Varignonの定理

同義語:ヴァリニョンの定理Varignonの平行四辺形Varignon's theorem

概要

Varignonの定理(Varignon's theorem)とは、四角形 $ABCD$ の 4 つの辺の中点を順に結んだ四角形 $EFGH$(Varignon の平行四辺形)についての定理である。$EFGH$ の辺は対角線 $AC$、$BD$ に平行で長さはその半分なので、対角線が平行でなければ平行四辺形になる。符号つき面積について $EFGH$ は $ABCD$ のちょうど半分で、凸四角形・凹四角形なら面積が半分になる(辺が交差した四角形では、囲まれた部分の面積の和の半分にはならない)。周の長さは対角線の長さの和 $AC+BD$ に等しい。$EFGH$ が長方形になるのは $AC\perp BD$ のとき、ひし形になるのは $AC=BD$ のときに限る。平行四辺形の中心は 4 頂点の平均の点である。4 頂点が同じ平面の上にない空間の四角形でも、中点は平行四辺形をつくる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 中点連結定理, 位置ベクトルと内分点, 靴ひも公式, ベクトルの内積(高校数学)

高校での出発点:4 つの辺の中点を結ぶ

どんな四角形でも、4 つの辺の中点を順に結ぶと平行四辺形になる。このことは 中点連結定理 の例で、中点連結定理を 2 回使って確かめた。この記事では、その平行四辺形について、もう一歩進んだことを調べる。面積はいくつか、周の長さはいくつか、どんな形になるか、そして 4 つの頂点が同じ平面の上にないときはどうなるか。まず座標で計算してみる。

凸四角形の中点を結ぶ

$A(0,0)$、$B(8,0)$、$C(10,6)$、$D(2,8)$ の四角形 $ABCD$ で、辺 $AB$、$BC$、$CD$、$DA$ の中点を $E$、$F$、$G$、$H$ とする。
(1) 中点は座標の平均なので
$$ E(4,0),\quad F\left(\frac{8+10}2,\frac{0+6}2\right)=(9,3),\quad G\left(\frac{10+2}2,\frac{6+8}2\right)=(6,7),\quad H\left(\frac{2+0}2,\frac{8+0}2\right)=(1,4) $$
である。
(2) 辺のベクトルを計算すると
$$ \overrightarrow{EF}=(9-4,\ 3-0)=(5,3),\qquad \overrightarrow{HG}=(6-1,\ 7-4)=(5,3) $$
$$ \overrightarrow{FG}=(6-9,\ 7-3)=(-3,4),\qquad \overrightarrow{EH}=(1-4,\ 4-0)=(-3,4) $$
である。$\overrightarrow{EF}=\overrightarrow{HG}$ なので、向かい合う辺 $EF$ と $HG$ は平行で長さが等しい。よって $EFGH$ は平行四辺形である。
(3) 対角線のベクトルは $\overrightarrow{AC}=(10,6)$、$\overrightarrow{BD}=(2-8,\ 8-0)=(-6,8)$ である。$\overrightarrow{EF}=\dfrac12\overrightarrow{AC}$、$\overrightarrow{FG}=\dfrac12\overrightarrow{BD}$ になっている。平行四辺形の辺は、対角線に平行で、長さが対角線の半分である。

四角形 ABCD の 4 つの辺の中点を順に結ぶと、青で塗った平行四辺形 EFGH ができ、その辺は破線の対角線 AC、BD に平行になる 四角形 ABCD の 4 つの辺の中点を順に結ぶと、青で塗った平行四辺形 EFGH ができ、その辺は破線の対角線 AC、BD に平行になる

面積と周の長さを比べる

ex-vrg-start の四角形で、面積と周の長さを計算する。
(1) 四角形 $ABCD$ の面積を 靴ひも公式 で求める。頂点を $A\to B\to C\to D$ の順に並べて
$$ \frac12\bigl\{(0\cdot0-8\cdot0)+(8\cdot6-10\cdot0)+(10\cdot8-2\cdot6)+(2\cdot0-0\cdot8)\bigr\}=\frac12(0+48+68+0)=58 $$
である。
(2) 平行四辺形 $EFGH$ の面積は、2 辺のベクトル $\overrightarrow{EF}=(5,3)$、$\overrightarrow{EH}=(-3,4)$ から
$$ \bigl\lvert 5\cdot4-3\cdot(-3)\bigr\rvert=20+9=29 $$
である(ベクトル $(a_1,a_2)$、$(b_1,b_2)$ のつくる平行四辺形の面積は $\lvert a_1b_2-a_2b_1\rvert$)。$29=\dfrac12\cdot58$ で、ちょうど半分である。
(3) 平行四辺形 $EFGH$ の周の長さは
$$ 2\,(EF+FG)=2\left(\sqrt{5^2+3^2}+\sqrt{(-3)^2+4^2}\right)=2\sqrt{34}+10 $$
である。一方、対角線の長さは $AC=\sqrt{10^2+6^2}=\sqrt{136}=2\sqrt{34}$、$BD=\sqrt{(-6)^2+8^2}=10$ で、和は $2\sqrt{34}+10$ である。周の長さは 2 本の対角線の長さの和に等しい。

ex-vrg-start-area では、面積がちょうど半分になり、周の長さが対角線の和になった。この記事で答える問いは次の 4 つである。

  1. 面積はいつも半分か。凹んだ四角形や、辺が交差した四角形ではどうか。→ thm-vrg-main、ex-vrg-concave、ex-vrg-crossed
  2. 平行四辺形が長方形やひし形になるのは、どんなときか。→ prop-vrg-shape
  3. 4 つの頂点が同じ平面の上にない四角形でも、平行四辺形になるか。→ rem-vrg-space
  4. 平行四辺形の中心はどこにあるか。→ cor-vrg-center
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    中点連結定理を 2 回使うVarignon の平行四辺形(prop-vrg-para)中点をとる操作は 1 次の式
    靴ひも公式符号つき面積 $S(ABCD)=\frac12\det(\overrightarrow{AC},\overrightarrow{BD})$(lem-vrg-diag)行列式の双線形性
    対角線の内積と長さ長方形・ひし形の判定(prop-vrg-shape)内積で決まる性質
    空間の位置ベクトルねじれた四角形(空間の四角形の中点と四面体)次元によらない 1 次の関係

言葉の準備:四角形と符号つき面積

この記事では、辺が交差した四角形も扱う。そのために言葉をそろえる。

四角形と符号つき面積

平面の 4 点 $A$、$B$、$C$、$D$ で、どの 3 点も一直線上にないものをとる。線分 $AB$、$BC$、$CD$、$DA$ をこの順につないだ閉じた折れ線を 四角形 $ABCD$ といい、4 本の線分を辺、線分 $AC$、$BD$ を対角線という。
(R1) 辺どうしが頂点以外で交わらない四角形を 単純な四角形 という。単純な四角形は、どの内角も $180^\circ$ より小さい 凸四角形 と、$180^\circ$ より大きい内角が 1 つある 凹四角形 に分かれる。
(R2) 向かい合う辺($AB$ と $CD$、または $BC$ と $DA$)が交わる四角形を 交差した四角形 という。
頂点の座標を $A(x_A,y_A)$ などとするとき
$$ S(ABCD)=\frac12\bigl\{(x_Ay_B-x_By_A)+(x_By_C-x_Cy_B)+(x_Cy_D-x_Dy_C)+(x_Dy_A-x_Ay_D)\bigr\} $$
を四角形 $ABCD$ の 符号つき面積 という。平面のベクトル $\vec u=(u_1,u_2)$、$\vec v=(v_1,v_2)$ について $\det(\vec u,\vec v)=u_1v_2-u_2v_1$ と書くと、位置ベクトル $\vec a=\overrightarrow{OA}$ などを使って
$$ S(ABCD)=\frac12\bigl\{\det(\vec a,\vec b)+\det(\vec b,\vec c)+\det(\vec c,\vec d)+\det(\vec d,\vec a)\bigr\} $$
とも書ける。

$\det(\vec u,\vec v)$ は「$\vec u$ と $\vec v$ のつくる平行四辺形の面積に、向きの符号を付けたもの」である。$\vec u$ から $\vec v$ へ反時計回りに $180^\circ$ 未満で回れるとき正、時計回りのとき負になる。この記事で使う性質は次の 3 つで、どれも定義の式を展開すれば確かめられる。

  • 入れかえると符号が変わる:$\det(\vec v,\vec u)=-\det(\vec u,\vec v)$。とくに $\det(\vec u,\vec u)=0$ である。
  • それぞれの成分について 1 次式である:$\det(\vec u+\vec w,\vec v)=\det(\vec u,\vec v)+\det(\vec w,\vec v)$、$\det(k\vec u,\vec v)=k\det(\vec u,\vec v)$。右側の成分についても同じである。
  • $\det(\vec u,\vec v)=0$ となるのは、$\vec u$ と $\vec v$ が平行であるか、どちらかが $\vec 0$ のときに限る。
    単純な四角形では、靴ひも公式 により、$S(ABCD)$ の絶対値が面積で、頂点が反時計回りに並ぶとき正、時計回りに並ぶとき負になる。交差した四角形では、符号つき面積は 2 つの三角形の部分の面積の差になる(ex-vrg-signed の (3))。
符号つき面積の例
  1. ex-vrg-start の四角形は頂点が反時計回りに並んでいて、ex-vrg-start-area の計算から $S(ABCD)=58$ である。
  2. 同じ 4 点を逆の順に並べた四角形 $ADCB$ では、各項の 2 つの点が入れかわるので符号が変わり、$S(ADCB)=-58$ である。
  3. $A(0,0)$、$B(8,0)$、$C(0,6)$、$D(8,6)$ の四角形 $ABCD$ では、辺 $BC$ と辺 $DA$ が点 $(4,3)$ で交わる。蝶ネクタイの形の、交差した四角形である。符号つき面積は
    $$ \frac12\bigl\{(0\cdot0-8\cdot0)+(8\cdot6-0\cdot0)+(0\cdot6-8\cdot6)+(8\cdot0-0\cdot6)\bigr\}=\frac12(0+48-48+0)=0 $$
    である。交点で分けた 2 つの三角形は、どちらも面積 $12$ であるが、一方は反時計回り、もう一方は時計回りにたどられるので、打ち消し合う。
交差した四角形の符号つき面積が 2 つの三角形の差になる理由を開く

辺 $BC$ と辺 $DA$ が点 $X$ で交わるとする。$X$ が線分 $BC$ の上にあるので $\vec x=(1-t)\vec b+t\vec c$($0< t<1$)と書け、$\det(\vec b,\vec x)=t\det(\vec b,\vec c)$、$\det(\vec x,\vec c)=(1-t)\det(\vec b,\vec c)$ だから $\det(\vec b,\vec c)=\det(\vec b,\vec x)+\det(\vec x,\vec c)$ である。辺 $DA$ でも同じく $\det(\vec d,\vec a)=\det(\vec d,\vec x)+\det(\vec x,\vec a)$ である。これを定義の式に代入して並べかえると

$$S(ABCD)=\frac12\bigl\{\det(\vec a,\vec b)+\det(\vec b,\vec x)+\det(\vec x,\vec a)\bigr\}+\frac12\bigl\{\det(\vec x,\vec c)+\det(\vec c,\vec d)+\det(\vec d,\vec x)\bigr\}=S(ABX)+S(XCD)$$

となる。辺 $AB$ と辺 $CD$ が点 $X$ で交わる場合も、同じ計算で $S(ABCD)=S(XBC)+S(XDA)$ となる。交差した四角形では、2 つの三角形の一方は反時計回り、もう一方は時計回りにたどられるので、$S(ABCD)$ は 2 つの三角形の面積の差になる。

Varignon の平行四辺形

四角形 $ABCD$ の辺 $AB$、$BC$、$CD$、$DA$ の中点を $E$、$F$、$G$、$H$ とする。これらを順に結んだ四角形 $EFGH$ を、四角形 $ABCD$ の Varignon の平行四辺形 という。

名前のとおり、たいていは平行四辺形になる。中点連結定理 の例では三角形 $ABC$ と三角形 $ADC$ に中点連結定理を使って示した。ここでは、後で空間の四角形にもそのまま使えるように、位置ベクトルで示す(位置ベクトルと内分点)。

中点を結ぶと平行四辺形

四角形 $ABCD$ の Varignon の平行四辺形 $EFGH$ について
$$ \overrightarrow{EF}=\overrightarrow{HG}=\frac12\overrightarrow{AC},\qquad \overrightarrow{FG}=\overrightarrow{EH}=\frac12\overrightarrow{BD} $$
が成り立つ。とくに、対角線 $AC$ と $BD$ が平行でなければ、$EFGH$ は平行四辺形である。

点 $A$、$B$、$C$、$D$ の位置ベクトルを $\vec a$、$\vec b$、$\vec c$、$\vec d$ とする。中点の位置ベクトルは両端の平均なので
$$ \vec e=\frac{\vec a+\vec b}2,\qquad \vec f=\frac{\vec b+\vec c}2,\qquad \vec g=\frac{\vec c+\vec d}2,\qquad \vec h=\frac{\vec d+\vec a}2 $$
である。引き算すると $\overrightarrow{EF}=\vec f-\vec e=\dfrac{\vec c-\vec a}2=\dfrac12\overrightarrow{AC}$ で、残りの 3 本も同じように引き算するだけで求まる。

残りの計算と平行四辺形になる理由を開く

$\overrightarrow{EF}=\vec f-\vec e=\dfrac{\vec b+\vec c-\vec a-\vec b}2=\dfrac12\overrightarrow{AC}$、$\overrightarrow{HG}=\vec g-\vec h=\dfrac{\vec c+\vec d-\vec d-\vec a}2=\dfrac12\overrightarrow{AC}$ である。同じく $\overrightarrow{FG}=\dfrac{\vec d-\vec b}2=\dfrac12\overrightarrow{BD}$、$\overrightarrow{EH}=\dfrac{\vec d-\vec b}2=\dfrac12\overrightarrow{BD}$ である。

$AC$ と $BD$ が平行でなければ、$\overrightarrow{EF}$ と $\overrightarrow{FG}$ は平行でないので、4 点 $E$、$F$、$G$、$H$ は一直線上に並ばない。向かい合う辺 $EF$、$HG$ が平行で長さが等しい四角形なので、$EFGH$ は平行四辺形である。$\square$

対角線が平行になるのは、交差した四角形の一部だけである(単純な四角形では起こらないことを lem-vrg-diag の後で示す)。ex-vrg-signed の (3) の蝶ネクタイの形の四角形では $\overrightarrow{AC}=(0,6)$、$\overrightarrow{BD}=(0,6)$ が平行で、中点 $E(4,0)$、$F(4,3)$、$G(4,6)$、$H(4,3)$ はすべて直線 $x=4$ の上に並ぶ。平行四辺形はつぶれて線分になる。

主定理:面積は半分、周の長さは対角線の和

面積を調べるために、四角形の符号つき面積を 2 本の対角線で書く。

符号つき面積を対角線で書く

四角形 $ABCD$ の符号つき面積は
$$ S(ABCD)=\frac12\det\left(\overrightarrow{AC},\overrightarrow{BD}\right) $$
である。

$\overrightarrow{AC}=\vec c-\vec a$、$\overrightarrow{BD}=\vec d-\vec b$ である。$\det$ はそれぞれの成分について 1 次式なので、分配法則のように展開できる。
$$ \det(\vec c-\vec a,\ \vec d-\vec b)=\det(\vec c,\vec d)-\det(\vec c,\vec b)-\det(\vec a,\vec d)+\det(\vec a,\vec b) $$
入れかえると符号が変わるので、$-\det(\vec c,\vec b)=\det(\vec b,\vec c)$、$-\det(\vec a,\vec d)=\det(\vec d,\vec a)$ である。よって
$$ \det(\vec c-\vec a,\ \vec d-\vec b)=\det(\vec a,\vec b)+\det(\vec b,\vec c)+\det(\vec c,\vec d)+\det(\vec d,\vec a)=2S(ABCD) $$
となり、両辺を $2$ で割ると結論を得る。$\square$

ex-vrg-start の四角形では $\overrightarrow{AC}=(10,6)$、$\overrightarrow{BD}=(-6,8)$ で、$\dfrac12\det(\overrightarrow{AC},\overrightarrow{BD})=\dfrac12\{10\cdot8-6\cdot(-6)\}=\dfrac12(80+36)=58$ となり、ex-vrg-start-area の値と一致する。対角線のなす角を $\theta$ とすると $\lvert\det(\overrightarrow{AC},\overrightarrow{BD})\rvert=AC\cdot BD\sin\theta$ なので、lem-vrg-diag は、単純な四角形の面積の公式「$\dfrac12\times$ 対角線 $\times$ 対角線 $\times\sin\theta$」を含んでいる。
単純な四角形では面積が正なので、lem-vrg-diag より $\det(\overrightarrow{AC},\overrightarrow{BD})\ne0$ であり、対角線 $AC$ と $BD$ は平行でない。したがって、単純な四角形の Varignon の平行四辺形は、つぶれない本当の平行四辺形である(prop-vrg-para)。

Varignon の定理

平面の四角形 $ABCD$ の Varignon の平行四辺形を $EFGH$ とする。
(1) 符号つき面積について $S(EFGH)=\dfrac12S(ABCD)$ が成り立つ。とくに $ABCD$ が単純な四角形(凸でも凹でもよい)なら、平行四辺形 $EFGH$ の面積は四角形 $ABCD$ の面積のちょうど半分である。
(2) $EFGH$ の周の長さは、2 本の対角線の長さの和 $AC+BD$ に等しい。

方針:(1) は lem-vrg-diag を四角形 $EFGH$ に使い、その対角線を $ABCD$ の対角線で書く。(2) は prop-vrg-para から出る。
段 1($EFGH$ の対角線)。$\vec u=\overrightarrow{AC}=\vec c-\vec a$、$\vec v=\overrightarrow{BD}=\vec d-\vec b$ とおく。prop-vrg-para の証明の中点の式から
$$ \overrightarrow{EG}=\vec g-\vec e=\frac{\vec c+\vec d-\vec a-\vec b}2=\frac{\vec u+\vec v}2,\qquad \overrightarrow{FH}=\vec h-\vec f=\frac{\vec d+\vec a-\vec b-\vec c}2=\frac{\vec v-\vec u}2 $$
である。
段 2((1) の計算)。lem-vrg-diag を四角形 $EFGH$ に使うと
$$ S(EFGH)=\frac12\det\left(\overrightarrow{EG},\overrightarrow{FH}\right)=\frac12\cdot\frac14\det(\vec u+\vec v,\ \vec v-\vec u) $$
である($\det$ は各成分について 1 次式なので、$\dfrac12$ を 2 つ外に出すと $\dfrac14$ になる)。右の $\det$ を展開すると
$$ \det(\vec u+\vec v,\ \vec v-\vec u)=\det(\vec u,\vec v)-\underbrace{\det(\vec u,\vec u)}_{0}+\underbrace{\det(\vec v,\vec v)}_{0}-\underbrace{\det(\vec v,\vec u)}_{-\det(\vec u,\vec v)}=2\det(\vec u,\vec v) $$
である。よって、もう一度 lem-vrg-diag を使って
$$ S(EFGH)=\frac18\cdot2\det(\vec u,\vec v)=\frac12\cdot\frac12\det\left(\overrightarrow{AC},\overrightarrow{BD}\right)=\frac12S(ABCD) $$
となる。
段 3(単純な四角形の場合)。$ABCD$ が単純な四角形なら、lem-vrg-diag の後で見たとおり $EFGH$ は本当の平行四辺形で、平行四辺形は凸四角形だから、その面積は $\lvert S(EFGH)\rvert$ である。$ABCD$ の面積は $\lvert S(ABCD)\rvert$ である。段 2 の等式の絶対値をとれば、面積はちょうど半分である。
段 4((2) 周の長さ)。prop-vrg-para より、辺の長さは $EF=HG=\dfrac12AC$、$FG=EH=\dfrac12BD$ である。足すと
$$ EF+FG+GH+HE=\frac12AC+\frac12BD+\frac12AC+\frac12BD=AC+BD $$
である。$\square$

凸四角形では、面積が半分になることを、角に切り落とされる 4 つの三角形で見ることもできる。

角の 4 つの三角形を切り落とす

ex-vrg-start の凸四角形で、平行四辺形 $EFGH$ の外側に残る 4 つの三角形 $AEH$、$BFE$、$CGF$、$DHG$ の面積を求める。

答えと 4 つの三角形の面積の計算を開く

4 つの三角形の面積は、それぞれ対角線で切った三角形の $\dfrac14$ で、$8$、$6$、$\dfrac{13}2$、$\dfrac{17}2$ である。和は $8+6+\dfrac{13}2+\dfrac{17}2=29$ で、四角形 $ABCD$ の面積 $58$ から引くと $58-29=29$ となり、ex-vrg-start-area の平行四辺形の面積と一致する。

(1) $E$、$H$ は辺 $AB$、$AD$ の中点なので、三角形 $AEH$ は三角形 $ABD$ を $A$ を中心に $\dfrac12$ 倍に縮めた図形で、面積は $\left(\dfrac12\right)^2=\dfrac14$ 倍である。三角形 $ABD$ の面積は $\dfrac12\lvert8\cdot8-0\cdot2\rvert=32$ なので、三角形 $AEH$ の面積は $8$ である。

(2) 同じように、三角形 $BFE$ は三角形 $BCA$(面積 $24$)の $\dfrac14$ で $6$、三角形 $CGF$ は三角形 $CDB$(面積 $26$)の $\dfrac14$ で $\dfrac{13}2$、三角形 $DHG$ は三角形 $DAC$(面積 $34$)の $\dfrac14$ で $\dfrac{17}2$ である。

(3) 三角形 $ABD$ と三角形 $CDB$ は対角線 $BD$ で四角形を 2 つに分けたものなので、面積の和 $32+26=58$ は四角形の面積である。三角形 $BCA$ と三角形 $DAC$ も、対角線 $AC$ で分けたもので、和は $24+34=58$ である。

凸四角形では、平行四辺形 EFGH の外側に 4 つの三角形が残り、それぞれ対角線で切った三角形の 4 分の 1 の面積になる 凸四角形では、平行四辺形 EFGH の外側に 4 つの三角形が残り、それぞれ対角線で切った三角形の 4 分の 1 の面積になる

凸四角形での、切り落としによる別証明を開く

$ABCD$ を凸四角形とし、面積を $[ABCD]$ のように書く。$E$、$H$ は辺 $AB$、$AD$ の中点なので、三角形 $AEH$ は三角形 $ABD$ を $A$ を中心に $\dfrac12$ 倍に縮めたもので $[AEH]=\dfrac14[ABD]$ である。同じく $[CGF]=\dfrac14[CDB]$ である。凸四角形は対角線 $BD$ で 2 つの三角形に分かれるので $[ABD]+[CDB]=[ABCD]$、よって $[AEH]+[CGF]=\dfrac14[ABCD]$ である。対角線 $AC$ で分けて同じように考えると $[BFE]+[DHG]=\dfrac14[ABCD]$ である。凸四角形では、平行四辺形 $EFGH$ と 4 つの三角形が重ならずに $ABCD$ を埋めるので

$$[EFGH]=[ABCD]-\frac14[ABCD]-\frac14[ABCD]=\frac12[ABCD]$$

である。凹四角形や交差した四角形では、角の三角形が平行四辺形と重なったり外にはみ出したりするので、この切り方はそのままでは使えない。符号つき面積を使った thm-vrg-main の証明は、その場合分けを必要としない。


凹四角形と交差した四角形でも、符号つき面積で確かめる。

凹四角形

$A(0,0)$、$B(8,0)$、$C(4,2)$、$D(2,8)$ の四角形は、頂点 $C$ の内角が $180^\circ$ より大きい凹四角形である($C$ は三角形 $ABD$ の内部にある)。
四角形の面積は、lem-vrg-diag で $\overrightarrow{AC}=(4,2)$、$\overrightarrow{BD}=(-6,8)$ から
$$ S(ABCD)=\frac12\{4\cdot8-2\cdot(-6)\}=\frac12(32+12)=22 $$
である。中点は $E(4,0)$、$F(6,1)$、$G(3,5)$、$H(1,4)$ で、$\overrightarrow{EF}=(2,1)$、$\overrightarrow{EH}=(-3,4)$ から、平行四辺形の面積は $\lvert2\cdot4-1\cdot(-3)\rvert=11$ で、ちょうど半分である。

周の長さの検算を開く

周の長さは $2(\sqrt5+5)=2\sqrt5+10$、対角線の和は $AC+BD=\sqrt{20}+10=2\sqrt5+10$ で等しい。

交差した四角形

$A(0,0)$、$B(6,0)$、$C(0,8)$、$D(4,8)$ の四角形では、辺 $BC$ と辺 $DA$ が点 $X\left(\dfrac{12}5,\dfrac{24}5\right)$ で交わる。
(1) 交点で分けた 2 つの三角形の面積は、三角形 $ABX$ が $\dfrac12\cdot6\cdot\dfrac{24}5=\dfrac{72}5$、三角形 $XCD$ が $\dfrac12\cdot4\cdot\left(8-\dfrac{24}5\right)=\dfrac{32}5$ である。三角形 $ABX$ は反時計回り、三角形 $XCD$ は時計回りにたどられる。
(2) 符号つき面積は、$\overrightarrow{AC}=(0,8)$、$\overrightarrow{BD}=(-2,8)$ から
$$ S(ABCD)=\frac12\{0\cdot8-8\cdot(-2)\}=8=\frac{72}5-\frac{32}5 $$
で、2 つの三角形の面積の差である。
(3) 中点は $E(3,0)$、$F(3,4)$、$G(2,8)$、$H(2,4)$ で、$\overrightarrow{EF}=(0,4)$、$\overrightarrow{EH}=(-1,4)$ から、平行四辺形の面積は $\lvert0\cdot4-4\cdot(-1)\rvert=4$ である。これは $S(ABCD)=8$ の半分であるが、2 つの三角形の面積の和 $\dfrac{72}5+\dfrac{32}5=\dfrac{104}5$ の半分 $\dfrac{52}5$ ではない。

凹四角形でも、中点を結んだ平行四辺形の面積は四角形の面積の半分になる 凹四角形でも、中点を結んだ平行四辺形の面積は四角形の面積の半分になる
交差した四角形では、平行四辺形の面積は 2 つの三角形の部分の面積の差の半分になる 交差した四角形では、平行四辺形の面積は 2 つの三角形の部分の面積の差の半分になる

交差した四角形の「面積」を、辺で囲まれた部分の面積の和と考えると、thm-vrg-main の (1) は成り立たない。成り立つのは符号つき面積についてである。これは「例と反例」の表の 1 行目になる。

平行四辺形の形は対角線で決まる

prop-vrg-para により、Varignon の平行四辺形の 2 辺は対角線 $AC$、$BD$ に平行で、長さはその半分である。そこで、平行四辺形の形は対角線の向きと長さだけで決まる。

長方形・ひし形・正方形になる条件

対角線 $AC$、$BD$ が平行でない四角形 $ABCD$ の Varignon の平行四辺形 $EFGH$ について、次が成り立つ。
(R1) $EFGH$ が長方形 $\iff$ $AC\perp BD$
(R2) $EFGH$ がひし形 $\iff$ $AC=BD$
(R3) $EFGH$ が正方形 $\iff$ $AC\perp BD$ かつ $AC=BD$

方針:平行四辺形は、隣り合う 2 辺が直交すれば長方形、隣り合う 2 辺の長さが等しければひし形である。prop-vrg-para より、隣り合う 2 辺について
$$ \overrightarrow{EF}\cdot\overrightarrow{FG}=\frac12\overrightarrow{AC}\cdot\frac12\overrightarrow{BD}=\frac14\,\overrightarrow{AC}\cdot\overrightarrow{BD},\qquad EF=\frac12AC,\quad FG=\frac12BD $$
なので、直交と長さの等しさは、そのまま対角線の条件に言いかえられる。
(R1) 平行四辺形は、1 つの角が直角なら長方形である(向かい合う角は等しく、隣り合う角の和は $180^\circ$ なので、4 つの角がすべて直角になる)。逆に長方形なら角 $F$ は直角である。よって、$EFGH$ が長方形であることは、$\overrightarrow{FE}\perp\overrightarrow{FG}$、つまり内積 $\overrightarrow{EF}\cdot\overrightarrow{FG}=0$ と同値である(ベクトルの内積(高校数学))。上の式より、これは $\overrightarrow{AC}\cdot\overrightarrow{BD}=0$、つまり $AC\perp BD$ と同値である。
(R2) 平行四辺形は、隣り合う 2 辺の長さが等しければひし形である(向かい合う辺の長さは等しいので、4 辺がすべて等しくなる)。逆にひし形なら $EF=FG$ である。$EF=\dfrac12AC$、$FG=\dfrac12BD$ なので、$EF=FG$ は $AC=BD$ と同値である。
(R3) 正方形は、長方形でありひし形でもある平行四辺形である。(i) と (ii) を合わせればよい。$\square$

元の四角形の対角線Varignon の平行四辺形元の四角形の例
直交する長方形凧形(ex-vrg-kite)、ひし形
長さが等しいひし形等脚台形(ex-vrg-isotrap)、長方形
直交し、長さも等しい正方形正方形
どちらでもない一般の平行四辺形ex-vrg-start の四角形
凧形から長方形

$A(-2,0)$、$B(0,-2)$、$C(6,0)$、$D(0,2)$ の四角形は、直線 $AC$($x$ 軸)が線分 $BD$ の垂直二等分線になっている凧形である。
(1) 対角線は $\overrightarrow{AC}=(8,0)$、$\overrightarrow{BD}=(0,4)$ で、内積は $8\cdot0+0\cdot4=0$、直交している。
(2) 中点は $E(-1,-1)$、$F(3,-1)$、$G(3,1)$、$H(-1,1)$ で、$\overrightarrow{EF}=(4,0)$、$\overrightarrow{FG}=(0,2)$ である。内積 $4\cdot0+0\cdot2=0$ なので、$EFGH$ は横 $4$、縦 $2$ の長方形である。
(3) 面積は、四角形が $\dfrac12\cdot8\cdot4=16$、長方形が $4\cdot2=8$ で、半分である(thm-vrg-main)。

等脚台形からひし形

$A(0,0)$、$B(8,0)$、$C(6,4)$、$D(2,4)$ の四角形は、$AB\parallel DC$ で、直線 $x=4$ について左右対称な等脚台形である。
対角線 $\overrightarrow{AC}=(6,4)$、$\overrightarrow{BD}=(-6,4)$ の長さはどちらも $2\sqrt{13}$ で、$EFGH$ は 1 辺 $\sqrt{13}$ のひし形になる。対角線の内積は $-36+16=-20\ne0$ なので、このひし形は正方形ではない。

中点と辺の計算を開く

中点は $E(4,0)$、$F(7,2)$、$G(4,4)$、$H(1,2)$ で、$\overrightarrow{EF}=(3,2)$、$\overrightarrow{FG}=(-3,2)$ の長さはどちらも $\sqrt{13}$ である。内積は $\overrightarrow{EF}\cdot\overrightarrow{FG}=-9+4=-5\ne0$ で、角 $F$ は直角でない。対角線の長さは $\sqrt{36+16}=2\sqrt{13}$ である。

対角線が直交する凧形では、中点を結ぶと長方形になる 対角線が直交する凧形では、中点を結ぶと長方形になる
対角線の長さが等しい等脚台形では、中点を結ぶとひし形になる 対角線の長さが等しい等脚台形では、中点を結ぶとひし形になる

prop-vrg-shape の右側の条件は、対角線の性質だけである。Varignon の平行四辺形が長方形だからといって、元の四角形が凧形やひし形とは限らない(ex-vrg-cx-perp)。

空間の四角形

prop-vrg-para の証明は、位置ベクトルの足し算と引き算しか使っていない。そこで、4 つの頂点が同じ平面の上にない空間の四角形でも、同じ計算で $\overrightarrow{EF}=\overrightarrow{HG}=\dfrac12\overrightarrow{AC}$、$\overrightarrow{FG}=\overrightarrow{EH}=\dfrac12\overrightarrow{BD}$ が成り立ち、4 つの中点は平行四辺形をつくる。4 つの中点が同じ平面の上にあることの証明と、その面積、四面体との関係は 空間の四角形の中点と四面体 で扱う。

平行四辺形の中心:4 頂点の平均

平行四辺形の 2 本の対角線は、互いの中点で交わる。その交点を平行四辺形の中心という。Varignon の平行四辺形の中心は、元の四角形の言葉で書ける。

Varignon の平行四辺形の中心

平面または空間の四角形 $ABCD$ の対角線 $AC$、$BD$ の中点を $M$、$N$ とする。対角線 $AC$、$BD$ が平行でないとき、Varignon の平行四辺形 $EFGH$ の中心は
$$ \frac{\vec a+\vec b+\vec c+\vec d}4 $$
を位置ベクトルとする点であり、これは線分 $MN$ の中点でもある。とくに、線分 $EG$、$FH$、$MN$ は同じ 1 点でそれぞれ 2 等分される。

平行四辺形 $EFGH$ の中心は対角線 $EG$ の中点で、その位置ベクトルは
$$ \frac{\vec e+\vec g}2=\frac12\left(\frac{\vec a+\vec b}2+\frac{\vec c+\vec d}2\right)=\frac{\vec a+\vec b+\vec c+\vec d}4 $$
である。対角線 $FH$ の中点も $\dfrac12\left(\dfrac{\vec b+\vec c}2+\dfrac{\vec d+\vec a}2\right)$ で同じ点である。線分 $MN$ の中点も
$$ \frac12\left(\frac{\vec a+\vec c}2+\frac{\vec b+\vec d}2\right)=\frac{\vec a+\vec b+\vec c+\vec d}4 $$
で、同じ点である。$\square$

中心を座標で確かめる

ex-vrg-start の四角形では、4 頂点の平均は $\left(\dfrac{0+8+10+2}4,\dfrac{0+0+6+8}4\right)=\left(5,\dfrac72\right)$ である。対角線の中点は $M(5,3)$、$N(5,4)$ で、その中点も $\left(5,\dfrac72\right)$ である。

平行四辺形の対角線の中点での検算を開く

$E(4,0)$ と $G(6,7)$ の中点は $\left(5,\dfrac72\right)$、$F(9,3)$ と $H(1,4)$ の中点も $\left(5,\dfrac72\right)$ である。

4 頂点の平均の点は、4 つの頂点に同じ重さのおもりを置いたときの重心である(三角形の重心(高校数学) で、3 頂点の平均が三角形の重心だったのと同じ考え方)。対角線の中点 $M$、$N$ の間の距離は、次の記事 Eulerの四辺形定理 の主役になる。また、$M$、$N$ とこの中心が一直線上に並ぶこと(cor-vrg-center)は、Newton–Gauss線 の出発点になる。

大学数学で見る:アフィン変換で保たれる部分と保たれない部分

平面の点 $\vec x$ を $P\vec x+\vec q$($P$ は行列式が $0$ でない $2\times2$ 行列、$\vec q$ はベクトル)に移す変換を アフィン変換 という。1 次変換に平行移動を加えたものである。アフィン変換は、中点を中点に、平行な直線を平行な直線に移し、符号つき面積をすべて同じ数 $\det P$ 倍にする(1次変換と行列式:面積の拡大率)。Varignon の定理は、アフィン変換で保たれる部分(平行四辺形になること、符号つき面積が半分)と、内積で測る Euclid 幾何の部分(周の長さ、長方形・ひし形の条件)が合わさった定理である。

アフィン変換で 3 頂点を固定して確かめる計算を開く

prop-vrg-para の「平行四辺形になる」と thm-vrg-main の (1)「符号つき面積が半分」は、アフィン変換で移り合う四角形のどれか 1 つで確かめれば、残りのすべてで成り立つ。これに対して、(2) の周の長さや prop-vrg-shape の直交・長さの条件は、アフィン変換で保たれない。

四角形 $ABCD$ の 3 頂点 $A$、$B$、$D$ は一直線上にないので、アフィン変換で $A(0,0)$、$B(1,0)$、$D(0,1)$ に移せる(1次変換と行列式:面積の拡大率 で、$\overrightarrow{AB}$、$\overrightarrow{AD}$ を並べた行列の逆行列を使う)。そのとき $C$ はある点 $(s,t)$ に移る。この四角形では $\overrightarrow{AC}=(s,t)$、$\overrightarrow{BD}=(-1,1)$ なので $S(ABCD)=\dfrac12(s+t)$ である。中点は $E\left(\dfrac12,0\right)$、$F\left(\dfrac{1+s}2,\dfrac t2\right)$、$G\left(\dfrac s2,\dfrac{t+1}2\right)$、$H\left(0,\dfrac12\right)$ で、$\overrightarrow{EF}=\left(\dfrac s2,\dfrac t2\right)$、$\overrightarrow{EH}=\left(-\dfrac12,\dfrac12\right)$ から $S(EFGH)=\det\left(\overrightarrow{EF},\overrightarrow{EH}\right)=\dfrac s4+\dfrac t4=\dfrac12S(ABCD)$ となる(平行四辺形の符号つき面積は隣り合う 2 辺の $\det$ である)。2 つの数 $s$、$t$ だけで、すべての四角形の場合を尽くしている。

一方、ex-vrg-kite の凧形をアフィン変換 $(x,y)\mapsto(x+y,\ y)$ で移すと、$A(-2,0)$、$B(-2,-2)$、$C(6,0)$、$D(2,2)$ になり、対角線 $\overrightarrow{AC}=(8,0)$、$\overrightarrow{BD}=(4,4)$ の内積は $32\ne0$ である。Varignon の平行四辺形は長方形でなくなる。面積の比 $\dfrac12$ は変わらないが、直角は保たれない。

例と反例

thm-vrg-main と prop-vrg-para・prop-vrg-shape の仮定や読み方を変えると、何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
面積を符号つきで測る(交差した四角形)ex-vrg-crossed の四角形平行四辺形の面積が、辺で囲まれた部分の面積の和の半分
対角線 $AC$、$BD$ が平行でないex-vrg-signed の (3) の蝶ネクタイ形中点を結ぶと平行四辺形になる
頂点が 4 つ五角形(ex-vrg-cx-pentagon)中点を結んだ図形の面積が、元の決まった割合
逆向き($EFGH$ が長方形なら元は凧形か)対角線が直交するだけの四角形(ex-vrg-cx-perp)元の四角形が凧形であること

1 行目は ex-vrg-crossed の (3) で、平行四辺形の面積 $4$ が、2 つの三角形の面積の和 $\dfrac{104}5$ の半分でないことを確かめた。2 行目は prop-vrg-para の後で、中点がすべて直線 $x=4$ の上に並ぶことを確かめた。残りの 2 行を確かめる。

反例:五角形の中点
  1. 五角形 $(0,0)$、$(4,0)$、$(4,4)$、$(2,6)$、$(0,4)$(家の形)の面積は、靴ひも公式 で
    $$ \frac12\{0+16+(24-8)+(8-0)+0\}=\frac12(16+16+8)=20 $$
    である。5 つの辺の中点 $(2,0)$、$(4,2)$、$(3,5)$、$(1,5)$、$(0,2)$ を結んだ五角形の面積は
    $$ \frac12\{(4-0)+(20-6)+(15-5)+(2-0)+(0-4)\}=\frac12(4+14+10+2-4)=13 $$
    で、元の $\dfrac{13}{20}$ である。
  2. 五角形 $(0,0)$、$(8,0)$、$(8,2)$、$(4,4)$、$(0,2)$ では、面積は $24$、中点 $(4,0)$、$(8,1)$、$(6,3)$、$(2,3)$、$(0,1)$ を結んだ五角形の面積は $16$ で、元の $\dfrac23$ である。
    $\dfrac{13}{20}\ne\dfrac23$ なので、五角形では「中点を結ぶと面積が決まった割合になる」ことは成り立たない。四角形で割合がいつも $\dfrac12$ になるのは、lem-vrg-diag のように面積が 2 本の対角線だけで書けるからである。
(2) の面積の計算を開く

元の五角形は $\dfrac12\{(0\cdot0-8\cdot0)+(8\cdot2-8\cdot0)+(8\cdot4-4\cdot2)+(4\cdot2-0\cdot4)+(0\cdot0-0\cdot2)\}=\dfrac12(0+16+24+8+0)=24$ である。中点の五角形は $\dfrac12\{(4\cdot1-8\cdot0)+(8\cdot3-6\cdot1)+(6\cdot3-2\cdot3)+(2\cdot1-0\cdot3)+(0\cdot0-4\cdot1)\}=\dfrac12(4+18+12+2-4)=16$ である。

反例:対角線が直交しても凧形とは限らない

$A(-1,0)$、$B(0,-1)$、$C(3,0)$、$D(0,2)$ の凸四角形を考える。
(1) 対角線は $\overrightarrow{AC}=(4,0)$、$\overrightarrow{BD}=(0,3)$ で直交する。中点は $E\left(-\dfrac12,-\dfrac12\right)$、$F\left(\dfrac32,-\dfrac12\right)$、$G\left(\dfrac32,1\right)$、$H\left(-\dfrac12,1\right)$ で、$EFGH$ は横 $2$、縦 $\dfrac32$ の長方形である(prop-vrg-shape)。
(2) しかし $ABCD$ は凧形でない。対角線 $AC$ は直線 $y=0$ で、線分 $BD$ の垂直二等分線 $y=\dfrac12$ と一致しない。対角線 $BD$ は直線 $x=0$ で、線分 $AC$ の垂直二等分線 $x=1$ と一致しない。

辺の長さと平行な辺がないことの確認を開く

辺の長さは $AB=\sqrt2$、$BC=\sqrt{10}$、$CD=\sqrt{13}$、$DA=\sqrt5$ とすべて違うので、ひし形でもない。$\overrightarrow{AB}=(1,-1)$ と $\overrightarrow{DC}=(3,-2)$ は $\det=1\cdot(-2)-(-1)\cdot3=1\ne0$、$\overrightarrow{BC}=(3,1)$ と $\overrightarrow{AD}=(1,2)$ は $\det=3\cdot2-1\cdot1=5\ne0$ なので、平行な辺もなく、台形でもない。


Varignon の平行四辺形が長方形であることから分かるのは、対角線が直交することだけである。

対角線が平行な蝶ネクタイ形の四角形では、4 つの中点が一直線に並び、平行四辺形がつぶれる 対角線が平行な蝶ネクタイ形の四角形では、4 つの中点が一直線に並び、平行四辺形がつぶれる
対角線は直交するが凧形でない四角形でも、中点を結ぶと長方形になる 対角線は直交するが凧形でない四角形でも、中点を結ぶと長方形になる
対角線の長さが等しい四角形

$A(0,0)$、$B(1,-1)$、$C(5,0)$、$D(4,3)$ の四角形について、次を示せ。(1) Varignon の平行四辺形はひし形である。(2) $ABCD$ には平行な辺がなく、等脚台形ではない。(3) Varignon の平行四辺形の面積を 2 通りに求めよ。

解答を開く

(1) $\overrightarrow{AC}=(5,0)$、$\overrightarrow{BD}=(3,4)$ で、長さはどちらも $5$ である。prop-vrg-shape の (ii) により、Varignon の平行四辺形はひし形である。実際、中点は $E\left(\dfrac12,-\dfrac12\right)$、$F\left(3,-\dfrac12\right)$、$G\left(\dfrac92,\dfrac32\right)$、$H\left(2,\dfrac32\right)$ で、$\overrightarrow{EF}=\left(\dfrac52,0\right)$、$\overrightarrow{FG}=\left(\dfrac32,2\right)$ の長さはどちらも $\dfrac52$ である。

(2) $\overrightarrow{AB}=(1,-1)$ と $\overrightarrow{DC}=(1,-3)$ は $\det=1\cdot(-3)-(-1)\cdot1=-2\ne0$、$\overrightarrow{BC}=(4,1)$ と $\overrightarrow{AD}=(4,3)$ は $\det=4\cdot3-1\cdot4=8\ne0$ なので、平行な辺はない。台形でないので、等脚台形でもない。

(3) ひし形の面積は $\left\lvert\det\left(\overrightarrow{EF},\overrightarrow{FG}\right)\right\rvert=\left\lvert\dfrac52\cdot2-0\cdot\dfrac32\right\rvert=5$ である。一方、lem-vrg-diag より $S(ABCD)=\dfrac12\det\left((5,0),(3,4)\right)=\dfrac12\cdot20=10$ で、thm-vrg-main によりその半分の $5$ である。2 つは一致する。

さらに先へ

  • Varignon の平行四辺形の中心(cor-vrg-center)と対角線の中点 $M$、$N$ の間の距離 $MN$ を使うと、4 辺と 2 本の対角線の長さの 2 乗の関係が書ける。これが Eulerの四辺形定理 である。
  • 4 本の直線がつくる図形(完全四辺形)では、3 本の対角線の中点が一直線上に並ぶ。その直線は Varignon の平行四辺形の中心も通る(Newton–Gauss線)。
  • 空間の 4 点は四面体の頂点である。四面体の向かい合う辺の中点を結ぶ 3 本の線分が 4 頂点の平均の点で交わることは 空間の四角形の中点と四面体 で扱う。
  • 平面の四角形の符号つき面積が行列式で書けることは、一般の多角形の 靴ひも公式 や、行列式の性質(行列式)につながる。

関連項目

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