通常2重点

同義語:通常二重点ordinary double point

概要

通常2重点(ordinary double point)とは、標数が $2$ でない代数閉体上の $n$ 次元のスキームの点で、完備局所環が $k[\![x_0,\dots,x_n]\!]/(x_0^2+\cdots+x_n^2)$ と同型になるものであり、曲線の場合は節点とも呼ばれる。標数が $2$ でなければ、超曲面 $f=0$ の特異点が通常2重点であることは $f$ の 2 次の部分が非退化であることと同値で、そのとき座標を取り替えると $f$ は平方和になる(形式的な Morse の補題)。超曲面のこの点で 1 回ブローアップすると点の上は滑らかになり、例外集合は滑らかな 2 次超曲面になる。曲面では自己交点数 $-2$ の射影直線が現れ、Du Val 特異点の $A_1$ 型にあたる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 特異点, 2次形式, 形式的冪級数環, 完備局所環, ブローアップ

通常2重点(ordinary double point)は、特異点のうちでもっとも単純なものである。平面曲線 $y^2=x^2(x+1)$ の原点では 2 本の滑らかな枝が異なる向きで交わり、2 次錐 $xy=z^2$ の頂点では曲面が円錐のようにとがる。どちらも、点の近くで方程式の最低次の部分が「退化していない 2 次式」になっている。$n$ 次元の通常2重点は、無限小の近くで見ると 2 次式の零点 $x_0^2+x_1^2+\cdots+x_n^2=0$ と区別できない点である。
この記事では、通常2重点を完備局所環で定義し、主定理として次の 2 つを証明する。

  • 判定(形式的な Morse の補題):超曲面 $f=0$ の特異点が通常2重点であることは、$f$ の 2 次の部分が非退化な 2 次形式であることと同値であり、そのとき座標を取り替えると $f=y_0^2+\cdots+y_n^2$ になる(thm-odp-criterion)。
  • ブローアップ:アフィン空間の超曲面の通常2重点を 1 回ブローアップすると、その点の上は滑らかになり、例外集合は滑らかな 2 次超曲面になる。曲面の場合、例外曲線は $\mathbb{P}^1$ で自己交点数は $-2$ である(thm-odp-blowup)。
    曲線の通常2重点は節点とも呼ばれる。曲面の通常2重点は Du Val特異点 の $A_1$ 型であり、有理特異点の最初の例である。

定義

以下、$k$ を標数が $2$ でない代数閉体とする。$n\ge1$ とし、$k[\![x_0,\dots,x_n]\!]$ を形式的冪級数環、$\mathfrak{m}=(x_0,\dots,x_n)$ をその極大イデアルとする。$X$ を $k$ 上有限型のスキーム、$x\in X$ を閉点とし、$\widehat{\mathcal{O}}_{X,x}$ を局所環 $\mathcal{O}_{X,x}$ の極大イデアルに関する完備化(完備局所環)とする。

通常2重点

$\dim\mathcal{O}_{X,x}=n$ とする。$x$ が $X$ の通常2重点(ordinary double point)であるとは、$k$ 代数の同型
$$ \widehat{\mathcal{O}}_{X,x}\;\cong\;k[\![x_0,\dots,x_n]\!]/(x_0^2+x_1^2+\cdots+x_n^2) $$
があることをいう。$n=1$(曲線)のときは節点(node)ともいう。

右辺の $x_0^2+\cdots+x_n^2$ は、非退化な 2 次形式ならどれに替えてもよい。標数が $2$ でない体の上の 2 次形式は対角化でき(2次形式の定理「平方完成による対角化」)、非退化なら対角成分はすべて $0$ でない。$k$ は代数閉なので各対角成分の平方根で変数を割れば $x_0^2+\cdots+x_n^2$ になる。たとえば $i^2=-1$ となる $i\in k$ をとり $u=x_0+ix_1$、$v=x_0-ix_1$ とおくと $uv=x_0^2+x_1^2$ なので、節点は
$$ \widehat{\mathcal{O}}_{X,x}\cong k[\![u,v]\!]/(uv) $$
で特徴づけられる。$u=0$ と $v=0$ は 2 本の滑らかな枝で、原点で異なる接線をもって交わる。曲面($n=2$)では $xy-z^2$ を使うことが多い。
点の近くで $X$ が超曲面のときは、方程式から判定できる。冪級数 $f\in k[\![x_0,\dots,x_n]\!]$ を斉次成分に分けて $f=f_0+f_1+f_2+\cdots$($f_d$ は $d$ 次の斉次多項式)と書く。$f\in\mathfrak{m}^2$ とは $f_0=f_1=0$ のことである。2 次の部分 $f_2=\sum_{i,j}a_{ij}x_ix_j$($a_{ij}=a_{ji}$)が非退化であるとは、対称行列 $(a_{ij})$ が正則であることをいう(2次形式の命題「2次形式と対称行列の対応」)。標数が $2$ でないので、$a_{ij}=\frac12\,\partial^2f/\partial x_i\partial x_j(0)$ であり、非退化は Hesse 行列 $\bigl(\partial^2f/\partial x_i\partial x_j(0)\bigr)$ が正則であることと同じである。

判定と形式的なMorseの補題

判定の証明に使う 2 つの補題から始める。1 つめは冪級数環の座標変換、2 つめは 2 次の項への分解である。

形式的な座標変換

$y_0,\dots,y_n\in\mathfrak{m}$ の $\mathfrak{m}/\mathfrak{m}^2$ での像が基底をなすとする。冪級数 $g$ に $g(y_0,\dots,y_n)$ を対応させる写像 $\varphi$ は $k[\![x_0,\dots,x_n]\!]$ の $k$ 代数の自己同型である。

次数付き環で比べる

要点:$\varphi$ は $\mathfrak{m}^j$ を $\mathfrak{m}^j$ に写し、$\mathfrak{m}^j/\mathfrak{m}^{j+1}$ の上では可逆な線形変換を引き起こす。

詳細

$y_i\in\mathfrak{m}$ なので、次数 $d$ の単項式の像は $\mathfrak{m}^d$ に入り、無限和 $g(y)$ は各次数の係数が有限和で決まり、$\varphi$ は well-defined な $k$ 代数準同型で $\varphi(\mathfrak{m}^j)\subset\mathfrak{m}^j$ をみたす(1 変数の場合は形式的冪級数環の命題「定数項が零の級数への代入」と同じ議論)。$y_i$ の 1 次の部分を $\ell_i$ とすると、仮定から $\ell_0,\dots,\ell_n$ は 1 次形式の空間の基底であり、$\varphi$ が $\mathfrak{m}^j/\mathfrak{m}^{j+1}$($j$ 次の斉次多項式の空間)に引き起こす写像は $h\mapsto h(\ell_0,\dots,\ell_n)$、すなわち可逆な線形変換による変数変換なので全単射である。

単射:$g\neq0$ の最低次の成分を $g_j$ とすると $\varphi(g)\equiv g_j(\ell)\not\equiv0\pmod{\mathfrak{m}^{j+1}}$ である。全射:$h$ を与える。$g^{(0)}=0$ から始め、$h-\varphi(g^{(j)})\in\mathfrak{m}^j$ となる $g^{(j)}$ が得られたとき、その $j$ 次の成分を $\mathfrak{m}^j/\mathfrak{m}^{j+1}$ 上の逆写像で引き戻した斉次式 $c_j$ をとり $g^{(j+1)}=g^{(j)}+c_j$ とおけば $h-\varphi(g^{(j+1)})\in\mathfrak{m}^{j+1}$ である。$g=\sum_jc_j$ は冪級数として意味をもち、各 $N$ について $h-\varphi(g)\in\mathfrak{m}^N$ なので $h=\varphi(g)$ である。$\square$

2次の項への分解

$f\in\mathfrak{m}^2$ なら、冪級数 $h_{ij}=h_{ji}$($0\le i,j\le n$)で
$$ f=\sum_{i,j=0}^nh_{ij}\,x_ix_j,\qquad h_{ij}(0)=a_{ij} $$
となるものがある。ここで $(a_{ij})$ は $f_2$ の対称行列である。

単項式を振り分ける

要点:次数 $2$ 以上の単項式を、それが含む最初の 2 つの変数の積で割る。

詳細

次数 $\ge2$ の単項式 $x^\alpha$ に対し、添字の小さい順に変数を並べたときの最初の 2 つを $x_ix_j$($i\le j$、$i=j$ もありうる)とし、$x^\alpha=x_ix_j\cdot x^{\alpha-e_i-e_j}$ と書く。$f$ の各単項式をこの規則で振り分けると、各単項式はちょうど 1 つの組 $(i,j)$ に入るので、冪級数 $g_{ij}$($i\le j$)で $f=\sum_{i\le j}g_{ij}x_ix_j$ となるものが得られる。$g_{ij}(0)$ は $f_2$ の $x_ix_j$ の係数である。$h_{ii}=g_{ii}$、$i< j$ について $h_{ij}=h_{ji}=g_{ij}/2$ とおけばよい(標数が $2$ でないので $2$ で割れる)。$\square$

通常2重点の判定

$f\in\mathfrak{m}^2$ とし、$B=k[\![x_0,\dots,x_n]\!]/(f)$ とおく。次は同値である。

  1. $B\cong k[\![x_0,\dots,x_n]\!]/(x_0^2+\cdots+x_n^2)$($k$ 代数として)。
  2. $f$ の 2 次の部分 $f_2$ は非退化である。
    さらに 2 が成り立つとき、$k[\![x_0,\dots,x_n]\!]$ の元 $y_0,\dots,y_n\in\mathfrak{m}$ で、$x_i\mapsto y_i$ が $k[\![x_0,\dots,x_n]\!]$ の自己同型を定め、
    $$ f=y_0^2+y_1^2+\cdots+y_n^2 $$
    となるものがある(形式的な Morse の補題)。
平方完成を繰り返す

2 ⇒ 1 と Morse の補題。$f_2$ は非退化なので、1 次の変数変換(lem-odp-coordinates の特別な場合)で $f_2=x_0^2+\cdots+x_n^2$ としてよい(定義の直後の注意)。$m=0,1,\dots,n+1$ について次の主張 $(P_m)$ を示す。
$(P_m)$:$\mathfrak{m}/\mathfrak{m}^2$ の基底を像にもつ $y_0,\dots,y_n\in\mathfrak{m}$ と、冪級数 $h_{ij}=h_{ji}$($i,j\ge m$)で $h_{ij}(0)=\delta_{ij}$ となるものがあって
$$ f=y_0^2+\cdots+y_{m-1}^2+\sum_{i,j\ge m}h_{ij}\,y_iy_j . $$
$(P_0)$ は $y_i=x_i$ として lem-odp-hadamard である。$(P_m)$ を仮定する($m\le n$)。$u:=h_{mm}$ は $u(0)=1$ なので単元であり(形式的冪級数環の命題「定数項による単元判定」の多変数版、同じ証明)、2 項級数 $s:=\sum_{r\ge0}\binom{1/2}{r}(u-1)^r$ は $s^2=u$ をみたす($\binom{1/2}{r}$ の分母は $2$ の冪なので標数 $\neq2$ で意味をもつ)。平方完成
$$ \sum_{i,j\ge m}h_{ij}y_iy_j=u\Bigl(y_m+\sum_{j>m}\frac{h_{mj}}{u}y_j\Bigr)^2+\sum_{i,j>m}\Bigl(h_{ij}-\frac{h_{mi}h_{mj}}{u}\Bigr)y_iy_j $$
(右辺を展開すると左辺の各項が現れる)により、$y_m':=s\,(y_m+\sum_{j>m}(h_{mj}/u)y_j)$、$h'_{ij}:=h_{ij}-h_{mi}h_{mj}/u$ とおけば $(P_{m+1})$ の形になる。$h_{mj}(0)=0$($j\neq m$)と $s(0)=1$ から $y'_m\equiv y_m\pmod{\mathfrak{m}^2}$ であり、$h'_{ij}(0)=\delta_{ij}$ である。$(P_{n+1})$ は $f=y_0^2+\cdots+y_n^2$ を述べ、lem-odp-coordinates により $\varphi\colon x_i\mapsto y_i$ は自己同型で $\varphi(x_0^2+\cdots+x_n^2)=f$ である。$\varphi$ はイデアル $(x_0^2+\cdots+x_n^2)$ を $(f)$ に写すので、1 が従う。
1 ⇒ 2。局所環 $(B,\mathfrak{m}_B)$ に対し、積が定める全射 $\mu_B\colon\operatorname{Sym}^2(\mathfrak{m}_B/\mathfrak{m}_B^2)\to\mathfrak{m}_B^2/\mathfrak{m}_B^3$ を考える。$B$ の同型は $\mathfrak{m}_B/\mathfrak{m}_B^2$ と $\mathfrak{m}_B^2/\mathfrak{m}_B^3$ の線形同型を引き起こし、$\mu_B$ の核を核に写す。$f\in\mathfrak{m}^2$ なので $\mathfrak{m}_B/\mathfrak{m}_B^2=\mathfrak{m}/\mathfrak{m}^2$ であり、$\operatorname{Sym}^2$ は 2 次斉次式の空間 $\mathfrak{m}^2/\mathfrak{m}^3$ と同一視される。$\mathfrak{m}_B^2/\mathfrak{m}_B^3=\mathfrak{m}^2/(\mathfrak{m}^3+(f))$ で、$gf\equiv g(0)f_2\pmod{\mathfrak{m}^3}$ だから
$$ \operatorname{Ker}\mu_B=k\cdot f_2 $$
である。$B'=k[\![x]\!]/(\sum x_i^2)$ では核は $k\cdot\sum x_i^2\neq0$ である。同型 $B'\cong B$ が引き起こす線形同型で $x_i$ の像を 1 次形式 $\ell_i$ とすると、$\ell_0,\dots,\ell_n$ は基底で、$\sum\ell_i^2$ は核 $k\cdot f_2$ に入り $0$ でない。よって $f_2=c\sum_i\ell_i^2$($c\neq0$)であり、$\ell_i$ の係数行列を $P$(正則)とすれば $f_2$ の行列は $cP^{\top}P$ で正則である。$\square$

$X=V(f)\subset\mathbb{A}^{n+1}$($f$ は多項式)で $f(0)=0$ のとき、$\widehat{\mathcal{O}}_{X,0}=k[\![x_0,\dots,x_n]\!]/(f)$ である(完備化は有限生成加群の完全列を保つ。完備局所環の命題「完備化の完全性と $\hat{A}\otimes_AM$」)。原点が $X$ の特異点であることは $f_1=0$、すなわち $f\in\mathfrak{m}^2$ と同じであり(特異点の命題「閉点での Jacobi 判定」)、したがって次がわかる。超曲面の特異点が通常2重点であるための必要十分条件は、そこでの Hesse 行列が正則であることである。
1 ⇒ 2 の議論は、2 次の部分 $f_2$ が定数倍と 1 次の変数変換を除いて $B$ だけから決まることを示している。$V(f_2)$ は $X$ の原点での接錐であり、通常2重点とは「重複度が $2$ で、接錐が非退化な 2 次錐である点」と言い換えられる。実数上の滑らかな関数についての Morseの補題 は非退化臨界点の近くで関数を $\pm x_1^2\pm\cdots\pm x_m^2$ に変換する定理であり、thm-odp-criterion はその形式的冪級数版である(代数閉体の上では符号の区別が消える)。

曲線の節点

節点と尖点

$X=V(y^2-x^2(x+1))\subset\mathbb{A}^2$ の原点では $f_2=y^2-x^2$ で、行列 $\operatorname{diag}(-1,1)$ は正則なので、thm-odp-criterion により原点は節点である。実際 $x+1$ は $k[\![x,y]\!]$ で平方根 $w=\sqrt{1+x}$(2 項級数)をもち、$f=(y-xw)(y+xw)$ と分解する。$u=y-xw$、$v=y+xw$ は 1 次の部分が $y-x$、$y+x$ で、lem-odp-coordinates により座標になり、$\widehat{\mathcal{O}}_{X,0}=k[\![u,v]\!]/(uv)$ である。$\mathcal{O}_{X,0}$ は整域なのに完備化は整域でない(完備局所環の例「反例:完備化で既約性が壊れる例」)。2 本の枝 $u=0$、$v=0$ は、正規化で原点の上の 2 点に分かれる(正規化の例「結節点の二つの枝」)。
一方 $V(y^2-x^3)$ の原点では $f_2=y^2$ の行列 $\operatorname{diag}(0,1)$ は正則でないので、原点は通常2重点でない。これは尖点(特異点)である。どちらも重複度は $2$ だが、接錐が 2 本の異なる直線になるか 1 本の二重直線になるかで分かれる(代数曲線の例「結節点と尖点」)。

節点を原点で 1 回ブローアップすると 2 本の枝は分かれて滑らかになる(ブローアップの例「通常2重点の解消」)。次の定理はこれを全次元に広げる。

ブローアップによる解消

$f\in k[x_0,\dots,x_n]$ を $f\in\mathfrak{m}^2$ かつ $f_2$ が非退化な多項式とし、$X=V(f)\subset\mathbb{A}^{n+1}$ とする。$\pi\colon\operatorname{Bl}_0\mathbb{A}^{n+1}\to\mathbb{A}^{n+1}$ を原点でのブローアップ、$F=\pi^{-1}(0)\cong\mathbb{P}^n$ を例外因子とする。$\operatorname{Bl}_0\mathbb{A}^{n+1}$ は図 $U_j$(座標 $x_j$ と $t_i=x_i/x_j$($i\neq j$))で覆われ、$U_j$ の上で $F=\{x_j=0\}$ である(ブローアップの命題「アフィン空間の原点のブローアップ」)。$\pi^{-1}(X\setminus\{0\})$ のスキーム論的な閉包を $X$ の狭義変換 $\tilde X$ とし、$Q:=V_+(f_2)\subset\mathbb{P}^n$ とおく。

通常2重点のブローアップ
  1. $\tilde X\cap F=Q$(スキームとして)であり、$Q$ は $\mathbb{P}^n$ の滑らかな 2 次超曲面である。とくに $n=1$ なら $Q$ は相異なる 2 点、$n=2$ なら $Q$ は $\mathbb{P}^1$ に同型な 2 次曲線である。
  2. $\tilde X$ は $Q$ の各点で正則であり、$Q$ は $\tilde X$ の有効 Cartier 因子である。
  3. $n=2$ のとき、$\deg\bigl(\mathcal{O}_{\tilde X}(Q)|_Q\bigr)=-2$、すなわち $Q$ の自己交点数は $Q^2=-2$ である。
    とくに原点が $X$ のただ 1 つの特異点なら、$\pi|_{\tilde X}\colon\tilde X\to X$ は原点の外で同型な射影的な特異点解消である。
図ごとの計算

対称性から図 $U_0$($x_i=x_0t_i$、$i\ge1$)で調べれば足りる。$f=\sum_{d\ge2}f_d$ で $f_d(x_0,x_0t)=x_0^df_d(1,t)$ なので
$$ f\circ\pi=x_0^2\,g,\qquad g:=f_2(1,t)+x_0\,r(x_0,t) $$
($r$ は多項式)と書ける。$\pi^{-1}(X)\cap U_0=V(x_0)\cup V(g)$ で、$V(g)\cap V(x_0)=V(x_0,f_2(1,t))$ は次元 $n-1$ なので($f_2\neq0$ より $f_2(1,t)$ は $0$ でない)、超曲面 $V(g)$ のどの既約成分も $F$ に含まれない。さらに $g$ は $x_0$ で割り切れない($x_0=0$ とおくと $f_2(1,t)\neq0$ が残る)ので、一意分解整域 $k[x_0,t]$ で $g$ の既約因子はどれも $x_0$ の単元倍でなく、$(g)$ の随伴素イデアル(既約因子が生成する単項イデアル)は $x_0$ を含まない。すなわち $x_0$ は $k[x_0,t]/(g)$ の非零因子であり、$V(g)$ は開集合 $V(g)\cap D(x_0)=\pi^{-1}(X\setminus\{0\})\cap U_0$ のスキーム論的な閉包になる。よってスキームとしても $\tilde X\cap U_0=V(g)$ であり、$\tilde X\cap F\cap U_0=V(x_0,f_2(1,t))=Q\cap D_+(x_0)$ である。
$Q$ が滑らか:$f_2$ の対称行列を $A$ とすると $\partial f_2/\partial x_i=2(Av)_i$ で、$\det A\neq0$ なので勾配は $v\neq0$ で消えない(射影超曲面の Jacobi 判定)。
$\tilde X$ が $Q$ の点 $p$ で正則:$p$ は $x_0=0$、$t=t(p)$ にあり、$v=(1,t(p))$ とおくと $\partial g/\partial t_i(p)=\partial f_2/\partial x_i(v)$($i\ge1$)である。これらがすべて $0$ なら、Euler の等式 $2f_2(v)=\sum_iv_i\,\partial f_2/\partial x_i(v)$ と $f_2(v)=0$ から $\partial f_2/\partial x_0(v)=0$ となり、勾配が $0$ になって矛盾する。よって $\nabla g(p)\neq0$ で、超曲面 $V(g)$ は $p$ で正則である(特異点の命題「閉点での Jacobi 判定」)。$Q=\tilde X\cap\{x_0=0\}$ は局所的に 1 つの方程式 $x_0$ で定まり、$x_0$ は $\tilde X$ のどの成分上でも恒等的に $0$ でないので、$Q$ は有効 Cartier 因子である。
$n=2$ の自己交点数:$Q$ の局所方程式は $F$ の局所方程式 $x_0$ の制限なので $\mathcal{O}_{\tilde X}(Q)=\mathcal{O}_{\operatorname{Bl}}(F)|_{\tilde X}$ であり、$\mathcal{O}_{\operatorname{Bl}}(F)|_F\cong\mathcal{O}_{\mathbb{P}^n}(-1)$(ブローアップの定理「滑らかな中心のブローアップ」)だから $\mathcal{O}_{\tilde X}(Q)|_Q\cong\mathcal{O}_{\mathbb{P}^2}(-1)|_Q$ である。滑らかな 2 次曲線は座標変換で $xz=y^2$ になり、$[s:t]\mapsto[s^2:st:t^2]$ で $\mathbb{P}^1$ に同型で(代数曲線の定理「2 次曲線 $xz=y^2$ は射影直線と同型」)、1 次式の引き戻しは $s,t$ の 2 次式なので $\mathcal{O}_{\mathbb{P}^2}(1)|_Q\cong\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(2)$ である。よって次数は $-2$ である。$n=1$ では $Q=V_+(f_2)\subset\mathbb{P}^1$ は非退化な 2 次式の零点で、判別式が $0$ でないので相異なる 2 点である。
最後の主張:$\tilde X$ は $\operatorname{Bl}_0\mathbb{A}^{n+1}$ の閉部分スキームなので $\pi|_{\tilde X}$ は射影的であり、原点の外では $\pi$ が同型である。原点の外で $X$ が正則なら $\tilde X$ は $Q$ の外でも正則で、1・2 と合わせて $\tilde X$ は正則である。$\square$

$n=1$ の場合、$Q$ の 2 点は節点の 2 本の接線の方向であり、ブローアップは枝を分ける。$n=2$ の場合、曲面の通常2重点の上に自己交点数 $-2$ の $\mathbb{P}^1$ が載る。これは $(-1)$ 曲線(Castelnuovoの収縮定理)ではないので、この解消は極小解消である。原点の外で $X$ が正則なら、$X$ は特異点が孤立した 2 次元の超曲面で、超曲面は Cohen–Macaulay なので、Serre条件の定理「正規性とR1・S2」により正規曲面であり、原点は Du Val特異点 の $A_1$ 型である。$n=3$ では例外集合は滑らかな 2 次曲面になる。

例

2次錐と高次元の例
  1. 2 次錐。$X=V(xy-z^2)\subset\mathbb{A}^3$ の頂点は曲面の通常2重点である($f_2=xy-z^2$ の行列の行列式は $\frac14\neq0$)。この $X$ は平面の $\pm1$ 倍写像による商 $\mathbb{A}^2/\{\pm1\}$ と同型である:不変式環 $k[s,t]^{\{\pm1\}}$ は $s^2,st,t^2$ で生成され、$x=s^2$、$y=t^2$、$z=st$ が唯一の関係 $xy=z^2$ をみたす。ブローアップの計算は特異点解消の例「曲面の通常2重点の解消」にあり、thm-odp-blowup の 3 はその例外曲線の自己交点数が $-2$ であることを加える。
  2. 任意次元。$V(x_0^2+\cdots+x_n^2)$ の原点、より一般に滑らかな射影 2 次超曲面 $Q\subset\mathbb{P}^n$ の上の錐の頂点は通常2重点である。thm-odp-blowup により、ブローアップの例外集合はちょうど $Q$ に戻る。
  3. 関数の臨界点。多項式 $f$ が $f(0)=0$、$\nabla f(0)=0$ をみたし Hesse 行列が正則なら、超曲面 $f=0$ は原点に通常2重点をもつ。$f$ を関数 $\mathbb{A}^{n+1}\to\mathbb{A}^1$ とみれば、原点は非退化な臨界点で、臨界値 $0$ のファイバーが原点で特異になる($f$ がほかに臨界点をもてば、ほかのファイバーも特異になりうる)。$f=x_0^2+\cdots+x_n^2$ では、$c\neq0$ のファイバー $f=c$ は滑らかで、$c\to0$ で錐 $f=0$ に退化する。

反例

外す条件反例成り立たなくなること
標数が $2$ でない標数 $2$ の代数閉体上の $f=xy$$f_2$ が非退化なら $k[\![x,y]\!]/(f)\cong k[\![x,y]\!]/(x^2+y^2)$
$k$ が代数閉$k=\mathbb{R}$、$f=xy$同上
$f_2$ が非退化$f=y^2-x^3$(尖点)$f\in\mathfrak{m}^2$ の特異点が通常2重点である
$f_2$ が非退化(ブローアップ)$f=xy-z^4$1 回のブローアップで $\tilde X$ が正則になる
反例の確かめ

1 行目:標数 $2$ では $x^2+y^2=(x+y)^2$ なので $k[\![x,y]\!]/(x^2+y^2)$ では $x+y\neq0$ が冪零である。一方 $k[\![x,y]\!]/(xy)$ は $k[\![x]\!]\times k[\![y]\!]$ に単射で埋め込まれ($g\mapsto(g(x,0),g(0,y))$、核は $(xy)$)、冪零元をもたない。$xy$ の 2 次の部分は 2 本の異なる直線の積で、節点の形をしているのに、定義の標準形 $x_0^2+x_1^2$ には変換できない。標数 $2$ では「非退化」も対称行列では述べられない(2次形式の例「反例:標数 2 では対称行列で表せない 2 次形式がある」)。
2 行目:$\mathbb{R}[\![x,y]\!]/(x^2+y^2)$ は整域である。$\mathbb{R}[\![x,y]\!]$ は正則局所環なので一意分解整域であり(正則局所環の定理「正則局所環は一意分解整域(Auslander–Buchsbaum)」)、既約元は素元だから、$x^2+y^2$ が既約であることを示せばよい。実際 $x^2+y^2=gh$($g,h\in\mathfrak{m}$)なら最低次の成分どうしの積が $x^2+y^2$ になり、$\mathbb{R}$ 上で 1 次式の積に分解しないことに反する(最低次の成分は積について乗法的である)。$\mathbb{R}[\![x,y]\!]/(xy)$ は整域でないので、両者は同型でない。$\mathbb{R}$ 上の非退化な 2 次式は符号の違う標準形をもち、代数閉体上の定義はそのままでは使えない。
3 行目:thm-odp-criterion の 1 ⇒ 2 による。
4 行目:$f_2=xy$ は 3 変数の 2 次形式として退化している(行列の階数 $2$)。図 $U_z$($x=za$、$y=zb$)で $f\circ\pi=z^2(ab-z^2)$ なので $\tilde X\cap U_z=V(ab-z^2)$ であり、その原点で勾配 $(b,a,-2z)$ が $0$ になるから $\tilde X$ は正則でない。例外集合 $V_+(xy)$ は 2 本の直線である。この特異点は Du Val特異点 の $A_3$ 型で、解消には何回かのブローアップが要る。

補足

  • 2 重点の中での位置。超曲面の点が 2 重点(重複度 $2$)であるとは $f\in\mathfrak{m}^2\setminus\mathfrak{m}^3$ のことであり、そのうち接錐 $V(f_2)$ が非退化な 2 次錐であるものが通常2重点である。被約な平面曲線の 2 重点は複素数体上で $A_k$ 型 $x^2+y^{k+1}=0$ に分類され、節点はその $A_1$ 型である(BHPV04 第 II 章 §8 と Theorem (8.1)(pp. 78–81)。この記事では証明しない)。曲面では、Du Val特異点の $A_n$・$D_n$・$E_6$・$E_7$・$E_8$ 型のうち $A_1$ 型が通常2重点である。
  • 有理性。$\mathbb{A}^3$ の超曲面の通常2重点で、原点の外が正則なものは有理特異点である(この超曲面は上で見たとおり正規曲面であり、thm-odp-blowup により解消の例外曲線が $(-2)$ 曲線 1 本なので、Du Val特異点の定理「Du Val特異点は有理特異点」による。2 次錐の頂点については有理特異点の定理「平面曲線の錐」の $d=2$ の場合として直接も見える)。
  • 用語。節点の定義として、平面曲線の重複度 $2$ の点で接線が 2 本あるもの、とする本もある(Har77 第 I 章 Exercise 5.6(p. 37))。thm-odp-criterion により、代数閉体上で標数が $2$ でなければこの記事の定義と一致する。

関連項目

参考文献

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