生成点

同義語:generic point

概要

生成点(generic point)とは、位相空間の既約な閉集合 $Z$ の点 $\xi$ であって、その閉包 $\overline{\{\xi\}}$ が $Z$ 全体に等しいものをいう。$\operatorname{Spec}A$ では素イデアル $\mathfrak{p}$ が $V(\mathfrak{p})$ の生成点であり、スキームの空でない既約閉集合はちょうど 1 つの生成点をもつ(sober)。既約な集合のほとんどすべての点で成り立つ性質は、その性質を満たす点の集合が局所閉集合の有限和(たとえば構成可能集合)なら、生成点での性質として 1 点で判定できる。無限体上の古典的な直線(余有限位相)は既約でも生成点をもたず、Hausdorff 空間では既約閉集合が 1 点だけなので、生成点は Zariski 位相のような空間で意味をもつ。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: スキーム, 既約成分, Zariski位相, アフィン多様体

平面の放物線 $y=x^2$ の上の「特定のどの点でもない点」、すなわち放物線全体を代表する 1 点を考えることができるだろうか。古典的な代数幾何学では、「一般の点で成り立つ性質」を扱うために、20 世紀前半のイタリアの代数幾何学者が「特別な性質をもたない点」として生成点を使った(Vak25 3.6.11 の後の説明)。スキームの理論では、この考えが正確な形をとる。放物線を定める素イデアル $(y-x^2)\subset\mathbb{C}[x,y]$ は $\operatorname{Spec}\mathbb{C}[x,y]$ の 1 点であり、その閉包がちょうど放物線全体になる。このように、閉包が既約な閉集合 $Z$ 全体になる点を $Z$ の生成点(generic point)という。スキームでは空でない既約閉集合がちょうど 1 つの生成点をもち、「$Z$ のほとんどすべての点で成り立つ」性質は「生成点で成り立つ」性質として 1 点に集約される(prop-generic-point-constructible)。

定義

以下、位相空間 $X$ の部分集合には相対位相を入れ、$\overline{S}$ で $S$ の閉包を表す。$X$ が既約であるとは、$X$ が空でなく、2 つの真の閉部分集合の和に書けないことをいう(既約成分 の記事の定義「既約な位相空間」)。

生成点と特殊化

$X$ を位相空間とする。

  1. $Z\subset X$ を既約な閉集合とする。点 $\xi\in Z$ が $Z$ の 生成点(generic point)であるとは、$\overline{\{\xi\}}=Z$ となることをいう。
  2. 点 $x,y\in X$ について、$y\in\overline{\{x\}}$ のとき、$y$ は $x$ の 特殊化(specialization)、$x$ は $y$ の 一般化(generization)であるといい、$x\rightsquigarrow y$ と書く。
  3. $X$ が sober であるとは、$X$ の既約な閉集合がどれもただ 1 つの生成点をもつことをいう。

1 の点 $\xi$ の閉包 $\overline{\{\xi\}}$ はつねに既約な閉集合なので(下の lem-generic-point-closure)、「$\xi$ は $\overline{\{\xi\}}$ の生成点である」と言える。特殊化の言葉では、$\xi$ が $Z$ の生成点であることは「$\xi\in Z$ で、$Z$ のすべての点が $\xi$ の特殊化である」ことと同じである。スキーム の記事の定義「生成点・閉点・有理点」と Zariski位相 の記事の定義「既約な位相空間と生成点」はこの定義の 1 と一致し、分離公理 の記事の定義「Sober 空間」は 3 と一致する(sober 空間の定義は Stacks Tag 004X による)。

1 点の閉包は既約

位相空間 $X$ の点 $x$ について、$\overline{\{x\}}$ は既約な閉集合である。また、関係 $x\rightsquigarrow y$ は反射的かつ推移的である。

$\overline{\{x\}}=F_1\cup F_2$($F_i$ は $\overline{\{x\}}$ の閉集合、したがって $X$ の閉集合)とすると、$x$ はたとえば $F_1$ に属し、$F_1$ は $x$ を含む閉集合なので $\overline{\{x\}}\subset F_1$ である。よって $\overline{\{x\}}=F_1$ であり、空でもないので既約である。反射性は $x\in\overline{\{x\}}$ による。$y\in\overline{\{x\}}$、$z\in\overline{\{y\}}$ なら、$\overline{\{x\}}$ は $y$ を含む閉集合なので $\overline{\{y\}}\subset\overline{\{x\}}$ であり、$z\in\overline{\{x\}}$ である。$\square$

一般の位相空間では、既約な閉集合が生成点をもたないことも(ex-generic-point-cofinite)、2 つ以上もつこともある(ex-generic-point-indiscrete)。生成点が意味をもつのは、Zariski 位相のように閉集合が少なく、Hausdorff でない空間においてである(prop-generic-point-t0)。

例と反例

例

可換環 $A$ のスペクトル $\operatorname{Spec}A$ では、点 $\mathfrak{p}$ の閉包は $V(\mathfrak{p})=\{\mathfrak{q}\mid\mathfrak{q}\supset\mathfrak{p}\}$ である(Zariski位相 の記事の命題「点の閉包と閉点」の 1)。したがって
$$ \mathfrak{p}\rightsquigarrow\mathfrak{q}\iff\mathfrak{p}\subset\mathfrak{q} $$
であり、素イデアル $\mathfrak{p}$ は既約閉集合 $V(\mathfrak{p})$ の生成点である。特殊化は素イデアルを大きくする向きに進み、閉点(極大イデアル)で止まる。

アフィン直線と整数環のスペクトル

体 $k$ 上のアフィン直線 $\mathbb{A}^1_k=\operatorname{Spec}k[x]$ の点は、零イデアル $(0)$ と、モニックな既約多項式 $p$ による閉点 $(p)$ である。$\overline{\{(0)\}}=V(0)=\mathbb{A}^1_k$ なので $(0)$ は $\mathbb{A}^1_k$ の生成点であり、すべての閉点は $(0)$ の特殊化である。同じく $\operatorname{Spec}\mathbb{Z}$ の生成点は $(0)$ で、閉点 $(p)$($p$ は素数)はその特殊化である。生成点の剰余体は $k(x)$、$\mathbb{Q}$ であり、それぞれの空間の関数体・分数体になっている。

平面の中の放物線

$X=\mathbb{A}^2_{\mathbb{C}}=\operatorname{Spec}\mathbb{C}[x,y]$ とし、$\eta:=(y-x^2)$ とおく。$y-x^2$ は既約なので $\eta$ は素イデアルであり、$\overline{\{\eta\}}=V(y-x^2)$ は放物線である。$V(y-x^2)$ の閉点は $(x-a,y-a^2)$($a\in\mathbb{C}$)で、たとえば $(2,4)$ に当たる $(x-2,y-4)$ は $\eta$ の特殊化である($y-x^2=(y-4)-(x-2)(x+2)\in(x-2,y-4)$)。$\eta$ 自身は $\mathbb{A}^2_{\mathbb{C}}$ の生成点 $(0)$ の特殊化であり
$$ (0)\rightsquigarrow(y-x^2)\rightsquigarrow(x-2,y-4) $$
という特殊化の列ができる。これは既約閉集合の列 $\mathbb{A}^2\supsetneq V(y-x^2)\supsetneq\{(2,4)\}$ に対応する(Vak25 3.6.10、演習 3.6.M)。

離散付値環のスペクトルと既約成分の生成点

離散付値環 $A$ のスペクトルは、生成点 $(0)$ と閉点 $\mathfrak{m}$ の 2 点からなり、開集合は $\emptyset$、$\{(0)\}$、全体の 3 つである(開部分スキーム の記事の例「離散付値環の生成点」)。生成点が 1 点だけで開集合になる例であり、位相空間としては Sierpiński空間 である(Sierpiński空間 の記事の例「離散付値環のスペクトル」)。
既約でない空間では、既約成分ごとに生成点がある。$\operatorname{Spec}k[x,y]/(xy)$ の既約成分は 2 本の座標軸 $V(x)$、$V(y)$ で、その生成点は素イデアル $(x)$、$(y)$ である。一般にスキームの既約成分は、自分以外の点の特殊化にならない点(極大な点)とちょうど対応し、アフィン開集合 $\operatorname{Spec}A$ の中では $A$ の極小素イデアルに当たる(既約成分 の記事の命題「スキームの既約成分と生成点」)。

反例

生成点がただ 1 つ存在することは、位相空間の性質(sober)であり、どの空間でも成り立つわけではない。

外す性質反例成り立たなくなること
生成点の存在無限集合の余有限位相(無限体上の古典的な直線 $k$)既約閉集合は生成点をもつ
$T_0$2 点の密着空間既約閉集合の生成点は一意

逆に Hausdorff 空間では既約閉集合は 1 点だけなので、生成点はその点自身で、特殊化は自明になる(prop-generic-point-t0 の 2)。

反例:余有限位相

無限集合 $X$ に余有限位相を入れる。$X$ は既約である(既約成分 の記事の例「無限集合の余有限位相」)。一方、1 点集合は閉集合なので、どの点 $x$ についても $\overline{\{x\}}=\{x\}\neq X$ であり、$X$ は生成点をもたない。$X$ は $T_1$(したがって $T_0$)だが sober でない。無限体 $k$ に古典的な Zariski 位相を入れた直線 $k$ はこの空間である(余有限位相 の記事の例「無限体上の直線の Zariski 位相」)。つまり古典的な零点集合は、既約でも生成点をもたない。$\mathbb{A}^1_k=\operatorname{Spec}k[x]$($k$ 代数閉)は、この空間に生成点 $(0)$ を 1 点付け加えたものである(点の対応は アフィン多様体 の記事の命題「古典的な零点集合と多項式写像」、閉点全体が余有限位相の $k$ と同相であることは 代数多様体 の記事の定理「アフィン多様体の閉点と零点集合の点」の 2 で $\mathfrak p=0$、$n=1$ とした場合)。満たす性質は「既約な閉集合」、満たさない性質は「生成点をもつ」である。

反例:2 点の密着空間

2 点集合 $X=\{a,b\}$ に密着位相(開集合は $\emptyset$ と $X$ だけ)を入れる。$X$ は既約で、$\overline{\{a\}}=\overline{\{b\}}=X$ なので、$a$ も $b$ も $X$ の生成点である。$X$ は $T_0$ でなく(どちらか一方だけを含む開集合がない)、生成点の一意性が破れる。満たす性質は「既約閉集合が生成点をもつ」、満たさない性質は「生成点がただ 1 つ」である。

性質

一意性と分離公理

生成点の一意性と $T_0$

$X$ を位相空間とする。

  1. $X$ が $T_0$ 空間(相異なる 2 点に対し、一方だけを含む開集合がある)であることと、写像 $x\mapsto\overline{\{x\}}$ が単射であることは同値である。とくに $T_0$ 空間では、既約閉集合の生成点は高々 1 つである。
  2. $X$ が Hausdorff空間 なら、$X$ の既約な部分集合は 1 点集合だけである。したがって既約閉集合は $\{x\}$ の形で、その生成点は $x$ 自身である。

1:$x\neq y$ について、一方だけを含む開集合があることと、一方だけを含む閉集合(その補集合)があることは同値である。$y\notin\overline{\{x\}}$ なら閉集合 $\overline{\{x\}}$ は $x$ だけを含み、$x\notin\overline{\{y\}}$ なら $\overline{\{y\}}$ は $y$ だけを含む。逆に閉集合 $F$ が $x$ を含み $y$ を含まなければ $\overline{\{x\}}\subset F$ なので $y\notin\overline{\{x\}}$ である。よって「$x,y$ を区別する開集合がある」ことは「$\overline{\{x\}}\neq\overline{\{y\}}$」と同値であり、前半が従う。2 つの生成点 $\xi,\xi'$ は $\overline{\{\xi\}}=\overline{\{\xi'\}}$ を満たすので、単射性から $\xi=\xi'$ である。
2:既約な部分集合 $Y$ が相異なる 2 点 $x,y$ を含むとする。Hausdorff なので $x\in U$、$y\in V$、$U\cap V=\emptyset$ となる開集合 $U,V$ がある。$Y\cap U$ と $Y\cap V$ は $Y$ の空でない開集合で交わらないが、既約な空間の空でない 2 つの開集合は交わる(既約成分 の記事の補題「既約性の言い換え」の 1)ので矛盾である。$\square$

2 により、通常の位相の $\mathbb{R}^n$ や $\mathbb{C}^n$ では生成点の考えは何も新しいことを言わない。生成点は、Hausdorff でない位相、とくに Zariski 位相のための概念である。

スキームは sober である

スキームの点と既約閉集合

スキーム $X$ の空でない既約閉集合 $Z$ は、生成点をただ 1 つもつ。したがって $x\mapsto\overline{\{x\}}$ は、$X$ の点の全体から空でない既約閉集合の全体への全単射であり、$X$ は sober である。

これは スキーム の記事の命題「既約閉集合は生成点をただ 1 つもつ」であり(Stacks Tag 01IS)、筋だけ述べる。存在:$Z$ と交わるアフィン開集合 $U\cong\operatorname{Spec}A$ をとる。$Z\cap U$ は $Z$ の空でない開集合なので既約で $Z$ で稠密であり、$U$ の既約閉集合なので $Z\cap U=V(\mathfrak{p})\cap U$ となる素イデアル $\mathfrak{p}$ がある(Zariski位相 の記事の命題「既約閉集合と素イデアルの対応」の 2)。点 $\mathfrak{p}$ の $X$ での閉包は $Z\cap U$ の閉包 $Z$ に等しい。一意性:$\overline{\{\xi\}}=\overline{\{\xi'\}}$ とし、$\xi$ を含むアフィン開集合 $U$ をとる。$\xi\in\overline{\{\xi'\}}$ なので $\xi$ の近傍 $U$ は $\xi'$ を含み、$U$ の中で 2 点の閉包は等しい。$\operatorname{Spec}A$ は $T_0$ なので(同記事の命題「点の閉包と閉点」の 3)、$\xi=\xi'$ である。$\square$

既約スキームの生成点

既約スキームの生成点と剰余体

$X$ をスキームとする。

  1. $X$ が既約で、$\eta$ をその生成点とする。$\eta$ は $X$ の空でないすべての開集合 $U$ に属し、$U$ の生成点でもある。$U\cong\operatorname{Spec}A$ がアフィンなら、$\eta$ は $A$ のただ 1 つの極小素イデアル $\sqrt{0}$ に対応する。
  2. $X$ の点 $x$ について、閉集合 $Z:=\overline{\{x\}}$ に被約誘導構造を入れた閉部分スキームは整であり、その生成点は $x$、関数体は $x$ の剰余体 $\kappa(x)$ に等しい。

1:$\eta\notin U$ なら $\eta$ は閉集合 $X\setminus U$ に属し、$X=\overline{\{\eta\}}\subset X\setminus U$ となって $U=\emptyset$ に反する。$U$ での $\{\eta\}$ の閉包は $\overline{\{\eta\}}\cap U=U$ なので、$\eta$ は $U$ の生成点である。$U\cong\operatorname{Spec}A$ は既約なので $\sqrt{0}$ は素イデアルであり(Zariski位相 の記事の命題「既約閉集合と素イデアルの対応」の 3)、$V(\sqrt{0})=U$ だから点 $\sqrt{0}$ は $U$ の生成点である。生成点の一意性(prop-generic-point-scheme)により $\eta=\sqrt{0}$ である。$\sqrt{0}$ はすべての素イデアルに含まれるので、ただ 1 つの極小素イデアルである。
2:$x$ を含むアフィン開集合 $U\cong\operatorname{Spec}A$ をとり、$x$ に対応する素イデアルを $\mathfrak{p}$ とする。$Z\cap U=V(\mathfrak{p})$ であり、被約誘導構造は $U$ の上で $\operatorname{Spec}A/\mathfrak{p}$ である(Stacks Tag 01J3)。$Z$ は lem-generic-point-closure により既約で、被約なので整である(整スキーム の記事の定理「整であることと被約かつ既約であること」)。$x$ は $\overline{\{x\}}=Z$ なので $Z$ の生成点である。$Z$ の関数体は生成点での局所環であり(整スキーム の記事の命題「生成点の局所環と切断の埋め込み」の 2)、
$$ \mathcal{O}_{Z,x}=(A/\mathfrak{p})_{\mathfrak{p}}=\operatorname{Frac}(A/\mathfrak{p})=A_{\mathfrak{p}}/\mathfrak{p}A_{\mathfrak{p}}=\kappa(x) $$
である(局所化と商は交換する)。$\square$

1 により、既約なスキームでは生成点は「どの空でない開集合にも入る点」であり、どんなに小さい空でない開集合に制限しても生成点は失われない。2 により、点 $x$ の剰余体 $\kappa(x)$ は「$x$ を生成点とする既約閉集合 $\overline{\{x\}}$ の関数体」と読める。たとえば $\mathbb{A}^2_{\mathbb{C}}$ の点 $(y-x^2)$ の剰余体は放物線の関数体 $\mathbb{C}(x)$ である($\mathbb{C}[x,y]/(y-x^2)\cong\mathbb{C}[x]$)。$k$ 上の代数多様体 $X$ の生成点 $\eta$ の剰余体は関数体 $k(X)$ であり、その超越次数は $\dim X$ に等しい(関数体 の記事の定理「次元と超越次数」)。とくに $\dim X\ge1$ なら $\eta$ は閉点でない。

支配的な射

連続写像 $f\colon X\to Y$ の像が $Y$ で稠密なとき、$f$ は 支配的(dominant)であるという(スキームの射については Stacks Tag 01RJ)。

生成点の像と支配的な射

$f\colon X\to Y$ を位相空間の連続写像とし、$X$ は既約で生成点 $\xi$ をもつとする。

  1. $\overline{f(X)}=\overline{\{f(\xi)\}}$ であり、これは $Y$ の既約閉集合で、$f(\xi)$ はその生成点である。
  2. $Y$ が既約で、ただ 1 つの生成点 $\eta$ をもつとする(たとえば $Y$ が既約なスキーム)。$f$ が支配的であることと $f(\xi)=\eta$ であることは同値である。

1:$f$ は連続なので $f(\overline{\{\xi\}})\subset\overline{\{f(\xi)\}}$ であり、$f(X)=f(\overline{\{\xi\}})\subset\overline{\{f(\xi)\}}$ である。逆に $f(\xi)\in f(X)$ なので $\overline{\{f(\xi)\}}\subset\overline{f(X)}$ である。よって $\overline{f(X)}=\overline{\{f(\xi)\}}$ であり、lem-generic-point-closure によりこれは既約閉集合で、$f(\xi)$ はその生成点である。
2:1 により、$f$ が支配的であること、すなわち $\overline{f(X)}=Y$ は、$\overline{\{f(\xi)\}}=Y$、すなわち $f(\xi)$ が $Y$ の生成点であることと同値である。生成点はただ 1 つなので、これは $f(\xi)=\eta$ と同値である。$\square$

放物線のパラメータ表示と生成点の包含

$k$ 代数の準同型 $\varphi\colon k[x,y]\to k[t]$、$x\mapsto t$、$y\mapsto t^2$ が定める射 $f\colon\mathbb{A}^1_k\to\mathbb{A}^2_k$ を考える。$\mathbb{A}^1_k$ の生成点 $(0)$ の像は $\varphi^{-1}(0)=\ker\varphi=(y-x^2)$ で、これは放物線の生成点である。1 により $f$ の像の閉包は放物線 $V(y-x^2)$ で、$\mathbb{A}^2_k$ の生成点 $(0)$ に写る点はないので、$f$ は支配的でない。一方、$f$ を放物線への射 $\mathbb{A}^1_k\to V(y-x^2)$ とみれば支配的である(実際には同型である。アフィン多様体 の記事の例「放物線と双曲線」)。
包含 $k[t]\to k(t)$ が定める射 $\operatorname{Spec}k(t)\to\mathbb{A}^1_k$ は、1 点を生成点 $(0)$ に写すので支配的である。しかし像 $\{(0)\}$ は開集合でないので開埋め込みではない(開埋め込み の記事の例「反例:生成点の包含」)。

「ほとんどすべての点」と生成点

既約な空間 $Z$ の空でない開集合は $Z$ で稠密である。そこで、$Z$ の空でない開集合のすべての点で成り立つ性質を「$Z$ のほとんどすべての点で成り立つ」とみなす。次の命題は、この性質が生成点 1 点で判定できることを示す。部分集合 $L\subset X$ が 局所閉 であるとは、開集合 $U$ と閉集合 $F$ によって $L=U\cap F$ と書けることをいう。このとき $L=U\cap\overline{L}$ である($\overline{L}\subset F$ なので $U\cap\overline{L}\subset L$)から、$L$ は $\overline{L}$ の開集合である。

生成点を含む集合と稠密な開集合

$X$ を位相空間、$Z\subset X$ を既約な閉集合、$\xi$ を $Z$ の生成点とし、$E\subset X$ を有限個の局所閉集合の和とする。次は同値である。

  1. $E\cap Z$ は $Z$ の空でない開集合を含む。
  2. $E\cap Z$ は $Z$ で稠密である。
  3. $\xi\in E$ である。

1 ⇒ 2:既約な空間の空でない開集合は稠密である(既約成分 の記事の補題「既約性の言い換え」の 1 の後の注意)。
2 ⇒ 1:$E=L_1\cup\cdots\cup L_r$($L_i$ は局所閉)とすると、$E\cap Z=\bigcup_i(L_i\cap Z)$ で、各 $L_i\cap Z$ は $Z$ の局所閉集合である。有限個の和の閉包は閉包の和なので $Z=\bigcup_i\overline{L_i\cap Z}$ であり、$Z$ は既約だから、ある $i$ で $\overline{L_i\cap Z}=Z$ となる。局所閉集合はその閉包の中で開なので、$L_i\cap Z$ は $Z$ の開集合で、$Z\ne\emptyset$ の稠密な部分集合だから空でない。
1 ⇒ 3:$U\subset E\cap Z$ を $Z$ の空でない開集合とする。$\xi\notin U$ なら $\xi$ は $Z$ の閉集合 $Z\setminus U$ に属し、$Z=\overline{\{\xi\}}\subset Z\setminus U$ となって $U=\emptyset$ に反する。よって $\xi\in U\subset E$ である。
3 ⇒ 2:$\xi\in E\cap Z$ なので $\overline{E\cap Z}\supset\overline{\{\xi\}}=Z$ である。$\square$

この命題は Stacks Tag 005K(Topology, Lemma 15.15)にある。スキームでは、開集合・閉集合や、Noether スキームの間の有限型の射の像(Chevalleyの定理 により構成可能集合、すなわち局所閉集合の有限和)がこの形の集合なので、「$Z$ の一般の点で成り立つ」ことを生成点での性質として扱える。

生成点で消える関数

$X=\operatorname{Spec}A$ を既約なアフィンスキーム、$\eta=\sqrt{0}$ をその生成点とし、$f\in A$ とする。$f$ の $\eta$ での値 $f(\eta)$(剰余体 $\kappa(\eta)$ での像)が $0$ であることは $f\in\sqrt{0}$、すなわち $f$ が冪零であることと同値であり、これは $f$ がすべての点 $x$ で $f(x)=0$ となることと同値である($\sqrt{0}$ はすべての素イデアルの共通部分)。命題の言葉では、$E:=V(f)$(閉集合)について、$\eta\in E$ ⟺ $E=X$ である。対偶をとると、$f$ が冪零でなければ、$f$ は空でない開集合 $D(f)$ のすべての点で $0$ でない(Vak25 3.6.11 の後の説明)。

反例:局所閉集合の有限和でない集合

$k$ を代数閉体、$Z=\mathbb{A}^1_k$、$\xi=(0)$ とし、$E$ を閉点全体の集合とする。空でない開集合はどれも生成点を含むので(prop-generic-point-irreducible-scheme の 1)、$E$ は $Z$ の空でない開集合を含まない。一方、$E$ は稠密である(閉点を含む閉集合は、無限個の閉点を含むなら $V(0)=Z$ 全体)。したがって条件 2 は満たすが条件 1・3 は満たさない。$E$ は局所閉集合の有限和でない(そうであれば命題により 1 と 2 が同値になる)。命題の仮定「$E$ は有限個の局所閉集合の和」は外せない。

注意

  • 「一般の点」(general point)は生成点と別の言葉である。「$X$ の一般の点が性質 $P$ をもつ」とは、ある稠密な開集合のすべての点が $P$ をもつことをいう(Vak25 3.6.11 の後の説明)。prop-generic-point-constructible により、$P$ を満たす点の集合が局所閉集合の有限和なら、これは「生成点が $P$ をもつ」と同じになる。なお、generic point を「一般点」と訳す文献・記事もある。
  • 古典的な代数多様体の点は閉点にあたり、スキームとしての多様体は、古典的な点に既約閉集合ごとの生成点を加えたものである(ex-generic-point-cofinite)。生成点を加えることで空間が sober になり、既約閉集合を 1 点で扱える。
  • 既約閉集合を生成点で代表する考えは、Weil因子(素因子の生成点での局所環による位数)、Cartier因子、Chow環(既約閉部分集合の形式和)の定義の土台になっている。
  • 特殊化の関係 $\rightsquigarrow$ は前順序であり(lem-generic-point-closure)、$T_0$ 空間では半順序になる(prop-generic-point-t0 の 1)。$\operatorname{Spec}A$ では素イデアルの包含関係そのものである。

関連項目

参考文献

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