指数関数と対数関数はどう定義するか(defining the exponential and logarithm)とは、$a^x$($a>0$)を有理数乗から実数乗へ広げ、$e$ と $\log$ を定める問題である。$a>1$ なら $a^x$ は有理数 $r<x$ での $a^r$ の上限として定まり、連続・狭義単調で指数法則 $a^{x+y}=a^xa^y$ を満たす。$f(x+y)=f(x)f(y)$ を満たす連続関数 $f$ は、恒等的に $0$ か、$f(1)>0$ かつ $f(x)=f(1)^x$ である。連続でない解は選択公理から作れる。$x>0$ で $\log x:=\int_1^x dt/t$、$\log e=1$ とすると一意性から $\log$ は $e^x$ の逆関数、$a^x=e^{x\log a}$ となり、$(1+1/n)^n\to e$ も従う。
前提知識: 実数, 上限, 連続関数, 中間値の定理, 微分積分学の基本定理
高校では、正の数 $a$ の累乗を次の順に広げていく。
高校の「$2^r$ が近づく値」の背後にあるのは、実数の次の性質である。本記事ではこれらを前提として認め、証明しない(Leb26 §1.2、Theorem 1.2.4(p. 31)、中間値の定理は §3.3)。
(R1) 上限性質:空でなく上に有界な実数の集合には上限(最小の上界)がある。
(R2) 有理数の稠密性:どんな実数 $x< y$ の間にも有理数がある。どんな実数よりも大きい整数がある(Archimedes の性質)。
(R3) 中間値の定理:閉区間上の連続関数は、両端の値の間のすべての値をとる。
関数 $f\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が 指数法則を満たす とは、すべての実数 $x,y$ について
$$
f(x+y)=f(x)f(y)
$$
が成り立つことをいう。定義域を有理数全体 $\mathbb{Q}$ や整数全体 $\mathbb{Z}$ にした場合も同様に定める。
本記事の主張は、「$a>0$ に対して、指数法則を満たし $f(1)=a$ となる 連続 関数はただ 1 つ存在し、それが $a^x$ である」ことである(thm-dexp-uniqueness)。まず有理数乗を整理する。
$a>0$、$n$ を正の整数とすると、$x^n=a$ を満たす正の数 $x$ がただ 1 つ存在する。
$g(t):=t^n$ は $[0,\infty)$ で連続かつ狭義単調増加である($0\le s< t$ なら $t^n-s^n=(t-s)(t^{n-1}+t^{n-2}s+\cdots+s^{n-1})>0$)。$g(0)=0< a$ であり、$g(1+a)=(1+a)^n\ge1+a>a$ である。(iii) により $g(x)=a$ となる $x\in(0,1+a)$ がある。$g$ は狭義単調なので、そのような $x$ は 1 つしかない。$\square$
この一意性から「$u,v>0$ で $u^N=v^N$ なら $u=v$」が従う。これが以下で何度も使う道具である。$a^{1/n}$ を lem-dexp-root の $x$ とし、有理数 $r=\frac mn$($m$ は整数、$n$ は正の整数)について $a^r:=(a^{1/n})^m$ と定める。
$a>0$ とする。
三角関数を加法定理と微分の条件から定める同じ型の議論は 三角関数はどう定義するか で扱う。
以下しばらく $a>1$ とする。拡張の鍵は、指数が少し動いても $a^r$ が少ししか動かないという評価である。
$a>1$ なら、すべての正の整数 $n$ について $0< a^{1/n}-1\le\dfrac{a-1}n$ である。したがって、有理数 $r< s$ が $s-r\le\frac1n$ を満たせば
$$
0< a^s-a^r\le a^r\cdot\frac{a-1}n
$$
である。
$h:=a^{1/n}-1$ とおくと、prop-dexp-rational の 3 により $a^{1/n}>a^0=1$ なので $h>0$ である。二項定理により $a=(1+h)^n=1+nh+\binom n2h^2+\cdots\ge1+nh$ なので、$h\le\frac{a-1}n$ である。後半は、$0< s-r\le\frac1n$ と prop-dexp-rational から $a^s-a^r=a^r(a^{s-r}-1)\le a^r(a^{1/n}-1)$ となることによる。$\square$
$a>1$ と実数 $x$ について
$$
a^x:=\sup\{\,a^r\mid r\in\mathbb{Q},\ r< x\,\}
$$
と定める。$0< a<1$ なら $a^x:=(1/a)^{-x}$、$a=1$ なら $1^x:=1$ と定める。
有理数の上限で実数をとらえる考え方(実数の連続性)は 実数とは何か:無理数の証明 で扱う。
実数の性質 (ii) により $r< x$ となる有理数 $r$ があるので集合は空でなく、$x< s$ となる有理数 $s$ をとれば prop-dexp-rational の 3 により集合の元はすべて $a^s$ より小さいので、上に有界である。よって (i) により上限が存在する。$2^{\sqrt2}$ は「$\sqrt2$ より小さい有理数 $r$ についての $2^r$ の上限」であり、冒頭の表の $2^{1.4},2^{1.41},\dots$ はその集合の元である。
$a>0$ とする。
$a>1$ の場合を示す。$0< a<1$ の場合は $b:=1/a>1$ についての性質を $a^x=b^{-x}$ で書き直せばよく(有理数 $r$ について $b^{-r}=a^r$ であることは prop-dexp-rational の 1 と同様に、両辺の分母の冪を比べて分かる)、$a=1$ の場合は明らかである。
こうして、有理数乗を「単調性で挟み、幅が $0$ に縮むことで値を決める」ことで実数乗に拡張できた。高校の「$2^r$ が近づく値」は、3 により近づけ方によらずに $2^{\sqrt2}$ に一致する。冒頭の表の $2^{1.414}=2.66474\ldots$(下から)と、表にはない $2^{1.415}=2.66659\ldots$(上から)の間に $2^{\sqrt2}=2.66514\ldots$ が挟まれているのが 2 の具体例である。
$f\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ は連続で、すべての実数 $x,y$ について $f(x+y)=f(x)f(y)$ を満たすとする。このとき、$f$ は恒等的に $0$ であるか、または $a:=f(1)>0$ であってすべての実数 $x$ について $f(x)=a^x$ である。逆に、各 $a>0$ について $x\mapsto a^x$ は連続で指数法則を満たす。
逆の主張は prop-dexp-real の 3・4 である。以下 $f$ が条件を満たすとする。
段 1(符号) $f(x)=f(\frac x2)^2\ge0$ である。ある $x_0$ で $f(x_0)=0$ なら、すべての $x$ について $f(x)=f(x_0)f(x-x_0)=0$ である。以下、$f$ はどこでも $0$ でない、すなわち正であるとする。
段 2(整数) $f(0)=f(0)^2$ かつ $f(0)>0$ なので $f(0)=1$ であり、$f(x)f(-x)=f(0)=1$ から $f(-x)=1/f(x)$ である。$a:=f(1)>0$ とおく。$f(nx)=f(x)^n$ が正の整数 $n$ について帰納法で成り立ち($f((n+1)x)=f(nx)f(x)$)、負の $n$ にも $f(-x)=1/f(x)$ で広がる。特に $f(n)=a^n$ である。
段 3(有理数) 正の整数 $n$ について $f(\frac1n)^n=f(1)=a$ かつ $f(\frac1n)>0$ なので、lem-dexp-root の一意性により $f(\frac1n)=a^{1/n}$ である。整数 $m$ について $f(\frac mn)=f(\frac1n)^m=(a^{1/n})^m=a^{m/n}$ である。よって $f$ と $a^x$ は有理数の上で一致する。
段 4(実数) 実数 $x$ に収束する有理数の列 $r_n$ をとる((ii) により、たとえば $x-\frac1n< r_n< x$ ととればよい)。$f$ の連続性により $f(r_n)\to f(x)$ であり、prop-dexp-real の 3 により $a^{r_n}\to a^x$ である。段 3 により $f(r_n)=a^{r_n}$ なので、極限も一致し $f(x)=a^x$ である。$\square$
段 1〜3 では連続性を使っていないことに注意する。有理数の上では、指数法則と $f(1)$ の値だけで関数が決まる。連続性は段 4 で、有理数での値から実数での値を決めるためだけに使われる。このため、連続性はもっと弱い仮定に取り替えられる。
大学の解析学では、対数を先に積分で定義し、指数関数をその逆関数として作ることが多い(Leb26 §5.4、Proposition 5.4.1・5.4.2(pp. 207–210))。この方法と、上の「有理数乗から拡張した $a^x$」が同じものを与えることを、thm-dexp-uniqueness で確かめる。ここでは微分積分の次の事実を前提として認め、証明しない。
正の実数 $x$ について
$$
L(x):=\int_1^x\frac{dt}t
$$
と定める。$L(e)=1$ となる正の数 $e$ を Napier 数 とよぶ(その存在と一意性は prop-dexp-log の 3 による)。
$L$ の逆関数を $E\colon\mathbb{R}\to(0,\infty)$ とする。$e=E(1)$ である。
2 回とも、「連続で指数法則を満たし、$1$ での値が同じ」ことだけを確かめて、あとは一意性定理に任せている。関数の値を直接比べる計算は一度もしていない。これが一意性定理の使い方である。
最後に、高校の $e$ の定義との一致を示す。
すべての正の整数 $n$ について
$$
\Bigl(1+\frac1n\Bigr)^n\le e\le\Bigl(1+\frac1n\Bigr)^{n+1}
$$
であり、$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\Bigl(1+\frac1n\Bigr)^n=e$ である。また $a>0$ について $\displaystyle\lim_{h\to0}\frac{a^h-1}h=\log a$ であり、この極限が $1$ になる $a$ は $e$ だけである。
$h>0$ とすると、$1\le t\le1+h$ で $\frac1{1+h}\le\frac1t\le1$ なので $\frac h{1+h}\le L(1+h)\le h$ である。$h=\frac1n$ とすると $\frac1{n+1}\le L(1+\frac1n)\le\frac1n$、すなわち
$$
L\Bigl(\bigl(1+\tfrac1n\bigr)^n\Bigr)=nL\bigl(1+\tfrac1n\bigr)\le1\le(n+1)L\bigl(1+\tfrac1n\bigr)=L\Bigl(\bigl(1+\tfrac1n\bigr)^{n+1}\Bigr)
$$
である($L(x^m)=mL(x)$ は prop-dexp-log の 2 を繰り返し使った)。$1=L(e)$ であり $L$ は狭義単調増加なので、主張の不等式を得る。右辺と左辺の差は $\bigl(1+\frac1n\bigr)^n\cdot\frac1n\le\frac en$ で $0$ に近づくので、はさみうちにより極限は $e$ である。
後半の極限は、関数 $a^x$ の $x=0$ での微分係数であり、thm-dexp-log-equivalence の 3 により $a^0\log a=\log a$ である。$\log a=1=\log e$ となるのは、$\log$ が単射なので $a=e$ のときだけである。$\square$
$(1+\frac1n)^n$ が収束することを直接示す方法は (1+1/n)^nの極限 で扱う。
数値では、$n=10$ で $2.5937\ldots\le e\le2.8531\ldots$、$n=1000$ で $2.71692\ldots\le e\le2.71964\ldots$ であり、$e=2.718281\ldots$ である。挟む区間の幅がおよそ $e/n$ なので、この近似は遅い。$e=\sum_{k=0}^\infty\frac1{k!}$ という速い表示もあるが、本記事では証明しない(ネイピア数 を参照)。
対数の計算法則 $\log(xy)=\log x+\log y$ は prop-dexp-log の 2 であり、積分では「区間 $[x,xy]$ 上の $\frac1t$ の面積は、$t=xu$ と縮めると区間 $[1,y]$ 上の面積に等しい」ことにあたる。$\log x^r=r\log x$ は thm-dexp-log-equivalence の 2 から $x^r=e^{r\log x}$ として従い、底の変換公式も同じ 2 である。
$(\log x)'=\frac1x$ の導き方 高校の教科書では、$e=\lim_{h\to0}(1+h)^{1/h}$ を認めて
$$
\frac{\log(x+h)-\log x}h=\frac1x\log\Bigl(1+\frac hx\Bigr)^{x/h}\ \longrightarrow\ \frac1x\log e=\frac1x
$$
と計算する。本記事の順序はその逆で、$(\log x)'=\frac1x$ は定義から直ちに出て、$e$ の極限表示のほうが定理になる(prop-dexp-e-limit)。実数 $h\to0$ についての $(1+h)^{1/h}\to e$ も、$L(1+h)/h\to L'(1)=1$ と $E$ の連続性から $(1+h)^{1/h}=E\bigl(L(1+h)/h\bigr)\to E(1)=e$ として得られる。高校の議論は、この極限が存在すること、実数乗 $\bigl(1+\frac hx\bigr)^{x/h}$ の定義(def-dexp-real-power が埋めた部分)、極限を $\log$ の中に入れるための $\log$ の連続性を、証明なしに使っている点が不足していた。
$\int\frac{dx}x=\log|x|+C$ 高校で積分公式として習うこの式は、本記事の順序では $\log$ の定義そのものである。冪 $x^n$ の原始関数の公式 $\frac{x^{n+1}}{n+1}$ は $n=-1$ で使えないので、$\frac1x$ の原始関数を新しい関数として導入する、というのが積分による定義の動機である。
指数法則 $a^{x+y}=a^xa^y$ は有理数乗では代数的に(prop-dexp-rational)、実数乗では挟み撃ちで(prop-dexp-real)示された。$(a^x)^y=a^{xy}$ も、thm-dexp-log-equivalence の 2 から $(a^x)^y=e^{y\log a^x}=e^{yx\log a}=a^{xy}$ として従う($\log a^x=x\log a$ を使った)。
$\mathbb{Z}$ の上では、負の数 $a$ についても $f(n)=a^n$ は $f(m+n)=f(m)f(n)$ を満たす(たとえば $(-2)^n$)。しかし $\mathbb{Q}$ の上で指数法則を満たす $f$ は、$f(x)=f(\frac x2)^2\ge0$ なので負の値をとれない。したがって $f(1)=-8$ となる解は $\mathbb{Q}$ 上にも $\mathbb{R}$ 上にも存在しない。高校で「底は正」と約束するのはこのためであり、thm-dexp-uniqueness の結論「$a=f(1)>0$」は仮定ではなく帰結である。
実際、負の底で有理数乗を定めようとすると prop-dexp-rational の 1 が破れる。$-8$ の実数の 3 乗根は $-2$ なので $(-8)^{1/3}=-2$ としたくなるが、$\frac13=\frac26$ で、$\bigl((-8)^2\bigr)^{1/6}=64^{1/6}=2$ となり、分数表示によって値が変わる。この反例は「$a<0$ でも $a^{m/n}:=\sqrt[n]{a^m}$ は分数表示によらない」という主張を破っている。
この例は、次の事実を 証明なしに 認めたうえでの構成である。
認める事実:実数全体 $\mathbb{R}$ を有理数を係数とするベクトル空間と見たとき、$1$ を含む基底 $H$ が存在する。すなわち、どの実数 $x$ も、$H$ の有限個の元の有理数係数の 1 次結合として、ただ 1 通りに書ける。
このような $H$ を Hamel 基底といい、Hamel が 1905 年に指数法則(和の形 $g(x+y)=g(x)+g(y)$)の不連続な解を作るために導入した(Ham05)。その存在の証明には 選択公理(Zornの補題)が必要であり、本記事では証明しない。
$H$ を認めると、実数 $x$ の表示における $1$ の係数を $c(x)\in\mathbb{Q}$ と書ける。表示の一意性から $c(x+y)=c(x)+c(y)$ であり、有理数 $q$ については $q=q\cdot1$ なので $c(q)=q$ である。$\mathbb{R}\ne\mathbb{Q}$($\sqrt2$ は無理数)なので $H$ には $1$ 以外の元 $b$ があり、$c(b)=0$ である。そこで
$$
f(x):=2^{c(x)}
$$
と定めると、$f(x+y)=2^{c(x)+c(y)}=f(x)f(y)$ であり、$f(1)=2$ である。有理数 $q$ では $f(q)=2^q$ だが、$f(b)=2^0=1\ne2^b$($b\ne0$ なので)である。したがって $f$ は指数法則を満たし $f(1)=2$ であるのに $f\ne2^x$ であり、この例は「指数法則と $f(1)=a$ から $f(x)=a^x$ が従う」という含意を破る。thm-dexp-uniqueness により $f$ は連続でない。さらに 1 点での連続性や単調性だけでも一意性が回復する(thm-dexp-uniqueness の後の注意)ので、$f$ はどの点でも連続でなく、単調増加でもない。$f(0)=1<2=f(1)$ なので単調減少でもない。
選択公理を使わずにこのような不連続な解の存在を証明することはできないことが知られている(本記事では証明しない)。その意味で、不連続な解は「存在はするが具体的に書き下せない」ものであり、高校で扱う $a^x$ はどれも連続な解である。
問題(第 60 回国際数学オリンピック(2019 年)第 1 問の和訳) $\mathbb{Z}$ を整数全体の集合とする。すべての整数 $a,b$ について
$$
f(2a)+2f(b)=f\bigl(f(a+b)\bigr)
$$
を満たす関数 $f\colon\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}$ をすべて求めよ。
答は $f(x)=0$(すべての $x$)と、$f(x)=2x+c$($c$ は任意の整数)である。
高校数学で解く $a=0$ とおくと $f(0)+2f(b)=f(f(b))$ である。$b$ を $a+b$ に置き換えると $f(f(a+b))=f(0)+2f(a+b)$ なので、元の式と比べて
$$
f(2a)+2f(b)=f(0)+2f(a+b)\qquad(\text{すべての整数 }a,b)\qquad(*)
$$
を得る。$a=1$ とすると $2\bigl(f(b+1)-f(b)\bigr)=f(2)-f(0)$ であり、差 $m:=f(b+1)-f(b)$ は $b$ によらない整数である。$c:=f(0)$ とおくと、帰納法(正の方向と負の方向)により $f(x)=mx+c$ である。元の式に代入すると、左辺は $2m(a+b)+3c$、右辺は $m\bigl(m(a+b)+c\bigr)+c$ なので、すべての $a,b$ で等しくなる条件は $m^2=2m$ かつ $mc=2c$ である。$m=0$ なら $c=0$、$m=2$ なら $c$ は任意である。逆に $f=0$ と $f(x)=2x+c$ が元の式を満たすことは代入で確かめられる($f(x)=2x+c$ では両辺とも $4a+4b+3c$)。
大学数学で見ると $(*)$ で $g(x):=f(x)-f(0)$ とおくと $g(2a)+2g(b)=2g(a+b)$ となり、$b=0$ として $g(2a)=2g(a)$、これを戻すと
$$
g(a+b)=g(a)+g(b)
$$
を得る。これは指数法則の「和の版」(Cauchy の関数方程式)であり、$g$ は加法群 $\mathbb{Z}$ から $\mathbb{Z}$ への準同型である。thm-dexp-uniqueness の証明の段 2 と同じく、整数の上では $g(n)=ng(1)$ と $1$ での値だけで決まり、連続性のような仮定は要らない。問題の本質は、この「$1$ での値で決まる」一次関数を元の式に代入して係数を絞ることにある。
定義域を $\mathbb{R}$ に広げると事情が変わる。$e^x$ と $\log$ を使えば、和の版と積の版は互いに移り合う($g$ が和の版の解なら $e^{g}$ は積の版の正の解であり、その逆も成り立つ)。したがって本記事の結果は和の版に翻訳できる。
$g\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ が連続で、すべての実数 $x,y$ について $g(x+y)=g(x)+g(y)$ を満たすなら、$g(x)=g(1)\,x$ である。連続性を外すと、この結論は成り立たない。
$f(x):=e^{g(x)}$ は連続で、$f(x+y)=e^{g(x)}e^{g(y)}=f(x)f(y)$、$f(1)=e^{g(1)}$ を満たす。thm-dexp-uniqueness と thm-dexp-log-equivalence の 2 により $f(x)=\bigl(e^{g(1)}\bigr)^x=e^{x\log e^{g(1)}}=e^{xg(1)}$ であり、両辺の $\log$ をとって $g(x)=g(1)x$ である。後半は、ex-dexp-hamel の $c(x)$ が $c(x+y)=c(x)+c(y)$、$c(1)=1$ を満たすのに $c(b)=0\ne b$ となることによる(Hamel 基底の存在を認めたうえで)。$\square$
整数上では「$1$ での値」で決まり、有理数上でも決まり(段 3)、実数上では連続性が加わって初めて決まる。数学オリンピックの問題が整数上で解けるのは、この階段の最初の段にいるからである。
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