直線の方程式と点と直線の距離は、座標平面の直線を $ax+by+c=0$($(a,b)\ne(0,0)$)と表したとき、係数ベクトル $n=(a,b)$ が直線に垂直な法線ベクトルになることを出発点にする話題である。2 直線 $ax+by+c=0$、$a'x+b'y+c'=0$ は $ab'-a'b=0$ のとき平行(一致を含む)、$aa'+bb'=0$ のとき垂直で、この判定は $y$ 軸に平行な直線にも使える。点 $(x_0,y_0)$ と直線の距離 $\frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$ は、直線上の点から $(x_0,y_0)$ へ向かうベクトルを $n$ の向きに正射影した長さで、直線上で最も近い点は垂線の足である。絶対値を外した $ax_0+by_0+c$ の符号は、点が直線のどちら側にあるかを表す。
前提知識: ベクトル, ベクトルの内積(高校数学), 三平方の定理
数学 II では、座標平面の直線を $y=mx+q$ の形で表すことから始める。$m$ は傾き、$q$ は $y$ 切片である。ただし、$y$ 軸に平行な直線 $x=2$ はこの形に書けない。そこで、すべての直線をまとめて
$$
ax+by+c=0\qquad\bigl((a,b)\ne(0,0)\bigr)
$$
の形で表す。$b\ne0$ なら $y=-\dfrac abx-\dfrac cb$ と書き直せて傾き $-\dfrac ab$ の直線になり、$b=0$ なら $a\ne0$ なので $x=-\dfrac ca$ という $y$ 軸に平行な直線になる。
点 $(x_0,y_0)$ と直線 $ax+by+c=0$ の距離は、次の公式で求まると習う。
$$
d=\frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}
$$
公式は便利だが、分子の $ax_0+by_0+c$ と分母の $\sqrt{a^2+b^2}$ がそれぞれ何を表すのかは、公式を見ただけでは分からない。この記事では次の問いに答える。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| $ax+by+c=0$ の係数 $(a,b)$ | 直線の法線ベクトル(prop-lpd-normal) | 線形汎関数を表すベクトル(prop-lpd-riesz) |
| 平行条件 $ab'-a'b=0$、垂直条件 $aa'+bb'=0$ | 法線ベクトルの平行・垂直(thm-lpd-parallel-perp) | 行列式と内積 |
| 距離の公式 $\dfrac{\lvert ax_0+by_0+c\rvert}{\sqrt{a^2+b^2}}$ | 法線方向への正射影の長さ(thm-lpd-distance) | 汎関数の値をその大きさで割ったもの(prop-lpd-dual) |
| $ax_0+by_0+c$ の符号 | 直線のどちら側にあるか(prop-lpd-sides) | 半平面、符号付き距離 |
| 平行な 2 直線の距離 $\dfrac{\lvert c-c'\rvert}{\sqrt{a^2+b^2}}$ | 同じ 1 次式の値の差(prop-lpd-parallel-distance) | 等位集合の間隔 |
以下、平面のベクトルを成分で $u=(u_1,u_2)$ と書き、内積を $u\cdot v=u_1v_1+u_2v_2$、長さを $|u|=\sqrt{u\cdot u}$ とする。点 $P=(x,y)$ と、原点から $P$ へ向かう位置ベクトル $(x,y)$ を同じ記号で表す。
実数 $a,b,c$ が $(a,b)\ne(0,0)$ を満たすとき、
$$
\ell:=\{(x,y): ax+by+c=0\}
$$
を 直線 $ax+by+c=0$ という。ベクトル $n:=(a,b)$ をこの直線の 法線ベクトル、$u:=(-b,a)$ を 方向ベクトル という。
「法線」「方向」という名前がふさわしいことを、すぐ後の prop-lpd-normal で確かめる。方程式の両辺に $0$ でない数 $k$ を掛けても、$kax+kby+kc=0$ と $ax+by+c=0$ を満たす点は同じなので、同じ直線を表す。このとき法線ベクトルも $k$ 倍になる。法線ベクトルは直線から「$0$ でない定数倍を除いて」決まる。
直線 $\ell$:$ax+by+c=0$ と、その法線ベクトル $n=(a,b)$、方向ベクトル $u=(-b,a)$ について、次が成り立つ。
方針:1 は、2 点で 1 次式の値がどちらも $0$ であることの差をとる。2 は、両方の集合が互いに含まれることを示す。
段 1(1 の証明)。$A=(x_1,y_1)$、$B=(x_2,y_2)$ が $\ell$ 上にあるので $ax_1+by_1+c=0$、$ax_2+by_2+c=0$ である。2 つ目から 1 つ目を引くと、$c$ が消えて
$$
a(x_2-x_1)+b(y_2-y_1)=0
$$
となる。左辺は $n\cdot\overrightarrow{AB}$ にほかならない。
段 2($A+tu$ は $\ell$ 上にある)。$A=(x_1,y_1)$ とすると $A+tu=(x_1-tb,\ y_1+ta)$ である。1 次式に代入すると
$$
a(x_1-tb)+b(y_1+ta)+c=(ax_1+by_1+c)+t(-ab+ab)=0+0=0
$$
なので、$A+tu$ は $\ell$ 上にある。
段 3($\ell$ の点は $A+tu$ の形)。$B=(x_2,y_2)$ を $\ell$ 上の点とし、$w:=\overrightarrow{AB}=(w_1,w_2)$ とおく。段 1 から $aw_1+bw_2=0$ である。$t:=\dfrac{-bw_1+aw_2}{a^2+b^2}$ とおく($(a,b)\ne(0,0)$ なので分母は正)。このとき
$$
tu=\left(\frac{b^2w_1-abw_2}{a^2+b^2},\ \frac{-abw_1+a^2w_2}{a^2+b^2}\right)
$$
である。$aw_1+bw_2=0$ から $-abw_2=a^2w_1$、$-abw_1=b^2w_2$ なので、第 1 成分は $\dfrac{b^2w_1+a^2w_1}{a^2+b^2}=w_1$、第 2 成分は $\dfrac{b^2w_2+a^2w_2}{a^2+b^2}=w_2$ である。よって $w=tu$、つまり $B=A+tu$ である。$\square$
prop-lpd-normal の 1 は、$n$ が直線上のどの 2 点を結ぶベクトルとも垂直であること、つまり $n$ が直線に垂直であることを言っている。2 は、直線を「1 点と方向ベクトル」で表す 媒介変数表示(媒介変数表示と曲線の長さ)と、方程式による表示が同じ集合を表すことを言っている。空間では同じ考えで、平面 $ax+by+cz=d$ の係数 $(a,b,c)$ が平面の法線ベクトルになる(空間の平面と法線ベクトル)。
2 直線の関係は、法線ベクトルどうしの関係で決まる。まず、2 つのベクトルが平行になる条件を成分で書いておく。ここで $0$ でない 2 つのベクトル $v$、$w$ が 平行 であるとは、$0$ でない実数 $k$ で $w=kv$ となるものがあることをいう。
$0$ でないベクトル $v=(v_1,v_2)$、$w=(w_1,w_2)$ について、$v$ と $w$ が平行であることと、$v_1w_2-v_2w_1=0$ であることは同値である。
方針:平行なら代入して計算する。逆は、$0$ でない成分で割って比 $k$ を作る。
段 1(平行 ⇒ $v_1w_2-v_2w_1=0$)。$w=kv$ なら $w_1=kv_1$、$w_2=kv_2$ なので $v_1w_2-v_2w_1=v_1\cdot kv_2-v_2\cdot kv_1=0$ である。
段 2($v_1w_2-v_2w_1=0$ ⇒ 平行)。$v\ne0$ なので $v_1\ne0$ または $v_2\ne0$ である。$v_1\ne0$ の場合、$k:=\dfrac{w_1}{v_1}$ とおくと $w_1=kv_1$ であり、仮定 $v_1w_2=v_2w_1$ の両辺を $v_1$ で割って $w_2=\dfrac{v_2w_1}{v_1}=kv_2$ となる。よって $w=kv$ である。$w\ne0$ なので $k\ne0$ である。$v_2\ne0$ の場合も、$k:=\dfrac{w_2}{v_2}$ として同じように $w=kv$ が得られる。$\square$
2 直線は、方向ベクトルが平行なとき 平行 であるという(この記事では、一致する場合も平行に含める)。2 直線は、方向ベクトルが垂直なとき 垂直 であるという。
2 直線 $\ell$:$ax+by+c=0$、$\ell'$:$a'x+b'y+c'=0$ について、次が成り立つ。
方針:定義どおり方向ベクトル $u=(-b,a)$、$u'=(-b',a')$ で条件を書き、成分を計算する。
段 1(平行)。$u$、$u'$ はどちらも $0$ でない。lem-lpd-parallel-vectors により、$u$ と $u'$ が平行であることは
$$
(-b)\cdot a'-a\cdot(-b')=ab'-a'b=0
$$
と同値である。
段 2(垂直)。$u$ と $u'$ が垂直であることは $u\cdot u'=0$ と同値である。
$$
u\cdot u'=(-b)(-b')+a\cdot a'=aa'+bb'
$$
なので、垂直であることは $aa'+bb'=0$ と同値である。$\square$
段 2 の計算は、法線ベクトルどうしの内積 $n\cdot n'=aa'+bb'$ と同じ値になっている。平面では方向ベクトルを $90^\circ$ 回すと法線ベクトルになるので、「方向ベクトルが垂直」と「法線ベクトルが垂直」は同じことである。同様に $ab'-a'b$ は、法線ベクトル $n$、$n'$ を並べた行列 $\begin{pmatrix}a&b\\a'&b'\end{pmatrix}$ の行列式である。行列式が $0$ になることと 2 つの行が平行になることの関係は、1次変換と行列式:面積の拡大率 で面積の言葉で扱う。
点 $(2,-1)$ を通り、直線 $3x+4y-1=0$ に平行な直線と垂直な直線を求める。
(1) 平行な直線は、法線ベクトル $(3,4)$ をそのまま使って $3x+4y+c=0$ と書ける。$(2,-1)$ を通るので $6-4+c=0$、$c=-2$ で、$3x+4y-2=0$ である。
(2) 垂直な直線は、もとの直線の方向ベクトル $(-4,3)$ を法線ベクトルにすればよい(thm-lpd-parallel-perp の 2 で $aa'+bb'=3\cdot(-4)+4\cdot3=0$)。$-4x+3y+c=0$ に $(2,-1)$ を代入して $-8-3+c=0$、$c=11$ である。$-4x+3y+11=0$、つまり $4x-3y-11=0$ である。
どちらも傾きを計算せずに求まり、分数も現れない。
点 $P$ と直線 $\ell$ の 距離 とは、$\ell$ 上の点 $Q$ を動かしたときの長さ $PQ$ の最小値のことである。最小値があるかどうかは定義からはすぐには分からないが、次の定理が、最小値があること、それを与える点、その値をまとめて与える。
直線 $\ell$:$ax+by+c=0$ と点 $P=(x_0,y_0)$ について、$n=(a,b)$ とし、
$$
k:=\frac{ax_0+by_0+c}{a^2+b^2},\qquad H:=P-kn=(x_0-ka,\ y_0-kb)
$$
とおく。このとき次が成り立つ。
証明を 2 通り与える。1 つ目は高校の教科書と同じく垂線の足を求める方法、2 つ目は法線ベクトルの向きへの正射影として見る方法である。
方針:垂線の足 $H$ を「$\overrightarrow{PH}$ が法線ベクトルに平行」という条件で求め、そこから長さを計算する。最後に三平方の定理で最小であることを確かめる。
段 1(垂線の向きは法線ベクトル)。$\ell$ に垂直なベクトル $w=(w_1,w_2)\ne0$ は、方向ベクトル $u=(-b,a)$ と垂直なので $-bw_1+aw_2=0$ を満たす。これは $aw_2-bw_1=0$ と同じで、lem-lpd-parallel-vectors($v=n$ とする)により $w$ は $n$ に平行である。そこで垂線の足を $H=P+sn=(x_0+sa,\ y_0+sb)$($s$ は実数)とおく。
段 2($H$ が $\ell$ 上にある条件)。$H$ を $\ell$ の方程式に代入すると
$$
a(x_0+sa)+b(y_0+sb)+c=(ax_0+by_0+c)+s(a^2+b^2)=0
$$
である。$a^2+b^2>0$ なので $s=-\dfrac{ax_0+by_0+c}{a^2+b^2}=-k$ と決まり、$H=P-kn$ である。これで 1 の前半が示せた。$\overrightarrow{HP}=kn$ は $n$ に平行なので、prop-lpd-normal により $\ell$ に垂直である($k=0$ のときは $P=H$ が $\ell$ 上にある)。
段 3(長さ)。$\overrightarrow{HP}=kn$ なので
$$
PH=|k|\,|n|=\frac{|ax_0+by_0+c|}{a^2+b^2}\cdot\sqrt{a^2+b^2}=\frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}
$$
である。最後の等号では $\dfrac{\sqrt{a^2+b^2}}{a^2+b^2}=\dfrac1{\sqrt{a^2+b^2}}$ を使った。
段 4(最小であること)。$Q$ を $\ell$ 上の点とする。$H$、$Q$ はどちらも $\ell$ 上にあるので、prop-lpd-normal の 1 により $n\cdot\overrightarrow{HQ}=0$ である。$\overrightarrow{PH}=-kn$ なので $\overrightarrow{PH}\cdot\overrightarrow{HQ}=-k\,(n\cdot\overrightarrow{HQ})=0$ である。$\overrightarrow{PQ}=\overrightarrow{PH}+\overrightarrow{HQ}$ の長さの 2 乗を内積で展開すると
$$
PQ^2=PH^2+2\,\overrightarrow{PH}\cdot\overrightarrow{HQ}+HQ^2=PH^2+HQ^2
$$
である(三平方の定理 を内積で書いたもの)。$HQ^2\ge0$ で、等号は $Q=H$ のときだけなので、$PQ\ge PH$ であり、$PQ=PH$ となるのは $Q=H$ のときだけである。これで 2 と 3 が示せた。$\square$
方針:$\ell$ 上の 1 点 $A$ から $P$ へ向かうベクトルを、法線ベクトル $n$ の向きの成分と、$n$ に垂直な成分に分ける。$n$ の向きの成分の長さが距離である。最後に、分子が $A$ によらないことと Cauchy–Schwarz の不等式から、$H$ が最も近いただ 1 つの点であることを確かめる。
段 1(分子の正体)。$A=(x_1,y_1)$ を $\ell$ 上の点とすると $ax_1+by_1=-c$、つまり $n\cdot A=-c$ である。したがって
$$
n\cdot\overrightarrow{AP}=n\cdot P-n\cdot A=(ax_0+by_0)-(-c)=ax_0+by_0+c
$$
である。距離の公式の分子 $ax_0+by_0+c$ は、$\overrightarrow{AP}$ と法線ベクトルの内積である。右辺には $A$ が現れないので、この値は $\ell$ 上のどの点を $A$ に選んでも同じである。
段 2(正射影に分ける)。$\overrightarrow{AP}$ の $n$ への正射影を
$$
p:=\frac{n\cdot\overrightarrow{AP}}{|n|^2}\,n=\frac{ax_0+by_0+c}{a^2+b^2}\,n=kn
$$
とし、$r:=\overrightarrow{AP}-p$ とおく。$n\cdot r=n\cdot\overrightarrow{AP}-k|n|^2=(ax_0+by_0+c)-(ax_0+by_0+c)=0$ なので、$r$ は $n$ に垂直である。
段 3($A+r$ は垂線の足)。点 $A+r$ について $n\cdot(A+r)=n\cdot A+0=-c$ なので、$A+r$ は $\ell$ 上にある。また $A+r=A+\overrightarrow{AP}-kn=P-kn=H$ である。こうして $\overrightarrow{AP}=\overrightarrow{AH}+\overrightarrow{HP}$ は「直線に沿う成分 $r=\overrightarrow{AH}$」と「法線方向の成分 $p=\overrightarrow{HP}$」への分解になっている。
段 4(長さ)。距離は法線方向の成分の長さで、
$$
|p|=\frac{|n\cdot\overrightarrow{AP}|}{|n|}=\frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}
$$
である。
段 5(最も近い点)。$Q$ を $\ell$ 上の点とし、$\overrightarrow{QP}=(x,y)$ とおく。段 1 で $A$ を $Q$ に替えると $n\cdot\overrightarrow{QP}=ax+by=ax_0+by_0+c$ である。展開すると
$$
(a^2+b^2)(x^2+y^2)-(ax+by)^2=(ay-bx)^2\ge0
$$
なので(prf-lpd-dual の段 1 と同じ計算)、$|ax_0+by_0+c|\le|n|\,PQ$、つまり $PQ\ge\dfrac{|ax_0+by_0+c|}{|n|}=|p|=PH$ である。等号が成り立つのは $ay-bx=0$ のときで、$\overrightarrow{QP}=0$ であるか、lem-lpd-parallel-vectors により $\overrightarrow{QP}$ が $n$ に平行であるかのどちらかである。どちらの場合も $\overrightarrow{QP}=sn$($s$ は実数)と書け、$n\cdot\overrightarrow{QP}=s|n|^2=ax_0+by_0+c$ から $s=k$、つまり $Q=P-kn=H$ である。よって $\ell$ 上で $P$ に最も近い点は $H$ ただ 1 つである。また、段 3 で $A$ を $Q$ に替えると $\overrightarrow{QP}=\overrightarrow{QH}+\overrightarrow{HP}$ で、$\overrightarrow{QH}=r$ は $n$ に垂直、$\overrightarrow{HP}=kn$ なので $\overrightarrow{QH}\cdot\overrightarrow{HP}=0$ であり、内積で展開して $PQ^2=PH^2+HQ^2$ となる。これで 2 と 3 が示せた。$\square$
2 つ目の証明から、公式の分子と分母の意味が読みとれる。分子 $ax_0+by_0+c$ は $\overrightarrow{AP}$ と $n$ の内積であり、分母 $\sqrt{a^2+b^2}$ で割るのは、$n$ を長さ $1$ のベクトル $\dfrac{n}{|n|}$ に取り替えるためである。長さ $1$ のベクトルとの内積は、そのベクトルの向きへの正射影の(符号付きの)長さになる。正射影を直線より大きな部分空間への正射影に広げる話は 正射影と射影行列 で扱う。空間の点と平面の距離 $\dfrac{|ax_0+by_0+cz_0-d|}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}$ も、同じ考えで得られる(空間の平面と法線ベクトル)。
直線 3x + 4y − 1 = 0 と点 P(1, 2)。垂線 PH は法線ベクトル (3, 4) と平行で、直線上の他の点 Q については PQ² = PH² + HQ² となる
距離は「最小値」として定義したので、2次関数の最大・最小 の方法で直接求めることもできる。
$P=(1,2)$、$\ell$:$3x+4y-1=0$ とする。ex-lpd-normal の点 $A(-1,1)$ と、方向ベクトルの $-1$ 倍 $(4,-3)$ を使うと、prop-lpd-normal の 2 により $\ell$ 上の点は $Q=(-1+4t,\ 1-3t)$($t$ は実数)と書ける。
$$
PQ^2=(-2+4t)^2+(-1-3t)^2=(4-16t+16t^2)+(1+6t+9t^2)=25t^2-10t+5
$$
である。平方完成すると
$$
25t^2-10t+5=25\left(t^2-\frac25t\right)+5=25\left(t-\frac15\right)^2-1+5=25\left(t-\frac15\right)^2+4
$$
なので、$PQ^2$ は $t=\dfrac15$ で最小値 $4$ をとる。距離は $\sqrt4=2$ で、そのときの点は $Q=\left(-1+\dfrac45,\ 1-\dfrac35\right)=\left(-\dfrac15,\ \dfrac25\right)=H$ である。平方完成の $25\left(t-\dfrac15\right)^2$ の部分が $HQ^2$、定数 $4$ が $PH^2$ で、thm-lpd-distance の 2 の等式がそのまま現れている。
円の中心と直線の距離を半径と比べると、円と直線の共有点の個数が分かる。この使い方は 円と直線の位置関係 で扱う。
距離の公式から絶対値を外すと、点が直線の「どちら側」にあるかが分かる。
直線 $\ell$:$ax+by+c=0$ と点 $P=(x_0,y_0)$ について、
$$
\delta(P):=\frac{ax_0+by_0+c}{\sqrt{a^2+b^2}}
$$
を、$P$ の $\ell$ からの 符号付き距離 という。$|\delta(P)|$ が $P$ と $\ell$ の距離である。
方程式全体に $-1$ を掛けると法線ベクトルの向きが逆になり、符号付き距離の符号も逆になる。符号付き距離は、直線だけでなく法線ベクトルの向きまで決めてはじめて決まる量である。
$\ell$:$3x+4y-1=0$ のとき、$\delta(1,2)=\dfrac{10}5=2$、$\delta(0,0)=\dfrac{-1}5=-\dfrac15$、$\delta(-2,1)=\dfrac{-6+4-1}5=-\dfrac35$ である。同じ直線を $-3x-4y+1=0$ と書くと、符号がすべて逆になり $-2$、$\dfrac15$、$\dfrac35$ となる。
直線 $\ell$:$ax+by+c=0$ について $f(x,y):=ax+by+c$ とおく。
方針:1 は thm-lpd-distance の $H=P-kn$ を書き直す。2 は、線分上の点を $t$ で表すと $f$ の値が $t$ の 1 次関数になることを使う。
段 1(1 の証明)。thm-lpd-distance により $\overrightarrow{HP}=kn$、$k=\dfrac{f(P)}{|n|^2}$ である。$\dfrac{f(P)}{|n|^2}\,n=\dfrac{f(P)}{|n|}\cdot\dfrac{n}{|n|}=\delta(P)\,\dfrac{n}{|n|}$ なので、$\overrightarrow{HP}$ は、$\delta(P)>0$(つまり $f(P)>0$)なら $n$ と同じ向き、$\delta(P)<0$ なら逆向きである。
段 2(線分上の値)。$P=(x_1,y_1)$、$Q=(x_2,y_2)$ とし、$0\le t\le1$ に対して $X_t:=(1-t)P+tQ$ とおく。$X_0=P$、$X_1=Q$ で、$t$ が $0$ から $1$ まで動くと $X_t$ は線分 $PQ$ 全体を動く。$f$ に代入すると
$$
f(X_t)=a\bigl((1-t)x_1+tx_2\bigr)+b\bigl((1-t)y_1+ty_2\bigr)+\bigl((1-t)+t\bigr)c=(1-t)f(P)+tf(Q)
$$
である。
段 3(同符号なら交わらない)。$f(P)$、$f(Q)$ がともに正なら、$0\le t\le1$ で $1-t\ge0$、$t\ge0$ であり、この 2 つは同時には $0$ にならないので、$(1-t)f(P)+tf(Q)>0$ である。ともに負のときも同様に $f(X_t)<0$ である。どちらの場合も線分上に $f=0$ の点、つまり $\ell$ 上の点はない。
段 4(異符号なら交わる)。$f(P)$、$f(Q)$ が異符号なら $f(P)-f(Q)\ne0$ で、$t^*:=\dfrac{f(P)}{f(P)-f(Q)}$ とおく。$f(P)$ と $-f(Q)$ は同符号なので、分母 $f(P)-f(Q)=f(P)+\bigl(-f(Q)\bigr)$ は分子 $f(P)$ と同符号で、$|f(P)-f(Q)|=|f(P)|+|f(Q)|>|f(P)|$ である。よって $0< t^*<1$ である。
$$
f(X_{t^*})=f(P)+t^*\bigl(f(Q)-f(P)\bigr)=f(P)-f(P)=0
$$
なので、$X_{t^*}$ は線分 $PQ$ と $\ell$ の共有点である。$\square$
1 次式 3x + 4y − 1 の値が k になる直線(k = −10, −5, 0, 5, 10)。法線ベクトルの向きに進むと値が増え、値 0 の直線の両側で符号が変わる
$\ell$:$3x+4y-1=0$、$f(x,y)=3x+4y-1$ とする(図 2)。
(1) $P(1,2)$ では $f=10>0$、$O(0,0)$ では $f=-1<0$ なので、$P$ と $O$ は $\ell$ の反対側にある。線分 $PO$ 上の点 $X_t=(1-t,\ 2-2t)$ では $f(X_t)=(1-t)\cdot10+t\cdot(-1)=10-11t$ で、$t=\dfrac{10}{11}$ のとき $0$ になる。
(2) $P(1,2)$ と $R(-2,1)$($f=-3$)も反対側にある。$t^*=\dfrac{10}{10-(-3)}=\dfrac{10}{13}$ で、共有点は $\left(1-3\cdot\dfrac{10}{13},\ 2-\dfrac{10}{13}\right)=\left(-\dfrac{17}{13},\ \dfrac{16}{13}\right)$ である。$3\cdot\left(-\dfrac{17}{13}\right)+4\cdot\dfrac{16}{13}-1=\dfrac{-51+64-13}{13}=0$ で、確かに $\ell$ 上にある。
(3) $O$ と $R$ はどちらも $f<0$ なので同じ側にあり、線分 $OR$ は $\ell$ と交わらない。
図 2 のように、$f(x,y)=k$ となる点の集まりは、$k$ を変えると $\ell$ と平行に動く直線になる。prop-lpd-sides により、$ax+by+c>0$ を満たす点全体は $\ell$ の片側、つまり $\ell$ を境界とする 半平面 である。連立 1 次不等式の表す領域は半平面の共通部分であり、その上で 1 次式の最大・最小を考えるのが 不等式の表す領域と線形計画法 である。
距離の公式を 2 本の直線に使う。
法線ベクトルが同じ 2 直線 $\ell$:$ax+by+c=0$ と $\ell'$:$ax+by+c'=0$ について、$\ell$ 上のどの点から $\ell'$ までの距離も
$$
\frac{|c-c'|}{\sqrt{a^2+b^2}}
$$
に等しい。
方針:$\ell$ 上の点の座標を thm-lpd-distance の 3 に代入する。
$P=(x_0,y_0)$ を $\ell$ 上の点とすると $ax_0+by_0=-c$ である。thm-lpd-distance の 3 を $\ell'$ に使うと、$P$ と $\ell'$ の距離は
$$
\frac{|ax_0+by_0+c'|}{\sqrt{a^2+b^2}}=\frac{|-c+c'|}{\sqrt{a^2+b^2}}=\frac{|c-c'|}{\sqrt{a^2+b^2}}
$$
である。これは $P$ のとり方によらない。$\square$
次に、交わる 2 直線から等しい距離にある点を調べる。数学 A で学ぶように、角の内部の点が角の 2 辺から等距離にあることと、その点が角の二等分線上にあることは同値である。したがって、2 直線から等距離にある点の集合は、2 直線のなす角の二等分線(2 本)になる。座標では次のように求まる。
平行でない 2 直線 $\ell_1$:$a_1x+b_1y+c_1=0$、$\ell_2$:$a_2x+b_2y+c_2=0$ について、$f_i(x,y):=a_ix+b_iy+c_i$、$n_i:=(a_i,b_i)$($i=1,2$)とおく。$\ell_1$ と $\ell_2$ から等しい距離にある点の集合は、2 本の直線
$$
\frac{f_1(x,y)}{|n_1|}-\frac{f_2(x,y)}{|n_2|}=0,\qquad \frac{f_1(x,y)}{|n_1|}+\frac{f_2(x,y)}{|n_2|}=0
$$
の和集合であり、この 2 直線は互いに垂直である。
方針:距離の公式で条件を式にし、$|X|=|Y|\iff X=Y$ または $X=-Y$ を使う。最後に 2 本の法線ベクトルが垂直であることを内積で確かめる。
段 1(条件を式にする)。thm-lpd-distance の 3 により、点 $P$ が 2 直線から等距離にあることは
$$
\frac{|f_1(P)|}{|n_1|}=\frac{|f_2(P)|}{|n_2|}
$$
と同値である。実数 $X$、$Y$ について $|X|=|Y|$ は「$X=Y$ または $X=-Y$」と同値なので、これは $\dfrac{f_1(P)}{|n_1|}=\dfrac{f_2(P)}{|n_2|}$ または $\dfrac{f_1(P)}{|n_1|}=-\dfrac{f_2(P)}{|n_2|}$ と同値である。
段 2(どちらも直線になる)。$e_i:=\dfrac{n_i}{|n_i|}$ とおく(長さ $1$ の法線ベクトル)。2 つの式の $x$、$y$ の係数を並べたベクトルは $e_1-e_2$ と $e_1+e_2$ である。$\ell_1$、$\ell_2$ は平行でないので $n_1$、$n_2$ は平行でなく、$e_2\ne e_1$ かつ $e_2\ne-e_1$ である。よって $e_1-e_2\ne0$、$e_1+e_2\ne0$ であり、2 つの式はどちらも直線を表す。
段 3(垂直)。2 本の法線ベクトルの内積は
$$
(e_1-e_2)\cdot(e_1+e_2)=|e_1|^2+e_1\cdot e_2-e_2\cdot e_1-|e_2|^2=1-1=0
$$
なので、2 本の直線は垂直である。$\square$
3 辺が x = 0、y = 0、3x + 4y − 12 = 0 の直角三角形。3 辺から等距離の点 I(1, 1) が内心で、頂点 (4, 0) での 2 本の二等分線は直交する
3 点 $O(0,0)$、$A(4,0)$、$B(0,3)$ を頂点とする三角形の内心 $I$(3 辺から等距離にある、三角形の内部の点)を求める(図 3)。辺 $AB$ は $\dfrac x4+\dfrac y3=1$、つまり $3x+4y-12=0$ である。
段 1。$I$ は辺 $OA$($x$ 軸)と辺 $OB$($y$ 軸)から等距離で、第 1 象限の内部にあるので $I=(r,r)$($r>0$)と書ける。$r$ は $x$ 軸・$y$ 軸までの距離である。
段 2。$I$ は三角形の内部にあり、原点と同じく $3x+4y-12<0$ の側にある(原点で $-12<0$)。したがって $I$ と辺 $AB$ の距離は $\dfrac{-(3r+4r-12)}5=\dfrac{12-7r}5$ である。これが $r$ に等しいので $12-7r=5r$、$r=1$ である。内心は $I(1,1)$、内接円の半径は $1$ である。
段 3(頂点 $A$ の二等分線)。$\ell_1$:$3x+4y-12=0$($|n_1|=5$)と $\ell_2$:$y=0$($n_2=(0,1)$)に prop-lpd-bisector を使うと、$\dfrac{3x+4y-12}5=\pm y$ から $3x-y-12=0$ と $3x+9y-12=0$(つまり $x+3y-4=0$)の 2 本である。$I(1,1)$ は $1+3-4=0$ を満たすので、三角形の内側の二等分線は $x+3y-4=0$ である。2 本の法線ベクトルの内積は $(3,-1)\cdot(1,3)=3-3=0$ で、確かに垂直である。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| $(a,b)\ne(0,0)$ | $ax+by+c=0$ は直線を表す/距離の公式が意味をもつ | ex-lpd-zero-coeff |
| 直線が $y=mx+q$ の形に書けること | 傾きによる判定(平行 $\iff m=m'$、垂直 $\iff mm'=-1$) | ex-lpd-vertical |
| 距離をふつうの長さ(三平方の定理)で測ること | 距離は $\dfrac{\lvert ax_0+by_0+c\rvert}{\sqrt{a^2+b^2}}$ | ex-lpd-taxicab |
| 2 直線の法線ベクトルをそろえること | 平行な 2 直線の距離は $\dfrac{\lvert c-c'\rvert}{\sqrt{a^2+b^2}}$ | ex-lpd-parallel-distance (2) |
$(a,b)=(0,0)$ のとき、方程式は $0\cdot x+0\cdot y+c=0$、つまり $c=0$ になる。
直線 $x=1$ と $y=2$ は垂直だが、$x=1$ には傾きがないので「$mm'=-1$」は使えない。係数で書くと $1\cdot x+0\cdot y-1=0$ と $0\cdot x+1\cdot y-2=0$ で、$aa'+bb'=1\cdot0+0\cdot1=0$ なので、thm-lpd-parallel-perp の 2 により垂直と判定できる。
傾きがある場合には、thm-lpd-parallel-perp から高校の条件が出てくる。$y=mx+q$ は $mx-y+q=0$ なので $(a,b)=(m,-1)$ であり、$y=m'x+q'$ では $(a',b')=(m',-1)$ である。
$$
ab'-a'b=-m+m',\qquad aa'+bb'=mm'+1
$$
なので、平行 $\iff m=m'$、垂直 $\iff mm'=-1$ となる。傾きの条件は、2 本とも $y=mx+q$ の形に書けるという仮定のもとでだけ使える。その仮定を外すと、判定が「使えない」のであって、係数による判定 $ab'-a'b=0$、$aa'+bb'=0$ はそのまま使える。
碁盤の目の道を縦と横にしか進めない町を考え、2 点 $(x_1,y_1)$、$(x_2,y_2)$ の「道のり」を $|x_1-x_2|+|y_1-y_2|$ で測る。点 $P(1,2)$ から直線 $\ell$:$3x+4y-1=0$ までの道のりの最小値を求める。
段 1(下からの評価)。$Q=(x,y)$ を $\ell$ 上の点とすると $3x+4y=1$ なので
$$
3(1-x)+4(2-y)=11-(3x+4y)=11-1=10
$$
である。$3\le4$ と、実数 $X$ について $X\le|X|$ であることを使うと
$$
10=3(1-x)+4(2-y)\le3|1-x|+4|2-y|\le4\bigl(|1-x|+|2-y|\bigr)
$$
なので、道のりは $\dfrac{10}4=\dfrac52$ 以上である。
段 2(最小になる点)。$P$ から真下に進んで $\ell$ に着く点 $Q=\left(1,-\dfrac12\right)$ をとると、$3\cdot1+4\cdot\left(-\dfrac12\right)-1=0$ で $Q$ は $\ell$ 上にあり、道のりは $0+\left(2+\dfrac12\right)=\dfrac52$ である。
したがって道のりで測った距離は $\dfrac52$ であり、ふつうの距離 $2$(ex-lpd-hs-distance)とは違う。距離の公式は、長さを三平方の定理で測ることを前提にしている。prf-lpd-distance-foot の段 4 で内積による展開 $PQ^2=PH^2+HQ^2$ を使ったのが、その前提を使った箇所である。
距離の公式の分母 $\sqrt{a^2+b^2}$ は「1 次式 $ax+by$ の大きさ」と見ることができる。これが ex-lpd-taxicab の $\dfrac{10}{4}$ の $4$ とどう対応するかも、この見方で分かる。
写像 $\varphi$ が平面のベクトル $v$ に実数 $\varphi(v)$ を対応させ、すべてのベクトル $v$、$w$ と実数 $t$ について
$$
\varphi(v+w)=\varphi(v)+\varphi(w),\qquad \varphi(tv)=t\,\varphi(v)
$$
を満たすとき、$\varphi$ を平面上の 線形汎関数 という。
$\varphi$ を平面上の線形汎関数とし、$e_1=(1,0)$、$e_2=(0,1)$、$n:=\bigl(\varphi(e_1),\varphi(e_2)\bigr)$ とおく。このとき、すべてのベクトル $v$ について $\varphi(v)=n\cdot v$ である。このような $n$ はただ 1 つである。
方針:$v$ を $e_1$、$e_2$ で書き、線形性を 2 回使う。
段 1(表示)。$v=(x,y)=xe_1+ye_2$ なので、線形汎関数の 2 つの性質から
$$
\varphi(v)=\varphi(xe_1)+\varphi(ye_2)=x\,\varphi(e_1)+y\,\varphi(e_2)=n\cdot v
$$
である。
段 2(ただ 1 つ)。別の $n'$ でもすべての $v$ について $\varphi(v)=n'\cdot v$ なら、$v=e_1$ として $n$ と $n'$ の第 1 成分が、$v=e_2$ として第 2 成分が一致する。$\square$
こうして、直線の方程式が必ず $ax+by+c=0$ の形になり、係数 $(a,b)$ がベクトルとして意味をもつ理由が分かる。直線とは「$0$ でない線形汎関数 $\varphi$ の等位集合」であり、$(a,b)$ はその $\varphi$ を内積で表すベクトルである。空間での同じ主張は 空間の平面と法線ベクトル にあり、有限次元の内積空間では Riesz の表現定理と呼ばれる(Axl24 の 6.42)。無限次元の内積空間ではこのままでは成り立たないことがあり、完備な内積空間(Hilbert 空間)の上の連続な線形汎関数に限って同じ主張が成り立つ(この記事では証明しない)。
線形汎関数の「大きさ」を、長さ $1$ のベクトルに対する値の絶対値の最大値で測る。
$\varphi(v)=n\cdot v$、$n=(a,b)\ne0$ とし、
$$
\|\varphi\|:=\bigl(|v|=1\text{ となるベクトル }v\text{ についての }|\varphi(v)|\text{ の最大値}\bigr)
$$
とおく。このとき次が成り立つ。
方針:1 は、2 次元の Cauchy–Schwarz の不等式を展開で示し、等号の成り立つ $v$ を挙げる。2 は、1 の不等式を $\overrightarrow{QP}$ に使って下からの評価を作り、垂線の足で等号になることを確かめる。
段 1(Cauchy–Schwarz の不等式)。$v=(x,y)$ について、展開して整理すると
$$
(a^2+b^2)(x^2+y^2)-(ax+by)^2=a^2y^2-2abxy+b^2x^2=(ay-bx)^2\ge0
$$
である。よって $(ax+by)^2\le(a^2+b^2)(x^2+y^2)$、つまり $|n\cdot v|\le|n|\,|v|$ である。
段 2(1 の証明)。$|v|=1$ なら段 1 から $|\varphi(v)|\le|n|$ である。$v=\dfrac{n}{|n|}$ とすると $|v|=1$ で、$\varphi(v)=\dfrac{n\cdot n}{|n|}=|n|$ なので、最大値は $|n|$ である。
段 3(2 の下からの評価)。$Q$ を $\ell$ 上の点で $Q\ne P$ とする。$\varphi(Q)=d$ なので、線形性から $\varphi(P)-d=\varphi(P)-\varphi(Q)=\varphi(\overrightarrow{QP})$ である。$v:=\dfrac{\overrightarrow{QP}}{PQ}$ は長さ $1$ なので、段 2 から $|\varphi(v)|\le\|\varphi\|$、両辺に $PQ$ を掛けて
$$
|\varphi(P)-d|=|\varphi(\overrightarrow{QP})|\le\|\varphi\|\cdot PQ
$$
である。よって $PQ\ge\dfrac{|\varphi(P)-d|}{\|\varphi\|}$ である($Q=P$ のときは $\varphi(P)=d$ で、両辺とも $0$ である)。
段 4(等号)。$\ell$ は $ax+by-d=0$ なので、thm-lpd-distance の垂線の足 $H$ で $PH=\dfrac{|\varphi(P)-d|}{|n|}=\dfrac{|\varphi(P)-d|}{\|\varphi\|}$ となる。段 3 と合わせて、最小値はこの値である。$\square$
段 1 は、ベクトルの成分が 2 つの場合の Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学) である。prop-lpd-dual の 2 は、距離の公式を「直線を表す 1 次式の値のずれ $|\varphi(P)-d|$ を、1 次式の大きさ $\|\varphi\|$ で割ったもの」と読む。分母 $\sqrt{a^2+b^2}$ は、長さ $1$ だけ動いたときに 1 次式の値がどれだけ変わりうるかの最大値である。
ex-lpd-taxicab の道のり $|x|+|y|$ で長さを測ると、$\varphi(x,y)=3x+4y$ の大きさは「$|x|+|y|=1$ のときの $|3x+4y|$ の最大値」になる。$|3x+4y|\le3|x|+4|y|\le4(|x|+|y|)=4$ で、$(x,y)=(0,1)$ のとき $4$ になるので、大きさは $4=\max(3,4)$ である。prop-lpd-dual の 2 と同じ形の式 $\dfrac{|\varphi(P)-d|}{4}=\dfrac{|11-1|}{4}=\dfrac52$ が、ex-lpd-taxicab で求めた道のりの距離に一致する。
一般に、ベクトルの長さの測り方(ノルム)を 1 つ決めると、それに応じて線形汎関数の大きさ(双対ノルム)が決まる。ふつうの長さの双対ノルムはふつうの長さであり、$|x|+|y|$ の双対ノルムは $\max(|a|,|b|)$ である(BV04 の §A.1.6。一般のノルムについてはこの記事では証明しない)。
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