等面四面体(isosceles tetrahedron)とは、向かい合う 3 組の辺の長さがそれぞれ等しい四面体であり、4 つの面は 3 辺 $a,b,c$ の合同な三角形になる。このような四面体があるための必要十分条件は、3 辺 $a,b,c$ の三角形が鋭角三角形であることで、そのとき四面体は縦・横・高さ $p,q,r$($p^2+q^2=c^2$、$p^2+r^2=b^2$、$q^2+r^2=a^2$)の直方体の 1 つおきの 4 頂点で作れる。体積は $\sqrt{(b^2+c^2-a^2)(c^2+a^2-b^2)(a^2+b^2-c^2)/72}$、外接球の半径は $\sqrt{(a^2+b^2+c^2)/8}$ である。各頂点に集まる 3 つの角の和は $180^\circ$ で、外心・内心・重心は直方体の中心で一致する。
前提知識: 四面体の成立条件, 余弦定理(高校数学), 空間図形の計量, 四面体の外接球と内接球
立方体の頂点を 1 つおきに 4 つ選んで結ぶと、正四面体ができる(空間図形の計量 の例「立方体から正四面体を切り出す」)。6 本の辺はどれも立方体の面の対角線である。同じことを、縦・横・高さの違う直方体でやってみる。
縦・横・高さが $1,2,3$ の直方体の頂点のうち、$A(0,0,0)$、$B(1,2,0)$、$C(1,0,3)$、$D(0,2,3)$ の 4 つを結ぶ。6 本の辺はどれも直方体の面の対角線で、
$$
AB^2=1+4=5,\quad CD^2=1+4+0=5,\qquad AC^2=1+9=10,\quad BD^2=1+0+9=10,\qquad AD^2=4+9=13,\quad BC^2=0+4+9=13
$$
である($CD^2=(1-0)^2+(0-2)^2+(3-3)^2$ などと計算した)。向かい合う辺 $AB$ と $CD$、$AC$ と $BD$、$AD$ と $BC$ の長さがそれぞれ等しい。
4 つの面 $ABC$、$ABD$、$ACD$、$BCD$ の辺は、どれも $\sqrt5,\sqrt{10},\sqrt{13}$ である。3 辺がそれぞれ等しいので、4 つの面は合同な三角形である。
体積は、直方体の体積 $1\cdot2\cdot3=6$ から、四面体の外にある 4 つの角を引いて求める。たとえば頂点 $(1,0,0)$ の角は、$(1,0,0)$ で互いに直交する長さ $1,2,3$ の 3 本の辺をもつ四面体で、体積は $\dfrac16\cdot1\cdot2\cdot3=1$ である。4 つの角はどれもこの形なので
$$
V=6-4\cdot1=2
$$
である。
縦・横・高さ 1, 2, 3 の直方体の 1 つおきの頂点 A、B、C、D を結ぶ。6 本の辺は直方体の面の対角線で、向かい合う辺の長さが等しい
ex-ist-start の四面体は、どの面も同じ三角形でできている。では逆に、3 辺 $a,b,c$ の三角形を 4 枚用意すれば、いつでもこのような四面体が組めるだろうか。
3 辺 $2,3,4$ の三角形を 4 枚使って、向かい合う辺が等しい四面体を作ろうとする。そのような四面体が ex-ist-start のように直方体に入るとすると、直方体の 3 辺 $p,q,r$ は
$$
p^2+q^2=4^2,\qquad p^2+r^2=3^2,\qquad q^2+r^2=2^2
$$
を満たすはずである。3 式を足して $2$ で割ると $p^2+q^2+r^2=\dfrac{16+9+4}2=\dfrac{29}2$ で、ここから 1 式目を引くと $r^2=\dfrac{29}2-16=-\dfrac32<0$ となる。$r^2$ が負になる実数 $r$ はないので、直方体には入らない。
ex-ist-obtuse-start では直方体に入らないことが分かっただけで、ほかの形で組めないとはまだ言えていない。この記事では、次の問いに答える。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 直方体の面の対角線で四面体を作る | 等面四面体は直方体に入る | 対称性の高い配置 |
| $p^2+q^2=c^2$ などを解く | 面が鋭角三角形 $\iff$ $p^2,q^2,r^2>0$ | 行列式 $\det T$ の符号 |
| 直方体の中心 | 外心・内心・重心が一致 | $180^\circ$ 回転 3 つの群 |
四面体 $ABCD$ で、向かい合う 3 組の辺の長さがそれぞれ等しい、つまり
$$
AB=CD,\qquad AC=BD,\qquad AD=BC
$$
であるとき、$ABCD$ を 等面四面体 という。英語では isosceles tetrahedron、または disphenoid という。
この記事では、$BC=AD=a$、$CA=BD=b$、$AB=CD=c$ と書く。4 つの面の 3 辺は
$$
ABC:\ a,b,c,\qquad ABD:\ c,a,b,\qquad ACD:\ b,a,c,\qquad BCD:\ a,b,c
$$
で、どれも $a,b,c$ である($ABD$ の辺は $AB=c$、$BD=b$、$DA=a$ など)。3 辺がそれぞれ等しい三角形は合同なので(三角形の合同条件)、等面四面体の 4 つの面は合同である。名前の「等面」はここから来ている。$a=b=c$ の場合が正四面体で、この記事では正四面体も等面四面体に含める(正四面体を除いて定義する文献もある。Wei26)。
以下、正の数 $a,b,c$ から
$$
X=b^2+c^2-a^2,\qquad Y=c^2+a^2-b^2,\qquad Z=a^2+b^2-c^2
$$
をつくる。余弦定理(高校数学) により、3 辺 $a,b,c$ の三角形で辺 $a$ の向かいの角 $\alpha$ は $\cos\alpha=\dfrac{X}{2bc}$ を満たす。よって「$\alpha$ が鋭角」は $X>0$ と、同じく辺 $b$、$c$ の向かいの角が鋭角であることは $Y>0$、$Z>0$ と同値である。
正の数 $a,b,c$ について、次の 3 つは同値である。
(R1) $BC=AD=a$、$CA=BD=b$、$AB=CD=c$ となる等面四面体 $ABCD$ がある。
(R1) $a,b,c$ を 3 辺とする鋭角三角形がある。
(R1) $X>0$、$Y>0$、$Z>0$ である。
このとき $p=\sqrt{\dfrac X2}$、$q=\sqrt{\dfrac Y2}$、$r=\sqrt{\dfrac Z2}$ とおくと、等面四面体 $ABCD$ は、縦・横・高さが $p,q,r$ の直方体の 4 頂点 $(0,0,0)$、$(p,q,0)$、$(p,0,r)$、$(0,q,r)$ を結んだ四面体と合同である。
方針:(iii) から (i) は直方体の中で四面体を作って示す。(i) から (iii) は、四面体の成立条件 の行列式 $\det T$ が $4XYZ$ になることを使う。
段 1((ii) と (iii) は同値)。(iii) を仮定する。$X>0$ は $a^2< b^2+c^2$ で、$b^2+c^2<(b+c)^2$ なので $a< b+c$ である。同じく $b< c+a$、$c< a+b$ なので、3 辺 $a,b,c$ の三角形がある(三角形の成立条件)。上で見たとおり、$X,Y,Z>0$ はその 3 つの角が鋭角であることと同値なので、(ii) が成り立つ。逆に (ii) なら、3 つの角が鋭角なので $X,Y,Z>0$ である。
段 2((iii) から (i))。$p,q,r$ を上のとおりとし、$A(0,0,0)$、$B(p,q,0)$、$C(p,0,r)$、$D(0,q,r)$ とおく。
$$
p^2+q^2=\frac{X+Y}2=\frac{2c^2}2=c^2,\qquad p^2+r^2=\frac{X+Z}2=b^2,\qquad q^2+r^2=\frac{Y+Z}2=a^2
$$
である($X+Y=(b^2+c^2-a^2)+(c^2+a^2-b^2)=2c^2$ などを使った)。よって
$$
AB^2=p^2+q^2=c^2,\quad CD^2=(p-0)^2+(0-q)^2+(r-r)^2=c^2,
$$
$$
AC^2=p^2+r^2=b^2,\quad BD^2=p^2+0+r^2=b^2,\qquad AD^2=q^2+r^2=a^2,\quad BC^2=0+q^2+r^2=a^2
$$
である。4 点は同じ平面の上にない。実際、$\overrightarrow{AB}\times\overrightarrow{AC}=(p,q,0)\times(p,0,r)=(qr,-pr,-pq)$ は平面 $ABC$ の法線ベクトルで、$\overrightarrow{AD}=(0,q,r)$ との内積は $-pqr-pqr=-2pqr\ne0$ なので、$D$ は平面 $ABC$ の上にない(空間の平面と法線ベクトル)。よって $ABCD$ は求める等面四面体である。
段 3((i) から (iii))。等面四面体 $ABCD$ があるとする。4 つの面は実際の三角形なので、$a,b,c$ は三角形の成立条件を満たす。四面体の成立条件 の命題「四面体をなすための必要条件」により、6 本の長さ $BC=a$、$CA=b$、$AB=c$、$AD=a$、$BD=b$、$CD=c$ から作る行列 $T$ は $\det T>0$ を満たす。この $T$ は
$$
T=\begin{pmatrix}2c^2&c^2+b^2-a^2&c^2+a^2-b^2\\ c^2+b^2-a^2&2b^2&b^2+a^2-c^2\\ c^2+a^2-b^2&b^2+a^2-c^2&2a^2\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}X+Y&X&Y\\ X&X+Z&Z\\ Y&Z&Y+Z\end{pmatrix}
$$
である($2c^2=X+Y$、$2b^2=X+Z$、$2a^2=Y+Z$)。第 1 行で展開する。
$$
(X+Z)(Y+Z)-Z^2=XY+XZ+YZ,\qquad X(Y+Z)-ZY=XY+XZ-YZ,\qquad XZ-(X+Z)Y=XZ-XY-YZ
$$
なので
$$
\det T=(X+Y)(XY+XZ+YZ)-X(XY+XZ-YZ)+Y(XZ-XY-YZ)
$$
である。展開すると、第 1 項は $X^2Y+X^2Z+XY^2+Y^2Z+2XYZ$、第 2 項は $-X^2Y-X^2Z+XYZ$、第 3 項は $XYZ-XY^2-Y^2Z$ で、足すと
$$
\det T=4XYZ
$$
となる。よって $XYZ>0$ である。
段 4(3 つとも正)。$X,Y,Z$ のうち 2 つが $0$ 以下だとすると、たとえば $X\le0$、$Y\le0$ なら $X+Y=2c^2\le0$ となり、$c>0$ に反する。ほかの組でも同じである。よって $0$ 以下のものは多くても 1 つである。1 つだけが $0$ 以下なら $XYZ\le0$ となり段 3 に反する。したがって $X,Y,Z$ はどれも正で、(iii) が成り立つ。
段 5(合同)。(i) が成り立つとき、段 2 の四面体も同じ 6 本の辺の長さをもつ。四面体の成立条件 の系「6 本の長さで四面体ができる条件」の (iii) により、6 本の辺の長さが同じ四面体は合同である。$\square$
ex-ist-judge の (2) で「直方体に入らない」だけでなく「どんな形でも組めない」と言えるのは、段 3・段 4 が直方体を使わずに $\det T$ の符号だけで議論しているからである。
thm-ist-exist により、等面四面体はいつも直方体の中に置ける。直方体を使うと、体積と外接球の半径がすぐに求まる。
面の 3 辺が $a,b,c$ の等面四面体の体積 $V$ と外接球の半径 $R$ は
$$
V=\sqrt{\frac{(b^2+c^2-a^2)(c^2+a^2-b^2)(a^2+b^2-c^2)}{72}},\qquad R=\sqrt{\frac{a^2+b^2+c^2}8}
$$
である。外接球の中心は、thm-ist-exist の直方体の中心である。
thm-ist-exist の直方体と四面体 $A(0,0,0)$、$B(p,q,0)$、$C(p,0,r)$、$D(0,q,r)$ で考える(合同な四面体の体積と外接球の半径は等しい)。
段 1(体積)。直方体の 8 つの頂点のうち、四面体の頂点でないのは $(p,0,0)$、$(0,q,0)$、$(0,0,r)$、$(p,q,r)$ の 4 つである。直方体から四面体を取り除くと、この 4 頂点のそれぞれに角が 1 つずつ残る。たとえば $(p,0,0)$ の角は、4 点 $(p,0,0)$、$A(0,0,0)$、$B(p,q,0)$、$C(p,0,r)$ を頂点とする四面体で、$(p,0,0)$ から出る 3 本の辺は $x$ 軸・$y$ 軸・$z$ 軸の向きで互いに直交し、長さは $p,q,r$ である。その体積は $\dfrac13\cdot\dfrac12pq\cdot r=\dfrac16pqr$ である。ほかの 3 つの角も、互いに直交する長さ $p,q,r$ の 3 本の辺をもつので、体積はどれも $\dfrac16pqr$ である。よって
$$
V=pqr-4\cdot\frac16pqr=\frac13pqr
$$
である。
段 2(体積の式)。$p^2=\dfrac X2$、$q^2=\dfrac Y2$、$r^2=\dfrac Z2$ なので
$$
V^2=\frac19p^2q^2r^2=\frac19\cdot\frac{XYZ}8=\frac{XYZ}{72}
$$
で、$V>0$ から $V=\sqrt{\dfrac{XYZ}{72}}$ である。これが主張の式である。
段 3(外接球)。直方体の中心 $M\left(\dfrac p2,\dfrac q2,\dfrac r2\right)$ から直方体の 8 つの頂点までの距離は、どれも
$$
\sqrt{\left(\frac p2\right)^2+\left(\frac q2\right)^2+\left(\frac r2\right)^2}=\frac12\sqrt{p^2+q^2+r^2}
$$
である(各座標の差が $\pm\dfrac p2$、$\pm\dfrac q2$、$\pm\dfrac r2$ だから)。とくに $M$ は $A$、$B$、$C$、$D$ から等しい距離にある。四面体の 4 頂点を通る球はただ 1 つなので(四面体の外接球と内接球 の定理「外接球の存在と一意性」)、$M$ が外心で、
$$
R^2=\frac14(p^2+q^2+r^2)=\frac14\cdot\frac{X+Y+Z}2=\frac{a^2+b^2+c^2}8
$$
である($X+Y+Z=a^2+b^2+c^2$)。$\square$
体積の式は、prf-ist-exist の段 3 の $\det T=4XYZ$ と、四面体の成立条件 の $\det T=288V^2$ からも出る。$288V^2=4XYZ$ より $V^2=\dfrac{XYZ}{72}$ で、同じ式である。
| 直方体 $p\times q\times r$ | $a^2,b^2,c^2$ | 面の形 | 体積 $V$ | 外接球の半径 $R$ |
|---|---|---|---|---|
| $1\times2\times3$ | $13,10,5$ | 鋭角三角形 | $2$ | $\dfrac{\sqrt{14}}2$ |
| $2\times3\times6$ | $45,40,13$ | 鋭角三角形 | $12$ | $\dfrac72$ |
| $1\times1\times4$ | $17,17,2$ | 鋭角の二等辺三角形 | $\dfrac43$ | $\dfrac{3\sqrt2}2$ |
| $1\times1\times1$ | $2,2,2$ | 正三角形(正四面体) | $\dfrac13$ | $\dfrac{\sqrt3}2$ |
ex-ist-start の $a^2=13$、$b^2=10$、$c^2=5$ では、$X=2$、$Y=8$、$Z=18$ なので
$$
V=\sqrt{\frac{2\cdot8\cdot18}{72}}=\sqrt{\frac{288}{72}}=\sqrt4=2,\qquad R=\sqrt{\frac{13+10+5}8}=\sqrt{\frac{28}8}=\frac{\sqrt{14}}2
$$
である。$V=2$ は ex-ist-start で直方体から求めた値と一致する。$R$ は直方体の対角線 $\sqrt{1+4+9}=\sqrt{14}$ の半分である。
$2\times3\times6$:$a^2=q^2+r^2=9+36=45$、$b^2=p^2+r^2=4+36=40$、$c^2=p^2+q^2=4+9=13$ で、$X=40+13-45=8$、$Y=13+45-40=18$、$Z=45+40-13=72$ である。$V=\sqrt{\dfrac{8\cdot18\cdot72}{72}}=\sqrt{144}=12$、$R=\sqrt{\dfrac{98}8}=\dfrac72$ である。この四面体は Heronの公式とCayley–Menger行列式 の例「辺の長さから四面体の体積を求める」の 3 と同じものである。
$1\times1\times4$:$X=2$、$Y=2$、$Z=32$ で、$V=\sqrt{\dfrac{128}{72}}=\dfrac43$、$R=\sqrt{\dfrac{36}8}=\dfrac{3\sqrt2}2$ である。
$1\times1\times1$:$X=Y=Z=2$ で、$V=\sqrt{\dfrac8{72}}=\dfrac13$、$R=\sqrt{\dfrac68}=\dfrac{\sqrt3}2$ である。空間図形の計量 の例「立方体から正四面体を切り出す」の体積 $\dfrac13$ と一致する。
等面四面体の面の三角形の 3 つの角を $\alpha,\beta,\gamma$(それぞれ辺 $a,b,c$ の向かいの角)とする。どの頂点でも、そこに集まる 3 つの面の角は $\alpha,\beta,\gamma$ で、その和は $180^\circ$ である。
頂点 $A$ で考える。面 $ABC$ の $A$ の角 $\angle BAC$ の向かいの辺は $BC=a$ なので、$\angle BAC=\alpha$ である。面 $ABD$ の $\angle BAD$ の向かいの辺は $BD=b$ なので $\angle BAD=\beta$、面 $ACD$ の $\angle CAD$ の向かいの辺は $CD=c$ なので $\angle CAD=\gamma$ である(4 つの面は合同なので、同じ長さの辺の向かいの角は等しい)。よって $A$ に集まる 3 つの角の和は $\alpha+\beta+\gamma=180^\circ$(三角形の内角の和)である。$B$、$C$、$D$ でも、集まる 3 つの面の、向かいの辺はそれぞれ $a,b,c$ の 1 本ずつなので、同じである。$\square$
cor-ist-angles を展開図で見る。頂点 $D$ のまわりの 3 つの面を、面 $ABC$ の 3 辺のところで開いて平面に広げると、3 つの角 $\alpha,\beta,\gamma$ が 1 点に集まらずに、それぞれ外側の三角形の頂点になる。4 枚の面は、3 辺が $2a,2b,2c$ の大きな三角形を、3 辺の中点を結ぶ線で 4 つに分けた形に並ぶ。逆に、鋭角三角形の紙を中点を結ぶ 3 本の線で折ると、3 つの角の頂点が 1 点で出会い、等面四面体ができる。
鋭角三角形を中点を結ぶ 3 本の線で折ると、3 つの頂点が 1 点で出会い、等面四面体になる
鈍角三角形では、中点を結ぶ線で折っても 3 つの頂点が出会わない。辺 2, 3, 4 の場合
等面四面体の外接球の中心(外心)、内接球の中心(内心)、4 頂点の平均の点(重心)は、どれも thm-ist-exist の直方体の中心 $M$ である。
要点:直方体の中心 $M$ を通り座標軸に平行な 3 本の軸のまわりの $180^\circ$ 回転は、4 頂点を入れかえて四面体を自分自身に移す(たとえば $(x,y,z)\mapsto(p-x,q-y,z)$ は $A\leftrightarrow B$、$C\leftrightarrow D$)。外接球と内接球はただ 1 つなので回転で動かず、その中心は 3 本の軸の交点 $M$ である。重心は $\dfrac14(A+B+C+D)=M$ である。
方針:直方体の中心を通る 3 本の軸のまわりの $180^\circ$ 回転が、四面体を自分自身に移す。外心と内心はただ 1 つなので、この回転で動かず、3 本の軸の上にある。
段 1(回転が四面体を移す)。$M$ を通り $z$ 軸に平行な直線のまわりの $180^\circ$ 回転は、点 $(x,y,z)$ を $(p-x,q-y,z)$ に移す。この回転で $A(0,0,0)\mapsto(p,q,0)=B$、$B\mapsto A$、$C(p,0,r)\mapsto(0,q,r)=D$、$D\mapsto C$ となる。4 頂点が 4 頂点に移るので、四面体全体が自分自身に移る。$x$ 軸、$y$ 軸に平行な軸のまわりの回転 $(x,y,z)\mapsto(x,q-y,r-z)$、$(x,y,z)\mapsto(p-x,y,r-z)$ も、同じ計算で $A\leftrightarrow D$、$B\leftrightarrow C$ と $A\leftrightarrow C$、$B\leftrightarrow D$ を入れかえる。
段 2(外心)。回転は距離を変えないので、外接球を外接球に移す。外接球はただ 1 つなので、外心は回転で動かない。$(x,y,z)\mapsto(p-x,q-y,z)$ で動かない点は $x=\dfrac p2$、$y=\dfrac q2$ を満たし、ほかの 2 つの回転で動かない条件と合わせると $(x,y,z)=\left(\dfrac p2,\dfrac q2,\dfrac r2\right)=M$ である。これは thm-ist-volume の証明とも合う。
段 3(内心)。回転は四面体の面を面に移し、点と平面の距離を変えないので、内接球を内接球に移す。内接球もただ 1 つなので(四面体の外接球と内接球 の定理「内接球の存在と半径」)、段 2 と同じく内心は $M$ である。
段 4(重心)。$\dfrac14(A+B+C+D)=\dfrac14(2p,2q,2r)=M$ である。$\square$
ex-ist-start の四面体で、内接球の半径 $\rho$ を求める。4 つの面の面積はどれも同じで、面 $ABC$ は直方体の角の四面体の斜めの面なので、空間図形の計量 の命題「直角をもつ四面体の面積と高さ」の (2) により
$$
S=\frac12\sqrt{p^2q^2+q^2r^2+r^2p^2}=\frac12\sqrt{4+36+9}=\frac72
$$
である。四面体の外接球と内接球 の定理「内接球の存在と半径」の、半径は $\dfrac{3V}{S_1+S_2+S_3+S_4}$ であること(4 つの面の面積の和で体積の 3 倍を割る)から
$$
\rho=\frac{3V}{4S}=\frac{3\cdot2}{4\cdot\frac72}=\frac37
$$
である。中心 $M\left(\dfrac12,1,\dfrac32\right)$ から平面 $ABC$ までの距離を直接計算しても $\dfrac37$ になる。
平面 $ABC$ の法線ベクトルは $\overrightarrow{AB}\times\overrightarrow{AC}=(1,2,0)\times(1,0,3)=(6,-3,-2)$ で、平面の式は $6x-3y-2z=0$ である($A$ を通る)。$M$ から平面までの距離は $\dfrac{\lvert3-3-3\rvert}{\sqrt{36+9+4}}=\dfrac37$ である(空間の平面と法線ベクトル)。
cor-ist-centers の証明の 3 本の回転の軸は、向かい合う辺の中点を結ぶ直線である。たとえば $z$ 軸に平行な軸は、$AB$ の中点 $\left(\dfrac p2,\dfrac q2,0\right)$ と $CD$ の中点 $\left(\dfrac p2,\dfrac q2,r\right)$ を通る。どんな四面体でも、向かい合う辺の中点を結ぶ 3 本の線分は重心で交わる(空間の四角形の中点と四面体 の定理「向かい合う辺の中点を結ぶ線分と重心」)。等面四面体では、この 3 本が互いに垂直になる。
四面体 $ABCD$ で、向かい合う辺 $AB$ と $CD$ の中点を結ぶ線分を $m_1$、$AC$ と $BD$ の中点を結ぶ線分を $m_2$、$AD$ と $BC$ の中点を結ぶ線分を $m_3$ とする。
(R1) $AD=BC$ $\iff$ $m_1\perp m_2$
(R1) $AB=CD$ $\iff$ $m_2\perp m_3$
(R1) $AC=BD$ $\iff$ $m_1\perp m_3$
とくに、$ABCD$ が等面四面体であることは、3 本の線分 $m_1,m_2,m_3$ が互いに垂直であることと同値である。
要点:$A\to B\to C\to D\to A$ の順に結んだ空間の四角形の中点の平行四辺形は、2 辺が $\dfrac12\overrightarrow{AC}$、$\dfrac12\overrightarrow{BD}$ で、2 本の対角線が $m_1$ と $m_3$ である。平行四辺形の 2 本の対角線の内積は $\dfrac14\left(BD^2-AC^2\right)$ なので、$m_1\perp m_3$ は $AC=BD$ と同値である。4 点を結ぶ順を変えると残りの 2 つが出る。
条件 (iii) を示す。4 点を $A\to B\to C\to D\to A$ の順に結んだ空間の四角形の、辺 $AB$、$BC$、$CD$、$DA$ の中点を $E$、$F$、$G$、$H$ とする。空間の四角形の中点と四面体 の定理「ねじれた四角形の中点の平行四辺形」により $EFGH$ は平行四辺形で、$\overrightarrow{EF}=\overrightarrow{HG}=\dfrac12\overrightarrow{AC}$、$\overrightarrow{FG}=\overrightarrow{EH}=\dfrac12\overrightarrow{BD}$ である。その対角線 $EG$ と $FH$ は、それぞれ $m_1$ と $m_3$ である。$\overrightarrow{EG}=\overrightarrow{EF}+\overrightarrow{FG}$、$\overrightarrow{FH}=\overrightarrow{FG}+\overrightarrow{GH}=\overrightarrow{FG}-\overrightarrow{EF}$ なので
$$\overrightarrow{EG}\cdot\overrightarrow{FH}=(\overrightarrow{FG}+\overrightarrow{EF})\cdot(\overrightarrow{FG}-\overrightarrow{EF})=\lvert\overrightarrow{FG}\rvert^2-\lvert\overrightarrow{EF}\rvert^2=\frac14\left(BD^2-AC^2\right)$$
である。よって $m_1\perp m_3$ $\iff$ $\overrightarrow{EG}\cdot\overrightarrow{FH}=0$ $\iff$ $AC=BD$ である。
条件 (i) は、4 点を $A\to B\to D\to C\to A$ の順に結んだ四角形で同じ議論をする。辺 $AB$、$BD$、$DC$、$CA$ の中点の平行四辺形の対角線は $m_1$ と $m_2$ で、平行四辺形の 2 辺は $\dfrac12\overrightarrow{AD}$ と $\dfrac12\overrightarrow{BC}$ に平行で同じ長さなので、$m_1\perp m_2$ $\iff$ $AD=BC$ である。条件 (ii) は $A\to C\to B\to D\to A$ の順で同じである。$\square$
等面四面体の向かい合う辺の中点を結ぶ 3 本の線分は、直方体の中心で互いに垂直に交わる。それぞれのまわりの 180° 回転で四面体は自分自身に移る
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 面が鋭角三角形である | 辺 $2,3,4$(ex-ist-judge の (2)) | 等面四面体がある |
| 面が鋭角三角形である(直角を許す) | 辺 $3,4,5$(ex-ist-judge の (3)) | 4 点が同じ平面の上にない |
| 向かい合う辺が 3 組とも等しい(2 組だけにする) | ex-ist-cx-two | 各頂点の角の和が $180^\circ$、外心と内心が一致する |
$A(0,0,0)$、$D(2,0,0)$、$B\left(1,\sqrt3,0\right)$、$C\left(1,-\dfrac{\sqrt3}2,\dfrac32\right)$ とする。
$$
AB^2=1+3=4,\quad CD^2=1+\frac34+\frac94=4,\qquad AC^2=1+\frac34+\frac94=4,\quad BD^2=1+3=4,\qquad AD^2=4,\quad BC^2=0+\left(\frac{3\sqrt3}2\right)^2+\frac94=9
$$
で、$AB=CD=2$、$AC=BD=2$ だが、$AD=2$、$BC=3$ で 3 組目は等しくない。面 $ABD$、$ACD$ は 1 辺 $2$ の正三角形、面 $ABC$、$BCD$ は辺 $2,2,3$ の二等辺三角形で、4 つの面は合同でない。
頂点 $A$ に集まる角は、$\angle BAD=\angle CAD=60^\circ$ と、$\cos\angle BAC=\dfrac{4+4-9}{8}=-\dfrac18$ の $\angle BAC\approx97.18^\circ$ で、和は約 $217.18^\circ$ である。頂点 $B$ では約 $142.82^\circ$ で、どちらも $180^\circ$ でない。
外心は $\left(1,\dfrac1{\sqrt3},1\right)$(4 頂点までの距離の 2 乗がどれも $\dfrac73$)で、内心は約 $(1,\ 0.202,\ 0.350)$ である。2 つは一致しない。
満たさない条件:$AD=BC$。崩れる主張:cor-ist-angles、cor-ist-centers。prop-ist-bimedian の条件 (i) により、$m_1$ と $m_2$ は垂直でない。
cor-ist-centers の証明の 3 つの $180^\circ$ 回転に、何も動かさない変換(恒等変換)を加えた 4 つの変換は、どの 2 つを続けて行っても 4 つのどれかになる。たとえば $z$ 軸に平行な軸のまわりの回転と $x$ 軸に平行な軸のまわりの回転を続けると、$(x,y,z)\mapsto(p-x,q-y,z)\mapsto(p-x,\ q-(q-y),\ r-z)=(p-x,y,r-z)$ で、$y$ 軸に平行な軸のまわりの回転になる。このような 4 つの変換の集まりは Klein の四元群 と呼ばれる群をなす(Kleinの四元群)。
$a,b,c$ がどれも異なる等面四面体を自分自身に移す合同変換(折り返しも含める)は、この 4 つだけである。合同変換は頂点を頂点に移し、辺の長さを保つ。長さ $c$ の辺は $AB$ と $CD$ の 2 本だけなので、辺の組 $\{AB,CD\}$ は自分自身に移る。$\{AC,BD\}$、$\{AD,BC\}$ も同じである。4 頂点の並べかえでこの 3 組をどれも保つものは、何もしないものと、$A\leftrightarrow B$ かつ $C\leftrightarrow D$、$A\leftrightarrow C$ かつ $B\leftrightarrow D$、$A\leftrightarrow D$ かつ $B\leftrightarrow C$ の 4 つである(たとえば $A\leftrightarrow B$ だけを入れかえると、辺 $AC$ が辺 $BC$ に移り、長さ $b$ の辺が長さ $a$ の辺に移る)。空間の合同変換は、同じ平面の上にない 4 点の行き先で 1 つに決まるので、合同変換も 4 つ以下で、上の 4 つがそれである。正四面体では 4 頂点のどんな並べかえも合同変換で実現でき、24 個ある(正多面体の分類)。
逆の主張も知られている。「各頂点に集まる 3 つの角の和がどれも $180^\circ$ の四面体」「外接球と内接球の中心が一致する四面体」は、どれも等面四面体に限る。また、4 つの面の面積がすべて等しい四面体は、4 つの面が合同で、等面四面体になる(Wei26)。この記事ではこれらの逆は証明しない。
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