指数モデルとロジスティックモデル(exponential and logistic models)とは、量の増え方を表す基本的な数理モデルである。指数モデル $y'=ky$ は相対変化率が一定という仮定で、解は $y_0e^{kt}$、$k>0$ なら倍加時間は $\frac{\log2}{k}$ である。ロジスティックモデル $y'=ry\left(1-\frac yK\right)$($r,K>0$)は相対変化率が $y$ の 1 次関数で減るとし、$0<y_0<K$ なら解は $y=\frac{K}{1+Ce^{-rt}}$($C=\frac{K-y_0}{y_0}$)ただ 1 つで、単調に増えて $K$ に近づき、$y=\frac K2$ で変曲点をもつ。平衡点 $K$ は安定、$0$ は不安定である。離散版の漸化式では、$r$ が大きいと $K$ に単調に近づかない。
前提知識: 変数分離形の微分方程式, 二項間漸化式, 有理関数の積分
数学 B の「数学と社会生活」では、身のまわりの現象を式で表し、その式を使って予測することを学ぶ。現象の量の変わり方を、仮定をもとに式で表したものを数理モデルという。この記事では、ものの数が増えていく様子を表す 2 つの基本的な数理モデル、指数モデルとロジスティックモデルを扱う。
ある細菌が、20 分ごとに数が 2 倍になるとする。最初の数を $N_0$ とすると、$t$ 分後の数は
$$
N(t)=N_0\cdot2^{t/20}
$$
である。3 時間後($t=180$)には $2^{9}=512$ 倍になる。
$2^{t/20}=e^{(t/20)\log2}$ なので、$N(t)=N_0e^{kt}$、$k=\dfrac{\log2}{20}=0.03465\ldots$ と書ける。対数微分法 で見た相対変化率を計算すると
$$
\frac{N'(t)}{N(t)}=k=0.03465\ldots
$$
で、時刻によらず一定である。底を $e$ にすると、この相対変化率 $k$ がそのまま指数に現れる(eはなぜ特別か)。「数が多いほど、それに比例して速く増える」という仮定を式にすると、$N'=kN$ になる。
ある容器の中の生き物の数を 5 時間ごとに数えたところ、次のようになったとする(説明のために作った数値)。
| 時刻 $t$ | $0$ | $5$ | $10$ | $15$ | $20$ | $25$ | $30$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 数 $y$ | $100$ | $451$ | $859$ | $978$ | $997$ | $1000$ | $1000$ |
| 5 時間での倍率 | $4.51$ | $1.90$ | $1.14$ | $1.02$ | $1.00$ | $1.00$ |
最初の 5 時間では $4.51$ 倍に増えたが、倍率はだんだん $1$ に近づき、数は $1000$ ほどで頭打ちになる。例 1 のように倍率が一定だと仮定すると、$t=10$ での数は $100\times4.51^2=2034.01$ と予測されるが、実際は $859$ である。容器の広さや餌の量に限りがあるので、数が増えるほど増え方が鈍る。この頭打ちを表すのがロジスティックモデルである。
2 つの例から、次の問いが出てくる。
| 高校での見方 | この記事での式 | ボックス |
|---|---|---|
| 一定の時間ごとに一定の倍率 | $y'=ky$、解は $y_0e^{kt}$ | thm-mog-exp |
| 倍になる時間、半分になる時間 | $\dfrac{\log2}{\lvert k\rvert}$ | prop-mog-doubling |
| 頭打ちになる増え方 | $y'=ry\left(1-\dfrac yK\right)$ | def-mog-logistic |
| S 字の曲線、変曲点 | $y=\dfrac{K}{1+Ce^{-rt}}$、$y=\dfrac K2$ で変曲点 | thm-mog-logistic |
| 落ち着く先 | 平衡点 $K$ は安定、$0$ は不安定 | rem-mog-phase-line |
| 1 年ごとの漸化式 | $b_{n+1}=b_n+rb_n(1-b_n)$ | prop-mog-discrete-monotone |
時刻 $t$ での量 $y(t)$ が、定数 $k$ について
$$
y'=ky
$$
を満たすとする数理モデルを指数モデルという。$k>0$ なら増加、$k<0$ なら減少を表す。仮定は「相対変化率 $\dfrac{y'}{y}$ が一定の値 $k$ である」ことである。
区間 $I$($0\in I$)の上で $y'=ky$ を満たす関数は、$y(t)=y(0)\,e^{kt}$ に限る。
方針:$e^{-kt}y$ を微分すると $0$ になることを示す。
$z(t)=e^{-kt}y(t)$ とおく。積の微分と $y'=ky$ により
$$
z'(t)=-ke^{-kt}y(t)+e^{-kt}y'(t)=e^{-kt}\bigl(y'(t)-ky(t)\bigr)=0
$$
である。区間 $I$ 上で導関数が $0$ なので $z$ は定数で、$z(t)=z(0)=y(0)$ である。両辺に $e^{kt}$ を掛けて $y(t)=y(0)e^{kt}$ を得る。逆に $y=y(0)e^{kt}$ なら $y'=ky(0)e^{kt}=ky$ である。$\square$
この証明は 微分方程式としての指数関数・三角関数 と同じもので、$y$ で割らないので、$y(0)=0$ の場合(定数解 $y=0$)も含んでいる。変数分離形の微分方程式 の方法($\dfrac{y'}{y}=k$ を積分する)でも、$y\ne0$ の解として同じ式が得られる。
$y=y_0e^{kt}$($y_0>0$)とする。$k>0$ なら、どの時刻 $t$ から数えても、$y$ が 2 倍になるまでの時間は
$$
T_2=\frac{\log2}{k}
$$
で一定である(倍加時間)。$k<0$ なら、半分になるまでの時間は $\dfrac{\log2}{\lvert k\rvert}$ で一定である(半減期)。
$k>0$ とする。$y(t+T)=2y(t)$ は $y_0e^{k(t+T)}=2y_0e^{kt}$、両辺を $y_0e^{kt}>0$ で割って $e^{kT}=2$、つまり $kT=\log2$ と同値である。これは $t$ を含まないので、$T=\dfrac{\log2}{k}$ はどの時刻から数えても同じである。$k<0$ なら $e^{kT}=\dfrac12$ から $T=\dfrac{-\log2}{k}=\dfrac{\log2}{\lvert k\rvert}$ である。$\square$
指数モデルの解の対数をとると $\log y=\log y_0+kt$ で、$\log y$ は $t$ の 1 次関数になる。縦軸を対数目盛にしたグラフ(片対数グラフ)では、指数モデルのデータは直線に並ぶ。データが指数モデルに合うかどうかは、片対数グラフで直線になるかどうかで確かめられる(対数目盛と片対数グラフ)。
指数モデルでは相対変化率がいつも $k$ だった。頭打ちを表すには、数 $y$ が増えるほど相対変化率が小さくなり、ある数 $K$ で $0$ になるようにすればよい。いちばん簡単なのは、相対変化率を $y$ の 1 次関数にすることである。
正の定数 $r$、$K$ について
$$
y'=ry\left(1-\frac yK\right)
$$
をロジスティック方程式といい、これで量の変化を表す数理モデルをロジスティックモデルという。$r$ を内的自然増加率、$K$ を環境収容力という。相対変化率は
$$
\frac{y'}{y}=r\left(1-\frac yK\right)
$$
で、$y$ が $0$ に近いときはほぼ $r$、$y=K$ で $0$、$y>K$ では負になる。
$r=0.5$、$K=1000$ とする。相対変化率 $0.5\left(1-\dfrac y{1000}\right)$ は、$y=10$ で $0.495$、$y=500$ で $0.25$、$y=990$ で $0.005$、$y=1200$ で $-0.1$ である。$y$ が小さいうちは指数モデル($k=0.5$)とほとんど同じで、$K$ に近づくと増え方が止まり、$K$ を超えると減る。
$g(y)=ry\left(1-\dfrac yK\right)$ が $0$ になるのは $y=0$ と $y=K$ なので、定数関数 $y=0$ と $y=K$ は解である(変数分離形の微分方程式 の定数解の命題と同じ理由で、$y'=0$ と右辺 $g(y)=0$ が一致する)。これらを平衡点という。
$0< y_0< K$ とし、$C=\dfrac{K-y_0}{y_0}$ とおく($C>0$)。
方針:部分分数に分けて 変数分離形の微分方程式 の定理を使い、$0< y< K$ にとどまる解を求める(段 1〜3)。どんな $C$ でも式が方程式を満たすことを代入で確かめ(段 4)、解が $0< y< K$ の外に出ないことを示して一意性を得る(段 5)。最後に増減と凹凸を調べる(段 6・7)。
段 1(部分分数)。$0< y< K$ で
$$
\frac{1}{y\left(1-\frac yK\right)}=\frac{K}{y(K-y)}=\frac1y+\frac1{K-y}
$$
である。右辺を通分すると $\dfrac{(K-y)+y}{y(K-y)}=\dfrac{K}{y(K-y)}$ となり、左辺と一致する(有理関数の積分)。
段 2(変数分離)。$f(t)=r$、$g(y)=y\left(1-\dfrac yK\right)$ とすると、$g$ は開区間 $J=(0,K)$ で $0$ にならない。段 1 から、$\dfrac1g$ の $J$ 上の原始関数は $G(y)=\log y-\log(K-y)=\log\dfrac{y}{K-y}$ である。$f$ の原始関数は $F(t)=rt$ である。変数分離形の微分方程式 の主定理($g\ne0$ の開区間 $J$ では、値が $J$ に入る $y$ が解であることと $G(y)=F(t)+c$ が同値)により、値が $J$ に入る解は、ある定数 $c$ について
$$
\log\frac{y}{K-y}=rt+c
$$
を満たす。
段 3($y$ について解く)。$A=e^c>0$ とおくと $\dfrac{y}{K-y}=Ae^{rt}$ で、$y=(K-y)Ae^{rt}$、$y(1+Ae^{rt})=KAe^{rt}$ より
$$
y=\frac{KAe^{rt}}{1+Ae^{rt}}=\frac{K}{1+\frac1Ae^{-rt}}
$$
となる(分子・分母を $Ae^{rt}$ で割った)。$t=0$ で $y_0=\dfrac{K}{1+\frac1A}$ なので、$\dfrac1A=\dfrac{K-y_0}{y_0}=C$ である。
段 4(代入による確かめ)。定数 $C$ がどんな値でも、$y=\dfrac K{1+Ce^{-rt}}$ は分母が $0$ でない範囲で方程式を満たす。実際、分母を $D=1+Ce^{-rt}$ とおくと $D'=-rCe^{-rt}$ で、
$$
y'=-\frac{KD'}{D^2}=\frac{rKCe^{-rt}}{D^2},\qquad ry\left(1-\frac yK\right)=r\cdot\frac KD\cdot\frac{D-1}{D}=\frac{rKCe^{-rt}}{D^2}
$$
となって一致する($1-\dfrac yK=1-\dfrac1D=\dfrac{D-1}D$、$D-1=Ce^{-rt}$)。$C>0$ なら $D>1$ なので、すべての実数 $t$ で分母は $0$ でなく、$0< y< K$ である。
段 5(ほかに解はない)。$z$ を、$0$ を含む区間 $I_0$ の上の解で $z(0)=y_0$ を満たすものとする。まず $t\ge0$ の側で、$z$ が $0< z< K$ から出ないことを示す。もし $z(t_1)\le0$ または $z(t_1)\ge K$ となる $t_1>0$ があったとする。$z$ は連続なので、$0< z< K$ から出るには、その前に $0$ か $K$ の値をとる(中間値の定理)。そこで、$z$ が初めて $0$ か $K$ になる時刻を $T$($0< T\le t_1$)とする($[0,t_1]$ で $z$ が $0$ か $K$ になる時刻全体の下限を $T$ とすると、$z$ の連続性から $z(T)$ も $0$ か $K$ で、$z(0)=y_0$ はどちらでもないので $T>0$ である)。$[0,T)$ の上では $z$ の値は $J=(0,K)$ に入るので、変数分離形の微分方程式 の主定理の一意性(値が $J$ に入る解どうしは、初期条件が同じなら一致する)により、$[0,T)$ の上で $z=y$ である。$z$ と $y$ は連続なので $z(T)=\displaystyle\lim_{t\to T-0}z(t)=\lim_{t\to T-0}y(t)=y(T)$ で、段 4 より $0< y(T)< K$ である。これは $z(T)$ が $0$ か $K$ であることに反する。よって $t\ge0$ の側で $z$ はずっと $J$ に入り、同じ一意性により $z=y$ である。$t\le0$ の側も同じである。
段 6(増加と極限)。$0< y< K$ なので $y'=ry\left(1-\dfrac yK\right)>0$ で、$y$ は狭い意味で増加する。$t\to\infty$ のとき $e^{-rt}\to0$ なので $y\to\dfrac K{1+0}=K$、$t\to-\infty$ のとき $Ce^{-rt}\to\infty$ なので $y\to0$ である。
段 7(凹凸)。$y'=r\left(y-\dfrac{y^2}K\right)$ を $t$ で微分すると、連鎖律により
$$
y''=r\left(y'-\frac{2yy'}K\right)=ry'\left(1-\frac{2y}K\right)
$$
である。$r>0$、$y'>0$ なので、$y''$ の符号は $1-\dfrac{2y}K$ の符号と同じで、$y<\dfrac K2$ で正、$y>\dfrac K2$ で負である(接線・法線と曲線の凹凸)。$y=\dfrac K2$ は $1+Ce^{-rt}=2$、$e^{-rt}=\dfrac1C$、$t=\dfrac{\log C}r$ のときである。また $y'=ry\left(1-\dfrac yK\right)=-\dfrac rK\left(y-\dfrac K2\right)^2+\dfrac{rK}4$ は、$y=\dfrac K2$ で最大値 $\dfrac{rK}4$ をとる。$\square$
解の式は StH16 の §4.4 の Theorem 4.2 と同じもの(分子・分母を $y_0e^{rt}$ で割った形)である。$C\le1$($y_0\ge\dfrac K2$)なら $t^*\le0$ で、$t>0$ の側には変曲点がない。
$K=1000$、$r=0.5$、$y_0=10$ とする。$C=\dfrac{1000-10}{10}=99$ で
$$
y(t)=\frac{1000}{1+99e^{-0.5t}}
$$
である。$t=5$ で $109.5\ldots$、$t=15$ で $948.0\ldots$、$t=20$ で $995.5\ldots$ となる。変曲点は $t^*=\dfrac{\log99}{0.5}=2\log99=9.19\ldots$ で、そこで $y=500$、$y'=\dfrac{0.5\cdot1000}4=125$ である。
ロジスティック方程式 y′ = 0.5 y (1 − y/1000) の解を初期値 10, 100, 500, 1500, 2000 で描いた図。0 < y₀ < 1000 の解は S 字を描いて 1000 に近づき、y₀ = 10 の解は t ≈ 9.19 で y = 500 の変曲点を通り、y₀ > 1000 の解は減りながら 1000 に近づく
図 1 のとおり、$0< y_0< K$ から出発した解は、はじめは指数関数のように増え、変曲点を過ぎると増え方が鈍り、$K$ に近づく。この形を S 字曲線(ロジスティック曲線)という。$y_0>K$ の場合は ex-mog-above で扱う。
ロジスティック方程式は右辺に $t$ がないので、$y'$ の符号は $y$ の値だけで決まる。$g(y)=ry\left(1-\dfrac yK\right)$ は
| $y$ の範囲 | $y<0$ | $0< y< K$ | $y>K$ |
|---|---|---|---|
| $y'=g(y)$ の符号 | $-$ | $+$ | $-$ |
| $y$ の動き | 減る | 増える | 減る |
である(図 2)。$K$ の両側では解が $K$ に向かって動くので、$K$ の近くから出発した解は $K$ に近づく。このような平衡点を安定という。$0$ の両側では解が $0$ から離れるので、$0$ は不安定である。
上は y′ = 0.5 y (1 − y/1000) を y の関数として描いた放物線で、y = 500 で最大値 125。下は数直線上に y の動く向きを矢印で描き、平衡点 1000 に両側から近づき、平衡点 0 から離れることを見る図
放物線 $g(y)$ の頂点が $y=\dfrac K2$ にあることが、thm-mog-logistic の 3($y=\dfrac K2$ で増える速さが最大)の理由を図で見せている。
$y(t)=\dfrac{K}{1+Ce^{-rt}}$($K>0$、$r>0$、$C>0$)とし、$h>0$ について $u_n=\dfrac1{y(nh)}$($n=0,1,2$)とおく。$q=e^{-rh}$ とすると
$$
u_{n+1}=qu_n+\frac{1-q}{K}
$$
が成り立ち、
$$
q=\frac{u_2-u_1}{u_1-u_0},\qquad\frac1K=\frac{u_0u_2-u_1^2}{u_0+u_2-2u_1},\qquad r=-\frac{\log q}{h}
$$
である。
要点:逆数は $u(t)=\dfrac1{y(t)}=\dfrac1K+\dfrac CKe^{-rt}$ なので、$u(t+h)-\dfrac1K=e^{-rh}\left(u(t)-\dfrac1K\right)$ となり、漸化式が出る。漸化式の $n=0$ と $n=1$ を引いて $q$ を、$u_1-\dfrac1K=q\left(u_0-\dfrac1K\right)$ から $\dfrac1K$ を求める。
方針:逆数 $u=\dfrac1y$ が「定数+指数関数」になることを使い、二項間漸化式 の形に直す。
段 1(逆数)。$u(t)=\dfrac1{y(t)}=\dfrac{1+Ce^{-rt}}K=\dfrac1K+\dfrac CKe^{-rt}$ である。
段 2(漸化式)。$u(t+h)-\dfrac1K=\dfrac CKe^{-r(t+h)}=e^{-rh}\cdot\dfrac CKe^{-rt}=q\left(u(t)-\dfrac1K\right)$ である。$t=nh$ とおいて整理すると $u_{n+1}=qu_n+\dfrac{1-q}K$ となる。
段 3($q$ を求める)。段 2 の式の $n=0$ と $n=1$ を引き算すると、定数項が消えて $u_2-u_1=q(u_1-u_0)$ となる。$C>0$、$r>0$ なので $u$ は狭い意味で減少し、$u_1\ne u_0$ だから、$q=\dfrac{u_2-u_1}{u_1-u_0}$ である。
段 4($K$ を求める)。$a=\dfrac1K$ とおくと、段 2 から $u_1-a=q(u_0-a)$、つまり $a(1-q)=u_1-qu_0$ である。段 3 の $q$ を代入すると$$1-q=\frac{2u_1-u_0-u_2}{u_1-u_0},\qquad u_1-qu_0=\frac{u_1(u_1-u_0)-u_0(u_2-u_1)}{u_1-u_0}=\frac{u_1^2-u_0u_2}{u_1-u_0}$$なので、$a=\dfrac{u_1^2-u_0u_2}{2u_1-u_0-u_2}=\dfrac{u_0u_2-u_1^2}{u_0+u_2-2u_1}$ である($0< q<1$ なので $1-q\ne0$)。最後に $q=e^{-rh}$ の対数をとって $r=-\dfrac{\log q}h$ である。$\square$
命題の漸化式 $u_{n+1}=qu_n+\dfrac{1-q}K$ は、不動点 $\dfrac1K$ に向かって、差が毎回 $q$ 倍になる形である(二項間漸化式 の $a_{n+1}=pa_n+q$ 型)。ロジスティックモデルの解は、逆数をとると指数モデルと同じ仕組みで $\dfrac1K$ に近づいている。
ex-mog-start-data の最初の 3 つの値 $y=100,451,859$($h=5$)を使う。
指数モデル:最初の 2 つの値から $e^{5k}=4.51$、$k=\dfrac{\log4.51}5=0.3012\ldots$ である。予測は $t=10$ で $100\times4.51^2=2034.01$、$t=15$ で $9173.3\ldots$ で、データの $859$、$978$ から大きく外れる。
ロジスティックモデル:$u_0=\dfrac1{100}=0.01$、$u_1=\dfrac1{451}=0.0022172\ldots$、$u_2=\dfrac1{859}=0.0011641\ldots$ である。prop-mog-three-points により
$$
q=\frac{-0.0010531\ldots}{-0.0077827\ldots}=0.13531\ldots,\qquad r=-\frac{\log q}5=0.4000\ldots,\qquad K=\frac{0.0067295\ldots}{0.0000067250\ldots}=1000.67\ldots
$$
となる。$C=\dfrac K{100}-1=9.0067\ldots$ として、予測は $t=15$ で $978.8\ldots$、$t=20$ で $997.6\ldots$、$t=30$ で $1000.6\ldots$ で、データの $978$、$997$、$1000$ とよく合う(図 3)。
例 2 のデータ(黒い点)と、最初の 2 点から決めた指数モデル(橙)、最初の 3 点から決めたロジスティックモデル(青)。はじめはどちらも合うが、指数モデルは t = 10 以降で大きく外れることを見る図
例 2 の数値は、$K=1000$、$r=0.4$、$y_0=100$ のロジスティックモデルの値($t=10$ では $858.48\ldots$)に近い整数として作ったので、よく合うのは当然である。実際のデータにはばらつきがあり、3 点だけで決めると誤差に左右されやすい。大学では、すべてのデータとのずれが最も小さくなるように定数を決める方法(最小二乗法)を使う。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $y_0>0$ | $y_0=0$ | 解は $K$ に近づく |
| $y_0< K$ | $y_0=2000$($K=1000$) | 解は増加し、S 字を描く |
| 時間が連続(微分方程式) | 離散版で $r=2.3$ | 解は $K$ に近づく |
| 頭打ちの仮定 | 指数モデル(ex-mog-fit) | 長い時間の予測がデータに合う |
世代が 1 年ごとに入れ替わる生き物などでは、時間を 1 ステップずつ進める漸化式で表すこともある。ロジスティック方程式の $y'$ を「1 ステップでの増加量」に置き換えると
$$
a_{n+1}=a_n+ra_n\left(1-\frac{a_n}K\right)
$$
となる。$b_n=\dfrac{a_n}K$ とおくと $b_{n+1}=b_n+rb_n(1-b_n)$ で、平衡点は $b=0$ と $b=1$ である。
$0< r\le1$、$0< b_0<1$ とし、$b_{n+1}=b_n+rb_n(1-b_n)$ とする。このとき $0< b_n< b_{n+1}<1$ がすべての $n$ で成り立ち、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}b_n=1$ である。
方針:$1-b_{n+1}=(1-b_n)(1-rb_n)$ と因数分解できることを使う。
段 1(因数分解)。$1-b_{n+1}=1-b_n-rb_n(1-b_n)=(1-b_n)(1-rb_n)$ である。
段 2(帰納法)。$b_0\le b_n<1$、$b_n>0$ とする。$b_{n+1}-b_n=rb_n(1-b_n)>0$ なので $b_{n+1}>b_n\ge b_0$ である。また $0< rb_n<1$($r\le1$、$b_n<1$)なので $0<1-rb_n<1$ で、段 1 から $0<1-b_{n+1}<1-b_n$、つまり $b_{n+1}<1$ である。$n=0$ では仮定が成り立つので、数学的帰納法 により、すべての $n$ で $b_0\le b_n< b_{n+1}<1$ である。
段 3(極限)。$b_n\ge b_0$ から $1-rb_n\le1-rb_0$ なので、段 1 から $1-b_{n+1}\le(1-rb_0)(1-b_n)$ である。これを繰り返すと $0<1-b_n\le(1-rb_0)^n(1-b_0)$ となる。$0<1-rb_0<1$ なので右辺は $n\to\infty$ で $0$ に近づき、はさみうちにより $b_n\to1$ である。$\square$
$r>1$ では様子が変わる。段 1 の式を $b_{n+1}-1=(b_n-1)(1-rb_n)$ と書くと、$b_n$ が $1$ に近いとき、$1$ からのずれは毎回ほぼ $1-r$ 倍になる。$\lvert1-r\rvert<1$、つまり $0< r<2$ なら、$1$ の近くからは $1$ に近づくが、$1< r<2$ では $1-r<0$ なので $1$ の上下を交互にとる。$r>2$ では、$1$ の近くでずれが毎回大きくなるので、途中でちょうど $1$ に乗る特別な場合を除いて $1$ に近づかない。「ずれが毎回一定の割合より小さく縮む」ことで極限を示す考え方は 縮小写像と漸化式 で扱う。
$b_0=0.1$ として計算する(小数第 4 位まで)。
| $r$ | $b_1,b_2,\dots$ | 長い時間での振る舞い |
|---|---|---|
| $0.8$ | $0.172,\ 0.2859,\ 0.4493,\ 0.6472,\ 0.8299,\ 0.9428,\ \dots$ | 単調に $1$ に近づく |
| $1.8$ | $0.262,\ 0.61,\ 1.0382,\ 0.9668,\ 1.0246,\ 0.9792,\ \dots$ | $1$ の上下を交互にとりながら近づく |
| $2.3$ | $0.307,\ 0.7963,\ 1.1694,\ 0.7139,\ 1.1837,\ \dots$ | $0.6879$ と $1.1817$ を交互にとる |
| $2.5$ | $0.325,\ 0.8734,\ 1.1498,\ 0.7192,\ \dots$ | $1.2250,\ 0.5359,\ 1.1577,\ 0.7012$ の 4 つをくり返す |
| $2.7$ | $0.343,\ 0.9514,\ 1.0762,\ 0.8548,\ \dots$ | くり返しが見られず、不規則に動く |
$r=2.3$ のときに $b_n$ が $1$ を超えて $1.18$ ほど($K$ の $1.18$ 倍)になるのは、$1$ ステップの増加量 $rb_n(1-b_n)$ が、まだ $b_n<1$ のときの値で計算され、行き過ぎるからである。
離散版 b(n+1) = b(n) + r b(n) (1 − b(n)) を b(0) = 0.1 から計算した 4 つの場合。r = 0.8 は単調に 1 へ、r = 1.8 は振動しながら 1 へ、r = 2.3 は 2 つの値を交互に、r = 2.7 は不規則に動くことを見る図
連続の方程式では、このような行き過ぎは起こらない。$0< y_0< K$ から出発した解は、定数解 $y=K$ に達しない(thm-mog-logistic の証明の段 5)からである。離散版は、連続の方程式を時間の刻み $h$ で近似した $y_{n+1}=y_n+h\cdot ry_n\left(1-\dfrac{y_n}K\right)$(Euler 法)の、$h=1$ の場合でもある。刻みを小さくすると $r$ が $hr$ に置き換わり、$hr\le1$ なら prop-mog-discrete-monotone により行き過ぎはなくなる。
| 指数モデル | ロジスティックモデル | |
|---|---|---|
| 式 | $y'=ky$ | $y'=ry\left(1-\dfrac yK\right)$ |
| 相対変化率 $\dfrac{y'}{y}$ | 一定の $k$ | $r\left(1-\dfrac yK\right)$($y$ とともに減る) |
| 解 | $y_0e^{kt}$ | $\dfrac{K}{1+Ce^{-rt}}$、$C=\dfrac{K-y_0}{y_0}$ |
| 長い時間での振る舞い | $k>0$ なら限りなく増える | $y_0>0$ なら $K$ に近づく |
| 平衡点 | $0$ | $0$(不安定)と $K$(安定) |
| 片対数グラフ | 直線 | 増え始めだけほぼ直線 |
| 当てはまりやすい現象 | 増え始め、放射性物質の崩壊、連続複利 | 限られた環境での生き物の数、新しい製品の普及 |
ロジスティックモデルは、$y$ が $K$ に比べて小さいうちは指数モデル($k=r$)とほぼ同じである。指数モデルは、ロジスティックモデルの「増え始め」を表していると見ることもできる。
平衡点の近くでの振る舞いは、右辺を 1 次式で近似すると分かる。$y'=g(y)$ の平衡点 $c$($g(c)=0$)の近くで $y=c+z$ とおくと、$z$ が小さいとき
$$
z'=g(c+z)\approx g(c)+g'(c)z=g'(c)z
$$
である。これは指数モデルで、$g'(c)<0$ なら $z$ は $0$ に近づき(安定)、$g'(c)>0$ なら $0$ から離れる(不安定)。
$g(y)=ry\left(1-\dfrac yK\right)$ では $g'(y)=r\left(1-\dfrac{2y}K\right)$ なので、$g'(0)=r>0$、$g'(K)=-r<0$ である。$0$ の近くでは $y'\approx ry$(指数モデル)で増え、$K$ の近くでは $K$ からのずれが $e^{-rt}$ のように減る。実際、解の式から
$$
y-K=\frac{K}{1+Ce^{-rt}}-K=-\frac{KCe^{-rt}}{1+Ce^{-rt}}
$$
で、$t$ が大きいと分母は $1$ に近いので $y-K\approx-KCe^{-rt}$ である。$K=1000$、$r=0.5$、$C=99$ では、$t=20$ で $y-K=-4.474\ldots$、$-KCe^{-rt}=-4.494\ldots$ となり、近い。
「$g'(c)<0$ なら安定、$g'(c)>0$ なら不安定」は、$g$ が微分可能で $g'$ が連続なら一般に成り立つ(本記事では証明しない)。何本もの方程式を連立した場合にこの考え方を広げたものが 力学系 の安定性の理論である。
離散版 $b_{n+1}=b_n+rb_n(1-b_n)$ は、$x_n=\dfrac{r}{1+r}b_n$ とおくと $x_{n+1}=(1+r)x_n(1-x_n)$ となり、大学で「ロジスティック写像」と呼ばれる漸化式 $x_{n+1}=\mu x_n(1-x_n)$($\mu=1+r$)になる。$\mu$ を大きくすると、平衡点に近づく → 2 つの値を交互にとる($\mu>3$、つまり $r>2$)→ 4 つ($\mu>1+\sqrt6=3.449\ldots$)→ 8 つ → … と周期が倍々に増え、$\mu\approx3.5699$($r\approx2.5699$)を超えると、周期をもたない不規則な動き(カオス)が現れる。本記事ではこれらを証明せず、数値の例(ex-mog-discrete)で見るだけにする。
感染症の広がりを表す SIR モデルでは、感染していない人 $S$、感染している人 $I$、回復した人 $R$ の割合が $S'=-\beta SI$、$I'=\beta SI-\gamma I$、$R'=\gamma I$($\beta,\gamma>0$ は定数)に従うとする。感染者 $I$ の相対変化率 $\dfrac{I'}{I}=\beta S-\gamma$ は、$S$ が減るにつれて小さくなり、やがて負になって流行が収まる。$I$ が小さいうちは $S$ はほぼ一定なので、$I$ は指数モデルのように増える。一般の解は式では書けないので、数値計算で調べる。
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