P$ の位置は
$$ z(t)=\frac34e^{it}+\frac14e^{-3it}=\cos^3t+i\sin^3t $$
である。したがって、転がる円が固定した円の内側を 1 周する間($0\le t\le2\pi$)に、$P$ はアステロイド $x=\cos^3t$、$y=\sin^3t$ をちょうど 1 周えがく。

3 倍角の公式

$e^{it}=\cos t+i\sin t$、$e^{-3it}=\cos3t-i\sin3t$ なので、実部と虚部は
$$ \operatorname{Re}z=\frac34\cos t+\frac14\cos3t=\frac{3\cos t+\cos3t}4,\qquad \operatorname{Im}z=\frac34\sin t-\frac14\sin3t=\frac{3\sin t-\sin3t}4 $$
である。3 倍角の公式 $\cos3t=4\cos^3t-3\cos t$、$\sin3t=3\sin t-4\sin^3t$(加法定理から2倍角・半角・3倍角の公式を導く)を代入すると
$$ \operatorname{Re}z=\frac{3\cos t+4\cos^3t-3\cos t}4=\cos^3t,\qquad \operatorname{Im}z=\frac{3\sin t-3\sin t+4\sin^3t}4=\sin^3t $$
である。$\square$

$t=\frac\pi6$ の点

$e^{i\pi/6}=\dfrac{\sqrt3}2+\dfrac12i$、$e^{-3i\pi/6}=e^{-i\pi/2}=-i$ なので
$$ z\left(\frac\pi6\right)=\frac34\left(\frac{\sqrt3}2+\frac12i\right)+\frac14(-i)=\frac{3\sqrt3}8+\left(\frac38-\frac14\right)i=\frac{3\sqrt3}8+\frac18i $$
で、ex-ast-points (1) の点 $\left(\dfrac{3\sqrt3}8,\dfrac18\right)$ と一致する。図 4 はこのときの配置である。

半径 1 の円(灰色)の内側を半径 1/4 の円(緑の破線)が転がる。t=π/6 のとき、中心 Q、接点 K、点 P(赤)と、× 印の出発点からえがいた部分(黒)。T は転がる円で K の反対側の点 半径 1 の円(灰色)の内側を半径 1/4 の円(緑の破線)が転がる。t=π/6 のとき、中心 Q、接点 K、点 P(赤)と、× 印の出発点からえがいた部分(黒)。T は転がる円で K の反対側の点

尖点は 4 つ

$z(t)$ を微分すると $\dfrac{dz}{dt}=\dfrac34i\,e^{it}-\dfrac34i\,e^{-3it}=\dfrac34i\,e^{-3it}\left(e^{4it}-1\right)$ で、$0$ になるのは $e^{4it}=1$、つまり $t=0,\dfrac\pi2,\pi,\dfrac{3\pi}2$ のときである。このとき $P$ は $1,i,-1,-i$ にあり、どれも固定した円との接点である。転がる円の周の長さ $2\pi\cdot\dfrac14=\dfrac\pi2$ は、固定した円の周の長さ $2\pi$ のちょうど $\dfrac14$ なので、1 周の間に $P$ は 4 回、固定した円に触れ、そのたびに曲線がとがる。

2 つの主定理のつながり

はしごと転がる円は、同じ図の中で結びつく(図 5)。$0< t<\dfrac\pi2$ とし、thm-ast-hypo の配置で、転がる円の上で接点 $K$ の反対側の点を $T$ とする。

はしごの中点は転がる円の上にある

$0< t<\dfrac\pi2$ のとき、次が成り立つ。
(1) $T=\dfrac12e^{it}$ であり、これははしご $A_tB_t$ の中点である。
(2) 点 $P=E(t)$ での法線は接点 $K$ を通り、接線(はしごの直線 $\ell_t$)は $T$ を通る。

座標で確かめる

段 1((1))。$T=Q-(K-Q)=2Q-K=\dfrac32e^{it}-e^{it}=\dfrac12e^{it}=\left(\dfrac12\cos t,\ \dfrac12\sin t\right)$ である。はしごの中点は $\dfrac{A_t+B_t}2=\left(\dfrac{\cos t}2,\ \dfrac{\sin t}2\right)$ で、一致する。
段 2(接線は $T$ を通る)。$\ell_t$ の式 $x\sin t+y\cos t=\sin t\cos t$ の左辺に $T$ を代入すると $\dfrac12\cos t\sin t+\dfrac12\sin t\cos t=\sin t\cos t$ で、$T$ は $\ell_t$ の上にある(はしごの中点なので当然でもある)。
段 3(法線は $K$ を通る)。$\overrightarrow{PK}=\bigl(\cos t-\cos^3t,\ \sin t-\sin^3t\bigr)=\bigl(\cos t\sin^2t,\ \sin t\cos^2t\bigr)$ である($1-\cos^2t=\sin^2t$ など)。接線の向き $(-\cos t,\ \sin t)$ との内積は $-\cos^2t\sin^2t+\sin^2t\cos^2t=0$ で、$\overrightarrow{PK}\ne\vec0$ なので、直線 $PK$ は法線である。$\square$

  1. は、サイクロイド の主定理「接線は最上点を、法線は接点を通る」と同じ形である。直線の上を転がるときの「最上点」が、ここでは接点の反対側の点 $T$ にあたる。$KT$ は転がる円の直径なので、$\angle KPT=90^\circ$ である(円周角の定理(高校数学))。
  2. から、はしごの中点 $T$ は半径 $\dfrac12$ の円の上を動く。長さ $1$ のはしごを滑らせると、はしごの中点は原点を中心とする半径 $\dfrac12$ の円の弧をえがき、はしごはアステロイドに接し続ける。
    はしご AB(青)はアステロイド(赤)に点 P で接し、その中点 T は半径 1/2 の円(紫の点線)の上にある。T と K は転がる円(緑の破線)の直径の両端で、法線 PK(橙)は接点 K を通る はしご AB(青)はアステロイド(赤)に点 P で接し、その中点 T は半径 1/2 の円(紫の点線)の上にある。T と K は転がる円(緑の破線)の直径の両端で、法線 PK(橙)は接点 K を通る

例と反例

条件を変えると何が変わるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
切片を結ぶ線分の長さが一定切片の和が $1$ の直線の族包絡線がアステロイドになる(放物線の一部になる)
転がる円の半径が $\dfrac14$半径 $\dfrac13$ の円曲線が尖点 4 つのアステロイドになる(尖点 3 つのデルトイド)
転がる円の半径が $\dfrac14$半径 $\dfrac12$ の円曲線がとがった閉じた曲線になる(直径の線分になる)

1 行目は 通過領域と包絡線 の例「$\sqrt x+\sqrt y=1$ が包絡線になる」で確かめてあり、上の比較表と図 2 にまとめた。

反例:転がる円の半径が $\frac13$

thm-ast-hypo の前の 3 段で、転がる円の半径を $\dfrac13$ にする。中心は $\left(1-\dfrac13\right)e^{it}=\dfrac23e^{it}$、接点から $P$ までの中心角は $\dfrac t{1/3}=3t$ で、$P$ の向きは $e^{it}\cdot e^{-3it}=e^{-2it}$ なので
$$ z(t)=\frac23e^{it}+\frac13e^{-2it} $$
である。$\dfrac{dz}{dt}=\dfrac23i\,e^{it}-\dfrac23i\,e^{-2it}=\dfrac23i\,e^{-2it}\left(e^{3it}-1\right)$ が $0$ になるのは $e^{3it}=1$、つまり $t=0,\dfrac{2\pi}3,\dfrac{4\pi}3$ の 3 回で、尖点は 3 つである。この曲線は デルトイド で、アステロイドではない。各点を $\dfrac34$ 倍すると $\dfrac12e^{it}+\dfrac14e^{-2it}$ となり、掛谷の問題 で長さ $1$ の針を回せる図形として使ったデルトイドと同じ式になる。

反例:転がる円の半径が $\frac12$

半径を $\dfrac12$ にすると、中心は $\dfrac12e^{it}$、中心角は $\dfrac t{1/2}=2t$ で、$P$ の向きは $e^{it}\cdot e^{-2it}=e^{-it}$ なので
$$ z(t)=\frac12e^{it}+\frac12e^{-it}=\frac12(\cos t+i\sin t)+\frac12(\cos t-i\sin t)=\cos t $$
である。$z(t)$ はいつも実数で、$P$ は $x$ 軸の上の線分 $-1\le x\le1$(固定した円の直径)を往復するだけである。とがった閉じた曲線にはならない。半径が固定した円のちょうど半分の円を内側で転がすと、周の点は直線の上を動く(Wei26b)。

半径 1 の円の内側を半径 1/3 の円が転がると、尖点が 3 つのデルトイドになる 半径 1 の円の内側を半径 1/3 の円が転がると、尖点が 3 つのデルトイドになる
半径 1 の円の内側を半径 1/2 の円が転がると、周の点(赤)は直径の線分の上を往復する 半径 1 の円の内側を半径 1/2 の円が転がると、周の点(赤)は直径の線分の上を往復する

はしごの長さを $1$ から $L$($L>0$)に変えても、形は変わらない。はしごの直線は $x\sin\alpha+y\cos\alpha=L\sin\alpha\cos\alpha$ となり、thm-ast-ladder と同じ計算で、包絡線はアステロイドを $L$ 倍に拡大した $x=L\cos^3t$、$y=L\sin^3t$ になる。

大学数学で見る:包絡線の条件と内サイクロイド

$F=0$ と $\frac{\partial F}{\partial\alpha}=0$ で求める

通過領域と包絡線 の注意「$F=0$ と $\frac{\partial F}{\partial t}=0$」によると、図形の族 $F(x,y,\alpha)=0$ の包絡線の点は、一般に $F=0$ と $\dfrac{\partial F}{\partial\alpha}=0$ を満たす。はしごの族 $F=x\sin\alpha+y\cos\alpha-\sin\alpha\cos\alpha$ では
$$ \frac{\partial F}{\partial\alpha}=x\cos\alpha-y\sin\alpha-\left(\cos^2\alpha-\sin^2\alpha\right)=x\cos\alpha-y\sin\alpha-\cos2\alpha $$
である。$F=0$ に $\sin\alpha$、$\dfrac{\partial F}{\partial\alpha}=0$ に $\cos\alpha$ を掛けて足すと $x=\sin^2\alpha\cos\alpha+\cos\alpha\cos2\alpha=\cos\alpha\left(\sin^2\alpha+\cos^2\alpha-\sin^2\alpha\right)=\cos^3\alpha$ となる。同じように $F=0$ に $\cos\alpha$、$\dfrac{\partial F}{\partial\alpha}=0$ に $-\sin\alpha$ を掛けて足すと $y=\sin^3\alpha$ となり、thm-ast-ladder の接点が得られる。rem-ast-adjacent の「隣り合う 2 本の交点の極限」は、この 2 つの式を差の形で書いたものにあたる。

内サイクロイドと尖点の数

半径 $R$ の円の内側を半径 $\rho$($\rho< R$)の円が滑らずに転がるとき、周の上の点がえがく曲線を 内サイクロイド という。thm-ast-hypo と同じ計算で
$$ z(t)=(R-\rho)e^{it}+\rho\,e^{-i\frac{R-\rho}{\rho}t} $$
である。$\dfrac R\rho=n$ が $3$ 以上の整数なら尖点が $n$ 個の閉じた曲線になり、$n=3$ がデルトイド、$n=4$ がアステロイドである。$n=2$ では、とがった曲線にはならず直径の線分になる(Wei26b)。外側を転がす場合(外サイクロイド)は カージオイド の注意で扱った。アステロイドが 4 つの尖点をもつ内サイクロイドであること、長さ $1$ の線分の両端を直交する 2 本の直線の上で動かしたときの包絡線であることは Wei26a にもある。

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  • 掛谷の問題 では、長さ $1$ の針をデルトイドの中で回す。針の両端はデルトイドの上にあり、針はデルトイドに接しながら動く。はしごがアステロイドに接しながら動くのと似た動きである。
  • 転がる円の曲線の仲間(直線の上・円の外・円の内)は サイクロイド の表にまとめた。

関連項目

参考文献

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