Castelnuovoの収縮定理

同義語:Castelnuovo's contractibility criterionCastelnuovoの判定法Castelnuovoの縮約定理Castelnuovo's criterion(-1)曲線(-1)-curve第一種の例外曲線exceptional curve of the first kind

概要

Castelnuovoの収縮定理(Castelnuovo's contractibility criterion)とは、代数閉体上の滑らかな射影曲面 $X$ の既約曲線 $E$ が、滑らかな射影曲面の 1 点の爆発の例外曲線であるための必要十分条件が、$E\cong\mathbb{P}^1$ かつ $E^2=-1$ であるという定理である。この条件をみたす曲線を $(-1)$ 曲線という。随伴公式により、これは $E^2< 0$ かつ $K_X\cdot E< 0$ と同値である。十分性は、非常に豊富な可逆層に $E$ の倍数を加えた可逆層の切断で $E$ を 1 点につぶし、その点が滑らかであることを形式近傍の計算で示す。極小な曲面に至る操作の基礎であり、$\mathbb{P}^2$ と $\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ には $(-1)$ 曲線がない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理, ブローアップ, 射影直線

Castelnuovo の収縮定理(Castelnuovo's contractibility criterion)とは、代数閉体 $k$ 上の滑らかな射影曲面 $X$ の既約曲線 $E$ が、ある滑らかな射影曲面の 1 点の爆発(ブローアップ)でできた曲線であるための必要十分条件は
$$ E\cong\mathbb{P}^1\quad\text{かつ}\quad E^2=-1 $$
である、という定理である。この条件をみたす曲線を $(-1)$ 曲線という。
点を爆発すると、その点は射影直線 $E$ に置き換わり、曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 で見たとおり $E^2=-1$ となる。Castelnuovo の定理はその逆で、曲面の中に $(-1)$ 曲線を見つければ、それを 1 点につぶして滑らかな曲面に戻せる、と述べる。曲線を 1 点につぶすと一般には特異点ができるので、「つぶした先が滑らか」という点が定理の核心である。曲面の分類では、$(-1)$ 曲線をつぶせるだけつぶして極小な曲面に到達する(曲面の極小モデル)。その出発点がこの定理である。
この記事では、$(-1)$ 曲線を自己交点数と標準因子で特徴づけ、定理の必要性を証明する。十分性については、つぶす写像を作る段を証明し、残りの段は所在を示して述べる。例として、射影平面の 1 点の爆発、3 次曲面の直線、2 点の爆発を調べ、$\mathbb{P}^2$ と $\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ に $(-1)$ 曲線がないことを示す。
以下、$k$ は代数閉体、曲面は $k$ 上の滑らかで連結な射影曲面とし、交点数・標準因子 $K_X$・算術種数 $p_a$ は 曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の記号に従う。

$(-1)$ 曲線

$(-1)$ 曲線

曲面 $X$ の既約曲線 $E$ で、$E\cong\mathbb{P}^1$ かつ $E^2=-1$ をみたすものを $(-1)$ 曲線(第一種の例外曲線)という。

$E\cong\mathbb{P}^1$ のとき、$E^2$ は $E$ の法束 $\mathcal{O}_X(E)|_E$ の次数である(曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の定理「交点形式」の 2)。したがって $(-1)$ 曲線とは、法束が $\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(-1)$ となる射影直線のことである。

$(-1)$ 曲線の数値的な特徴づけ

曲面 $X$ の既約曲線 $E$ について、次は同値である。

  1. $E$ は $(-1)$ 曲線である。
  2. $E^2=-1$ かつ $K_X\cdot E=-1$ である。
  3. $E^2< 0$ かつ $K_X\cdot E< 0$ である。

随伴公式 $2p_a(E)-2=E^2+K_X\cdot E$(曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の系「随伴公式」)を使う。
1 ⇒ 2:$E\cong\mathbb{P}^1$ なら $p_a(E)=0$ なので $E^2+K_X\cdot E=-2$ であり、$E^2=-1$ から $K_X\cdot E=-1$ である。
2 ⇒ 3 は明らか。
3 ⇒ 1:$E^2,K_X\cdot E$ はともに $-1$ 以下の整数なので $2p_a(E)-2\le-2$、すなわち $p_a(E)\le0$ である。既約曲線の算術種数は $0$ 以上なので(同記事の命題「算術種数と正規化の種数」)、$p_a(E)=0$ で、$E^2+K_X\cdot E=-2$ から $E^2=K_X\cdot E=-1$ である。同じ命題により $p_a(E)=0$ の既約曲線は $\mathbb{P}^1$ に同型である。$\square$

$E^2< 0$ だけ、あるいは $K_X\cdot E< 0$ だけでは $(-1)$ 曲線にならない(節「反例」)。2 の条件 $K_X\cdot E=-1$ は、$E$ が標準因子に対して「負の向き」にあることを表しており、極小モデルの理論で重要になる。

主定理

Castelnuovo の収縮定理

$X$ を曲面、$E\subset X$ を既約曲線とする。次は同値である。

  1. 曲面 $Y$、点 $P\in Y$ と同型 $X\cong\mathrm{Bl}_PY$ があり、この同型で $E$ は例外曲線 $\pi^{-1}(P)$ に移る($\pi\colon\mathrm{Bl}_PY\to Y$ は爆発)。
  2. $E$ は $(-1)$ 曲線である。
    さらにこのとき、$\pi$ は $X\setminus E$ から $Y\setminus\{P\}$ への同型で、$K_X\cdot E=-1$ である。

十分性(2 ⇒ 1)の主張は Vak25 Theorem 28.6.1(p. 786)、Stacks Tag 0C2N(Lemma 54.16.9)にある。複素解析的な曲面については、$(-1)$ 曲線をつぶした先が滑らかであることが BHPV04 III (4.1)(p. 97)、つぶす写像が爆発であることが同 (4.2)(p. 98)である。

1 ⇒ 2(必要性)。 $\pi\colon X=\mathrm{Bl}_PY\to Y$ とし、$E=\pi^{-1}(P)$ とする。$Y$ の局所環 $\mathcal{O}_{Y,P}$ は 2 次元の正則局所環なので、$E\cong\mathbb{P}^1$ で $\mathcal{O}_X(E)|_E\cong\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(-1)$ である(Stacks Tag 0AGQ)。$E$ は滑らかな曲線なので、曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の定理「交点形式」の 2 により $E^2=\deg\mathcal{O}_X(E)|_E=-1$ である(同記事の定理「爆発と交点形式」の 1)。よって $E$ は $(-1)$ 曲線で、prop-cast-numerical により $K_X\cdot E=-1$ である。$\pi$ が $E$ の外で同型であることは爆発の性質である(ブローアップ の命題「例外因子は有効Cartier因子」の 1)。
2 ⇒ 1(十分性)。 十分性の証明は Stacks Tag 0C2N(Lemma 54.16.9)とそこで使う Tag 0C2J・0C2M・0C2L・0C2K による(この記事では証明の全体は書かない)。筋は次の 4 段である。

  • 段 1:非常に豊富な可逆層 $\mathcal{H}$ で $H^1(X,\mathcal{H})=0$ となるものをとり、$n:=\deg(\mathcal{H}|_E)$ として $\mathcal{M}:=\mathcal{H}(nE)$ とおく。$\mathcal{M}$ は大域切断で生成され、lem-cast-map の切断 $s_0,\dots,s_m,u$ が定める射 $\varphi\colon X\to\mathbb{P}^N$($N=m+1$)は $E$ を 1 点につぶし、$X\setminus E$ の上では単射である。この段は下の lem-cast-vanishing と lem-cast-map で証明する。
  • 段 2:$\varphi$ の Stein 分解 $X\xrightarrow{\psi}Y\to\mathbb{P}^N$ をとる。$\psi_*\mathcal{O}_X=\mathcal{O}_Y$ で、$Y\to\mathbb{P}^N$ は有限射なので $Y$ は射影的である。$\psi$ は $E$ を 1 点 $P$ につぶし、$Y\setminus\{P\}$ の上では有限かつ $\psi_*\mathcal{O}_X=\mathcal{O}_Y$ なので同型である(Stacks Tag 0C2L の証明)。
  • 段 3:形式関数の定理により、$\mathcal{O}_{Y,P}$ の完備化は $\varprojlim_mH^0(mE,\mathcal{O}_{mE})$ に等しい。$\mathcal{O}_X(-mE)/\mathcal{O}_X(-(m+1)E)\cong\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(m)$ の $H^1$ が消えることから、この逆極限は 2 変数の形式的冪級数環 $k[\![x,y]\!]$ に同型である(Stacks Tag 0C2K)。よって $\mathcal{O}_{Y,P}$ は 2 次元の正則局所環で、$Y$ は滑らかである。
  • 段 4:$\psi^{-1}(P)=E$ がスキームとしても成り立つので、$\mathfrak{m}_P\mathcal{O}_X=\mathcal{O}_X(-E)$ は可逆であり、爆発の普遍性(ブローアップ の定理「ブローアップの普遍性」)により $\psi$ は $\mathrm{Bl}_PY$ を経由する。$X\to\mathrm{Bl}_PY$ は有限で双有理な射で、$\mathrm{Bl}_PY$ は正規なので同型である(Stacks Tag 0C2L)。
    以上で $X\cong\mathrm{Bl}_PY$ である。最後の主張は必要性の証明のとおりである。$\square$

段 1 は $(-1)$ 曲線であることの 2 つの条件をそれぞれ使う。$E\cong\mathbb{P}^1$ は $H^1$ の計算に、$E^2=-1$ は $\mathcal{M}|_E$ が自明になることに使う。

消滅の帰納

$E$ を曲面 $X$ の $(-1)$ 曲線、$\mathcal{L}$ を可逆層とし、$H^1(X,\mathcal{L})=0$、$n:=\deg(\mathcal{L}|_E)\ge0$ とする。このとき $0\le i\le n+1$ で $H^1(X,\mathcal{L}(iE))=0$ である。

$i$ についての帰納法による。$i=0$ は仮定である。$1\le i\le n+1$ とし、完全列
$$ 0\to\mathcal{L}((i-1)E)\to\mathcal{L}(iE)\to\mathcal{L}(iE)|_E\to0 $$
を考える。$\mathcal{L}(iE)|_E$ は $E\cong\mathbb{P}^1$ の上の次数 $n+iE^2=n-i\ge-1$ の可逆層なので $\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(n-i)$ に同型で、$H^1(\mathbb{P}^1,\mathcal{O}(n-i))=0$ である(Vak25 Theorem 18.1.2, pp. 494–495)。コホモロジーの長完全列から $H^1(\mathcal{L}((i-1)E))\to H^1(\mathcal{L}(iE))$ は全射で、帰納法の仮定により左辺は $0$ なので右辺も $0$ である。$\square$

$E$ をつぶす射

$E$ を曲面 $X$ の $(-1)$ 曲線とする。大域切断で生成される可逆層 $\mathcal{M}$ で $\mathcal{M}|_E\cong\mathcal{O}_E$ となるものと、その切断で定まる射 $\varphi\colon X\to\mathbb{P}^N$ があり、$\varphi(E)$ は 1 点 $Q$、$\varphi(X\setminus E)$ は $Q$ を含まず、$\varphi$ は $X\setminus E$ の上で単射である。

非常に豊富な可逆層 $\mathcal{H}_0$ をとる。Serre の消滅定理(Vak25 Theorem 18.1.3, p. 495)により十分大きい $r$ で $H^1(X,\mathcal{H}_0^{\otimes r})=0$ であり、非常に豊富な可逆層の冪は非常に豊富なので、$\mathcal{H}:=\mathcal{H}_0^{\otimes r}$ は非常に豊富で $H^1(X,\mathcal{H})=0$ をみたす。$\mathcal{H}$ が定める閉埋め込みを $\iota\colon X\to\mathbb{P}^m$、それを与える切断の基底を $t_0,\dots,t_m$ とする。$\mathcal{H}|_E$ は $E\cong\mathbb{P}^1$ の上の非常に豊富な可逆層なので、$n:=\deg(\mathcal{H}|_E)\ge1$ である。
$\mathcal{M}:=\mathcal{H}(nE)$ とおく。$\deg(\mathcal{M}|_E)=n+nE^2=0$ なので $\mathcal{M}|_E\cong\mathcal{O}_E$ である。lem-cast-vanishing を $\mathcal{L}=\mathcal{H}$ に使うと $H^1(X,\mathcal{M}(-E))=H^1(X,\mathcal{H}((n-1)E))=0$($0\le n-1\le n+1$)なので、完全列 $0\to\mathcal{M}(-E)\to\mathcal{M}\to\mathcal{O}_E\to0$ から $H^0(X,\mathcal{M})\to H^0(E,\mathcal{O}_E)=k$ は全射である。よって $E$ の上で定数 $1$ に制限される切断 $u\in H^0(X,\mathcal{M})$ があり、$u$ は $E$ の各点で $0$ でない。
$\sigma\in H^0(X,\mathcal{O}_X(E))$ を因子が $E$ である切断とし、$s_i:=t_i\sigma^n\in H^0(X,\mathcal{M})$($0\le i\le m$)とおく。$X\setminus E$ の点では $\sigma\ne0$ で $t_i$ のどれかが $0$ でないので、$s_i$ のどれかが $0$ でない。$E$ の点では $u\ne0$ である。したがって $s_0,\dots,s_m,u$ は $\mathcal{M}$ を生成し、射 $\varphi=[s_0:\dots:s_m:u]\colon X\to\mathbb{P}^{m+1}$ を定める。$E$ の上では $s_i=0$ なので $\varphi(E)=Q:=[0:\dots:0:1]$ である。$X\setminus E$ の点 $x$ ではある $s_i(x)\ne0$ なので $\varphi(x)\ne Q$ であり、最初の $m+1$ 個の座標への射影 $\mathbb{P}^{m+1}\setminus\{Q\}\to\mathbb{P}^m$ と $\varphi$ の合成は、比 $s_i/s_j=t_i/t_j$ により $\iota$ に一致する。$\iota$ は単射なので、$\varphi$ は $X\setminus E$ の上で単射である。$\square$

$\mathcal{M}|_E$ が自明になるように $E$ の倍数を足すのが要点である。段 3 で逆極限が $k[\![x,y]\!]$ になるのは、$\mathcal{O}_X(-mE)/\mathcal{O}_X(-(m+1)E)$ が $\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(m)$、すなわち次数 $m$ の 2 変数の斉次式の空間と同じ次元 $m+1$ の切断をもつからで、ここで $E^2=-1$ がもう一度使われる。

例

射影平面の 1 点の爆発

$X:=\mathrm{Bl}_P\mathbb{P}^2$、$h:=\pi^*(\text{直線})$、$E$ を例外曲線とする。曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の定理「爆発と交点形式」により $\operatorname{Pic}X=\mathbb{Z}h\oplus\mathbb{Z}E$、$h^2=1$、$h\cdot E=0$、$E^2=-1$、$K_X=-3h+E$ である。$X$ の $(-1)$ 曲線は $E$ だけである。
実際、$(-1)$ 曲線 $C\sim ah-bE$ について、prop-cast-numerical から $C^2=a^2-b^2=-1$、$K_X\cdot C=-3a+b=-1$ である。$b=3a-1$ を代入すると $-8a^2+6a=0$ で、$a$ は整数なので $a=0$、$b=-1$、すなわち $C\sim E$ である。$C\ne E$ なら $C$ と $E$ は共通成分をもたないので $C\cdot E\ge0$ だが、$C\cdot E=E^2=-1$ となって矛盾する。よって $C=E$ である。$E$ をつぶすと $\mathbb{P}^2$ に戻る。$P$ を通る直線の固有変換は $h-E$ で、自己交点数 $0$ の射影直線であり、$(-1)$ 曲線ではない。

$\mathbb{P}^2$ と $\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ には $(-1)$ 曲線がない

$\mathbb{P}^2$ の既約曲線は次数 $d\ge1$ の曲線で、$C^2=d^2>0$ である。$\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ では $K_X=-2F_1-2F_2$ が 2 で割り切れるので、任意の因子 $D$ について $K_X\cdot D$ は偶数であり、Riemann–Roch の定理から出る $D^2\equiv D\cdot K_X\pmod2$ により $D^2$ も偶数で、$-1$ にならない。したがって、Castelnuovo の定理の必要性から、$\mathbb{P}^2$ と $\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$ は滑らかな射影曲面の 1 点の爆発として得られない。

3 次曲面の直線

$S\subset\mathbb{P}^3$ を滑らかな 3 次曲面、$H$ を超平面切断の類、$L\subset S$ を直線とする。随伴公式から $K_S=-H$ である(Noetherの公式 の例「$\mathbb{P}^3$ の超曲面」で $d=3$)。$K_S\cdot L=-\deg\mathcal{O}(1)|_L=-1$ で、$L\cong\mathbb{P}^1$ なので随伴公式 $-2=L^2+K_S\cdot L$ から $L^2=-1$ である。よって $S$ の直線はすべて $(-1)$ 曲線で、Castelnuovo の定理により 1 本をつぶすと $K^2=K_S^2+1=3+1=4$ の曲面が得られる($K^2$ の変化は爆発と交点形式の定理の 3 による)。$k$ の標数が 3 でなければ、滑らかな 3 次曲面にはちょうど 27 本の直線がある(この記事では証明しない。Vak25 Theorem 27.0.1, p. 758 と §27.2, pp. 760–763)。

2 点の爆発

$\mathbb{P}^2$ を相異なる 2 点 $P_1,P_2$ で爆発した曲面 $X$ を考え、例外曲線を $E_1,E_2$、$P_1,P_2$ を通る直線の固有変換を $\tilde L$ とする。曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の命題「固有変換の交点数と種数」を 2 回使うと $\tilde L\sim h-E_1-E_2$、$\tilde L^2=1-1-1=-1$、$p_a(\tilde L)=0$ で、$\tilde L\cong\mathbb{P}^1$ である。$X$ には $(-1)$ 曲線 $E_1,E_2,\tilde L$ があり、$E_1\cdot\tilde L=E_2\cdot\tilde L=1$、$E_1\cdot E_2=0$ である。
$E_1$ をつぶすと $P_2$ だけで爆発した曲面に戻り、$\tilde L$ の像 $L'$ は $\tilde L\cdot E_1=1$ から $P_1$ で重複度 $1$ の曲線なので、同じ命題により $L'^2=\tilde L^2+1=0$ となる。1 本をつぶすと、それと交わる別の $(-1)$ 曲線は $(-1)$ 曲線でなくなる。逆に $\tilde L$ をつぶすと、$E_1,E_2$ の像は自己交点数 $0$ の射影直線になり、1 点で交わる。どちらをつぶしても $K^2$ は $7$ から $8$ に増え、$e$ は $5$ から $4$ に減る(Noetherの公式 の命題「爆発での不変量の変化」)。

反例:条件を外すと崩れること

外す条件反例成り立たなくなること
$E\cong\mathbb{P}^1$滑らかな 3 次曲線 $C\subset\mathbb{P}^2$ の上の相異なる 10 点で爆発した曲面の、$C$ の固有変換($\tilde C^2=-1$、種数 $1$)滑らかな曲面の爆発の曲線であること
$E^2=-1$$\mathbb{P}^2$ を点で爆発し、さらに $E_1$ の上の点で爆発したときの $E_1$ の固有変換($\cong\mathbb{P}^1$、自己交点数 $-2$)同上
$E^2=-1$$\mathbb{P}^2$ の直線($\cong\mathbb{P}^1$、自己交点数 $1$)同上
数値的な特徴づけの $K_X\cdot E< 0$2 行目の曲線($E^2=-2$、$K_X\cdot E=0$)$E^2< 0$ から $(-1)$ 曲線を結論すること
数値的な特徴づけの $E^2< 0$$\mathbb{P}^2$ の直線($K\cdot L=-3$)$K_X\cdot E< 0$ から $(-1)$ 曲線を結論すること

各行の反例が破る条件と、崩れる結論を確かめる。どの行も、必要性(主定理の 1 ⇒ 2)により爆発の曲線ではありえない。

各行の確認を開く

1 行目:10 点での爆発を $\pi$、例外曲線を $E_1,\dots,E_{10}$ とすると、$C$ は各点で重複度 $1$ なので $\tilde C\sim3h-\sum_iE_i$、$\tilde C^2=9-10=-1$ で、$p_a(\tilde C)=p_a(C)=1$ である。$\tilde C$ は $C$ と同型な種数 $1$ の曲線で $\mathbb{P}^1$ に同型でない。$K_X=-3h+\sum_iE_i$ なので $K_X\cdot\tilde C=-9+10=1>0$ である。

2 行目:2 回目の爆発 $\sigma$ の中心 $Q$ で $E_1$ は重複度 $1$ なので、固有変換 $E_1'$ は $E_1'^2=-1-1=-2$、$p_a(E_1')=0$ をみたし、$\mathbb{P}^1$ に同型である。随伴公式 $-2=E_1'^2+K\cdot E_1'$ から $K\cdot E_1'=0$ である。

3 行目:直線 $L$ は $L^2=1$ で、$K\cdot L=-3$ である。

4・5 行目:それぞれ 2 行目と 3 行目の曲線で、prop-cast-numerical の 3 の条件のうち一方だけをみたし、$(-1)$ 曲線でない。

極小モデルへ

曲面 $X$ に $(-1)$ 曲線があれば、Castelnuovo の定理でつぶして滑らかな曲面 $X_1$ を得る。曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理 の定理「爆発と交点形式」の 2 により、つぶすたびに Picard 群から直和因子 $\mathbb{Z}E$ が 1 つ取り除かれる。これを繰り返すと、$(-1)$ 曲線をもたない曲面、すなわち極小な曲面に有限回で到達する(この記事では証明しない。Har77 V Theorem 5.8, p. 418。$k=\mathbb{C}$ のときは BHPV04 III (4.5), pp. 98–99)。また、曲面の間の双有理な射はどれも点の爆発の合成である(この記事では証明しない。Stacks Tag 0C5R(Lemma 54.17.1)、BHPV04 III (4.3)–(4.4), p. 98)。極小な曲面の性質と分類は 曲面の極小モデル と Enriques–小平の分類 で扱う。

関連項目

参考文献

[3]
Wolf P. Barth, Klaus Hulek, Chris A. M. Peters, Antonius Van de Ven, Compact Complex Surfaces, Springer, 2004, 第 III 章 §4(pp. 97–99):(4.1)((-1) 曲線をつぶした点は滑らか)、(4.2)(σ 過程の一意性)、(4.3)–(4.4)(双有理射の分解)、(4.5)(pp. 98–99、複素曲面の極小モデルの存在)
[4]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer, 1977, V, Theorem 5.8(p. 418、相対極小モデルへの双有理射の存在)

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