Thueの定理(ディオファントス方程式)(Thue's theorem on Diophantine equations)とは、整数係数の 2 変数の同次式 $F(x,y)$ が有理数体上既約で次数が $3$ 以上なら、どの整数 $m$ についても $F(x,y)=m$ の整数解が有限個しかないという定理で、A. Thue が 1909 年に証明した。解があると $x/y$ が $F(t,1)$ の根を誤差 $1/\lvert y\rvert^n$ 程度で近似し、次数 $n$ の代数的数は指数 $n/2+1+\varepsilon$ より良い近似を有限個しかもたないという Thue の近似定理がそれを許さない。次数 $2$ では $x^2-2y^2=1$ のように解が無限個になりうる。解を具体的に求める手続きは Baker の対数の一次形式の理論で得られた。
前提知識: 既約多項式, 同次多項式, 代数的数, Diophantus近似, Thue–Siegel–Rothの定理
Thue の定理(Thue's theorem)とは、整数係数の 2 変数の同次式 $F(x,y)$ が有理数体上既約で次数が $3$ 以上なら、どの整数 $m$ についても方程式
$$
F(x,y)=m
$$
をみたす整数の組 $(x,y)$ が有限個しかない、という定理である。A. Thue が 1909 年に、代数的数の有理数による近似の精度についての定理とあわせて証明した。たとえば $x^3-2y^3=m$ の整数解は、どの $m$ についても有限個である。
次数 $2$ では成り立たない。$x^2-2y^2=1$ は既約な 2 次の同次式の方程式だが、$(3,2),(17,12),(99,70),\dots$ と無限個の整数解をもつ(Pell方程式)。次数 $n$ が $3$ 以上で解が有限個になる理由は、解 $(x,y)$ があると有理数 $x/y$ が $F(t,1)$ の根を誤差 $1/\lvert y\rvert^{n}$ 程度で近似し、近似の精度の定理がそれを許さないことにある。次数 $2$ ではこの誤差 $1/y^2$ の近似が無限個ありうる。
この記事では、二元形式の言葉を定め、近似の定理(Thue の近似定理、または Roth の定理)を引用して、方程式の解の有限性を完全に証明する。あわせて、条件を外すと有限性が成り立たなくなる例を確かめる。平面の円の詰め込みについての Thue の定理とは別の定理である。
整数 $a_0,\dots,a_n$ を係数とする $n$ 次の同次式
$$
F(x,y)=a_0x^n+a_1x^{n-1}y+\dots+a_ny^n\qquad(n\ge1)
$$
を、$n$ 次の二元形式(binary form)という(係数がすべて $0$ のものは除く)。$F$ が $\mathbb{Q}$ 係数の 2 つの同次式(次数 $1$ 以上)の積に分解しないとき、$F$ は 既約 であるという。整数 $m$ について、方程式 $F(x,y)=m$ を Thue 方程式 といい、その整数解 $(x,y)\in\mathbb{Z}^2$ を考える。
既約な二元形式は、1 変数の既約多項式と同じ情報をもつ。次の補題の性質を、主定理の証明で使う。
$F$ を $n$ 次の既約な二元形式で $n\ge2$ とする。
1:$a_0=0$ なら $F(x,y)=y\cdot G(x,y)$ で、$G$ は $n-1\ge1$ 次の同次式である。これは $F$ の分解なので既約性に反する。
2:1 により $f(t)=a_0t^n+\dots+a_n$ は $n$ 次である。$f=gh$($g,h\in\mathbb{Q}[t]$、次数 $r,s\ge1$、$r+s=n$)と分解したとする。$G(x,y):=y^rg(x/y)$、$H(x,y):=y^sh(x/y)$ は $\mathbb{Q}$ 係数の $r$ 次、$s$ 次の同次式で、$y\ne0$ では $G(x,y)H(x,y)=y^nf(x/y)=F(x,y)$ である。両辺は多項式なので恒等的に等しく、$F$ の分解になって既約性に反する。よって $f$ は既約である。標数 $0$ の体上の既約多項式は重根をもたない($f$ と導関数 $f'$ の最大公約元は $f$ の約元で、$f'\ne0$ の次数は $n-1$ なので $1$ である)ので、根は互いに異なる。各根 $\alpha_i$ は既約多項式 $f$ の根なので、その最小多項式は $f/a_0$ で、次数は $n$ である。$n\ge2$ なので有理数でない。
3:$f(t)=a_0\prod_i(t-\alpha_i)$ に $t=x/y$ を代入して $y^n$ を掛ければ、$y\ne0$ で等式が成り立ち、多項式として等しい。
4:$y\ne0$ なら $F(x,y)=y^nf(x/y)$ で、$x/y$ は有理数なので 2 により $f(x/y)\ne0$ である。$y=0$ なら $F(x,0)=a_0x^n$ で、1 により $x=0$ のときだけ $0$ になる。$\square$
逆に、整数係数の 1 変数の既約多項式 $f$(次数 $n$)から $F(x,y):=y^nf(x/y)$ を作れば、既約な $n$ 次の二元形式が得られる(分解すれば $y=1$ とおいて $f$ の分解が得られ、次数を比べて矛盾する)。たとえば $t^3-2$ は有理数の根をもたない 3 次式なので既約で、$x^3-2y^3$ は既約な 3 次の二元形式である。
解の有限性の鍵は、代数的数が有理数で「よく近似できすぎない」ことである。有理数 $x=p/q$(既約分数、$q\ge1$)の 高さ を $H(x):=\max(\lvert p\rvert,q)$ と定める。
$\alpha$ を $\mathbb{Q}$ 上の次数が $d$ の複素数の代数的数とし、$\varepsilon>0$、$C>0$ とする。不等式
$$
\lvert x-\alpha\rvert< C\,H(x)^{-(d/2+1+\varepsilon)}
$$
をみたす有理数 $x$ は有限個しかない。
この定理はこの記事では証明しない(Thue 1909。近似の指数の定義は Sil09 §IX.1、p. 271、Thue の指数 $\tfrac12d+1+\varepsilon$ は同 p. 272 の表)。$\alpha$ が実数でなければ、$\lvert x-\alpha\rvert\ge\lvert\operatorname{Im}\alpha\rvert>0$ なので主張は明らかである。のちに Siegel、Dyson、Gelfond が指数を改良し、Roth が $2+\varepsilon$ に到達した(Thue–Siegel–Rothの定理 の定理「Roth の定理」。同 p. 272 の表)。この記事の主定理には Thue の指数で足りる。
比較のため、指数 $d$ の評価(Liouville の近似定理)を思い出す。$\alpha$ が次数 $d\ge2$ の代数的数なら、定数 $c>0$ があってすべての有理数 $p/q$ で $\lvert\alpha-p/q\rvert\ge c/q^d$ である(超越数 の定理「Liouville の近似定理」、Sil09 Proposition IX.1.3、p. 270)。下の節「Liouville の評価では足りないこと」で見るように、主定理にはこれでは足りず、指数を $d$ より小さくすることが本質的である。$d\ge3$ なら $\tfrac12d+1< d$ であり、Thue の定理はちょうどこの範囲で Liouville の指数を下げた。
$F(x,y)$ を整数係数の既約な二元形式で、次数 $n$ が $3$ 以上のものとする。このとき、どの整数 $m$ についても、$F(x,y)=m$ をみたす整数の組 $(x,y)$ は有限個しかない。
証明は 2 段に分ける。まず、解 $(x,y)$ の比 $x/y$ が $F(t,1)$ の根を誤差 $1/\lvert y\rvert^n$ 程度で近似することを示す(次の補題)。次に、その近似が近似の定理と両立するのは有限個の比だけであることを示す。
$F$ を $n$ 次の既約な二元形式($n\ge2$)、$\alpha_1,\dots,\alpha_n$ を lem-thue-irreducible の根とし、$m$ を $0$ でない整数とする。定数 $C_1>0$($F$ と $m$ だけで決まる)があって、$F(x,y)=m$、$y\ne0$ をみたす整数の組について、ある $i$ で
$$
\Bigl\lvert\frac xy-\alpha_i\Bigr\rvert\le\frac{C_1}{\lvert y\rvert^n}
$$
が成り立つ。
根は互いに異なるので $\delta:=\min_{i\ne j}\lvert\alpha_i-\alpha_j\rvert>0$ である。解 $(x,y)$($y\ne0$)について、$\lvert x/y-\alpha_i\rvert$ が最小になる $i$ をとる。$j\ne i$ なら
$$
\delta\le\lvert\alpha_i-\alpha_j\rvert\le\Bigl\lvert\frac xy-\alpha_i\Bigr\rvert+\Bigl\lvert\frac xy-\alpha_j\Bigr\rvert\le2\Bigl\lvert\frac xy-\alpha_j\Bigr\rvert
$$
である。lem-thue-irreducible の 3 により $F(x,y)=a_0y^n\prod_j(x/y-\alpha_j)$ なので
$$
\lvert m\rvert=\lvert a_0\rvert\,\lvert y\rvert^n\prod_{j=1}^n\Bigl\lvert\frac xy-\alpha_j\Bigr\rvert\ge\lvert a_0\rvert\,\lvert y\rvert^n\Bigl(\frac\delta2\Bigr)^{n-1}\Bigl\lvert\frac xy-\alpha_i\Bigr\rvert
$$
となる。$a_0\ne0$ なので $C_1:=\lvert m\rvert\big/\bigl(\lvert a_0\rvert(\delta/2)^{n-1}\bigr)$ とおけばよい。$\square$
$n\ge3$ とする。$y=0$ の解は $a_0x^n=m$ をみたし、$a_0\ne0$ なので $x$ は高々 2 個である。$m=0$ なら lem-thue-irreducible の 4 により解は $(0,0)$ だけである。以下 $m\ne0$ とし、$y\ne0$ の解を数える。
解を既約分数に分ける.解 $(x,y)$ について、$x/y$ を既約分数 $p/q$($q\ge1$)で表すと、$0$ でない整数 $t$ があって $(x,y)=(tp,tq)$ である。$F$ は $n$ 次の同次式なので $m=F(tp,tq)=t^nF(p,q)$ であり、$F(p,q)$ は $0$ でない整数だから $\lvert t\rvert^n\le\lvert m\rvert$ である。したがって 1 つの有理数 $p/q$ に対応する解は有限個で、解の比 $x/y$ のとりうる値が有限個であることを示せばよい。
近似の不等式を高さで書く.lem-thue-approx-from-solution の $i$ と $C_1$ をとる。$\lvert y\rvert=\lvert t\rvert q\ge q$ なので $\lvert p/q-\alpha_i\rvert\le C_1/q^n\le C_1$ であり、$\lvert p\rvert\le(\lvert\alpha_i\rvert+C_1)q$ となる。$A:=1+C_1+\max_j\lvert\alpha_j\rvert$ とおくと、高さは $H(p/q)=\max(\lvert p\rvert,q)\le Aq\le A\lvert y\rvert$ をみたす。よって
$$
\Bigl\lvert\frac pq-\alpha_i\Bigr\rvert\le\frac{C_1}{\lvert y\rvert^n}\le\frac{C_1A^n}{H(p/q)^n}.
$$
近似の定理を当てる.$\varepsilon:=\tfrac14$、$\tau:=\tfrac12n+1+\varepsilon$ とおく。$n\ge3$ なので $n-\tau=\tfrac12n-\tfrac54\ge\tfrac14>0$ であり、$H(p/q)\ge1$ から $H(p/q)^{-n}\le H(p/q)^{-\tau}$ である。したがって $x/y=p/q$ は
$$
\Bigl\lvert\frac pq-\alpha_i\Bigr\rvert<2C_1A^n\,H(p/q)^{-\tau}
$$
をみたす。lem-thue-irreducible の 2 により $\alpha_i$ の次数は $n$ なので、thm-thue-approximation($d=n$、$C=2C_1A^n$)により、各 $i$ についてこの不等式をみたす有理数は有限個である。$i$ は $n$ 通りなので、$x/y$ のとりうる値は有限個である。$\square$
証明で次数 $n\ge3$ を使ったのは、解から得られる近似の指数 $n$ が近似の定理の指数 $\tfrac12n+1$ を超えるところだけである。近似の定理として Roth の定理(実数の代数的な無理数について指数 $2+\varepsilon$。Thue–Siegel–Rothの定理 の定理「Roth の定理」)を使っても同じ議論が通る。その場合 $\alpha_i$ が実数のときは Roth の定理を、実数でないときは $\lvert p/q-\alpha_i\rvert\ge\lvert\operatorname{Im}\alpha_i\rvert$ を使い、$n>2$ で足りる。
$F$ を整数係数の既約な二元形式で次数 $3$ 以上のもの、$M\ge0$ とする。$\lvert F(x,y)\rvert\le M$ をみたす整数の組 $(x,y)$ は有限個である。言い換えると、$\max(\lvert x\rvert,\lvert y\rvert)\to\infty$ のとき $\lvert F(x,y)\rvert\to\infty$ である。
$\lvert F(x,y)\rvert\le M$ の解は、$-M\le m\le M$ の各整数 $m$ についての $F(x,y)=m$ の解の和集合である。thm-thue-main によりそれぞれ有限個なので、全体も有限個である。後半:ある $M$ について $\lvert F(x,y)\rvert\le M$ となる組が $\max(\lvert x\rvert,\lvert y\rvert)$ のいくらでも大きいところにあれば、それらは無限個で前半に反する。逆に後半が成り立てば、$\lvert F\rvert\le M$ の解は有界な範囲にあり有限個である。$\square$
指数 $n$ の Liouville の評価だけでは、主定理は証明できない。解 $(x,y)$ と lem-thue-approx-from-solution の根 $\alpha_i$ について、Liouville の評価は下からの不等式
$$
\Bigl\lvert\frac xy-\alpha_i\Bigr\rvert\ge\frac{c}{\lvert y\rvert^{n}}
$$
を与える($x/y$ を既約にすると分母は $\lvert y\rvert$ 以下なので、この形で成り立つ)。一方、補題は上からの不等式 $\le C_1/\lvert y\rvert^n$ を与える。両者は同じ指数 $n$ の不等式で、$c\le C_1$ なら矛盾しない。実際、Liouville の評価の証明は「$q^nf(p/q)$ が $0$ でない整数」という事実から出発するが、Thue 方程式の解はまさに $\lvert q^nf(p/q)\rvert=\lvert F(p,q)\rvert$ が小さい整数になる組なので、Liouville の評価はその存在を禁じない。指数を $n$ から真に下げた近似の定理が要るのはこのためである。
$F(x,y)=x^3-2y^3$ は既約な 3 次の二元形式なので、thm-thue-main によりどの整数 $m$ についても $x^3-2y^3=m$ の整数解は有限個である。根は $\sqrt[3]2,\ \omega\sqrt[3]2,\ \omega^2\sqrt[3]2$($\omega=e^{2\pi i/3}$)で、解 $(x,y)$ の比 $x/y$ は実の根 $\sqrt[3]2\approx1.2599$ に近い。たとえば $m=11$ の解 $(3,2)$ では $x/y=1.5$、$m=-3$ の解 $(5,4)$ では $x/y=1.25$ である。
$\lvert y\rvert\le3000$ の範囲で解を探すと、$1\le m\le11$ では次のとおりである(計算機による探索)。
| $m$ | 見つかった解 $(x,y)$ |
|---|---|
| $1$ | $(1,0)$, $(-1,-1)$ |
| $2$ | $(0,-1)$ |
| $3$ | $(1,-1)$, $(-5,-4)$ |
| $4,5,7,9$ | なし |
| $6$ | $(2,1)$ |
| $8$ | $(2,0)$, $(-2,-2)$ |
| $10$ | $(2,-1)$, $(4,3)$ |
| $11$ | $(3,2)$ |
$(x,y)\mapsto(-x,-y)$ で $m$ は $-m$ に移るので、負の $m$ の解もこれから分かる。$m=4,5$ には実際に解がない。立方数を $9$ で割った余りは $0,1,8$ なので、$x^3-2y^3$ を $9$ で割った余りは $0,1,2,3,6,7,8$ のどれかで、$4$ にも $5$ にもならないからである。表の「なし」以外の行が解をすべて尽くしているかどうかは、thm-thue-main からは分からない(次節の「有効性」を見よ)。
既約性を弱める.主定理の証明で既約性を使ったのは、根が互いに異なること、根が有理数でないこと($F(x,y)=0$ の解が $(0,0)$ だけであること)、根の次数が $n$ であることの 3 点と、$x^n$ の係数が $0$ でないこと(lem-thue-irreducible の 1)である。近似の定理として Roth の定理を使えば根の次数についての条件は要らず、$n\ge3$ で $F$ が複素数係数の互いに比例しない $n$ 個の 1 次式の積に分解すれば、$0$ でない $m$ について解は有限個である(Thue–Siegel–Rothの定理 の定理「Thue 方程式の解の有限性」)。たとえば $x^3-xy^2=x(x-y)(x+y)$ は既約でないが、$m\ne0$ では解は有限個である。$m=0$ では $(t,0)$、$(t,t)$($t\in\mathbb{Z}$)がすべて解になるので、この形では $m\ne0$ が必要である。
変数を増やす.$K$ を代数体として、$K$ の元を係数とする 1 次式のノルムで作った多変数の同次式(ノルム形式)の方程式への一般化は、Schmidt が Schmidtの部分空間定理 を使って扱った(同記事の節「ほかの応用」)。変数が 3 つ以上になると、次の節の表の 3 行目のように、既約で次数 $3$ でも解が無限個になることがある。
有効性.Thue の近似定理と Roth の定理の証明は、例外の有理数の個数は抑えるが、その大きさの上界を与えない。そのため上の証明は、解が有限個であることは示すが、解をすべて求める手続きを与えない(Sil09 Remark IX.1.6、p. 273)。A. Baker は代数的数の対数の 1 次形式の下界を使って、既約な 3 次以上の二元形式 $F$ について $F(x,y)=m$ の解の大きさの上界を $F$ と $m$ から具体的に計算できる形で与え、方程式を完全に解く手続きを得た(Bak71 §4、p. 22。この記事では証明しない)。手法は Bakerの定理(対数の一次形式) で扱う。
主定理の仮定を 1 つずつ外すと、結論は成り立たなくなる。確かめは表の下にある。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 次数 $n\ge3$ | $x^2-2y^2=1$ | 解は有限個 |
| 既約 | $(x^2-2y^2)^2=1$ | 解は有限個 |
| 二元(変数が 2 つ) | $x^3+2y^3+4z^3-6xyz=1$ | 解は有限個 |
各行の反例が、どの条件を破り、他の条件をみたすかを確かめる。
1 行目:$x^2-2y^2$ は既約な二元形式($t^2-2$ は有理数の根をもたない)で、変数は 2 つだが、次数は $2$ である。$x_k+y_k\sqrt2:=(3+2\sqrt2)^k$($k\ge1$)とおくと、$x_k-y_k\sqrt2=(3-2\sqrt2)^k$ なので $x_k^2-2y_k^2=\bigl((3+2\sqrt2)(3-2\sqrt2)\bigr)^k=1$ であり、$x_k+y_k\sqrt2$ は $k$ について狭義に増加するので、解 $(3,2),(17,12),(99,70),\dots$ は互いに異なる(Pell方程式 の定理「解の構造」)。
2 行目:$(x^2-2y^2)^2$ は次数 $4\ge3$ の二元形式だが、$x^2-2y^2$ の 2 乗に分解するので既約でない。1 行目の解はすべて $(x^2-2y^2)^2=1$ の解であり、無限個ある。この形式では 1 次式 $x-\sqrt2y$ が 2 回現れ、lem-thue-approx-from-solution の $\delta>0$ が成り立たない。
3 行目:$\theta:=\sqrt[3]2$ とおく。$t^3-2$ は既約なので $1,\theta,\theta^2$ は $\mathbb{Q}(\theta)$ の $\mathbb{Q}$ 上の基底である。$u=a+b\theta+c\theta^2$ を掛ける写像のこの基底での行列は、$\theta^3=2$ から各列が $u,\ u\theta,\ u\theta^2$ の係数になり、その行列式は $a^3+2b^3+4c^3-6abc=:N(a,b,c)$ である。行列式は乗法的なので $N$ は積を積に移す。$u\ne0$ は体の元として逆元をもつので $N\ne0$ である。
既約性:$N$ が $\mathbb{Q}$ 係数の同次式の積に分解すれば、次数が $1$ の因子 $L(x,y,z)$ がある。$L=0$ は $\mathbb{Q}^3$ の 2 次元の部分空間を定めるので、$0$ でない有理数の組 $(a,b,c)$ で $L(a,b,c)=0$、したがって $N(a,b,c)=0$ となるものがあり、上の事実に反する。よって $N$ は既約な 3 次の同次式である。
解が無限個あること:$\eta:=\theta-1$ は $N(-1,1,0)=-1+2=1$ をみたす。$\eta^k=a_k+b_k\theta+c_k\theta^2$($k\ge1$)は $a_k,b_k,c_k\in\mathbb{Z}$ で、乗法性から $N(a_k,b_k,c_k)=1$ である($\eta^2=1-2\theta+\theta^2$、$\eta^3=1+3\theta-3\theta^2$)。実数として $0<\eta<1$ なので $\eta^k$ は相異なり、基底の一意性から組 $(a_k,b_k,c_k)$ も相異なる。変数が 3 つになったことだけで、解は無限個になった。
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