有限周長集合(set of finite perimeter)とは、Euclid 空間の Lebesgue 可測集合で、長さ 1 以下の試験ベクトル場の発散の積分の上限として定まる De Giorgi の周長が有限なもの、すなわち特性関数が有界変動関数になる集合であり、Caccioppoli 集合ともいう。なめらかな境界をもつ領域では周長は境界の面積に等しく、周長は $L^1$ 収束について下に半連続で、和集合と共通部分の周長はもとの周長の和以下である。De Giorgi の構造定理により、周長は可算整流可能な被約境界の面積に等しく、一般化された Gauss–Green の公式が成り立つ。周長の最小化のような変分問題を直接法で解く場になる。
前提知識: Lebesgue測度, 発散定理, 軟化子, Hausdorff測度と面積・余面積公式
角のある多面体、無数の穴があいた板、境界が激しく波打つ領域のように、境界がなめらかな曲面とは限らない集合にも「表面積」と「外向きの法線」を与えたい。発散定理 $\int_E\operatorname{div}\varphi\,dx=\int_{\partial E}\varphi\cdot\nu\,dS$ を逆に読み、左辺だけを使って表面積を定義するのが De Giorgi の周長(perimeter)である。周長が有限な集合を有限周長集合(set of finite perimeter)または Caccioppoli 集合という。
周長は Lebesgue 測度の意味で集合を見るので、零集合の違いを無視し、境界の位相的な乱れに惑わされない。とくに、集合の列を $L^1$ で近づけると周長は下に半連続で、周長が有界な集合の列はコンパクト性をもつ。このため、体積を決めて表面積を最小にする問題のような変分問題を、解がなめらかかどうかを先に知らずに解ける。
この記事では、周長を定義し、なめらかな境界をもつ領域では周長が境界の面積に等しいことを証明する。続いて下半連続性と、和集合・共通部分の周長の評価を証明し、位相的な境界が正の体積をもつのに周長は有限な集合を作る。最後に、Gauss–Green 測度、被約境界と De Giorgi の構造定理を述べ、周長の最小化問題に解があることを示す。
$\Omega\subset\mathbb{R}^n$ を開集合とし、$C_c^1(\Omega;\mathbb{R}^n)$ を $\Omega$ にコンパクトな台をもつ $C^1$ 級のベクトル場の全体とする。$|\cdot|$ は Euclid ノルム、$\chi_E$ は $E$ の特性関数、$|E|$ は Lebesgue 測度である。
局所可積分関数 $u\in L^1_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ の $\Omega$ における全変動を
$$
V(u;\Omega):=\sup\Bigl\{\int_\Omega u\operatorname{div}\varphi\,dx\ \Big|\ \varphi\in C_c^1(\Omega;\mathbb{R}^n),\ |\varphi|\le1\Bigr\}\in[0,\infty]
$$
と定める。Lebesgue 可測集合 $E\subset\mathbb{R}^n$ の $\Omega$ における周長を $P(E;\Omega):=V(\chi_E;\Omega)$、すなわち
$$
P(E;\Omega)=\sup\Bigl\{\int_{E\cap\Omega}\operatorname{div}\varphi\,dx\ \Big|\ \varphi\in C_c^1(\Omega;\mathbb{R}^n),\ |\varphi|\le1\Bigr\}
$$
と定め、$P(E):=P(E;\mathbb{R}^n)$ と書く。$P(E;\Omega)<\infty$ のとき $E$ は $\Omega$ で有限周長であるといい、$\Omega$ に閉包がコンパクトに含まれるすべての開集合 $W$ で $P(E;W)<\infty$ のとき局所有限周長であるという。
$V(u;\Omega)<\infty$ となる $u\in L^1(\Omega)$ が多変数の有界変動関数であり(有界変動関数 の注意「多変数の有界変動関数」)、有限周長集合とは特性関数が有界変動関数になる集合である。定義の積分は $E$ を零集合だけ変えても変わらないので、周長は Lebesgue 測度の意味の集合の類にしか依存しない。また、台がコンパクトな $C^1$ 級ベクトル場について $\int_{\mathbb{R}^n}\operatorname{div}\varphi\,dx=0$ なので(各項 $\partial_i\varphi^i$ を $x_i$ について先に積分する)、$\int_{\mathbb{R}^n\setminus E}\operatorname{div}\varphi=-\int_E\operatorname{div}\varphi$ であり、$\varphi$ を $-\varphi$ に替えて $P(\mathbb{R}^n\setminus E)=P(E)$ である。
$w\in C^\infty(\Omega)$ なら $V(w;\Omega)=\int_\Omega|\nabla w|\,dx$ である(両辺は $\infty$ でもよい)。
要点:部分積分で $\int w\operatorname{div}\varphi=-\int\nabla w\cdot\varphi$ と書き、$\varphi$ を $-\nabla w/|\nabla w|$ に近づける。
$\varphi\in C_c^1(\Omega;\mathbb{R}^n)$ について $w\varphi$ も台がコンパクトな $C^1$ 級ベクトル場なので $\int\operatorname{div}(w\varphi)=0$、すなわち $\int w\operatorname{div}\varphi=-\int\nabla w\cdot\varphi\le\int|\nabla w|$ である。逆に、コンパクト集合の増大列 $K_j$ で $\bigcup_jK_j=\Omega$ となるものと、$0\le\eta_j\le1$、$K_j\cup\operatorname{supp}\eta_{j-1}$ の上で $\eta_j=1$ を満たす $\eta_j\in C_c^\infty(\Omega)$ を順にとり($\eta_0:=0$。すると $\eta_j\le\eta_{j+1}$ である)、$\varphi_j:=-\eta_j\nabla w/\sqrt{|\nabla w|^2+1/j}$ とおく。$\varphi_j\in C_c^\infty(\Omega;\mathbb{R}^n)$、$|\varphi_j|\le1$ であり、$\int w\operatorname{div}\varphi_j=\int\eta_j|\nabla w|^2/\sqrt{|\nabla w|^2+1/j}$ は単調収束定理により $\int|\nabla w|$ に収束する。$\square$
$n=1$ とし、$a_1< b_1< a_2< b_2<\cdots< a_N< b_N$ について $E=\bigcup_{i=1}^N[a_i,b_i]$ とすると、$P(E)=2N$、すなわち $E$ の境界の点の個数である。一方、$E=\bigcup_{k\ge1}[4^{-k},2\cdot4^{-k}]\subset(0,1)$ は有界で $|E|<\infty$ だが $P(E)=\infty$ である。
要点:$\int_E\varphi'=\sum(\varphi(b_i)-\varphi(a_i))$ であり、$\varphi$ を右端で $1$、左端で $-1$ にとる。
$|\varphi|\le1$ の $\varphi\in C_c^1(\mathbb{R})$ について $\int_E\varphi'\,dx=\sum_{i=1}^N(\varphi(b_i)-\varphi(a_i))\le2N$ である。区間 $[a_i,b_i]$ で $-1$ から $1$ へ、隙間 $[b_i,a_{i+1}]$ で $1$ から $-1$ へなめらかに動き、$a_1$ の左と $b_N$ の右で $0$ に戻る $\varphi$($|\varphi|\le1$)をとれば等号になる。2 つ目の $E$ では、$N$ を固定して大きいほうの $N$ 個の区間 $[4^{-k},2\cdot4^{-k}]$($k\le N$)の端点で同じように $\pm1$ をとり、$[0,2\cdot4^{-N-1}]$ の上で $0$ になる $\varphi$ をとる($2\cdot4^{-N-1}< 4^{-N}$ なので隙間で $0$ から $-1$ へ動ける)。$\int_E\varphi'=2N$ なので、$N$ は任意で $P(E)=\infty$ である。$\square$
以下この節では $n\ge2$ とし、発散定理 の定義「滑らかな境界をもつコンパクトな領域」の領域 $D$ と、その外向きの単位法線 $\nu$、面積要素 $dS$ を使う。
$D$ を滑らかな境界をもつコンパクトな領域とすると、$\int_{\partial D}1\,dS=\mathcal H^{n-1}(\partial D)$ であり、より一般に $\partial D$ 上の連続関数 $g$ について $\int_{\partial D}g\,dS=\int_{\partial D}g\,d\mathcal H^{n-1}$ である。
要点:局所表示では面積要素は面積 Jacobian であり、面積公式の単射な場合と一致する。
発散定理 の命題「面積要素の局所表示」により、局所座標の逆写像 $\Phi\colon V\to\partial D$ について $\operatorname{supp}g\subset\Phi(V)$ なら $\int g\,dS=\int_Vg(\Phi(u))J_{n-1}\Phi(u)\,du$ である($J_{n-1}\Phi=\sqrt{\det(D\Phi^{\mathsf T}D\Phi)}$)。$V$ に含まれる閉球の上で $\Phi$ は Lipschitz で単射なので、McShane の延長で $\mathbb{R}^{n-1}$ 上の Lipschitz 写像にしたうえで Hausdorff測度と面積・余面積公式 の定理「面積公式」を $g\circ\Phi$ の正の部分と負の部分にそれぞれ当てると、右辺は $\int_{\Phi(V)}g\,d\mathcal H^{n-1}$ に等しい($V$ を可算個の閉球の互いに交わらない Borel 部分に分けて和をとる)。$\partial D$ はコンパクトなので有限個の $\Phi(V)$ で覆え、1 の分割で $g$ を分ければよい。$\square$
$D\subset\mathbb{R}^n$ を滑らかな境界をもつコンパクトな領域とすると
$$
P(D)=\mathcal H^{n-1}(\partial D)
$$
である。
上からの評価。 $\varphi\in C_c^1(\mathbb{R}^n;\mathbb{R}^n)$、$|\varphi|\le1$ とする。発散定理(発散定理 の定理「Gauss の発散定理」)と lem-perimeter-area-element により
$$
\int_D\operatorname{div}\varphi\,dx=\int_{\partial D}\varphi\cdot\nu\,dS\le\int_{\partial D}1\,dS=\mathcal H^{n-1}(\partial D)
$$
である。上限をとって $P(D)\le\mathcal H^{n-1}(\partial D)$ である。
下からの評価。 $\nu$ は $\partial D$ 上の連続関数である。Tietzeの拡張定理 を各成分に使って $\nu$ を $\mathbb{R}^n$ 上の連続なベクトル場に延ばし、台がコンパクトな連続関数 $\eta$($\partial D$ の上で $1$、$0\le\eta\le1$)を掛け、さらに $|\cdot|>1$ となる点では長さ $1$ に縮める。こうして得た連続なベクトル場 $\Psi$ は台がコンパクトで $|\Psi|\le1$、$\partial D$ 上で $\Psi=\nu$ を満たす。軟化子 $\rho$ による軟化 $\psi_\varepsilon:=\rho_\varepsilon*\Psi$(成分ごと)は $C_c^\infty$ 級で、$|\psi_\varepsilon|\le\rho_\varepsilon*|\Psi|\le1$ であり、$\varepsilon\to0$ で $\Psi$ に一様収束する(軟化子 の定理「軟化による近似」の 1)。したがって
$$
P(D)\ge\int_D\operatorname{div}\psi_\varepsilon\,dx=\int_{\partial D}\psi_\varepsilon\cdot\nu\,dS\ \longrightarrow\ \int_{\partial D}\nu\cdot\nu\,dS=\mathcal H^{n-1}(\partial D)
$$
である。$\square$
$\alpha_n$ を $\mathbb{R}^n$ の単位球の体積とすると、半径 $r$ の閉球 $\overline B_r$ について $P(\overline B_r)=n\alpha_nr^{n-1}$ である。実際、Hausdorff測度と面積・余面積公式 の例「距離関数の等位集合」を $g=\chi_{\overline B_1}$ に当てると $\alpha_n=\int_0^1\mathcal H^{n-1}(\partial B_s)\,ds$ であり、$\partial B_s$ は $\partial B_1$ の $s$ 倍なので $\mathcal H^{n-1}(\partial B_s)=s^{n-1}\mathcal H^{n-1}(\partial B_1)$、したがって $\mathcal H^{n-1}(\partial B_1)=n\alpha_n$ である。開球 $B_r$ とは零集合 $\partial B_r$ だけ違うので $P(B_r)=n\alpha_nr^{n-1}$ でもある($x\mapsto sx$ は $s$-Lipschitz、逆写像は $1/s$-Lipschitz なので、Lipschitz 写像による測度の評価を両方向に使うと $\mathcal H^{n-1}$ は $s^{n-1}$ 倍になる)。
$L^1_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ での収束 $u_k\to u$ とは、各コンパクト集合 $K\subset\Omega$ で $\int_K|u_k-u|\,dx\to0$ となることである。
$L^1_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ で $u_k\to u$ なら
$$
V(u;\Omega)\le\liminf_{k\to\infty}V(u_k;\Omega)
$$
である。とくに Lebesgue 可測集合 $E_k,E$ について $L^1_{\mathrm{loc}}(\Omega)$ で $\chi_{E_k}\to\chi_E$ なら $P(E;\Omega)\le\liminf_kP(E_k;\Omega)$ である。
$\varphi\in C_c^1(\Omega;\mathbb{R}^n)$、$|\varphi|\le1$ を固定し、$K:=\operatorname{supp}\varphi$ とする。$\operatorname{div}\varphi$ は $K$ の外で $0$ の有界連続関数なので
$$
\Bigl|\int_\Omega u_k\operatorname{div}\varphi\,dx-\int_\Omega u\operatorname{div}\varphi\,dx\Bigr|\le\sup|\operatorname{div}\varphi|\int_K|u_k-u|\,dx\to0
$$
である。したがって $\int u\operatorname{div}\varphi=\lim_k\int u_k\operatorname{div}\varphi\le\liminf_kV(u_k;\Omega)$ である。$\varphi$ について上限をとればよい。$\square$
等号は一般に成り立たない。たとえば $n=1$ で $E_k:=[0,1]\cup\bigcup_{j=1}^k[2+j/k,\,2+j/k+1/k^2]$ とすると、付け加えた区間の総長は $1/k$ なので $L^1$ で $\chi_{E_k}\to\chi_{[0,1]}$ だが、ex-perimeter-one-dim により $P(E_k)=2k+2\to\infty$、$P([0,1])=2$ である。下半連続性は、極限で周長が「消える」ことはあっても「生まれる」ことはないと述べている。
以下 $\rho$ は 軟化子 の例「標準的な軟化子」とし、$\rho(-x)=\rho(x)$ に注意する。
$u\in L^1_{\mathrm{loc}}(\mathbb{R}^n)$、$\varepsilon>0$ なら $V(\rho_\varepsilon*u;\mathbb{R}^n)\le V(u;\mathbb{R}^n)$ である。
要点:軟化を試験ベクトル場の側へ移し、試験ベクトル場の軟化も長さ $1$ 以下であることを使う。
$\varphi\in C_c^1(\mathbb{R}^n;\mathbb{R}^n)$、$|\varphi|\le1$ とする。Fubini の定理と $\rho_\varepsilon(-x)=\rho_\varepsilon(x)$ により $\int(\rho_\varepsilon*u)\operatorname{div}\varphi\,dx=\int u\,(\rho_\varepsilon*\operatorname{div}\varphi)\,dx=\int u\operatorname{div}(\rho_\varepsilon*\varphi)\,dx$ である(被積分関数は $u$ が局所可積分、$\rho_\varepsilon$ と $\varphi$ が有界で台がコンパクトなので絶対可積分)。$\rho_\varepsilon*\varphi$ は $C_c^\infty$ 級で、$|\rho_\varepsilon*\varphi|\le\rho_\varepsilon*|\varphi|\le1$ なので、右辺は $V(u;\mathbb{R}^n)$ 以下である。$\square$
Lebesgue 可測集合 $E,F\subset\mathbb{R}^n$ について
$$
P(E\cup F)\le P(E)+P(F),\qquad P(E\cap F)\le P(E)+P(F)
$$
である。
右辺が有限の場合を示せばよい。$u:=\chi_E$、$v:=\chi_F$ とし、$u_\varepsilon:=\rho_\varepsilon*u$、$v_\varepsilon:=\rho_\varepsilon*v$ とおく。$u_\varepsilon,v_\varepsilon$ は $C^\infty$ 級で値は $[0,1]$ に入り(軟化子 の命題「軟化の基本性質」の 1・4)、$\varepsilon\to0$ で $L^1_{\mathrm{loc}}(\mathbb{R}^n)$ において $u_\varepsilon\to u$、$v_\varepsilon\to v$ である(同記事の定理「軟化による近似」の 3)。
和集合。 $\chi_{E\cup F}=u+v-uv$ であり、$w_\varepsilon:=u_\varepsilon+v_\varepsilon-u_\varepsilon v_\varepsilon$ とおく。
$$
|u_\varepsilon v_\varepsilon-uv|\le|u_\varepsilon-u|\,v_\varepsilon+u\,|v_\varepsilon-v|\le|u_\varepsilon-u|+|v_\varepsilon-v|
$$
なので、$L^1_{\mathrm{loc}}$ で $w_\varepsilon\to\chi_{E\cup F}$ である。また
$$
\nabla w_\varepsilon=(1-v_\varepsilon)\nabla u_\varepsilon+(1-u_\varepsilon)\nabla v_\varepsilon,\qquad|\nabla w_\varepsilon|\le|\nabla u_\varepsilon|+|\nabla v_\varepsilon|
$$
である($0\le u_\varepsilon,v_\varepsilon\le1$)。lem-perimeter-smooth と lem-perimeter-mollify により
$$
V(w_\varepsilon;\mathbb{R}^n)=\int|\nabla w_\varepsilon|\le\int|\nabla u_\varepsilon|+\int|\nabla v_\varepsilon|=V(u_\varepsilon;\mathbb{R}^n)+V(v_\varepsilon;\mathbb{R}^n)\le P(E)+P(F)
$$
である。$\varepsilon=1/k$ として thm-perimeter-lsc を使うと $P(E\cup F)\le\liminf_kV(w_{1/k};\mathbb{R}^n)\le P(E)+P(F)$ である。
共通部分。 $\chi_{E\cap F}=uv$ であり、$u_\varepsilon v_\varepsilon\to uv$(上の評価)、$\nabla(u_\varepsilon v_\varepsilon)=v_\varepsilon\nabla u_\varepsilon+u_\varepsilon\nabla v_\varepsilon$ の長さは $|\nabla u_\varepsilon|+|\nabla v_\varepsilon|$ 以下なので、同じ議論で $P(E\cap F)\le P(E)+P(F)$ である。$\square$
Lebesgue 可測集合の列 $E_1,E_2,\ldots$ について $P\bigl(\bigcup_iE_i\bigr)\le\sum_iP(E_i)$ である。
要点:有限個の和集合の評価を繰り返し、増大列の極限で下半連続性を使う。
$F_N:=\bigcup_{i\le N}E_i$、$F:=\bigcup_iE_i$ とおく。thm-perimeter-union を繰り返し使うと $P(F_N)\le\sum_{i\le N}P(E_i)$ である。$\chi_{F_N}$ は $\chi_F$ に単調に増加して収束するので、単調収束定理により各コンパクト集合の上で $\int|\chi_F-\chi_{F_N}|\to0$ である。thm-perimeter-lsc より $P(F)\le\liminf_NP(F_N)\le\sum_iP(E_i)$ である。$\square$
$n\ge2$ とし、$(0,1)^n$ の有理点を $q_1,q_2,\ldots$ と並べる。$c>0$ を $\sum_i\alpha_n(c2^{-i})^n\le\frac12$ となるようにとり、開球の和集合
$$
E:=\bigcup_{i=1}^\infty B(q_i,c2^{-i})
$$
を考える。このとき $P(E)<\infty$ だが、位相的な境界 $\partial E$ は $|\partial E|\ge\frac12$ を満たし、$\mathcal H^{n-1}(\partial E)=\infty$ である。
要点:周長は球面の面積の和で抑えられ、閉包は立方体全体を含むので境界は体積が正である。
cor-perimeter-countable と ex-perimeter-ball により$$P(E)\le\sum_{i=1}^\infty n\alpha_n(c2^{-i})^{n-1}=n\alpha_nc^{n-1}\sum_{i=1}^\infty2^{-i(n-1)}<\infty$$である($n\ge2$ なので等比級数が収束する)。$E$ は開集合なので $\partial E=\overline E\setminus E$ であり、$\{q_i\}$ は $(0,1)^n$ で稠密なので $\overline E\supset[0,1]^n$ である。したがって $|\partial E|\ge|[0,1]^n\setminus E|\ge1-|E|\ge1-\sum_i\alpha_n(c2^{-i})^n\ge\frac12$ である。もし $\mathcal H^{n-1}(\partial E)<\infty$ なら、Hausdorff測度と面積・余面積公式 の命題「次元指数を上げたときの消滅」により $\mathcal H^n(\partial E)=0$ となり、$\mathcal H^n=\mathcal L^n$ に反する。$\square$
この例では、周長が数えているのは各球面のうち他の球に隠れていない部分であり、位相的な境界の大部分(体積が正の部分)は周長に寄与しない。周長がどの部分の面積を測っているかを正確に述べるのが、次の節の被約境界である。
$E$ が $\Omega$ で局所有限周長なら、$\Omega$ 上の Radon測度 $\mu_E$ と、$\mu_E$-可測で $\mu_E$-ほとんど至る所 $|\nu_E|=1$ を満たす $\nu_E\colon\Omega\to\mathbb{R}^n$ が($\nu_E$ は $\mu_E$-零集合を除いて)ただ 1 組あって、すべての $\varphi\in C_c^1(\Omega;\mathbb{R}^n)$ について
$$
\int_E\operatorname{div}\varphi\,dx=\int_\Omega\varphi\cdot\nu_E\,d\mu_E
$$
が成り立つ。さらに開集合 $W\subset\Omega$ について $\mu_E(W)=P(E;W)$ である。
Sim83 6.1(p. 35)と 14.1(p. 72)にあり、この記事では証明しない。$\varphi\mapsto\int_E\operatorname{div}\varphi$ は、$\Omega$ に閉包がコンパクトに含まれる各開集合 $W$ に台をもつ $\varphi$ について $P(E;W)\sup|\varphi|$ で抑えられるので、台がコンパクトな連続ベクトル場の上の有界線形汎関数に延び、Riesz–Markov–角谷の表現定理 のベクトル値の形で測度に表される。Sim83 は内向きの法線 $-\nu_E$ で式を書く。$\mu_E$ は $\chi_E$ の超関数微分の全変動測度 $|D\chi_E|$ であり、$D\chi_E=-\nu_E\,\mu_E$ である。$D$ がなめらかな境界をもつ領域なら、発散定理 と lem-perimeter-area-element により $\mu_D=\mathcal H^{n-1}$ の $\partial D$ への制限、$\nu_D$ は外向きの単位法線である。
$\nu_E$ は「一般化された外向きの法線」だが、$\mu_E$-ほとんど至る所でしか決まらない。法線が点ごとに意味をもつ点を選び出すのが被約境界である。
$E$ を $\Omega$ で局所有限周長とする。$x\in\Omega$ が $E$ の被約境界(reduced boundary)$\partial^*E$ に属するとは、すべての $r>0$ で $\mu_E(B(x,r))>0$ であり、極限
$$
\lim_{r\downarrow0}\frac1{\mu_E(B(x,r))}\int_{B(x,r)}\nu_E\,d\mu_E
$$
が存在して長さが $1$ であることをいう。
$E$ を $\Omega$ で局所有限周長とする。このとき $\partial^*E$ は可算 $(n-1)$-整流可能であり、$\mu_E=\mathcal H^{n-1}$ の $\partial^*E$ への制限である。とくに、開集合 $W\subset\Omega$ について $P(E;W)=\mathcal H^{n-1}(\partial^*E\cap W)$、また
$$
\int_E\operatorname{div}\varphi\,dx=\int_{\partial^*E}\varphi\cdot\nu_E\,d\mathcal H^{n-1}\qquad(\varphi\in C_c^1(\Omega;\mathbb{R}^n))
$$
である。さらに各 $x\in\partial^*E$ で、拡大した集合 $(E-x)/\lambda$ は $\lambda\downarrow0$ のとき半空間 $\{y\mid y\cdot\nu_E(x)<0\}$ に $L^1_{\mathrm{loc}}$ で収束し、$\nu_E(x)^\perp$ が $\mu_E$ の近似接空間(重複度 $1$)である。
Sim83 Theorem 14.3(pp. 72–76)にあり、この記事では証明しない。証明は、$\nu_E$ の平均が長さ $1$ に近い球の中では $E$ が半空間に近いことを、コンパクト性(下の thm-perimeter-compactness)と Sobolev の不等式による体積の下からの評価で示す。被約境界の整流可能性と近似接空間の意味は 整流可能集合 にある。
ex-perimeter-dense-balls では、位相的な境界は体積が正なのに、周長はその中の可算 $(n-1)$-整流可能な部分 $\partial^*E$ の面積だけを測っている。
$E_k\subset\mathbb{R}^n$ を Lebesgue 可測集合の列とし、閉包がコンパクトなすべての開集合 $W$ について $\sup_kP(E_k;W)<\infty$ とする。このとき部分列 $E_{k'}$ と局所有限周長の集合 $E$ があって、$L^1_{\mathrm{loc}}(\mathbb{R}^n)$ で $\chi_{E_{k'}}\to\chi_E$ となる。
有界変動関数の列についての形が Sim83 Theorem 6.3(p. 37)にあり、この記事では証明しない。$u_k=\chi_{E_k}$ に当てると $L^1_{\mathrm{loc}}$ で収束する部分列が得られ、その極限 $u$ はさらに部分列をとるとほとんど至る所の極限なので値は $0$ か $1$ であり、$u=\chi_E$($E:=\{u=1\}$)と書ける。$E$ が局所有限周長であることは thm-perimeter-lsc から従う。
$R>0$、$0< v<\alpha_nR^n$ とする。$B_R$ に含まれ $|E|=v$ を満たす Lebesgue 可測集合 $E$ のうち、周長 $P(E)$ を最小にするものが存在する。
条件を満たす集合の周長の下限を $m$ とする。$\alpha_nr^n=v$ となる $r< R$ について球 $B_r\subset B_R$ は条件を満たすので、ex-perimeter-ball($n=1$ では ex-perimeter-one-dim。開区間は閉区間と零集合だけ違う)より $m\le n\alpha_nr^{n-1}<\infty$ である。$P(E_k)\to m$ となる条件を満たす集合の列 $E_k$ をとる。$P(E_k;W)\le P(E_k)$ は有界なので、thm-perimeter-compactness により部分列(同じ記号で書く)と $E$ があって $L^1_{\mathrm{loc}}$ で $\chi_{E_k}\to\chi_E$ である。各 $E_k$ は $B_R$ に含まれるので、$\chi_E$ は $B_R$ の外でほとんど至る所 $0$ であり、$E$ を $E\cap B_R$ に取り替えてよい(周長も体積も変わらない)。コンパクト集合 $\overline{B_R}$ の上の $L^1$ 収束から $|E|=\lim_k|E_k|=v$ である。thm-perimeter-lsc により $P(E)\le\liminf_kP(E_k)=m$ なので、$E$ は最小元である。$\square$
この証明は、最小元を具体的に作らずに、下半連続性とコンパクト性だけから存在を導く変分法の直接法(変分法)である。なめらかな曲面の中だけで探すと、最小化列の極限がなめらかな曲面になる保証がなく、この議論は使えない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 周長を Lebesgue 測度の意味で測ること(位相的な境界の面積に替える) | ex-perimeter-dense-balls | 周長は有限だが位相的な境界の $\mathcal H^{n-1}$ は無限大で、2 つの量は一致しない |
| コンパクト性の、周長の局所的な有界性 | $(0,1)^2$ を幅 $1/(2k)$ の縦の帯に交互に分けた集合 $E_k:=\{x\in(0,1)^2\mid\lfloor2kx_1\rfloor\text{ が偶数}\}$ | 連続関数 $g$ について $\int\chi_{E_k}g\to\frac12\int_{(0,1)^2}g$ なので、$L^1_{\mathrm{loc}}$ の極限 $\chi_F$ があれば $(0,1)^2$ 上で $\chi_F=\frac12$ となって矛盾し、収束する部分列がない(したがって定理から周長は有界でない) |
| 最小化の、集合が一定の球 $B_R$ に入ること | 平行移動した球 $E_k:=B(ke_1,r)$ | 体積と周長は一定だが $L^1_{\mathrm{loc}}$ の極限は空集合で、極限で体積の条件が失われる |
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