第1Chern類(first Chern class)とは、複素多様体 $X$ 上の正則直線束 $L$ に対し、指数完全列 $0\to\mathbb{Z}\to\mathcal{O}_X\to\mathcal{O}_X^*\to0$ の連結準同型 $\operatorname{Pic}(X)\to H^2(X;\mathbb{Z})$ で定まる類 $c_1(L)$ である。$\mathbb{CP}^\infty$ の超平面類の引き戻し、曲率形式の de Rham 類とも一致し、テンソル積を和に移す。コンパクト Riemann 面では $c_1(L)$ の積分が $L$ の次数、コンパクト Kähler 多様体では像が整係数 $(1,1)$ 類の全体(Lefschetz の $(1,1)$ 定理)になる。代数的には因子の類、結晶的には分割冪の対数で定義される。
前提知識: 複素多様体, 直線束, 可逆層, Picard群, 層コホモロジー, 特異コホモロジー, 微分形式
第 1 Chern 類は、複素多様体上の正則直線束(可逆層)$L$ に整係数の 2 次コホモロジー類 $c_1(L)\in H^2(X;\mathbb{Z})$ を対応させる不変量である。定義の仕方は 3 通りあり(層コホモロジーの連結準同型、分類空間からの引き戻し、Hermite 計量(Hermite計量)の曲率形式(曲率)、どれも同じ類を与える(thm-first-chern-class-comparison)。本記事では層コホモロジーによる定義を主定義とし、代数的・結晶的な変種をこの節の最後に述べる。高次の類 $c_i$、Whitney の和公式(Whitney和公式)、分裂原理は Chern類 の記事に譲る。
$X$ を複素多様体とし、$\mathcal{O}_X$ を正則関数の層、$\mathcal{O}_X^*$ を至るところ零でない正則関数のなす乗法群の層とする。$X$ 上の正則直線束(holomorphic line bundle、直線束)$L$ とは階数 $1$ の正則ベクトル束のことであり、その正則切断(切断)の層は階数 $1$ の局所自由層、すなわち可逆層である。逆に可逆層は正則直線束の切断の層として得られるので、両者を同一視する。
開被覆 $\{U_i\}$ の上で $L$ の局所枠(至るところ零でない正則切断)$e_i$ をとり、$U_i\cap U_j$ 上で $e_j=g_{ij}e_i$ とおく。$g_{ij}\in\mathcal{O}^*(U_i\cap U_j)$ は $U_i\cap U_j\cap U_k$ 上で $g_{ij}g_{jk}=g_{ik}$ を満たす。$(g_{ij})$ を $L$ の変換関数という。これは $\mathcal{O}_X^*$ に係数をもつ Čech 1 コサイクル(Čechコホモロジー)であり、枠の取り替え $e_i'=u_ie_i$($u_i\in\mathcal{O}^*(U_i)$)は $g_{ij}$ を $u_jg_{ij}u_i^{-1}$ に変えるだけなので、$L$ の同型類は $H^1(X,\mathcal{O}_X^*)$ の元 $[L]$ を定める。対応 $L\mapsto[L]$ は正則直線束の同型類の集合から $H^1(X,\mathcal{O}_X^*)$ への全単射である(Har77 III 演習 4.5、GH78 Chapter 1 §1)。テンソル積 $L\otimes M$ の変換関数は $g_{ij}h_{ij}$、双対束(双対束)$L^\vee$ のそれは $g_{ij}^{-1}$、自明束 $\mathcal{O}_X$ のそれは $1$ であるから、同型類の全体はテンソル積でアーベル群をなす。これを $X$ のPicard群 $\operatorname{Pic}(X)$ といい、上の全単射は群の同型 $\operatorname{Pic}(X)\cong H^1(X,\mathcal{O}_X^*)$(右辺の群演算は乗法的に書く)である。
層の列の完全性は各点の茎で調べればよい。$\mathbb{Z}\to\mathcal{O}_X$ は整数値の定数関数への包含であり単射である。$e^{2\pi if}=1$ を満たす正則関数 $f$ は連結な開集合(連結空間)上で離散集合 $\mathbb{Z}$ に値をとる連続写像なので局所定数であり、よって $\exp(2\pi i\,\cdot)$ の核は $\mathbb{Z}$ の像に一致する。全射性を示す。$g\in\mathcal{O}^*(U)$ と $x\in U$ に対し、$g(x)\neq0$ なので $g(x)$ のある近傍 $W\subset\mathbb{C}\setminus\{0\}$ 上で対数の正則な枝 $\log$(対数関数)がとれる。$g$ の連続性から $x$ の近傍 $V$ で $g(V)\subset W$ となるものをとると、$f:=\frac{1}{2\pi i}\log g$ は $V$ 上正則で $e^{2\pi if}=g$ を満たす。よって $\exp(2\pi i\,\cdot)$ は茎の上で全射である。
複素多様体 $X$ 上の正則直線束 $L$ の第 1 Chern 類(first Chern class)$c_1(L)$ とは、指数完全列に付随する層コホモロジーの長完全列
$$
\cdots\to H^1(X,\mathbb{Z})\to H^1(X,\mathcal{O}_X)\to H^1(X,\mathcal{O}_X^*)\xrightarrow{\ \delta\ }H^2(X,\mathbb{Z})\to H^2(X,\mathcal{O}_X)\to\cdots
$$
の連結準同型 $\delta$ による $[L]$ の像
$$
c_1(L):=\delta[L]\in H^2(X,\mathbb{Z})
$$
のことである。$X$ は局所可縮(局所可縮空間)なので、定数層 $\mathbb{Z}$ の層コホモロジー $H^2(X,\mathbb{Z})$ は特異コホモロジー $H^2(X;\mathbb{Z})$ と標準的に同型であり(Bre97 III.1)、以後この 2 つを同一視する。
連結準同型を Čech コサイクルで書くと次のようになる。被覆を十分細かくとり、各 $U_i\cap U_j$ 上で $e^{2\pi if_{ij}}=g_{ij}$ となる $f_{ij}\in\mathcal{O}(U_i\cap U_j)$ をとる(prf-first-chern-class-exponential-sequence の対数)。$c_{ijk}:=f_{jk}-f_{ik}+f_{ij}$ は $e^{2\pi ic_{ijk}}=g_{jk}g_{ik}^{-1}g_{ij}=1$ を満たすので整数値であり、$(c_{ijk})$ は $\mathbb{Z}$ に係数をもつ Čech 2 コサイクルである。$c_1(L)$ はその類にほかならない。
$\delta$ はアーベル群の準同型であり、$\operatorname{Pic}(X)\cong H^1(X,\mathcal{O}_X^*)$ なので、$c_1$ は群準同型(群準同型)
$$
c_1\colon\operatorname{Pic}(X)\to H^2(X;\mathbb{Z})
$$
を与える(prop-first-chern-class-additive)。長完全列から、その核は $H^1(X,\mathcal{O}_X)$ の像、像は $H^2(X;\mathbb{Z})\to H^2(X,\mathcal{O}_X)$ の核である。この 2 つが以下の例と Lefschetz の $(1,1)$ 定理の要になる。
$X$ をパラコンパクト Hausdorff空間(パラコンパクト空間)、$L$ を $X$ 上の連続な複素直線束とする。無限次元複素射影空間 $\mathbb{CP}^\infty=\bigcup_n\mathbb{CP}^n$(複素射影空間、CW複体)の上には、トートロジー束 $\mathcal{O}(-1)$(点 $\ell\in\mathbb{CP}^\infty$ の上のファイバーが直線 $\ell$ 自身)とその双対 $\mathcal{O}(1)$ がある。任意の $L$ はある連続写像 $f\colon X\to\mathbb{CP}^\infty$ による引き戻し $f^*\mathcal{O}(1)$ と同型であり、$f$ はホモトピーを除いて一意である(MS74 §5・§14)。$H^*(\mathbb{CP}^\infty;\mathbb{Z})=\mathbb{Z}[h]$ の生成元 $h\in H^2(\mathbb{CP}^\infty;\mathbb{Z})$ を、各 $\mathbb{CP}^n\subset\mathbb{CP}^\infty$ への制限が超平面類、すなわち複素構造の定める向き(向き)をもつ直線 $\ell\cong\mathbb{CP}^1\subset\mathbb{CP}^n$ の基本類 $[\ell]$ との対 $\langle h,[\ell]\rangle$ が $1$ となる生成元になるように選ぶ。このとき
$$
c_1^{\mathrm{top}}(L):=f^*h\in H^2(X;\mathbb{Z})
$$
を $L$ の位相的な第 1 Chern 類という。$X$ が CW 複体(たとえば多様体)のとき、$\mathbb{CP}^\infty$ は Eilenberg–MacLane 空間 $K(\mathbb{Z},2)$(Eilenberg–MacLane空間)なので、$L\mapsto c_1^{\mathrm{top}}(L)$ は連続複素直線束の同型類の集合から $H^2(X;\mathbb{Z})$ への全単射である(Hat02 Theorem 4.57、MS74 §14)。
$L$ を複素多様体 $X$ 上の正則直線束、$h$ を $L$ の Hermite 計量(各ファイバーの Hermite内積で、局所枠について $C^\infty$ に依存するもの。1の分割により常に存在する)とする。局所枠 $e_i$ に対し $h_i:=h(e_i,e_i)$ は $U_i$ 上の正値 $C^\infty$ 関数で、$U_i\cap U_j$ 上 $h_j=|g_{ij}|^2h_i$ を満たす。$(1,1)$ 形式(微分形式)
$$
\Theta_h:=\frac{i}{2\pi}\,\bar\partial\partial\log h_i
$$
($U_i$ 上)は $i$ によらず $X$ 全体で定義された実の閉 2 形式(閉形式)である(prop-first-chern-class-curvature-form)。$\bar\partial\partial\log h_i=-2\pi i\,\Theta_h$ は $h$ に関する Chern 接続(Chern接続、接続)の曲率形式であり(GH78 Chapter 0 §5、Huy05 §4.2–§4.3)、de Rham 類(de Rhamコホモロジー)
$$
c_1^{\mathrm{dR}}(L):=[\Theta_h]\in H^2_{\mathrm{dR}}(X;\mathbb{R})
$$
を $L$ の曲率形式による第 1 Chern 類(Chern–Weil 形式による第 1 Chern 類)という。これは $h$ のとり方によらない。
上の記号で次が成り立つ。
複素多様体上の外微分(外微分)は $d=\partial+\bar\partial$ と分解し、$\partial^2=\bar\partial^2=0$、$\partial\bar\partial=-\bar\partial\partial$ が成り立つ(Dolbeaultコホモロジー)。
$X$ を複素多様体、$L$ を $X$ 上の正則直線束とする。
2 の証明は GH78 Chapter 1 §1、Huy05 §4.4 に譲る。筋は次のとおりである。$U_i$ 上で $\Theta_h=d\eta_i$、$\eta_i:=\frac{i}{2\pi}\partial\log h_i$ と書くと、$\eta_j-\eta_i=\frac{i}{2\pi}\,d\log g_{ij}=-df_{ij}$($f_{ij}$ は def-first-chern-class の対数)であり、Čech–de Rham 二重複体(二重複体、BT82 §8–§9)をたどると $[\Theta_h]$ は整数 Čech コサイクル $(c_{ijk})$ の類に対応する。符号は二重複体の規約に依存し、本記事は GH78 の規約に従う(この規約で、切断の零点の因子 $D$ について $c_1(\mathcal{O}(D))=[D]$ となる。thm-first-chern-class-degree)。1 は次のように示される。$C^\infty$ 関数の層 $\mathcal{E}_X$ の指数完全列と包含 $\mathcal{O}_X\subset\mathcal{E}_X$ により、$c_1(L)$ は $L$ を $C^\infty$ 直線束とみた類 $\delta_{\mathcal{E}}[L]$ に等しい(prop-first-chern-class-smooth-classification)。$\delta_{\mathcal{E}}$ は $C^\infty$ 写像による引き戻しと両立し(prop-first-chern-class-pullback と同じ議論)、$\mathbb{CP}^n$ 上で $\delta[\mathcal{O}(1)]=h$ である(ex-first-chern-class-hyperplane)。$L\cong f^*\mathcal{O}(1)$ の分類写像 $f$ はある $\mathbb{CP}^N$ への $C^\infty$ 写像にホモトピックにとれる(MS74 §14)ので、$c_1(L)=\delta_{\mathcal{E}}[f^*\mathcal{O}(1)]=f^*\delta[\mathcal{O}(1)]=f^*h=c_1^{\mathrm{top}}(L)$ となる。
複素多様体でない、たとえば正標数の体上のスキームでは特異コホモロジーも指数関数もない。代わりに、可逆層に因子の類を対応させるのが代数的な第 1 Chern 類である。
$X$ を体 $k$ 上の有限型(有限型射)で分離的(分離射)な整スキーム(代数多様体)、$L$ を $X$ 上の可逆層とする。$L$ の零でない有理切断(有理切断)$s$、すなわち稠密な開集合 $U$ 上の零でない切断 $s\in\Gamma(U,L)$ をとる。余次元 $1$ の整な閉部分スキーム $V\subset X$ ごとに、$V$ の生成点の近傍の局所枠 $e$ で $s=\varphi e$($\varphi$ は関数体 $k(X)$ の元)と書き、$\operatorname{ord}_V(s):=\operatorname{ord}_V(\varphi)$ とおく($X$ が正規(正規スキーム)なら $\mathcal{O}_{X,V}$ は離散付値環でその付値、一般には $\operatorname{ord}_V(\varphi)=\operatorname{length}\mathcal{O}_{X,V}/(a)-\operatorname{length}\mathcal{O}_{X,V}/(b)$、$\varphi=a/b$、Ful98 §1.2)。Weil因子
$$
\operatorname{div}(s):=\sum_V\operatorname{ord}_V(s)\,[V]
$$
の有理同値類を $c_1(L):=[\operatorname{div}(s)]\in CH^1(X)$ と定め、$L$ の代数的な第 1 Chern 類という。ここで $CH^1(X)$ は余次元 $1$ のサイクルのChow群(Chow環の次数 $1$ の部分)である。別の有理切断 $s'$ は $s'=\varphi s$($\varphi\in k(X)^*$)と書け、$\operatorname{div}(s')=\operatorname{div}(s)+\operatorname{div}(\varphi)$ で $\operatorname{div}(\varphi)$ は有理同値で $0$ なので、$c_1(L)$ は $s$ によらない。$L\otimes M$ の有理切断 $s\otimes t$ について $\operatorname{div}(s\otimes t)=\operatorname{div}(s)+\operatorname{div}(t)$ なので、$c_1\colon\operatorname{Pic}(X)\to CH^1(X)$ は群準同型である。
この写像は Cartier因子の類群 $\operatorname{CaCl}(X)$ を経由する。$X$ が整なら $\operatorname{Pic}(X)\cong\operatorname{CaCl}(X)$(Har77 II.6.15)であり、Cartier 因子 $D$ に付随する可逆層 $\mathcal{O}_X(D)$ の第 1 Chern 類は、$D$ を Weil 因子とみなした類である。$X$ の局所環がすべて一意分解整域(たとえば $X$ が $k$ 上滑らか。滑らかな射)なら $\operatorname{CaCl}(X)\cong\operatorname{Cl}(X)=CH^1(X)$(Har77 II.6.11・6.16)であり、$c_1\colon\operatorname{Pic}(X)\to CH^1(X)$ は同型である。Fulton は任意の代数的スキーム $X$ に対し、$c_1(L)$ を $k$ 次元サイクルの Chow 群への作用 $c_1(L)\cap-\colon A_k(X)\to A_{k-1}(X)$ として定義する。$X$ が多様体のとき $c_1(L)\cap[X]=[\operatorname{div}(s)]$ であり、上の定義と一致する(Ful98 §2.5)。
$X$ を $\mathbb{C}$ 上滑らかな準射影多様体(準射影多様体)、$L$ を $X$ 上の可逆層、$L^{\mathrm{an}}$ を対応する複素多様体 $X^{\mathrm{an}}$ 上の正則直線束(GAGA)とする。サイクル類写像 $\operatorname{cl}\colon CH^1(X)\to H^2(X^{\mathrm{an}};\mathbb{Z})$ について
$$
\operatorname{cl}(c_1(L))=c_1(L^{\mathrm{an}})
$$
が成り立つ。また、一般のコンパクト(コンパクト空間)複素多様体 $X$ とその上の因子 $D$ に対しても、$c_1(\mathcal{O}_X(D))$ は $D$ のPoincaré双対類 $[D]\in H^2(X;\mathbb{Z})$ である。
証明は前半が Ful98 §19.1(Proposition 19.1.2)、後半が GH78 Chapter 1 §1($c_1([D])=\eta_D$)に譲る。コンパクト Riemann 面(Riemann面)の場合は $H^2(X;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ で $[D]$ は $D$ の次数であり、この場合は本記事で証明する(thm-first-chern-class-degree)。
他の係数への変種も同じ型で定まる。エタールコホモロジーでは、$n$ が $k$ の標数で割れないとき Kummer完全列 $0\to\mu_n\to\mathbb{G}_m\xrightarrow{n}\mathbb{G}_m\to0$ の連結準同型が $\operatorname{Pic}(X)\to H^2_{\mathrm{et}}(X,\mu_n)$ を与え、$n=\ell^m$ の極限が $\ell$ 進の $c_1\colon\operatorname{Pic}(X)\to H^2_{\mathrm{et}}(X,\mathbb{Z}_\ell(1))$ である(ℓ進コホモロジー)。代数的 de Rham コホモロジーでは、対数微分 $d\log\colon\mathcal{O}_X^*\to\Omega^1_{X/k}$(Kähler微分)、$g\mapsto dg/g$ が $d(dg/g)=0$ を満たすので複体の射 $\mathcal{O}_X^*[-1]\to\Omega^\bullet_{X/k}$ を定め、$\operatorname{Pic}(X)=H^1(X,\mathcal{O}_X^*)\to H^2_{\mathrm{dR}}(X/k)$ を与える($d\log$ の誘導する $H^1(X,\mathcal{O}_X^*)\to H^1(X,\Omega^1_{X/k})$ が Har77 III 演習 7.4 の類)。$k=\mathbb{C}$ のとき Čech 表示で $d\log g_{ij}=2\pi i\,df_{ij}$ なので、これは $c_1(L^{\mathrm{an}})$ の $2\pi i$ 倍(符号は Čech–de Rham 同型の規約による)である(rem-first-chern-class-comparison)。
正標数のスキーム $X$ の結晶コホモロジー $H^2_{\mathrm{cris}}(X/S)$ に値をもつ第 1 Chern 類は、Grothendieck が結晶景の定義に分割冪構造を入れた動機そのものである(Gro68c 7.4)。結晶景(Grothendieck位相、トポス)の対象は開集合 $U\subset X$ の冪零(冪零元)な厚み $U\hookrightarrow T$ にイデアル $\mathcal{I}_T$ 上の分割冪構造 $\gamma_n$ を添えたものであり、構造層 $\mathcal{O}_{X/S}$ とそのイデアル層 $\mathcal{J}$(各対象で $\mathcal{I}_T$)、および Zariski トポスへの忘却射 $u$ に対し、乗法群の層の完全列
$$
0\to1+\mathcal{J}\to\mathcal{O}_{X/S}^*\to u^{-1}\mathcal{O}_X^*\to0
$$
がある。指数完全列の役を果たすのは、分割冪による対数
$$
\log(1+x)=\sum_{n\ge1}(-1)^{n-1}(n-1)!\,\gamma_n(x)
$$
が与える群の同型 $(1+\mathcal{J},\times)\cong(\mathcal{J},+)$ である($n!\,\gamma_n(x)=x^n$ なので、これは対数級数 $\sum(-1)^{n-1}x^n/n$ の任意標数版である)。可逆層 $L$ の類 $[L]\in H^1(X,\mathcal{O}_X^*)$ を $u^{-1}$ で結晶トポスに移し、上の完全列の連結準同型で $H^2(1+\mathcal{J})$ に送り、$\log$ で $H^2(\mathcal{J})$ に移し、包含 $\mathcal{J}\to\mathcal{O}_{X/S}$ で $H^2_{\mathrm{cris}}(X/S)$ に送ったものが結晶的な第 1 Chern 類 $c_1^{\mathrm{cris}}(L)$ であり、$c_1^{\mathrm{cris}}(L\otimes L')=c_1^{\mathrm{cris}}(L)+c_1^{\mathrm{cris}}(L')$ が成り立つ。完全列の構成、対数と指数 $\exp(x)=\sum_{n\ge0}\gamma_n(x)$ が互いに逆であることの証明は、参考書 結晶コホモロジーの構想 の頁 6-2 に完結した形で述べてある。高次の結晶 Chern 類は BI70 による。
正則直線束 $L$ は、変換関数 $g_{ij}$ で局所的な自明化を貼り合わせたものである。$g_{ij}$ の対数 $f_{ij}$ が大域的に矛盾なくとれれば $L$ は($C^\infty$ 直線束としては)自明になる。第 1 Chern 類 $c_1(L)$ は、対数を貼り合わせるときに 3 重交わり $U_i\cap U_j\cap U_k$ で生じる整数のずれ $c_{ijk}$ を集めたものであり、$L$ の「ねじれ」を整数係数のコホモロジー類として測る。曲率形式による定義はその微分幾何的な言い換えで、Hermite 計量の曲率の $\frac{i}{2\pi}$ 倍を積分すると整数が出る、というのがその内容である。コンパクト Riemann 面では $c_1(L)$ は 1 つの整数、有理型切断(有理型切断)の零点の個数から極の個数を引いた次数にほかならない(thm-first-chern-class-degree)。
$c_1$ は $C^\infty$ 直線束を完全に分類する(prop-first-chern-class-smooth-classification)が、正則直線束は分類しない。コンパクト Kähler 多様体(Kähler多様体)では、同じ $c_1$ をもつ正則直線束の全体は複素トーラス $\operatorname{Pic}^0(X)=H^1(X,\mathcal{O}_X)/H^1(X;\mathbb{Z})$ でパラメータづけられ、これが $L$ の「連続的なモジュライ」である。一方、どの整係数類が $c_1$ として現れるかを述べるのが Lefschetz の $(1,1)$ 定理である(thm-first-chern-class-lefschetz)。
$\mathbb{CP}^n$ 上の直線束 $\mathcal{O}(1)$(トートロジー束 $\mathcal{O}(-1)$ の双対)の正則切断は斉次座標の 1 次形式 $x_0,\dots,x_n$ で張られ、$x_0$ は超平面 $H=\{x_0=0\}$ 上で 1 位の零をもつ。$h\in H^2(\mathbb{CP}^n;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ を def-first-chern-class-topological の超平面類(直線 $\ell\cong\mathbb{CP}^1$ 上で $\langle h,[\ell]\rangle=1$ となる生成元)とすると、
$$
c_1(\mathcal{O}(1))=h
$$
である。さらに $c_1\colon\operatorname{Pic}(\mathbb{CP}^n)\to H^2(\mathbb{CP}^n;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ は同型であり、$\operatorname{Pic}(\mathbb{CP}^n)$ は $\mathcal{O}(1)$ が生成する無限巡回群、$\mathcal{O}(1)^{\otimes d}=\mathcal{O}(d)$ の第 1 Chern 類は $dh$ である。とくに次数 $d$ の超曲面 $D$ に対し $\mathcal{O}(D)\cong\mathcal{O}(d)$、$c_1(\mathcal{O}(D))=dh$ となる。
証明。直線 $\ell=\{[s:t:0:\cdots:0]\}\cong\mathbb{CP}^1$ と包含 $\iota\colon\ell\to\mathbb{CP}^n$ をとる。$\iota^*\mathcal{O}(1)=\mathcal{O}_{\mathbb{CP}^1}(1)$ であり、その切断 $x_0|_\ell=s$ は点 $[0:1]$ でのみ 1 位の零をもつ。よって prop-first-chern-class-pullback と thm-first-chern-class-degree により
$$
\langle\iota^*c_1(\mathcal{O}(1)),[\ell]\rangle=\langle c_1(\mathcal{O}_{\mathbb{CP}^1}(1)),[\ell]\rangle=\deg\operatorname{div}(x_0|_\ell)=1=\langle\iota^*h,[\ell]\rangle
$$
である。$H^2(\ell;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ は $[\ell]$ との対で同型なので $\iota^*c_1(\mathcal{O}(1))=\iota^*h$ であり、$\iota^*\colon H^2(\mathbb{CP}^n;\mathbb{Z})\to H^2(\mathbb{CP}^1;\mathbb{Z})$ は同型である($\mathbb{CP}^n$ の 3 骨格が $\mathbb{CP}^1$ であることから従う。Hat02 Theorem 3.12)から $c_1(\mathcal{O}(1))=h$ を得る。次に $H^1(\mathbb{CP}^n,\mathcal{O})=H^2(\mathbb{CP}^n,\mathcal{O})=0$ である(GAGA と Har77 III.5.1)から、長完全列により $c_1=\delta$ は単射かつ全射である。$c_1(\mathcal{O}(1))=h$ が生成元なので $\operatorname{Pic}(\mathbb{CP}^n)=\mathbb{Z}\cdot[\mathcal{O}(1)]$ であり、prop-first-chern-class-additive により $c_1(\mathcal{O}(d))=dh$ である。次数 $d$ の斉次多項式 $F$ は $\mathcal{O}(d)$ の切断で $\operatorname{div}(F)=D$ なので $\mathcal{O}(D)\cong\mathcal{O}(d)$ である。
$\mathbb{CP}^1$ の正則接束 $T\mathbb{CP}^1$ について
$$
\langle c_1(T\mathbb{CP}^1),[\mathbb{CP}^1]\rangle=2,\qquad c_1(T\mathbb{CP}^1)=2h,\qquad T\mathbb{CP}^1\cong\mathcal{O}(2)
$$
である。
証明。$U_0=\mathbb{CP}^1\setminus\{\infty\}$ の座標を $z$、$U_1=\mathbb{CP}^1\setminus\{0\}$ の座標を $w=1/z$ とする。$U_0$ 上の正則ベクトル場 $\partial/\partial z$ は、$U_0\cap U_1$ 上で
$$
\frac{\partial}{\partial z}=\frac{dw}{dz}\frac{\partial}{\partial w}=-\frac{1}{z^2}\frac{\partial}{\partial w}=-w^2\frac{\partial}{\partial w}
$$
と書けるので、$\infty$ まで正則に延びて $T\mathbb{CP}^1$ の正則切断 $s$ を定める。$U_1$ 上の枠 $\partial/\partial w$ に関する $s$ の係数は $-w^2$ なので、$s$ は $\infty$ でちょうど 2 位の零をもち、他に零をもたない。よって $\operatorname{div}(s)=2\cdot\infty$ であり、thm-first-chern-class-degree から $\langle c_1(T\mathbb{CP}^1),[\mathbb{CP}^1]\rangle=2$、すなわち $c_1(T\mathbb{CP}^1)=2h$ である。ex-first-chern-class-hyperplane により $c_1\colon\operatorname{Pic}(\mathbb{CP}^1)\to\mathbb{Z}$ は同型なので $T\mathbb{CP}^1\cong\mathcal{O}(2)$ である。この値 $2$ は $S^2$ のEuler標数に等しく、Gauss–Bonnet の定理(Gauss–Bonnetの定理)の複素直線束版である。$\mathbb{CP}^n$ の接束の全 Chern 類 $(1+h)^{n+1}$ については Chern類 の記事を参照。
$X=V/\Lambda$ を $g$ 次元の複素トーラス($V\cong\mathbb{C}^g$、$\Lambda$ は階数 $2g$ の格子)とする。$H^2(X;\mathbb{Z})\cong\bigwedge^2\operatorname{Hom}(\Lambda,\mathbb{Z})$ は $\Lambda$ 上の整数値交代形式 $E$ の全体であり、$c_1$ の像 $\operatorname{NS}(X)$(Néron–Severi群)は、$V$ 上に $\mathbb{R}$ 線型に延ばして $E(ix,iy)=E(x,y)$ を満たす $E$ の全体である。このとき $H(x,y):=E(ix,y)+iE(x,y)$ は Hermite形式で、$c_1(L)=E$ なる $L$ は $H$ と半指標で記述される(Appell–Humbertの定理、Mum70 §I.2、BL04 Chapter 2)。$c_1$ の核 $\operatorname{Pic}^0(X)=H^1(X,\mathcal{O}_X)/H^1(X;\mathbb{Z})$ は $g$ 次元の複素トーラス、$X$ の双対トーラス(双対アーベル多様体)である。
$g=1$、すなわち楕円曲線 $E=\mathbb{C}/\Lambda$ では $H^2(E;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ であり、$c_1(L)$ は $L$ の次数 $\deg L$ にほかならない(thm-first-chern-class-degree)。$c_1\colon\operatorname{Pic}(E)\to\mathbb{Z}$ は全射で、核 $\operatorname{Pic}^0(E)$ は 1 次元の複素トーラスである。実際、指数完全列の長完全列
$$
H^1(E;\mathbb{Z})\to H^1(E,\mathcal{O}_E)\to\operatorname{Pic}(E)\xrightarrow{c_1}H^2(E;\mathbb{Z})\to H^2(E,\mathcal{O}_E)
$$
において、$E$ の複素次元は $1$ なので $H^2(E,\mathcal{O}_E)=H^{0,2}(E)=0$ で $c_1$ は全射、$H^1(E,\mathcal{O}_E)\cong H^{0,1}(E)\cong\mathbb{C}$ で、$H^1(E;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}^2$ の像はHodge分解により $\mathbb{C}$ の格子である(GH78 Chapter 0 §7、Voi02 §7.2)。したがって $\operatorname{Pic}^0(E)\cong\mathbb{C}/\Lambda'$ である。点 $p\in E$ に $\mathcal{O}_E(p-0)$ を対応させる写像 $E\to\operatorname{Pic}^0(E)$ が同型であること(Abelの定理)は For81 §20–§21、Mir95 Chapter VIII に譲る。
$E=\mathbb{C}/\Lambda$ を楕円曲線、$p\neq q$ を $E$ の 2 点とし、$L:=\mathcal{O}_E(p-q)$ とする。$L$ は次の性質をもつ。
$c_1(L)$ は $H^2(X;\mathbb{Z})$ の捩れ元(捩れ)になりうる。そのとき $c_1^{\mathrm{dR}}(L)=0$ であり、曲率形式による定義では $L$ の非自明性を検出できない。
複素多様体 $X$ 上の正則直線束 $L$、$M$ に対し
$$
c_1(L\otimes M)=c_1(L)+c_1(M),\qquad c_1(\mathcal{O}_X)=0
$$
が成り立つ。すなわち $c_1\colon\operatorname{Pic}(X)\to H^2(X;\mathbb{Z})$ はアーベル群の準同型である。
def-first-chern-class-line-bundle により、共通の開被覆上で $L$、$M$ の変換関数を $(g_{ij})$、$(h_{ij})$ とすると $L\otimes M$ の変換関数は $(g_{ij}h_{ij})$ であり、$H^1(X,\mathcal{O}_X^*)$ の(乗法的に書いた)群演算はコサイクルの積で与えられる。よって $[L\otimes M]=[L]\cdot[M]$、$[\mathcal{O}_X]=1$ である。連結準同型 $\delta\colon H^1(X,\mathcal{O}_X^*)\to H^2(X,\mathbb{Z})$ はアーベル群の準同型(長完全列の一般論)なので
$$
c_1(L\otimes M)=\delta([L]\cdot[M])=\delta[L]+\delta[M]=c_1(L)+c_1(M),\qquad c_1(\mathcal{O}_X)=\delta(1)=0
$$
である。Čech 表示では、$e^{2\pi if_{ij}}=g_{ij}$、$e^{2\pi if'_{ij}}=h_{ij}$ ならば $e^{2\pi i(f_{ij}+f'_{ij})}=g_{ij}h_{ij}$ であり、対応する整数コサイクルは $c_{ijk}+c'_{ijk}$ である。位相的定義に基づく別証明($\mathbb{CP}^\infty\times\mathbb{CP}^\infty$ 上の普遍的な直線束の対と Künnethの公式を用いるもの)は Chern類 の記事にある。
$f\colon Y\to X$ を複素多様体の間の正則写像、$L$ を $X$ 上の正則直線束とすると
$$
c_1(f^*L)=f^*c_1(L)\in H^2(Y;\mathbb{Z})
$$
が成り立つ。ここで右辺の $f^*$ は特異コホモロジーの引き戻しである。
関数の引き戻し $g\mapsto g\circ f$ は $Y$ 上の層の射 $f^{-1}\mathcal{O}_X\to\mathcal{O}_Y$ を与え、これは $f^{-1}\mathcal{O}_X^*\to\mathcal{O}_Y^*$ に制限され、定数層の上では $f^{-1}\mathbb{Z}=\mathbb{Z}$ の恒等写像である。逆像関手 $f^{-1}$ は完全(完全関手)なので、$X$ の指数完全列の逆像 $0\to\mathbb{Z}\to f^{-1}\mathcal{O}_X\to f^{-1}\mathcal{O}_X^*\to0$ は $Y$ 上の短完全列(短完全列)であり、上の射は指数関数と可換($e^{2\pi i(g\circ f)}=e^{2\pi ig}\circ f$)なので、$Y$ 上の短完全列の射
$$
\left(0\to\mathbb{Z}\to f^{-1}\mathcal{O}_X\to f^{-1}\mathcal{O}_X^*\to0\right)\longrightarrow\left(0\to\mathbb{Z}\to\mathcal{O}_Y\to\mathcal{O}_Y^*\to0\right)
$$
を得る。短完全列の射は長完全列の射を誘導し、とくに連結準同型と可換である。一方、写像 $H^q(X,\mathcal{F})\to H^q(Y,f^{-1}\mathcal{F})$ も短完全列の連結準同型と可換であり(層コホモロジーの関手性)、$\mathcal{F}=\mathbb{Z}$ のときこれは特異コホモロジーの $f^*$ に対応する(Bre97 III.1)。以上を合わせると $\delta_Y\circ f^*=f^*\circ\delta_X\colon H^1(X,\mathcal{O}_X^*)\to H^2(Y,\mathbb{Z})$ である。最後に、$L$ の変換関数が $(g_{ij})$ なら $f^*L$ の変換関数は被覆 $\{f^{-1}(U_i)\}$ 上の $(g_{ij}\circ f)$ であるから $[f^*L]=f^*[L]$ である。よって
$$
c_1(f^*L)=\delta_Y[f^*L]=\delta_Y(f^*[L])=f^*(\delta_X[L])=f^*c_1(L)
$$
である。
正則直線束 $L$ と整数 $k$ に対し
$$
c_1(L^\vee)=-c_1(L),\qquad c_1(L^{\otimes k})=k\,c_1(L)
$$
が成り立つ($k<0$ のとき $L^{\otimes k}:=(L^\vee)^{\otimes(-k)}$)。
$L\otimes L^\vee\cong\mathcal{O}_X$(局所枠 $e$ とその双対枠 $e^\vee$ に対し $e\otimes e^\vee$ は枠のとり方によらない至るところ零でない大域切断)なので、prop-first-chern-class-additive により $0=c_1(\mathcal{O}_X)=c_1(L)+c_1(L^\vee)$ である。後半は加法性を $|k|$ 回使う。
$X$ をパラコンパクトな可微分多様体、$\mathcal{E}_X$ を $\mathbb{C}$ 値 $C^\infty$ 関数の層、$\mathcal{E}_X^*$ を至るところ零でない $\mathbb{C}$ 値 $C^\infty$ 関数の層とする。
$X$ を連結なコンパクト Riemann 面とし、複素構造の定める向きに関する基本類を $[X]\in H_2(X;\mathbb{Z})$ とする。$L$ を $X$ 上の正則直線束、$s$ を $L$ の零でない有理型切断(局所枠に関する係数が有理型関数である切断)とし、点 $p$ における $s$ の位数 $\operatorname{ord}_p(s)$ を、$p$ の近傍の枠 $e$ と座標 $z$($z(p)=0$)について $s=z^m\,u\,e$($u$ は $p$ の近傍で零をもたない正則関数)となる整数 $m$ とする。このとき
$$
\langle c_1(L),[X]\rangle=\int_X\Theta_h=\sum_{p\in X}\operatorname{ord}_p(s)=\deg\operatorname{div}(s)
$$
が成り立つ。とくに $\deg\operatorname{div}(s)$ は $s$ のとり方によらない。この共通の値を $L$ の次数 $\deg L$ といい、$c_1\colon\operatorname{Pic}(X)\to H^2(X;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$(同型は $[X]$ との対)は $L\mapsto\deg L$ である。コンパクト Riemann 面上の正則直線束は必ず零でない有理型切断をもつ(For81 §29)。
最初の等号は thm-first-chern-class-comparison の 2 と de Rham の定理(de Rham 類と特異ホモロジー類の対は積分で与えられる)による。第 2 の等号を示す。$Z:=\{p_1,\dots,p_r\}$ を $\operatorname{div}(s)$ の台、$m_k:=\operatorname{ord}_{p_k}(s)$ とする。$X\setminus Z$ 上で $s$ は正則な局所枠なので、$h_s:=h(s,s)$ とおくと def-first-chern-class-chern-weil により $X\setminus Z$ 上で
$$
\Theta_h=\frac{i}{2\pi}\bar\partial\partial\log h_s=d\eta,\qquad\eta:=\frac{i}{2\pi}\partial\log h_s
$$
である(prf-first-chern-class-curvature-form の 2)。各 $p_k$ のまわりに座標円板 $D_k$(座標 $z_k$、$z_k(p_k)=0$)と枠 $e_k$ をとり、単元を $e_k$ に吸収して $D_k$ 上 $s=z_k^{m_k}e_k$ としてよい。$h_k:=h(e_k,e_k)$ とおくと $h_s=|z_k|^{2m_k}h_k$ であり、$D_k\setminus\{p_k\}$ 上で
$$
\eta=\frac{i}{2\pi}\left(m_k\frac{dz_k}{z_k}+\partial\log h_k\right)
$$
である($\partial\log\bar z_k=0$)。$D_k(\varepsilon):=\{|z_k|<\varepsilon\}$、$X_\varepsilon:=X\setminus\bigcup_kD_k(\varepsilon)$ とおく。$\Theta_h$ は $X$ 全体で滑らかなので $\int_X\Theta_h=\lim_{\varepsilon\to0}\int_{X_\varepsilon}\Theta_h$ である。$X_\varepsilon$ は境界付きコンパクト多様体で、その境界は円周 $\{|z_k|=\varepsilon\}$ に、円板 $D_k(\varepsilon)$ の境界としての向き(反時計回り)と逆の向きを入れたものである。Stokes の定理(Stokesの定理)により
$$
\int_{X_\varepsilon}\Theta_h=\int_{X_\varepsilon}d\eta=\int_{\partial X_\varepsilon}\eta=-\sum_{k=1}^r\oint_{|z_k|=\varepsilon}\eta
$$
である。ここで
$$
\oint_{|z_k|=\varepsilon}\frac{i}{2\pi}\,m_k\frac{dz_k}{z_k}=\frac{i}{2\pi}\,m_k\cdot2\pi i=-m_k
$$
であり、$\partial\log h_k=a_k\,dz_k$($a_k$ は $D_k$ 上の滑らかな関数)なので $\left|\oint_{|z_k|=\varepsilon}\frac{i}{2\pi}\partial\log h_k\right|\le\varepsilon\cdot\sup_{D_k}|a_k|\to0$($\varepsilon\to0$)である。したがって
$$
\int_X\Theta_h=\lim_{\varepsilon\to0}\left(-\sum_k(-m_k)+o(1)\right)=\sum_km_k=\deg\operatorname{div}(s)
$$
である。$s$ によらないことは、左辺が $s$ を含まないことから従う。
検算として、$\mathbb{CP}^1$ 上の $\mathcal{O}(1)$ に $\mathbb{C}^2$ の標準 Hermite 内積から誘導される計量を入れると、枠 $x_0$ と座標 $z=x_1/x_0$ について $h=1/(1+|z|^2)$、$\Theta_h=\frac{1}{\pi}\frac{dx\wedge dy}{(1+|z|^2)^2}$($z=x+iy$)、$\int_{\mathbb{CP}^1}\Theta_h=1$ であり、切断 $x_1=zx_0$ が $z=0$ で 1 位の零をもつことと合う。この $\Theta_h$ は Fubini–Study計量の Kähler 形式(Kähler形式)である。
$X$ をコンパクト Kähler 多様体とする。
証明は Voi02 §7.1(Theorem 7.2)、GH78 Chapter 1 §2、Huy05 §3.3 に譲る。筋は次のとおりである。指数完全列の長完全列から、$c_1$ の像は $H^2(X;\mathbb{Z})\to H^2(X,\mathcal{O}_X)$ の核であり、この写像は $H^2(X;\mathbb{Z})\to H^2(X;\mathbb{C})\cong\bigoplus_{p+q=2}H^{p,q}(X)$ と Dolbeault 同型 $H^{0,2}(X)\cong H^2(X,\mathcal{O}_X)$ を経由する射影 $\alpha\mapsto\alpha^{0,2}$ である。$\alpha$ は実の類なので $\alpha^{2,0}=\overline{\alpha^{0,2}}$ であり、$\alpha^{0,2}=0$ と $\alpha\in H^{1,1}(X)$ は同値である。2 は同じ長完全列と、Hodge 分解 $H^1(X;\mathbb{C})=H^{1,0}\oplus H^{0,1}$ から $H^1(X;\mathbb{Z})\to H^{0,1}(X)$ の像が格子であることによる。この定理はHodge予想の余次元 $1$ の場合であり、$\operatorname{NS}(X)$ の階数を Picard 数という。射影多様体では $\operatorname{Pic}^0(X)$ は Picard 多様体(Picardスキーム)の複素点の群であり、代数的には Néron–Severi 群 $\operatorname{NS}(X)=\operatorname{Pic}(X)/\operatorname{Pic}^0(X)$ の有限生成性が Néron–Severi の定理である。ex-first-chern-class-torus はこの定理の複素トーラスの場合である。
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