Fordの円(高校数学)

同義語:フォードの円(高校数学)Ford circles (high school mathematics)

概要

Fordの円(Ford circles)とは、既約分数 $\frac pq$($q\ge1$)に対し、中心 $\left(\frac pq,\frac1{2q^2}\right)$、半径 $\frac1{2q^2}$ で $x$ 軸に接する円である。異なる 2 つの Ford の円 $C\!\left(\frac pq\right)$、$C\!\left(\frac rs\right)$ は、中心間の距離の 2 乗と半径の和の 2 乗の差が $\frac{(ps-qr)^2-1}{q^2s^2}$ になることから、決して重ならず、$\lvert ps-qr\rvert=1$ のとき外接し、それ以外では離れている。1 つの円に接する円は無限個あり、Farey 数列で隣り合う分数の円は接し、その接点は 2 つの分数を直径の両端とする半円の上にある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Farey数列(高校数学), 2円の位置関係と共通接線, 不定方程式の解法

高校での出発点:分数の上に円を立てる

数直線の上の分数 $\frac pq$ の位置に、$x$ 軸に接する円を立てる。半径を分母の 2 乗に反比例させ、$\frac1{2q^2}$ にとる。

$\frac01$ と $\frac11$ の円

$\frac01$ の円は中心 $\left(0,\frac12\right)$、半径 $\frac12$、$\frac11$ の円は中心 $\left(1,\frac12\right)$、半径 $\frac12$ である。中心間の距離は $1$ で、半径の和 $\frac12+\frac12=1$ に等しいので、2 つの円は外接する(2円の位置関係と共通接線 の定理「2 円の位置関係」)。接点は中心を結ぶ線分の中点 $\left(\frac12,\frac12\right)$ である。

$\frac12$ の円を加える

$\frac12$ の円は中心 $\left(\frac12,\frac18\right)$、半径 $\frac18$ である。$\frac01$ の円との中心間の距離の 2 乗は $\left(\frac12\right)^2+\left(\frac12-\frac18\right)^2=\frac14+\frac9{64}=\frac{25}{64}$ で、距離 $\frac58$ は半径の和 $\frac12+\frac18=\frac58$ に等しい。よって 2 つの円は外接する。対称性から $\frac11$ の円とも外接する。$\frac12$ の円は、2 つの大きな円と $x$ 軸の間の隙間にぴったり収まる。

分母 $6$ までの分数で同じように円を描くと、図 1 のようになる。円はどれも重ならず、接するか離れているかのどちらかに見える。この記事の問いは次の 2 つである。

  1. 2 つの円はいつ接し、いつ離れるか。重なることはあるか。→ thm-frd-tangent
  2. 1 つの円に接する円はどれだけあり、どこで接するか。→ thm-frd-neighbors
    0 から 1 までの、分母 6 以下の分数の Ford の円。分母ごとに色を変えてある。円はどれも重ならず、Farey 数列で隣り合う分数の円は接する 0 から 1 までの、分母 6 以下の分数の Ford の円。分母ごとに色を変えてある。円はどれも重ならず、Farey 数列で隣り合う分数の円は接する
    分数の言葉円の言葉
    分母 $q$半径 $\frac1{2q^2}$(分母が大きいほど小さい)
    $\lvert ps-qr\rvert=1$2 つの円が外接する
    $\lvert ps-qr\rvert\ge2$2 つの円は離れている
    中間の分数 $\frac{a+c}{b+d}$2 つの円と $x$ 軸の隙間の円

Ford の円の定義

Ford の円

整数 $p$ と正の整数 $q$ が互いに素であるとき、中心 $\left(\dfrac pq,\ \dfrac1{2q^2}\right)$、半径 $\dfrac1{2q^2}$ の円を、分数 $\frac pq$ の Ford の円 といい、$C\!\left(\frac pq\right)$ と書く。$C\!\left(\frac pq\right)$ は $x$ 軸に点 $\left(\frac pq,0\right)$ で接し、$x$ 軸より上にある。

異なる既約分数の円は、$x$ 軸に接する点が異なるので、異なる円である。

主定理 1:接するか離れるか

2 つの Ford の円の位置関係

異なる 2 つの既約分数 $\frac pq$、$\frac rs$ の Ford の円について、中心間の距離を $\delta$、半径の和を $\sigma$ とすると
$$ \delta^2-\sigma^2=\frac{(ps-qr)^2-1}{q^2s^2} $$
である。したがって、2 つの円は $\lvert ps-qr\rvert=1$ のとき外接し、それ以外のとき互いに外部にあって共有点をもたない。重なることはない。

方針:中心間の距離の 2 乗から半径の和の 2 乗を引き、整数 $ps-qr$ で書く。
段 1(計算)。中心は $\left(\frac pq,\frac1{2q^2}\right)$ と $\left(\frac rs,\frac1{2s^2}\right)$ なので
$$ \delta^2=\left(\frac pq-\frac rs\right)^2+\left(\frac1{2q^2}-\frac1{2s^2}\right)^2,\qquad \sigma^2=\left(\frac1{2q^2}+\frac1{2s^2}\right)^2 $$
である。$(x-y)^2-(x+y)^2=-4xy$ を $x=\frac1{2q^2}$、$y=\frac1{2s^2}$ で使うと
$$ \delta^2-\sigma^2=\left(\frac{ps-qr}{qs}\right)^2-4\cdot\frac1{2q^2}\cdot\frac1{2s^2}=\frac{(ps-qr)^2}{q^2s^2}-\frac1{q^2s^2}=\frac{(ps-qr)^2-1}{q^2s^2} $$
となる。
段 2(符号)。$\frac pq\ne\frac rs$ なので $ps-qr\ne0$ で、$ps-qr$ は整数だから $(ps-qr)^2\ge1$ である。よって $\delta^2-\sigma^2\ge0$、つまり $\delta\ge\sigma$ である。
段 3(結論)。$\delta=\sigma$ となるのは $(ps-qr)^2=1$ のときで、2 つの円は外接する。$\delta>\sigma$ なら、2 つの円は互いに外部にあり共有点をもたない(2円の位置関係と共通接線 の定理「2 円の位置関係」)。どちらの場合も重ならない。$\square$

$$ \delta^2-\sigma^2=\frac{\overbrace{(ps-qr)^2}^{1\text{ 以上の整数}}-1}{q^2s^2}\ \ge0 $$

接する組と離れている組
  1. $\frac13$ と $\frac25$:$ps-qr=1\cdot5-3\cdot2=-1$ なので外接する。中心 $\left(\frac13,\frac1{18}\right)$、$\left(\frac25,\frac1{50}\right)$ の距離の 2 乗は $\left(\frac1{15}\right)^2+\left(\frac1{18}-\frac1{50}\right)^2=\frac1{225}+\left(\frac{16}{450}\right)^2=\frac{900+256}{202500}=\frac{1156}{202500}$ で、距離 $\frac{34}{450}=\frac{17}{225}$ は半径の和 $\frac1{18}+\frac1{50}=\frac{68}{900}=\frac{17}{225}$ に等しい。
  2. $\frac13$ と $\frac12$:$1\cdot2-3\cdot1=-1$ なので外接する。
  3. $\frac14$ と $\frac12$:$1\cdot2-4\cdot1=-2$ なので、$\delta^2-\sigma^2=\frac{4-1}{16\cdot4}=\frac3{64}>0$ で、2 つの円は離れている。

主定理 2:1 つの円に接する円

接する円のすべてと接点
  1. Ford の円 $C\!\left(\frac pq\right)$ に接する Ford の円は、1 次不定方程式 $\lvert xq-yp\rvert=1$ の整数解 $(x,y)$($y\ge1$)の分数 $\frac xy$ の円のすべてで、無限個ある。
  2. とくに、Farey 数列で隣り合う 2 つの分数 $\frac ab<\frac cd$ の円は外接し、接点は
    $$ \left(\frac ab+\frac d{b(b^2+d^2)},\ \frac1{b^2+d^2}\right) $$
    である。この接点は、$\left(\frac ab,0\right)$ と $\left(\frac cd,0\right)$ を直径の両端とする半円の上にある。

方針:(i) は主定理 1 と 1 次不定方程式の解の作り方、(ii) は Farey 数列の性質と、外接する 2 円の接点の位置から示す。
段 1((i) 接する円の分数)。主定理 1 により、$C\!\left(\frac xy\right)$($\frac xy$ は既約、$y\ge1$)が $C\!\left(\frac pq\right)$ に接するのは $\lvert xq-yp\rvert=1$ のときに限る。逆に $\lvert xq-yp\rvert=1$ の整数解 $(x,y)$($y\ge1$)では、$x$ と $y$ の公約数は $1$ を割り切るので $\frac xy$ は既約で、$\frac xy\ne\frac pq$ である。
段 2((i) 無限個)。$p$ と $q$ は互いに素なので、$xq-yp=1$ には整数解 $(x_0,y_0)$ がある(不定方程式の解法、Euclidの互除法)。整数 $t$ に対し $(x_0+tp,\ y_0+tq)$ も $(x_0+tp)q-(y_0+tq)p=x_0q-y_0p=1$ を満たす。$t$ を大きくすれば $y_0+tq\ge1$ となるので、接する円は無限個ある。
段 3((ii) 外接する)。$\frac ab<\frac cd$ が Farey 数列で隣り合うとき、$bc-ad=1$ である(Farey数列(高校数学) の定理「隣り合う 2 項のたすき掛け」)。よって主定理 1 から 2 つの円は外接する。
段 4((ii) 接点)。外接する 2 つの円の接点は、中心を結ぶ線分を、半径の比に内分する点である(2円の位置関係と共通接線 の系「接する 2 円の接点」)。半径は $r_1=\frac1{2b^2}$、$r_2=\frac1{2d^2}$ で、$\dfrac{r_1}{r_1+r_2}=\dfrac{1/b^2}{1/b^2+1/d^2}=\dfrac{d^2}{b^2+d^2}$ である。$x$ 座標は
$$ \frac ab+\frac{d^2}{b^2+d^2}\left(\frac cd-\frac ab\right)=\frac ab+\frac{d^2}{b^2+d^2}\cdot\frac{bc-ad}{bd}=\frac ab+\frac d{b(b^2+d^2)}, $$
$y$ 座標は
$$ \frac1{2b^2}+\frac{d^2}{b^2+d^2}\left(\frac1{2d^2}-\frac1{2b^2}\right)=\frac{(b^2+d^2)+(b^2-d^2)}{2b^2(b^2+d^2)}=\frac1{b^2+d^2} $$
である。
段 5((ii) 半円の上)。$x$ 軸の上の 2 点 $(u,0)$、$(v,0)$($u< v$)を直径の両端とする円の上の点 $(x,y)$ は、直径に対する円周角が直角であることから $(x-u)(v-x)=y^2$ を満たす(中心 $\left(\frac{u+v}2,0\right)$ からの距離を展開しても同じ式になる)。接点では
$$ x-\frac ab=\frac d{b(b^2+d^2)},\qquad \frac cd-x=\frac1{bd}-\frac d{b(b^2+d^2)}=\frac{b^2+d^2-d^2}{bd(b^2+d^2)}=\frac b{d(b^2+d^2)} $$
で($\frac cd-\frac ab=\frac{bc-ad}{bd}=\frac1{bd}$ を使った)、積は $\dfrac1{(b^2+d^2)^2}=y^2$ である。$y>0$ なので、接点は上半分の半円の上にある。$\square$

接点を計算する

$\frac13<\frac25$($b=3$、$d=5$、$b^2+d^2=34$)の接点は $\left(\frac13+\frac5{3\cdot34},\ \frac1{34}\right)=\left(\frac{34+5}{102},\frac1{34}\right)=\left(\frac{13}{34},\frac1{34}\right)$ である。$\frac25<\frac12$($b=5$、$d=2$、$b^2+d^2=29$)の接点は $\left(\frac25+\frac2{5\cdot29},\frac1{29}\right)=\left(\frac{58+2}{145},\frac1{29}\right)=\left(\frac{12}{29},\frac1{29}\right)$ である。前者で半円の式を確かめると、$\left(\frac{13}{34}-\frac13\right)\left(\frac25-\frac{13}{34}\right)=\frac5{102}\cdot\frac3{170}=\frac{15}{17340}=\frac1{1156}=\left(\frac1{34}\right)^2$ となる(図 2)。

1/3、2/5、1/2 の Ford の円と、中間の分数 3/8 の円。破線は隣り合う 2 つの分数を直径の両端とする半円で、2 つの円の接点がその上にある 1/3、2/5、1/2 の Ford の円と、中間の分数 3/8 の円。破線は隣り合う 2 つの分数を直径の両端とする半円で、2 つの円の接点がその上にある

$C\!\left(\frac13\right)$ に接する円

$\lvert3x-y\rvert=1$ を満たす $\frac xy$ を、$0$ から $1$ の間で分母 $19$ 以下に限って並べると、$3x-y=-1$ から $\frac01,\frac14,\frac27,\frac3{10},\frac4{13},\frac5{16},\frac6{19}$、$3x-y=1$ から $\frac12,\frac25,\frac38,\frac4{11},\frac5{14},\frac6{17}$ である。分子が $1$ 増えるごとに分母が $3$ 増えるのは、prf-frd-neighbors の段 2 の $(x_0+tp,\ y_0+tq)$ で $p=1$、$q=3$ だからである。前の列は $\frac13$ に小さい側(左)から近づき、後の列は大きい側(右)から近づいて、$C\!\left(\frac13\right)$ のまわりに小さい円が並ぶ。

隙間の円は中間の分数の円

$\frac ab<\frac cd$ が隣り合うとき、中間の分数 $\frac{a+c}{b+d}$ は $b(a+c)-a(b+d)=1$、$c(b+d)-d(a+c)=1$ を満たすので、その円は両方の円に外接する。半径の逆数の平方根は $\sqrt{2(b+d)^2}=\sqrt2\,b+\sqrt2\,d$ で、曲率 $k=\frac1r=2q^2$ を使うと $\sqrt{k_3}=\sqrt{k_1}+\sqrt{k_2}$ が成り立つ。これは、直線に接する 2 つの外接する円の隙間に入る円の曲率の関係(Descartesの円定理 の命題「直線に接する 3 つの円」)と一致する。図 2 の $\frac38$ の円は、$\frac13$ と $\frac25$ の円の隙間の円である。$b=3$、$d=5$ では曲率は $18$、$50$、$128$ で、$\sqrt{128}=8\sqrt2=3\sqrt2+5\sqrt2$ である。

例と反例

外す条件反例成り立たなくなること
(定義の外の例)分数が既約$\frac24$ に同じ規則で円を作る$C\!\left(\frac12\right)$ の内部に入り、外接も離れもしない
(定義の外の例)半径が $\frac1{2q^2}$半径を $\frac1{q^2}$ にする$\frac01$ と $\frac11$ の円が 2 点で交わる
(定義の外の例)半径が $\frac1{2q^2}$半径を $\frac1{4q^2}$ にする隣り合う分数の円が接しない
定義の外の例:既約でない分数

$\frac24$ に同じ規則で円を作ると、中心 $\left(\frac12,\frac1{32}\right)$、半径 $\frac1{32}$ である。$C\!\left(\frac12\right)$ は中心 $\left(\frac12,\frac18\right)$、半径 $\frac18$ で、中心間の距離 $\frac18-\frac1{32}=\frac3{32}$ は半径の差に等しい。2 つの円は点 $\left(\frac12,0\right)$ で内接し、小さい円は大きい円の内部にある。主定理 1 の式に $p=2$、$q=4$、$r=1$、$s=2$ を入れると $ps-qr=0$ で、段 2 の「$ps-qr\ne0$」が使えない。

定義の外の例:半径を変える

半径を $\frac1{q^2}$ にすると、$\frac01$ と $\frac11$ の円は中心 $(0,1)$、$(1,1)$、半径 $1$ で、中心間の距離 $1$ は半径の和 $2$ より小さく、半径の差 $0$ より大きいので、2 点で交わる。半径を $\frac1{4q^2}$ にすると、同じ 2 つの円は中心 $\left(0,\frac14\right)$、$\left(1,\frac14\right)$、半径 $\frac14$ で、距離 $1$ が半径の和 $\frac12$ より大きく、接しない。主定理 1 の計算で $\delta^2-\sigma^2$ の分子が $(ps-qr)^2-1$ というちょうどよい形になったのは、半径を $\frac1{2q^2}$ にとったからである。

大学数学で見る

円の並びと分数の近似

MathWorld の頁「Ford Circle」は、Ford の円がどれも $x$ 軸に接して互いに交わらないこと、$\lvert h'k-k'h\rvert=1$ のときにちょうど接すること、Farey 数列で隣り合う分数の円の接点がその 2 つの分数を直径の両端とする半円の上にあることを述べている(Wei26)。$C\!\left(\frac pq\right)$ に接する円の分数 $\frac xy$ は $\left\lvert\frac pq-\frac xy\right\rvert=\frac1{qy}$ を満たし、分母のわりに $\frac pq$ に近い分数になっている。分母の割に近い分数で実数を近似する話は、連分数(高校数学) と大学向けの 連分数 へ続く。

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関連項目

参考文献

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