層別空間(stratified space)とは、位相空間 $X$ と、上に閉じた集合を開集合とする半順序集合 $P$ への連続写像 $s\colon X\to P$ の組である。各 $p\in P$ の逆像を層といい、連続性は各層の閉包が自分以下の層の和に含まれることと同値である。各点の近くで $X$ が層の方向の空間と開錐の積に同相なとき円錐的といい、単体複体の開単体への分割や Whitney 層別は円錐的である。実直線を $(-\infty,0]$ と $(0,\infty)$ に分けた層別は円錐的でない。
層別空間(stratified space)は、位相空間 $X$ を層(stratum)と呼ぶ部分集合に分け、どの層がどの層の閉包の縁にあるかという位置関係を半順序集合で記録したものである。特異点をもつ空間を「滑らかな部分」とその縁に分けて調べるときの基本的な枠組みで、構成可能層、出口道の∞圏、exodromy はこの枠組みの上で定義される。
層別の定義そのものは緩やかで、層どうしのつながり方には何の制限もない。そのため、議論に使うには正則性の条件を付け加える。代表的なものが 2 つある。1 つは円錐的(conical)という条件で、各点の近くで空間が「層の方向の空間」と「横切る方向の開錐」の積に同相であることを要求する。Whitney層別や単体複体はこの条件を満たす。もう 1 つは Quinn のホモトピー的な層別で、層どうしの関係をホモトピーリンクという道の空間の言葉で述べ、ホモトピーの条件だけを課す。
この記事では、半順序集合への連続写像として層別を定義し、それが層の閉包についての条件(境界条件)と同じものであることを証明する。次に開錐と円錐的な層別を定義し、単体複体の層別が円錐的であることを主定理として証明する。円錐的でない層別の例を挙げたあと、Quinn のホモトピーリンクと tame な部分集合を定義し、錐の頂点のホモトピーリンクがリンクとホモトピー同値であること、円錐的でないがホモトピー的に層別された空間があることを証明する。
$P$ を半順序集合とする。$P$ の部分集合 $U$ が上に閉じているとは、$p\in U$ かつ $p\le q$ なら $q\in U$ となることをいう。上に閉じた部分集合を開集合とすると $P$ は位相空間になる(HA17 Definition A.5.1、p. 1421)。閉集合は下に閉じた部分集合であり、とくに $\{q\mid q\le p\}$ は閉集合、$\{q\mid q\ge p\}$ は開集合である。
$P$ を半順序集合とし、上の位相を入れる。位相空間 $X$ の $P$ による層別とは連続写像 $s\colon X\to P$ のことであり、組 $(X,s)$ を $P$-層別空間という。$p\in P$ について $X_p:=s^{-1}(p)$ を $p$ の層という。同様に $X_{\le p}$、$X_{< p}$、$X_{\ge p}$、$X_{>p}$ を $s(x)$ がそれぞれの条件を満たす点 $x$ の全体とする。
これは HA17 Definition A.5.1(p. 1421)の定義である。層は空でもよい。$P$ が 1 点のときを自明な層別という。$P$-層別空間 $(X,s)$ から $Q$-層別空間 $(Y,t)$ への層別写像とは、連続写像 $f\colon X\to Y$ と順序を保つ写像 $\varphi\colon P\to Q$ の組で $t\circ f=\varphi\circ s$ を満たすものをいう。同じ $X$ の上の層別 $s\colon X\to P$ と $t\colon X\to Q$ について、順序を保つ $\varphi$ で $t=\varphi\circ s$ となるものがあるとき、$s$ は $t$ の細分、$t$ は $s$ の粗化であるという(HPT24 §0.2 の脚注 3、p. 2)。
連続性の条件は、層の閉包についての条件と言い換えられる。
$s\colon X\to P$ を写像とする。
要点:上に閉じた集合の逆像の補集合は、それに入らない層の閉包の和になり、局所有限性から閉集合になる。
1:$\{q\mid q\ge p\}$ は上に閉じているので開集合であり、その逆像 $X_{\ge p}$ は開集合である。$\{q\mid q\le p\}$ の補集合 $\{q\mid q\not\le p\}$ は上に閉じている($q\not\le p$ かつ $q\le q'$ なら $q'\not\le p$)ので、$\{q\mid q\le p\}$ は閉集合であり、その逆像 $X_{\le p}$ は $X_p$ を含む閉集合である。よって $\overline{X_p}\subset X_{\le p}$ である。$X_p=X_{\ge p}\cap X_{\le p}$ は開集合と閉集合の共通部分なので局所閉である。
2:$U\subset P$ を上に閉じた集合とし、$F:=X\setminus s^{-1}(U)=\bigcup_{q\notin U}X_q$ が閉集合であることを示す。$q\notin U$ なら、$r\le q$ となる $r$ も $U$ に入らない($U$ は上に閉じている)ので、仮定から $\overline{X_q}\subset X_{\le q}\subset F$ である。よって $F=\bigcup_{q\notin U}\overline{X_q}$ である。開集合 $V$ が $\overline{X_q}$ と交わるのは $X_q$ と交わるときに限るので、族 $\{\overline{X_q}\}$ も局所有限である。$x\notin F$ をとり、有限個の $\overline{X_{q_1}},\dots,\overline{X_{q_m}}$ としか交わらない $x$ の近傍 $V$ をとると、$V\setminus(\overline{X_{q_1}}\cup\dots\cup\overline{X_{q_m}})$ は $F$ と交わらない $x$ の近傍である。よって $F$ は閉集合であり、$s^{-1}(U)$ は開集合である。$\square$
構成可能層やWhitney層別の記事では、層別を「互いに交わらない局所閉集合への局所有限な分割」として扱い、必要に応じて境界条件(各層の閉包が層の和であること)を課す。境界条件を満たす分割は、次のように半順序集合への層別とみなせる。
$X=\bigsqcup_{S\in\mathcal S}S$ を、空でない局所閉集合への局所有限な分割で、境界条件を満たすものとする。$\mathcal S$ の上の関係を $S\le T:\Leftrightarrow S\subset\overline T$ と定めると、これは半順序であり、各点をそれを含む層に写す写像 $s\colon X\to\mathcal S$ は連続である。
要点:反対称律は「局所閉集合はその閉包の中で開かつ稠密」であることから従い、連続性は prop-ss-closure の 2 から従う。
反射律と推移律($S\subset\overline T$、$T\subset\overline R$ なら $S\subset\overline R$)は明らかである。反対称律:$S\subset\overline T$ かつ $T\subset\overline S$ なら $\overline S=\overline T=:C$ である。局所閉集合 $S=W\cap F$($W$ は開、$F$ は閉)は $S\subset W\cap\overline S\subset W\cap F=S$ より $C$ の中の開集合であり、$C$ の中で稠密である。$T$ も $C$ の空でない開集合なので、$S\cap T\neq\emptyset$ である。分割の異なる層は交わらないので $S=T$ である。
連続性:境界条件により $\overline S$ は層の和であり、そこに含まれる層 $T$ は $T\subset\overline S$、すなわち $T\le S$ を満たす。よって $\overline S\subset X_{\le S}$ であり、層の族は局所有限なので、prop-ss-closure の 2 により $s$ は連続である。$\square$
$P$ に新しい最小元 $-\infty$ を付け加えた半順序集合を $P^{\triangleleft}$ と書く。
$(Y,s)$ を $P$-層別空間とする。集合 $C(Y):=\{*\}\sqcup(Y\times\mathbb R_{>0})$ に、次の位相を入れる:$U\subset C(Y)$ が開集合であるとは、$U\cap(Y\times\mathbb R_{>0})$ が開集合であり、$*\in U$ ならある $\varepsilon>0$ について $Y\times(0,\varepsilon)\subset U$ となることをいう。$s(*)=-\infty$、$s(y,t)=s(y)$ により $C(Y)$ は $P^{\triangleleft}$-層別空間になる。これを $Y$ の開錐、$*$ を頂点という。
これは HA17 Definition A.5.3(p. 1421)である。$P^{\triangleleft}$ の上に閉じた集合は $P^{\triangleleft}$ 全体か $P$ の上に閉じた集合なので、層別は連続である。$Y=\emptyset$ なら $C(Y)=\{*\}$ である。$Y$ がコンパクトな Hausdorff 空間なら、$C(Y)$ は $Y\times\mathbb R_{\ge0}$ を $Y\times\{0\}$ で 1 点につぶした商空間と同相である(HA17 Remark A.5.4、p. 1422)。コンパクトでない $Y$ では商位相のほうが細かくなりうる(錐(位相)の注意「反例:錐の位相は幾何的な錐の位相より細かいことがある」)。
たとえば、単位球面 $S^{n-1}$ に自明な層別を入れると、$*\mapsto0$、$(y,t)\mapsto ty$ は $C(S^{n-1})$ から $\mathbb R^n$ への同相写像で、層別を ex-ss-examples の 1 の層別に写す。実際、$\mathbb R^n\setminus\{0\}\cong S^{n-1}\times\mathbb R_{>0}$ であり、原点の近傍の基本系 $\{|x|< \varepsilon\}$ は $\{*\}\cup S^{n-1}\times(0,\varepsilon)$ に対応する。
$(X,s)$ を $P$-層別空間とし、$x\in X_p$ とする。$P_{>p}$-層別空間 $Y$、位相空間 $Z$ と、$P$-層別空間の開埋め込み $h\colon Z\times C(Y)\to X$ で、像が $x$ を含むものがあるとき、$X$ は $x$ で円錐的に層別されているという。ここで $Z\times C(Y)$ には、$C(Y)$ の $P_{>p}^{\triangleleft}$-層別を $P_{>p}^{\triangleleft}\cong P_{\ge p}$($-\infty\mapsto p$)で読み替えた層別を入れる。すべての点で円錐的なとき、層別は円錐的であるという。$Y$ を $x$ のリンクという。
これは HA17 Definition A.5.5(p. 1422)である。層別写像としての開埋め込みとは、像の上への同相写像で層別を保つものをいう。$x\in X_p$ なので $x=h(z_0,*)$ となる $z_0$ があり、$h(Z\times\{*\})=X_p\cap h(Z\times C(Y))$ は $x$ の $X_p$ での近傍である。リンク $Y$ そのものが円錐的であることは要求しない(同 Remark A.5.6)。Thom–Matherの同位定理の定理「点の層での局所錐構造」と、そこで引いた一般の層での局所錐構造により、Whitney 層別された集合は円錐的に層別されている(NV23 Theorem 3.6、p. 15)。
要点:頂点の近傍 $\{*\}\cup Y\times(0,\varepsilon)$ は開錐と層別を保って同相であることと、$Y$ の錐の近傍に $\mathbb R_{>0}$ 方向を掛けることで示す。
1:$U\subset X$ を開集合、$x\in U\cap X_p$ とし、$x=h(z_0,*)$ となる $X$ の錐の近傍 $h\colon Z\times C(Y)\to X$ をとる。$h^{-1}(U)$ は $(z_0,*)$ の開近傍なので、$z_0$ の開近傍 $Z'$ と $*$ の開近傍 $V$ で $Z'\times V\subset h^{-1}(U)$ となるものがあり、開錐の位相の定義から $V\supset C_\varepsilon:=\{*\}\cup Y\times(0,\varepsilon)$ となる $\varepsilon>0$ がある。$(y,t)\mapsto(y,t/(\varepsilon-t))$ は $C_\varepsilon$ から $C(Y)$ への層別を保つ同相写像である(頂点の近傍の基本系が互いに対応する)。よって $h|_{Z'\times C_\varepsilon}$ から、像が $U$ に含まれる $x$ の錐の近傍が得られる。
2:自明な層別で $P=\{p\}$ なら $P_{>p}=\emptyset$ なので $Y=\emptyset$、$C(Y)=\{*\}$ とし、$Z=X$、$h=\mathrm{id}$ とすればよい。$M\times X$ については、$X$ の錐の近傍 $h$ に対し $\mathrm{id}_M\times h\colon(M\times Z)\times C(Y)\to M\times X$ が錐の近傍である。
3:頂点では $Z$ を 1 点、$h=\mathrm{id}_{C(Y)}$ とすればよい($(P^{\triangleleft})_{>-\infty}=P$)。点 $(y,t)$、$y\in Y_q$ では、$Y$ の $y$ での錐の近傍 $h\colon Z\times C(Y')\to Y$($Y'$ は $P_{>q}$-層別空間)をとり、$((z,u),c)\mapsto(h(z,c),u)$ で $(Z\times\mathbb R_{>0})\times C(Y')\to C(Y)$ を定める。これは $Y\times\mathbb R_{>0}$ の開集合 $h(Z\times C(Y'))\times\mathbb R_{>0}$ の上への層別を保つ同相写像であり、$Y\times\mathbb R_{>0}$ は頂点を含まないので $C(Y)$ の開集合である。$(P^{\triangleleft})_{>q}=P_{>q}$ なので、これが $(y,t)$ での錐の近傍になる。$\square$
とくに $\mathbb R^n\cong C(S^{n-1})$ を原点で分けた層別や、$\mathbb R^k\times\mathbb R^n$ を $\mathbb R^k\times\{0\}$ で分けた層別は円錐的である。次の主定理は、単体複体の層別が円錐的であることを示す。各面 $\sigma$ のリンクを $V\setminus\sigma$ の上の単体複体 $\operatorname{lk}\sigma:=\{\tau\setminus\sigma\mid\sigma\subsetneq\tau\in S\}$ とし、開いた星 を $\operatorname{St}\sigma:=\{w\in|K|\mid\operatorname{supp}w\supset\sigma\}$ とする。$\operatorname{lk}\sigma$ の面 $\rho$ に $\sigma\cup\rho$ を対応させると、$\operatorname{lk}\sigma$ の面の半順序集合は $S_{>\sigma}$ と同型である。
$K=(V,S)$ を有限単体複体とし、$|K|$ に ex-ss-examples の 2 の $S$-層別を入れる。面 $\sigma\in S$ について、$Y:=|\operatorname{lk}\sigma|$($S_{>\sigma}$-層別空間とみる)とし、$h\colon\sigma^\circ\times C(Y)\to|K|$ を $h(z,*)=z$、
$$
h(z,y,t)(v)=\begin{cases}\dfrac{z(v)}{t+1}&(v\in\sigma)\\ \dfrac{t\,y(v)}{t+1}&(v\notin\sigma)\end{cases}
$$
で定める。$h$ は層別を保つ開埋め込みで、像は開いた星 $\operatorname{St}\sigma$ である。とくに $|K|$ の層別は円錐的である。
像と層。 $z\in\sigma^\circ$ なら $\sum_{v\in\sigma}z(v)=1$、$\operatorname{supp}z=\sigma$ である。$y\in Y$ の台は $\tau\setminus\sigma$($\sigma\subsetneq\tau\in S$)の形なので、$h(z,y,t)$ の値の和は $\frac1{t+1}+\frac t{t+1}=1$、台は $\sigma\cup(\tau\setminus\sigma)=\tau\in S$ である。よって $h$ は $|K|$ に値をとり、頂点の像は層 $\sigma$ に、$(z,y,t)$ の像は $y$ の層 $\tau\setminus\sigma$ に対応する層 $\tau$ に入る。したがって $h$ は層別を保ち、像は $\operatorname{St}\sigma$ に含まれる。
逆写像。 $w\in\operatorname{St}\sigma$ について $m(w):=\sum_{v\in\sigma}w(v)\in(0,1]$ とおく。$m(w)=1$ なら $w\in\sigma^\circ$ であり、$g(w):=(w,*)$ とする。$m(w)< 1$ なら $\operatorname{supp}w\supsetneq\sigma$ であり、
$$
g(w):=\Bigl(\frac{w|_\sigma}{m},\ \frac{w|_{V\setminus\sigma}}{1-m},\ \frac{1-m}{m}\Bigr)\qquad(m=m(w))
$$
とする。第 2 成分の台は $\operatorname{supp}w\setminus\sigma$ で $\operatorname{lk}\sigma$ の面なので、$g(w)\in\sigma^\circ\times C(Y)$ である。$t=(1-m)/m$ なら $t+1=1/m$ なので、$h(g(w))=w$ が各成分で確かめられる。逆に $m(h(z,y,t))=1/(t+1)$ から $t$ が決まり、$z$ と $y$ も決まるので $g(h(z,y,t))=(z,y,t)$ である。よって $h$ は $\sigma^\circ\times C(Y)$ から $\operatorname{St}\sigma$ への全単射で、$g$ がその逆である。
連続性。 $\mathbb R^V$ に $\ell^1$ ノルムを入れる。$h$ は $\sigma^\circ\times Y\times\mathbb R_{>0}$ の上で明らかに連続である。$(z_0,*)$ では
$$
\|h(z,y,t)-z_0\|_1\le\Bigl\|\frac z{t+1}-z_0\Bigr\|_1+\frac t{t+1}\le\|z-z_0\|_1+\frac{2t}{t+1}
$$
であり、$\{(z,c)\mid\|z-z_0\|_1< \delta,\ c\in\{*\}\cup Y\times(0,\delta)\}$ は $(z_0,*)$ の開近傍なので、$h$ は $(z_0,*)$ で連続である。$g$ は $\{m< 1\}$ の上で明らかに連続である。$w_0\in\sigma^\circ$ では、$w\to w_0$ のとき $m(w)\to1$ なので、$t=(1-m)/m\to0$ かつ $w|_\sigma/m\to w_0$ となる。$(w_0,*)$ の近傍は $W_1\times(\{*\}\cup Y\times(0,\varepsilon))$ の形の開集合を含むので、$g$ は $w_0$ で連続である。
像が開集合であること。 $|K|\setminus\operatorname{St}\sigma=\bigcup_{v\in\sigma}\{w\mid w(v)=0\}$ は閉集合である。以上から $h$ は開集合 $\operatorname{St}\sigma$ の上への層別を保つ同相写像である。$|K|$ の各点 $w$ は $\sigma=\operatorname{supp}w$ について $h(\sigma^\circ\times C(Y))$ に入るので、層別は円錐的である。$\square$
HA17 Proposition A.6.8(p. 1435)は同じ式で、局所有限な単体複体について主張を示している。定義可能な三角形分割の定理「三角形分割定理」により、コンパクトな定義可能集合を有限個の定義可能集合で分けた層別は、単体複体の層別(開単体への分割)で細分できる。したがってそのような層別は、円錐的な層別の粗化である。
$\mathbb R$ を $X_0=(-\infty,0]$、$X_1=(0,\infty)$ に分けた $[1]$-層別(ex-ss-examples の 4)は、原点で円錐的でない。
要点:原点の錐の近傍があれば、層 $X_1$ の中に平面の開集合が連続かつ単射に入ってしまう。
原点を像に含む錐の近傍 $h\colon Z\times C(Y)\to\mathbb R$ があったとし、像を $W$ とする。$Y$ は $[1]_{>0}=\{1\}$-層別空間なので、$h$ は $Z\times\{*\}$ を $W\cap X_0$ に、$Z\times Y\times\mathbb R_{>0}$ を $W\cap X_1$ に写す。$Y=\emptyset$ なら $W=h(Z\times\{*\})\subset(-\infty,0]$ だが、$W$ は原点の開近傍なので正の数を含み、矛盾する。$Y\neq\emptyset$ なら $y\in Y$ をとる。$W\cap X_0$ は $(-\delta,0]$ の形の区間を含むので、$h(J\times\{*\})=(-\delta/2,0)$ となる $Z$ の部分空間 $J$ があり、$J$ は開区間と同相である。$(z,t)\mapsto h(z,y,t)$ は $J\times\mathbb R_{>0}\cong\mathbb R^2$ から $\mathbb R$ への連続な単射になる。ところが、$\mathbb R^2$ の中の円周 $S^1$ に制限した連続な単射 $f\colon S^1\to\mathbb R$ の像はコンパクトで連結なので区間 $[a,b]$($a< b$)であり、$c\in(a,b)$、$c=f(q)$ をとると、$S^1\setminus\{q\}$ は連結なのに $f(S^1\setminus\{q\})=[a,b]\setminus\{c\}$ は連結でない。これは矛盾である。$\square$
この例は、2 つの辺を 1 点で貼り合わせた折れ線を同じように分けた Hai23 Example 3.1.3(p. 26)と同じものである。円周を 1 点・半開区間・開区間に分けた層別も、半開区間の端点で円錐的でない(HPT24 Example 0.5.1、p. 4)。いずれも円錐的な層別の粗化である。
Quinn は、層どうしの関係を幾何的な近傍(管状近傍や錐の近傍)ではなくホモトピーの条件で述べる枠組みを導入した(Qui88)。群作用の商空間のように、局所的には扱いやすいが幾何的な層別の構造を大域的にはもたない空間を扱うためである(同 pp. 441–442)。Quinn の設定では、空間は距離空間で、閉集合の増大列 $X^0\subset X^1\subset\dots\subset X^n=X$(フィルター)が与えられ、差 $X^i\setminus X^{i-1}$ を層という(同 p. 469)。これは $s(x):=\min\{i\mid x\in X^i\}$ による $[n]=\{0< 1< \dots< n\}$-層別と同じものである($X_{\ge i}=X\setminus X^{i-1}$ は開集合)。
$Y$ を位相空間 $X$ の閉集合とする。
これは Qui88 §2.1(p. 452)の定義である。$R$ は、補集合の点を最後の瞬間まで補集合に留めたまま $Y$ へ押しつぶす変形であり、Quinn はこれを「ほぼ厳密な変形レトラクション」と呼ぶ。ホモトピーリンクは、区分線形な対の正則近傍の境界の類似物である(同 p. 443)。
フィルター $X^0\subset\dots\subset X^n=X$ をもつ距離空間 $X$ がホモトピー的に層別されているとは、$i< k$ となるすべての $i,k$ について、$A:=X^i\setminus X^{i-1}$、$B:=X^k\setminus X^{k-1}$ とおくとき、$A$ が $A\cup B$ の中で tame であり、$p\colon\operatorname{holink}(A\cup B,A)\to A$ がファイブレーション(ホモトピー持ち上げ性質をもつ写像)であることをいう。
これは Qui88 Definition 3.1(p. 469)である。課すのは 2 つの層の対についての条件だけで、3 つ以上の層が集まる点での両立条件は、この定義から従う(同 pp. 443–444、Proposition 3.2、p. 469)。
$L$ をコンパクトな距離空間とし、$X:=C(L)$ にフィルター $X^0=\{*\}\subset X^1=X$ を入れる。
要点:$C(L)$ に距離 $d((y,t),(y',t'))=|t-t'|+\min(t,t')\,d_L(y,y')$ を入れる。頂点へは $(y,t)\mapsto(y,ut)$ で押しつぶせる。ホモトピーリンクの道は、動径を直線的に $\tau$ に近づけながら $L$ の成分を終点の値に寄せていくことで、$i(e(\gamma))$ に変形できる。
距離:$L$ の距離 $d_L$ を $\min(d_L,1)$ に取り替えておき、$X$ の点を $(y,t)$($t>0$)と $*$($t=0$ の点)で表して、$d((y,t),(y',t')):=|t-t'|+\min(t,t')\,d_L(y,y')$、$d(*,(y,t)):=t$ とおく。三角不等式は、$(y_1,t_1),(y_2,t_2),(y_3,t_3)$ について $m:=\min(t_1,t_3)$ とし、$t_2\ge m$ なら $m\le\min(t_1,t_2)$、$m\le\min(t_2,t_3)$ から、$t_2< m$ なら $m\,d_L\le(m-t_2)+t_2\,d_L$($d_L\le1$)と $|t_1-t_3|+2(m-t_2)=|t_1-t_2|+|t_2-t_3|$ から従う。$*$ を含む場合は $t=0$ として同じである。$*$ を中心とする球は $\{*\}\cup L\times(0,\varepsilon)$ であり、$t>0$ の点の近くでは $d$ は $L\times\mathbb R_{>0}$ の積の距離と同値なので、$d$ は $C(L)$ の位相を定める。
1:$R((y,t),u):=(y,ut)$($u>0$)、$R(x,0):=*$、$R(*,u):=*$ とおく。$d(R((y,t),u),*)=ut$ なので $R$ は連続であり、tame の定義の条件を満たす($N=X$)。
2:$\gamma\in\operatorname{holink}(X,*)$ の $\tau>0$ での値を $\gamma(\tau)=(\eta(\tau),r(\tau))$ と書く。$\eta$、$r$ は $(0,1]$ の上で連続で、$\gamma(0)=*$ なので $\tau\to0$ で $r(\tau)=d(\gamma(\tau),*)\to0$ である。$s\in[0,1]$ について、$\tau>0$ では $H(\gamma,s)(\tau):=(\eta(\max(\tau,s)),\ (1-s)r(\tau)+s\tau)$、$H(\gamma,s)(0):=*$ とおく。$\tau>0$ なら第 2 成分は正なので $H(\gamma,s)\in\operatorname{holink}(X,*)$ であり、$H(\gamma,0)=\gamma$、$H(\gamma,1)(\tau)=(\eta(1),\tau)=i(e(\gamma))(\tau)$ である。$[0,1]$ はコンパクトな Hausdorff 空間なので、$H$ の連続性は $(\gamma,s,\tau)\mapsto H(\gamma,s)(\tau)$ の連続性に帰着する。$\tau_0>0$ の近くでは、評価写像 $(\gamma,\tau)\mapsto\gamma(\tau)$ の連続性と $\max(\tau,s)\ge\tau_0/2$ から連続である。$\tau_0=0$ の近くでは、$d(H(\gamma',s',\tau'),*)\le r'(\tau')+\tau'$ であり、$r'(\tau')=d(\gamma'(\tau'),*)\le d(\gamma(\tau'),*)+\sup_\tau d(\gamma'(\tau),\gamma(\tau))$ は $(\gamma',\tau')\to(\gamma,0)$ で $0$ に近づく(コンパクト開位相は一様収束の位相である)。よって $H$ は連続で、$i\circ e\simeq\mathrm{id}$ である。$e(i(y))=\operatorname{pr}_L(y,1)=y$ は明らかである。
3:層は $\{*\}$ と $X\setminus\{*\}$ の 2 つで、条件は $\{*\}$ が $X$ の中で tame であること(1)と、$p\colon\operatorname{holink}(X,*)\to\{*\}$ がファイブレーションであることである。1 点への写像は、初めの持ち上げを時間について定数に延ばせばよいので、ファイブレーションである。$\square$
錐の近傍をもつ点では、ホモトピーリンクはリンクを復元する。しかしホモトピー的な層別は円錐的な層別よりずっと広い。
$\theta_n:=\pi/(2n)$ とし、$\mathbb R^2$ の中の線分 $I_n:=\{u\,n^{-1}(\cos\theta_n,\sin\theta_n)\mid u\in[0,1]\}$($n\ge1$)の和を $F$ とする。$F$ は長さが $0$ に近づく線分を原点で束ねたコンパクト集合である。フィルター $\{0\}\subset F$ について、$F$ はホモトピー的に層別されているが、$[1]$-層別空間($X_0=\{0\}$)として原点で円錐的でない。
要点:原点への縮小 $x\mapsto ux$ が tame の条件を与える。円錐的だとすると、原点の近くの線分 $I_n$ から原点を除いた半開区間が $Y_\alpha\times\mathbb R_{>0}$ の形の空間と同相になり、端点の有無で矛盾する。
ホモトピー的な層別:$F$ は原点について星形なので、$R(x,u):=ux$ は $F$ に値をとり、tame の定義の条件を満たす。$\operatorname{holink}(F,0)\to\{0\}$ は 1 点への写像なのでファイブレーションである。
円錐的でないこと:原点を像に含む錐の近傍 $h\colon Z\times C(Y)\to F$ があったとし、像を $W$ とする。$h(Z\times\{*\})=W\cap\{0\}$ なので $Z$ は 1 点であり、$W\setminus\{0\}\cong Y\times\mathbb R_{>0}$ である。$W$ は原点の近傍なので、$1/n$ が十分小さい $n$ について $I_n\subset W$ である。$I_n\setminus\{0\}$ は $F\setminus\{0\}$ の連結成分である。実際、偏角 $\theta_m$($m\neq n$)は $\theta_n$ から一定の角度以上離れているので、$I_n\setminus\{0\}$ の各点はほかの線分と交わらない近傍をもち、$I_n\setminus\{0\}$ は $F\setminus\{0\}$ の中で開集合であり、閉集合でもある。よって $I_n\setminus\{0\}$ は $W\setminus\{0\}$ の連結成分でもある。$Y\times\mathbb R_{>0}$ の連結成分は $Y$ の連結成分 $Y_\alpha$ との積 $Y_\alpha\times\mathbb R_{>0}$ なので、同相写像 $\varphi\colon Y_\alpha\times\mathbb R_{>0}\to(0,1]$ がある。$\varphi(y,t)=1$ となる点をとると、$\varphi(\{y\}\times\mathbb R_{>0})$ は $1$ を含む $(0,1]$ の連結部分集合なので、$(a,1]$、$[a,1]$、$\{1\}$ のどれかの形であり、$\mathbb R_{>0}$ と同相である。ところがこれらの集合から $1$ を除くと連結(または空)なのに、$\mathbb R_{>0}$ から対応する点 $t$ を除くと連結でない。これは矛盾である。$\square$
この空間の原点は、写像柱の形の近傍をもたず、ホモトピーリンク $\operatorname{holink}(F,0)$ は可縮な成分を可算個もつ(Qui88 p. 452 の例)。
ex-ss-nonconical と ex-ss-fan のほかに、この記事の命題の仮定を外した例をまとめる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 層が局所閉であること | $\mathbb R=\mathbb Q\sqcup(\mathbb R\setminus\mathbb Q)$ | 閉包による関係が半順序になること(prop-ss-frontier) |
| 層の族の局所有限性 | $\{0\}\cup\{1/n\}$ を 1 点ずつに分けたもの | 閉包の条件から連続性が従うこと(prop-ss-closure の 2) |
| 円錐的であること | $\mathbb R=(-\infty,0]\sqcup(0,\infty)$(ex-ss-nonconical) | 各点が開錐と層の積の形の近傍をもつこと |
| 錐の近傍の存在(ホモトピーの条件だけを課す) | 長さが $0$ に近づく線分の束 $F$(ex-ss-fan) | ホモトピー的に層別されていれば円錐的であること |
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