Hopfファイブレーション

同義語:Hopf fibrationHopf束Hopf bundleHopf写像Hopf map

概要

Hopfファイブレーション(Hopf fibration)とは、単位球面 $S^3\subset\mathbb{C}^2$ の点 $(z,w)$ に $[z:w]\in\mathbb{C}\mathrm{P}^1\cong S^2$ を対応させる写像が定める、ファイバー $S^1$ のファイバー束 $S^1\to S^3\to S^2$ である。各ファイバーは大円で、局所的には直積だが $S^3$ は $S^2\times S^1$ と同相でなく、どの 2 本のファイバーも立体射影で絡み数 $\pm1$ で絡み合う。$\pi_3(S^2)\cong\mathbb{Z}$ の生成元を与え、標準計量では半径 $1/2$ の球面への Riemann 沈め込みになり、四元数・八元数による類似の束 $S^7\to S^4$、$S^{15}\to S^8$ をもつ。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ファイバー束, n次元球面, 射影空間

Hopf ファイブレーション(Hopf fibration)とは、3 次元球面 $S^3\subset\mathbb{C}^2$ の点 $(z,w)$ に複素射影直線の点 $[z:w]\in\mathbb{C}\mathrm{P}^1\cong S^2$ を対応させる写像 $S^3\to S^2$ のことであり、各ファイバーが円周 $S^1$ であるファイバー束
$$ S^1\longrightarrow S^3\longrightarrow S^2 $$
をなす。Hopf 束、Hopf 写像ともいう。ファイバー・全空間・底空間がすべて球面である束の最初の例である。
$S^3$ は単連結なので、この束は直積 $S^2\times S^1$ ではない。局所的には円周と円板の直積なのに、全体としては円周が互いにからみ合って $S^3$ を埋めつくしている。実際、どの 2 本のファイバーも、立体射影で $\mathbb{R}^3$ に写すと絡み数 $\pm1$ で絡み合う。この束は $S^3\to S^2$ という次元の下がる写像でありながら定値写像とホモトピックでないことを示し、$\pi_3(S^2)\cong\mathbb{Z}$ の生成元を与える(球面のホモトピー群)。標準的な計量のもとでは半径 $1/2$ の球面への Riemann 沈め込みにもなっている。

定義

$\mathbb{C}^2$ の Hermite 内積を $\langle x,y\rangle:=x_1\bar y_1+x_2\bar y_2$ とし、$S^3:=\{(z,w)\in\mathbb{C}^2\mid|z|^2+|w|^2=1\}$ とする。単位複素数の群 $S^1=\{\lambda\in\mathbb{C}\mid|\lambda|=1\}$ は $S^3$ に $\lambda\cdot(z,w):=(\lambda z,\lambda w)$ で作用する。$S^2$ は $\mathbb{C}\times\mathbb{R}=\mathbb{R}^3$ の単位球面 $\{(u,t)\mid|u|^2+t^2=1\}$ とする。

Hopf ファイブレーション

写像
$$ h\colon S^3\to S^2,\qquad h(z,w):=\bigl(2z\bar w,\ |z|^2-|w|^2\bigr) $$
を Hopf 写像 といい、thm-hopf-bundle で示すファイバー束 $S^1\to S^3\xrightarrow{h}S^2$ を Hopf ファイブレーション(Hopf 束)という。点 $y\in S^2$ のファイバー $h^{-1}(y)$ を $F_y$ と書く。

射影直線としての表示
  1. $h$ は $S^2$ に値をとる全射であり、$h(x)=h(x')$ となるのは $x'=\lambda x$($\lambda\in S^1$)のときに限る。とくに各ファイバー $F_y$ は 1 つの $S^1$ 軌道である。
  2. $w\ne0$ のとき $h(z,w)=\sigma^{-1}(z/w)$ である。ここで $\sigma\colon S^2\setminus\{(0,1)\}\to\mathbb{C}$ は北極 $(0,1)$ からの立体射影 $\sigma(u,t)=u/(1-t)$ である。また $h(z,0)=(0,1)$ である。
  3. 商写像 $\eta\colon S^3\to\mathbb{C}\mathrm{P}^1$、$\eta(z,w)=[z:w]$ に対し、$\kappa\circ\eta=h$ となる同相写像 $\kappa\colon\mathbb{C}\mathrm{P}^1\to S^2$ がただ 1 つある。

要点:$|2z\bar w|^2+(|z|^2-|w|^2)^2=(|z|^2+|w|^2)^2$ から $h$ は $S^2$ に値をとる。$h(x)=(u,t)$ から $|z|^2,|w|^2$ と $z\bar w$ が決まるので、同じ値をとる点は $S^1$ 倍しか違わない。2 は $\zeta=z/w$ を代入した計算、3 は $\mathbb{C}\mathrm{P}^1$ が $S^3$ の $S^1$ 作用による商であることと、コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全単射が同相であることによる。

詳しい証明を開く

1. $|2z\bar w|^2+(|z|^2-|w|^2)^2=(|z|^2+|w|^2)^2=1$ なので $h(S^3)\subset S^2$ である。$h(\lambda z,\lambda w)=(2\lambda\bar\lambda z\bar w,\ |z|^2-|w|^2)=h(z,w)$ である。逆に $h(z,w)=h(z',w')=(u,t)$ とすると、$|z|^2-|w|^2=t$ と $|z|^2+|w|^2=1$ から $|z|^2=|z'|^2=\frac{1+t}2$、$|w|^2=|w'|^2=\frac{1-t}2$ である。$w\ne0$ なら $\lambda:=w'/w\in S^1$ とおくと、$z'\bar w'=z\bar w$ より $z'\bar\lambda\bar w=z\bar w$、したがって $z'=\lambda z$、$w'=\lambda w$ である。$w=0$ なら $|z|=|z'|=1$、$w'=0$ で、$\lambda:=z'/z$ とすればよい。全射であること:$(u,t)\in S^2$ が $t\ne-1$ なら $a:=\sqrt{(1+t)/2}>0$ とおき $(z,w):=(a,\ \bar u/(2a))$ とすると、$2z\bar w=u$、$|w|^2=|u|^2/(4a^2)=(1-t^2)/(2(1+t))=(1-t)/2$ なので $(z,w)\in S^3$、$h(z,w)=(u,t)$ である。$t=-1$ なら $h(0,1)=(0,-1)$ である。

2. $\zeta:=z/w$ とおくと $|w|^2=1/(1+|\zeta|^2)$ であり、$h(z,w)=\bigl(2\zeta,\ |\zeta|^2-1\bigr)/(1+|\zeta|^2)$ となる。この点の $\sigma$ による像は $\dfrac{2\zeta/(1+|\zeta|^2)}{1-(|\zeta|^2-1)/(|\zeta|^2+1)}=\zeta$ である。$h(z,0)=(0,|z|^2)=(0,1)$ は明らかである。

3. $\mathbb{C}\mathrm{P}^1$ は $S^3$ の $S^1$ 作用による商空間と同相であり、$\eta$ はその商写像である(射影空間 の命題「球面の商としての射影空間」の 3)。1 により $h$ は $\eta$ のファイバーの上で一定なので、連続写像 $\kappa$ で $\kappa\circ\eta=h$ となるものがただ 1 つあり、1 により $\kappa$ は全単射である。$\mathbb{C}\mathrm{P}^1$ はコンパクト、$S^2$ は Hausdorff なので $\kappa$ は同相写像である。$\square$

2 により、$h$ は Hat02 Example 4.45(p. 377)の写像 $(z_0,z_1)\mapsto z_0/z_1\in\mathbb{C}\cup\{\infty\}=S^2$ と同じものである。$\mathbb{C}\mathrm{P}^1$ を使う記事(射影空間 の定理「被覆写像と基本群」、ホモトピー群 の例「低次元球面の非自明な高次ホモトピー: $\pi_3(S^2)\cong\mathbb{Z}$(Hopf写像)」)の $\eta$ とは、3 の同相写像 $\kappa$ で移り合う。

局所自明性

$S^2$ の 2 つの開集合 $U_0:=S^2\setminus\{(0,-1)\}$、$U_1:=S^2\setminus\{(0,1)\}$ をとる。prop-hopf-models の 1 の計算から $h^{-1}(U_0)=\{z\ne0\}$、$h^{-1}(U_1)=\{w\ne0\}$ である。

Hopf ファイブレーションは円周束

写像
$$ \varphi_0\colon h^{-1}(U_0)\to U_0\times S^1,\quad \varphi_0(z,w):=\Bigl(h(z,w),\ \frac{z}{|z|}\Bigr),\qquad \varphi_1\colon h^{-1}(U_1)\to U_1\times S^1,\quad \varphi_1(z,w):=\Bigl(h(z,w),\ \frac{w}{|w|}\Bigr) $$
は同相写像で、第 1 成分は $h$ に一致し、$S^1$ の作用と $\varphi_i(\lambda x)=(h(x),\lambda\,\mathrm{pr}_2\varphi_i(x))$ の形で両立する。したがって $h\colon S^3\to S^2$ はファイバー $S^1$ のファイバー束であり、$S^1=\mathrm{U}(1)$ を構造群とする主束である。$U_0\cap U_1$ の上の座標変換は
$$ \mathrm{pr}_2\varphi_0(x)=g(h(x))\cdot\mathrm{pr}_2\varphi_1(x),\qquad g(u,t)=\frac{u}{|u|} $$
で与えられる。

$\varphi_0$ は連続である。逆写像の候補として、$a(t):=\sqrt{(1+t)/2}$($U_0$ の上で $a>0$)とおき
$$ \psi_0\bigl((u,t),\lambda\bigr):=\lambda\Bigl(a(t),\ \frac{\bar u}{2a(t)}\Bigr) $$
を定める。これは連続で、prop-hopf-models の 1 の証明の全射性の計算により $S^3$ に値をとり、$h(\psi_0((u,t),\lambda))=(u,t)$、第 1 成分の偏角は $\lambda$ なので $\varphi_0\circ\psi_0=\operatorname{id}$ である。逆に $x=(z,w)$、$z\ne0$ について $(u,t)=h(x)$、$\lambda=z/|z|$ とおくと $a(t)=|z|$ なので $\lambda a(t)=z$、また $\bar u=2\bar zw$ なので $\lambda\bar u/(2a(t))=(z/|z|)\cdot2\bar zw/(2|z|)=w$ であり、$\psi_0\circ\varphi_0=\operatorname{id}$ である。$\varphi_1$ についても、$b(t):=\sqrt{(1-t)/2}$ とおいた $\psi_1((u,t),\lambda):=\lambda(u/(2b(t)),\ b(t))$ が逆写像であることを同様に確かめられる。作用との両立は $h(\lambda x)=h(x)$ と $\lambda z/|\lambda z|=\lambda\cdot z/|z|$ による。
座標変換:$x\in h^{-1}(U_0\cap U_1)$ では $z,w\ne0$ で、$u=2z\bar w$ なので
$$ \frac{z/|z|}{w/|w|}=\frac{z\bar w}{|z\bar w|}=\frac{u}{|u|} $$
である。各局所自明化は作用と両立し、ファイバー $h^{-1}(y)$ は 1 つの自由な $S^1$ 軌道なので(prop-hopf-models の 1)、$h$ は主 $S^1$ 束である(主束 の定義「主 $G$ 束」。滑らかさは上の式がすべて $C^\infty$ 級であることによる)。$\square$

赤道 $\{t=0\}$ の上で座標変換 $g(u,0)=u$ は恒等写像 $S^1\to S^1$ であり、写像度 は $1$ である。定理の局所自明化により、Hopf 束は $U_0$ と $U_1$ の上の自明な束 $U_i\times S^1$ を座標変換 $g$ で貼り合わせたものと見ることができ、その貼り合わせ方の「ねじれ」は赤道の上の $g$ の写像度 $1$ に現れている。同じ局所自明化は 主束 の例「Hopf 束」でも与えられている。

Hopf 束は自明でない

Hopf 束は連続な切断 $s\colon S^2\to S^3$($h\circ s=\operatorname{id}$)をもたない。とくに、ファイバーを保つ同相写像 $S^3\cong S^2\times S^1$ は存在せず、$S^3$ は $S^2\times S^1$ と同相でない。

まず $S^3$ と $S^2\times S^1$ が同相でないことを示す。$S^3$ は単連結である(n次元球面 の定理「基本群の値」)。一方 基本群 の命題「直積の基本群」により $\pi_1(S^2\times S^1)\cong\pi_1(S^2)\times\pi_1(S^1)\cong\mathbb{Z}$ である。
切断 $s$ があったとすると、$\Psi(y,\lambda):=\lambda\cdot s(y)$ は連続写像 $S^2\times S^1\to S^3$ である。prop-hopf-models の 1 により各ファイバー $F_y$ は $s(y)$ の自由な軌道 $\{\lambda s(y)\}$ なので($\lambda s(y)=s(y)$ なら $\lambda=1$)、$\Psi$ は全単射である。$S^2\times S^1$ はコンパクト、$S^3$ は Hausdorff なので $\Psi$ は同相写像となり、前段に反する。ファイバーを保つ同相写像 $S^3\cong S^2\times S^1$ があれば、$S^2\times\{1\}$ の像が切断を与えるので、これも存在しない。$\square$

これに対し $S^1\times S^2$ の上の射影はもちろん自明な束である。局所的には同じ形でも、Hopf 束ではファイバーが大域的に「ねじれて」いる。このねじれをより定量的に表すのが次節の絡み数と、球面のホモトピー群 の $\pi_3(S^2)$ である。

ファイバーの配置

ファイバーは大円で、トーラスを埋める
  1. 各ファイバー $F_y$ は、$S^3$ と $\mathbb{C}^2$ の複素直線 $\mathbb{C}v$($v\in F_y$)の交わりであり、$S^3$ の大円である。異なる 2 点のファイバーは交わらない。
  2. 北極と南極のファイバーは $F_{(0,1)}=C_1:=\{(z,0)\mid|z|=1\}$、$F_{(0,-1)}=C_2:=\{(0,w)\mid|w|=1\}$ である。
  3. $-1< t_0< 1$ について、緯線 $\{t=t_0\}\subset S^2$ の逆像はトーラス $\{|z|^2=\frac{1+t_0}2,\ |w|^2=\frac{1-t_0}2\}$ であり、それはファイバーで埋めつくされる。トーラスの角座標 $(\alpha,\beta)$($z=|z|e^{i\alpha}$、$w=|w|e^{i\beta}$)で、ファイバーは $\alpha-\beta=$ 一定の円周、すなわち両方の向きに 1 回ずつまわる曲線である。
  1. prop-hopf-models の 1 により $F_y=\{\lambda v\mid\lambda\in S^1\}=\mathbb{C}v\cap S^3$ である。$\mathbb{C}v$ は $\mathbb{R}^4$ の 2 次元部分空間なので、これは原点を通る平面と単位球面の交わり、すなわち大円である。ファイバーは写像の逆像なので、異なる点のファイバーは交わらない。2. $h(z,0)=(0,1)$、$h(0,w)=(0,-1)$ による。3. $t=|z|^2-|w|^2$ と $|z|^2+|w|^2=1$ から逆像の式が出る。$u=2z\bar w=2|z||w|e^{i(\alpha-\beta)}$ なので、トーラスの上で $h$ の値は $\alpha-\beta$ だけで決まり、ファイバーは $\alpha-\beta$ が一定の集合である。$\square$

$\mathbb{R}^3$ で見るため、$S^3$ の点 $N_0:=(0,i)$ からの立体射影 $\sigma_0(x):=(x_1,x_2,x_3)/(1-x_4)$($z=x_1+ix_2$、$w=x_3+ix_4$)を使う。$N_0\in C_2$ である。$C_1$ は $xy$ 平面の単位円に、$C_2\setminus\{N_0\}$ は $x_3$ 軸に写り、中間のトーラスは単位円のまわりの入れ子のトーラスに写る(Hat02 Example 4.45、pp. 377–378 に図がある)。$t_0=0$ のトーラス $\{|z|^2=|w|^2=\frac12\}$ の上のファイバーは、結び目 の記事のトーラス結び目 $K_{1,1}$ を回転したものである。

2 本のファイバーは絡み数 ±1 で絡む

$y,y'\in S^2\setminus\{(0,-1)\}$ を異なる 2 点とすると、$K:=\sigma_0(F_y)$ と $L:=\sigma_0(F_{y'})$ は $\mathbb{R}^3$ の互いに交わらない結び目であり、どのように向きを付けても
$$ \operatorname{lk}(K,L)=\pm1 $$
である。とくに $K$ と $L$ は、互いに交わらないまま平面の上の離れた 2 円に動かすことができない。

$N_0\in F_{(0,-1)}$ なので、$F_y,F_{y'}$ は $N_0$ を通らず、$\sigma_0$ は $S^3\setminus\{N_0\}$ から $\mathbb{R}^3$ への微分同相写像なので、$K,L$ は交わらない結び目である。
$v=(v_1,v_2)\in F_y$ をとり、$v^\perp:=(-\bar v_2,\bar v_1)$ とおくと、$(v,v^\perp)$ は $\mathbb{C}^2$ の Hermite 内積についての正規直交基底である。$\Theta(\alpha,\beta):=\alpha v+\beta v^\perp$ はユニタリ写像なので $S^3$ を $S^3$ に写し、$\Theta(\lambda x)=\lambda\Theta(x)$ をみたす。したがって $\Theta$ は $S^1$ 軌道(ファイバー)を軌道に写し、$F_y=\Theta(\{\beta=0\})$、$F_{y'}=\{\lambda\Theta(\alpha_0,\beta_0)\mid\lambda\in S^1\}$ と書ける。ここで $\beta_0\ne0$ である($\beta_0=0$ なら $F_{y'}=F_y$)。
$\beta$ を実数に制限した $\Theta(\mathbb{C}\times\mathbb{R})\cap S^3$ は 2 次元球面で、それを 2 つの閉半球
$$ D_\pm:=\{\Theta(\alpha,s)\mid \alpha\in\mathbb{C},\ s\in\mathbb{R},\ \pm s\ge0,\ |\alpha|^2+s^2=1\} $$
に分けると、$D_+\cap D_-=F_y$ である。$N_0\notin F_y$ なので、$N_0$ は $D_+$ と $D_-$ の少なくとも一方に含まれない。その一方を $D$ とする。$D$ は境界 $F_y$ をもつ滑らかに埋め込まれた閉円板なので、$F:=\sigma_0(D)$ は $\mathbb{R}^3$ のコンパクトで連結な向き付け可能な滑らかな曲面で、境界は $K$ である。$K$ に与えた向きが境界の向きになるように $F$ に向きを付ければ、$F$ は $K$ の Seifert 曲面である(絡み数 の定義「Seifert 曲面と交点数」)。
$D$ と $F_{y'}$ の交点を求める。$\lambda\Theta(\alpha_0,\beta_0)=\Theta(\lambda\alpha_0,\lambda\beta_0)$ が $D$ に入るのは $\lambda\beta_0$ が実数で $D$ の符号の条件をみたすときであり、$\beta_0\ne0$ なので $\lambda=\pm\bar\beta_0/|\beta_0|$ のちょうど一方に限る。よって交点はただ 1 点 $q$ である。$q=\Theta(\alpha_1,s_1)$($s_1\ne0$)での接空間を比べると、$T_qD$ のベクトルは $\Theta(\delta\alpha,\delta s)$($\delta s$ は実数)の形であり、$F_{y'}$ の接ベクトル $iq=\Theta(i\alpha_1,is_1)$ の第 2 成分 $is_1$ は $0$ でない純虚数なので、$iq\notin T_qD$ である。$\dim T_qD+\dim T_qF_{y'}=2+1=3=\dim T_qS^3$ なので、$D$ と $F_{y'}$ は $q$ で横断的に交わり、微分同相写像 $\sigma_0$ で写した $F$ と $L$ も横断的に 1 点で交わる。したがって交点数は $F\cdot L=\pm1$ であり、絡み数 の定理「Seifert 曲面による公式」により $\operatorname{lk}(K,L)=F\cdot L=\pm1$ である。最後の主張は次による。平面の上の離れた 2 円の絡み数は $0$ である(絡み数 の例「自明な絡み目・Hopf 絡み目・トーラス絡み目」)。一方、2 つの成分を交わらないまま滑らかに動かすと、定義の Gauss 写像 $(x,y)\mapsto(y-x)/|y-x|$ は $S^1\times S^1$ から $S^2$ への滑らかなホモトピーで動き、写像度は滑らかなホモトピーで変わらない(写像度)。したがって絡み数はこの変形で変わらない。$\square$

$y=(0,1)$、$y'$ を南極に近い点にとると、$K=\sigma_0(C_1)$ は単位円で、$L$ は $x_3$ 軸に近い大きな円になり、単位円の内側を 1 回だけ通り抜ける。これは 絡み数 の記事の Hopf 絡み目の形である。$S^3$ は、どの 2 本も 1 回ずつ絡み合う円周の族で埋めつくされている。

計量:半径 1/2 の球面への Riemann 沈め込み

$S^3$ と $S^2$ に $\mathbb{R}^4$、$\mathbb{R}^3$ の Euclid 内積から誘導される標準的な計量を入れる。点 $p=(z,w)\in S^3$ の接空間は $T_pS^3=\{v\in\mathbb{C}^2\mid\operatorname{Re}\langle v,p\rangle=0\}$ であり、$p^\perp:=(-\bar w,\bar z)$ とおくと、直交分解
$$ T_pS^3=\mathbb{R}\,ip\ \oplus\ \mathcal{H}_p,\qquad \mathcal{H}_p:=\{c\,p^\perp\mid c\in\mathbb{C}\} $$
をもつ($\operatorname{Re}\langle ip,cp^\perp\rangle=\operatorname{Re}(i\bar c\langle p,p^\perp\rangle)=0$)。$ip$ はファイバー $\theta\mapsto e^{i\theta}p$ の接ベクトルで、$\mathcal{H}_p$ はファイバーに直交する方向(水平空間)である。

Riemann 沈め込み

各 $p\in S^3$ で $dh_p(ip)=0$ であり、水平なベクトル $v\in\mathcal{H}_p$ について $|dh_p(v)|=2|v|$ である。したがって $h$ は沈め込みであり、$S^2$ の計量を $\frac14$ 倍した計量(半径 $\frac12$ の球面の計量)について、$h\colon S^3\to S^2(\tfrac12)$ は リーマン沈め込み である。

$h$ はファイバーの上で一定なので $dh_p(ip)=\frac{d}{d\theta}h(e^{i\theta}p)\big|_{\theta=0}=0$ である。$v=cp^\perp$ とすると、$p$ からの変化は $\delta z=-c\bar w$、$\delta w=c\bar z$ であり、
$$ dh_p(v)=\Bigl(2(\delta z\,\bar w+z\,\overline{\delta w}),\ 2\operatorname{Re}(\bar z\,\delta z)-2\operatorname{Re}(\bar w\,\delta w)\Bigr)=\Bigl(2(\bar cz^2-c\bar w^2),\ -4\operatorname{Re}X\Bigr),\qquad X:=c\bar z\bar w $$
となる。$|\bar cz^2-c\bar w^2|^2=|c|^2(|z|^4+|w|^4)-2\operatorname{Re}(\bar X^2)$ と $\operatorname{Re}(\bar X^2)=(\operatorname{Re}X)^2-(\operatorname{Im}X)^2$ から
$$ |dh_p(v)|^2=4|c|^2(|z|^4+|w|^4)-8(\operatorname{Re}X)^2+8(\operatorname{Im}X)^2+16(\operatorname{Re}X)^2=4|c|^2(|z|^4+|w|^4)+8|X|^2=4|c|^2(|z|^2+|w|^2)^2=4|c|^2 $$
である。一方 $|v|^2=|c|^2(|w|^2+|z|^2)=|c|^2$ なので $|dh_p(v)|=2|v|$ である。
よって $dh_p|_{\mathcal{H}_p}$ は 2 次元空間 $\mathcal{H}_p$ から 2 次元空間 $T_{h(p)}S^2$ への単射線形写像で、同型であり、$h$ は沈め込みである。計量を $\frac14$ 倍すると $dh_p|_{\mathcal{H}_p}$ はノルムを保ち、偏極恒等式により内積を保つ。$\mathcal{H}_p$ は $dh_p$ の核 $\mathbb{R}ip$ の直交補空間なので、これは Riemann 沈め込みの定義(リーマン沈め込み の定義「Riemann沈め込み」)そのものである。$\square$

リーマン沈め込み の例「等長群作用による商」は、等長的な自由作用による商写像が Riemann 沈め込みになる構成を述べ、Hopf ファイブレーションをその例に挙げている。上の命題はこの場合の具体的な計算で、商の計量が半径 $\frac12$ の球面の計量であることを示している。

ホモトピー群と一般化

  • $\pi_3(S^2)$:Hopf 束のホモトピー完全系列で $\pi_k(S^1)=0$($k\ge2$)を使うと、$h_*\colon\pi_k(S^3)\to\pi_k(S^2)$ は $k\ge3$ で同型になり、$\pi_3(S^2)\cong\mathbb{Z}$ で $[h]$ が生成元である(球面のホモトピー群 の命題「Hopf束による $\pi_3(S^2)$ の計算」、Hat02 Example 4.51、p. 380)。とくに $h$ は定値写像とホモトピックでない。同じ完全系列から $\pi_2(S^2)\cong\pi_1(S^1)\cong\mathbb{Z}$ も得られる。
  • Hopf 不変量:$\mathbb{C}\mathrm{P}^2$ は $S^2$ に Hopf 写像に沿って 4 次元の胞体を貼ったものであり、Hopf 写像の Hopf 不変量は $1$ である(Hat02 §4.B、p. 427)。
  • 高次元の複素版:同じ構成で $S^{2n+1}\subset\mathbb{C}^{n+1}$ から $\mathbb{C}\mathrm{P}^n$ へのファイバー $S^1$ の束が得られる(射影空間 の定理「被覆写像と基本群」の 2、Hat02 Example 4.44、p. 377)。$n=\infty$ とした $S^\infty\to\mathbb{C}\mathrm{P}^\infty$ は $S^1$ の普遍束であり、Hopf 束はその $\mathbb{C}\mathrm{P}^1$ への制限である(分類空間)。
  • 四元数と八元数:$\mathbb{C}$ を四元数体 $\mathbb{H}$ に替えると $S^3\to S^7\to S^4$ が、八元数 $\mathbb{O}$ に替えると $S^7\to S^{15}\to S^8$ が得られる(Hat02 Example 4.46・4.47、pp. 378–379、球面のホモトピー群 の命題「四元数の Hopf 束と $\pi_7(S^4)$」)。八元数の乗法は結合的でないので、$(z_0,\dots,z_n)\sim\lambda(z_0,\dots,z_n)$ は $n\ge1$ で同値関係にならず、$\mathbb{R}$・$\mathbb{C}$・$\mathbb{H}$ と同じ構成は使えない。八元数射影平面 $\mathbb{O}\mathrm{P}^2$ は $S^8$ に Hopf 写像 $S^{15}\to S^8$ で 16 次元の胞体を貼って作られるが、$n>2$ の八元数射影空間の類似はない(Hat02 p. 379。この記事では証明しない)。
  • 球面の束の次元:ファイバー・全空間・底空間がすべて球面であるファイバー束は、これらの Hopf 束と実数版 $S^0\to S^1\to S^1$($z\mapsto z^2$)の次元のものに限られる(この記事では証明しない。Hat02 p. 379 はこれを述べ、同書 §4.D の演習で Hopf 不変量 $1$ の問題に帰着させるとしている)。Hopf 不変量 $1$ の写像 $S^{2n-1}\to S^n$ が存在するのは $n=2,4,8$ に限るという Adams の定理が、その答えである(Hat02 §4.B、p. 427)。

成り立つことと成り立たないこと

外す条件反例成り立たなくなること
束が直積 $B\times F$ であること(局所自明性だけは残す)Hopf 束 $S^3\to S^2$全空間の基本群が $\pi_1(B)\times\pi_1(F)$ になること($\pi_1(S^3)=0$ だが $\pi_1(S^2)\times\pi_1(S^1)\cong\mathbb{Z}$)
ファイバーが離散であること(被覆写像)Hopf 束(ファイバーは円周)$k\ge2$ で射影が $\pi_k$ の同型を誘導すること($\pi_2(S^3)=0$ だが $\pi_2(S^2)\cong\mathbb{Z}$)
次元についての条件 $k\le n$(Hurewicz の定理の範囲)$\pi_3(S^2)$ と $H_3(S^2)$ホモトピー群とホモロジー群が一致すること($\pi_3(S^2)\cong\mathbb{Z}$、$H_3(S^2)=0$)
乗法の結合律($\mathbb{R}$・$\mathbb{C}$・$\mathbb{H}$)八元数 $\mathbb{O}$$\lambda$ 倍で割って射影空間を作れること($n\ge1$ で同値関係にならない)
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1 行目:直積については 基本群 の命題「直積の基本群」。Hopf 束では prop-hopf-nontrivial の証明のとおり $\pi_1(S^3)=0$ である。

2 行目:被覆写像では $n\ge2$ で $p_*$ が同型である(ホモトピー群 の命題「被覆空間と$n$-単純性」)。$\pi_2(S^3)=0$ は $S^3$ が 2-連結であること(n次元球面 の定理「ホモトピー群の値」)、$\pi_2(S^2)\cong\mathbb{Z}$ は同定理による。

3 行目:$(n-1)$-連結な空間では $\pi_n\to H_n$ が同型である(ホモトピー群 の命題「Hurewicz準同型」)。$S^2$ は 1-連結なので $\pi_2(S^2)\cong H_2(S^2)$ だが、$k=3>n=2$ ではこの命題の範囲の外で、$H_3(S^2)=0$ なのに $\pi_3(S^2)\cong\mathbb{Z}$ である。

4 行目:$x=(1,z_1)$ を $\lambda$ 倍してから $\mu$ 倍した点が $x$ の $\nu$ 倍であるには、第 1 成分から $\nu=\mu\lambda$、第 2 成分から $(\mu\lambda)z_1=\mu(\lambda z_1)$ が要る。八元数は結合的でないのでこれが成り立たない $\lambda,\mu,z_1$ があり(結合子は各変数について実線形なので、$\lambda,\mu$ は単位八元数にとれる)、推移律が破れる(Hat02 p. 379)。

補足

  • 呼び名:Hopf 束(Hopf bundle)、Hopf 写像(Hopf map)ともいう。Hopf 写像が定値写像とホモトピックでないことは、コホモロジーと cup 積が導入される前に H. Hopf がより幾何的な構成で示した(Hat02 §4.B、p. 427)。
  • 記号:写像を $\eta$ と書くことが多い(球面のホモトピー群)。$\mathbb{C}\mathrm{P}^1$ を使う $\eta$ と、$S^2\subset\mathbb{R}^3$ に値をとる $h$ とは、prop-hopf-models の 3 の同相写像で移り合う。
  • 文献:局所自明性の証明は Hat02 Example 4.44(p. 377)の局所自明化と同じ形であり、ファイバーとトーラスの図は同書 Example 4.45(pp. 377–378)にある。

関連項目

参考文献

[1]
Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002, Examples 4.44–4.47(pp. 377–379、Hopf 束とその一般化)、Example 4.51(p. 380、π_3(S^2))、§4.B(p. 427、Hopf 不変量と Adams の定理)

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