F_σ-集合

同義語:Fσ集合F-sigma set

概要

$F_\sigma$-集合($F_\sigma$ set)とは、位相空間の部分集合であって、可算個の閉集合の和集合として表されるもののことである。閉集合はすべて $F_\sigma$-集合であり、距離空間では開集合もすべて $F_\sigma$-集合になるが、一般の位相空間ではそうとは限らない。$F_\sigma$-集合の族は可算個の和集合と有限個の共通部分で閉じており、補集合をとると可算個の開集合の共通部分である $G_\delta$-集合と互いに移り合う。実数直線の有理数全体は $F_\sigma$-集合だが、Baire のカテゴリー定理により $G_\delta$-集合ではない。任意の実数値関数の不連続点全体は $F_\sigma$-集合であり、Borel 階層では $F_\sigma$-集合の族は $\boldsymbol{\Sigma}^0_2$ にあたる。

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前提知識: 位相空間, 閉集合, 開集合, 可算集合, 距離空間

定義

F_σ-集合

位相空間 $X$ の部分集合 $A$ が $F_\sigma$-集合($F_\sigma$ set)であるとは、可算個の閉集合 $F_0,F_1,F_2,\dots$ が存在して
$$ A=\bigcup_{n\in\mathbb{N}}F_n $$
が成り立つことをいう。すなわち、$A$ が可算個の閉集合の和集合として表せることをいう。有限個の閉集合の和集合(閉集合自身を含む)は、残りの $F_n$ を空集合で埋めれば可算個の和集合とみなせるので、$F_\sigma$-集合である。
双対的に、可算個の開集合の共通部分として表される部分集合をG_δ-集合という。

記号 $F$ は閉集合を、添字 $\sigma$ は和集合をとる操作を表す(Engelking89 §1.5)。$A$ が $F_\sigma$-集合であることと補集合 $X\setminus A$ が $G_\delta$-集合であることは同値であり(prop-f-sigma-dual)、$G_\delta$-集合について成り立つ性質は補集合をとることで $F_\sigma$-集合の性質に翻訳される。可算共通部分・有限和の閉包性、距離空間で閉集合が $G_\delta$-集合であること、Borel階層での位置づけの説明は G_δ-集合 に置き、本記事では双対として述べる。一方、有理数全体が $F_\sigma$-集合だが $G_\delta$-集合でないこと、関数の不連続点全体が $F_\sigma$-集合であることは $F_\sigma$-集合に固有の例なので、本記事で証明する。

直感

閉集合は「和集合」について有限個までしか閉じていない。可算個まで許して寄せ集めて得られる集合のクラスが $F_\sigma$-集合であり、閉集合よりわずかに広いが、可算和と有限共通部分について閉じているという扱いやすさを保つ。距離空間では開集合もすべて $F_\sigma$-集合になる。可算個の点からなる集合はT1空間ではつねに $F_\sigma$-集合であり、有理数全体はその典型である。ところが有理数全体は $G_\delta$-集合ではなく、このずれを見抜くにはBaireのカテゴリー定理が必要になる。

例と反例

閉集合と開区間

任意の閉集合 $F\subset X$ は、$F_0:=F$、$n\ge 1$ に対し $F_n:=\emptyset$ とおけば $F=\bigcup_n F_n$ なので $F_\sigma$-集合である。特に $X$ と $\emptyset$ は $F_\sigma$-集合である。
$X=\mathbb{R}$ の開区間 $(0,1)$ は、閉区間の可算和
$$ (0,1)=\bigcup_{n\ge 2}\Bigl[\frac1n,\ 1-\frac1n\Bigr] $$
として $F_\sigma$-集合である。実際、右辺の各項は $(0,1)$ に含まれ、$x\in(0,1)$ に対しては $1/n\le\min\{x,1-x\}$ となる $n\ge 2$ をとれば $x\in[1/n,1-1/n]$ である。$(0,1)$ は閉集合でないので、これは閉集合でない $F_\sigma$-集合の例である。

可算な部分集合

T1空間 $X$(一点集合がすべて閉集合である空間、たとえば距離空間)の任意の可算集合 $A=\{a_0,a_1,a_2,\dots\}$ は、一点集合の可算和 $A=\bigcup_n\{a_n\}$ なので $F_\sigma$-集合である。特に有理数全体 $\mathbb{Q}\subset\mathbb{R}$ は $F_\sigma$-集合である。

反例:無理数全体

$\mathbb{R}$ の部分集合 $\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}$ は、可算個の開集合 $\mathbb{R}\setminus\{q\}$($q\in\mathbb{Q}$)の共通部分なので $G_\delta$-集合であり、prop-f-sigma-dual (3) により各 $\mathbb{R}\setminus\{q\}$ は $F_\sigma$-集合でもある。しかし $\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}$ 自身は $F_\sigma$-集合でない。実際、もし $F_\sigma$-集合ならば prop-f-sigma-dual (1) により $\mathbb{Q}$ が $G_\delta$-集合になり、prop-f-sigma-rationals に反する。この例は次の二つを示す。$F_\sigma$-集合の族は補集合をとる操作で閉じていない($\mathbb{Q}$ は $F_\sigma$-集合だがその補集合は $F_\sigma$-集合でない)。また、$F_\sigma$-集合の可算個の共通部分は一般に $F_\sigma$-集合でない(prop-f-sigma-dual (2) の「有限個」を「可算個」に変えることはできない)。

反例:開集合がF_σ-集合でない空間

非可算集合 $X$ に余可算位相(開集合は $\emptyset$ と、補集合が可算な集合)を入れると、閉集合は $X$ と可算集合だけである。$X$ と異なる閉集合の可算個の和集合は可算集合なので、$X\setminus\{x\}$ は開集合であるが $F_\sigma$-集合でない($X\setminus\{x\}$ は非可算で $X$ と異なる)。これは「開集合ならば $F_\sigma$-集合」という含意が距離空間の外では成り立たないことを示す(prop-f-sigma-dual (3) の仮定が落とせないこと)。

性質

G_δ-集合との双対性

$X$ を位相空間とする。

  1. $A\subset X$ が $F_\sigma$-集合であることと、$X\setminus A$ が $G_\delta$-集合であることは同値である。
  2. $F_\sigma$-集合の可算個の和集合、および有限個の共通部分は $F_\sigma$-集合である。連続写像 $f\colon Y\to X$ による $F_\sigma$-集合の逆像は $F_\sigma$-集合である。
  3. $X$ が距離空間ならば、任意の開集合は $F_\sigma$-集合である。
  1. $A=\bigcup_n F_n$($F_n$ は閉集合)ならば、De Morganの法則により $X\setminus A=\bigcap_n(X\setminus F_n)$ であり、各 $X\setminus F_n$ は開集合なので $X\setminus A$ は $G_\delta$-集合である。逆に $X\setminus A=\bigcap_n U_n$($U_n$ は開集合)ならば $A=\bigcup_n(X\setminus U_n)$ であり、各 $X\setminus U_n$ は閉集合なので $A$ は $F_\sigma$-集合である。
  2. $A_k$($k\in\mathbb{N}$)を $F_\sigma$-集合とすると、(1) により $X\setminus A_k$ は $G_\delta$-集合であり、G_δ-集合 の閉包性(可算個の $G_\delta$-集合の共通部分は $G_\delta$-集合)により $X\setminus\bigcup_k A_k=\bigcap_k(X\setminus A_k)$ は $G_\delta$-集合である。再び (1) により $\bigcup_k A_k$ は $F_\sigma$-集合である。有限個の共通部分についても同様に、$X\setminus(A\cap B)=(X\setminus A)\cup(X\setminus B)$ が $G_\delta$-集合の有限和として $G_\delta$-集合であることから従う。逆像については、$A=\bigcup_n F_n$ に対し $f^{-1}(A)=\bigcup_n f^{-1}(F_n)$ であり、$f$ の連続性により各 $f^{-1}(F_n)$ は $Y$ の閉集合である。
  3. 開集合 $U$ に対し $X\setminus U$ は閉集合であり、距離空間の閉集合は $G_\delta$-集合である(G_δ-集合)。(1) により $U$ は $F_\sigma$-集合である。$\square$
有理数全体はG_δ-集合でない

$\mathbb{R}$ において、有理数全体 $\mathbb{Q}$ は $F_\sigma$-集合であるが $G_\delta$-集合ではない。

$F_\sigma$-集合であることは ex-f-sigma-countable で見た。$\mathbb{Q}=\bigcap_{n\in\mathbb{N}}U_n$($U_n$ は開集合)と表せたと仮定する。$\mathbb{Q}\subset U_n$ かつ $\mathbb{Q}$ は $\mathbb{R}$ で稠密なので、各 $U_n$ は $\mathbb{R}$ の稠密な開集合である。一方、$\mathbb{Q}=\{q_0,q_1,\dots\}$ と番号づけし $V_n:=\mathbb{R}\setminus\{q_n\}$ とおくと、各 $V_n$ も稠密な開集合であり、$\bigcap_n V_n=\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q}$ である。よって
$$ \bigcap_{n\in\mathbb{N}}(U_n\cap V_n)=\mathbb{Q}\cap(\mathbb{R}\setminus\mathbb{Q})=\emptyset $$
となる。ここで $\{U_n\}_n\cup\{V_n\}_n$ は稠密な開集合からなる可算族であり、$\mathbb{R}$ は完備距離空間なので、Baireのカテゴリー定理(Mun00 §48)により可算個の稠密な開集合の共通部分は $\mathbb{R}$ で稠密、特に空でない。これは矛盾である。$\square$

不連続点全体はF_σ-集合

$X$ を位相空間、$f\colon X\to\mathbb{R}$ を任意の写像とする。$f$ が連続でない点全体の集合 $D_f$ は $F_\sigma$-集合であり、したがって $f$ の連続点全体 $X\setminus D_f$ は $G_\delta$-集合である。

点 $x\in X$ における $f$ の振動を
$$ \omega_f(x):=\inf_{U}\ \sup_{y,z\in U}|f(y)-f(z)|\in[0,\infty] $$
と定める。ここで $U$ は $x$ を含む開集合全体を動く。
まず、$f$ が $x$ で連続であることと $\omega_f(x)=0$ であることは同値である。$f$ が $x$ で連続なら、任意の $\varepsilon>0$ に対し $x$ を含む開集合 $U$ で、$y\in U$ ならば $|f(y)-f(x)|<\varepsilon/2$ となるものがあり、$y,z\in U$ に対し $|f(y)-f(z)|<\varepsilon$ なので $\omega_f(x)\le\varepsilon$、よって $\omega_f(x)=0$ である。逆に $\omega_f(x)=0$ なら、任意の $\varepsilon>0$ に対し $x$ を含む開集合 $U$ で $\sup_{y,z\in U}|f(y)-f(z)|<\varepsilon$ となるものがあり、特に $y\in U$ ならば $|f(y)-f(x)|<\varepsilon$ なので $f$ は $x$ で連続である。
次に、各 $\varepsilon>0$ について $\{x\in X\mid\omega_f(x)<\varepsilon\}$ は開集合である。実際 $\omega_f(x)<\varepsilon$ なら、$x$ を含む開集合 $U$ で $\sup_{y,z\in U}|f(y)-f(z)|<\varepsilon$ となるものがあり、任意の $y\in U$ について $U$ は $y$ を含む開集合でもあるので $\omega_f(y)\le\sup_{y',z\in U}|f(y')-f(z)|<\varepsilon$ である。よって $U\subset\{\omega_f<\varepsilon\}$ である。
したがって $E_n:=\{x\in X\mid\omega_f(x)\ge 1/n\}$($n\ge 1$)は閉集合であり、
$$ D_f=\{x\in X\mid\omega_f(x)>0\}=\bigcup_{n\ge 1}E_n $$
は $F_\sigma$-集合である。最後の主張は prop-f-sigma-dual (1) による。$\square$

補足

prop-f-sigma-rationals と prop-f-sigma-discontinuity-set を合わせると、有理数全体でちょうど連続になる関数 $f\colon\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ は存在しないことがわかる。連続点全体は $G_\delta$-集合でなければならないが、$\mathbb{Q}$ はそうでないからである。一方、無理数全体でちょうど連続になる関数は存在する。$f(x)=1/q$($x=p/q$ が既約分数、$q>0$ のとき)、$f(x)=0$($x$ が無理数のとき)と定めた関数(Thomaeの関数)がその例である(Rud76 Chapter 4, Exercise 18)。
Borel集合の階層(Borel階層)では、開集合の族を $\boldsymbol{\Sigma}^0_1$、閉集合の族を $\boldsymbol{\Pi}^0_1$ とし、$F_\sigma$-集合の族を $\boldsymbol{\Sigma}^0_2$、$G_\delta$-集合の族を $\boldsymbol{\Pi}^0_2$ と書く(Kec95 §11.B)。$F_\sigma$-集合は、開集合・閉集合の次に現れる階層の第 2 段に位置し、距離化可能空間(たとえばBaire空間 $\mathbb{N}^{\mathbb{N}}$ や $\mathbb{R}$)では $\boldsymbol{\Sigma}^0_1\cup\boldsymbol{\Pi}^0_1\subset\boldsymbol{\Sigma}^0_2$ である。rem-f-sigma-irrationals が示すように $F_\sigma$-集合の族は補集合について閉じていないので、一般にはそれ自身はブール代数をなさない($\mathbb{R}$ での上の反例)。$F_\sigma$-集合と $G_\delta$-集合をともに含み、可算個の和集合・共通部分と補集合で閉じた最小の族が Borel 集合の族である。
教科書によっては $F_\sigma$-集合を距離空間(あるいは $\mathbb{R}$)の部分集合に限って定義するものもある。本記事は一般の位相空間で定義し、距離空間の場合を prop-f-sigma-dual (3) として扱う流儀(Kec95、Engelking89)を採った。

関連項目

参考文献

[1]
James R. Munkres, Topology, Prentice Hall, 2000, §48(Baire のカテゴリー定理、有理数全体が G_δ でないこと、連続点集合が G_δ であること)
[2]
Alexander S. Kechris, Classical Descriptive Set Theory, Graduate Texts in Mathematics 156, Springer, 1995, §3.A(F_σ・G_δ の定義)、§11.B(Borel 階層と Σ^0_2・Π^0_2)
[4]
Walter Rudin, Principles of Mathematical Analysis, McGraw-Hill, 1976, Chapter 4, Exercise 18(無理数全体でちょうど連続な関数)

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