正多角形の敷き詰め

同義語:平面充填regular tilings

概要

正多角形の敷き詰め(regular tilings)とは、正多角形のタイルをすき間も重なりもなく並べて平面を埋めつくすことである。合同な正 $p$ 角形だけで辺と辺を合わせて敷き詰められるのは $p=3,4,6$ のときに限り、1 頂点に集まる枚数 $q$ は $(p-2)(q-2)=4$ を満たす。これは頂点のまわりの内角の和が $360^\circ$ になることから従う。種類が混じってもよい正多角形を 1 点のまわりにすき間なく並べる組合せは、辺の数の組で 17 通り、並ぶ順まで区別すると 21 通りある。ただし 1 点のまわりで並べられても、平面全体を同じ頂点の形で埋めつくせるとは限らない(正五角形 2 枚と正十角形 1 枚の $5.5.10$ など)。すべての頂点が同じ形の、辺と辺を合わせた正多角形の敷き詰めは、正則な 3 種類と半正則な 8 種類の計 11 種類である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 多角形の内角の和と外角の和, 正多面体の分類, 不定方程式の解法

高校での出発点:正五角形のタイルは並べられるか

床や壁のタイル、蜂の巣の形のように、同じ形の板をすき間なく重ならずに並べて平面を埋めつくすことを 敷き詰め という。正方形のタイルなら、方眼紙のように並べればよい。正三角形も正六角形も並べられる。では、正五角形のタイルではどうか。
1 つの点のまわりにタイルの角を集めることから考える。正 $p$ 角形の内角の和は $180^\circ\times(p-2)$ で(多角形の内角の和と外角の和)、$p$ 個の内角は等しいので、1 つの内角は
$$ \frac{180^\circ\times(p-2)}{p}=180^\circ-\frac{360^\circ}{p} $$
である。

1 点のまわりに角を集める
  1. 正三角形の内角は $60^\circ$ で、$6\times60^\circ=360^\circ$ である。1 点のまわりにちょうど 6 枚並ぶ。
  2. 正方形の内角は $90^\circ$ で、$4\times90^\circ=360^\circ$ である。ちょうど 4 枚並ぶ。
  3. 正六角形の内角は $180^\circ-60^\circ=120^\circ$ で、$3\times120^\circ=360^\circ$ である。ちょうど 3 枚並ぶ。
  4. 正五角形の内角は $180^\circ-72^\circ=108^\circ$ である。3 枚並べると $3\times108^\circ=324^\circ$ で、$360^\circ-324^\circ=36^\circ$ のすき間が残る。4 枚並べると $4\times108^\circ=432^\circ$ で、$360^\circ$ を超えて重なる。$108^\circ$ の何倍かが $360^\circ$ になることはない($360\mathbin{÷}108=\dfrac{10}3$ は整数でない)。
正三角形・正方形・正六角形は、それぞれ 1 点のまわりに 6 枚・4 枚・3 枚ずつ集まって平面を埋めつくす 正三角形・正方形・正六角形は、それぞれ 1 点のまわりに 6 枚・4 枚・3 枚ずつ集まって平面を埋めつくす
正五角形を 1 点のまわりに 3 枚並べると、36° のすき間が残る 正五角形を 1 点のまわりに 3 枚並べると、36° のすき間が残る

図 1 のように正三角形・正方形・正六角形は平面を埋めつくし、図 2 のように正五角形は 1 点のまわりでもう行きづまる。この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 同じ大きさの正多角形 1 種類だけで平面を敷き詰められるのは、正三角形・正方形・正六角形だけか。→ thm-rtl-main
  2. 種類の違う正多角形を混ぜてよいなら、1 点のまわりに並べる組合せは何通りあるか。→ thm-rtl-vertex
  3. 1 点のまわりで角の和が $360^\circ$ になれば、平面全体に広げられるか。→ prop-rtl-odd、ex-rtl-5-5-10
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    正 $p$ 角形の内角 $180^\circ-\dfrac{360^\circ}{p}$1 頂点の角の和が $360^\circ$平らな面(曲率 $0$)
    $q$ 枚で $360^\circ$:$(p-2)(q-2)=4$正則な敷き詰め $\{p,q\}$Euclid 平面の正則な敷き詰め
    $(p-2)(q-2)<4$正多面体球面の敷き詰め
    $(p-2)(q-2)>4$平面では重なる双曲平面の敷き詰め
    分数の和 $\dfrac1{p_1}+\dfrac1{p_2}+\dfrac1{p_3}=\dfrac12$頂点の形単位分数の不定方程式

言葉の準備:敷き詰めと頂点の形

敷き詰めと辺と辺を合わせる敷き詰め

平面の多角形の集まりについて、次の 3 つの条件を考える。
(R1) 平面のどの点も、少なくとも 1 つの多角形に含まれる(すき間がない)。
(R2) 異なる 2 つの多角形は、内部を共有しない(重ならない)。共有してよいのは境界の点だけである。
(R3) 異なる 2 つの多角形が共有点をもつなら、その共有部分は、両方に共通の頂点 1 つか、両方に共通の辺 1 本全体である。
(i)(ii) を満たす集まりを平面の 敷き詰め といい、1 つ 1 つの多角形を タイル という。(i)(ii)(iii) をすべて満たす敷き詰めを 辺と辺を合わせた敷き詰め という。辺と辺を合わせた敷き詰めでは、タイルの頂点を敷き詰めの 頂点、タイルの辺を敷き詰めの 辺 という。

条件 (iii) は、「あるタイルの頂点が、ほかのタイルの辺の途中にこない」ことを言っている。レンガ積みのように列をずらして正方形を並べると、条件 (i)(ii) は満たすが (iii) は満たさない(ex-rtl-brick)。
辺と辺を合わせた敷き詰めの頂点 $v$ のまわりを、正多角形がどの順に囲むかを数の列で書く。たとえば正方形の敷き詰めでは、どの頂点も正方形 4 枚が囲むので $4.4.4.4$ と書く。

頂点の形

正多角形のタイルでできた、辺と辺を合わせた敷き詰めの頂点 $v$ を、正 $p_1$ 角形、正 $p_2$ 角形、…、正 $p_k$ 角形がこの順に($v$ のまわりを 1 周する順に)囲むとき、列 $p_1.p_2.\cdots.p_k$ を $v$ の 頂点の形 という。1 周の出発点と回る向きは選べるので、列を巡回させたもの($3.4.6.4$ と $4.6.4.3$)や逆順にしたもの($3.3.4.12$ と $12.4.3.3$)は同じ頂点の形とみなす。

頂点の形を読む
  1. 正六角形の敷き詰め(図 1 の右)の頂点は、正六角形 3 枚が囲むので $6.6.6$ である。正三角形の敷き詰めでは $3.3.3.3.3.3$ である。
  2. 頂点を正三角形・正方形・正六角形・正方形がこの順に囲むなら $3.4.6.4$ である。内角の和は $60^\circ+90^\circ+120^\circ+90^\circ=360^\circ$ である。
  3. 正三角形・正三角形・正方形・正三角形・正方形の順なら $3.3.4.3.4$、正三角形 3 枚と正方形 2 枚がまとまって並ぶなら $3.3.3.4.4$ である。どちらも内角の和は $3\times60^\circ+2\times90^\circ=360^\circ$ だが、並ぶ順が違うので、違う頂点の形である。

頂点のまわりの角の和は $360^\circ$

主定理の証明の土台は「頂点のまわりの角の和は $360^\circ$」という事実である。ex-rtl-start ではこれを当然のように使ったが、辺と辺を合わせた敷き詰めでは、きちんと証明できる。
以下、この記事の敷き詰めのタイルはどれも凸多角形とし、次の 有限性の仮定 をおく:平面の有界な範囲(ある円の内部)と交わるタイルは有限個である。

合同なタイルだけなら有限性の仮定が成り立つ理由を開く

合同なタイルだけの敷き詰めでは、この仮定は自動的に満たされる。タイルの面積を $S$、タイルの 2 点の距離の最大値を $d$ とすると、半径 $r$ の円と交わるタイルは、同じ中心で半径 $r+d$ の円の中にすっぽり入る。タイルは重ならないので、その枚数は $\dfrac{\pi(r+d)^2}{S}$ 以下である。

頂点のまわりのタイル

凸多角形のタイルでできた、辺と辺を合わせた敷き詰めの頂点 $v$ について、次が成り立つ。
(1) $v$ を含むタイルは、どれも $v$ を頂点にもつ。
(2) $v$ を含むタイルの、$v$ での内角の和は $360^\circ$ である。

共有部分と小さな円で調べる

要点:(1) $T$ と $v$ を頂点にもつタイル $T_0$ の共有部分は、条件 (iii) により共通の頂点か共通の辺で、どちらでも $v$ は $T$ の頂点になる。(2) $v$ を中心とする十分小さな円を考えると、$v$ を含むタイルはその円から中心角が内角に等しい扇形を切り取り、これらの扇形はすき間も重なりもなく円を埋めるので、中心角の和は $360^\circ$ である。

詳しい証明を開く

方針:(1) は条件 (iii) から、(2) は $v$ を中心とする小さな円をタイルが分け合うことから示す。

段 1((1) の証明)。$v$ は敷き詰めの頂点なので、$v$ を頂点にもつタイル $T_0$ がある。別のタイル $T$ が $v$ を含むとする。$T$ と $T_0$ は共有点 $v$ をもつので、条件 (iii) により共有部分は「共通の頂点 1 つ」か「共通の辺 1 本全体」である。共通の頂点 1 つなら、共有部分は $\{v\}$ で、$v$ は $T$ の頂点である。共通の辺 $e$ なら、$v$ は $e$ の上にあり、$T_0$ の頂点なので $e$ の端点である。$e$ は $T$ の辺でもあるので、その端点 $v$ は $T$ の頂点である。どちらの場合も $v$ は $T$ の頂点である。

段 2(小さな円をとる)。有限性の仮定により、$v$ の近くのタイルは有限個なので、$v$ を含まないタイルと $v$ との距離のうち最小のものが正の数として決まる。$v$ を中心とし、半径がその最小値より小さく、さらに $v$ を含む各タイルについて、そのタイルの $v$ を端点にもたない辺と $v$ との距離より小さい円 $D$ をとる。$D$ と交わるタイルは、$v$ を含むタイルだけである。

段 3(扇形に分かれる)。$v$ を含むタイル $T$ は、段 1 により $v$ を頂点にもつ凸多角形である。$D$ は $T$ の $v$ を端点にもたない辺と交わらないので、$D$ の中にある $T$ の境界は $v$ から出る 2 辺の一部だけで、$T$ と $D$ の共通部分は、$v$ を中心とし、中心角が $T$ の $v$ での内角に等しい扇形になる。

段 4(角の和)。def-rtl-tiling の条件 (i)(すき間がない)により、$D$ の点はどれもどれかのタイルに含まれ、段 2 によりそのタイルは $v$ を含むタイルである。よって段 3 の扇形を全部合わせると $D$ 全体になる。条件 (ii)(重ならない)により、2 つの扇形は内部を共有しない。重ならずに円 $D$ を埋めつくす扇形の中心角の和は $360^\circ$ である。よって $v$ での内角の和は $360^\circ$ である。$\square$

主定理 1:1 種類の正多角形の敷き詰め

1 種類の正多角形による敷き詰め

$p\ge3$ とする。合同な正 $p$ 角形だけを使って、辺と辺を合わせた平面の敷き詰めができるのは
$$ p=3,\quad4,\quad6 $$
のときに限る。逆に、この 3 つのそれぞれについて、そのような敷き詰めがある。このとき 1 つの頂点に集まるタイルの枚数 $q$ は、$p=3,4,6$ に応じて $q=6,4,3$ で、$(p-2)(q-2)=4$ を満たす。

角の和の式を整数の方程式に直す

方針:「限る」ことは lem-rtl-vertex の角の和を整数の方程式に直して示す。「ある」ことは次の節で 3 つの敷き詰めを作って示す。
段 1(角の和の式)。合同な正 $p$ 角形による辺と辺を合わせた敷き詰めがあるとし、その頂点 $v$ を 1 つとる。$v$ を含むタイルの枚数を $q$ とする(有限性の仮定により有限)。lem-rtl-vertex により、どのタイルも $v$ を頂点にもち、内角の和は $360^\circ$ である。正 $p$ 角形の内角は $180^\circ-\dfrac{360^\circ}p$ なので
$$ q\left(180^\circ-\frac{360^\circ}p\right)=360^\circ $$
である。
段 2(整理する)。両辺を $180^\circ$ で割ると $q\left(1-\dfrac2p\right)=2$ である。両辺に $p$ を掛けると $q(p-2)=2p$、つまり $pq-2p-2q=0$ である。両辺に $4$ を足すと、左辺は $(p-2)(q-2)$ に因数分解できて
$$ (p-2)(q-2)=4 $$
である。
段 3(整数の組を求める)。$p\ge3$ なので $p-2\ge1$ である。$q$ は正の整数で、段 2 から $q-2=\dfrac4{p-2}>0$ なので $q-2$ も正の整数である。積が $4$ になる正の整数の組は $(p-2,q-2)=(1,4),(2,2),(4,1)$ だけである。よって $(p,q)=(3,6),(4,4),(6,3)$ で、$p$ は $3,4,6$ のどれかである。
段 4(逆)。$p=3,4,6$ のそれぞれで敷き詰めがあることは、次の節の prop-rtl-exist で示す。$\square$

$(p-2)(q-2)=4$ の式は、正多面体の分類 の不等式 $(p-2)(q-2)<4$ と同じ計算から出てくる。正多面体では頂点のまわりの角の和が $360^\circ$ より小さく(そのぶん立体が折れ曲がる)、平面の敷き詰めではちょうど $360^\circ$ になる。積が $4$ を超えると角の和が $360^\circ$ を超えるので、平面の中では重なってしまう。

$(p-2)(q-2)$$4$ より小さい$4$ に等しい$4$ より大きい
1 頂点の角の和$360^\circ$ 未満$360^\circ$$360^\circ$ を超える
$\{p,q\}$ の例$\{3,3\}$、$\{4,3\}$、$\{5,3\}$$\{3,6\}$、$\{4,4\}$、$\{6,3\}$$\{5,4\}$、$\{7,3\}$、$\{4,5\}$
できるもの正多面体(球面の敷き詰め)平面の敷き詰め双曲平面の敷き詰め
個数5 通り3 通り無数
方程式の解を角で確かめる
  1. $(p,q)=(6,3)$:$3\times\left(180^\circ-60^\circ\right)=360^\circ$ で、$(6-2)(3-2)=4$ である。
  2. $(p,q)=(5,3)$:$(5-2)(3-2)=3<4$ で、角の和は $3\times108^\circ=324^\circ$ である。これは正十二面体の頂点になる(正多面体の分類)。
  3. $(p,q)=(5,4)$:$(5-2)(4-2)=6>4$ で、角の和は $4\times108^\circ=432^\circ$ である。$p=5$ では $q-2=\dfrac43$ が整数にならないので、角の和がちょうど $360^\circ$ になる $q$ はない。

3 つの敷き詰めを実際に作る

thm-rtl-main の「逆に、ある」の部分を示す。図 1 を見れば明らかに思えるが、図は平面の一部しか描けない。平面全体で条件 (i)(ii)(iii) が成り立つことを、座標で確かめる。

正三角形・正方形・正六角形の敷き詰め

1 辺 $1$ の正方形、正三角形、正六角形のそれぞれについて、それだけを使った辺と辺を合わせた平面の敷き詰めがある。

正方形から始めて順に作る

方針:正方形の敷き詰めを座標で作り、斜めの座標に写して正三角形の敷き詰めを作り、正三角形を 6 枚ずつまとめて正六角形の敷き詰めを作る。
段 1〜3 の要点:正方形 $S_{m,n}=\{(x,y)\mid m\le x\le m+1,\ n\le y\le n+1\}$($m,n$ は整数)は、方眼紙のように辺と辺を合わせて平面を敷き詰める。座標 $(x,y)$ を斜めの座標 $s\vec u+t\vec w$($\vec u=(1,0)$、$\vec w=\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$)に置きかえると、正方形は 1 辺 $1$、内角 $60^\circ$ と $120^\circ$ のひし形に移り、ひし形の敷き詰めができる。ひし形を長さ $\lvert\vec u-\vec w\rvert=1$ の短い対角線で切ると、1 辺 $1$ の正三角形の敷き詰めができる。以下、$s,t$ がともに整数の点 $m\vec u+n\vec w$ を 格子点 とよぶ。

段 1〜3 の詳しい確かめを開く

段 1(正方形)。整数 $m,n$ について、正方形 $S_{m,n}=\{(x,y)\mid m\le x\le m+1,\ n\le y\le n+1\}$ をとる。点 $(x,y)$ は、$x$ 以下の最大の整数 $m$ と $y$ 以下の最大の整数 $n$ をとれば $S_{m,n}$ に入るので、条件 (i) を満たす。$S_{m,n}$ の内部は $m< x< m+1$、$n< y< n+1$ で、$(m,n)$ が違えば $x$ か $y$ の範囲が重ならないので、条件 (ii) を満たす。2 つの正方形 $S_{m,n}$、$S_{m',n'}$ が共有点をもつのは $\lvert m-m'\rvert\le1$ かつ $\lvert n-n'\rvert\le1$ のときで、一方だけが $1$ 違えば共有部分は共通の辺、両方が $1$ 違えば共通の頂点なので、条件 (iii) を満たす。

段 2(斜めの座標)。$\vec u=(1,0)$、$\vec w=\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ とする。どちらも長さ $1$ で、なす角は $60^\circ$ である。平面の点は $s\vec u+t\vec w$ とただ 1 通りに書ける($(x,y)=s\vec u+t\vec w$ を解くと $t=\dfrac{2y}{\sqrt3}$、$s=x-\dfrac{y}{\sqrt3}$)。段 1 の $x,y$ を $s,t$ に置きかえた図形

$$P_{m,n}=\{s\vec u+t\vec w\mid m\le s\le m+1,\ n\le t\le n+1\}$$

は、1 辺 $1$、内角 $60^\circ$ と $120^\circ$ のひし形である。点 $(x,y)$ に $(s,t)$ を対応させる写し方は 1 対 1 で、直線を直線に、線分を線分に移すので、段 1 の (i)(ii)(iii) はそのまま $P_{m,n}$ についても成り立つ。つまりひし形 $P_{m,n}$ は辺と辺を合わせた敷き詰めになる。

段 3(正三角形)。ひし形 $P_{m,n}$ を、短い方の対角線($m\vec u+(n+1)\vec w$ と $(m+1)\vec u+n\vec w$ を結ぶ線分)で 2 つに切る。この対角線の長さは $\lvert\vec u-\vec w\rvert=\left\lvert\left(\dfrac12,-\dfrac{\sqrt3}2\right)\right\rvert=1$ なので、切ってできる 2 つの三角形は 3 辺がどれも $1$ の正三角形である。1 つのひし形を 2 つに切っても、すき間も重なりも生じないので、正三角形の集まりは条件 (i)(ii) を満たす。三角形の辺はどれも、3 つの向きの直線 $s=\text{整数}$、$t=\text{整数}$、$s+t=\text{整数}$ の上にあり、その直線の上で隣り合う 2 つの格子点($s,t$ がともに整数の点)を結ぶ長さ $1$ の線分である。三角形の頂点は格子点で、格子点はどの辺の途中にもないので、条件 (iii) も満たす。

(段 3 の補足)2 つの三角形 $T_1$、$T_2$ が共有点 $x$ をもつとする。$x$ が $T_1$ の辺 $e$ の途中(端点でない点)にあるとする。$x$ は格子点でないので、$T_2$ の頂点でもない。$x$ の近くで $T_1$ は $e$ の片側の半円を占め、$T_2$ は $T_1$ と重ならないので、$T_2$ は $x$ の近くで反対側にある。$x$ は $T_2$ の頂点でないので、$T_2$ の境界は $x$ の近くで 1 本の線分であり、それは $e$ と同じ直線の上にある。その直線の上で $x$ をはさむ隣り合う 2 つの格子点は 1 組しかないので、$T_2$ のその辺は $e$ と同じ線分である。三角形 2 つが辺を共有すると、それ以外に共有点はない。$x$ が $T_1$ と $T_2$ の両方の頂点なら、上と同じ理由で 2 つの三角形は $x$ で接するだけか、$x$ を端点とする辺を共有する。どの場合も共有部分は共通の頂点 1 つか共通の辺 1 本である。


段 4(正六角形)。格子点 $m\vec u+n\vec w$ のうち、$m-n$ が $3$ の倍数のものを 中心 とよぶ。上向きの正三角形の頂点は $(m,n)$、$(m+1,n)$、$(m,n+1)$ の形で、$m-n$ の値はそれぞれ $m-n$、$m-n+1$、$m-n-1$ である。連続する 3 つの整数のうち $3$ の倍数はちょうど 1 つなので、中心はちょうど 1 つである。下向きの正三角形 $(m+1,n)$、$(m+1,n+1)$、$(m,n+1)$ でも $m-n+1$、$m-n$、$m-n-1$ で同じである。そこで各正三角形を、その中心の頂点ごとにまとめる。中心 $c$ を頂点にもつ正三角形は $c$ のまわりの 6 枚で($6\times60^\circ=360^\circ$)、これを合わせると $c$ を中心とする 1 辺 $1$ の正六角形になる。どの正三角形もちょうど 1 つの正六角形に入るので、正六角形の集まりは条件 (i)(ii) を満たす。正六角形の辺は、中心を含まない正三角形の辺(中心の向かいの辺)で、その辺の両側の 2 つの正三角形は、違う中心をもつ 2 つの正六角形に入る。よって隣り合う 2 つの正六角形は辺 1 本全体を共有し、条件 (iii) も満たす。$\square$

薄い線は正三角形の敷き詰め、赤い点は m−n が 3 の倍数の格子点で、そのまわりの正三角形 6 枚をまとめると青い正六角形になる 薄い線は正三角形の敷き詰め、赤い点は m−n が 3 の倍数の格子点で、そのまわりの正三角形 6 枚をまとめると青い正六角形になる

中心を数える
  1. 以下、格子点を $(m,n)$ で表す。原点 $(m,n)=(0,0)$ は $m-n=0$ なので中心である。上向きの正三角形 $(0,0)$、$(1,0)$、$(0,1)$ では、$m-n$ は $0,1,-1$ で、中心は原点だけである。
  2. 格子点 $(m,n)=(1,0)$(点 $\vec u=(1,0)$)は $m-n=1$ で中心ではない。そのまわりの 6 つの格子点 $(0,0)$、$(2,0)$、$(1,1)$、$(0,1)$、$(2,-1)$、$(1,-1)$ の $m-n$ は $0,2,0,-1,3,2$ で、中心は $(0,0)$、$(1,1)$、$(2,-1)$ の 3 つである。点 $(1,0)$ には 3 つの正六角形が集まり、$6.6.6$ の頂点になる。
    (3) 隣り合う正六角形の中心の距離を確かめる計算を開く

    (3) 中心どうしの距離の最小は、$\vec u+\vec w=\left(\dfrac32,\dfrac{\sqrt3}2\right)$ の長さ $\sqrt{\dfrac94+\dfrac34}=\sqrt3$ で、1 辺 $1$ の正六角形の向かい合う辺の距離 $2\times\dfrac{\sqrt3}2=\sqrt3$ に等しい。隣り合う正六角形は辺でぴったり接している。

図 3 の青い正六角形は、蜂の巣の形である。正六角形の敷き詰めの頂点は中心でない格子点で、正三角形の敷き詰めの頂点の $\dfrac23$ にあたる。

主定理 2:種類を混ぜて 1 点のまわりに並べる

正方形と正八角形を 1 点のまわりに並べると、$90^\circ+135^\circ+135^\circ=360^\circ$ でぴったり埋まる。種類の違う正多角形を混ぜてよいなら、1 点のまわりに並べる組合せはもっと増える。すべてを求めよう。

小さな組合せを試す
  1. 正方形 1 枚と正八角形 2 枚:$90^\circ+2\times135^\circ=360^\circ$ である。
  2. 正三角形 1 枚と正十二角形 2 枚:正十二角形の内角は $180^\circ-30^\circ=150^\circ$ で、$60^\circ+2\times150^\circ=360^\circ$ である。
  3. 正三角形 1 枚・正七角形 1 枚・正四十二角形 1 枚:正七角形の内角は $180^\circ-\dfrac{360^\circ}7$、正四十二角形の内角は $180^\circ-\dfrac{360^\circ}{42}$ で、和は
    $$ 60^\circ+\left(180^\circ-\frac{360^\circ}7\right)+\left(180^\circ-\frac{360^\circ}{42}\right)=420^\circ-\frac{360^\circ\times6+360^\circ}{42}=420^\circ-60^\circ=360^\circ $$
    である。こんな大きな正多角形まで出てくる。
1 点のまわりに並べる組合せ

平面の 1 点 $v$ のまわりに、$v$ を頂点にもつ正多角形を、重ならずすき間なく並べる(大きさは違ってよい)。使う正多角形の辺の数の組(順序を考えない組)は、次の 17 通りに限る。
(1) 3 枚:$\{3,7,42\}$、$\{3,8,24\}$、$\{3,9,18\}$、$\{3,10,15\}$、$\{3,12,12\}$、$\{4,5,20\}$、$\{4,6,12\}$、$\{4,8,8\}$、$\{5,5,10\}$、$\{6,6,6\}$
(2) 4 枚:$\{3,3,4,12\}$、$\{3,3,6,6\}$、$\{3,4,4,6\}$、$\{4,4,4,4\}$
(3) 5 枚:$\{3,3,3,3,6\}$、$\{3,3,3,4,4\}$
(4) 6 枚:$\{3,3,3,3,3,3\}$
$v$ のまわりに並ぶ順まで区別すると(回転と裏返しで重なるものは同じとみなす)、21 通りある。

並べ方の条件は、角の和の式
$$ \sum_{i=1}^{k}\left(180^\circ-\frac{360^\circ}{p_i}\right)=360^\circ $$
だけである。両辺を $360^\circ$ で割って整理すると、$\dfrac k2-\sum\dfrac1{p_i}=1$、つまり
$$ \frac1{p_1}+\frac1{p_2}+\cdots+\frac1{p_k}=\frac k2-1 $$
となる。これは単位分数(分子が $1$ の分数)の和についての不定方程式で、不定方程式の解法 と同じく「大小を仮定して範囲を絞る」方法で解ける。

枚数ごとに小さい方から絞る

方針:まず枚数 $k$ の範囲を決め、$p_1\le p_2\le\cdots\le p_k$ と並べて、小さい $p_1$ から範囲を絞る。
段 1(枚数の範囲)。正多角形の内角は $60^\circ$ 以上 $180^\circ$ 未満である($p\ge3$ で $\dfrac{360^\circ}p\le120^\circ$)。$k$ 個の内角の和が $360^\circ$ なので、$60^\circ\times k\le360^\circ$ から $k\le6$、$180^\circ\times k>360^\circ$ から $k\ge3$ である。
段 2($k=3$)。式は $\dfrac1{p_1}+\dfrac1{p_2}+\dfrac1{p_3}=\dfrac12$ である。$p_1$ が最小なので左辺は $\dfrac3{p_1}$ 以下で、$\dfrac3{p_1}\ge\dfrac12$ から $p_1\le6$ である。

  • $p_1=3$:$\dfrac1{p_2}+\dfrac1{p_3}=\dfrac16$。$\dfrac1{p_2}<\dfrac16$ から $p_2>6$、$\dfrac2{p_2}\ge\dfrac16$ から $p_2\le12$ である。$\dfrac1{p_3}=\dfrac16-\dfrac1{p_2}=\dfrac{p_2-6}{6p_2}$ より $p_3=\dfrac{6p_2}{p_2-6}$ で、$p_2=7,8,9,10,11,12$ に対して $42,24,18,15,\dfrac{66}5,12$ である。整数になるのは $p_2=11$ 以外の 5 つである。
  • $p_1=4$:$\dfrac1{p_2}+\dfrac1{p_3}=\dfrac14$。$4< p_2\le8$ で、$p_3=\dfrac{4p_2}{p_2-4}$ は $p_2=5,6,7,8$ に対して $20,12,\dfrac{28}3,8$ である。整数になるのは 3 つである。
  • $p_1=5$:$\dfrac1{p_2}+\dfrac1{p_3}=\dfrac3{10}$。$5\le p_2\le\dfrac{20}3$ なので $p_2=5,6$ で、$p_3=\dfrac{10p_2}{3p_2-10}$ は $10,\dfrac{15}2$ である。整数は $p_2=5$、$p_3=10$ だけである。
  • $p_1=6$:$\dfrac1{p_2}+\dfrac1{p_3}=\dfrac13$。$6\le p_2\le6$ なので $p_2=6$、$p_3=6$ である。
    合わせて 10 通りである。
    段 3($k=4$)。式は $\dfrac1{p_1}+\cdots+\dfrac1{p_4}=1$ で、$\dfrac4{p_1}\ge1$ から $p_1\le4$ である。
  • $p_1=3$:残り 3 つの和は $\dfrac23$ で、$\dfrac3{p_2}\ge\dfrac23$ から $p_2\le4$ である。$p_2=3$ なら $\dfrac1{p_3}+\dfrac1{p_4}=\dfrac13$ で $3< p_3\le6$、$p_4=\dfrac{3p_3}{p_3-3}$ は $p_3=4,5,6$ に対して $12,\dfrac{15}2,6$ である。$p_2=4$ なら $\dfrac1{p_3}+\dfrac1{p_4}=\dfrac5{12}$ で $4\le p_3\le\dfrac{24}5$、つまり $p_3=4$、$p_4=6$ である。
  • $p_1=4$:4 つとも $4$ 以上で和が $1$ なので、$p_1=p_2=p_3=p_4=4$ である。
    合わせて $\{3,3,4,12\}$、$\{3,3,6,6\}$、$\{3,4,4,6\}$、$\{4,4,4,4\}$ の 4 通りである。
    段 4($k=5$)。式は $\dfrac1{p_1}+\cdots+\dfrac1{p_5}=\dfrac32$ である。$\dfrac5{p_1}\ge\dfrac32$ から $p_1=3$、残り 4 つの和は $\dfrac76$ で $\dfrac4{p_2}\ge\dfrac76$ から $p_2=3$、残り 3 つの和は $\dfrac56$ で $\dfrac3{p_3}\ge\dfrac56$ から $p_3=3$ である。残り 2 つの和は $\dfrac12$ で、$3\le p_4\le4$、$p_5=\dfrac{2p_4}{p_4-2}$ は $p_4=3,4$ に対して $6,4$ である。2 通りである。
    段 5($k=6$)。式は和が $2$ で、$\dfrac6{p_1}\ge2$ から $p_1=3$、6 つとも $3$ 以上なので全部 $3$ である。1 通りである。
    段 6(並ぶ順)。3 枚の並べ方は、どの順でも回転と裏返しで重なるので、組 1 つに 1 通りである。4 枚で同じ数が 2 つある組 $\{a,a,b,c\}$ は、$a$ どうしが隣り合う $a.a.b.c$ と向かい合う $a.b.a.c$ の 2 通り、$\{a,a,b,b\}$ は $a.a.b.b$ と $a.b.a.b$ の 2 通りである。5 枚の $\{3,3,3,4,4\}$ は、$4$ どうしが隣り合うか否かで 2 通りである。ほかの組($\{4,4,4,4\}$、$\{3,3,3,3,6\}$、$\{3,3,3,3,3,3\}$)は 1 通りである。合計は
    $$ \underbrace{10}_{3\text{ 枚}}+\underbrace{2+2+2+1}_{4\text{ 枚}}+\underbrace{1+2}_{5\text{ 枚}}+\underbrace{1}_{6\text{ 枚}}=21 $$
    である。$\square$

1 点のまわりに正多角形を並べる 21 通り。太字の青は平面全体に同じ頂点の形で広げられる 11 通り、灰色は広げられない 10 通り 1 点のまわりに正多角形を並べる 21 通り。太字の青は平面全体に同じ頂点の形で広げられる 11 通り、灰色は広げられない 10 通り
図 4 の 21 通りは、1 点のまわりで角の和がちょうど $360^\circ$ になる並べ方のすべてである。大きな正多角形は一部だけを描いた。

平面全体に広げられるか

1 点のまわりで並べられても、平面全体を同じ頂点の形で埋めつくせるとは限らない。すべての頂点が同じ頂点の形になる、辺と辺を合わせた正多角形の敷き詰めを考える。このときタイルの辺はどれも同じ長さである(辺を共有するタイルどうしは辺の長さが等しく、タイルは辺でつながっているため)。

奇数角形のまわりは交互に並べられない

正多角形による辺と辺を合わせた敷き詰めで、すべての頂点の形が $a.b.c$(3 枚)であるとする。$a$ が奇数ならば $b=c$ である。

正 $a$ 角形の辺をたどる

要点:正 $a$ 角形のタイル $P$ の各頂点には $P$ のほかに正 $b$ 角形と正 $c$ 角形が 1 枚ずつ集まり、それぞれ $P$ のその頂点から出る 2 辺の一方を共有する。$b\ne c$ なら、$P$ の辺のとなりは $b,c,b,c,\dots$ と交互に並ぶが、辺の数 $a$ が奇数なので 1 周したところで同じ種類が隣り合い、矛盾する。

詳しい証明を開く

方針:正 $a$ 角形のタイル $P$ の辺のとなりのタイルを、辺を 1 周たどって調べる。

段 1(辺のとなり)。$P$ の各辺には、その辺を共有するタイルがちょうど 1 つある(辺と辺を合わせた敷き詰めで、辺の両側を 2 つのタイルが分け合う)。$P$ の頂点 $v$ には 3 枚のタイルが集まり、そのうち $P$ 以外の 2 枚は、$P$ の $v$ から出る 2 辺のそれぞれを共有するタイルである(3 枚が $v$ のまわりを囲むとき、隣り合う 2 枚は $v$ から出る辺を共有する)。

段 2(頂点の形から)。$v$ の頂点の形は $a.b.c$ なので、$P$ 以外の 2 枚は正 $b$ 角形と正 $c$ 角形である。$b\ne c$ と仮定すると、$P$ の $v$ から出る 2 辺の一方は正 $b$ 角形、他方は正 $c$ 角形ととなり合う。

段 3(1 周する)。$P$ の辺を順に $e_1,e_2,\dots,e_a$ とする。段 2 をすべての頂点に使うと、隣り合う辺 $e_i$ と $e_{i+1}$($e_a$ と $e_1$ も)のとなりのタイルは、一方が正 $b$ 角形、他方が正 $c$ 角形である。よって $e_1,e_2,\dots$ のとなりは $b,c,b,c,\dots$ と交互に並ぶ。1 周すると、奇数番めの辺のとなりは $b$、偶数番めの辺のとなりは $c$ である。$a$ は奇数なので $e_a$ のとなりは $b$ で、$e_1$ のとなりも $b$ である。しかし $e_a$ と $e_1$ は隣り合うので、となりは違わなければならない。これは矛盾である。よって $b=c$ である。$\square$

反例:$5.5.10$ は広げられない

頂点の形 $5.5.10$ は、1 点のまわりでは $108^\circ+108^\circ+144^\circ=360^\circ$ で並べられる(図 4)。すべての頂点がこの形の敷き詰めがあるとして、正五角形のタイル $P$ を 1 つとる。$P$ の頂点の形を $P$ から読むと $5.5.10$ で、$P$ 以外の 2 枚は正五角形と正十角形である。prop-rtl-odd の $a=5$、$b=5$、$c=10$ にあたり、$b\ne c$ なので矛盾する。
図 5 で具体的に見る。$P$ の辺 $v_1v_2$ のとなりを正五角形とすると、頂点 $v_2$ で辺 $v_2v_3$ のとなりは正十角形、$v_3$ で辺 $v_3v_4$ のとなりは正五角形、$v_4$ で辺 $v_4v_5$ のとなりは正十角形と決まる。$v_5$ では辺 $v_5v_1$ のとなりが正五角形でなければならず、$v_1$ では辺 $v_1v_2$ のとなりが正五角形なので辺 $v_5v_1$ のとなりは正十角形でなければならない。2 つの要求がぶつかる。

正五角形 P の辺のとなりが 5 と 10 の交互に決まっていき、5 本目の辺で矛盾する 正五角形 P の辺のとなりが 5 と 10 の交互に決まっていき、5 本目の辺で矛盾する
prop-rtl-odd を 3 枚の 10 通りに当てはめると、$3.7.42$、$3.8.24$、$3.9.18$、$3.10.15$($a=3$ で $b\ne c$)、$4.5.20$($a=5$ で、残りの $4\ne20$)、$5.5.10$ の 6 通りは広げられない。残る $3.12.12$、$4.6.12$、$4.8.8$、$6.6.6$ は広げられる(図 1 と図 6)。4 枚以上の 11 通りのうち、$3.3.4.12$、$3.4.3.12$、$3.3.6.6$、$3.4.4.6$ の 4 通りも広げられない(次の rem-rtl-archimedean の 11 種類に入らない)が、この記事では証明しない。

同じ頂点の形の敷き詰め

すべての頂点が同じ頂点の形になる、辺と辺を合わせた正多角形の敷き詰めは、次の 11 種類である。

  • 正則な敷き詰め(1 種類の正多角形):$3.3.3.3.3.3$、$4.4.4.4$、$6.6.6$ の 3 種類(thm-rtl-main)
  • 半正則な敷き詰め(アルキメデスの敷き詰め、2 種類以上の正多角形):$3.12.12$、$4.6.12$、$4.8.8$、$3.6.3.6$、$3.4.6.4$、$3.3.3.4.4$、$3.3.4.3.4$、$3.3.3.3.6$ の 8 種類
    正則な敷き詰めが 3 種類であることは Wei26a、半正則な敷き詰めが 8 種類であることは Wei26b にある。この記事では、半正則な敷き詰めがこの 8 種類に限ることは証明しない(prop-rtl-odd で 6 通りを除いたのは、その一部である)。8 種類が実際にあることは図 6 で見る。

8 種類の半正則な敷き詰め。上の段は左から 3.12.12、4.6.12、4.8.8、3.6.3.6、下の段は 3.4.6.4、3.3.3.4.4、3.3.4.3.4、3.3.3.3.6 8 種類の半正則な敷き詰め。上の段は左から 3.12.12、4.6.12、4.8.8、3.6.3.6、下の段は 3.4.6.4、3.3.3.4.4、3.3.4.3.4、3.3.3.3.6
図 6 の敷き詰めは、どれも平行移動をくり返して平面全体に広がる模様である。$3.3.3.3.6$ は、左右を裏返すと別の敷き詰めになる(鏡に映した形と重ならない)。

頂点の形を確かめる
  1. 頂点の形 $4.6.12$ の内角の和が $360^\circ$ であることを確かめよ。
  2. 頂点の形 $4.5.20$ が平面全体に広げられないことを、prop-rtl-odd を使って説明せよ。
解答を開く

(1) 内角は $90^\circ$、$180^\circ-60^\circ=120^\circ$、$180^\circ-30^\circ=150^\circ$ で、和は $90^\circ+120^\circ+150^\circ=360^\circ$ である。

(2) 奇数角形は正五角形なので、prop-rtl-odd で $a=5$ とすると、残りの 2 枚は $b=4$、$c=20$ である。$b\ne c$ なので、すべての頂点が $4.5.20$ の敷き詰めはない。正五角形のまわりの辺のとなりは正方形と正二十角形が交互でなければならないが、5 本の辺を交互に塗り分けることはできない。

辺と辺を合わせない敷き詰め

条件 (iii) を外すと、敷き詰め方はずっと自由になる。

反例:レンガ積みの正方形

1 辺 $1$ の正方形を横に並べて帯を作り、帯を上に積むときに $\dfrac12$ ずつ横にずらす(図 7)。すき間も重なりもないので条件 (i)(ii) を満たす。しかし点 $\left(\dfrac12,1\right)$ は、上の段の 2 枚の正方形 $\left[-\dfrac12,\dfrac12\right]\times[1,2]$、$\left[\dfrac12,\dfrac32\right]\times[1,2]$ の頂点で、下の段の正方形 $[0,1]\times[0,1]$ の上の辺の中点である。下の正方形と上の正方形の共有部分は長さ $\dfrac12$ の線分で、共通の辺 1 本全体ではないので、条件 (iii) を満たさない。
この点のまわりの角は $90^\circ+90^\circ+180^\circ=360^\circ$ で、$180^\circ$ は辺の途中にある下の正方形が占める。lem-rtl-vertex の (1)「$v$ を含むタイルはどれも $v$ を頂点にもつ」が成り立たなくなっている。ずらす幅は段ごとに好きに選べるので、このような敷き詰めは無数にある。

正方形の帯を半分ずつずらして積む。赤い点は上の 2 枚の頂点で、下の正方形の辺の途中にある 正方形の帯を半分ずつずらして積む。赤い点は上の 2 枚の頂点で、下の正方形の辺の途中にある
条件 (iii) を外しても、使える正多角形の種類は変わらない。

辺と辺を合わせなくても正三角形・正方形・正六角形だけ

合同な正 $p$ 角形だけの敷き詰め(条件 (i)(ii) だけを満たすもの)があれば、やはり $p=3,4,6$ である。$p=3,4$ ではレンガ積みのようにずらした敷き詰めもあるが、$p=6$ ではタイルの頂点がほかのタイルの辺の途中にくることはない(下の証明の $m=1$ の場合が起こらない)。

$p=3,4,6$ に限る理由を開く

タイルの頂点 $v$ を 1 つとる。prf-rtl-vertex の段 2〜4 と同じく小さな円 $D$ をとると($v$ を辺の途中に含むタイルについては、その辺以外の辺と $v$ との距離より小さくとる)、$v$ を含むタイルは、$v$ を頂点にもつか、$v$ を辺の途中に含む($v$ がタイルの内部にあると、$v$ の近くでそのタイルは $v$ を頂点にもつタイルと内部を共有し、条件 (ii) に反する)。$v$ を頂点にもつなら内角 $\alpha=180^\circ-\dfrac{360^\circ}p$ の扇形を、$v$ を辺の途中に含むなら半円($180^\circ$)を $D$ から占める。$v$ を頂点にもつタイルの枚数を $k$($k\ge1$)、$v$ を辺の途中に含むタイルの枚数を $m$ とすると $k\alpha+180^\circ m=360^\circ$ である。$\alpha>0$、$k\ge1$ なので $m\le1$ である。

$m=0$ なら、prf-rtl-main と同じ計算で $(p-2)(k-2)=4$、$p=3,4,6$ である。$m=1$ なら $k\alpha=180^\circ$ で、$k\left(1-\dfrac2p\right)=1$、つまり $k(p-2)=p$ である。$k=\dfrac p{p-2}=1+\dfrac2{p-2}$ が整数なので $p-2$ は $1$ か $2$ で、$p=3$($k=3$)か $p=4$($k=2$)である。どちらの場合も $p$ は $3,4,6$ のどれかである。正五角形では $108^\circ$ の倍数が $180^\circ$ にも $360^\circ$ にもならないので、ずらしても敷き詰められない。

例と反例

thm-rtl-main と thm-rtl-vertex の仮定を外すと何が変わるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
辺と辺を合わせる(条件 (iii))レンガ積みの正方形頂点に集まるタイルがどれもその点を頂点にもつ
正多角形は 1 種類$3.12.12$ などの半正則な敷き詰め使う正多角形は正三角形・正方形・正六角形だけ
平面全体で同じ頂点の形$5.5.10$1 点のまわりに並べられる組合せは平面に広げられる
頂点のまわりに $360^\circ$正五角形 3 枚($324^\circ$)すき間なく埋まる

各行の確認は、1 行目が ex-rtl-brick、2 行目が rem-rtl-archimedean(図 6)、3 行目が ex-rtl-5-5-10、4 行目が ex-rtl-start の (4) である。2 行目の敷き詰めでは、正十二角形の内角 $150^\circ$ が現れる。1 種類だけでは $150^\circ$ の倍数で $360^\circ$ を作れない($360\mathbin{÷}150$ は整数でない)が、正三角形の $60^\circ$ と組めば $60^\circ+150^\circ+150^\circ=360^\circ$ になる。

大学数学で見る:平らさと曲がり方

ex-rtl-main-check の 3 つの場合は、面が平らか、曲がっているかの違いとして見られる。1 頂点のまわりの角の和が $360^\circ$ に足りない分を 角欠損 という。正多面体では角欠損が正で、頂点の角欠損の合計はいつも $720^\circ$ である(Descartesの角欠損定理)。平面の敷き詰めでは、どの頂点の角欠損も $0$ である。

双曲平面の敷き詰め

$(p-2)(q-2)>4$ のときは、1 頂点に正 $p$ 角形を $q$ 枚集めると角の和が $360^\circ$ を超える。平面では重なってしまうが、三角形の内角の和が $180^\circ$ より小さい 双曲平面 では、内角の小さな正多角形を作れる。たとえば内角 $\dfrac\pi4$($45^\circ$)の正八角形を 8 枚ずつ集めて、双曲平面を敷き詰められる(Hit18 Example 7.7.11 と Figure 7.7.12。$(8-2)(8-2)=36>4$)。$(p-2)(q-2)>4$ を満たすどの $\{p,q\}$ についても双曲平面の正則な敷き詰めがあることは、この記事では証明しない。

トーラスの上の敷き詰めと Euler 標数

正方形の敷き詰めで、平行移動 $(x,y)\mapsto(x+1,y)$ と $(x,y)\mapsto(x,y+1)$ で移り合う点を同じ点とみなすと、正方形 1 枚の向かい合う辺を貼り合わせた トーラス(ドーナツの表面)になる。このとき頂点は 1 個(4 隅がすべて同じ点)、辺は 2 本(上下の辺と左右の辺)、面は 1 枚で、$V-E+F=1-2+1=0$ である。凸多面体では Eulerの多面体定理(高校数学) により $V-E+F=2$ で、この値 $2$ と $0$ は、球面とトーラスの Euler 標数 とよばれる。角欠損の合計 $720^\circ=360^\circ\times2$ と $0^\circ=360^\circ\times0$ も、Euler 標数に $360^\circ$ を掛けたものになっている。

正三角形・正六角形の敷き詰めでも $0$ になることを開く

正三角形の敷き詰めで、$\vec u$ と $\vec w$ の平行移動で移り合う点を同じとみなすと、ひし形 1 つ分がトーラスになる。頂点は 1 個、辺は 3 本($\vec u$ の向き、$\vec w$ の向き、短い対角線)、面は正三角形 2 枚で、$1-3+2=0$ である。正六角形の敷き詰めで、中心どうしを結ぶ平行移動 $\vec u+\vec w$ と $2\vec w-\vec u$ で移り合う点を同じとみなすと、正六角形 1 枚分がトーラスになる。正六角形の 6 つの頂点は 2 個ずつ(1 つおきに)同じ点になり、6 本の辺は向かい合うものどうしが同じ辺になるので、頂点は 2 個、辺は 3 本、面は 1 枚で、$2-3+1=0$ である。

平面の敷き詰めを、平行移動で重なる模様として見る見方は、壁紙模様の対称性 で扱う。平行移動で重なる模様では、回転の対称性は 2 回・3 回・4 回・6 回に限られる。これは正三角形・正方形・正六角形だけが平面を敷き詰めることと、よく似た数の組である。

さらに先へ

  • 格子点(座標がともに整数の点)を頂点とする正多角形は正方形しかない。正三角形・正六角形は、正方形の格子ではなく、図 3 の三角形の格子の上にある。これは次の 格子点の正多角形 で扱う。
  • 正多角形でない合同なタイルでは、もっと多くの敷き詰めがある。たとえばどんな三角形も、どんな四角形も(凹んでいても)、同じ形のタイルで平面を敷き詰められる(この記事では証明しない)。
  • すべての頂点が同じ頂点の形とは限らない敷き詰めや、正五角形を含む周期的でない敷き詰め(Penrose の敷き詰め)は、壁紙模様の対称性 の「さらに先へ」で触れる。

関連項目

参考文献

Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する