局所類体論

同義語:local class field theory

概要

局所類体論(local class field theory)とは、非アルキメデス局所体 $K$ の有限次アーベル拡大 $L$ を、乗法群 $K^\times$ の部分群であるノルム群 $N_{L/K}(L^\times)$ によって分類する理論である。局所相互法則は商 $K^\times/N_{L/K}(L^\times)$ が Galois 群 $\operatorname{Gal}(L/K)$ に標準的に同型であることを、局所存在定理はノルム群がちょうど開かつ指数有限な部分群であることを主張する。不分岐拡大では単数がすべてノルムになり、分岐は単数群の像に現れる。大域類体論の局所的な部品である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 局所体, 類体論, Galois理論, 副有限群, 体のノルム

局所類体論は、非アルキメデス局所体 $K$ の有限次アーベル拡大を、$K$ の乗法群 $K^\times$ の部分群で分類する理論である。拡大 $L/K$ には、ノルムの像 $N_{L/K}(L^\times)$ という $K^\times$ の部分群が対応し、その商 $K^\times/N_{L/K}(L^\times)$ が Galois 群 $\operatorname{Gal}(L/K)$ と自然に同型になる(局所相互法則)。さらに、どの部分群が拡大から来るかは「開かつ指数有限」という位相的な条件で決まる(局所存在定理)。拡大という外側の対象が、$K$ 自身の中の群の言葉で完全に書けることがこの理論の要点である。
この記事では、主定理を正確に述べたうえで、不分岐拡大の場合の相互法則、ノルム群が開部分群であること、ノルム群と拡大の対応の性質、$\mathbb{Q}_p(\zeta_p)$ のノルム群、$\mathbb{Q}_p$ の 2 次拡大の数え上げを記事の中で証明する。相互写像の存在と存在定理そのものの証明は Galois コホモロジーを要するので、この記事では証明せず所在を示す。

設定と記号

この記事で 局所体 とは、離散付値について完備で剰余体が有限体である体をいう(局所体 の記事の定義「局所体」)。$K$ を局所体とし、次の記号を固定する。

  • $v_K\colon K^\times\to\mathbb{Z}$ は正規化された離散付値、$\mathcal{O}_K$ は整数環、$\mathfrak{m}_K$ はその極大イデアル、$\pi$ は素元($v_K(\pi)=1$ となる元)である。
  • 剰余体 $k=\mathcal{O}_K/\mathfrak{m}_K$ の元の個数を $q$ とし、正規化された絶対値を $|x|=q^{-v_K(x)}$ とする。
  • 単数群を $U_K:=\mathcal{O}_K^\times$ と書き、$m\ge1$ に対し $U_K^{(m)}:=1+\mathfrak{m}_K^m$ とおく。$U_K^{(0)}:=U_K$ とする。
  • $K$ の分離閉包 $K^{\mathrm{sep}}$ を 1 つ固定し、拡大はすべてその中で考える。$K^{\mathrm{ab}}$ は $K^{\mathrm{sep}}$ の中の $K$ の最大アーベル拡大、すなわち有限次アーベル拡大すべての合成である。
ノルム群

$L/K$ を有限次分離拡大とする。体のノルム $N_{L/K}\colon L^\times\to K^\times$ の像
$$ N_{L/K}(L^\times)\subseteq K^\times $$
を $L/K$ の ノルム群 という。$K^\times$ の部分群が、ある有限次アーベル拡大 $L/K$ のノルム群に等しいとき、その部分群を $K$ の ノルム群 という。

ノルム $N_{L/K}$ は乗法的なので、ノルム群は $K^\times$ の部分群である。$x\in K^\times$ なら $N_{L/K}(x)=x^{[L:K]}$ なので、ノルム群は $[L:K]$ 乗の全体 $(K^\times)^{[L:K]}$ を含む。

この記事で使う局所体の基本事実

次の 3 つは局所体と Galois 理論の基本事実であり、この記事では証明しない。どこで使うかを右に書く。

使う基本事実

(F1) 絶対値の延長:$L/K$ が有限次分離拡大なら、$|\cdot|$ は $L$ の絶対値にただ 1 通りに延長され、$L$ も局所体になる。$K$ 上の体の同型 $\sigma\colon L\to\sigma(L)$ は延長した絶対値を保つ:$|\sigma(x)|=|x|$。とくに $L/K$ が Galois なら、$\operatorname{Gal}(L/K)$ の各元は $\mathcal{O}_L$ と $\mathfrak{m}_L$ を保ち、剰余体 $l$ に作用する。(局所体 の記事の定理「標数0の局所体と有限次拡大」の 1 とその出典。prop-lcft-unramified-norm、prop-lcft-norm-open で使う。)
(F2) 不分岐拡大:$L/K$ が次数 $n$ の不分岐拡大(分岐指数 $1$ の拡大)なら、$L/K$ は Galois 拡大で、剰余体の拡大 $l/k$ の次数は $n$ であり、$\operatorname{Gal}(L/K)\to\operatorname{Gal}(l/k)$、$\sigma\mapsto\bar\sigma$ は同型である。とくに $\operatorname{Gal}(L/K)$ は、$l$ 上で $x\mapsto x^q$ を引き起こすただ 1 つの元 $\varphi_{L/K}$(Frobenius 元)で生成される位数 $n$ の巡回群である。$K$ の素元 $\pi$ は $L$ でも素元である。各 $n\ge1$ について次数 $n$ の不分岐拡大はただ 1 つある。(不分岐拡大と完全分岐拡大 の記事の定理「不分岐拡大の存在と一意性」。prop-lcft-unramified-norm で使う。)
(F3) 無限次 Galois 理論:$\operatorname{Gal}(K^{\mathrm{ab}}/K)$ は有限次アーベル拡大の Galois 群の射影極限として副有限群であり、その閉部分群と中間体が 1 対 1 に対応する。(Galois群 の記事の定理「副有限群としてのGalois群」と注意「無限次のGalois対応」。thm-lcft-reciprocity の述べ方で使う。)

(F2) の最後の主張により、$K$ の不分岐拡大すべての合成 $K^{\mathrm{ur}}$ について $\operatorname{Gal}(K^{\mathrm{ur}}/K)\cong\widehat{\mathbb{Z}}$ であり、Frobenius 元が位相的な生成元になる(副有限群 の記事の命題「$\widehat{\mathbb{Z}}$ と $p$ 進整数」)。

主定理

局所相互法則

局所相互法則

$K$ を局所体とする。連続な準同型
$$ \operatorname{rec}_K\colon K^\times\longrightarrow\operatorname{Gal}(K^{\mathrm{ab}}/K) $$
で、次の (i)(ii) を満たすものが存在する。
(i) $L/K$ が有限次不分岐拡大なら、各 $a\in K^\times$ について $\operatorname{rec}_K(a)|_L=\varphi_{L/K}^{\,v_K(a)}$ である。
(ii) $L/K$ が有限次アーベル拡大なら、$a\mapsto\operatorname{rec}_K(a)|_L$ は全射で、その核はちょうど $N_{L/K}(L^\times)$ である。したがって同型
$$ \operatorname{rec}_{L/K}\colon K^\times/N_{L/K}(L^\times)\xrightarrow{\ \sim\ }\operatorname{Gal}(L/K) $$
が得られ、とくに $(K^\times:N_{L/K}(L^\times))=[L:K]$ である。
さらに $\operatorname{rec}_K$ は単射で像は稠密であり、単数群 $U_K$ を $\operatorname{Gal}(K^{\mathrm{ab}}/K)$ の惰性群 $\operatorname{Gal}(K^{\mathrm{ab}}/K^{\mathrm{ur}})$(不分岐拡大は巡回拡大なので $K^{\mathrm{ur}}\subseteq K^{\mathrm{ab}}$ である)の上へ同型に写す。

局所相互法則の所在と正規化

この記事では thm-lcft-reciprocity の存在の部分を証明しない。存在と (ii) は Mil06 Appendix A の Theorem A.3(p. 129)、(i) は同 Remark A.5(p. 129)、単射性・稠密性・単数群と惰性群の対応は同 Remark A.6 の Case 1(p. 130)および Chapter I §2 冒頭の可換図式(p. 26)にある。証明の骨格は、$(\operatorname{Gal}(K^{\mathrm{sep}}/K),(K^{\mathrm{sep}})^\times)$ が「類構造」をなすことから、有限次の段階で $\operatorname{Gal}(L/K)^{\mathrm{ab}}\cong K^\times/N_{L/K}(L^\times)$ を導くものである(Mil06 Chapter I, Theorem 1.3, p. 18 と Example 1.6(b), p. 19)。
(i) の正規化は「素元を算術的 Frobenius($x\mapsto x^q$)へ送る」ものである。素元を幾何的 Frobenius(その逆元)へ送る正規化も広く使われており、両者は $\operatorname{rec}_K$ を $a\mapsto\operatorname{rec}_K(a^{-1})$ に取り替えるだけの違いである(Tat79 (1.4.1), p. 6)。

(ii) は、Galois 群という外の情報が $K^\times$ の商として読めることを主張しており、(i) はその同型の向きを 1 つに決める条件である。

局所存在定理

局所存在定理

$K$ を局所体とする。$K^\times$ の部分群 $H$ がノルム群であるための必要十分条件は、$H$ が開部分群で指数が有限であることである。ノルム群 $H$ に対し、$N_{L/K}(L^\times)=H$ となる有限次アーベル拡大 $L\subseteq K^{\mathrm{sep}}$ はただ 1 つである。

局所存在定理の所在

この記事では「開かつ指数有限ならノルム群」の向きを証明しない。Mil06 Appendix A, Remark A.6 の Case 1(p. 130)にある。逆向き「ノルム群は開かつ指数有限」は、thm-lcft-reciprocity の (ii) から、下の prop-lcft-norm-open で証明する。拡大の一意性は prop-lcft-lattice の (iii) で証明する。

thm-lcft-reciprocity と thm-lcft-existence を合わせると、次の対応が得られる。
$$ \left\{\begin{array}{c}K^{\mathrm{sep}}\text{ の中の}\\ K\text{ の有限次アーベル拡大 }L\end{array}\right\} \ \longleftrightarrow\ \left\{\begin{array}{c}K^\times\text{ の開かつ}\\ \text{指数有限な部分群 }H\end{array}\right\}, \qquad L\longmapsto N_{L/K}(L^\times). $$
この対応は包含を逆にし、$K^\times/H\cong\operatorname{Gal}(L/K)$ を満たす。標数 $0$ の局所体では、指数有限の部分群は自動的に開である(Mil06 Chapter I §2 の脚注 6, p. 26)。標数 $p>0$ の局所体では、指数有限だが開でない部分群がある(同じ脚注)。そのような部分群は thm-lcft-existence によりノルム群ではない。

ノルム限定定理

ノルム限定定理

$L/K$ を有限次分離拡大とし、$E$ を $L$ に含まれる $K$ の最大のアーベル拡大とする。このとき
$$ N_{L/K}(L^\times)=N_{E/K}(E^\times) $$
である。

ノルム限定定理の所在

この記事では証明しない(Mil06 Appendix A, p. 129 の Remark A.5 の後の段落に主張と参照がある)。この定理は、ノルム群が非アーベル拡大を区別できないことを示しており、局所類体論がアーベル拡大の理論にとどまる理由になっている(下の ex-lcft-nonabelian)。

不分岐拡大での相互法則

この節では、不分岐拡大 $L/K$ について thm-lcft-reciprocity の (ii) の同型を、相互写像の存在を仮定せずに直接証明する。鍵は「不分岐拡大では単数はすべてノルムである」ことで、これを有限体の性質から 1 桁ずつ持ち上げて示す。

有限体のノルムとトレースは全射

$l/k$ を有限体の次数 $n$ の拡大とし、$|k|=q$ とする。ノルム $N_{l/k}\colon l^\times\to k^\times$ とトレース $\operatorname{Tr}_{l/k}\colon l\to k$ はどちらも全射である。

要点:$\operatorname{Gal}(l/k)$ は $x\mapsto x^q$ で生成されるので、ノルムは $x\mapsto x^{(q^n-1)/(q-1)}$、トレースは $x\mapsto\sum_{i< n}x^{q^i}$ である。前者は巡回群 $l^\times$ の生成元を位数 $q-1$ の元に写し、後者は次数 $q^{n-1}<|l|$ の多項式なので恒等的に $0$ でない $k$ 線形写像である。

詳しい証明を開く

$\operatorname{Gal}(l/k)$ は $x\mapsto x^q$ で生成される位数 $n$ の巡回群である(有限体 の記事の定理「有限体の自己同型群」と命題「有限体の部分体」。$\operatorname{Gal}(l/k)$ は $\operatorname{Aut}(l)$ のうち $k$ を固定する部分群である)。よって$$ N_{l/k}(x)=\prod_{i=0}^{n-1}x^{q^i}=x^{(q^n-1)/(q-1)},\qquad \operatorname{Tr}_{l/k}(x)=\sum_{i=0}^{n-1}x^{q^i} $$である。

ノルム:$l^\times$ は位数 $q^n-1$ の巡回群である。生成元 $g$ をとると $N_{l/k}(g)=g^{(q^n-1)/(q-1)}$ の位数はちょうど $q-1$ である。ノルムの値は Galois 群で不変なので $k^\times$ に属し、$|k^\times|=q-1$ だから $N_{l/k}(g)$ は $k^\times$ を生成する。よってノルムは全射である。

トレース:$\operatorname{Tr}_{l/k}$ は $k$ 線形写像である。多項式 $X+X^q+\dots+X^{q^{n-1}}$ は次数 $q^{n-1}$ で $0$ でないので、根は高々 $q^{n-1}< q^n=|l|$ 個であり、$\operatorname{Tr}_{l/k}$ は恒等的に $0$ ではない。像は $1$ 次元の $k$ ベクトル空間 $k$ の $0$ でない部分空間なので $k$ 全体である。$\square$

以下この節では、$L/K$ を次数 $n$ の不分岐拡大、$G=\operatorname{Gal}(L/K)$、$l$ を $L$ の剰余体とする。(F2) により $\pi$ は $L$ の素元でもあり、$U_L^{(m)}=1+\pi^m\mathcal{O}_L$ である。$x\in\mathcal{O}_L$ の $l$ での類を $\bar x$ と書く。

ノルムの還元

(a) $u\in U_L$ なら $N_{L/K}(u)\in U_K$ で、その類は $N_{l/k}(\bar u)$ である。
(b) $m\ge1$、$a\in\mathcal{O}_L$ なら、$N_{L/K}(1+a\pi^m)=1+b\pi^m$ となる $b\in\mathcal{O}_K$ があり、$\bar b=\operatorname{Tr}_{l/k}(\bar a)$ である。

要点:ノルムは共役の積 $\prod_{\sigma}\sigma(x)$ であり、各 $\sigma$ は還元すると剰余体の Galois 群の元になる。$1+a\pi^m$ の共役の積を展開すると、$\pi^m$ の係数は $\sigma(a)$ の和、すなわちトレースになる。

詳しい証明を開く

$L/K$ は Galois なので、ノルムは共役の積 $N_{L/K}(x)=\prod_{\sigma\in G}\sigma(x)$ である。(F1) により各 $\sigma$ は $\mathcal{O}_L$ と $\mathfrak{m}_L$ を保ち、還元すると $\bar\sigma\in\operatorname{Gal}(l/k)$ として作用する。(F2) により $\sigma\mapsto\bar\sigma$ は $G$ から $\operatorname{Gal}(l/k)$ への全単射である。

(a):$\sigma(u)\in U_L$ なので積も単数で、値は $K$ に属するから $U_K=U_L\cap K$ に属する。還元は環準同型なので、類は $\prod_{\sigma}\bar\sigma(\bar u)=\prod_{\tau\in\operatorname{Gal}(l/k)}\tau(\bar u)=N_{l/k}(\bar u)$ である。

(b):$\sigma(\pi)=\pi$ なので$$ \prod_{\sigma\in G}\bigl(1+\sigma(a)\pi^m\bigr)=1+\Bigl(\sum_{\sigma\in G}\sigma(a)\Bigr)\pi^m+\pi^{2m}c $$と書ける。ここで $c$ は $\sigma(a)$ たちと $\pi$ の整数係数の多項式($\sigma(a)$ を 2 個以上掛けた項を $\pi^{2m}$ でくくったもの)なので $c\in\mathcal{O}_L$ である。$s:=\sum_\sigma\sigma(a)=\operatorname{Tr}_{L/K}(a)$ は $K$ と $\mathcal{O}_L$ の両方に属するので $\mathcal{O}_K$ に属する。左辺と $1+s\pi^m$ は $K$ に属するので $\pi^{2m}c\in K$ であり、$b:=s+\pi^mc$ とおけば $b\in\mathcal{O}_K$($\pi^m c\in K\cap\mathcal{O}_L$)、$N_{L/K}(1+a\pi^m)=1+b\pi^m$ である。$m\ge1$ なので $\bar b=\bar s=\sum_\sigma\bar\sigma(\bar a)=\operatorname{Tr}_{l/k}(\bar a)$ である。$\square$

不分岐拡大のノルム

$L/K$ を次数 $n$ の不分岐拡大とする。
(a) $N_{L/K}(U_L)=U_K$ である。
(b) $N_{L/K}(L^\times)=\pi^{n\mathbb{Z}}\cdot U_K=\{a\in K^\times\mid v_K(a)\in n\mathbb{Z}\}$ である。
(c) 写像 $a\mapsto\varphi_{L/K}^{\,v_K(a)}$ は同型
$$ K^\times/N_{L/K}(L^\times)\xrightarrow{\ \sim\ }\operatorname{Gal}(L/K) $$
を引き起こす。とくに、thm-lcft-reciprocity の (i) を満たす写像について (ii) が成り立つ。

(a):$\subseteq$ は lem-lcft-norm-reduction の (a) による。逆に $u\in U_K$ を任意にとる。
段 0。lem-lcft-finite-field によりノルム $l^\times\to k^\times$ は全射なので、$\bar v_0$ のノルムが $\bar u$ になる $v_0\in U_L$ がとれる。lem-lcft-norm-reduction の (a) により $u_1:=u/N_{L/K}(v_0)$ は $U_K^{(1)}$ に属する。
段 $m$($m\ge1$)。$u_m\in U_K^{(m)}$ が得られているとし、$u_m=1+c\pi^m$($c\in\mathcal{O}_K$)と書く。トレースは全射なので $\operatorname{Tr}_{l/k}(\bar a)=\bar c$ となる $a\in\mathcal{O}_L$ がとれる。$v_m:=1+a\pi^m\in U_L^{(m)}$ とおくと、lem-lcft-norm-reduction の (b) により $N_{L/K}(v_m)=1+b\pi^m$、$\bar b=\bar c$ である。すると
$$ u_{m+1}:=\frac{u_m}{N_{L/K}(v_m)}=1+\frac{(c-b)\pi^m}{1+b\pi^m} $$
で、$c-b\in\mathfrak{m}_K$、$1+b\pi^m\in U_K$ なので $u_{m+1}\in U_K^{(m+1)}$ である。
こうして $v_m\in U_L^{(m)}$ と $u/N_{L/K}(v_0v_1\cdots v_m)=u_{m+1}\in U_K^{(m+1)}$ が得られる。$w_M:=v_0v_1\cdots v_M$ とおくと $|w_{M+1}-w_M|=|w_M|\,|v_{M+1}-1|\le q^{-(M+1)}$ なので $(w_M)$ は Cauchy 列であり、$L$ は完備((F1))だから収束する。極限 $w$ は閉集合 $U_L$ に属する。$N_{L/K}=\prod_\sigma\sigma$ は、(F1) により各 $\sigma$ が距離を保つので連続であり、$N_{L/K}(w)=\lim_MN_{L/K}(w_M)=\lim_M u/u_{M+1}=u$ である。よって $u\in N_{L/K}(U_L)$ である。
(b):$x\in L^\times$ は $x=\pi^jw$($j=v_L(x)$、$w\in U_L$)と書け、$N_{L/K}(x)=\pi^{nj}N_{L/K}(w)$ である。(a) により $N_{L/K}(U_L)=U_K$ なので、$N_{L/K}(L^\times)=\pi^{n\mathbb{Z}}U_K$ である。$K^\times=\pi^{\mathbb{Z}}U_K$(類体論 の記事の命題「局所体の乗法群の分解」)なので、これは $v_K(a)\in n\mathbb{Z}$ となる $a$ の全体に等しい。
(c):$a\mapsto\varphi_{L/K}^{\,v_K(a)}$ は準同型 $K^\times\to\operatorname{Gal}(L/K)$ である。$\varphi_{L/K}$ は位数 $n$ の巡回群の生成元((F2))なので、この写像は全射で、核は $\{a\mid n\mid v_K(a)\}$、すなわち (b) により $N_{L/K}(L^\times)$ である。準同型定理により同型が得られる。$\square$

(c) は、不分岐拡大に限れば局所相互法則を初等的に確かめたことになる。一般の拡大では Galois 群が巡回群とは限らず、分岐の情報は単数群 $U_K$ の側に現れる(ex-lcft-qp-zeta-p)。

ノルム群の性質

ノルム群は開部分群

ノルム群は開部分群

$L/K$ を有限次分離拡大とする。
(a) $N_{L/K}(L^\times)\cap U_K=N_{L/K}(U_L)$ であり、$N_{L/K}(U_L)$ は $U_K$ のコンパクトな部分群である。
(b) $N_{L/K}(L^\times)$ が $K^\times$ で指数有限なら、$N_{L/K}(L^\times)$ は $K^\times$ の開部分群である。
(c) とくに $L/K$ がアーベル拡大なら、$N_{L/K}(L^\times)$ は開かつ指数有限である。

$M$ を $L$ の $K$ 上の Galois 閉包とし、$\sigma_1,\dots,\sigma_n$($n=[L:K]$)を $L$ から $M$ への $K$ 上の埋め込みとすると、$N_{L/K}(x)=\prod_i\sigma_i(x)$ である。(F1) により $|\sigma_i(x)|=|x|$ なので
$$ |N_{L/K}(x)|=|x|^n\qquad(x\in L^\times) $$
である。また各 $\sigma_i$ は距離を保つので連続であり、$N_{L/K}$ は連続である。
(a):$x\in L^\times$ について、$N_{L/K}(x)\in U_K$ は $|N_{L/K}(x)|=1$、すなわち $|x|=1$、すなわち $x\in U_L$ と同値である。よって $N_{L/K}(L^\times)\cap U_K=N_{L/K}(U_L)$ である。$U_L$ はコンパクト(局所体 の記事の命題「整数環のコンパクト性」により $\mathcal{O}_L$ はコンパクトで、$U_L=\{x\mid |x|=1\}$ はその閉部分集合)なので、連続像 $N_{L/K}(U_L)$ はコンパクトであり、Hausdorff 空間 $U_K$ の閉部分群である。
(b):(a) により $U_K/N_{L/K}(U_L)\to K^\times/N_{L/K}(L^\times)$ は単射なので、$N_{L/K}(U_L)$ は $U_K$ で指数有限である。閉部分群 $H$ が指数有限なら、補集合は有限個の剰余類 $gH$ の和で、各剰余類は閉集合なので、$H$ は開集合である。よって $N_{L/K}(U_L)$ は $U_K$ の開部分群であり、$U_K$ は $K^\times$ の開集合なので $K^\times$ でも開である。$N_{L/K}(L^\times)$ は開部分群 $N_{L/K}(U_L)$ を含むので、その剰余類の和として開集合である。
(c):thm-lcft-reciprocity の (ii) により指数は $[L:K]$ で有限である。(b) を適用する。$\square$

(c) は thm-lcft-existence の「ノルム群は開かつ指数有限」の向きである。証明のうちで相互法則を使うのは指数が有限であることだけで、開であることはコンパクト性から出る。

ノルム群と拡大の対応

次の命題は、thm-lcft-reciprocity の (ii) から形式的に従う。$L\subseteq M$ なら $N_{M/K}(M^\times)\subseteq N_{L/K}(L^\times)$ であること(ノルムの推移性)は 類体論 の記事の命題「ノルム群は拡大に対して包含を逆転する」で証明されているので、ここでは繰り返さない。以下 $N_L:=N_{L/K}(L^\times)$ と略記する。

ノルム群と拡大の対応

$L,M$ を $K$ の有限次アーベル拡大($K^{\mathrm{sep}}$ の中)とし、$LM$ をその合成体とする。
(i) $N_{LM}=N_L\cap N_M$ である。
(ii) $L\subseteq M$ であるための必要十分条件は $N_M\subseteq N_L$ である。
(iii) $N_L=N_M$ なら $L=M$ である。
(iv) ノルム群を含む $K^\times$ の部分群は、ノルム群である。

$\rho(a):=\operatorname{rec}_K(a)$ と書く。thm-lcft-reciprocity の (ii) を言い換えると、有限次アーベル拡大 $F$ について
$$ a\in N_F\iff \rho(a)|_F=\mathrm{id}_F $$
である。この同値を $(*)$ と呼ぶ。
(i):$LM/K$ も有限次アーベル拡大である。$\operatorname{Gal}(LM/K)$ の元は $L$ と $M$ への制限で決まる($LM$ は $L\cup M$ で生成される)。よって $\rho(a)|_{LM}=\mathrm{id}$ は「$\rho(a)|_L=\mathrm{id}$ かつ $\rho(a)|_M=\mathrm{id}$」と同値であり、$(*)$ から $N_{LM}=N_L\cap N_M$ である。
(ii):$L\subseteq M$ なら $N_M\subseteq N_L$ である(上に引いた命題)。逆に $N_M\subseteq N_L$ とする。(i) により $N_{LM}=N_L\cap N_M=N_M$ である。thm-lcft-reciprocity の (ii) の指数の等式から $[LM:K]=(K^\times:N_{LM})=(K^\times:N_M)=[M:K]$ であり、$M\subseteq LM$ なので $LM=M$、すなわち $L\subseteq M$ である。
(iii):(ii) を両方向に使えば $L\subseteq M$ かつ $M\subseteq L$ である。
(iv):$H\supseteq N_L$ とする。$\rho_L\colon K^\times\to\operatorname{Gal}(L/K)$、$a\mapsto\rho(a)|_L$ は全射で核が $N_L$ なので、$\rho_L(H)$ は部分群で $\rho_L^{-1}(\rho_L(H))=H$ である。$E$ を $\rho_L(H)$ の固定体とすると、$E/K$ はアーベル拡大であり、Galois 理論により $\sigma\in\operatorname{Gal}(L/K)$ が $E$ 上で恒等であることと $\sigma\in\rho_L(H)$ は同値である。$(*)$ を $E$ に使うと、$a\in N_E$ は $\rho(a)|_E=\mathrm{id}$、すなわち $\rho_L(a)\in\rho_L(H)$、すなわち $a\in H$ と同値である。よって $H=N_E$ である。$\square$

(iii) により、thm-lcft-existence の拡大の一意性が従う。(iv) により、ノルム群を 1 つ見つければ、それを含む部分群はすべてノルム群になる。たとえば prop-lcft-unramified-norm の (b) の群 $\pi^{n\mathbb{Z}}U_K$ を含む部分群は、どれも不分岐拡大のノルム群である($v_K$ で $\mathbb{Z}$ に写すと $n\mathbb{Z}$ を含む部分群 $d\mathbb{Z}$、$d\mid n$ になり、次数 $d$ の不分岐拡大に対応する)。

例

不分岐拡大と分岐する拡大

$\mathbb{Q}_p(\zeta_p)$ のノルム群

$p$ を奇素数、$\zeta=\zeta_p$ を $1$ の原始 $p$ 乗根、$L=\mathbb{Q}_p(\zeta)$ とする。このとき
$$ N_{L/\mathbb{Q}_p}(L^\times)=p^{\mathbb{Z}}\times(1+p\mathbb{Z}_p) $$
であり、$\mathbb{Q}_p^\times/N_{L/\mathbb{Q}_p}(L^\times)\cong\mathbb{Z}_p^\times/(1+p\mathbb{Z}_p)\cong(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^\times\cong\operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q}_p)$ である。
$L/\mathbb{Q}_p$ は次数 $p-1$ のアーベル拡大である。実際、$\Phi_p(X)=X^{p-1}+\dots+X+1$ について $\Phi_p(X+1)=\sum_{k=1}^{p}\binom pkX^{k-1}$ は、最高次以外の係数が $p$ で割り切れ、定数項 $\binom p1=p$ が $p^2$ で割り切れない Eisenstein 多項式なので、不分岐拡大と完全分岐拡大 の記事の定理「Eisenstein多項式が定める拡大」により $\mathbb{Q}_p$ 上既約であり、$L/\mathbb{Q}_p$ は完全分岐である(同じ記事の例「$p$ 乗根の体 $\mathbb{Q}_p(\zeta_p)$」も参照)。
よって $[L:\mathbb{Q}_p]=p-1$ で、$\sigma\mapsto a$($\sigma(\zeta)=\zeta^a$)による単射 $\operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q}_p)\to(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^\times$ は位数の比較から同型である。
$p\in N$:$1-\zeta$ の $\mathbb{Q}_p$ 上の最小多項式は $g(X)=\Phi_p(1-X)$ である($p-1$ は偶数なので最高次の係数は $(-1)^{p-1}=1$)。ノルムは最小多項式の定数項の $(-1)^{p-1}$ 倍なので、$N_{L/\mathbb{Q}_p}(1-\zeta)=g(0)=\Phi_p(1)=p$ である。
$1+p\mathbb{Z}_p\subseteq N$:$u\in1+p\mathbb{Z}_p$ とする。$f(X)=X^{p-1}-u$ は $f(1)=1-u\equiv0$、$f'(1)=p-1\not\equiv0\pmod p$ を満たすので、Henselの補題 の記事の定理「Hensel の補題:単純根の持ち上げ」により $x^{p-1}=u$ となる $x\in\mathbb{Z}_p$ がある。$x\in\mathbb{Q}_p$ なので $N_{L/\mathbb{Q}_p}(x)=x^{p-1}=u$ である。
等号:$H:=p^{\mathbb{Z}}\times(1+p\mathbb{Z}_p)\subseteq N_{L/\mathbb{Q}_p}(L^\times)$ が示された。$\mathbb{Q}_p^\times=p^{\mathbb{Z}}\times\mathbb{Z}_p^\times$ なので $(\mathbb{Q}_p^\times:H)=(\mathbb{Z}_p^\times:1+p\mathbb{Z}_p)=p-1$ である(p進整数 の記事の命題「有限単元群と隣り合う層」)。一方 thm-lcft-reciprocity の (ii) によりノルム群の指数は $[L:\mathbb{Q}_p]=p-1$ なので、$H=N_{L/\mathbb{Q}_p}(L^\times)$ である。

この例のノルム群は単数群 $\mathbb{Z}_p^\times$ を含まない。prop-lcft-unramified-norm の (a) と比べると、ノルム群が $U_K$ を含むかどうかが分岐を見分けている。

不分岐の判定

有限次アーベル拡大 $L/K$ が不分岐であるための必要十分条件は、$U_K\subseteq N_{L/K}(L^\times)$ である。

不分岐なら prop-lcft-unramified-norm の (a) により $U_K=N_{L/K}(U_L)\subseteq N_{L/K}(L^\times)$ である。逆に $U_K\subseteq N_{L/K}(L^\times)$ とする。$K^\times=\pi^{\mathbb{Z}}U_K$ なので $N_{L/K}(L^\times)=v_K^{-1}(d\mathbb{Z})$($d$ はその指数)の形である。これは prop-lcft-unramified-norm の (b) により次数 $d$ の不分岐拡大のノルム群なので、prop-lcft-lattice の (iii) により $L$ はその不分岐拡大に等しい。$\square$

$\mathbb{Q}_p(\zeta_p)$ では $p$ 自身がノルムなので $\operatorname{rec}_{\mathbb{Q}_p}(p)$ は $L$ 上で恒等写像であり、$\operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q}_p)$ はすべて単数の像で尽くされる。

存在定理による数え上げ

$\mathbb{Q}_p$ の 2 次拡大

$p$ を奇素数とする。$\mathbb{Q}_p$ の 2 次拡大($\mathbb{Q}_p^{\mathrm{sep}}$ の中)はちょうど 3 つあり、$u\in\mathbb{Z}_p^\times$ を法 $p$ で平方でない単数とすると、それらは $\mathbb{Q}_p(\sqrt u)$、$\mathbb{Q}_p(\sqrt p)$、$\mathbb{Q}_p(\sqrt{up})$ である。
局所類体論による数え上げ:2 次拡大はアーベル拡大であり、thm-lcft-reciprocity と thm-lcft-existence により、2 次拡大は指数 $2$ の開部分群と 1 対 1 に対応する。指数 $2$ の部分群は平方の全体 $(\mathbb{Q}_p^\times)^2$ を含むので、$V:=\mathbb{Q}_p^\times/(\mathbb{Q}_p^\times)^2$ の指数 $2$ の部分群と対応する。p進数体 の記事の系「平方数の判定と平方類」の 1 により(単数が平方であることは Henselの補題 の記事の命題「奇素数での単元の平方根」による)、
$$ V\cong\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}_p^\times/(\mathbb{Z}_p^\times)^2\cong\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\times\mathbb{F}_p^\times/(\mathbb{F}_p^\times)^2\cong(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2 $$
である($\mathbb{F}_p^\times$ は位数が偶数の巡回群なので、平方の指数は $2$)。$(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^2$ の指数 $2$ の部分群は 3 つである。これらの部分群は $1+p\mathbb{Z}_p$ を含む(その元は法 $p$ で $1$ なので平方)ので開である。よって 2 次拡大はちょうど 3 つである。
対応の確認:$\mathbb{Q}_p(\sqrt u)$ は、$X^2-u$ が $\mathbb{F}_p$ 上既約で剰余体が $\mathbb{F}_{p^2}$ になるので、2 次の不分岐拡大であり、prop-lcft-unramified-norm によりノルム群は $p^{2\mathbb{Z}}\mathbb{Z}_p^\times$ である。$\mathbb{Q}_p(\sqrt p)$ では $N(\sqrt p)=-p$ なので、ノルム群は $-p$ と平方で生成される指数 $2$ の部分群を含み、指数の比較からそれに等しい。$\mathbb{Q}_p(\sqrt{up})$ も同様にノルム群は $-up$ と平方で生成される。3 つの部分群は $V$ の中で異なるので、3 つの体は異なる。

この数え上げで局所類体論が使われるのは「2 次拡大の個数 $=$ 指数 $2$ の開部分群の個数」の部分だけで、残りは $\mathbb{Q}_p^\times$ の構造の計算である。一般に、$K$ の $n$ 次巡回拡大の個数も $K^\times$ の商の計算に帰着する。$p=2$ では単数が平方かどうかが法 $2$ ではなく法 $8$ の合同で決まるので、$V$ の計算が変わる。

反例

局所類体論の主張は、「局所体」「アーベル拡大」「開部分群」という条件のどれを外しても成り立たなくなる。

外す条件反例成り立たなくなること
$L/K$ がアーベル$\mathbb{Q}_5(\zeta_3,\sqrt[3]{5})/\mathbb{Q}_5$(Galois 群 $S_3$)$K^\times/N_{L/K}(L^\times)\cong\operatorname{Gal}(L/K)$(指数 $2$ に対し次数 $6$)
$K$ が局所体有理数体 $\mathbb{Q}$ と $\mathbb{Q}(i)$$K^\times/N_{L/K}(L^\times)$ が有限で $\operatorname{Gal}(L/K)$ に同型
部分群が開(存在定理)標数 $p$ の局所体の、指数有限で開でない部分群指数有限の部分群がノルム群であること
$U_K\subseteq N_{L/K}(L^\times)$(不分岐の判定)$\mathbb{Q}_p(\zeta_p)/\mathbb{Q}_p$「商が巡回群なら不分岐」という推論

3 行目は Mil06 Chapter I §2 の脚注 6(p. 26)による(この記事では証明しない)。4 行目は ex-lcft-qp-zeta-p で、商 $\mathbb{Q}_p^\times/N\cong(\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^\times$ は巡回群だが拡大は分岐している(ノルム群が $\mathbb{Z}_p^\times$ を含まない)。1 行目と 2 行目を次に確かめる。

反例:非アーベル拡大

$K=\mathbb{Q}_5$、$L=\mathbb{Q}_5(\zeta_3,\sqrt[3]{5})$ とする。$L/K$ は次数 $6$ の Galois 拡大で Galois 群は $S_3$ であり、$(K^\times:N_{L/K}(L^\times))=2\ne6$ である。したがって、アーベルという仮定を外すと thm-lcft-reciprocity の (ii) の同型は成り立たない。

確認を開く

$X^3-5$ は $5$ についての Eisenstein 多項式なので $\mathbb{Q}_5$ 上既約であり(不分岐拡大と完全分岐拡大 の記事の定理「Eisenstein多項式が定める拡大」)、$[\mathbb{Q}_5(\sqrt[3]{5}):\mathbb{Q}_5]=3$ である。$X^2+X+1$ は $\mathbb{F}_5$ に根をもたない($\mathbb{F}_5^\times$ は位数 $4$ で、位数 $3$ の元がない)ので $\mathbb{Q}_5$ にも根をもたず、$[\mathbb{Q}_5(\zeta_3):\mathbb{Q}_5]=2$ である。$2$ と $3$ はともに $[L:K]$ を割り、$[L:K]\le3\cdot2=6$ であり、$L$ は $X^3-5$ の最小分解体なので $[L:K]=6$ の Galois 拡大である。Galois 群は $X^3-5$ の 3 根に忠実に作用するので $S_3$ の位数 $6$ の部分群、すなわち $S_3$ である。$S_3$ の交換子群は $A_3$ なので、$L$ に含まれる最大のアーベル拡大は $A_3$ の固定体で次数 $2$ の $E=\mathbb{Q}_5(\zeta_3)$ である。thm-lcft-norm-limitation により $N_{L/K}(L^\times)=N_{E/K}(E^\times)$ で、その指数は thm-lcft-reciprocity の (ii) により $[E:K]=2$ である。

反例:大域体では商が無限になる

$K=\mathbb{Q}$、$L=\mathbb{Q}(i)$ とすると $[L:K]=2$ だが、$\mathbb{Q}^\times/N_{L/\mathbb{Q}}(L^\times)$ は無限群である。したがって、局所体を大域体に置き換えて乗法群 $K^\times$ をそのまま使うと相互法則は成り立たない。大域類体論で $K^\times$ の代わりにイデール類群を使うのはこのためである(大域類体論)。

証明を開く

$N_{L/\mathbb{Q}}(a+bi)=a^2+b^2$ である。$q\equiv3\pmod4$ を素数とし、$x=a^2+b^2\in\mathbb{Q}^\times$ なら $x$ の素因数分解での $q$ の指数 $v_q(x)$ は偶数であることを示す。分母を払って $d^2x=A^2+B^2$($A,B,d\in\mathbb{Z}$、$d>0$)とすると $v_q(d^2x)=2v_q(d)+v_q(x)$ なので、$A^2+B^2\ne0$ について $v_q(A^2+B^2)$ が偶数であることを示せばよい。$q\mid A^2+B^2$ かつ $q\nmid A$ なら、$(BA^{-1})^2\equiv-1\pmod q$ で、$\mathbb{F}_q^\times$ に位数 $4$ の元があることになるが、$4\nmid q-1$ なのでありえない。よって $q\mid A$ かつ $q\mid B$ で、$A^2+B^2=q^2(A'^2+B'^2)$ と書ける。$|A|+|B|$ についての帰納法により $v_q(A^2+B^2)$ は偶数である。

$4$ で割って $3$ 余る素数は無限にある(有限個 $q_1,\dots,q_r$ しかないとすると、$4q_1\cdots q_r-1$ は $4$ で割って $3$ 余る素因数をもつが、それはどの $q_i$ とも異なる)。相異なるそのような素数の有限集合 $S\ne T$ について、$\prod_{q\in S}q\big/\prod_{q\in T}q$ は、対称差に属する素数での指数が奇数なのでノルムでない。よって $\prod_{q\in S}q$ の類は互いに異なり、商は無限である。$\square$

補足

Brauer 群との関係

局所体 $K$ の Brauer 群には標準的な同型 $\operatorname{inv}_K\colon\operatorname{Br}(K)\xrightarrow{\sim}\mathbb{Q}/\mathbb{Z}$ がある(Mil06 Appendix A, Proposition A.1, p. 128。Brauer群 の記事の例「局所体と大域体」)。局所相互写像は、この不変量写像と、Galois 群の指標との積(カップ積)から特徴づけられる(Mil06 Appendix A, Theorem A.3 (b), p. 129)。局所類体論のコホモロジー的な証明は、この同型を出発点にする。

局所類体論の位置

局所類体論は大域類体論の部品である。大域体 $F$ の各素点 $v$ での完備化 $F_v$ は局所体(または $\mathbb{R}$、$\mathbb{C}$)であり、大域類体論では各素点の局所相互写像 $\operatorname{rec}_{F_v}$ を組み合わせて大域的な相互写像を作る(大域類体論 の記事で述べる)。また、局所体の非可換な拡大は局所類体論の範囲外である。非可換な場合を簡約群の表現で記述しようとするのが Langlands の予想である(Mil06 Chapter I §8 冒頭, p. 101)。

関連項目

参考文献

[1]
J. S. Milne, Arithmetic Duality Theorems, BookSurge, LLC, 2006, Chapter I, §1 Theorem 1.3 (p. 18), Example 1.6(b) (p. 19); §2 冒頭と脚注 6 (p. 26); §8 冒頭 (p. 101); Appendix A, Proposition A.1 (p. 128), Theorem A.3・Remark A.5 (p. 129), Remark A.6 Case 1 (p. 130)
[2]
J. Tate, Number theoretic background, Proceedings of Symposia in Pure Mathematics, 1979, (1.4.1), p. 6(相互写像の符号の規約)

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