Kuratowskiの定理(Kuratowski's theorem)とは、有限グラフが平面グラフであるための必要十分条件は、完全グラフ $K_5$ の細分も完全二部グラフ $K_{3,3}$ の細分も部分グラフとして含まないことである、という定理である。細分とは辺の途中に次数 $2$ の頂点を挟んだグラフのことで、辺の縮約を許すマイナーの言葉で同じ特徴づけを述べたものが Wagner の定理である。必要性は $K_5$ と $K_{3,3}$ が平面に描けないことから従い、十分性は辺を加えられるだけ加えたグラフが 3-連結になることと、3-連結グラフで縮約しても 3-連結のままの辺を使う帰納法で示される。平面性という位相的な性質を有限個の禁止されたグラフで言い当てる結果であり、平面グラフのマイナーが平面グラフであることもここから従う。
前提知識: 平面グラフ, 完全グラフ, 完全二部グラフ, 連結度(グラフ), Jordan曲線定理
完全グラフ $K_5$ と完全二部グラフ $K_{3,3}$ は平面グラフでない。この 2 つは Euler の公式から辺の数を数えるだけで分かる(平面グラフ の記事の命題「$K_5$ は平面グラフでない」「$K_{3,3}$ は平面グラフでない」)。辺の途中に頂点を挟んだだけのグラフ(細分)も平面には描けず、それを部分として含むグラフも描けない。Kuratowski の定理 は、この逆が成り立つこと、すなわち平面に描けないグラフは必ず $K_5$ か $K_{3,3}$ の細分を含むことを述べる。平面性という位相的な性質が、2 つの小さなグラフを含むかどうかという組合せ的な条件で完全に言い当てられる。
同じことを、辺の縮約を許す「マイナー」の言葉で述べたものが Wagner の定理である。この記事では 2 つを 1 つの定理として述べ、3-連結グラフに帰着する Thomassen の方法で証明する。
この記事のグラフは有限な単純グラフとする。$\lvert G\rvert$ は頂点の個数、$G-v$ は頂点 $v$ とそれに接続する辺を除いたグラフ、$G+e$ は辺 $e$ を加えたグラフである。
グラフ $X$ の各辺 $xy$ を、$x$ と $y$ を結ぶ道 $P_{xy}$(長さ $1$ 以上)に置き換えて得られるグラフを $X$ の 細分(subdivision)という。ただし、新しく加えた頂点は $V(X)$ の頂点とも、ほかの道の頂点とも異なるものとする。$X$ の細分を $TX$ と書き、$V(X)$ の頂点を 分岐点、新しい頂点を 分割点 という。分割点の次数は $2$ で、分岐点の次数は $X$ での次数と同じである。
グラフ $G$ が $X$ の細分を部分グラフとして含むとき、$X$ を $G$ の 位相的マイナー(topological minor)という。
グラフ $G$ の頂点の空でない部分集合 $V_x$($x\in V(X)$)で、互いに交わらず、各 $V_x$ が $G$ の連結な部分グラフを誘導し、$X$ の各辺 $xy$ について $V_x$ の頂点と $V_y$ の頂点を結ぶ $G$ の辺があるものが存在するとき、$X$ を $G$ の マイナー(minor)という。$V_x$ を 分岐集合 という。
分岐集合 $V_x$ を 1 点につぶし、残りの頂点と余分な辺を除けば $X$ を含むグラフが得られる。とくに辺 $e=uv$ の 縮約 $G/e$ は、$u,v$ を 1 つの新しい頂点 $v_e$ に置き換え、$u$ または $v$ に隣接していた頂点を $v_e$ に隣接させたグラフであり、$G$ のマイナーである。マイナーのマイナーはマイナーである(分岐集合の分岐集合の和集合をとればよい)。
$X$ の細分 $TX$ を含めば、$X$ は $G$ のマイナーでもある。各辺 $xy$ の道 $P_{xy}$ の分割点をすべて $V_x$ に入れれば(辺ごとにどちらか一方の端に寄せる)、$V_x$ は連結で、分岐集合の条件を満たすからである。逆は一般には成り立たない(ex-kur-petersen)。
グラフ $G$ の平面への描画(平面埋め込み)とは、各頂点に平面 $\mathbb R^2$ の相異なる点を、各辺 $uv$ に $u,v$ の点を結ぶ弧を対応させ、辺の弧の内部がどの頂点の点も他の辺の点も含まないものをいう。この記事では、弧を有限個の線分をつないだ折れ線に限る。描画をもつグラフが 平面グラフ であり、描画を固定したものを平面グラフ図という。平面グラフ図 $G$ を平面から除いた残りの連結成分を $G$ の 面 という。
辺を一般の弧で描いてよいとしても、折れ線で描き直せるので平面グラフの範囲は変わらない(この記事では証明しない。Die25 §4 の冒頭、p. 94)。
グラフ $G$ について、次の 3 つは同値である。
1 と 3 の同値が Kuratowski の定理(1930 年)、1 と 2 の同値が Wagner の定理(1937 年)である(Die25 Theorem 4.4.6、p. 111 と第 4 章の注、p. 121。BM76 Theorem 9.10、p. 153 は 1 と 3 の同値を別の方法で示している)。
平面に描けないことの理由は、どれも $K_5$ か $K_{3,3}$ の形の「からまり」として現れる、というのが定理の内容である。証明の筋は次のとおりである。まず、辺をこれ以上加えられないところまで加えたグラフは 3-連結になる(lem-kur-maximal)。3-連結グラフでは、縮約しても 3-連結のままの辺がある(lem-kur-contractible)。その辺を縮約したグラフを帰納法で平面に描き、縮約した頂点を 2 つに割って描き戻す(lem-kur-three-connected)。描き戻せないときには、$K_5$ か $K_{3,3}$ の細分が見つかる。
次の事実を、この記事では証明せずに用いる(Die25 §4.1–§4.2 に証明または出典がある)。
(F4) は Die25 の Lemma 4.4.3・4.4.5 の証明(pp. 108–111)で用いられている形の事実である。次の 2 つは描画の定義からすぐに分かる。
1:描画を部分グラフに制限すればよい。2:$TX$ の描画で、$X$ の辺 $xy$ に対応する道 $P_{xy}$ の辺の弧をつなげると、$x$ と $y$ を結ぶ折れ線の弧になる。道ごとの弧は分岐点以外で交わらないので、これらは $X$ の描画になる。逆に $X$ の描画の各辺の弧の内部に分割点の個数だけ点をとって分割点とすれば $TX$ の描画になる。3:$K_5$ と $K_{3,3}$ は平面グラフでない(平面グラフ の記事の命題「$K_5$ は平面グラフでない」「$K_{3,3}$ は平面グラフでない」)ので、2 によりそれらの細分も平面グラフでなく、1 によりそれを含むグラフも平面グラフでない。$\square$
$X$ を位相的マイナーとして含めばマイナーとしても含む(def-kur-minor の後の注意)。$K_5$ と $K_{3,3}$ の組については逆も成り立つ。
要点:1 は各分岐集合の中で、他の分岐集合へ出る高々 3 本の辺の端点を木でつなぐ。2 は $K_5$ のマイナーの極小な分岐集合を調べ、$K_5$ の細分か $K_{3,3}$ のマイナーを見つける。
1:分岐集合を $V_x$($x\in V(X)$)とする。$X$ の各辺 $xy$ について $V_x$ と $V_y$ を結ぶ $G$ の辺 $e_{xy}$ を 1 本ずつ選ぶ。$e_{xy}$ の $V_x$ 側の端点の集合を $S_x$ とすると $1\le\lvert S_x\rvert\le3$ である($X$ に孤立点があればその $V_x$ の 1 点を $S_x$ とする)。$G[V_x]$ は連結なので、$S_x$ を含む $G[V_x]$ の部分木で頂点数が最小のもの $T_x$ がある。最小性から $T_x$ の葉はすべて $S_x$ に属するので、$T_x$ の葉は高々 $3$ 個である。葉が $3$ 個なら、葉は $S_x$ の 3 頂点で、次数 $3$ の頂点がちょうど 1 つある(木では $\sum_v(\deg v-2)=-2$ である)のでそれを $b_x$ とする。葉が $2$ 個以下なら $T_x$ は道で、両端は $S_x$ に属する。このときは、$T_x$ の内部にある $S_x$ の頂点があればそれを、なければ 2 本の $e_{xy}$ の端点になっている端点があればそれを、どちらもなければ一方の端点を $b_x$ とする。どの場合も、$T_x$ は $b_x$ から $S_x$ の各頂点への道で $b_x$ 以外を共有しないものの和であり、$b_x$ 以外の $S_x$ の頂点はちょうど 1 本の $e_{xy}$ の端点である($x$ の次数は $3$ 以下だから)。各辺 $xy$ について、$T_x$ の中の $b_x$ から $e_{xy}$ の端点への道、辺 $e_{xy}$、$T_y$ の中の $e_{xy}$ の端点から $b_y$ への道をつなぐと $b_x$ と $b_y$ を結ぶ道 $P_{xy}$ になる。分岐集合は互いに交わらず、$T_x$ の中の道は $b_x$ 以外を共有しないので、$P_{xy}$ たちは端点以外を共有しない。よって $\{b_x\}$ と $P_{xy}$ たちは $X$ の細分である。
2:位相的マイナーならマイナーなので、逆を示す。$K_{3,3}$ は最大次数 $3$ なので 1 により位相的マイナーになる。$G$ が $K_5$ をマイナーとして含むとする。$K_5$ のマイナーの分岐集合 $V_1,\dots,V_5$ と、各 $V_i$ の中の全域木と、$V_i$ と $V_j$ を結ぶ辺 1 本ずつからなる部分グラフ $M$ を、辺の数が最小になるように選ぶ。$V_i$ の全域木に $V_i$ から出る 4 本の辺を加えたものは木 $T_i$ で、最小性から $T_i$ の葉はちょうどこの 4 本の辺の外側の端点である($V_i$ の中の葉は、$\lvert V_i\rvert\ge2$ なら除いても分岐集合の条件が保たれる)。葉が 4 個の木では、$\sum_v(\deg v-2)=-2$ から、次数 $3$ 以上の頂点は次数 $4$ の 1 個か、次数 $3$ の 2 個である。すべての $i$ で前者なら、その次数 $4$ の頂点 $c_i\in V_i$ を分岐点として、$T_i$ の中の $c_i$ から各葉への道をつなげば $M$ は $K_5$ の細分である。ある $i$ で後者なら、次数 $3$ の頂点 $a,b$(葉でないので $V_i$ に属する)を結ぶ $T_i$ の道の辺を 1 本除いて $V_i$ を 2 つに分け、$a$ 側を $V_a$、$b$ 側を $V_b$ とする。$V_a$ からは 2 つの $V_j$、たとえば $V_{j_1},V_{j_2}$ へ辺が出て、$V_b$ からは残りの $V_{j_3},V_{j_4}$ へ辺が出て、$V_a$ と $V_b$ は辺で結ばれる。$V_{j}$ どうしはすべて辺で結ばれているので、$\{V_a,V_{j_3},V_{j_4}\}$ と $\{V_b,V_{j_1},V_{j_2}\}$ は $K_{3,3}$ のマイナーの分岐集合である。1 によりこれは $K_{3,3}$ の位相的マイナーを与える。$\square$
グラフ $G$ が 3-連結 であるとは、$\lvert G\rvert\ge4$ で、高々 $2$ 個の頂点を除いても連結のままであることをいう(連結度(グラフ))。頂点の集合 $T$ を除くと連結でなくなるとき、$T$ は $G$ を 分離する という。
$K_4$ でない 3-連結グラフ $G$ には、縮約 $G/e$ が 3-連結になる辺 $e$ がある。
要点:どの辺も縮約すると 3-連結でなくなるとすると、3 頂点の分離集合とその成分の組で成分が最小のものがとれるが、そこから真に小さい成分が作れて矛盾する。
3-連結で頂点数 $4$ のグラフは $K_4$ なので $\lvert G\rvert\ge5$ であり、$\lvert G/e\rvert\ge4$ である。どの辺 $xy$ についても $G/xy$ が 3-連結でないとする。すると $G/xy$ を分離する高々 $2$ 個の頂点の集合 $S$ がある。$v_{xy}\notin S$ なら、$S$ は $G$ も分離する($G-S$ が連結なら、そこで辺 $xy$ を縮約した $G/xy-S$ も連結である)ので矛盾する。$S=\{v_{xy}\}$ なら $\{x,y\}$ が $G$ を分離して矛盾する。よって $S=\{v_{xy},z\}$($z\ne x,y$)で、$G/xy-S$ の異なる成分の頂点は $G$ で $T:=\{x,y,z\}$ により分離される。$T$ の真部分集合は $G$ を分離しないので、$T$ の各頂点は $G-T$ のどの成分にも隣接頂点をもつ($t\in T$ が成分 $C$ に隣接頂点をもたなければ、$T\setminus\{t\}$ が $C$ を他の成分から分離する)。
辺 $xy$、頂点 $z$、$G-\{x,y,z\}$ の成分 $C$ の組を、$\lvert C\rvert$ が最小になるように選び、$z$ の $C$ の中の隣接頂点 $v$ をとる。上と同じ理由で、ある頂点 $w$ について $\{z,v,w\}$ は $G$ を分離し、$z,v,w$ はどれも $G-\{z,v,w\}$ のどの成分にも隣接頂点をもつ。$x$ と $y$ は隣接するので、$x,y$ を含まない $G-\{z,v,w\}$ の成分 $D$ がある($x,y$ のうち除かれていないものは同じ成分に入り、成分は 2 つ以上ある)。$v$ は $D$ に隣接頂点をもち、$v\in C$ の隣接頂点は $C\cup T$ に属し、$D$ は $T=\{x,y,z\}$ と交わらないので、その隣接頂点は $C$ に属する。よって $D\cap C\neq\emptyset$ である。$D$ は $G-T$ の連結な部分なので $D\subset C$ であり、$v\in C\setminus D$ だから $\lvert D\rvert<\lvert C\rvert$ である。辺 $zv$、頂点 $w$、成分 $D$ の組はこの最小性に反する。$\square$
この補題の所在は Die25 Lemma 3.2.4、p. 68 である。$K_4$ では、どの辺を縮約しても $K_3$ になり、3-連結でない。
$K_5$ も $K_{3,3}$ もマイナーとして含まない 3-連結グラフは平面グラフである。
$\lvert G\rvert$ についての帰納法で示す。$\lvert G\rvert=4$ なら $G=K_4$ で、平面グラフである(平面グラフ の記事の例「完全グラフ$K_4$」)。$\lvert G\rvert>4$ とする。lem-kur-contractible により $G/xy$ が 3-連結になる辺 $xy$ がある。$G/xy$ は $G$ のマイナーなので $K_5$ も $K_{3,3}$ もマイナーとして含まず、帰納法の仮定により平面グラフ図 $\tilde G$ をもつ。$\tilde G-v_{xy}$ の面で点 $v_{xy}$ を含むものを $f$、その境界を $C$ とする。$\tilde G-v_{xy}$ は 2-連結なので、(F3) により $C$ は閉路である。
$X:=N_G(x)\setminus\{y\}$、$Y:=N_G(y)\setminus\{x\}$ とおく($N_G$ は隣接頂点の集合)。$v_{xy}$ の隣接頂点は $X\cup Y$ である。$v_{xy}$ から出る辺の弧の内部は $\tilde G-v_{xy}$ と交わらない連結な集合で、$v_{xy}$ の近くの点($f$ の点)を含むので $f$ に含まれ、その端点は $f$ の境界 $C$ にのる。よって $X\cup Y\subset V(C)$ である。$\tilde G$ から辺 $v_{xy}v$($v\in Y\setminus X$)を除いた $\tilde G'$ は、$x$ を点 $v_{xy}$ で表した $G-y$ の描画である。これに $y$ を描き足して $G$ の描画を作る。
$X$ の頂点を $C$ に沿った順に $x_1,\dots,x_k$ と並べ($k=\lvert X\rvert\ge2$)、$x_i$ から $x_{i+1}$ まで($x_{k+1}:=x_1$)$C$ に沿って進む道を $P_i$ とする。$P_i$ は $x_i,x_{i+1}$ 以外に $X$ の頂点を含まない。
ある $i$ について $Y\subset V(P_i)$ である。そうでないとする。
$y$ を描き足す。$Y\subset V(P_i)$ となる $i$ を固定し、閉路 $C_i:=x\,x_iP_ix_{i+1}\,x$ を考える(辺 $xx_i,xx_{i+1}$ は $\tilde G'$ の辺)。$C$ から $P_i$ を除いた部分は連結で $C_i$ と交わらないので、$C_i$ の一方の面に含まれる。もう一方の面を $f_i$ とする。$f_i$ は $C$ と交わらないので $C$ のある面に含まれる。$f$ の境界は $C$ なので (F2) により $f$ は $C$ の面であり、$f$ は $v_{xy}$ の小さな円板を含み、(F1) により $v_{xy}\in C_i$ は $f_i$ の境界にあるので、$f_i$ は $f$ と交わる。よって $f_i\subset f$ である。辺 $xx_j$($j\ne i,i+1$)の弧は $C_i$ と点 $x$ だけで交わり、$C\setminus P_i$ の側に端点をもつので、$f_i$ と交わらない。したがって $f_i$ は $\tilde G'$ と交わらず、境界 $C_i$ は $\tilde G'$ に含まれるので、(F2) により $f_i$ は $\tilde G'$ の面である。(F4) により、$f_i$ の中に $y$ を置き、$Y\cup\{x\}\subset V(C_i)$ の各頂点と $f_i$ の中を通る辺で結べる。これが $G$ の描画である。$\square$
この証明は Die25 Lemma 4.4.3(pp. 108–109)に従った。Thomassen の証明を簡略にしたものである(Die25 第 4 章の注、p. 121)。
$K_5$ の細分も $K_{3,3}$ の細分も含まないまま、もう辺を 1 本も加えられないグラフを 極大 という。すなわち、$G$ は $K_5$・$K_{3,3}$ の細分を含まず、$G$ の隣接していないどの 2 頂点 $u,v$ についても $G+uv$ は $K_5$ か $K_{3,3}$ の細分を含む。
極大なグラフが 3-連結であることを示すために、2 つの側に分かれたグラフの中の細分を調べる。グラフ $G$ の頂点集合の組 $(V_1,V_2)$ で、$V_1\cup V_2=V(G)$、$A:=V_1\setminus V_2$ と $B:=V_2\setminus V_1$ がともに空でなく、$A$ と $B$ を結ぶ辺がないものを $G$ の 分離 といい、$S:=V_1\cap V_2$ をその分離集合という。$G$ に $A$ と $B$ を結ぶ辺の集合 $F$ を加えたグラフ $H:=G+F$ を考え、$S$ の頂点と $F$ の辺を 出口 と呼ぶ。
上の $H$ の中に $X\in\{K_5,K_{3,3}\}$ の細分 $K$ があり、出口の個数を $m:=\lvert S\rvert+\lvert F\rvert$ とする。
要点:$A$ の頂点と $B$ の頂点を結ぶ道は必ず出口を通り、内部を共有しない道は別々の出口を通る。
1:$A$ の頂点と $B$ の頂点を結ぶ $H$ の道は、$S$ の頂点を内部に含むか $F$ の辺を含む。$A$ と $B$ を結ぶ道の族で、どの道の内部の頂点もほかの道にのらないものを考えると、各道は別々の出口を通る($F$ の辺 $a'b'$ を 2 本の道が含めば、$a',b'$ は両方の道の端点でなければならず、2 本とも辺 $a'b'$ そのものになる)。よって、そのような族の道の本数は $m$ 以下である。分岐点 $a\in A$、$b\in B$ があるとき、$X$ の中で $a$ と $b$ を結び内部を共有しない道は、$K_5$ では 4 本(辺 $ab$ と残りの 3 頂点 $c$ を通る $acb$)、$K_{3,3}$ では 3 本($a,b$ が同じ側なら反対側の 3 頂点を通る道、反対側なら辺 $ab$ と $a\,q\,p\,b$ の形の 2 本)ある。これらは $K$ の中で内部を共有しない $a$-$b$ 道を与える。$K_{3,3}$ の部を $P,Q$ とし、分岐点 $a_1,a_2\in A$、$b_1,b_2\in B$ があるとき、$\{a_1,a_2\}$ と $\{b_1,b_2\}$ を結ぶ 4 本の道で、内部を共有せず内部に $a_1,a_2,b_1,b_2$ を含まないものがある:$a_1,a_2\in P$、$b_1,b_2\in Q$ なら 4 本の辺 $a_ib_j$、$a_1,a_2\in P$、$b_1\in P$、$b_2\in Q$ なら辺 $a_1b_2,a_2b_2$ と $b_2$ 以外の $Q$ の 2 頂点 $q,q'$ を通る $a_1qb_1$、$a_2q'b_1$、$a_1\in P$、$a_2\in Q$、$b_1\in P$、$b_2\in Q$ なら辺 $a_1b_2,a_2b_1$ と残りの $q\in Q$、$p\in P$ を通る $a_1qb_1$、$a_2pb_2$ である(他の場合は $P,Q$ や $a,b$ の役割を入れ替えたもの)。
2:分岐点でない $K$ の頂点は次数 $2$ なので、$B$ に属する $K$ の頂点 $b$ から $K$ を両方向にたどると、$B$ の中を進んでやがて $B$ の外に出る($b$ を含む $X$ の辺の道の両端は分岐点で、$B$ の外にある)。こうして $b$ を内部に含む $B$ 区間がただ 1 つ定まる。$B$ 区間 $Q$ の両端を $u,w$ とし、$Q$ を含む $X$ の辺の道を $R$ とする。$uw\in K$ とすると、$u,w$ がともに分岐点なら $R=Q$ と辺 $uw$ が同じ 2 つの分岐点を結ぶ $X$ の 2 本の辺に対応して $X$ の単純性に反し、そうでなければ $u,w$ の一方は $R$ の内部の次数 $2$ の頂点で、その 2 本の辺はどちらも $R$ の辺なので $uw\in R$ となり、$R$ が閉路を含んで矛盾する。同じ理由で異なる $B$ 区間の両端の組は異なる。各 $R$ の中の $B$ 区間を辺に置き換えても、$R$ は同じ分岐点を結ぶ道のままで、異なる $R$ は端点以外を共有しないので、$X$ の細分が得られる。最後の主張:$B$ 区間の端点 $u$ に隣接する区間内の頂点は $B$ に属し、$G$ には $A$ と $B$ を結ぶ辺がないので、$u\in S$ であるか、その辺が $F$ の辺である。$\square$
頂点が $4$ 個以上の極大なグラフ $G$ は 3-連結である。
要点:2 頂点以下で分離できるとすると、両側がまた極大で、帰納法により 3-連結(または三角形)なので lem-kur-three-connected により描ける。両側の描画の面に新しい辺を引いたグラフの中の細分を lem-kur-exits で調べ、どちらかの側が描けないことになって矛盾する。
$\lvert G\rvert$ についての帰納法で示す。$\lvert G\rvert=4$ なら細分を含みえないので $G=K_4$ で、3-連結である。$\lvert G\rvert\ge5$ とし、3-連結でないとする。分離集合の大きさが最小の分離 $(V_1,V_2)$ をとり、$S,A,B$ を上のとおりとすると $k:=\lvert S\rvert\le2$ である。最小性から、$S$ の各頂点は $G-S$ のどの成分にも隣接頂点をもつ。以下、lem-kur-exits を使う。そこで $K$ の分岐点が $B$ にないとき「$K$ は $V_1$ の側にある」という($A$ にないときは $V_2$ の側。$X$ の分岐点は 5 個以上で $\lvert S\rvert\le2$ なので、1 の条件が成り立たなければどちらかの側にある)。
段 1($S\neq\emptyset$).$k=0$ なら、$a\in A$、$b\in B$ として $G+ab$ は細分 $K$ を含み、$K\not\subset G$ なので $K$ は辺 $ab$ を含む。出口は 1 個なので 1 により $K$ はどちらかの側、たとえば $V_1$ の側にある。$K$ は $b\in B$ を含むので $B$ 区間があるが、その両端はどちらも出口を通るので 2 個の出口が要り、矛盾する。
段 2($k=1$ はない).$S=\{v\}$ とし、$v$ の隣接頂点 $v_1\in A$、$v_2\in B$ をとる。$G+v_1v_2$ の細分 $K$ は辺 $v_1v_2$ を含み、出口は 2 個なので $K$ はどちらかの側にあり、対称性から $V_1$ の側としてよい。$B$ 区間は両端で別々の出口を通るので、$v$ と辺 $v_1v_2$ を通る 1 本 $v\cdots v_2v_1$ だけである。2 によりそれを辺 $vv_1$ に置き換えると、$G[V_1]\subset G$ の中の細分が得られ、矛盾する。
段 3($S=\{x,y\}$ なら $xy\in G$).$xy\notin G$ とする。$G+xy$ の細分 $K$ は辺 $xy$ を含む。$(V_1,V_2)$ は $G+xy$ の分離でもあるので、$G+xy$ を $G$ の代わりにして lem-kur-exits を使う($F=\emptyset$)。出口は $x,y$ の 2 個なので、対称性から $K$ は $V_1$ の側にあるとしてよい。$B$ 区間があればその両端は $x,y$ で、2 により辺 $xy$ は $K$ に属さないことになり矛盾する。よって $K$ は $B$ と交わらない。$x,y$ は $B$ を含む $G-S$ の成分 $D$ に隣接頂点をもつので、内部が $D$ に含まれる $x$-$y$ 道 $Q$ がある。$K$ の辺 $xy$ を $Q$ に置き換えると $G$ の中の細分になり、矛盾する。
段 4($G_i:=G[V_i]$ は極大).$G_1$ の隣接しない 2 頂点 $u,w$ をとる。$G+uw$ の細分 $K$ は $uw$ を含む。段 3 と同じく $G+uw$ に lem-kur-exits を使うと、出口は $x,y$ の 2 個なので、$K$ はどちらかの側にある。$V_1$ の側なら、$B$ 区間の両端は $x,y$ なので 2 によりそれを辺 $xy\in G_1$ に置き換えて $G_1+uw$ の中の細分を得る。$V_2$ の側なら、同様に $A$ 区間を $xy$ に置き換えて $G_2\subset G$ の中の細分を得るが($uw$ は $A$ 区間に含まれて消える)、これは矛盾である。よって $G_1+uw$ は細分を含み、$G_1$ は極大である。$G_2$ も同様である。
段 5(矛盾).$\lvert G_i\rvert<\lvert G\rvert$ なので、帰納法の仮定により $G_i$ は 3-連結であるか、$\lvert G_i\rvert=3$ で三角形である。どちらの場合も $G_i$ は細分を含まないので lem-kur-minor-top によりマイナーも含まず、lem-kur-three-connected により(三角形なら明らかに)平面グラフである。$G_i$ の描画で、辺 $xy$ を境界にもつ面 $f_i$ を選ぶ((F2))。$G_i$ は 2-連結なので (F3) により $f_i$ の境界は $xy$ を含む閉路で、$x,y$ と異なる頂点 $z_i$ をもつ($z_1\in A$、$z_2\in B$)。$G+z_1z_2$ の細分 $K$ を考える。出口は $x,y,z_1z_2$ の 3 個である。
$K$ が $V_1$ の側にあるとき、$K$ は $z_1z_2$ を含み(そうでなければ $K\subset G$)、$z_1z_2$ を通る $B$ 区間の両端は $z_1$ と $x,y$ の一方 $t$ である。ほかの $B$ 区間の両端は $x,y$ である。2 により $B$ 区間を辺 $z_1t$ と $xy$ に置き換えると、$G_1+z_1t$ の中の細分が得られる。ところが $z_1,t$ は $f_1$ の境界の閉路の頂点なので、(F4) により $G_1+z_1t$ は平面グラフであり、prop-kur-subgraph-subdivision の 3 に反する。$V_2$ の側にあるときも同様である。
$K$ がどちらの側にもないとき、1 により $X=K_{3,3}$ で、一方の側、たとえば $B$ にはちょうど 1 個の分岐点 $v$ がある。$v$ から出る $K$ の 3 本の道は $V_1$ の分岐点へ向かい、$v$ 以外を共有しないので、別々の出口 $x,y,z_1z_2$ を 1 つずつ通る。$K$ の $B$ の部分は、この 3 本の $v$ から出口までの部分と、両端が $x,y$ の $B$ 区間(2 と同じ議論が使える)だけである。前者を辺 $vx,vy,vz_1$ に、後者を辺 $xy$ に置き換えると、$G_1$ に頂点 $v$ と辺 $vx,vy,vz_1$ を加えたグラフの中の $K_{3,3}$ の細分が得られる。(F4) によりこのグラフは平面グラフ($v$ を $f_1$ の中に置く)であり、矛盾する。以上より $G$ は 3-連結である。$\square$
この補題は Die25 Lemma 4.4.4・4.4.5(pp. 109–111)に従った。
1 ⇒ 3:prop-kur-subgraph-subdivision の 3 による。
3 ⇒ 2:$G$ が $K_5$ または $K_{3,3}$ をマイナーとして含めば、lem-kur-minor-top の 2 により位相的マイナーとして含む。
2 ⇒ 3:位相的マイナーはマイナーである(def-kur-minor の後の注意)。
3 ⇒ 1:$G$ は $K_5$・$K_{3,3}$ の細分を含まないとする。$\lvert G\rvert\le4$ なら $G$ は $K_4$ の部分グラフなので平面グラフである(prop-kur-subgraph-subdivision の 1)。$\lvert G\rvert\ge5$ なら、同じ頂点集合の上で、細分を含まないまま辺を加えられるだけ加えて極大なグラフ $G'\supset G$ を作る(辺は有限個なので操作は終わる)。lem-kur-maximal により $G'$ は 3-連結である。$G'$ は細分を含まないので、lem-kur-minor-top の 2 により $K_5$・$K_{3,3}$ をマイナーとして含まない。lem-kur-three-connected により $G'$ は平面グラフであり、その部分グラフ $G$ も平面グラフである。$\square$
平面グラフのマイナーは平面グラフである。とくに、平面グラフの辺を縮約したグラフは平面グラフである。
$G$ を平面グラフ、$M$ をそのマイナーとする。$M$ が $K_5$ または $K_{3,3}$ をマイナーとして含めば、マイナーのマイナーはマイナーなので $G$ も含み、thm-kur-main の 1 ⇒ 2 に反する。よって $M$ は 2 を満たし、2 ⇒ 1 により平面グラフである。$\square$
この系は 五色定理 の縮約による証明で使われる。縮約が平面性を保つことは、描画の上で辺を縮めることからも見てとれるが、位相的な議論を要する。
頂点が $4$ 個以上で、辺をもう 1 本も加えられない平面グラフは 3-連結である。
thm-kur-main により、平面グラフであることと $K_5$・$K_{3,3}$ の細分を含まないことは同値である。よって、辺を加えられない平面グラフは lem-kur-maximal の意味で極大であり、3-連結である。$\square$
$\{1,2,3,4,5\}$ の 2 元部分集合を頂点とし、交わらないものどうしを結んだ Petersenグラフ $P$ を考える。$ij$ で $\{i,j\}$ を表す。$P$ から頂点 $12$ を除いたグラフは $K_{3,3}$ の細分である。実際、$\{13,14,15\}$ と $\{23,24,25\}$ を分岐点とすると、
$n\ge3$ について、$n$ 頂点の閉路 $C_n$ のすべての頂点を新しい頂点 $h$ と結んだ車輪グラフ $W_n$ は、$n\ge3$ で 3-連結である(2 頂点を除いても、残りの外周の頂点は外周の弧か $h$ を通じてつながる)。$n\ge4$ のとき、外周の辺 $v_iv_{i+1}$ を縮約すると、新しい頂点は $h$ と外周の両隣に隣接し、得られるグラフは $W_{n-1}$ で、3-連結のままである。一方、$h$ と外周の頂点 $v$ を結ぶ辺(スポーク)を縮約すると、外周は $v$ のところで切れて道になり、得られるグラフは新しい頂点と道を結んだ扇になる。$v$ の外周での隣接頂点は次数 $2$ になるので、このグラフは 3-連結でない。したがって $W_n$ の外周の辺は縮約できる辺であり、スポークはそうでない。$W_3=K_4$ ではどの辺の縮約も $K_3$ になり、lem-kur-contractible で $K_4$ を除く理由が分かる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 3 の「細分」(部分グラフそのものに限る) | Petersen グラフ | 「$K_5$ も $K_{3,3}$ も部分グラフとして含まなければ平面グラフ」 |
| 2・3 の「$K_5$ と $K_{3,3}$ の両方」($K_5$ だけを見る) | $K_{3,3}$ | 「$K_5$ をマイナーとして含まなければ平面グラフ」 |
| lem-kur-minor-top の 2 の「$K_5$ または $K_{3,3}$」($K_5$ だけにする) | Petersen グラフ | 「$K_5$ をマイナーとして含めば位相的マイナーとしても含む」 |
| 平面(トーラスに替える) | $K_5$ | 「トーラスに描けるグラフは $K_5$ を含まない」 |
| lem-kur-contractible の「$K_4$ でない」 | $K_4$ | 縮約して 3-連結のままの辺があること |
1 行目:Petersen グラフは内周が $5$ なので、三角形を含む $K_5$ も長さ $4$ の閉路を含む $K_{3,3}$ も部分グラフとして含まない。それでも ex-kur-petersen により平面グラフでない。
2 行目:$K_{3,3}$ は頂点が 6 個で次数がすべて $3$ なので、$K_5$ のマイナーの 5 つの分岐集合のうち 4 つ以上は 1 点からなり、その点は他の 4 つの分岐集合へ辺をもつので次数 $4$ 以上が要る。よって $K_5$ をマイナーとして含まないが、平面グラフでない。
3 行目:Petersen グラフは $K_5$ をマイナーとして含むが、ex-kur-petersen のとおり $K_5$ の細分は含まない。$K_{3,3}$ の細分は含むので、lem-kur-minor-top の 2 とは矛盾しない。
4 行目:$K_5$ は $K_7$ の部分グラフで、$K_7$ はトーラスに辺を交差させずに描ける(位相的グラフ理論 の記事の例「トーラス上の $K_7$」)。トーラスに描けるグラフの特徴づけには $K_5$・$K_{3,3}$ 以外のグラフも要る。
5 行目:ex-kur-wheel のとおり、$K_4$ のどの辺の縮約も $K_3$ で、3-連結でない。
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