Ponceletの閉形定理

同義語:Poncelet のポリズムポンスレの閉形定理Poncelet's porism

概要

Ponceletの閉形定理(Poncelet's porism)とは、円 $\Gamma$ の内部に円 $\gamma$ があるとき、$\Gamma$ の点から $\gamma$ に接線を引いて $\Gamma$ と再び交わる点へ進む操作をくり返した折れ線について、ある点から始めて $n$ 回で閉じれば、どの点から始めても $n$ 回で閉じるという定理である。2 つの円の半径を $R$、$r$、中心間の距離を $d$ とすると、三角形の場合は $d^2=R^2-2Rr$ のとき、四角形の場合は Fuss の関係 $\frac1{(R-d)^2}+\frac1{(R+d)^2}=\frac1{r^2}$ のとき、どの点から始めても閉じる。この 2 つの場合は方べきの定理と円周角の定理で証明でき、一般の $n$ や 2 次曲線の場合には楕円関数が使われる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Eulerの三角形の定理, 双心四角形, 方べきの定理(高校数学), 円周角の定理

高校での出発点:2 つの円の間を折れ線で回る

大きな円 $\Gamma$ の内部に小さな円 $\gamma$ があるとする。$\Gamma$ の上の点 $P_0$ から $\gamma$ に接線を引き、それが $\Gamma$ ともう一度交わる点を $P_1$ とする。$P_1$ から $\gamma$ にもう 1 本の接線(直線 $P_1P_0$ でない方)を引き、$\Gamma$ と再び交わる点を $P_2$ とする。これをくり返すと、$\Gamma$ に内接し $\gamma$ に接する折れ線 $P_0P_1P_2\cdots$ ができる。この折れ線は、いつか $P_0$ にもどって閉じるだろうか。
まず、2 つの円が同心の場合を見る。

同心の 2 円

中心 $O$ が共通で、外側の半径が $R$、内側の半径が $r$ とする。$\gamma$ に接する $\Gamma$ の弦は、$O$ からの距離が $r$ である。弦の両端と $O$ でできる二等辺三角形で、頂角(中心角)を $\theta$ とすると、$O$ から弦に下ろした垂線が頂角を二等分するので $\cos\dfrac\theta2=\dfrac rR$ である。どの弦も中心角が同じ $\theta$ なので、1 回進むごとに点は $O$ のまわりを同じ向きに角 $\theta$ だけ回る。
(1) $R=2$、$r=1$。$\cos\dfrac\theta2=\dfrac12$ より $\dfrac\theta2=60^\circ$、$\theta=120^\circ$ である。3 回で $3\cdot120^\circ=360^\circ$ 回るので、どの点から始めても 3 回で閉じて正三角形になる。
(2) $R=2$、$r=\sqrt2$。$\cos\dfrac\theta2=\dfrac1{\sqrt2}$ より $\theta=90^\circ$ で、どの点から始めても 4 回で閉じて正方形になる。
(3) $R=5$、$r=3$。$\cos\dfrac\theta2=\dfrac35$ より $\dfrac\theta2\approx53.13^\circ$、$\theta\approx106.26^\circ$ である。3 回で約 $318.78^\circ$、4 回で約 $425.04^\circ$ 回り、3 回でも 4 回でも閉じない。

同心の 2 円で R=2、r=1 のとき。どの点から始めても 3 回で閉じる。色は始点の違い 同心の 2 円で R=2、r=1 のとき。どの点から始めても 3 回で閉じる。色は始点の違い
同心の 2 円で R=5、r=3 のとき。4 回進んでも始点 P0 にもどらない 同心の 2 円で R=5、r=3 のとき。4 回進んでも始点 P0 にもどらない

同心の場合は、1 回ごとに同じ角だけ回るので、「ある点から始めて閉じれば、どの点から始めても閉じる」ことは当たり前である。では、中心がずれていたらどうだろうか。

中心がずれた 2 円で三角形が閉じる

3 辺が $5,5,6$ の二等辺三角形 $A(0,4)$、$B(-3,0)$、$C(3,0)$ の外接円と内接円を使う。
(1) 外接円 $\Gamma$。中心は $y$ 軸の上の点 $(0,k)$ で、$A$、$C$ から等距離という条件 $(4-k)^2=9+k^2$ から $16-8k=9$、$k=\dfrac78$ である。中心 $O\left(0,\dfrac78\right)$、半径 $R=4-\dfrac78=\dfrac{25}8$ である。
(2) 内接円 $\gamma$。面積は $\dfrac{6\cdot4}2=12$、周の長さの半分は $8$ なので、半径は $r=\dfrac{12}8=\dfrac32$(三角形の内心と傍心)、中心は $J\left(0,\dfrac32\right)$ である。中心間の距離は $d=\dfrac32-\dfrac78=\dfrac58$ である。
(3) $A$ から始めると、2 本の接線は辺 $AB$、$AC$ で、$\Gamma$ と $B$、$C$ で交わり、$BC$ も $\gamma$ に接する。三角形 $ABC$ そのものである。
(4) 別の点 $P\left(0,-\dfrac94\right)$ から始める。$P$ は $\Gamma$ の一番下の点である($\dfrac78-\dfrac{25}8=-\dfrac94$)。$PJ=\dfrac32+\dfrac94=\dfrac{15}4$ で、$P$ から $\gamma$ に引いた接線が直線 $PJ$($y$ 軸)となす角を $\alpha$ とすると、接点を頂点とする直角三角形で $\sin\alpha=\dfrac{r}{PJ}=\dfrac32\cdot\dfrac4{15}=\dfrac25$ である。$\cos\alpha=\dfrac{\sqrt{21}}5$ なので、接線の向きは $\left(\pm\dfrac25,\dfrac{\sqrt{21}}5\right)$、つまり $(\pm2,\sqrt{21})$ である。$\Gamma$ の上の点 $Q\left(\dfrac{\sqrt{21}}2,3\right)$ について、$\overrightarrow{PQ}=\left(\dfrac{\sqrt{21}}2,\dfrac{21}4\right)=\dfrac{\sqrt{21}}4(2,\sqrt{21})$ で、$Q$ はこの接線の上にある。実際に $\Gamma$ の上にあることは
$$ \left(\frac{\sqrt{21}}2\right)^2+\left(3-\frac78\right)^2=\frac{21}4+\frac{289}{64}=\frac{336+289}{64}=\frac{625}{64}=R^2 $$
で確かめられる。もう 1 本の接線は $\Gamma$ と $Q'\left(-\dfrac{\sqrt{21}}2,3\right)$ で交わる。
(5) $Q$ と $Q'$ を結ぶ直線は $y=3$ で、$J\left(0,\dfrac32\right)$ からの距離は $3-\dfrac32=\dfrac32=r$ である。つまり $QQ'$ も $\gamma$ に接し、$P$ から始めても 3 回で閉じる。

ex-pon-start の 2 つの円は、中心がずれているのに、$A$ から始めても $P$ から始めても三角形が閉じた。図 3 は、さらに 2 つの点から始めても閉じることを数値計算で描いたものである。
ずれた 2 円(3 辺 5、5、6 の三角形の外接円と内接円)の間で、4 つの点(色の点)から始めた折れ線がどれも三角形として閉じる ずれた 2 円(3 辺 5、5、6 の三角形の外接円と内接円)の間で、4 つの点(色の点)から始めた折れ線がどれも三角形として閉じる
この記事で答える問いは次の 3 つである。

  1. 三角形が閉じるのは、2 つの円がどんな関係のときか。そのとき、どの点から始めても閉じるのはなぜか。→ thm-pon-triangle、cor-pon-triangle
  2. 四角形ではどうか。→ prop-pon-quad
  3. 閉じない例はどんなものか。→ ex-pon-cx-euler、ex-pon-cx-outside
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    円の外の点から引いた接線1 回の操作2 次曲線に内接・外接する折れ線
    外心と内心の距離 $d^2=R^2-2Rr$三角形の場合の閉じる条件Poncelet の閉形定理の $n=3$
    Fuss の関係四角形の場合の閉じる条件$n=4$
    同心円での回転1 回ごとに同じ角だけ回る楕円関数による記述(紹介)

言葉の準備:Poncelet の折れ線

以下、$\Gamma$ は中心 $O$、半径 $R$ の円、$\gamma$ は中心 $J$、半径 $r$ の円で、中心間の距離を $d=OJ$ とする。$\gamma$ が $\Gamma$ の内部にある($\gamma$ の点がすべて $\Gamma$ の内部にある)ことは、$d+r< R$ と同じである。

Poncelet の折れ線

$d+r< R$ とする。$\Gamma$ の点 $P_0$ から始めて、次のように $\Gamma$ の点 $P_1,P_2,\dots$ を決める。
(R1) $P_0$ から $\gamma$ に引いた 2 本の接線の一方をとり、それが $\Gamma$ と $P_0$ 以外に交わる点を $P_1$ とする。
(R1) $k\ge1$ のとき、$P_k$ から $\gamma$ に引いた 2 本の接線のうち、直線 $P_kP_{k-1}$ でない方をとり、それが $\Gamma$ と $P_k$ 以外に交わる点を $P_{k+1}$ とする。
折れ線 $P_0P_1P_2\cdots$ を Poncelet の折れ線 という。$P_n=P_0$ となるとき、折れ線は $n$ 回で閉じる という。このとき $P_0P_1\cdots P_{n-1}$ は $\Gamma$ に内接し、各辺が $\gamma$ に接する $n$ 角形である。

この手順がいつも続けられることを確かめておく。$\Gamma$ の点 $P$ は $\gamma$ の外にあるので、$P$ から $\gamma$ に 2 本の接線が引ける。その接線は $\Gamma$ の接線ではない。$\Gamma$ の接線は $P$ 以外の点がすべて $\Gamma$ の外にあり、$\Gamma$ の内部にある $\gamma$ に触れられないからである。よって接線は $\Gamma$ と $P$ 以外にもう 1 点で交わる。

手順の確認

ex-pon-start の 2 円で、$P_0=A(0,4)$、$P_1=B(-3,0)$ とすると、条件 (ii) で $B$ から引く接線は直線 $BA$ でない方、つまり直線 $BC$ で、$P_2=C(3,0)$ である。次に $C$ から引く接線は直線 $CB$ でない方の直線 $CA$ で、$P_3=A=P_0$ となり、3 回で閉じる。

2 つの円の間の接線の長さや角を調べる道具として、次の補題を使う。これは Eulerの三角形の定理 の補題「弧の中点から等距離の点」と同じものである。

弧の中点から等距離の点

三角形 $PQQ'$ の内心を $I$、外接円の半径を $R$ とし、$\angle P$ の二等分線が外接円と $P$ 以外に交わる点を $M$ とする。このとき
$$ MQ=MQ'=MI=2R\sin\frac P2 $$
である($P$ は $\angle QPQ'$ の大きさ)。また $I$ は線分 $PM$ の上にある。

二等辺三角形の底角を比べる

要点:$MQ=MQ'=2R\sin\dfrac P2$ は、三角形 $PQM$、$PQ'M$ に正弦定理を使えば出る。$MQ=MI$ は、三角形 $MQI$ の $Q$ と $I$ における角がどちらも $\dfrac P2+\dfrac Q2$ になることから出る。

詳しい証明を開く

段 1($MQ=MQ'$)。三角形 $PQM$ は外接円に内接するので、正弦定理から $MQ=2R\sin\angle QPM=2R\sin\dfrac P2$ である。同じく $MQ'=2R\sin\dfrac P2$ である。

段 2($I$ の位置)。$I$ は三角形の内部にあり、$\angle P$ の二等分線の上にある。二等分線の半直線は $P$ から三角形の内部を通って辺 $QQ'$ と交わり、その先で外接円と $M$ で交わる。三角形は外接円の周と内部に含まれるので、$I$ は線分 $PM$ の上にあり、$M$ は直線 $QQ'$ について $P$ と反対側にある。

段 3($\angle MQI$)。$M$ と $P$ は直線 $QQ'$ の反対側にあるので、四角形 $PQMQ'$ は円に内接し、$\angle QMQ'=180^\circ-P$ である(円に内接する四角形)。段 1 から三角形 $MQQ'$ は二等辺三角形で、底角は $\angle MQQ'=\dfrac P2$ である。$QI$ は $\angle Q$ の二等分線で、半直線 $QQ'$ は $\angle IQM$ の内側を通るので、$\angle MQI=\dfrac P2+\dfrac Q2$ である。

段 4($\angle MIQ$)。$\angle MIQ$ は三角形 $PQI$ の $I$ における外角なので、$\angle MIQ=\angle IPQ+\angle IQP=\dfrac P2+\dfrac Q2$ である。

段 5(結論)。三角形 $MQI$ は 2 つの底角が等しい二等辺三角形なので $MQ=MI$ である。$\square$

主定理:三角形の場合

Poncelet の閉形定理(三角形の場合)

円 $\Gamma$(中心 $O$、半径 $R$)と円 $\gamma$(中心 $J$、半径 $r$)の中心間の距離 $d$ が
$$ d^2=R^2-2Rr $$
を満たすとする。このとき $\gamma$ は $\Gamma$ の内部にあり、$\Gamma$ の どの点 $P$ から始めても、Poncelet の折れ線は 3 回で閉じる。つまり、$P$ から $\gamma$ に引いた 2 本の接線が $\Gamma$ と再び交わる点を $Q$、$Q'$ とすると、直線 $QQ'$ も $\gamma$ に接し、三角形 $PQQ'$ は $\Gamma$ に内接し $\gamma$ に外接する。

方針は次のとおりである。$\gamma$ の中心 $J$ が三角形 $PQQ'$ の内心であることを示せばよい。$J$ は $\angle QPQ'$ の二等分線の上にあるので、あとは lem-pon-trillium の「$M$ から等距離」を使って、内心と $J$ が同じ点であることを確かめる。

中心が内心と一致することを示す

段 1($\gamma$ は $\Gamma$ の内部)。$d^2=R^2-2Rr\ge0$ より $R\ge2r>r$ である。また $(R-r)^2=R^2-2Rr+r^2=d^2+r^2>d^2$ なので $R-r>d$、つまり $d+r< R$ である。よって Poncelet の折れ線が定まる(def-pon-path)。
段 2($J$ は二等分線の上)。$\Gamma$ の点 $P$ から $\gamma$ に引いた 2 本の接線が $\Gamma$ と再び交わる点を $Q$、$Q'$ とし、$\angle QPQ'$ の大きさを $2\alpha$ とする。$J$ は 2 本の接線から距離 $r$ にあり、$\angle QPQ'$ の内側にあるので、$\angle QPQ'$ の二等分線の上にある。接線 $PQ$ と $\gamma$ の接点を $T$ とすると、直角三角形 $PTJ$ で $\angle TPJ=\alpha$ なので
$$ PJ=\frac r{\sin\alpha} $$
である。直線 $PJ$ が $\Gamma$ と $P$ 以外に交わる点を $M$ とする。$J$ は $\Gamma$ の内部にあるので、線分 $PM$ の上にある。
段 3($JM$ の長さ)。$J$ を通る弦 $PM$ に方べきの定理(方べきの定理(高校数学))を使うと、仮定から
$$ PJ\cdot JM=R^2-d^2=2Rr $$
である。段 2 の $PJ$ を代入すると
$$ JM=\frac{2Rr}{PJ}=2Rr\cdot\frac{\sin\alpha}r=2R\sin\alpha $$
である。
段 4($J$ は内心)。三角形 $PQQ'$ の外接円は $\Gamma$ で、$M$ は $\angle P$ の二等分線と $\Gamma$ の交点なので、lem-pon-trillium により、三角形 $PQQ'$ の内心 $I$ は線分 $PM$ の上にあって $MI=2R\sin\alpha$ である。段 2・段 3 より $J$ も線分 $PM$ の上にあって $JM=2R\sin\alpha$ である。線分 $PM$ の上で $M$ からの距離が決まった値になる点はただ 1 つなので、$J=I$ である。
段 5(結論)。$J$ は三角形 $PQQ'$ の内心で、辺 $PQ$ の直線までの距離が $r$ なので、内接円の半径は $r$ である。つまり $\gamma$ は三角形 $PQQ'$ の内接円で、辺 $QQ'$ にも接する。$\square$

証明の図。P から引いた 2 本の接線が外側の円と Q、Q' で交わる。直線 PJ が外側の円と再び交わる点 M から Q、Q' までの距離(緑の線分)と、M から J までの距離(灰色の破線の上)は等しい 証明の図。P から引いた 2 本の接線が外側の円と Q、Q' で交わる。直線 PJ が外側の円と再び交わる点 M から Q、Q' までの距離(緑の線分)と、M から J までの距離(灰色の破線の上)は等しい

証明の各段を確かめる

ex-pon-start の $R=\dfrac{25}8$、$r=\dfrac32$、$d=\dfrac58$ では、$R^2-2Rr=\dfrac{625}{64}-\dfrac{75}8=\dfrac{625-600}{64}=\dfrac{25}{64}=d^2$ で、thm-pon-triangle の仮定が成り立つ。$P\left(0,-\dfrac94\right)$ で証明を追う。
(1) 段 2。$\sin\alpha=\dfrac25$、$PJ=\dfrac{15}4=\dfrac{3/2}{2/5}$ である。直線 $PJ$ は $y$ 軸で、$\Gamma$ と $P$ 以外に $M(0,4)$ で交わる($M$ は $A$ と同じ点)。
(2) 段 3。$JM=4-\dfrac32=\dfrac52$、$PJ\cdot JM=\dfrac{15}4\cdot\dfrac52=\dfrac{75}8$ で、$2Rr=2\cdot\dfrac{25}8\cdot\dfrac32=\dfrac{75}8$、$R^2-d^2=\dfrac{625-25}{64}=\dfrac{75}8$ と一致する。$2R\sin\alpha=\dfrac{25}4\cdot\dfrac25=\dfrac52=JM$ である。
(3) 段 4。$MQ=\sqrt{\left(\dfrac{\sqrt{21}}2\right)^2+(4-3)^2}=\sqrt{\dfrac{25}4}=\dfrac52$ で、$MQ=MJ$ である(図 4 の緑の線分)。

thm-pon-triangle の仮定 $d^2=R^2-2Rr$ は、Eulerの三角形の定理 の結論そのものである。Euler の三角形の定理は「三角形があれば $d^2=R^2-2Rr$」、thm-pon-triangle は「$d^2=R^2-2Rr$ なら、どの点からでも三角形がある」で、互いに逆向きになっている。2 つを合わせると次のことが分かる。

1 つの点で閉じれば、どの点でも閉じる(三角形の場合)

$d+r< R$ とする。$\Gamma$ のある 1 つの点から始めた Poncelet の折れ線が 3 回で閉じるなら、$\Gamma$ のどの点から始めても 3 回で閉じる。

Euler の三角形の定理と組み合わせる

点 $P_0$ から始めて 3 回で閉じたとし、三角形 $P_0P_1P_2$ を考える。3 辺はどれも $\gamma$ に接し、接点は $\Gamma$ の内部にあるので、それぞれ辺(弦)の上にある(直線の点で円 $\Gamma$ の内部にあるのは、弦の両端の間の点だけ)。3 本の直線に接する円は内接円と 3 つの傍接円だけで、傍接円は 2 辺では延長の上で接する(三角形の内心と傍心)。よって 3 辺の線分すべてに接する円は内接円で、$\gamma$ は三角形 $P_0P_1P_2$ の内接円で、$\Gamma$ は外接円である。Eulerの三角形の定理 により $d^2=R^2-2Rr$ で、thm-pon-triangle によりどの点から始めても 3 回で閉じる。$\square$

四角形の場合

四角形が閉じる条件は、双心四角形 で示した Fuss の関係である。三角形の場合と同じく、その逆向きを示す。

Poncelet の閉形定理(四角形の場合)

$0\le d< R$ で、$R$、$r$、$d$ が Fuss の関係
$$ \frac1{(R-d)^2}+\frac1{(R+d)^2}=\frac1{r^2} $$
を満たすとする。このとき $\gamma$ は $\Gamma$ の内部にあり、$\Gamma$ のどの点 $P$ から始めても、Poncelet の折れ線は 4 回で閉じる。

方針は、双心四角形 の Fuss の関係の証明を逆にたどることである。$P$ から引いた 2 本の接線が $\Gamma$ と再び交わる点を $Q$、$S$ とする。四角形 $PQXS$ が閉じるなら、$P$ の向かいの頂点 $X$ は「直線 $PJ$ の先の点 $K$ の反対側の点 $L$ と $J$ を結ぶ直線」の上にあるはずである。そこで $X$ をこのように作り、$X$ から引いた 2 本の接線が $Q$、$S$ を通ることを示す。

向かいの頂点を先に作る

段 1($\gamma$ は $\Gamma$ の内部)。Fuss の関係から $\dfrac1{r^2}>\dfrac1{(R-d)^2}$ なので $r< R-d$、つまり $d+r< R$ である。
段 2($P$ の側の角)。$\Gamma$ の点 $P$ から $\gamma$ に引いた 2 本の接線が $\Gamma$ と再び交わる点を $Q$、$S$ とする。三角形の場合の prf-pon-triangle の段 2 と同じく、$J$ は $\angle QPS$ の二等分線の上にあり、$\angle QPS=2\alpha$、$PJ=\dfrac r{\sin\alpha}$ である。直線 $PJ$ が $\Gamma$ と $P$ 以外に交わる点を $K$ とする。$\angle QPK=\angle KPS=\alpha$ なので、円周角の定理(円周角の定理)により、$P$ を含まない弧 $QS$ の中心角は $4\alpha$ で、$K$ はその弧の中点である(弧 $QK$、$KS$ の中心角がどちらも $2\alpha$)。
段 3(向かいの頂点 $X$ を作る)。$K$ と中心 $O$ について反対側の $\Gamma$ の点を $L$ とする($KL$ は直径)。直線 $LJ$ が $\Gamma$ と $L$ 以外に交わる点を $X$ とする。$J$ は $\Gamma$ の内部にあるので、弦 $PK$、$LX$ の上にあり、方べきの定理から
$$ PJ\cdot JK=LJ\cdot JX=R^2-d^2 $$
である。三角形 $JKL$ で $O$ は辺 $KL$ の中点なので、中線定理から $JK^2+JL^2=2(d^2+R^2)$ である($J$ が直線 $KL$ の上にあってもベクトルで同じ式が成り立つ。双心四角形 の Fuss の関係の証明の段 3)。
段 4($X$ の側の角)。$p=PJ$、$q=XJ$ とおく。段 3 から $JK=\dfrac{R^2-d^2}p$、$JL=\dfrac{R^2-d^2}q$ なので
$$ \frac1{p^2}+\frac1{q^2}=\frac{JK^2}{(R^2-d^2)^2}+\frac{JL^2}{(R^2-d^2)^2}=\frac{2(R^2+d^2)}{(R^2-d^2)^2} $$
である。Fuss の関係の同値な形(双心四角形)により右辺は $\dfrac1{r^2}$ で、$\dfrac1{p^2}+\dfrac1{q^2}=\dfrac1{r^2}$ である。特に $q>r$ で、$X$ は $\gamma$ の外にある。$X$ から $\gamma$ に引いた接線が直線 $XJ$ となす角を $\beta$ とすると、段 2 と同じく $\sin\beta=\dfrac rq$ である。すると
$$ \sin^2\alpha+\sin^2\beta=\frac{r^2}{p^2}+\frac{r^2}{q^2}=1 $$
なので $\sin\beta=\cos\alpha=\sin(90^\circ-\alpha)$ で、$\alpha$、$\beta$ はどちらも $0^\circ$ と $90^\circ$ の間にあるから $\beta=90^\circ-\alpha$ である。
段 5($X$ の接線は $Q$、$S$ を通る)。$X$ から引いた 2 本の接線が $\Gamma$ と再び交わる点を $Q'$、$S'$ とする。直線 $XJ$ は直線 $XL$ で $\angle Q'XS'=2\beta$ を二等分するので、段 2 と同じ理由で、$X$ を含まない弧 $Q'S'$ は中点が $L$、中心角が $4\beta=360^\circ-4\alpha$ である。すると残りの弧 $Q'S'$($X$ を含む方)は、中心角が $4\alpha$ で、中点は $L$ の反対側の点 $K$ である。一方、段 2 より、$P$ を含まない弧 $QS$ も中点が $K$、中心角が $4\alpha$ である。中点と中心角が同じ弧は同じ弧なので、その両端も同じで、$\{Q',S'\}=\{Q,S\}$ である。つまり直線 $XQ$、$XS$ は $\gamma$ に接する。
段 6(4 回で閉じる)。$X$ は中点 $K$ の弧 $QS$ の上(両端を除く)にあり、$P$ はもう一方の弧の上にあるので、$X\ne P$ で、$P$、$Q$、$X$ は相異なる。$Q$ から $\gamma$ に引いた 2 本の接線は直線 $QP$ と直線 $QX$ で(1 本の直線は $\Gamma$ と 2 点でしか交わらないので、これらは異なる直線)、直線 $QP$ でない方をとると $X$ に進む。同じく $X$ からは直線 $XQ$ でない方の直線 $XS$ で $S$ に進み、$S$ からは直線 $SX$ でない方の直線 $SP$ で $P$ にもどる。$P_0=P$、$P_1=Q$ ととれば $P_2=X$、$P_3=S$、$P_4=P$ で、4 回で閉じる(最初に接線 $PS$ をとった場合も、$Q$ と $S$ の役割を入れかえて同じ)。$\square$

Fuss の関係を満たす 2 円(R=3、d=1、r=4/√5)の間で、3 つの点から始めた折れ線がどれも四角形として閉じる Fuss の関係を満たす 2 円(R=3、d=1、r=4/√5)の間で、3 つの点から始めた折れ線がどれも四角形として閉じる

四角形の場合の数値例

$R=3$、$d=1$ とすると、Fuss の関係は $\dfrac1{r^2}=\dfrac14+\dfrac1{16}=\dfrac5{16}$ で、$r=\dfrac4{\sqrt5}\approx1.789$ である。$\Gamma$ を原点中心、$J=(1,0)$ として、始点を $\Gamma$ の上で角 $0.5$、$1.7$、$2.9$(ラジアン)の点にとると、4 回進んだ点と始点の距離は $10^{-14}$ 以下(計算の丸めの誤差)で、閉じた四角形の辺の長さはおよそ
(1) $2.245$、$3.590$、$5.763$、$4.419$
(2) $3.807$、$2.218$、$4.194$、$5.783$
(3) $5.187$、$2.535$、$2.859$、$5.512$
である(図 5)。どれも向かい合う辺の和が等しい。たとえば (1) では、小数第 4 位まで計算すると $2.2450+5.7633=8.0083$、$3.5895+4.4188=8.0083$ である。これは Pitotの定理 と合っている。

cor-pon-triangle と同じく、四角形でも「1 つの点で閉じれば、どの点でも閉じる」。ある点から始めた折れ線が $\Gamma$ をちょうど 1 周して 4 回で閉じれば(4 つの点 $P_0$、$P_1$、$P_2$、$P_3$ が $\Gamma$ の上をこの順に並べば)、できた四角形は凸で、各辺と $\gamma$ の接点は $\Gamma$ の内部にあるので辺の上にあり、$\Gamma$ を外接円、$\gamma$ を内接円とする双心四角形なので、双心四角形 の Fuss の関係が成り立ち、prop-pon-quad からどの点でも 4 回で閉じるからである。
「始めの位置によらず、閉じるか閉じないかが決まる」という型の定理は、Steinerの円鎖 にもある。Steiner の円鎖では、2 つの円の間に円を次々に接するように並べ、反転で 2 円を同心円に移して証明した。2 つを比べる。

Steiner の円鎖Poncelet の閉形定理
並べるもの2 円に接する円外側の円の弦で、内側の円に接するもの
同心円の場合円が一定の角ずつ回る点が一定の角ずつ回る(ex-pon-concentric)
閉じる条件半径と中心間の距離の式$n=3$:$d^2=R^2-2Rr$、$n=4$:Fuss の関係
始点によらないこと反転で同心円の場合に帰着この記事では $n=3,4$ を方べきと円周角で示した
一般の場合の道具反転、1 次分数変換楕円関数(紹介のみ)

例と反例

外す条件反例成り立たなくなること
$d^2=R^2-2Rr$$R=3$、$r=1$、$d=1$3 回で閉じる
$\gamma$ が $\Gamma$ の内部にある$R=3$、$\gamma$ の中心 $(2,0)$、$r=2$$\Gamma$ のどの点からも接線が引ける
Fuss の関係同心で $R=5$、$r=3$4 回で閉じる

R=3、r=1、d=1 の 2 円では、P0 から 3 回進んだ点 P3 は P0 にもどらない R=3、r=1、d=1 の 2 円では、P0 から 3 回進んだ点 P3 は P0 にもどらない

反例:$d^2\ne R^2-2Rr$ では 3 回で閉じない

$\Gamma$ を原点中心・半径 $3$、$\gamma$ を中心 $J(1,0)$・半径 $1$ とする。$d=1$ で、$d^2=1$、$R^2-2Rr=9-6=3$ なので、thm-pon-triangle の仮定が成り立たない。$d+r=2<3$ なので $\gamma$ は $\Gamma$ の内部にある。
(1) $P_0=(3,0)$ から始める。$P_0J=2$ なので、接線が直線 $P_0J$($x$ 軸)となす角 $\alpha$ は $\sin\alpha=\dfrac12$、$\alpha=30^\circ$ である。$x$ 軸と $30^\circ$ をなす弦の、$O$ から見た中心角は $180^\circ-2\cdot30^\circ=120^\circ$ なので、$P_1=\left(-\dfrac32,-\dfrac{3\sqrt3}2\right)$($P_0$ から $240^\circ$ 回った点)である。
(2) 数値で続けると、$P_2\approx(1.2959,\ 2.7057)$、$P_3\approx(2.4936,\ -1.6679)$ で、$P_3$ と $P_0$ の距離は約 $1.743$ である。3 回では閉じない(図 6)。
cor-pon-triangle により、この 2 円ではどの点から始めても 3 回では閉じない。実際、始点を $(-3,0)$ にとると $P_3$ と始点の距離は約 $3.370$ である。

$P_2$ の厳密な値を開く

$P_1$ からのもう 1 本の接線を求めて $\Gamma$ との交点を計算すると $P_2=\left(\dfrac{219}{169},\dfrac{264\sqrt3}{169}\right)$ である。$\left(\dfrac{219}{169}\right)^2+3\left(\dfrac{264}{169}\right)^2=\dfrac{47961+209088}{28561}=\dfrac{257049}{28561}=9$ で、確かに $\Gamma$ の上にある。

反例:$\gamma$ が $\Gamma$ からはみ出す

$\Gamma$ を原点中心・半径 $3$、$\gamma$ を中心 $(2,0)$・半径 $2$ とする。$d+r=4>3$ で、$\gamma$ は $\Gamma$ からはみ出している。$\Gamma$ の点 $(3,0)$ は $\gamma$ の中心からの距離が $1<2$ なので $\gamma$ の内部にあり、そこから $\gamma$ に接線は引けない。一般に $\Gamma$ の点 $(x,y)$ が $\gamma$ の内部にあるのは $(x-2)^2+y^2<4$ のときで、$x^2+y^2=9$ を使うと $13-4x<4$、つまり $x>\dfrac94$ のときである。$\Gamma$ のこの部分の点からは折れ線を始められない。

反例:Fuss の関係を満たさない同心円

ex-pon-concentric (3) の $R=5$、$r=3$、$d=0$ では、$\dfrac1{25}+\dfrac1{25}=\dfrac2{25}\ne\dfrac19$ で Fuss の関係が成り立たない。1 回ごとに約 $106.26^\circ$ 回るので、4 回で約 $425.04^\circ$ となり、4 回では閉じない(図 2)。

大学数学で見る:一般の $n$ と楕円関数

三角形・四角形で見たことは、一般の $n$ 角形でも成り立つ。

Poncelet の閉形定理(一般の場合)

2 つの 2 次曲線(円や楕円)の一方の内部に他方があるとき、外側の曲線の 1 つの点から始めた Poncelet の折れ線(外側の曲線に内接し、各辺が内側の曲線に接する折れ線)が $n$ 回で閉じるなら、外側の曲線のどの点から始めても $n$ 回で閉じる(Wei26)。この記事では、2 つの円で $n=3$(cor-pon-triangle)と、$n=4$ で $\Gamma$ をちょうど 1 周して閉じる場合(prop-pon-quad の後の段落)だけを示した。一般の場合は証明しない。

閉じる条件の式と楕円関数を開く

2 つの円の場合、$n$ 回で閉じる条件は $R$、$r$、$d$ の式で書ける。$n=3$ は $\dfrac1{R-d}+\dfrac1{R+d}=\dfrac1r$(Eulerの三角形の定理 と同じ)、$n=4$ は $\dfrac1{(R-d)^2}+\dfrac1{(R+d)^2}=\dfrac1{r^2}$(双心四角形)で、Wei26 には $n=5$ 以上のいくつかの $n$ の式と、一般の $n$ の条件を Jacobi の楕円関数と完全楕円積分で書いた式が載っている。同心円の場合は、1 回ごとに一定の角だけ回るので、閉じる条件は「回る角が $360^\circ$ の有理数倍になる」ことだった(ex-pon-concentric)。中心がずれると 1 回ごとに回る角は一定でなくなり、閉じる条件に楕円関数が現れる。楕円関数は 楕円曲線 の理論と結びついた関数である。この記事ではその内容に立ち入らない。

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関連項目

参考文献

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