指数関数と対数関数はどう定義するか

同義語:defining the exponential and logarithm

概要

指数関数と対数関数はどう定義するか(defining the exponential and logarithm)とは、$a^x$($a>0$)を有理数乗から実数乗へ広げ、$e$ と $\log$ を定める問題である。$a>1$ なら $a^x$ は有理数 $r<x$ での $a^r$ の上限として定まり、連続・狭義単調で指数法則 $a^{x+y}=a^xa^y$ を満たす。$f(x+y)=f(x)f(y)$ を満たす連続関数 $f$ は、恒等的に $0$ か、$f(1)>0$ かつ $f(x)=f(1)^x$ である。連続でない解は選択公理から作れる。$x>0$ で $\log x:=\int_1^x dt/t$、$\log e=1$ とすると一意性から $\log$ は $e^x$ の逆関数、$a^x=e^{x\log a}$ となり、$(1+1/n)^n\to e$ も従う。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 実数, 上限, 連続関数, 中間値の定理, 微分積分学の基本定理

高校での出発点:$2^{\sqrt2}$ とは何か

高校では、正の数 $a$ の累乗を次の順に広げていく。

  1. 正の整数 $n$ について $a^n:=a\cdot a\cdots a$($n$ 個の積)。
  2. $a^0:=1$、$a^{-n}:=1/a^n$。
  3. 正の整数 $n$ について $a^{1/n}$ は $x^n=a$ を満たす正の数 $x$(正の $n$ 乗根)。
  4. 有理数 $\frac mn$($n>0$)について $a^{m/n}:=\bigl(a^{1/n}\bigr)^m$。
    ここまでは代数的に定義できる。たとえば $2^{1.4}=2^{7/5}=\sqrt[5]{2^7}=2.6390\ldots$ である。ところが $\sqrt2$ は有理数でないので、$2^{\sqrt2}$ はこのどれにも当てはまらない。教科書では「$\sqrt2=1.41421\ldots$ に近づく有理数 $r$ について $2^r$ が近づく値」と説明する。実際、
    $$ \begin{array}{c|ccccc} r & 1.4 & 1.41 & 1.414 & 1.4142 & 1.41421\\\hline 2^r & 2.6390\ldots & 2.6573\ldots & 2.66474\ldots & 2.665119\ldots & 2.665137\ldots \end{array} $$
    と値は落ち着いていき、$2^{\sqrt2}=2.66514\ldots$ となる。
    さらに高校では、$e=\lim_{n\to\infty}\bigl(1+\frac1n\bigr)^n=2.71828\ldots$ を「定義」し、$\log x$ を $e$ を底とする対数とし、$(e^x)'=e^x$、$(\log x)'=\frac1x$ を導く。これらの説明は次の疑問を残す。
  5. 「近づく値」は本当に存在するか。近づけ方($1.4,1.41,\dots$ か、上から $1.5,1.42,\dots$ か)によらないか。こうして決めた $a^x$ は、指数法則 $a^{x+y}=a^xa^y$ を満たすか。
  6. 指数法則を満たす関数は $a^x$ しかないのか。
  7. $\lim(1+\frac1n)^n$ はなぜ収束するのか。$e$ を底にすると微分がきれいになるのはなぜか。
    本記事では、1 に「単調性と連続性による拡張」で答え、2 に「指数法則を満たす連続関数は $a^x$ に限る」という一意性定理で答える。一意性定理を使うと、$\log x$ を積分 $\int_1^x\frac{dt}t$ で定義する大学流の方法と高校の定義が一致することが、ほとんど計算なしに分かる。3 はその帰結として得られる。

取り出す構造:指数法則を満たす連続関数

高校の「$2^r$ が近づく値」の背後にあるのは、実数の次の性質である。本記事ではこれらを前提として認め、証明しない(Leb26 §1.2、Theorem 1.2.4(p. 31)、中間値の定理は §3.3)。
(R1) 上限性質:空でなく上に有界な実数の集合には上限(最小の上界)がある。
(R2) 有理数の稠密性:どんな実数 $x< y$ の間にも有理数がある。どんな実数よりも大きい整数がある(Archimedes の性質)。
(R3) 中間値の定理:閉区間上の連続関数は、両端の値の間のすべての値をとる。

指数法則を満たす関数

関数 $f\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が 指数法則を満たす とは、すべての実数 $x,y$ について
$$ f(x+y)=f(x)f(y) $$
が成り立つことをいう。定義域を有理数全体 $\mathbb{Q}$ や整数全体 $\mathbb{Z}$ にした場合も同様に定める。

本記事の主張は、「$a>0$ に対して、指数法則を満たし $f(1)=a$ となる 連続 関数はただ 1 つ存在し、それが $a^x$ である」ことである(thm-dexp-uniqueness)。まず有理数乗を整理する。

正の $n$ 乗根

$a>0$、$n$ を正の整数とすると、$x^n=a$ を満たす正の数 $x$ がただ 1 つ存在する。

中間値の定理と単調性

$g(t):=t^n$ は $[0,\infty)$ で連続かつ狭義単調増加である($0\le s< t$ なら $t^n-s^n=(t-s)(t^{n-1}+t^{n-2}s+\cdots+s^{n-1})>0$)。$g(0)=0< a$ であり、$g(1+a)=(1+a)^n\ge1+a>a$ である。(iii) により $g(x)=a$ となる $x\in(0,1+a)$ がある。$g$ は狭義単調なので、そのような $x$ は 1 つしかない。$\square$

この一意性から「$u,v>0$ で $u^N=v^N$ なら $u=v$」が従う。これが以下で何度も使う道具である。$a^{1/n}$ を lem-dexp-root の $x$ とし、有理数 $r=\frac mn$($m$ は整数、$n$ は正の整数)について $a^r:=(a^{1/n})^m$ と定める。

有理数乗の性質

$a>0$ とする。

  1. $a^r$ は $r$ の分数表示のとり方によらない。
  2. すべての有理数 $r,s$ について $a^{r+s}=a^ra^s$ である。
  3. $a>1$ なら、有理数 $r< s$ について $a^r< a^s$ である。$0< a<1$ なら $a^r>a^s$ である。
共通の分母の冪をとる
  1. $\frac mn=\frac{m'}{n'}$ とし、$u:=(a^{1/n})^m$、$v:=(a^{1/n'})^{m'}$ とおく。整数乗の指数法則により
    $$ u^{nn'}=\bigl((a^{1/n})^n\bigr)^{mn'}=a^{mn'},\qquad v^{nn'}=\bigl((a^{1/n'})^{n'}\bigr)^{m'n}=a^{m'n} $$
    であり、$mn'=m'n$ なので $u^{nn'}=v^{nn'}$、よって $u=v$ である。
  2. 1 により、$r=\frac mN$、$s=\frac{m'}N$ と共通の分母で書いてよい。$b:=a^{1/N}$ とおくと、整数乗の指数法則により $a^ra^s=b^mb^{m'}=b^{m+m'}=a^{r+s}$ である。
  3. 2 と同じく $r=\frac mN< s=\frac{m'}N$ と書き、$b:=a^{1/N}$ とおく。$a>1$ なら $b>1$ である($b\le1$ なら $a=b^N\le1$)。$m'-m\ge1$ なので $a^s=b^mb^{m'-m}>b^m=a^r$ である。$0< a<1$ の場合は $b<1$ となり、不等号が逆になる。$\square$

三角関数を加法定理と微分の条件から定める同じ型の議論は 三角関数はどう定義するか で扱う。

主定理と証明

有理数乗から実数乗へ:単調性と連続性による拡張

以下しばらく $a>1$ とする。拡張の鍵は、指数が少し動いても $a^r$ が少ししか動かないという評価である。

$n$ 乗根は 1 に近づく

$a>1$ なら、すべての正の整数 $n$ について $0< a^{1/n}-1\le\dfrac{a-1}n$ である。したがって、有理数 $r< s$ が $s-r\le\frac1n$ を満たせば
$$ 0< a^s-a^r\le a^r\cdot\frac{a-1}n $$
である。

二項展開で下から押さえる

$h:=a^{1/n}-1$ とおくと、prop-dexp-rational の 3 により $a^{1/n}>a^0=1$ なので $h>0$ である。二項定理により $a=(1+h)^n=1+nh+\binom n2h^2+\cdots\ge1+nh$ なので、$h\le\frac{a-1}n$ である。後半は、$0< s-r\le\frac1n$ と prop-dexp-rational から $a^s-a^r=a^r(a^{s-r}-1)\le a^r(a^{1/n}-1)$ となることによる。$\square$

実数乗

$a>1$ と実数 $x$ について
$$ a^x:=\sup\{\,a^r\mid r\in\mathbb{Q},\ r< x\,\} $$
と定める。$0< a<1$ なら $a^x:=(1/a)^{-x}$、$a=1$ なら $1^x:=1$ と定める。

有理数の上限で実数をとらえる考え方(実数の連続性)は 実数とは何か:無理数の証明 で扱う。
実数の性質 (ii) により $r< x$ となる有理数 $r$ があるので集合は空でなく、$x< s$ となる有理数 $s$ をとれば prop-dexp-rational の 3 により集合の元はすべて $a^s$ より小さいので、上に有界である。よって (i) により上限が存在する。$2^{\sqrt2}$ は「$\sqrt2$ より小さい有理数 $r$ についての $2^r$ の上限」であり、冒頭の表の $2^{1.4},2^{1.41},\dots$ はその集合の元である。

実数乗の性質

$a>0$ とする。

  1. $x$ が有理数なら、def-dexp-real-power の $a^x$ は有理数乗の $a^x$ と一致する。
  2. $a>1$ なら $x\mapsto a^x$ は狭義単調増加である($0< a<1$ なら狭義単調減少)。
  3. $x\mapsto a^x$ は連続である。特に、$x$ に収束するどんな有理数の列 $r_n$ についても $a^{r_n}\to a^x$ である。
  4. すべての実数 $x,y$ について $a^{x+y}=a^xa^y$ である。
有理数で挟む

$a>1$ の場合を示す。$0< a<1$ の場合は $b:=1/a>1$ についての性質を $a^x=b^{-x}$ で書き直せばよく(有理数 $r$ について $b^{-r}=a^r$ であることは prop-dexp-rational の 1 と同様に、両辺の分母の冪を比べて分かる)、$a=1$ の場合は明らかである。

  1. $x$ を有理数とする。$r< x$ なら $a^r< a^x$ なので上限は $a^x$ 以下である。一方 $r=x-\frac1n$ とすると lem-dexp-root-to-one により $a^x-a^r\le a^x\cdot\frac{a-1}n$ であり、$n$ を大きくすると右辺はいくらでも小さくなる。よって上限は $a^x$ に等しい。
  2. まず、有理数 $p< x< q$ について $a^p\le a^x\le a^q$ である($a^p$ は上限をとる集合の元であり、集合の元 $a^r$($r< x< q$)はどれも $a^q$ より小さい)。1 により $p=x$ や $q=x$ でも成り立つ。$x< y$ なら (ii) で有理数 $x< p< q< y$ をとると、$a^x\le a^p< a^q\le a^y$ である。
  3. $x$ と正の整数 $k$ を固定し、$|x|+1$ より大きい整数 $M$ をとる。(ii) により有理数 $p,q$ を $x-\frac1{2k}< p< x< q< x+\frac1{2k}$ ととる($k\ge1$ なので $|p|,|q|< M$)。$p< y< q$ となる実数 $y$ については、2 により $a^x$ と $a^y$ はどちらも区間 $[a^p,a^q]$ に入るので、lem-dexp-root-to-one により
    $$ |a^y-a^x|\le a^q-a^p\le a^p\cdot\frac{a-1}k\le a^M\cdot\frac{a-1}k $$
    である。$k$ はいくらでも大きくとれるので、$y\to x$ のとき $a^y\to a^x$ である。
  4. $k$ と、$|x|+|y|+2$ より大きい整数 $M$ を固定する。有理数 $p< x< q$、$p'< y< q'$ を $q-p<\frac1{2k}$、$q'-p'<\frac1{2k}$ ととる。2 により
    $$ a^{p+p'}\le a^{x+y}\le a^{q+q'},\qquad a^{p+p'}=a^pa^{p'}\le a^xa^y\le a^qa^{q'}=a^{q+q'} $$
    である(後半の等号は prop-dexp-rational の 2)。$a^{x+y}$ と $a^xa^y$ は同じ区間 $[a^{p+p'},a^{q+q'}]$ に入り、その幅は lem-dexp-root-to-one により $a^M\cdot\frac{a-1}k$ 以下である。$k$ は任意なので $a^{x+y}=a^xa^y$ である。$\square$

こうして、有理数乗を「単調性で挟み、幅が $0$ に縮むことで値を決める」ことで実数乗に拡張できた。高校の「$2^r$ が近づく値」は、3 により近づけ方によらずに $2^{\sqrt2}$ に一致する。冒頭の表の $2^{1.414}=2.66474\ldots$(下から)と、表にはない $2^{1.415}=2.66659\ldots$(上から)の間に $2^{\sqrt2}=2.66514\ldots$ が挟まれているのが 2 の具体例である。

指数法則による特徴づけ

指数法則を満たす連続関数の一意性

$f\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ は連続で、すべての実数 $x,y$ について $f(x+y)=f(x)f(y)$ を満たすとする。このとき、$f$ は恒等的に $0$ であるか、または $a:=f(1)>0$ であってすべての実数 $x$ について $f(x)=a^x$ である。逆に、各 $a>0$ について $x\mapsto a^x$ は連続で指数法則を満たす。

整数・有理数・実数の順に決める

逆の主張は prop-dexp-real の 3・4 である。以下 $f$ が条件を満たすとする。
段 1(符号) $f(x)=f(\frac x2)^2\ge0$ である。ある $x_0$ で $f(x_0)=0$ なら、すべての $x$ について $f(x)=f(x_0)f(x-x_0)=0$ である。以下、$f$ はどこでも $0$ でない、すなわち正であるとする。
段 2(整数) $f(0)=f(0)^2$ かつ $f(0)>0$ なので $f(0)=1$ であり、$f(x)f(-x)=f(0)=1$ から $f(-x)=1/f(x)$ である。$a:=f(1)>0$ とおく。$f(nx)=f(x)^n$ が正の整数 $n$ について帰納法で成り立ち($f((n+1)x)=f(nx)f(x)$)、負の $n$ にも $f(-x)=1/f(x)$ で広がる。特に $f(n)=a^n$ である。
段 3(有理数) 正の整数 $n$ について $f(\frac1n)^n=f(1)=a$ かつ $f(\frac1n)>0$ なので、lem-dexp-root の一意性により $f(\frac1n)=a^{1/n}$ である。整数 $m$ について $f(\frac mn)=f(\frac1n)^m=(a^{1/n})^m=a^{m/n}$ である。よって $f$ と $a^x$ は有理数の上で一致する。
段 4(実数) 実数 $x$ に収束する有理数の列 $r_n$ をとる((ii) により、たとえば $x-\frac1n< r_n< x$ ととればよい)。$f$ の連続性により $f(r_n)\to f(x)$ であり、prop-dexp-real の 3 により $a^{r_n}\to a^x$ である。段 3 により $f(r_n)=a^{r_n}$ なので、極限も一致し $f(x)=a^x$ である。$\square$

段 1〜3 では連続性を使っていないことに注意する。有理数の上では、指数法則と $f(1)$ の値だけで関数が決まる。連続性は段 4 で、有理数での値から実数での値を決めるためだけに使われる。このため、連続性はもっと弱い仮定に取り替えられる。

  • 1 点での連続性:$f$ が正の解で、ある 1 点 $x_0$ で連続なら、$f(h)=f(x_0+h)/f(x_0)\to1$($h\to0$)なので、すべての $x$ で $f(x+h)=f(x)f(h)\to f(x)$ となり、$f$ は連続である。
  • 単調性:$f$ が正の解で単調増加なら、段 3 により有理数上で $f=a^x$ であり、有理数 $p< x< q$ について $a^p=f(p)\le f(x)\le f(q)=a^q$ となる。prop-dexp-real の証明の 3 と同じく幅が $0$ に縮むので、$f(x)=a^x$ である。
    どちらの形でも「連続性か単調性のような、有理数での値を実数に伝える仮定」が要る。その仮定を完全に外すと一意性が崩れることは ex-dexp-hamel で見る。

対数を積分で定義する

大学の解析学では、対数を先に積分で定義し、指数関数をその逆関数として作ることが多い(Leb26 §5.4、Proposition 5.4.1・5.4.2(pp. 207–210))。この方法と、上の「有理数乗から拡張した $a^x$」が同じものを与えることを、thm-dexp-uniqueness で確かめる。ここでは微分積分の次の事実を前提として認め、証明しない。

  • (C1) 微分積分学の基本定理:区間上の連続関数 $g$ と区間内の点 $c$ について、$G(x):=\int_c^xg(t)\,dt$ は微分可能で $G'=g$ である(Leb26 Theorem 5.3.3、p. 202)。
  • (C2) 平均値の定理の帰結:区間上で導関数が $0$ の関数は定数であり、導関数が正の関数は狭義単調増加である(Leb26 Proposition 4.2.6、p. 165、Proposition 4.2.8、p. 166)。
  • (C3) 逆関数:区間上の連続な狭義単調関数の逆関数は連続である。さらに元の関数が微分可能で導関数が $0$ にならなければ、逆関数も微分可能で $(f^{-1})'(y)=1/f'(f^{-1}(y))$ である(Leb26 Proposition 3.6.6、p. 152、Lemma 4.4.1、p. 176)。
積分による対数

正の実数 $x$ について
$$ L(x):=\int_1^x\frac{dt}t $$
と定める。$L(e)=1$ となる正の数 $e$ を Napier 数 とよぶ(その存在と一意性は prop-dexp-log の 3 による)。

積分で定めた対数の性質
  1. $L(1)=0$ であり、$L$ は微分可能で $L'(x)=\frac1x$、特に連続かつ狭義単調増加である。
  2. すべての $x,y>0$ について $L(xy)=L(x)+L(y)$ である。
  3. $L$ は $(0,\infty)$ から $\mathbb{R}$ への全単射である。
導関数で比べる
  1. $\frac1t$ は $(0,\infty)$ で連続なので、(C1) により $L'(x)=\frac1x>0$ であり、(C2) により $L$ は狭義単調増加である。
  2. $y>0$ を固定し $h(x):=L(xy)-L(x)$ とおくと、合成関数の微分により $h'(x)=y\cdot\frac1{xy}-\frac1x=0$ である。(C2) により $h$ は定数で、$h(x)=h(1)=L(y)-L(1)=L(y)$ である。
  3. $1\le t\le2$ では $\frac1t\ge\frac12$ なので $L(2)\ge\frac12$ である。2 を繰り返し使うと、正の整数 $n$ について $L(2^n)=nL(2)\ge\frac n2$、$L(2^{-n})=-L(2^n)\le-\frac n2$ である($L(2^n)+L(2^{-n})=L(1)=0$)。任意の実数 $y$ に対して $\frac n2>|y|$ となる $n$ をとると $L(2^{-n})< y< L(2^n)$ なので、(iii) により $L(x)=y$ となる $x$ がある。単射であることは狭義単調性による。$\square$

$L$ の逆関数を $E\colon\mathbb{R}\to(0,\infty)$ とする。$e=E(1)$ である。

積分による定義と有理数乗からの定義の一致
  1. すべての実数 $x$ について $E(x)=e^x$ である。したがって $L$ は $e^x$ の逆関数、すなわち $e$ を底とする対数 $\log x$ に等しい。
  2. $a>0$ とすると、すべての実数 $x$ について $a^x=e^{x\log a}$ である。$a\ne1$ なら $\log_ax=\dfrac{\log x}{\log a}$ である。
  3. $(e^x)'=e^x$、$(a^x)'=a^x\log a$、$(\log x)'=\dfrac1x$ である。
一意性定理に 2 回帰着させる
  1. (C3) により $E$ は連続である。実数 $x,y$ について、prop-dexp-log の 2 から $L(E(x)E(y))=L(E(x))+L(E(y))=x+y$ なので、$E(x)E(y)=E(x+y)$ である。$E$ は正の値をとる連続関数で指数法則を満たし、$E(1)=e$ なので、thm-dexp-uniqueness により $E(x)=e^x$ である。
  2. $g(x):=e^{x\log a}$ は連続関数の合成なので連続であり、$g(x+y)=e^{x\log a+y\log a}=g(x)g(y)$ を満たし、$g(1)=e^{\log a}=a$ である。thm-dexp-uniqueness により $g(x)=a^x$ である。$a\ne1$ なら $\log a\ne0$ であり、$y:=\frac{\log x}{\log a}$ について $a^y=e^{y\log a}=e^{\log x}=x$ なので、$\log_ax=y$ である。
  3. $L'(x)=\frac1x\ne0$ なので、(C3) により $E$ は微分可能で $E'(y)=1/L'(E(y))=E(y)$、すなわち $(e^x)'=e^x$ である。2 と合成関数の微分により $(a^x)'=(e^{x\log a})'=\log a\cdot e^{x\log a}=a^x\log a$ である。$(\log x)'=L'(x)=\frac1x$ は prop-dexp-log の 1 である。$\square$

2 回とも、「連続で指数法則を満たし、$1$ での値が同じ」ことだけを確かめて、あとは一意性定理に任せている。関数の値を直接比べる計算は一度もしていない。これが一意性定理の使い方である。
最後に、高校の $e$ の定義との一致を示す。

$e$ の極限表示

すべての正の整数 $n$ について
$$ \Bigl(1+\frac1n\Bigr)^n\le e\le\Bigl(1+\frac1n\Bigr)^{n+1} $$
であり、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\Bigl(1+\frac1n\Bigr)^n=e$ である。また $a>0$ について $\displaystyle\lim_{h\to0}\frac{a^h-1}h=\log a$ であり、この極限が $1$ になる $a$ は $e$ だけである。

積分を長方形で挟む

$h>0$ とすると、$1\le t\le1+h$ で $\frac1{1+h}\le\frac1t\le1$ なので $\frac h{1+h}\le L(1+h)\le h$ である。$h=\frac1n$ とすると $\frac1{n+1}\le L(1+\frac1n)\le\frac1n$、すなわち
$$ L\Bigl(\bigl(1+\tfrac1n\bigr)^n\Bigr)=nL\bigl(1+\tfrac1n\bigr)\le1\le(n+1)L\bigl(1+\tfrac1n\bigr)=L\Bigl(\bigl(1+\tfrac1n\bigr)^{n+1}\Bigr) $$
である($L(x^m)=mL(x)$ は prop-dexp-log の 2 を繰り返し使った)。$1=L(e)$ であり $L$ は狭義単調増加なので、主張の不等式を得る。右辺と左辺の差は $\bigl(1+\frac1n\bigr)^n\cdot\frac1n\le\frac en$ で $0$ に近づくので、はさみうちにより極限は $e$ である。
後半の極限は、関数 $a^x$ の $x=0$ での微分係数であり、thm-dexp-log-equivalence の 3 により $a^0\log a=\log a$ である。$\log a=1=\log e$ となるのは、$\log$ が単射なので $a=e$ のときだけである。$\square$

$(1+\frac1n)^n$ が収束することを直接示す方法は (1+1/n)^nの極限 で扱う。
数値では、$n=10$ で $2.5937\ldots\le e\le2.8531\ldots$、$n=1000$ で $2.71692\ldots\le e\le2.71964\ldots$ であり、$e=2.718281\ldots$ である。挟む区間の幅がおよそ $e/n$ なので、この近似は遅い。$e=\sum_{k=0}^\infty\frac1{k!}$ という速い表示もあるが、本記事では証明しない(ネイピア数 を参照)。

高校の計算をもう一度見る

対数の計算法則 $\log(xy)=\log x+\log y$ は prop-dexp-log の 2 であり、積分では「区間 $[x,xy]$ 上の $\frac1t$ の面積は、$t=xu$ と縮めると区間 $[1,y]$ 上の面積に等しい」ことにあたる。$\log x^r=r\log x$ は thm-dexp-log-equivalence の 2 から $x^r=e^{r\log x}$ として従い、底の変換公式も同じ 2 である。
$(\log x)'=\frac1x$ の導き方 高校の教科書では、$e=\lim_{h\to0}(1+h)^{1/h}$ を認めて
$$ \frac{\log(x+h)-\log x}h=\frac1x\log\Bigl(1+\frac hx\Bigr)^{x/h}\ \longrightarrow\ \frac1x\log e=\frac1x $$
と計算する。本記事の順序はその逆で、$(\log x)'=\frac1x$ は定義から直ちに出て、$e$ の極限表示のほうが定理になる(prop-dexp-e-limit)。実数 $h\to0$ についての $(1+h)^{1/h}\to e$ も、$L(1+h)/h\to L'(1)=1$ と $E$ の連続性から $(1+h)^{1/h}=E\bigl(L(1+h)/h\bigr)\to E(1)=e$ として得られる。高校の議論は、この極限が存在すること、実数乗 $\bigl(1+\frac hx\bigr)^{x/h}$ の定義(def-dexp-real-power が埋めた部分)、極限を $\log$ の中に入れるための $\log$ の連続性を、証明なしに使っている点が不足していた。
$\int\frac{dx}x=\log|x|+C$ 高校で積分公式として習うこの式は、本記事の順序では $\log$ の定義そのものである。冪 $x^n$ の原始関数の公式 $\frac{x^{n+1}}{n+1}$ は $n=-1$ で使えないので、$\frac1x$ の原始関数を新しい関数として導入する、というのが積分による定義の動機である。
指数法則 $a^{x+y}=a^xa^y$ は有理数乗では代数的に(prop-dexp-rational)、実数乗では挟み撃ちで(prop-dexp-real)示された。$(a^x)^y=a^{xy}$ も、thm-dexp-log-equivalence の 2 から $(a^x)^y=e^{y\log a^x}=e^{yx\log a}=a^{xy}$ として従う($\log a^x=x\log a$ を使った)。

例と反例

反例:有理数・実数の上では負の底の指数関数が作れない

$\mathbb{Z}$ の上では、負の数 $a$ についても $f(n)=a^n$ は $f(m+n)=f(m)f(n)$ を満たす(たとえば $(-2)^n$)。しかし $\mathbb{Q}$ の上で指数法則を満たす $f$ は、$f(x)=f(\frac x2)^2\ge0$ なので負の値をとれない。したがって $f(1)=-8$ となる解は $\mathbb{Q}$ 上にも $\mathbb{R}$ 上にも存在しない。高校で「底は正」と約束するのはこのためであり、thm-dexp-uniqueness の結論「$a=f(1)>0$」は仮定ではなく帰結である。
実際、負の底で有理数乗を定めようとすると prop-dexp-rational の 1 が破れる。$-8$ の実数の 3 乗根は $-2$ なので $(-8)^{1/3}=-2$ としたくなるが、$\frac13=\frac26$ で、$\bigl((-8)^2\bigr)^{1/6}=64^{1/6}=2$ となり、分数表示によって値が変わる。この反例は「$a<0$ でも $a^{m/n}:=\sqrt[n]{a^m}$ は分数表示によらない」という主張を破っている。

反例:連続性を外すと一意性が崩れる

この例は、次の事実を 証明なしに 認めたうえでの構成である。
認める事実:実数全体 $\mathbb{R}$ を有理数を係数とするベクトル空間と見たとき、$1$ を含む基底 $H$ が存在する。すなわち、どの実数 $x$ も、$H$ の有限個の元の有理数係数の 1 次結合として、ただ 1 通りに書ける。
このような $H$ を Hamel 基底といい、Hamel が 1905 年に指数法則(和の形 $g(x+y)=g(x)+g(y)$)の不連続な解を作るために導入した(Ham05)。その存在の証明には 選択公理(Zornの補題)が必要であり、本記事では証明しない。
$H$ を認めると、実数 $x$ の表示における $1$ の係数を $c(x)\in\mathbb{Q}$ と書ける。表示の一意性から $c(x+y)=c(x)+c(y)$ であり、有理数 $q$ については $q=q\cdot1$ なので $c(q)=q$ である。$\mathbb{R}\ne\mathbb{Q}$($\sqrt2$ は無理数)なので $H$ には $1$ 以外の元 $b$ があり、$c(b)=0$ である。そこで
$$ f(x):=2^{c(x)} $$
と定めると、$f(x+y)=2^{c(x)+c(y)}=f(x)f(y)$ であり、$f(1)=2$ である。有理数 $q$ では $f(q)=2^q$ だが、$f(b)=2^0=1\ne2^b$($b\ne0$ なので)である。したがって $f$ は指数法則を満たし $f(1)=2$ であるのに $f\ne2^x$ であり、この例は「指数法則と $f(1)=a$ から $f(x)=a^x$ が従う」という含意を破る。thm-dexp-uniqueness により $f$ は連続でない。さらに 1 点での連続性や単調性だけでも一意性が回復する(thm-dexp-uniqueness の後の注意)ので、$f$ はどの点でも連続でなく、単調増加でもない。$f(0)=1<2=f(1)$ なので単調減少でもない。
選択公理を使わずにこのような不連続な解の存在を証明することはできないことが知られている(本記事では証明しない)。その意味で、不連続な解は「存在はするが具体的に書き下せない」ものであり、高校で扱う $a^x$ はどれも連続な解である。

指数法則を満たす関数の例
  • $f(x)=0$、$f(x)=1$($a=1$)は指数法則を満たす。$f=0$ は thm-dexp-uniqueness の例外の場合である。
  • $f(x)=e^{cx}$($c$ は実数)は $a=e^c$ の場合である。$c=\log2$ で $2^x$、$c=-\log2$ で $(1/2)^x$ になる。
  • $f(x)=a^{2x}$ は $f(1)=a^2$ の場合の $(a^2)^x$ に等しい。「$1$ での値」を決めて初めて関数が決まる。

数学オリンピックの問題から

整数上の関数方程式(国際数学オリンピック(2019 年)第 1 問)

問題(第 60 回国際数学オリンピック(2019 年)第 1 問の和訳) $\mathbb{Z}$ を整数全体の集合とする。すべての整数 $a,b$ について
$$ f(2a)+2f(b)=f\bigl(f(a+b)\bigr) $$
を満たす関数 $f\colon\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}$ をすべて求めよ。
答は $f(x)=0$(すべての $x$)と、$f(x)=2x+c$($c$ は任意の整数)である。
高校数学で解く $a=0$ とおくと $f(0)+2f(b)=f(f(b))$ である。$b$ を $a+b$ に置き換えると $f(f(a+b))=f(0)+2f(a+b)$ なので、元の式と比べて
$$ f(2a)+2f(b)=f(0)+2f(a+b)\qquad(\text{すべての整数 }a,b)\qquad(*) $$
を得る。$a=1$ とすると $2\bigl(f(b+1)-f(b)\bigr)=f(2)-f(0)$ であり、差 $m:=f(b+1)-f(b)$ は $b$ によらない整数である。$c:=f(0)$ とおくと、帰納法(正の方向と負の方向)により $f(x)=mx+c$ である。元の式に代入すると、左辺は $2m(a+b)+3c$、右辺は $m\bigl(m(a+b)+c\bigr)+c$ なので、すべての $a,b$ で等しくなる条件は $m^2=2m$ かつ $mc=2c$ である。$m=0$ なら $c=0$、$m=2$ なら $c$ は任意である。逆に $f=0$ と $f(x)=2x+c$ が元の式を満たすことは代入で確かめられる($f(x)=2x+c$ では両辺とも $4a+4b+3c$)。
大学数学で見ると $(*)$ で $g(x):=f(x)-f(0)$ とおくと $g(2a)+2g(b)=2g(a+b)$ となり、$b=0$ として $g(2a)=2g(a)$、これを戻すと
$$ g(a+b)=g(a)+g(b) $$
を得る。これは指数法則の「和の版」(Cauchy の関数方程式)であり、$g$ は加法群 $\mathbb{Z}$ から $\mathbb{Z}$ への準同型である。thm-dexp-uniqueness の証明の段 2 と同じく、整数の上では $g(n)=ng(1)$ と $1$ での値だけで決まり、連続性のような仮定は要らない。問題の本質は、この「$1$ での値で決まる」一次関数を元の式に代入して係数を絞ることにある。
定義域を $\mathbb{R}$ に広げると事情が変わる。$e^x$ と $\log$ を使えば、和の版と積の版は互いに移り合う($g$ が和の版の解なら $e^{g}$ は積の版の正の解であり、その逆も成り立つ)。したがって本記事の結果は和の版に翻訳できる。

和の形の関数方程式の連続な解

$g\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が連続で、すべての実数 $x,y$ について $g(x+y)=g(x)+g(y)$ を満たすなら、$g(x)=g(1)\,x$ である。連続性を外すと、この結論は成り立たない。

指数関数で積の形に移す

$f(x):=e^{g(x)}$ は連続で、$f(x+y)=e^{g(x)}e^{g(y)}=f(x)f(y)$、$f(1)=e^{g(1)}$ を満たす。thm-dexp-uniqueness と thm-dexp-log-equivalence の 2 により $f(x)=\bigl(e^{g(1)}\bigr)^x=e^{x\log e^{g(1)}}=e^{xg(1)}$ であり、両辺の $\log$ をとって $g(x)=g(1)x$ である。後半は、ex-dexp-hamel の $c(x)$ が $c(x+y)=c(x)+c(y)$、$c(1)=1$ を満たすのに $c(b)=0\ne b$ となることによる(Hamel 基底の存在を認めたうえで)。$\square$

整数上では「$1$ での値」で決まり、有理数上でも決まり(段 3)、実数上では連続性が加わって初めて決まる。数学オリンピックの問題が整数上で解けるのは、この階段の最初の段にいるからである。

さらに先へ

  • 冪級数による定義:$\exp x:=\sum_{k=0}^\infty\frac{x^k}{k!}$ と定義し、項別微分で $\exp'=\exp$、級数の積で $\exp(x+y)=\exp x\exp y$ を示す方法もある(指数関数)。この $\exp$ も連続で指数法則を満たし $\exp1=\sum\frac1{k!}$ なので、thm-dexp-uniqueness により $\exp x=\bigl(\sum\frac1{k!}\bigr)^x$ となる。これが $e$ と一致することを示せば、3 つの定義(有理数乗の拡張・積分・冪級数)がすべて同じ関数を与える(本記事では冪級数の側は証明しない)。
  • 微分方程式による定義:$y'=y$、$y(0)=1$ の解として $e^x$ を定義することもできる。解の一意性は $\bigl(y(x)e^{-x}\bigr)'=0$ から従う(Leb26 §5.4 の Proposition 5.4.2 の一意性の証明と同じ議論)。
  • 複素数と行列:冪級数は複素数や正方行列 $A$ にも意味をもち、$e^{ix}=\cos x+i\sin x$(Eulerの公式)や行列の指数関数 $e^{tA}$ が得られる。$e^{(s+t)A}=e^{sA}e^{tA}$ は指数法則そのものであり、可逆行列に値をとる連続な関数 $F$ で $F(s+t)=F(s)F(t)$ を満たすものはこの形 $F(t)=e^{tA}$ に限ることが知られている(1 径数部分群。本記事では証明しない)。複素数では $\log$ は 1 つに定まらず、$2\pi i$ の整数倍の不定性が残る(対数関数)。
  • 準同型としての見方:指数法則は、$x\mapsto a^x$ が加法群 $(\mathbb{R},+)$ から乗法群 $((0,\infty),\times)$ への連続な準同型であることを言っている。thm-dexp-log-equivalence により $\log$ はその逆写像であり、2 つの群は連続な同型で結ばれる。thm-dexp-uniqueness は「$(\mathbb{R},+)$ から $((0,\infty),\times)$ への連続な準同型は $1$ の行き先で決まる」と言い換えられる。

関連項目

参考文献

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