p進付値(p-adic valuation)とは、素数 $p$ を固定し、$0$ でない整数 $n$ を割り切る $p$ の冪 $p^e$ の最大の指数 $e$ を $v_p(n)$ とする関数であり、有理数には $v_p(a/b)=v_p(a)-v_p(b)$ で拡張される。たとえば $v_2(360)=3$ である。$v_p$ は積を和に変え、和については $v_p(a+b)\ge\min(v_p(a),v_p(b))$ を満たし、$v_p(a)\ne v_p(b)$ なら等号が成り立つ。$|x|_p=p^{-v_p(x)}$ で定まる $p$ 進絶対値は強三角不等式と積公式を満たし、$p$ 進数の構成の基礎になる。階乗や二項係数の素因数の指数、冪の差 $a^n-b^n$ の素因数の指数も付値の言葉で調べられる。
$360$ を $2$ で割り続けると $360\to180\to90\to45$ となり、$45$ はもう $2$ で割り切れない。$360$ は $2$ でちょうど $3$ 回割り切れる。同じように $3$ では $2$ 回($360\to120\to40$)、$5$ では $1$ 回割り切れ、これは素因数分解 $360=2^3\cdot3^2\cdot5$ の指数にほかならない。素数 $p$ でちょうど何回割り切れるかを表す数を $v_p(360)$ と書き、$v_2(360)=3$、$v_3(360)=2$、$v_5(360)=1$、$7$ 以上の素数 $p$ では $v_p(360)=0$ である。この回数を使うと、たとえば $100!=1\cdot2\cdots100$ の末尾に $0$ がいくつ並ぶかがすぐに分かる。末尾の $0$ の個数は $100!$ を割り切る $10=2\cdot5$ の冪の最大の指数であり、$v_2(100!)=97$、$v_5(100!)=24$ なので、$\min(97,24)=24$ 個である。
この「素数 $p$ で何回割り切れるか」という関数 $v_p$ を $p$ 進付値 という。$v_p$ は掛け算を足し算に変え、和については「少なくとも小さいほうの回数だけは割り切れる」という不等式を満たす。本記事では $v_p$ を割り切りの回数として直接定義し、その基本性質を素因数分解の一意性を使わずに示したうえで、有理数への拡張、$p$ 進絶対値と積公式、調和数が整数でないことの証明、階乗・二項係数の付値の桁の和による表示、冪の差 $a^n-b^n$ の付値の公式を扱う。$v_p$ を距離に使って有理数を完備化すると p進数 が得られる。
以下、$p$ は素数とする。
$0$ でない整数 $n$ に対し、$p^e$ が $n$ を割り切るような $0$ 以上の整数 $e$ のうち最大のものを $v_p(n)$ と書き、$n$ の $p$ 進付値($p$-adic valuation)という。$n=0$ はすべての $p^e$ で割り切れるので、$v_p(0):=\infty$ と約束する。
最大値が存在することを確かめておく。$e=0$ では $p^0=1\mid n$ なので条件を満たす $e$ はある。$p^e\mid n$、$n\ne0$ なら $2^e\le p^e\le|n|$ であり、$e<2^e$ なので $e<|n|$ である。条件を満たす $e$ は有限個しかなく、最大のものがある。定義から $v_p(-n)=v_p(n)$ である。
分数に対しては、分子と分母の付値の差をとる。
$0$ でない有理数 $r$ を $r=a/b$($a,b$ は $0$ でない整数)と書き、
$$
v_p(r):=v_p(a)-v_p(b)
$$
と定める。この値は $r$ の表し方によらない(prop-padicval-rational)。$v_p(0):=\infty$ とする。さらに
$$
|r|_p:=p^{-v_p(r)}\quad(r\ne0),\qquad|0|_p:=0
$$
を $r$ の $p$ 進絶対値($p$-adic absolute value)という。
$r$ を既約分数で書いたとき、$v_p(r)>0$ は分子が $p$ で割り切れること、$v_p(r)<0$ は分母が $p$ で割り切れることを表す(既約分数の分子と分母の両方が $p$ で割り切れることはない)。$p$ 進絶対値は $p$ で多く割り切れるほど小さい。文献によっては $v_p$ を $\operatorname{ord}_p$ や $\nu_p$ と書く(たとえば Sho08 §1.3、p. 10 は $\nu_p$ と書く)。
$v_p$ は整数の中から「$p$ に関する部分」だけを取り出す物差しである。$n=p^em$($p\nmid m$)と書いたとき、$v_p$ は $m$ を無視して $e$ だけを見る。素数を一つずつ見ていけば、$0$ でない整数は符号を除いて付値の列 $(v_2(n),v_3(n),v_5(n),\dots)$ で決まる。掛け算は付値の足し算になり、割り切る関係は付値の大小になるので、$v_p$ は $p$ についての「対数」のように働く。一方、足し算については付値は小さいほうより下がらないが、等しい付値の数を足すと打ち消し合って付値が上がることがある。この「和の付値は最小値以上」という性質が、$p$ 進絶対値を通常の絶対値とまったく違う「近さ」にする。
$v_2(360)=3$、$v_3(360)=2$、$v_5(360)=1$ である。$v_p(\pm1)=0$、$v_p(p^k)=k$ であり、$p\nmid n$ なら $v_p(n)=0$ である。有理数では $45/28=3^2\cdot5/(2^2\cdot7)$ なので $v_2(45/28)=-2$、$v_3(45/28)=2$、$v_5(45/28)=1$、$v_7(45/28)=-1$ である。$p$ 進絶対値は $|360|_2=1/8$、$|360|_3=1/9$、$|360|_5=1/5$、$|45/28|_2=4$ である。
階乗 の記事の定理「Legendre の公式」$v_p(n!)=\sum_{r\ge1}\lfloor n/p^r\rfloor$($\lfloor\cdot\rfloor$ は床関数)により、
$$
v_5(100!)=20+4=24,\qquad v_2(100!)=50+25+12+6+3+1=97
$$
である。$2^e$ と $5^e$ は互いに素なので、$10^e\mid100!$ となるのは $2^e$ と $5^e$ の両方が $100!$ を割り切るとき、すなわち(prop-padicval-basic の 4 により)$e\le v_2(100!)$ かつ $e\le v_5(100!)$ のときである。したがって $100!$ の末尾の $0$ は $24$ 個である。同じ値は prop-padicval-digit-sum により桁の和からも求まる。
$v_3(1)=v_3(2)=0$ だが $v_3(1+2)=v_3(3)=1$ である。$v_2(12)=v_2(20)=2$ だが $v_2(12+20)=v_2(32)=5$ である。$a=1,b=2$ は「$v_p(a)=v_p(b)$」を満たすが「$v_p(a+b)=\min(v_p(a),v_p(b))$」を満たさない。破れるのは「$v_p(a+b)$ はいつも $\min(v_p(a),v_p(b))$ に等しい」という含意であり、等号が保証されるのは $v_p(a)\ne v_p(b)$ のときだけである(prop-padicval-basic の 3)。
def-padicval-integer の $p$ を合成数 $m$ に替えて、$m^e\mid n$ となる最大の $e$ を $w_m(n)$ とおく。$m=6$ では $w_6(2)=w_6(3)=0$ だが $w_6(2\cdot3)=1$ であり、$m=4$ では $w_4(2)=0$ だが $w_4(2\cdot2)=1$ である。$w_m$ は「$0$ でない整数に $0$ 以上の整数を対応させ、$m$ の冪で割り切れる回数を表す」ことを満たすが、「$w_m(ab)=w_m(a)+w_m(b)$」を満たさない。破れるのは「割り切れる回数は積を和に変える」という含意であり、$p$ が素数であること、すなわち 素数 の記事の補題「Euclidの補題」が使えることが本質的である(prop-padicval-basic の 1 の証明)。
$0$ でない整数 $n$ と $0$ 以上の整数 $e$ について、$n=p^em$、$p\nmid m$ となる整数 $m$ が存在することと、$e=v_p(n)$ であることは同値である。
$e=v_p(n)$ なら $p^e\mid n$ なので $n=p^em$ と書ける。$p\mid m$ なら $p^{e+1}\mid n$ となり $e$ の最大性に反するので $p\nmid m$ である。
逆に $n=p^em$、$p\nmid m$ とする。$p^e\mid n$ なので $e\le v_p(n)$ である。$e< v_p(n)$ とすると $p^{e+1}\mid n=p^em$ なので $p\mid m$ となり矛盾する。よって $e=v_p(n)$ である。$\square$
$a,b$ を $0$ でない整数とする。
lem-padicval-split により $a=p^{v_p(a)}a'$、$b=p^{v_p(b)}b'$、$p\nmid a'$、$p\nmid b'$ と書ける。
4. $e\le v_p(a)$ なら $p^e\mid p^{v_p(a)}\mid a$ である。$e>v_p(a)$ なら $p^{v_p(a)+1}\mid p^e$ であり、$p^e\mid a$ とすると $p^{v_p(a)+1}\mid a$ となって最大性に反する。
この証明は素因数分解の一意性(素数 の記事の定理「算術の基本定理」)を使わず、使った素数の性質は 1 の Euclid の補題だけである。ex-padicval-composite は、この補題が使えない合成数では 1 が破れることを示している。同じ性質を、素因数分解 の記事の命題「p 進付値の性質」は素因数分解の一意性から、p進数 の記事の命題「p進付値の基本公式」は有理数から $p$ の冪をくくり出して示している(Sho08 は 1 を素因数分解から導き(§1.3 の式 (1.3)、p. 10)、2 と 3 を Exercise 1.29(p. 13)としている)。
4 と素因数分解から、$0$ でない整数 $a$ が $b$ を割り切ることはすべての素数 $p$ で $v_p(a)\le v_p(b)$ となることと同値であり、最大公約数と最小公倍数の付値はそれぞれ $\min(v_p(a),v_p(b))$、$\max(v_p(a),v_p(b))$ である(最大公約数 の記事の定理「素因数分解による最大公約数と最小公倍数」)。
prop-padicval-rational の 3 を $p$ 進絶対値で書き直すと、すべての有理数 $r,s$ について
$$
|rs|_p=|r|_p|s|_p,\qquad|r+s|_p\le\max(|r|_p,|s|_p)
$$
となる($0$ を含む場合は定義から直ちに従う)。2 つ目の不等式は通常の三角不等式 $|r+s|\le|r|+|s|$ より強く、$d_p(r,s):=|r-s|_p$ は有理数全体の上の超距離空間の距離になる(p進数 の記事の系「p進絶対値の強三角不等式」)。この距離では $3^k$ は $k\to\infty$ で $0$ に近づき($|3^k|_3=3^{-k}$)、$1$ と $1+3^k$ は近い。この距離について有理数全体を完備化したものが $p$ 進数体 $\mathbb{Q}_p$ である。
$p$ 進絶対値をすべての素数について掛け合わせ、通常の絶対値 $|r|$ も掛けると、必ず $1$ になる。
$0$ でない有理数 $r$ について、$|r|_p\ne1$ となる素数 $p$ は有限個であり、
$$
|r|\cdot\prod_p|r|_p=1
$$
が成り立つ。積はすべての素数 $p$ にわたる($1$ でない因子は有限個)。
素因数分解 の記事の定理「有理数の素因数分解」により、$|r|=\prod_pp^{v_p(|r|)}$ であり、$v_p(r)\ne0$ となる $p$ は有限個である。$v_p(|r|)=v_p(r)$ なので $|r|_p\ne1$ となる $p$ も有限個で、
$$
|r|\cdot\prod_p|r|_p=\prod_pp^{v_p(r)}\cdot\prod_pp^{-v_p(r)}=\prod_pp^{0}=1
$$
である。$\square$
たとえば $360\cdot|360|_2\cdot|360|_3\cdot|360|_5=360\cdot\frac18\cdot\frac19\cdot\frac15=1$ である。積公式は、有理数の大きさを「通常の絶対値」と「各素数の $p$ 進絶対値」に分けて測ると、それらが互いに釣り合っていることを表す。
prop-padicval-rational の 3 を何回も使うと、付値が最も小さい項がただ 1 つしかない和の付値が分かる。
$x_1,\dots,x_k$($k\ge1$)を $0$ でない有理数とし、$v_p(x_1)< v_p(x_i)$($i=2,\dots,k$)とする。このとき $x_1+\cdots+x_k\ne0$ であり、
$$
v_p(x_1+\cdots+x_k)=v_p(x_1)
$$
である。
$k=1$ なら明らかである。$k\ge2$ とし、$m:=\min_{i\ge2}v_p(x_i)>v_p(x_1)$、$S:=x_2+\cdots+x_k$ とおく。$S=0$ なら和は $x_1$ で主張は成り立つ。
一般に、付値が $m$ 以上の $0$ でない有理数をいくつか足した和は、$0$ であるか、付値が $m$ 以上である。これは項の個数についての帰納法で分かる。最後の項 $y$ を足す前の和を $T$ とすると、$T=0$ なら和は $y$ そのものであり、$T\ne0$ なら帰納法の仮定により $v_p(T)\ge m$ なので、$T+y\ne0$ のとき prop-padicval-rational の 3 により $v_p(T+y)\ge m$ である。
$S\ne0$ のとき、これを $x_2,\dots,x_k$ に使って $v_p(S)\ge m>v_p(x_1)$ を得る。prop-padicval-rational の 3 により $x_1+S\ne0$、$v_p(x_1+S)=v_p(x_1)$ である。$\square$
これを $1+\frac12+\cdots+\frac1n$ に使うと、分母に現れる $2$ の冪が正確に分かる。
正の整数 $n$ について $H_n:=1+\frac12+\cdots+\frac1n$ とし、$2^m\le n<2^{m+1}$ となる整数 $m\ge0$ をとる。このとき
$$
v_2(H_n)=-m
$$
である。特に $n\ge2$ なら $H_n$ は整数でない。
$1\le k\le n$ を $k=2^aj$($j$ は奇数)と書くと $v_2(1/k)=-a$ である。$2^a\le k\le n<2^{m+1}$ なので $a\le m$ である。$a=m$ となるのは $k=2^m$ のときだけである。実際、$a=m$ で $j\ge3$ なら $k\ge3\cdot2^m>2^{m+1}>n$ となって $k\le n$ に反する。したがって $\frac11,\dots,\frac1n$ のうち付値が最小($-m$)のものは $\frac1{2^m}$ ただ 1 つであり、cor-padicval-unique-min により $v_2(H_n)=-m$ である。$n\ge2$ なら $m\ge1$ なので $v_2(H_n)<0$ であり、整数の付値は $0$ 以上だから $H_n$ は整数でない。$\square$
たとえば $H_4=\frac{25}{12}$、$H_{10}=\frac{7381}{2520}$ で、分母はそれぞれ $2^2\cdot3$、$2^3\cdot315$ である。$H_n$ が整数でないことは 調和級数 の記事の定理「調和数が整数でないこと」にもあり、同記事の証明は $2^{m-1}\cdot(\text{奇数})$ の形の整数を掛けて $\frac12$ の端数が残ることを示す形で書かれている。ここでは付値を使って、整数でないことより強く、分母の $2$ の指数がちょうど $m$ であることを示した。$1,\dots,n$ のうち $2^m$ だけが $2^m$ で割り切れることから $H_n$ が整数でないことを導く流れは、Sho08 Exercise 1.31–1.32(p. 13)で演習とされている。
ex-padicval-factorial で使った Legendre の公式は、$n$ を $p$ 進法で書いたときの桁の和で言い換えられる。$0$ 以上の整数 $n$ を
$$
n=a_0+a_1p+\cdots+a_kp^k\qquad(0\le a_i\le p-1)
$$
と $p$ 進法で書き、桁の和を $s_p(n):=a_0+a_1+\cdots+a_k$ とおく。
$0$ 以上の整数 $n$ について
$$
v_p(n!)=\frac{n-s_p(n)}{p-1}
$$
である。
$r\ge1$ について、$\sum_{i< r}a_ip^i\le(p-1)(1+p+\cdots+p^{r-1})=p^r-1< p^r$ なので、
$$
\frac{n}{p^r}=\sum_{i\ge r}a_ip^{i-r}+\frac{\sum_{i< r}a_ip^i}{p^r}
$$
の右辺の第 1 項は整数、第 2 項は $0$ 以上 $1$ 未満である。よって $\lfloor n/p^r\rfloor=\sum_{i\ge r}a_ip^{i-r}$ である。階乗 の記事の定理「Legendre の公式」により
$$
v_p(n!)=\sum_{r\ge1}\sum_{i\ge r}a_ip^{i-r}=\sum_{i\ge1}a_i\bigl(p^{i-1}+p^{i-2}+\cdots+1\bigr)=\sum_{i\ge0}a_i\frac{p^i-1}{p-1}=\frac{n-s_p(n)}{p-1}
$$
である($i=0$ の項は $0$ なので加えてよい)。$\square$
$100$ は $5$ 進法で $400$、$2$ 進法で $1100100$ なので、$v_5(100!)=(100-4)/4=24$、$v_2(100!)=(100-3)/1=97$ となり、ex-padicval-factorial と一致する。この形は Mos11 Chapter 3 の Lemma 4 の直後(pp. 21–22)に $30!$ の $3$ の指数 $14$ を例として述べられ、証明は演習とされている。
$0\le k\le n$ について
$$
v_p\!\left(\binom nk\right)=\frac{s_p(k)+s_p(n-k)-s_p(n)}{p-1}
$$
である。
$n!=\binom nk\,k!\,(n-k)!$ に prop-padicval-basic の 1 を使うと $v_p\bigl(\binom nk\bigr)=v_p(n!)-v_p(k!)-v_p((n-k)!)$ であり、prop-padicval-digit-sum を代入すると、分子の $n$、$-k$、$-(n-k)$ が打ち消し合って主張の式になる。$\square$
たとえば $50$ も $100$ も $2$ 進法で桁の和が $3$($110010$ と $1100100$)なので、$v_2\bigl(\binom{100}{50}\bigr)=(3+3-3)/1=3$ であり、$\binom{100}{50}$ は $8$ で割り切れるが $16$ では割り切れない。$p$ 進法で $k$ と $n-k$ を足すとき、繰り上がりが 1 回起こるごとに桁の和は $p-1$ だけ減るので、右辺は繰り上がりの回数に等しい。これが 二項係数 の記事の定理「Kummer の定理」である。
$a\equiv b\pmod p$ のとき、$a^n-b^n$ が $p$ で何回割り切れるかは、$a-b$ の付値と $n$ の付値の和で決まる。
$p$ を奇素数、$a\ne b$ を整数とし、$p\mid a-b$、$p\nmid a$ とする。このとき正の整数 $n$ について $a^n\ne b^n$ であり、
$$
v_p(a^n-b^n)=v_p(a-b)+v_p(n)
$$
が成り立つ。
まず $a^n\ne b^n$ を示す。整数 $a,b$ で $a^n=b^n$ なら $|a|=|b|$ なので、$a\ne b$ から $b=-a$ である。すると $p\mid a-b=2a$ で、$p$ は奇数なので $p\mid a$ となり仮定に反する。$b\equiv a\pmod p$ なので $p\nmid b$ でもある。
段 1($p\nmid n$ の場合):$a^n-b^n=(a-b)S$、$S:=\sum_{i=0}^{n-1}a^{n-1-i}b^i$ と書く。$b\equiv a\pmod p$ なので $S\equiv na^{n-1}\pmod p$ であり、$p\nmid n$、$p\nmid a$ と 素数 の記事の補題「Euclidの補題」から $p\nmid S$ である。prop-padicval-basic の 1 により $v_p(a^n-b^n)=v_p(a-b)+0$ である。
段 2($n=p$ の場合):$t:=b-a$ とおくと $p\mid t$ である。二項定理により $i\ge1$ で $b^i=(a+t)^i=a^i+ia^{i-1}t+(t^2\text{ の倍数})$ であり、$p^2\mid t^2$ なので、$i=0$ も含めて
$$
a^{p-1-i}b^i\equiv a^{p-1}+ia^{p-2}t\pmod{p^2}\qquad(0\le i\le p-1)
$$
である。$i=0,\dots,p-1$ について足すと
$$
S=\sum_{i=0}^{p-1}a^{p-1-i}b^i\equiv pa^{p-1}+\frac{p-1}2\cdot p\,t\,a^{p-2}\pmod{p^2}
$$
となる。$p$ は奇数なので $\frac{p-1}2$ は整数であり、第 2 項は $pt$ の倍数、したがって $p^2$ の倍数である。よって $S\equiv pa^{p-1}\pmod{p^2}$ で、$p\nmid a$ なので $v_p(S)=1$ である。$a^p-b^p=(a-b)S$ から $v_p(a^p-b^p)=v_p(a-b)+1$ である。
段 3(一般の場合):$n=p^km$($p\nmid m$)と書く。$a^{p^j}\equiv b^{p^j}\pmod p$ かつ $p\nmid a^{p^j}$ で、はじめに示したことから $a^{p^j}\ne b^{p^j}$ なので、段 2 を $a^{p^j},b^{p^j}$ に使うと $v_p(a^{p^{j+1}}-b^{p^{j+1}})=v_p(a^{p^j}-b^{p^j})+1$ である。$j=0,\dots,k-1$ について繰り返すと $v_p(a^{p^k}-b^{p^k})=v_p(a-b)+k$ となる。最後に段 1 を $a^{p^k},b^{p^k}$ と指数 $m$ に使えば、$v_p(a^n-b^n)=v_p(a-b)+k=v_p(a-b)+v_p(n)$ である。$\square$
たとえば $10\equiv1\pmod3$ なので $v_3(10^9-1)=v_3(9)+v_3(9)=4$ であり、実際 $999999999=3^4\cdot37\cdot333667$ は $81$ で割り切れるが $243$ では割り切れない。$6\equiv1\pmod5$ から $v_5(6^{25}-1)=1+2=3$ である。$b=1$、$n=p^j$、$v_p(a-1)=1$ の場合は 原始根 の記事の補題「p 乗による p 進の深さの増加」にあたる。
$p=2$、$a=3$、$b=1$、$n=2$ とすると、$2\mid a-b$、$2\nmid a$ を満たすが、$3^2-1=8$ なので $v_2(3^2-1)=3$ であり、$v_2(3-1)+v_2(2)=2$ と一致しない。thm-padicval-lte の「$p$ は奇素数」という仮定を外すと、「$p\mid a-b$、$p\nmid a$ なら $v_p(a^n-b^n)=v_p(a-b)+v_p(n)$」という含意が破れる。証明で使えなくなるのは段 2 の「$\frac{p-1}2$ が整数」という点である($p=2$ では $S=a+b$ であり、この例では $S=4$、$v_2(S)=2$ となって、段 2 の結論 $v_p(S)=1$ が成り立たない)。
prop-padicval-rational の 3 は、$v_p$ が有理数体の上の離散付値であることを述べている。$v_p(r)\ge0$ となる有理数全体は $\mathbb{Z}_{(p)}=\{a/b\mid a,b\in\mathbb{Z},\ p\nmid b\}$ であり、これは離散付値環の代表的な例である(離散付値環 の記事の例「素数での局所化 $\mathbb{Z}_{(p)}$」)。同じ定義は、体 $K$ 上の多項式環で素数の代わりに既約多項式 $f$ を使っても意味をもち、多項式が $f$ で何回割り切れるかを表す付値が得られる。より一般の付値は付値環の記事で扱われる。$p$ 進絶対値の距離で有理数を完備化した体 $\mathbb{Q}_p$ と、その中の $p$ 進整数環 $\mathbb{Z}_p$ は p進数 の記事にある。
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