単調作用素

同義語:monotone operator

概要

単調作用素(monotone operator)とは、実 Banach 空間 $E$ の部分集合からその双対 $E^*$ への写像 $A$ で、定義域のすべての $u,v$ について $\langle Au-Av,u-v\rangle\ge0$ を満たすものであり、1 変数の単調増加関数を無限次元の非線形写像に広げた概念である。凸関数の微分や正値な線形作用素が典型例である。中心となる Minty–Browder の定理は、反射的な $E$ の上で連続かつ単調で強圧的な $A\colon E\to E^*$ が全射であり、狭義単調なら全単射であることを主張し、Hilbert 空間では連続な単調作用素 $A$ について $I+A$ が全単射になる。非線形方程式と変分不等式の解の存在を、凸性と弱コンパクト性から導く基本の道具である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Banach空間, 反射的Banach空間, 弱位相(関数解析), Hilbert空間

実数直線上の連続な単調増加関数 $g$ は、$g(x)\to+\infty$($x\to+\infty$)かつ $g(x)\to-\infty$($x\to-\infty$)なら、中間値の定理によってすべての実数を値にとる。さらに狭義単調なら、方程式 $g(x)=y$ の解はただ 1 つである。この「増加する」という性質を、Banach 空間 $E$ からその双対 $E^*$ への非線形な写像に移したものが 単調作用素 である。条件は、すべての $u,v$ について $\langle Au-Av,u-v\rangle\ge0$ が成り立つことで、1 変数なら $(g(u)-g(v))(u-v)\ge0$、すなわち $g$ が単調増加であることにあたる。
単調作用素は、凸関数の微分(勾配)、正値な線形作用素、それらの和として自然に現れる。その中心にある Minty–Browder の定理 は、反射的な Banach 空間の上の連続で単調な作用素 $A$ が、無限遠で十分速く「外向き」なら(強圧的なら)、非線形方程式 $Au=f$ がすべての $f\in E^*$ について解けることを主張する。これは、線形の場合の Lax–Milgramの定理 を非線形の方程式に広げたものにあたる。
この記事では、単調作用素を定義して例を挙げ、Minty の補題(閉凸集合の上の「弱い形の」変分不等式の解の存在)を、弱コンパクト性と有限次元の補題から証明する。そこから連続性を使って変分不等式の解を得て、主定理として Minty–Browder の定理を証明する。系として Hilbert 空間の連続な単調作用素 $A$ について $I+A$ が全単射になること(Minty の定理)を導き、非線形の積分方程式に応用する。最後に、仮定を外した反例を表にまとめる。

定義

以下、$E$ を実数体上の Banach空間、$E^*$ をその連続双対とし、$f\in E^*$ の $v\in E$ での値を $\langle f,v\rangle$、$E$ のノルムを $\|\cdot\|$、$E^*$ の双対ノルムを $\|\cdot\|_*$ と書く。

単調作用素

$D(A)\subset E$ を空でない部分集合とし、$A\colon D(A)\to E^*$ を写像とする(線形とは限らない)。$D(A)$ を $A$ の 定義域 という。

  1. すべての $u,v\in D(A)$ について
    $$ \langle Au-Av,u-v\rangle\ge0 $$
    が成り立つとき、$A$ は 単調(monotone)であるという。
  2. さらに $u\neq v$ なら $\langle Au-Av,u-v\rangle>0$ が成り立つとき、$A$ は 狭義単調(strictly monotone)であるという。
  3. $D(A)=E\neq\{0\}$ で
    $$ \lim_{\|v\|\to\infty}\frac{\langle Av,v\rangle}{\|v\|}=+\infty $$
    のとき、$A$ は 強圧的(coercive)であるという。すなわち、任意の $M>0$ に対してある $r>0$ があり、$\|v\|>r$ なら $\langle Av,v\rangle\ge M\|v\|$ となることである。
  4. $D(A)=E$ で、$A$ が $E$ のノルムから $E^*$ の双対ノルムについて連続なとき、$A$ は 連続 であるという。

単調性は定義域の各 2 点だけで決まる条件であり、$D(A)$ の凸性も、$A$ の連続性も含まない。
$E=H$ が実 Hilbert 空間のときは、Hilbert空間 の定理「Rieszの表現定理」で $H^*$ を $H$ と同一視し、$A\colon D(A)\to H$ について条件を内積で $(Au-Av,u-v)\ge0$ と書く。$A$ が線形で $D(A)$ が部分空間なら、単調性は $(Av,v)\ge0$($v\in D(A)$)と同値であり、Hille–吉田の定理 の定義「単調作用素・極大単調作用素」の単調性と一致する。なお、単調写像 は半順序集合のあいだの順序を保つ写像のことで、この記事の単調作用素とは別の概念である。

例

1 変数の場合

$E=\mathbb{R}$ では $E^*=\mathbb{R}$ であり、$A\colon D(A)\to\mathbb{R}$ が単調であることは $(A(u)-A(v))(u-v)\ge0$、すなわち $u< v$ なら $A(u)\le A(v)$ であることと同値である。よって単調作用素は $D(A)$ 上の単調増加関数(単調関数)にほかならず、狭義単調作用素は狭義単調増加関数である。

正値な線形作用素

$B\colon E\to E^*$ を有界線形作用素とすると、$\langle Bu-Bv,u-v\rangle=\langle B(u-v),u-v\rangle$ なので、$B$ が単調であることは、すべての $w\in E$ で $\langle Bw,w\rangle\ge0$ であることと同値である。ある $\alpha>0$ で $\langle Bw,w\rangle\ge\alpha\|w\|^2$ なら $\langle Bv,v\rangle/\|v\|\ge\alpha\|v\|$ なので $B$ は強圧的で、狭義単調でもある。たとえば $H=L^2(0,1)$ 上の積分作用素 $(Vu)(t)=\int_0^tu(s)\,ds$ は単調である(ex-mo-integral で確かめる)。

凸関数の微分は単調

$\varphi\colon E\to\mathbb{R}$ を 凸関数 とし、各 $u\in E$ で Gâteaux 微分可能であるとする。すなわち、ある $\varphi'(u)\in E^*$ があり、すべての $w\in E$ について $\lim_{t\to0}\bigl(\varphi(u+tw)-\varphi(u)\bigr)/t=\langle\varphi'(u),w\rangle$ であるとする。このとき $\varphi'\colon E\to E^*$ は単調である。さらに $\varphi$ が狭義凸なら $\varphi'$ は狭義単調である。

$u,v\in E$、$0< t\le1$ とすると、凸性から $\varphi(u+t(v-u))\le(1-t)\varphi(u)+t\varphi(v)$ なので
$$ \frac{\varphi(u+t(v-u))-\varphi(u)}{t}\le\varphi(v)-\varphi(u) $$
であり、$t\downarrow0$ として $\langle\varphi'(u),v-u\rangle\le\varphi(v)-\varphi(u)$ を得る。$u$ と $v$ を入れ替えた不等式と足すと $\langle\varphi'(u)-\varphi'(v),v-u\rangle\le0$、すなわち単調性が従う。
狭義凸で $u\neq v$ のとき、$m=(u+v)/2$ に上の不等式を当てると $\langle\varphi'(u),m-u\rangle\le\varphi(m)-\varphi(u)<\frac12\bigl(\varphi(v)-\varphi(u)\bigr)$ であり、2 倍して $\langle\varphi'(u),v-u\rangle<\varphi(v)-\varphi(u)$ となる。入れ替えて足せば狭義の不等号が得られる。$\square$

$\varphi$ が微分可能でない凸関数でも、劣勾配を対応させる集合値の写像は同じ意味で単調である(劣微分 の命題「劣微分の基本性質」の 3)。

$p$ 乗の勾配

$1< p< \infty$ とし、$E=\mathbb{R}^n$(Euclid 内積)で $A(x)=|x|^{p-2}x$($A(0)=0$)とおく。これは狭義凸関数 $\varphi(x)=|x|^p/p$ の勾配なので、prop-mo-convex により狭義単調である。$A$ は連続で、$\langle A(x),x\rangle/|x|=|x|^{p-1}\to\infty$ なので強圧的でもある。$p=2$ なら恒等写像である。

有限個の点についての補題

Minty–Browder の定理の証明は、まず有限個の点で成り立つ不等式を有限次元の議論で作り、それを弱コンパクト性で無限個の点に広げる、という 2 段で進む。最初の段は次の補題である。$\mathbb{R}^n$ の標準基底を $e_1,\dots,e_n$ とし、
$$ B_n:=\Bigl\{\lambda=(\lambda_1,\dots,\lambda_n)\in\mathbb{R}^n\ \Big|\ \lambda_i\ge0,\ \sum_{i=1}^n\lambda_i=1\Bigr\} $$
とおく。

有限個の点の凸結合

$A\colon D(A)\to E^*$ を単調作用素とし、$v_1,\dots,v_n\in D(A)$ とする。このとき、ある $\lambda\in B_n$ があって、$u=\sum_{i=1}^n\lambda_iv_i$ について
$$ \langle Av_j,v_j-u\rangle\ge0\qquad(j=1,\dots,n) $$
が成り立つ。

$\lambda,\mu\in\mathbb{R}^n$ について $F(\lambda,\mu):=\sum_{i,j=1}^n\lambda_i\mu_j\langle Av_j,v_i-v_j\rangle$ とおく。$F$ は双線形である。$\lambda\in B_n$ なら $\sum_i\lambda_i=1$ なので、$u=\sum_i\lambda_iv_i$ について
$$ F(\lambda,e_j)=\sum_{i=1}^n\lambda_i\langle Av_j,v_i-v_j\rangle=\langle Av_j,u-v_j\rangle $$
である。よって示すべきことは、ある $\lambda\in B_n$ ですべての $j$ について $F(\lambda,e_j)\le0$ となることである。
段 1(対角での符号).$\lambda\in B_n$ なら $F(\lambda,\lambda)\le0$ である。実際、和の添字 $i,j$ を入れ替えた式と足すと
$$ 2F(\lambda,\lambda)=\sum_{i,j}\lambda_i\lambda_j\bigl(\langle Av_j,v_i-v_j\rangle+\langle Av_i,v_j-v_i\rangle\bigr)=-\sum_{i,j}\lambda_i\lambda_j\langle Av_i-Av_j,v_i-v_j\rangle $$
であり、$\lambda_i\lambda_j\ge0$ と単調性から右辺は $0$ 以下である。
段 2(背理法).$c(\lambda):=(F(\lambda,e_1),\dots,F(\lambda,e_n))$ とおき、どの $\lambda\in B_n$ でも $c(\lambda)$ のある成分が正であると仮定する。$c$ は線形なので、$C:=c(B_n)$ はコンパクトな 凸集合 である。$y\in\mathbb{R}^n$ について $y^+:=(\max(y_1,0),\dots,\max(y_n,0))$、$g(y):=|y^+|^2$ とおくと、$g$ は $C^1$ 級で勾配は $2y^+$ である。$g$ は $C$ 上で最小値をとり、その点 $c^*\in C$ で $g(c^*)>0$ である(仮定により $c^*$ のある成分が正)。$\mu:=(c^*)^+$ とおくと $\mu\ge0$、$\mu\neq0$ である。$c\in C$、$0< t\le1$ なら $c^*+t(c-c^*)\in C$ なので $g(c^*+t(c-c^*))\ge g(c^*)$ であり、$t\downarrow0$ で微分して $2\mu\cdot(c-c^*)\ge0$ を得る。$\mu\cdot c^*=\sum_j(c^*_j)^+c^*_j=g(c^*)>0$ なので、すべての $c\in C$ で $\mu\cdot c>0$ である。
$s:=\sum_j\mu_j>0$、$\hat\lambda:=\mu/s\in B_n$ とおくと、すべての $\lambda\in B_n$ で $F(\lambda,\hat\lambda)=\sum_j\hat\lambda_jF(\lambda,e_j)=\hat\lambda\cdot c(\lambda)>0$ である。$\lambda=\hat\lambda$ とすると段 1 に矛盾する。よって、ある $\lambda\in B_n$ で $c(\lambda)$ のすべての成分が $0$ 以下である。$\square$

段 1 で $\lambda$ の成分が非負であることは欠かせない。$E=\mathbb{R}$、$A(x)=x$、$v_1=0$、$v_2=1$ なら $F(\lambda,\lambda)=-\lambda_1\lambda_2$ であり、$\lambda=(1,-1)$ では $F(\lambda,\lambda)=1>0$ となる。

Minty の補題

Mintyの補題

$E$ を 反射的Banach空間、$A\colon D(A)\to E^*$ を単調作用素、$K\subset E$ を空でない有界な閉凸集合とする。このとき、ある $u\in K$ があって
$$ \langle Av,v-u\rangle\ge0\qquad(v\in D(A)\cap K) $$
が成り立つ。

$v\in D(A)\cap K$ について $K_v:=\{u\in K\mid\langle Av,v-u\rangle\ge0\}$ とおく。示すべきことは $\bigcap_{v\in D(A)\cap K}K_v\neq\emptyset$ である($D(A)\cap K=\emptyset$ なら共通部分は $K$ で、空でない)。
$K$ に弱位相(弱位相(関数解析) の定義「弱位相」)を入れる。反射的Banach空間 の系「有界閉凸集合の弱コンパクト性」により $K$ は弱コンパクトである。$u\mapsto\langle Av,u\rangle$ は弱位相で連続な汎関数なので、$K_v=K\cap\{u\mid\langle Av,u\rangle\le\langle Av,v\rangle\}$ は $K$ の弱閉部分集合である。
共通部分が空だと仮定する。補集合 $K\setminus K_v$ は $K$ の弱開被覆をなすので、弱コンパクト性から有限個の $v_1,\dots,v_n\in D(A)\cap K$ で $K_{v_1}\cap\dots\cap K_{v_n}=\emptyset$ となる($K\neq\emptyset$ なので $n\ge1$)。一方、lem-mo-finite によりある $\lambda\in B_n$ があって、$u=\sum_i\lambda_iv_i$ はすべての $j$ で $\langle Av_j,v_j-u\rangle\ge0$ を満たす。$K$ は凸なので $u\in K$ であり、$u\in K_{v_1}\cap\dots\cap K_{v_n}$ となって矛盾する。$\square$

結論の不等式の向きは変えられない。$E=\mathbb{R}$、$K=[-1,1]$、$A(x)=x$ について、すべての $v\in K$ で $\langle Av,u-v\rangle\ge0$ となる $u$ はない。$v=1$ から $u\ge1$、$v=-1$ から $u\le-1$ が要るからである。

変分不等式の解の存在

Minty の補題の不等式では、$A$ が解 $u$ ではなく動く点 $v$ で評価されている。$A$ が連続なら、これを $u$ で評価する形に直せる。

連続な単調作用素の変分不等式

$E$ を反射的 Banach 空間、$A\colon E\to E^*$ を連続な単調作用素とし、$K\subset E$ を閉凸集合とする。

  1. $u\in K$ について、次の 2 条件は同値である。(a) すべての $w\in K$ で $\langle Au,w-u\rangle\ge0$。(b) すべての $w\in K$ で $\langle Aw,w-u\rangle\ge0$。
  2. $K$ が空でなく有界なら、1 の条件を満たす $u\in K$ が存在する。
  3. $0\in K$ で、$Z:=\{v\in K\mid\langle Av,v\rangle\le0\}$ が有界なら、1 の条件を満たす $u\in K$ が存在する。

1:(a) ⇒ (b) は単調性から $\langle Aw,w-u\rangle\ge\langle Au,w-u\rangle\ge0$ である。(b) ⇒ (a):$w\in K$、$0< t\le1$ とし、$v_t:=u+t(w-u)\in K$ に (b) を当てると $t\langle Av_t,w-u\rangle\ge0$、$t$ で割って $\langle Av_t,w-u\rangle\ge0$ である。$t\downarrow0$ で $v_t\to u$ なので、連続性から $\langle Av_t,w-u\rangle\to\langle Au,w-u\rangle$(差は $\|Av_t-Au\|_*\|w-u\|$ 以下)となり、(a) を得る。
2:thm-mo-minty-lemma で $D(A)=E$ とすると (b) を満たす $u\in K$ があり、1 により (a) も満たす。
3:$Z$ は $0$ を含み有界なので、ある $r\ge0$ で $Z\subset\{\|v\|\le r\}$ となる。$R>r$ をとり $K_R:=K\cap\{\|v\|\le R\}$ とおくと、$K_R$ は $0$ を含む有界閉凸集合なので、2 によりある $u\in K_R$ がすべての $w\in K_R$ で $\langle Au,w-u\rangle\ge0$ を満たす。$w=0$ とすると $\langle Au,u\rangle\le0$ なので $u\in Z$、よって $\|u\|\le r< R$ である。$v\in K$ を任意にとると、十分小さい $t>0$ で $\|u+t(v-u)\|\le\|u\|+t\|v-u\|< R$ なので $u+t(v-u)\in K_R$ であり、$t\langle Au,v-u\rangle\ge0$ を得る。$\square$

1 の (a) を $A$ と $K$ についての 変分不等式、(b) をその Minty 形 という。(b) の解の集合は閉凸集合の共通部分なので閉凸である。$A$ が強圧的な有界双線形形式から来る線形作用素で $E$ が Hilbert 空間の場合は、Stampacchiaの定理 が解の一意性まで与える。

Minty–Browder の定理

Minty–Browderの定理

$E$ を反射的 Banach 空間、$A\colon E\to E^*$ を連続で単調かつ強圧的な作用素とする。

  1. $A$ は全射である。すなわち、すべての $f\in E^*$ に対して $Au=f$ を満たす $u\in E$ が存在する。
  2. $A$ が狭義単調なら、その $u$ はただ 1 つであり、$A$ は全単射である。

1:$f\in E^*$ を固定し、$G(v):=Av-f$ とおく。$G\colon E\to E^*$ は連続で単調である($\langle Gu-Gv,u-v\rangle=\langle Au-Av,u-v\rangle$)。$v\neq0$ なら
$$ \frac{\langle Gv,v\rangle}{\|v\|}\ge\frac{\langle Av,v\rangle}{\|v\|}-\|f\|_* $$
であり、強圧性から右辺は $\|v\|\to\infty$ で $+\infty$ に発散する。よってある $r>0$ があり、$\|v\|>r$ なら $\langle Gv,v\rangle>0$ となる。したがって $Z_G:=\{v\in E\mid\langle Gv,v\rangle\le0\}$ は半径 $r$ の閉球に含まれ、有界である。
$K=E$($0$ を含む閉凸集合)として prop-mo-vi の 3 を $G$ に当てると、ある $u\in E$ がすべての $v\in E$ で $\langle Gu,v-u\rangle\ge0$ を満たす。$h\in E$ を任意にとり $v=u+h$、$v=u-h$ を代入すると $\langle Gu,h\rangle\ge0$ と $\langle Gu,h\rangle\le0$ を得るので、$\langle Gu,h\rangle=0$ である。$h$ は任意なので $Gu=0$、すなわち $Au=f$ である。
2:$Au_1=Au_2=f$ なら $\langle Au_1-Au_2,u_1-u_2\rangle=0$ であり、狭義単調性から $u_1=u_2$ である。$\square$

証明で強圧性は $Z_G$ の有界性だけに、反射性は有界閉凸集合の弱コンパクト性だけに、$A$ の連続性は線分に沿った極限(prop-mo-vi の 1)だけに使われている。

Hilbert空間でのMintyの定理

$H$ を実 Hilbert 空間、$A\colon H\to H$ を連続な単調作用素とする。このとき $I+A\colon H\to H$ は全単射であり、逆写像は $|(I+A)^{-1}f_1-(I+A)^{-1}f_2|\le|f_1-f_2|$ を満たす。

$G:=I+A$ は連続で、$(Gu-Gv,u-v)=|u-v|^2+(Au-Av,u-v)\ge|u-v|^2$ なので狭義単調である。$v=0$ との単調性から $(Au,u)\ge(A0,u)\ge-|A0|\,|u|$ なので、$(Gu,u)/|u|\ge|u|-|A0|\to\infty$ であり、$G$ は強圧的である($H=\{0\}$ なら主張は自明)。Hilbert 空間は反射的なので thm-mo-minty-browder により $G$ は全単射である。$Gu_i=f_i$ なら $|u_1-u_2|^2\le(f_1-f_2,u_1-u_2)\le|f_1-f_2|\,|u_1-u_2|$ である。$\square$

$A$ が線形の場合、強圧的な有界双線形形式 $a$ から定まる $A$($a(u,v)=\langle Au,v\rangle$)は連続で単調かつ強圧的なので、thm-mo-minty-browder から実 Hilbert 空間での Lax–Milgramの定理 の存在と一意性が従う。

非線形の積分方程式

$g\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ を単調増加で Lipschitz 連続な関数とする。このとき、任意の $f\in L^2(0,1)$ に対して
$$ u(t)+\int_0^tu(s)\,ds+g(u(t))=f(t)\qquad(\text{a.e. }t\in(0,1)) $$
を満たす $u\in L^2(0,1)$ がただ 1 つ存在する。

証明

$H=L^2(0,1)$ 上で $A(u):=Vu+g\circ u$($Vu(t)=\int_0^tu$)とおき、cor-mo-minty を当てればよい。$U(t):=\int_0^tu$ は絶対連続で $U'=u$ がほとんどいたる所で成り立つので、$(Vu,u)=\int_0^1U(t)U'(t)\,dt=\frac12U(1)^2\ge0$ であり、有界線形な $V$ は単調である(ex-mo-linear)。$g$ の Lipschitz 定数を $L$ とすると $|g(u(t))|\le|g(0)|+L|u(t)|$ なので $g\circ u\in H$ であり、$\|g\circ u-g\circ v\|\le L\|u-v\|$ から $u\mapsto g\circ u$ は連続である。各点で $(g(u(t))-g(v(t)))(u(t)-v(t))\ge0$ なので積分して単調である。和 $A$ は連続で単調なので、$I+A$ は全単射である。

条件を外した反例

いずれも $E=\mathbb{R}$ の例で、各行は thm-mo-minty-browder の仮定を 1 つだけ外している。

外す条件反例成り立たなくなること
$A$ の連続性$A(x)=x+\operatorname{sgn}x$($\operatorname{sgn}0=0$)狭義単調で強圧的だが、$1/2$ は値にならない($x>0$ なら $A(x)>1$、$x< 0$ なら $A(x)< -1$)
強圧性$A(x)=\arctan x$連続で狭義単調だが、値域は $(-\pi/2,\pi/2)$ で全射でない
定義域が $E$ 全体であること$D(A)=[0,\infty)$、$A(x)=x$$D(A)$ 上で連続・狭義単調で $\langle Ax,x\rangle/\lvert x\rvert=\lvert x\rvert\to\infty$ だが、$-1$ は値にならない
2 の狭義単調性$\lvert x\rvert\le1$ で $A(x)=0$、$x>1$ で $x-1$、$x< -1$ で $x+1$連続・単調・強圧的で全射だが、$Au=0$ の解は $[-1,1]$ 全体で一意でない

単調性を外した反例は $E=\mathbb{R}$ では作れない。連続で強圧的な $A\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ は $x\to\pm\infty$ で $A(x)\to\pm\infty$ となるので、中間値の定理によって全射になるからである。

補足

出典

Bre11 は単調作用素を Problem 31(pp. 483–484)で定義し、Minty–Browder の定理を Theorem 5.16(p. 145)として主張だけ述べ、証明を Browder と J.-L. Lions の文献および同 Problem 31 に委ねている。同 Problem 31 は、Minty の補題・prop-mo-vi の 2・3・thm-mo-minty-browder の 1・cor-mo-minty の全単射性を、問題として順に挙げている。この記事の証明はその筋に従うが、lem-mo-finite では同書のヒント(有限次元のミニマックス定理)の代わりに、凸集合上の距離の最小化を使った。

関連項目

参考文献

[1]
Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Springer, 2011, Theorem 5.16(p. 145、Minty–Browder の定理の主張)、Problem 31(pp. 483–484、単調作用素の定義と Minty–Browder の定理への問題)

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