半正多面体(Archimedean solid)とは、どの面も正多角形で、正多角形が 2 種類以上あり、多面体を自分自身に重ねる回転・鏡映でどの頂点もどの頂点に移せる凸多面体のうち、角柱・反角柱を除いたものであり、切頂四面体・立方八面体・切頂二十面体など 13 個ある。分類の中心となる定理は、面がすべて正多角形で、どの頂点にも 3 枚の面が同じ並び方 $p.q.r$ で集まる凸多面体では、$(p,q,r)$ が正多面体・角柱の頂点の形か、$3.6.6$、$3.8.8$、$3.10.10$、$4.6.6$、$4.6.8$、$4.6.10$、$5.6.6$ の 7 通りに限られることである。証明には、頂点の角の和が $360^\circ$ より小さいことと、奇数角形の面のまわりを 2 種類の面で交互に囲めないことを使う。
前提知識: 正多面体の分類, Descartesの角欠損定理, 正多角形の敷き詰め, Eulerの多面体定理(高校数学)
正多面体は、面がすべて合同な正多角形で、どの頂点にも同じ枚数の面が集まる凸多面体であり、5 種類しかない(正多面体の分類)。面の種類を 2 つ以上にしてよいことにすると、どんな立体が作れるだろうか。いちばん簡単な作り方は、正多面体の角を切り落とすことである。
4 点 $(3,3,3)$、$(3,-3,-3)$、$(-3,3,-3)$、$(-3,-3,3)$ を頂点とする正四面体を考える。どの 2 点の距離も $\sqrt{0^2+6^2+6^2}=6\sqrt2$ である。
各頂点で、そこから出る 3 本の辺を、頂点から $\frac13$ のところで結ぶ平面で角を切り落とす。たとえば頂点 $(3,3,3)$ から $(3,-3,-3)$ へ向かう辺の $\frac13$ の点は
$$
(3,3,3)+\frac13\bigl((3,-3,-3)-(3,3,3)\bigr)=(3,1,1)
$$
である。同じ計算で、切り口の点は 12 個あり、座標は $(3,1,1)$ の成分を並べかえて、負の符号を偶数個($0$ 個か $2$ 個)つけたもの
$$
(3,1,1),\ (1,3,1),\ (1,1,3),\ (3,-1,-1),\ (-1,3,-1),\ (-1,-1,3),\ \dots
$$
になる。
(1) 切り口は 4 つの正三角形である。たとえば頂点 $(3,3,3)$ の切り口 $(3,1,1)$、$(1,3,1)$、$(1,1,3)$ は、どの 2 点の距離も $\sqrt{4+4+0}=2\sqrt2$ である。
(2) もとの 4 枚の正三角形の面は、3 つの角を切られて六角形になる。1 本の辺 $6\sqrt2$ から両端の $\frac13$ ずつ $2\sqrt2$ を除くと、真ん中に $2\sqrt2$ が残る。切り口の辺も $2\sqrt2$ なので、六角形の 6 辺はどれも $2\sqrt2$ で、切り取られた面の角の部分は、2 辺が $2\sqrt2$ で間の角が $60^\circ$ の三角形、つまり正三角形なので、六角形の内角はどれも $180^\circ-60^\circ=120^\circ$ である。よって正六角形である。
(3) 新しい頂点 12 個のどれにも、正三角形 1 枚と正六角形 2 枚が集まる。面は $F=4+4=8$ 枚、辺は面ごとに数えて $\dfrac{3\cdot4+6\cdot4}2=18$ 本で、$V-E+F=12-18+8=2$ である。
この立体を 切頂四面体 という(図 1)。
立方体 $-1\le x,y,z\le1$ の各頂点で、そこから出る 3 本の辺の中点を結ぶ平面で角を切り落とす。辺の中点は $(\pm1,\pm1,0)$、$(\pm1,0,\pm1)$、$(0,\pm1,\pm1)$ の 12 個で、これが新しい頂点になる。切り口は 1 辺 $\sqrt2$ の正三角形 8 枚、もとの正方形の面は各辺の中点を結んだ 1 辺 $\sqrt2$ の正方形 6 枚になる(図 2)。どの頂点にも正三角形・正方形・正三角形・正方形の順に 4 枚が集まる。
この立体は 立方八面体 で、正多面体の分類 の反例「立方八面体」で、面が 2 種類になると正多面体の分類が成り立たなくなる例として出てくる。
正四面体の 4 つの角(橙)を辺の 3 分の 1 のところで切り取ると、正三角形 4 枚と正六角形 4 枚の切頂四面体になる
立方体の 8 つの角(橙)を辺の中点まで切り取ると、正三角形 8 枚と正方形 6 枚の立方八面体になる
どちらも、頂点のまわりの面の並び方がどの頂点でも同じである。この性質がこの記事の主役である。
この記事では次の問いに答える。
| 高校での見方 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 頂点に集まる正多角形の並び | 頂点の形 $p.q.r$ | 頂点配置 |
| 角の和は $360^\circ$ より小さい | $\frac1p+\frac1q+\frac1r>\frac12$ | 球面の Euler 標数が正 |
| 奇数角形のまわりを交互に囲めない | 奇数角形の補題 | 長さが奇数の輪は 2 色で塗り分けられない |
| どの頂点から見ても同じ形 | 頂点が移り合う | 頂点推移的な多面体、対称性の群 |
多面体と凸多面体は Eulerの多面体定理(高校数学) の定義「この記事での多面体」と同じ意味で使う。特に、どの辺もちょうど 2 枚の面に共有され、どの頂点のまわりにも面が 1 つの輪のように並ぶ(隣り合う面どうしは、その頂点から出る辺を共有する)。
面がすべて正多角形の多面体の頂点 $v$ を、正 $p_1$ 角形、正 $p_2$ 角形、…、正 $p_k$ 角形がこの順に($v$ のまわりを 1 周する順に)囲むとき、列 $p_1.p_2.\cdots.p_k$ を $v$ の 頂点の形 という。1 周の出発点と回る向きは選べるので、列を巡回させたものや逆順にしたものは同じ頂点の形とみなす。
これは 正多角形の敷き詰め の定義「頂点の形」と同じ書き方である。敷き詰めでは頂点のまわりの角の和がちょうど $360^\circ$ だったが、凸多面体では $360^\circ$ より小さい。
凸多面体が次の条件をすべて満たすとき、半正多面体(Archimedes の立体)という。
(R1) どの面も正多角形である。
(R2) 面の正多角形は 2 種類以上ある。
(R3) どの 2 つの頂点 $u$、$w$ についても、多面体を自分自身にぴったり重ねる回転または鏡映で、$u$ を $w$ に移すものがある。
(R4) 角柱(2 枚の合同な正 $n$ 角形を平行に置き、側面を正方形で囲んだ立体)でも、反角柱(2 枚の合同な正 $n$ 角形をずらして平行に置き、側面を正三角形で囲んだ立体)でもない。
条件 (iii) を満たす多面体では、どの頂点の頂点の形も同じである。
条件 (iii) から「どの頂点の頂点の形も同じ」が出るのは、頂点を移す回転・鏡映が面を合同な面に移し、頂点のまわりの並び方も保つからである。角柱と反角柱は、立方体(正四角柱)と正八面体(正三角反角柱)になる場合を除いて条件 (i)〜(iii) を満たすが、$n=3,4,5,\dots$ と限りなく続く 2 つの列なので、別に扱い、条件 (iv) で除く。この定義は Wei26a の定義(正多角形が 2 種類以上、どの頂点のまわりも同じ並び方、非常に高い対称性をもつので角柱・反角柱を除く)に合わせたもので、Wei26a によれば、半正多面体はちょうど 13 個ある。この記事では、13 個で尽きることの全部は証明せず、頂点に 3 枚の面が集まる場合を thm-ars-main で調べる。
(2) 正方形 2 枚を $45^\circ$ ずらして平行に置き、側面を 8 枚の正三角形で囲むと、正四角反角柱になる。どの頂点も $3.3.3.4$ である。
凸多面体の面がすべて正多角形で、どの頂点にもちょうど 3 枚の面が集まり、どの頂点の頂点の形も同じ $p.q.r$ であるとする。$p\le q\le r$ と並べると、$(p,q,r)$ は次のどれかである。
(1) 正多面体の $(3,3,3)$、$(4,4,4)$、$(5,5,5)$
(2) 角柱の $(3,4,4)$ と $(4,4,n)$($n\ge5$)
(3) $(3,6,6)$、$(3,8,8)$、$(3,10,10)$、$(4,6,6)$、$(4,6,8)$、$(4,6,10)$、$(5,6,6)$ の 7 通り
証明には 2 つの補題を使う。1 つめは角の大きさの条件、2 つめは奇数角形のまわりの並び方の条件である。
凸多面体の 1 つの頂点に集まる面の角の和は $360^\circ$ より小さい。これは 正多面体の分類 の補題「凸多面体の頂点の角の和」で証明されている。正 $n$ 角形の内角は $180^\circ-\dfrac{360^\circ}n$ である(多角形の内角の和と外角の和)。
凸多面体の頂点に正 $p$ 角形、正 $q$ 角形、正 $r$ 角形の 3 枚が集まるなら
$$
\frac1p+\frac1q+\frac1r>\frac12
$$
である。
正多面体の分類 の補題「凸多面体の頂点の角の和」の不等式に、3 つの内角を入れると
$$
\left(180^\circ-\frac{360^\circ}p\right)+\left(180^\circ-\frac{360^\circ}q\right)+\left(180^\circ-\frac{360^\circ}r\right)<360^\circ
$$
である。左辺は $540^\circ-360^\circ\left(\frac1p+\frac1q+\frac1r\right)$ なので、移項して $180^\circ<360^\circ\left(\frac1p+\frac1q+\frac1r\right)$ を得る。両辺を $360^\circ$ で割ると $\frac1p+\frac1q+\frac1r>\frac12$ である。$\square$
多面体の面がすべて正多角形で、どの頂点にもちょうど 3 枚の面が集まり、どの頂点の頂点の形も同じ $a.b.c$ であるとする。$a$ が奇数ならば $b=c$ である。
方針:正 $a$ 角形の面 $P$ を 1 つとり、$P$ の辺をとなりの面の種類で 1 周たどる。$b\ne c$ なら、となりの種類が交互に並ぶので、辺の数 $a$ が偶数でなければならない。
段 1(となりの面)。どの頂点の形も $a.b.c$ なので、正 $a$ 角形の面 $P$ がある。$P$ の各辺は、$P$ ともう 1 枚の面にちょうど共有される。この 1 枚を、その辺の となりの面 とよぶ。
段 2(1 つの頂点で)。$P$ の頂点 $v$ には、$P$ と 2 枚の面 $X$、$Y$ の 3 枚が集まる。$v$ の頂点の形は $a.b.c$ で、そのうちの $a$ の 1 つが $P$ にあたるので、$X$、$Y$ は正 $b$ 角形と正 $c$ 角形である。3 枚は $v$ のまわりに輪のように並ぶので、$P$ は $X$、$Y$ のどちらとも隣り合い、$P$ の $v$ から出る 2 本の辺の一方を $X$ と、他方を $Y$ と共有する。よって、$P$ の $v$ から出る 2 本の辺のとなりの面は、一方が正 $b$ 角形、他方が正 $c$ 角形である。
段 3(1 周する)。$b\ne c$ と仮定する。$P$ の辺を 1 周する順に $e_1,e_2,\dots,e_a$ とする。$e_i$ と $e_{i+1}$ は $P$ の 1 つの頂点で出会うので、段 2 から、そのとなりの面の種類は違う($e_a$ と $e_1$ も同じ)。種類は $b$ と $c$ の 2 つしかないので、$e_1$ のとなりが $b$ なら、$e_1,e_2,e_3,\dots$ のとなりは $b,c,b,c,\dots$ と交互に並び、奇数番めの辺のとなりは $b$ である。$a$ は奇数なので $e_a$ のとなりは $b$ で、$e_1$ のとなりと同じ種類になる。$e_a$ と $e_1$ は $P$ の頂点で出会うので、これは段 2 に反する。$e_1$ のとなりが $c$ のときも同じである。よって $b=c$ である。$\square$
頂点の形 3.7.7 の七角形の面のまわり。辺のとなりの面は三角形と七角形が交互に並ぶはずだが、辺が 7 本なので 1 周すると三角形どうしが隣り合ってしまう
(3) $3.4.4$:$a=3$ の残りは $4$ と $4$ で等しい(正三角柱)。$3.3.4$ は、$a=3$(1 つめの $3$)の残りが $3$ と $4$ で等しくないので、ない。
この議論は 正多角形の敷き詰め の命題「奇数角形のまわりは交互に並べられない」と同じである。平面の敷き詰めでも凸多面体でも、使っているのは「辺の両側に面が 1 枚ずつ」「頂点のまわりに面が輪のように並ぶ」ことだけである。
方針:$p\le q\le r$ と並べ、いちばん小さい $p$ で場合を分ける。lem-ars-angle で大きい数を上から押さえ、lem-ars-odd で奇数を含む組を絞る。
段 1($p$ の範囲)。$p\le q\le r$ なので $\dfrac1p\ge\dfrac1q\ge\dfrac1r$ で、lem-ars-angle から $\dfrac3p\ge\dfrac1p+\dfrac1q+\dfrac1r>\dfrac12$、つまり $p<6$ である。正多角形なので $p\ge3$ で、$p=3,4,5$ のどれかである。
段 2($p=3$)。$3$ は奇数なので、lem-ars-odd を $a=3$ に使うと $q=r$ である。lem-ars-angle は $\dfrac13+\dfrac2q>\dfrac12$、つまり $\dfrac2q>\dfrac16$、$q<12$ になる。$q$ が奇数なら、lem-ars-odd を $a=q$ に使うと、残りの $3$ と $q$ が等しくなければならないので $q=3$ である。$q$ が偶数なら $q=4,6,8,10$ である。よって $(3,3,3)$、$(3,4,4)$、$(3,6,6)$、$(3,8,8)$、$(3,10,10)$ である。
段 3($p=4$)。$q=4$ なら、$(4,4,r)$($r\ge4$)で、lem-ars-angle は $\dfrac12+\dfrac1r>\dfrac12$ となりいつも成り立つ。$r$ が奇数でも、lem-ars-odd を $a=r$ に使うと残りは $4$ と $4$ で等しい。よって $(4,4,r)$ はどの $r\ge4$ でも残る。$r=4$ が立方体、$r\ge5$ が角柱である。
$q\ge5$ なら、lem-ars-angle から $\dfrac1q+\dfrac1r>\dfrac12-\dfrac14=\dfrac14$ で、$\dfrac2q\ge\dfrac1q+\dfrac1r$ なので $q<8$、つまり $q=5,6,7$ である。$q=5$ または $q=7$ なら、lem-ars-odd を $a=q$ に使うと $r=4$ となり、$r\ge q\ge5$ に反する。$q=6$ なら $\dfrac1r>\dfrac14-\dfrac16=\dfrac1{12}$ で $6\le r<12$ である。$r$ が奇数なら lem-ars-odd から $4=6$ となり矛盾するので、$r=6,8,10$ である。よって $(4,6,6)$、$(4,6,8)$、$(4,6,10)$ である。
段 4($p=5$)。$5$ は奇数なので、lem-ars-odd から $q=r$ で、lem-ars-angle は $\dfrac15+\dfrac2q>\dfrac12$、つまり $\dfrac2q>\dfrac3{10}$、$q<\dfrac{20}3$ になる。$q\ge5$ なので $q=5,6$ で、$(5,5,5)$、$(5,6,6)$ である。
段 2〜段 4 で残った組を合わせると、定理の (1)〜(3) になる。$\square$
| 最小の数 $p$ | 補題 1 だけで残る組 | 補題 2 で残る組 |
|---|---|---|
| $3$ | $(3,3,r)$、$(3,4,r)$、$(3,5,r)$、$(3,6,r)$($r$ はいくらでも)、$(3,7,r)$ など | $(3,3,3)$、$(3,4,4)$、$(3,6,6)$、$(3,8,8)$、$(3,10,10)$ |
| $4$ | $(4,4,r)$($r$ はいくらでも)、$(4,5,r)$($r\le19$)、$(4,6,r)$($r\le11$)、$(4,7,r)$($r\le9$) | $(4,4,r)$、$(4,6,6)$、$(4,6,8)$、$(4,6,10)$ |
| $5$ | $(5,5,r)$($r\le9$)、$(5,6,6)$、$(5,6,7)$ | $(5,5,5)$、$(5,6,6)$ |
補題 1 だけでは、$(3,q,r)$ の形の組が限りなく残る。$\dfrac13+\dfrac16=\dfrac12$ なので、$q\le6$ なら $r$ がどんなに大きくても不等式が成り立つからである。補題 2 が、これらをまとめて除く。
どの頂点の形も同じなら、どの頂点の角欠損($360^\circ$ から頂点の角の和を引いたもの)も同じである。凸多面体の角欠損の総和は $720^\circ$ である(Descartesの角欠損定理)。ここから頂点の数が決まる。
thm-ars-main の仮定のもとで、頂点の形 $p.q.r$ の頂点の角の和を $S$ とすると
$$
V=\frac{720^\circ}{360^\circ-S},\qquad E=\frac32V,\qquad F=V\left(\frac1p+\frac1q+\frac1r\right)
$$
である。
段 1($V$)。どの頂点の角欠損も $360^\circ-S$ で、Descartesの角欠損定理 の系「Descartes の角欠損定理」から、その $V$ 個の和が $720^\circ$ である。$V(360^\circ-S)=720^\circ$ を $V$ について解けばよい(lem-ars-angle の証明のとおり $S<360^\circ$ なので、割ってよい)。
段 2($E$)。各頂点のまわりに 3 枚の面が輪のように並び、隣り合う面の間に 1 本ずつ辺があるので、各頂点から 3 本の辺が出る。頂点ごとに数えると $3V$ 本で、各辺は両端の 2 つの頂点で数えられるので、$E=\dfrac{3V}2$ である。
段 3($F$)。面の角(頂点のところの角)を数える。各頂点には、正 $p$ 角形・正 $q$ 角形・正 $r$ 角形の角が 1 つずつある。正 $n$ 角形の面は角を $n$ 個もつので、1 つの角に $\dfrac1n$ を割り当てると、1 枚の面に割り当てた数の和は $n\times\dfrac1n=1$ になる。したがって、すべての角に割り当てた数の和は面の数 $F$ に等しい。これを頂点ごとに足すと、どの頂点でも $\dfrac1p+\dfrac1q+\dfrac1r$ なので、$F=V\left(\dfrac1p+\dfrac1q+\dfrac1r\right)$ である。$\square$
$F$ の式の $V\cdot\dfrac1p$ などは、それぞれの種類の面の枚数である($p,q,r$ が互いに違うとき。$q=r$ なら正 $q$ 角形は $V\cdot\dfrac2q$ 枚)。7 通りすべてを計算すると、次の表になる。
| 頂点の形 | 名前 | 面の内訳 | $V$ | $E$ | $F$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $3.6.6$ | 切頂四面体 | 正三角形 $4$、正六角形 $4$ | $12$ | $18$ | $8$ |
| $3.8.8$ | 切頂立方体 | 正三角形 $8$、正八角形 $6$ | $24$ | $36$ | $14$ |
| $3.10.10$ | 切頂十二面体 | 正三角形 $20$、正十角形 $12$ | $60$ | $90$ | $32$ |
| $4.6.6$ | 切頂八面体 | 正方形 $6$、正六角形 $8$ | $24$ | $36$ | $14$ |
| $4.6.8$ | 斜方切頂立方八面体 | 正方形 $12$、正六角形 $8$、正八角形 $6$ | $48$ | $72$ | $26$ |
| $4.6.10$ | 斜方切頂二十・十二面体 | 正方形 $30$、正六角形 $20$、正十角形 $12$ | $120$ | $180$ | $62$ |
| $5.6.6$ | 切頂二十面体 | 正五角形 $12$、正六角形 $20$ | $60$ | $90$ | $32$ |
lem-ars-angle の不等式は、面が正多角形でなくても、数えるだけで出る。どの頂点にも $p$ 角形・$q$ 角形・$r$ 角形が 1 枚ずつ集まる凸多面体では、prf-ars-count の段 2・段 3 は角の大きさを使っていないので、$E=\dfrac32V$、$F=V\left(\dfrac1p+\dfrac1q+\dfrac1r\right)$ が成り立つ。これを Eulerの多面体定理(高校数学) の $V-E+F=2$ に入れると
$$
V\left(\frac1p+\frac1q+\frac1r-\frac12\right)=2
$$
で、$V>0$ から $\dfrac1p+\dfrac1q+\dfrac1r>\dfrac12$ である。lem-ars-odd も角を使っていない。したがって thm-ars-main の結論は、面が正多角形でなくても「どの頂点にも同じ種類の多角形が 3 枚集まる凸多面体」について成り立つ。これは 正多面体の分類 の 2 つめの証明と同じ考え方である。
thm-ars-main は「この 7 通り以外はない」と言うだけで、7 通りが実際にあるかは別の問題である。2 つを座標で確かめる。
要点:(1) は ex-ars-tt で面と頂点の形を確かめてあり、座標の並べかえと符号の変更で頂点が移り合う。(2) は、平面 $x=\pm2$ などとの交わりが正方形、平面 $\pm x\pm y\pm z=3$ との交わりが正六角形になることを確かめ、頂点 $(2,1,0)$ の頂点の形を読む。
(1) ex-ars-tt で、この立体(正四面体から 4 つの角を平面で切り取った残りなので凸である)の面が正三角形 4 枚と正六角形 4 枚で、どの頂点も $3.6.6$ であることを確かめた。角柱・反角柱は 2 枚を除く面がすべて正方形か正三角形なので、この立体はそのどちらでもない。条件 (iii) は、座標の並べかえと、2 つの座標の符号を同時に変える操作で 12 点の集合が変わらないことから分かる。これらの操作は回転か鏡映で、$(3,1,1)$ をほかの 11 点のどれにも移せる。
(2) 段 1(正方形の面)。立体の点で $x=2$ となるものは、$\lvert y\rvert+\lvert z\rvert\le1$ を満たす点で、$(2,1,0)$、$(2,0,1)$、$(2,-1,0)$、$(2,0,-1)$ を頂点とする 1 辺 $\sqrt2$ の正方形である。$x=-2$、$y=\pm2$、$z=\pm2$ も同じで、正方形は 6 枚である。
段 2(正六角形の面)。立体の点で $x+y+z=3$ となるものを考える。$\lvert x\rvert+\lvert y\rvert+\lvert z\rvert\ge x+y+z=3$ で、左辺は $3$ 以下なので等号が成り立ち、$x,y,z\ge0$ である。よってこの点の集まりは、正三角形 $(3,0,0)$、$(0,3,0)$、$(0,0,3)$ から、座標が $2$ を超える 3 つの角を切り取ったもので、頂点は $(0,1,2)$ の並べかえの 6 点である。辺の長さはどれも $\sqrt2$、切り取った角は正三角形なので内角はどれも $120^\circ$ で、正六角形である。符号を変えた $\pm x\pm y\pm z=3$ の 8 枚が正六角形の面である。
段 3(頂点の形)。頂点 $(2,1,0)$ は、面 $x=2$、$x+y+z=3$、$x+y-z=3$ の 3 枚にのる。正方形 1 枚と正六角形 2 枚なので、頂点の形は $4.6.6$ である。座標の並べかえと符号の変更(どれも回転か鏡映)で立体は変わらず、$(2,1,0)$ はほかの 23 点のどれにも移るので、条件 (iii) を満たし、どの頂点も $4.6.6$ である。立体は不等式で表されるので凸で、正六角形の面が 8 枚あるので角柱・反角柱でもない。$\square$
残りの 5 通りも実際にある。$3.8.8$ と $3.10.10$ は立方体と正十二面体の角を、$5.6.6$ は正二十面体の角を、切り口と残りの面が正多角形になる位置で切り落として作れる(図 4)。$4.6.8$ と $4.6.10$ は、立方八面体と、正三角形 20 枚と正五角形 12 枚の二十・十二面体の角を切り落とした形をさらに整えて作る。この記事では、これらが半正多面体であることは証明しない。座標の例を開いて示す。
$\varphi=\frac{1+\sqrt5}2$ とする。「巡回」は $(x,y,z)$ を $(y,z,x)$、$(z,x,y)$ に並べかえたものも含めること、「並べかえ」はすべての並べかえを含めることを表し、符号はすべての組合せをとる。
頂点に 3 枚の面が集まる 7 つの半正多面体。色は面の辺の数を表す
半正多面体の 13 個のうち、残りの 6 個は頂点に 4 枚か 5 枚の面が集まる(Wei26a)。この記事では、これで尽きることは証明しない。$V$ は cor-ars-count と同じく $\dfrac{720^\circ}{360^\circ-S}$ で求まり、各頂点から出る辺の本数を $k$ とすると $E=\dfrac{kV}2$ である。
| 頂点の形 | 名前 | 角の和 $S$ | $V$ | $E$ | $F$ |
|---|---|---|---|---|---|
| $3.4.3.4$ | 立方八面体 | $300^\circ$ | $12$ | $24$ | $14$ |
| $3.5.3.5$ | 二十・十二面体 | $336^\circ$ | $30$ | $60$ | $32$ |
| $3.4.4.4$ | 斜方立方八面体 | $330^\circ$ | $24$ | $48$ | $26$ |
| $3.4.5.4$ | 斜方二十・十二面体 | $348^\circ$ | $60$ | $120$ | $62$ |
| $3.3.3.3.4$ | ねじれ立方体 | $330^\circ$ | $24$ | $60$ | $38$ |
| $3.3.3.3.5$ | ねじれ十二面体 | $348^\circ$ | $60$ | $150$ | $92$ |
頂点に 4 枚か 5 枚の面が集まる半正多面体のうち 5 つ(ねじれ十二面体は省いた)
ねじれ立方体とねじれ十二面体には、鏡に映した形と重ならない(右手と左手のような)2 通りの形がある(この記事では証明しない)。
def-ars-archimedean と thm-ars-main の条件を 1 つずつ外す。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 頂点が移り合う(条件 (iii))を「頂点の形が同じ」に弱める | 斜方立方八面体の下の部分を $45^\circ$ 回した立体 | 頂点の形が同じなら半正多面体である |
| 角柱・反角柱を除く(条件 (iv)) | 正五角柱 $4.4.5$ | 半正多面体が 13 個で尽きる(角柱は限りなくある) |
| 閉じた立体である | 平面の敷き詰め $4.6.12$、$4.8.8$、$3.12.12$ | $\frac1p+\frac1q+\frac1r>\frac12$ |
| 頂点に面が 3 枚 | 立方八面体 $3.4.3.4$ | 頂点の形が thm-ars-main の一覧にある |
斜方立方八面体(頂点の形 $3.4.4.4$)は、$a=1+\sqrt2$ として $(1,1,a)$ の成分を並べかえて符号をつけた 24 点を頂点とする。高さ $z=1$ と $z=-1$ の水平な正八角形の間に正方形 8 枚が帯のように並び、その上と下に、正方形 1 枚・正方形 4 枚・正三角形 4 枚でできた「ふた」がのっている(図 6)。
下のふた($z\le-1$ の部分)だけを $z$ 軸のまわりに $45^\circ$ 回してから付け直す。$z=-1$ の正八角形は $45^\circ$ 回しても重なるので、付け直せる。いちばん下の正方形の頂点は $(\pm\sqrt2,0,-a)$、$(0,\pm\sqrt2,-a)$ に移る(図 7)。こうしてできた立体も凸多面体で(Wei26b)、面は正三角形 8 枚と正方形 18 枚で、どの頂点のまわりも正三角形 1 枚と正方形 3 枚が並び、頂点の形はどれも $3.4.4.4$ である(Wei26b の elongated square gyrobicupola)。
しかし、この立体は条件 (iii) を満たさない。頂点 $u$ から最も遠い頂点までの距離を $d(u)$ とする。立体を自分自身に重ねる回転・鏡映は頂点を頂点に移し、距離を変えないので、$u$ を $w$ に移すものがあれば $d(u)=d(w)$ である。ところが、上のふたの頂点 $u=(1,1,a)$ では、最も遠いのは下の $(-\sqrt2,0,-a)$ で
$$
d(u)^2=(1+\sqrt2)^2+1^2+(2a)^2=16+10\sqrt2\approx30.14
$$
であり、帯の頂点 $w=(1,a,1)$ では、最も遠いのは $(-1,-a,-1)$ で
$$
d(w)^2=2^2+(2a)^2+2^2=20+8\sqrt2\approx31.31
$$
である($a^2=3+2\sqrt2$ を使った。ほかの頂点までの距離の 2 乗が、これ以下であることは下の「詳細」)。$d(u)\ne d(w)$ なので、$u$ を $w$ に移す回転・鏡映はない。Wei26a は、この立体を、赤道の近くの頂点と極の近くの頂点が区別できるという理由で半正多面体から除いている。
ほかの 23 個の頂点までの距離の 2 乗を 1 つずつ計算して、値ごとに個数をまとめる($a^2=3+2\sqrt2$ を使う)。
$16+10\sqrt2<20+8\sqrt2$ は $2\sqrt2<4$ と同じである。最大の値が違うので $d(u)\ne d(w)$ である。
斜方立方八面体。上下のふたの正方形の向きがそろっている
下のふたを 45 度回した立体。どの頂点のまわりも正三角形 1 枚と正方形 3 枚だが、下のふたの向きが上とずれている
(2) 平面の敷き詰めの頂点の形 $4.8.8$ は、lem-ars-odd の条件を満たす(奇数がない)が、$\dfrac14+\dfrac18+\dfrac18=\dfrac12$ で lem-ars-angle の不等式を満たさない。閉じた立体でないと、角の和の不等式が成り立たなくなる(正多角形の敷き詰め)。
(3) 立方八面体は半正多面体だが、頂点に 4 枚の面が集まるので、頂点の形 $3.4.3.4$ は thm-ars-main の一覧にない。thm-ars-main は、頂点に 3 枚の面が集まる場合だけの定理である。
正多面体の分類 で見たように、正多面体を自分自身に重ねる回転は、正四面体で 12 個、立方体と正八面体で 24 個、正十二面体と正二十面体で 60 個あり、大学ではそれぞれ群 $A_4$、$S_4$、$A_5$ として学ぶ。多面体を自分自身に重ねる回転・鏡映の全体を、その多面体の 対称性の群 という。半正多面体の条件 (iii) は、対称性の群が頂点の集合に 推移的に作用する(どの頂点もどの頂点に移せる)ということである。
正多面体の角を切り落として作った半正多面体は、もとの正多面体と同じ回転・鏡映で自分自身に重なる。たとえば切頂二十面体の頂点は 60 個で、正二十面体の回転の数 60 と等しく、斜方切頂二十・十二面体の頂点 120 個は、回転と鏡映を合わせた数 $2\times60=120$ に等しい。群が頂点に推移的に作用するとき、頂点の数は群の元の数の約数になる(大学の群論の「軌道と固定部分群」の公式)。cor-ars-count の表と「頂点に 4 枚以上の面が集まる場合」の表にある 13 個の半正多面体の頂点の数 $12,24,30,48,60,120$ は、どれも $2\times24=48$ か $2\times60=120$ の約数になっている。この記事では、半正多面体の対称性の群の大きさと、群の作用についての一般の定理は証明しない。
頂点の形が $3.8.8$ の凸多面体について、cor-ars-count を使って $V$、$E$、$F$ と、正三角形・正八角形の枚数を求めよ。また、$V-E+F=2$ を確かめよ。
正八角形の内角は $180^\circ-\frac{360^\circ}8=135^\circ$ なので、$S=60^\circ+135^\circ+135^\circ=330^\circ$ である。$V=\frac{720^\circ}{30^\circ}=24$、$E=\frac32\times24=36$、$F=24\left(\frac13+\frac18+\frac18\right)=8+3+3=14$ である。正三角形は $24\times\frac13=8$ 枚、正八角形は $24\times\frac28=6$ 枚である。$V-E+F=24-36+14=2$ となる。
頂点の形が $5.5.r$($r\ge5$)の凸多面体で、面がすべて正多角形であるものを求めよ。
$a=5$ として lem-ars-odd を使うと、残りの $5$ と $r$ が等しいので $r=5$ である。$5.5.5$ は正十二面体の頂点の形である。$r=10$ などは lem-ars-angle を満たさないことからも除けるが($\frac15+\frac15+\frac1{10}=\frac12$)、$r=6,7,8,9$ は lem-ars-angle を満たすので、lem-ars-odd が必要である。
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