Fourier級数の収束

同義語:フーリエ級数の収束convergence of Fourier series

概要

Fourier級数の収束(convergence of Fourier series)とは、積分可能な周期関数の Fourier 級数の部分和が各点で関数の値に近づくかどうかという問題である。部分和は Dirichlet 核との積分で表され、収束するかどうかは点の近くの値だけで決まる(局所化原理)。点の近くの積分条件(Dini の判定法)や有界変動性(Dirichlet–Jordan の判定法)があれば収束する。一方、連続性だけでは足りず、部分和が一様に有界なまま 1 点で発散する連続関数や、円周上の任意の可算集合のちょうど各点で発散する連続関数が構成できる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Fourier級数, Lebesgue積分, 有界変動関数, Fejérの定理

Fourier級数の収束(convergence of Fourier series)は、積分可能な周期関数 $f$ の Fourier 級数の部分和 $s_N(f;x)=\sum_{|n|\le N}\hat f(n)e^{inx}$ が、点 $x$ で $f(x)$(跳びの点では左右の極限の平均)に収束するかどうかという問題である。部分和は $f$ と Dirichlet 核の畳み込みで書けるので、収束の判定は Dirichlet 核の積分の評価に帰着する。
答えは関数の性質によって大きく変わる。点の近くで Hölder 連続、あるいはもっと一般に点の近くの積分条件(Dini の判定法)や、点の近くで有界変動であること(Dirichlet–Jordan の判定法)があれば収束する。収束するかどうかは点の近くの値だけで決まる(局所化原理)。一方で、連続であるだけでは足りない。この記事では、部分和が一様に有界なのに 1 点だけで発散する連続関数を具体的に作り、さらに円周上の任意の可算集合をちょうど発散点の集合にする連続関数を作る。
Fourier級数 は Riemann 積分可能な関数について区分的に $C^1$ 級の場合の収束と、反例の概略を扱う。この記事はその続きにあたる。Fourier 級数でない三角級数は 三角級数 で、積分可能な関数の Fourier 級数がすべての点で発散する例は Kolmogorovの発散するFourier級数 で扱う。

設定

$\mathbb T:=\mathbb R/2\pi\mathbb Z$ とし、$2\pi$ 周期の関数を $\mathbb T$ 上の関数と同一視する。$[-\pi,\pi]$ 上 Lebesgue 積分可能な $2\pi$ 周期の可測関数の全体を $L^1(\mathbb T)$、$\|f\|_1:=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}|f|$ とし、$f\in L^1(\mathbb T)$ の Fourier 係数 $\hat f(n)$ と部分和 $s_N(f;x)$ を Fejérの定理 の「定義」の節と同じ式で定める。Dirichlet 核を
$$ D_N(t):=\sum_{n=-N}^{N}e^{int}=1+2\sum_{n=1}^{N}\cos nt=\frac{\sin(N+\frac12)t}{\sin\frac t2}\qquad(t\notin2\pi\mathbb Z) $$
とする(Fourier級数 の命題「Dirichlet 核」)。$D_N$ は偶関数で、$\int_0^\pi D_N=\pi$ である。

部分和の積分表示

$f\in L^1(\mathbb T)$、$x\in\mathbb R$、$c\in\mathbb C$ について
$$ s_N(f;x)-c=\frac1{2\pi}\int_0^{\pi}\varphi_{x,c}(t)D_N(t)\,dt,\qquad\varphi_{x,c}(t):=f(x+t)+f(x-t)-2c $$
である。

係数の式を部分和に入れて有限和と積分を入れ替え、$y=x-t$ と置いて周期性を使うと $s_N(f;x)=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}f(x-t)D_N(t)\,dt$ である(Fejérの定理 の補題「Fejér 核の性質」の 1 の証明と同じ計算)。$[-\pi,0]$ の部分で $t$ を $-t$ に置き換え、$D_N$ が偶関数であることと $\frac1{2\pi}\int_0^\pi2c\,D_N=c$ を使えばよい。$\square$

部分和は周期 $2\pi$ の三角多項式なので、すべての $N$ で $s_N(f;\pi)=s_N(f;-\pi)$ である。したがって、閉区間 $[-\pi,\pi]$ の上で見ると、Fourier 級数が $\pi$ で発散して $-\pi$ で収束することはありえない。発散する点の集合は、$\pm\pi$ を同じ点とみる円周 $\mathbb T$ の上で考えるのが自然であり、この記事でもそうする。

局所化原理と Dini の判定法

Riemann–Lebesgue の補題

$u\in L^1(-\pi,\pi)$ なら、実数 $\beta$ について $\lambda\to\infty$($\lambda\in\beta+\mathbb Z$)のとき $\int_{-\pi}^{\pi}u(t)\sin\lambda t\,dt\to0$ である。とくに $\int_{-\pi}^{\pi}u(t)\sin(N+\tfrac12)t\,dt\to0$($N\to\infty$)である。

$\lambda=\beta+N$ と書くと $\int u(t)\sin\lambda t\,dt=\frac1{2i}\bigl(\int u(t)e^{i\beta t}e^{iNt}dt-\int u(t)e^{-i\beta t}e^{-iNt}dt\bigr)$ であり、$u(t)e^{\pm i\beta t}$ を周期的に延ばした関数は $L^1(\mathbb T)$ に属する。右辺の 2 項はその Fourier 係数の $2\pi$ 倍なので、三角級数 の補題「Riemann–Lebesgue の補題」から $0$ に近づく。$\square$

局所化原理

$f,g\in L^1(\mathbb T)$ が点 $x$ を含む開区間の上でほとんど至るところ一致すれば、$s_N(f;x)-s_N(g;x)\to0$ である。したがって、$x$ で $f$ の Fourier 級数が収束するかどうかと、収束するときの和は、$x$ の近くの $f$ の値だけで決まる。

$h:=f-g$ とし、$(x-\delta,x+\delta)$ でほとんど至るところ $h=0$ とする($0<\delta<\pi$)。lem-cfs-kernel($c=0$)で、$\varphi(t):=h(x+t)+h(x-t)$ は $(0,\delta)$ でほとんど至るところ $0$ である。$[\delta,\pi]$ では $\sin\frac t2\ge\sin\frac\delta2>0$ なので、$[\delta,\pi]$ 上で $\varphi(t)/\sin\frac t2$、それ以外で $0$ とした関数 $u$ は $L^1(-\pi,\pi)$ に属し、$s_N(h;x)=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}u(t)\sin(N+\frac12)t\,dt\to0$(lem-cfs-riemann-lebesgue)である。$\square$

Dini の判定法

$f\in L^1(\mathbb T)$、$x\in\mathbb R$、$c\in\mathbb C$ とし、ある $\delta\in(0,\pi]$ について
$$ \int_0^{\delta}\frac{|f(x+t)+f(x-t)-2c|}t\,dt<\infty $$
とする。このとき $s_N(f;x)\to c$ である。

$0\le t\le\pi$ で $\sin\frac t2\ge\frac t\pi$ である($\sin$ は $[0,\frac\pi2]$ で上に凸)。仮定と、$[\delta,\pi]$ では $\frac1{\sin(t/2)}$ が有界であることから、$u(t):=\varphi_{x,c}(t)/\sin\frac t2$($0< t\le\pi$)、$u:=0$($-\pi\le t\le0$)は $L^1(-\pi,\pi)$ に属する。lem-cfs-kernel から $s_N(f;x)-c=\frac1{2\pi}\int_{-\pi}^{\pi}u(t)\sin(N+\frac12)t\,dt$ であり、lem-cfs-riemann-lebesgue から $0$ に近づく。$\square$

Dini の判定法が使える場合
  1. $f$ が $x$ で Hölder 連続、すなわち $C\ge0$、$0<\alpha\le1$ があって $|f(x\pm t)-f(x)|\le Ct^\alpha$($0< t<\delta$)なら、$c=f(x)$ で被積分関数は $2Ct^{\alpha-1}$ 以下であり、$s_N(f;x)\to f(x)$ である。$\alpha=1$ で片側の極限を使った形が Fourier級数 の定理「各点収束の定理(Dirichlet)」である。
  2. $f$ が $x$ で跳びをもち、左右で Hölder 連続なら、$c=\frac12(f(x+0)+f(x-0))$ として同じ評価が成り立つ。
  3. Dini の条件は連続性を含意しない。$f$ が $x$ の近くで奇関数的、すなわち $f(x+t)=-f(x-t)$ なら $c=0$ で被積分関数は $0$ であり、$x$ での値や連続性によらず $s_N(f;x)\to0$ である。

有界変動関数:Dirichlet–Jordan の判定法

Dini の判定法は $|f(x\pm t)-f(x\pm0)|$ が $0$ に近づく速さを要求する。速さの代わりに「振動しすぎないこと」を要求するのが次の判定法である。鍵は、Dirichlet 核の絶対値の積分 $\int_0^\pi|D_N|$ は $N\to\infty$ で発散する(一様有界性原理 の補題「部分和の汎関数のノルム」)のに、原始関数は $N$ によらず有界なことである。

Dirichlet 核の原始関数の有界性

すべての $N\ge0$ と $0\le a\le b\le\pi$ について
$$ \Bigl|\int_0^bD_N(t)\,dt\Bigr|\le3\pi,\qquad\Bigl|\int_a^bD_N(t)\,dt\Bigr|\le6\pi $$
である。

要点:$\alpha:=N+\frac12$、$\beta:=1/\alpha\le2$ とおく。$[0,\beta]$ では $|D_N|\le\pi\alpha$ なので積分は $\pi$ 以下である。$[\beta,b]$ では $D_N(t)=\sin(\alpha t)\,w(t)$、$w(t):=1/\sin\frac t2$ は正で単調減少なので、部分積分で $\frac2\alpha w(\beta)\le2\pi$ 以下に抑えられる。

証明を開く

2 つ目の不等式は 1 つ目から従うので 1 つ目を示す。$0< t\le\beta$ では $|\sin\alpha t|\le\alpha t$ と $\sin\frac t2\ge\frac t\pi$ から $|D_N(t)|\le\pi\alpha$ なので、$\bigl|\int_0^{\min(b,\beta)}D_N\bigr|\le\pi\alpha\beta=\pi$ である。$b\le\beta$ なら終わる。$b>\beta$ とする。$Q(t):=\int_\beta^t\sin\alpha s\,ds=\frac{\cos\alpha\beta-\cos\alpha t}\alpha$ は $|Q|\le\frac2\alpha$ を満たし、$w$ は $[\beta,\pi]$ で $C^1$ 級、正、単調減少である($\beta\le2<\pi$)。部分積分から

$$\int_\beta^b\sin(\alpha t)w(t)\,dt=Q(b)w(b)-\int_\beta^bQ(t)w'(t)\,dt$$

であり、$|w'|=-w'$ なので絶対値は $\frac2\alpha\bigl(w(b)+w(\beta)-w(b)\bigr)=\frac2\alpha w(\beta)$ 以下である。$\sin\frac\beta2\ge\frac\beta\pi$ から $\frac2\alpha w(\beta)\le\frac{2\beta\pi}{\beta}=2\pi$ である。合わせて $3\pi$ 以下である。$\square$

単調な重みとの積分

$0<\eta\le\pi$ とし、$\psi\colon(0,\eta]\to[0,\infty)$ を単調増加な関数とする。このときすべての $N$ について
$$ \Bigl|\int_0^{\eta}\psi(t)D_N(t)\,dt\Bigr|\le6\pi\,\psi(\eta) $$
である。

要点:$\psi(t)=\int_0^{\psi(\eta)}1_{\{\psi(t)>\lambda\}}\,d\lambda$ と書いて積分の順序を入れ替える。$\psi$ が単調増加なので、$\{t\mid\psi(t)>\lambda\}$ は右端が $\eta$ の区間であり、その上の $D_N$ の積分は lem-cfs-primitive-bound で $6\pi$ 以下である。

証明を開く

$0< t\le\eta$ では $0\le\psi(t)\le\psi(\eta)$ なので $\psi(t)=\int_0^{\psi(\eta)}1_{\{\psi(t)>\lambda\}}d\lambda$ である。$\psi$ は単調なので Borel 可測であり、集合 $\{(t,\lambda)\mid\psi(t)>\lambda\}$ は可測である。被積分関数 $1_{\{\psi(t)>\lambda\}}D_N(t)$ は有界($|D_N|\le2N+1$)で、積分する範囲 $(0,\eta]\times[0,\psi(\eta)]$ は有限の測度をもつので、Fubiniの定理 から

$$\int_0^\eta\psi(t)D_N(t)\,dt=\int_0^{\psi(\eta)}\Bigl(\int_{U_\lambda}D_N(t)\,dt\Bigr)d\lambda,\qquad U_\lambda:=\{t\in(0,\eta]\mid\psi(t)>\lambda\}$$

である。$0\le\lambda<\psi(\eta)$ なら $\eta\in U_\lambda$ であり、$t\in U_\lambda$、$t< t'\le\eta$ なら $\psi(t')\ge\psi(t)>\lambda$ なので $t'\in U_\lambda$ である。よって $U_\lambda$ はある $s_\lambda\in[0,\eta]$ について $(s_\lambda,\eta]$ か $[s_\lambda,\eta]$ であり、lem-cfs-primitive-bound から $\bigl|\int_{U_\lambda}D_N\bigr|\le6\pi$ である。これを $\lambda$ について積分すればよい。$\square$

Dirichlet–Jordan の判定法

$f\in L^1(\mathbb T)$ とし、ある $\delta\in(0,\pi]$ について $f$ の実部と虚部が $[x-\delta,x+\delta]$ 上で有界変動であるとする($f$ の値を零集合の上で変えてそうできる場合を含む。そのときは変えた後の関数を改めて $f$ と書く。係数と部分和は変わらない)。このとき片側の極限 $f(x\pm0)$ が存在し、
$$ s_N(f;x)\to\frac{f(x+0)+f(x-0)}2 $$
である。とくに、$f$ が $x$ で連続なら $s_N(f;x)\to f(x)$ である。

要点:Jordan 分解で $f$ を単調関数の組合せに書くと、$\varphi_{x,c}$ は $(0,\delta]$ 上で、$0$ に近づく単調増加な $0$ 以上の関数 8 個の、絶対値 $1$ の係数による和になる。$x$ の近くの寄与は lem-cfs-monotone で $N$ によらず小さく、残りは Riemann–Lebesgue の補題で $0$ に近づく。

証明を開く

単調関数への分解.有界変動関数 の命題「基本性質」の 5(Jordan 分解)から、$[x-\delta,x+\delta]$ 上の単調増加関数 $g_1,g_2,g_3,g_4$ で $f=(g_1-g_2)+i(g_3-g_4)$ となるものがある。単調関数は各点で片側の極限をもつので $f(x\pm0)$ が存在する。$c:=\frac12(f(x+0)+f(x-0))$ とすると、$0< t\le\delta$ で

$$\varphi_{x,c}(t)=\sum_{j=1}^{4}\kappa_j\Bigl(\bigl(g_j(x+t)-g_j(x+0)\bigr)-\bigl(g_j(x-0)-g_j(x-t)\bigr)\Bigr),\qquad\kappa_j\in\{1,-1,i,-i\}$$

である。$g_j(x+t)-g_j(x+0)$ と $g_j(x-0)-g_j(x-t)$ はどちらも $t$ について単調増加で $0$ 以上、$t\to+0$ で $0$ に近づく。これら 8 個の関数を $\psi_1,\dots,\psi_8$ と書く。

近くの寄与.$\varepsilon>0$ に対し、$\sum_k\psi_k(\eta)<\varepsilon$ となる $\eta\in(0,\delta]$ をとる。lem-cfs-monotone から、すべての $N$ で $\bigl|\int_0^\eta\varphi_{x,c}D_N\bigr|\le6\pi\varepsilon$ である。

遠くの寄与.$[\eta,\pi]$ では $\sin\frac t2\ge\sin\frac\eta2>0$ なので、thm-cfs-localization の証明と同じく $\int_\eta^\pi\varphi_{x,c}D_N\to0$ である。

lem-cfs-kernel と合わせて $\limsup_N|s_N(f;x)-c|\le\frac{6\pi\varepsilon}{2\pi}=3\varepsilon$ であり、$\varepsilon$ は任意である。$\square$

絶対連続な関数の各点収束

$2\pi$ 周期の連続関数 $f$ が、ある $v\in L^1(\mathbb T)$ によってすべての $a< b$ で $f(b)-f(a)=\int_a^bv$ と書けるなら(すなわち $f$ が各有界閉区間で 絶対連続関数 なら)、$f$ の Fourier 級数はすべての点で $f(x)$ に収束する。連続で、各有界閉区間で有界変動な周期関数についても同じである。

$a=x_0<\dots< x_k=b$ について $\sum_i|f(x_i)-f(x_{i-1})|\le\int_a^b|v|$ なので、$f$ は各有界閉区間で有界変動である。$f$ は連続なので $f(x\pm0)=f(x)$ であり、thm-cfs-dirichlet-jordan から従う。$\square$

区分的に $C^1$ 級の関数は各点の近くで有界変動なので、Fourier級数 の系「区分的に $C^1$ 級の関数の各点収束」も thm-cfs-dirichlet-jordan に含まれる。Dini の判定法と Dirichlet–Jordan の判定法は互いに他を含まない(ex-cfs-dini の 3 は有界変動を要求しない。逆に、$0<|t|<\frac12$ で $f(x+t)=\frac1{\log(1/|t|)}$、$f(x)=0$ となる関数は $x$ の近くで $t$ について区分的に単調なので有界変動だが、$\int_0^{1/2}\frac{2}{t\log(1/t)}dt=\infty$ なので Dini の条件を $c=0$ で満たさず、ほかの $c$ では $\varphi_{x,c}(t)\to-2c\ne0$ なので積分が発散する)。

連続関数の Fourier 級数の発散

連続であるだけでは各点収束に足りない。部分和の汎関数 $f\mapsto s_N(f;0)$ のノルム(Lebesgue 定数)が $N\to\infty$ で発散することから、一様有界性原理により、$0$ で部分和が有界でない連続関数が存在する(一様有界性原理 の定理「$0$ で Fourier 級数が発散する連続関数の存在」)。ここでは別の形の例を具体的に作る。部分和はすべての点で一様に有界のまま、点 $0$ だけで振動して収束しない連続関数である。

部品となる三角多項式

$H_m:=\sum_{k=1}^{m}\frac1k$、$A_m(x):=\sum_{k=1}^{m}\frac{\sin kx}k$ とし、$x\notin2\pi\mathbb Z$ について $C(x):=\frac1{|\sin(x/2)|}$ とおく。$H_m\to\infty$ である(三角級数 の定理「積分可能な関数の Fourier 級数でない正弦級数」の証明と同じく、$2^k< n\le2^{k+1}$ の項の和が $\frac12$ 以上)。

調和級数型の正弦和の有界性
  1. $x\notin2\pi\mathbb Z$、$1\le p\le q$ について $\Bigl|\displaystyle\sum_{k=p}^{q}\frac{e^{\pm ikx}}k\Bigr|\le\frac{C(x)}p$ である。
  2. すべての $m\ge1$ と $x\in\mathbb R$ について $|A_m(x)|\le1+\pi$ である。

1:$p\le r$ について $\bigl|\sum_{k=p}^{r}e^{\pm ikx}\bigr|\le\frac2{|e^{ix}-1|}=C(x)$ なので、Abelの級数変形法とその応用 の補題「Abel の不等式」を単調減少列 $\frac1k$ に使えばよい。2:$A_m$ は奇関数で $2\pi$ 周期なので $0< x\le\pi$ でよい($x=0$ では $0$)。$k\le1/x$ の項は $|\sin kx|/k\le x$ を満たし、その個数は $1/x$ 以下なので和は $1$ 以下である。残りの項は $p:=\lfloor1/x\rfloor+1$ から始まり($px>1$)、1 と $C(x)\le\frac\pi x$ から和は $\frac\pi{xp}<\pi$ 以下である。$\square$

$m\ge1$、整数 $L>2m$ について、実数値の三角多項式
$$ p_{m,L}(x):=\frac{\cos(Lx)\sin(mx)A_m(x)}{H_m} $$
を考える。積を和に直す公式を 2 回使うと
$$ p_{m,L}(x)=\frac1{4H_m}\sum_{k=1}^{m}\frac1k\Bigl(\cos(L+m-k)x+\cos(L-m+k)x-\cos(L+m+k)x-\cos(L-m-k)x\Bigr) $$
であり、現れる周波数はすべて $[L-2m,L+2m]$ に入る正の整数である。

部品の部分和

$p:=p_{m,L}$ について次が成り立つ。

  1. $\|p\|_\infty\le\dfrac{1+\pi}{H_m}$、$p(0)=0$ である。
  2. すべての $N\ge0$ と $x$ で $|s_N(p;x)|\le1$ である。
  3. $s_{L+m-1}(p;0)=\frac14$ であり、$N\ge L+2m$ なら $s_N(p;\cdot)=p$ である。
  4. $x\notin2\pi\mathbb Z$ なら、すべての $N$ で $|s_N(p;x)|\le\dfrac{C(x)}{H_m}$ である。

要点:正の周波数 $\nu$ の項 $\cos\nu x=\frac12(e^{i\nu x}+e^{-i\nu x})$ は、$s_N$ で $\nu\le N$ のときだけ残る。したがって $s_N(p;\cdot)$ は上の展開で周波数が $N$ 以下の項だけを残したものである。

証明を開く

1:lem-cfs-harmonic の 2 と $|\cos|,|\sin|\le1$ による。$\sin0=0$ から $p(0)=0$。

2:残る項の係数の絶対値の和は、全部の項の和 $\frac1{4H_m}\cdot4\sum_{k\le m}\frac1k=1$ 以下である。

3:$N=L+m-1$ では、1 番目の族 $L+m-k$、2 番目の族 $L-m+k\le L$、4 番目の族 $L-m-k$ はすべての $k$ で $N$ 以下であり、3 番目の族 $L+m+k$ はすべて $N$ を超える。$x=0$ では余弦はすべて $1$ なので $s_N(p;0)=\frac{H_m+H_m-H_m}{4H_m}=\frac14$ である。$N\ge L+2m$ ならすべての項が残る。

4:各族で周波数は $k$ について単調なので、残る $k$ は整数の区間(空でもよい)をなす。たとえば 1 番目の族の残る部分の和は $\operatorname{Re}\bigl(e^{i(L+m)x}\sum_{k=p}^{q}\frac{e^{-ikx}}k\bigr)$ の形であり、lem-cfs-harmonic の 1 から絶対値は $C(x)$ 以下である。ほかの族も同様で、4 つの族と係数 $\frac1{4H_m}$ を合わせて $\frac{C(x)}{H_m}$ 以下である。$\square$

1 点だけで発散する連続関数

1 点だけで発散し部分和が一様に有界な連続関数

実数値の連続な $2\pi$ 周期関数 $g$ と定数 $M$ で、次を満たすものがある。

  1. すべての $N$ と $x$ で $|s_N(g;x)|\le M$ である。
  2. $g(0)=0$ であり、$s_N(g;0)$ は $0$ に収束する部分列と $\frac14$ に収束する部分列をもつ。とくに $x\in2\pi\mathbb Z$ で Fourier 級数は収束しない。
  3. $x\notin2\pi\mathbb Z$ では $s_N(g;x)\to g(x)$ である。

要点:周波数の帯が重ならないように高さ $H_{m_j}\ge2^{j+2}$ の部品 $p_j$ を並べて足す。部分和はいつも「完成した部品の和」と「途中の部品 1 つの部分和」の和になる。

証明を開く

構成.各 $j\ge1$ について $H_{m_j}\ge2^{j+2}$ となる $m_j$ をとる。$B_0:=0$、$L_j:=B_{j-1}+2m_j+1$、$B_j:=L_j+2m_j$ とおき、$p_j:=p_{m_j,L_j}$、$g:=\sum_{j\ge1}p_j$ とする。$L_j>2m_j$ であり、$p_j$ の周波数は $[L_j-2m_j,L_j+2m_j]=[B_{j-1}+1,B_j]$ に入るので、帯は互いに重ならず、隣り合っている。prop-cfs-block の 1 から $\|p_j\|_\infty\le(1+\pi)2^{-j-2}$ なので、級数は一様に収束し、$g$ は実数値の連続関数である。各係数 $\hat g(n)$ は $\|\cdot\|_\infty$ について連続なので $\hat g(n)=\sum_j\hat p_j(n)$ である。

部分和の形.$B_{j-1}\le N< B_j$ なら、$s_N(g;\cdot)=\sum_{i< j}p_i+s_N(p_j;\cdot)$ である($i< j$ の部品は全部残り、$i>j$ の部品はまったく残らない)。

1:$|s_N(g;x)|\le\sum_i\|p_i\|_\infty+1\le\frac{1+\pi}4+1=:M$(prop-cfs-block の 2)。

2:$N=B_j$ では $s_N(g;0)=\sum_{i\le j}p_i(0)=0$ である。$N=L_j+m_j-1$($B_{j-1}\le N< B_j$)では prop-cfs-block の 3 から $s_N(g;0)=0+\frac14$ である。$g(0)=\sum p_j(0)=0$ である。

3:$x\notin2\pi\mathbb Z$、$B_{j-1}\le N< B_j$ なら $|s_N(g;x)-g(x)|\le|s_N(p_j;x)|+\sum_{i\ge j}|p_i(x)|\le\frac{C(x)}{2^{j+2}}+(1+\pi)2^{-j-1}$ であり(prop-cfs-block の 4)、$N\to\infty$ で $j\to\infty$ なので $0$ に近づく。$\square$

この $g$ は点 $0$ で連続だが、thm-cfs-dirichlet-jordan により $0$ の近くで有界変動でなく、thm-cfs-dini の条件もどの $c$ についても満たさない。発散は部分和の非有界性によるのではなく、有界なままの振動によるものである。

可算集合をちょうど発散集合にする

可算集合の上だけで発散する連続関数

$D\subset\mathbb T$ を可算集合(有限・空を含む)とする。実数値の連続な $2\pi$ 周期関数 $u$ で、Fourier 級数が $D$ の各点で収束せず、$D$ に属さない各点 $x$ で $u(x)$ に収束するものがある。さらに $\sup_{N,x}|s_N(u;x)|<\infty$ にできる。

要点:thm-cfs-single の $g$ を $D$ の各点 $\theta_j$ に平行移動し、和が有限な正の重み $\lambda_j$ で足す。部分和が一様に有界なので、無限和と極限の入れ替えを尾の評価で正当化できる。

証明を開く

$D=\emptyset$ なら $u=0$ でよい。$D$ を相異なる点の列 $\theta_1,\theta_2,\dots$(有限でもよい)に並べ、$\lambda_j:=2^{-j}$ とし、$u(x):=\sum_j\lambda_jg(x-\theta_j)$ とおく。一様収束するので $u$ は実数値の連続関数であり、係数を比べると $s_N(u;x)=\sum_j\lambda_js_N(g;x-\theta_j)$ である(平行移動 $g(\cdot-\theta)$ の係数は $\hat g(n)e^{-in\theta}$)。thm-cfs-single の 1 から、すべての $N,x,J$ で

$$\Bigl|\sum_{j>J}\lambda_js_N(g;x-\theta_j)\Bigr|\le M\sum_{j>J}\lambda_j\qquad(\ast)$$

であり、とくに $|s_N(u;x)|\le M$ である。

$x\notin D$.各 $j$ で $x-\theta_j\notin2\pi\mathbb Z$ なので $s_N(g;x-\theta_j)\to g(x-\theta_j)$ である。$\varepsilon>0$ に対し $(M+\|g\|_\infty)\sum_{j>J}\lambda_j<\varepsilon$ となる $J$ をとる。$(\ast)$ と $\bigl|\sum_{j>J}\lambda_jg(x-\theta_j)\bigr|\le\|g\|_\infty\sum_{j>J}\lambda_j$ から $|s_N(u;x)-u(x)|\le\sum_{j\le J}\lambda_j|s_N(g;x-\theta_j)-g(x-\theta_j)|+\varepsilon$ であり、右辺の有限和は $0$ に近づくので $\limsup_N|s_N(u;x)-u(x)|\le\varepsilon$ である。

$x=\theta_r\in D$.$R_N:=\sum_{j\ne r}\lambda_js_N(g;\theta_r-\theta_j)$ とおく。各項は収束し、$(\ast)$ から尾は $N$ によらず小さいので、$R_N$ はある値 $R$ に収束する。一方 $s_N(u;\theta_r)=R_N+\lambda_rs_N(g;0)$ であり、thm-cfs-single の 2 の 2 つの部分列に沿って $R$ と $R+\frac{\lambda_r}4$ に近づく。よって $\theta_r$ で収束しない。$\square$

とくに $D$ を有理数の $2\pi$ 倍の全体のように稠密にとれば、Fourier 級数が稠密な集合の上で発散し、その補集合の上では収束する連続関数が得られる。発散する点の集合はさらに大きくできる:連続関数では、Fourier 級数がほとんどすべての点で収束することを Carlesonの定理 が保証するが、積分可能な関数ではすべての点で発散しうる(Kolmogorovの発散するFourier級数)。

反例

この記事の判定法の仮定を 1 つずつ外すと、次のように結論が崩れる。

外す条件反例成り立たなくなること
thm-cfs-dirichlet-jordan の「$x$ の近くで有界変動」($x$ で連続に弱める)thm-cfs-single の $g$、$x=0$点 $0$ での収束
cor-cfs-ac の「各有界閉区間で絶対連続」(連続に弱める)thm-cfs-countable の $u$($D$ は有理数の $2\pi$ 倍の全体)稠密な集合の各点での収束
thm-cfs-dini と thm-cfs-dirichlet-jordan の「点の近くでの条件」($f\in L^1(\mathbb T)$ だけにする)Kolmogorovの発散するFourier級数 の関数すべての点での収束(部分和が有界でなくなる)

1・2 行目はこの記事の定理で確かめた。2 行目の $u$ は有界変動でない点を稠密にもつ。3 行目は Kolmogorovの発散するFourier級数 の主定理による。

補足

  • 1 点で発散する連続関数の存在を一様有界性原理から導く筋は、Axl20 §11A の Exercise 11(p. 354)に問題として示されている。可算集合の上で発散する連続関数の構成の考え方は Fejér と Lebesgue にさかのぼる(GO03 第 6 章 Example 27、p. 73)。
  • 部分和の代わりに Fejér 平均 $\sigma_N(f;x)$ をとると、連続関数では一様に、積分可能な関数ではほとんどすべての点で収束する(Fejérの定理)。部分和が収束する点では、その極限は Fejér 平均の極限と一致する(同じ記事の系「部分和が収束するときの極限」)。したがって収束の判定法が必要なのは「収束するかどうか」であって「どこに収束するか」ではない。
  • 積分可能な関数には Fourier 級数がほとんどすべての点で発散するものがあり(Kolmogorov、1923 年)、2 乗可積分な関数(とくに連続関数)の Fourier 級数はほとんどすべての点で収束する(Carleson、1966 年)。どちらも Axl20 §11A の末尾(p. 352)で紹介されている。

関連項目

参考文献

[1]
Bernard R. Gelbaum and John M. H. Olmsted, Counterexamples in Analysis, Dover Publications, 2003, 第 6 章 Example 27(可算集合の上で発散する連続関数、p. 73)
[2]
Sheldon Axler, Measure, Integration & Real Analysis, Graduate Texts in Mathematics 282, Springer, 2020, §11A:末尾の Kolmogorov と Carleson の結果の紹介(p. 352)、Exercise 11(連続関数の Fourier 級数が発散する点、p. 354)。頁は著者公開版

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