最大公約数

同義語:greatest common divisorgcd

概要

最大公約数(greatest common divisor)とは、少なくとも一方が $0$ でない整数 $a,b$ の公約数のうち最大のものであり、$\gcd(a,b)$ と書く($\gcd(0,0)=0$ と約束する)。たとえば $84$ と $36$ の正の公約数は $1,2,3,4,6,12$ で、$\gcd(84,36)=12$ である。公約数はちょうど最大公約数の約数であり、最大公約数は素因数分解の各素数の指数の小さいほうをとった積に等しく、Euclid の互除法により素因数分解なしに計算できる。最小公倍数 $\operatorname{lcm}(a,b)$ との間に $\gcd(a,b)\operatorname{lcm}(a,b)=|ab|$ が成り立つが、3 個の数では同じ形の等式は一般に成り立たない。分数を最大公約数で約分すると既約分数がただ 1 つ得られる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 整数, 約数, 素因数分解
縦 $84$ cm、横 $36$ cm の板を、同じ大きさの正方形のタイルで隙間なく敷き詰めたい。タイルの一辺(cm 単位の整数とする)は $84$ も $36$ も割り切らなければならないので、$84$ と $36$ の共通の約数 $1,2,3,4,6,12$ のどれかであり、いちばん大きいタイルは一辺 $12$ cm である。このとき縦に $84/12=7$ 枚、横に $36/12=3$ 枚、合わせて $21$ 枚が並ぶ。この $12$ が $84$ と $36$ の 最大公約数 であり、$\gcd(84,36)=12$ と書く。逆に、$84$ と $36$ の両方の倍数になる最小の正の数 $252$ は 最小公倍数(最小公倍数)であり、$12\cdot252=3024=84\cdot36$ が成り立つ(cor-gcd-product)。
最大公約数は「共通の約数のうち最大のもの」として定義されるが、それはさらに「すべての共通の約数で割り切れる」という性質をもち、素因数分解の指数の最小値で表され、Euclidの互除法で素因数分解なしに計算できる。分数を約分して既約分数にすること、2 つの数が互いに素であるかの判定、合同式の割り算の可否など、初等整数論の基本的な操作はすべて最大公約数を通して行われる。

定義

整数 $d,a$ について、$a=dk$ となる整数 $k$ があるとき、$d$ は $a$ を割り切る($d$ は $a$ の約数、$a$ は $d$ の倍数)といい、$d\mid a$ と書く。$a$ と $b$ をともに割り切る整数を $a,b$ の 公約数(common divisor)、$a$ と $b$ がともに割り切る整数を 公倍数(common multiple)という。

整数の最大公約数

$a,b$ を整数とし、少なくとも一方は $0$ でないとする。$a,b$ の公約数のうち最大のものを $a,b$ の 最大公約数(greatest common divisor)といい、$\gcd(a,b)$ と書く。$a=b=0$ のときは $\gcd(0,0):=0$ と約束する。

最大公約数の存在と一意性

$a,b$ の少なくとも一方が $0$ でなければ、$\gcd(a,b)$ はただ 1 つ存在して正の整数である。さらに
$$ \gcd(a,b)=\gcd(b,a)=\gcd(|a|,|b|),\qquad \gcd(a,0)=|a|,\qquad \gcd(a,1)=1 $$
が成り立つ。

公約数は有限個

$a\neq0$ としてよい。$d\mid a$ なら $a=dk$ で $k\neq0$ なので $|d|\le|d||k|=|a|$ であり、$a$ の約数は $-|a|$ 以上 $|a|$ 以下の有限個である。$1$ はすべての整数を割り切るので、公約数全体は $1$ を含む空でない有限集合であり、最大元がただ 1 つある。それは $1$ 以上である。$d\mid a$ と $d\mid-a$ は同値なので公約数全体は $a,b$ の符号によらず、順序を入れ替えても変わらない。$0$ はすべての $d$ で $0=d\cdot0$ と割り切られるので、$a$ と $0$ の公約数は $a$ の約数そのものであり、その最大は $|a|$ である。$1$ の約数は $\pm1$ だけなので $\gcd(a,1)=1$ である。$\square$

$\gcd(a,b)=1$ のとき、$a$ と $b$ は互いに素であるという。古い文献(たとえば Mos11)では $\gcd(a,b)$ を $(a,b)$ と書くことが多い。
$\gcd(0,0)=0$ の約束は、大小の意味では不自然に見える($0$ と $0$ の公約数はすべての整数で、最大のものはない)。しかし割り切る関係で比べると、すべての整数は $0$ を割り切るので $0$ はいちばん「大きい」。後で示す「公約数全体はちょうど $\gcd(a,b)$ の約数全体である」(thm-gcd-divisibility)は、この約束のもとで $a=b=0$ でも成り立つ。文献によっては $\gcd(0,0)$ を定義しないものもある(Cri24 の Remark 2.2.3、PDF p. 35)。

最小公倍数の定義

$a,b$ を $0$ でない整数とする。$a,b$ の正の公倍数のうち最小のものを $a,b$ の 最小公倍数(least common multiple)といい、$\operatorname{lcm}(a,b)$ と書く。$a$ か $b$ が $0$ のときは $\operatorname{lcm}(a,b):=0$ と約束する。

$|ab|$ は正の公倍数なので、最小公倍数は存在して $|ab|$ 以下である(自然数の空でない集合は最小元をもつ)。3 個以上の整数 $a_1,\dots,a_k$ についても、すべてを割り切る整数を公約数、すべてが割り切る整数を公倍数と呼び、同じように $\gcd(a_1,\dots,a_k)$、$\operatorname{lcm}(a_1,\dots,a_k)$ を定める。

直感

$\gcd(a,b)$ は「$a$ と $b$ を共通に測れる最大の単位」である。冒頭のタイルのように、長さ $a$ と $b$ をどちらも整数個で測りきれる物差しのうち、いちばん長いものの長さが最大公約数である。Euclid『原論』は整数を線分の長さとして扱い、最大公約数を「最大公約量」(greatest common measure)と呼んで、大きいほうから小さいほうを引き続ける方法で求めた(Hea08 第 VII 巻 命題 2)。これが Euclidの互除法 の起源である。
分数で言えば、$\frac{a}{b}$ の分子と分母を $\gcd(a,b)$ で割ると、それ以上約分できない分数になる。たとえば $\frac{84}{36}=\frac{7}{3}$ である。素因数分解で言えば、$a$ と $b$ に共通に含まれる素因数を、少ないほうの個数だけ集めた積が最大公約数であり、多いほうの個数だけ集めた積が最小公倍数である(thm-gcd-factorization)。

例と反例

12 と 18

$12$ の正の約数は $1,2,3,4,6,12$、$18$ の正の約数は $1,2,3,6,9,18$ なので、正の公約数は $1,2,3,6$ であり $\gcd(12,18)=6$ である。公約数 $1,2,3,6$ はちょうど $6$ の正の約数になっている(thm-gcd-divisibility)。$12$ の正の倍数 $12,24,36,\dots$ と $18$ の正の倍数 $18,36,\dots$ の最初の共通のものは $36$ なので $\operatorname{lcm}(12,18)=36$ であり、$6\cdot36=216=12\cdot18$ である。負の数を含めても $\gcd(-12,18)=6$ である。

素因数分解と互除法による計算

$1386=2\cdot3^2\cdot7\cdot11$、$3780=2^2\cdot3^3\cdot5\cdot7$ なので、各素数の指数の小さいほうをとって $\gcd(1386,3780)=2\cdot3^2\cdot7=126$、大きいほうをとって $\operatorname{lcm}(1386,3780)=2^2\cdot3^3\cdot5\cdot7\cdot11=41580$ である(thm-gcd-factorization)。$126\cdot41580=5239080=1386\cdot3780$ となっている。素因数分解を使わずに Euclidの互除法で計算すると
$$ 3780=2\cdot1386+1008,\quad 1386=1\cdot1008+378,\quad 1008=2\cdot378+252,\quad 378=1\cdot252+126,\quad 252=2\cdot126 $$
であり、同じ $126$ を得る。分数 $\frac{1386}{3780}$ は分子と分母を $126$ で割って既約分数 $\frac{11}{30}$ になる(prop-gcd-reduced-fraction)。

反例:3 個の数では積の公式が成り立たない

2 個の $0$ でない整数では $\gcd(a,b)\operatorname{lcm}(a,b)=|ab|$ が成り立つ(cor-gcd-product)が、3 個では $\gcd(a,b,c)\operatorname{lcm}(a,b,c)=|abc|$ は一般に成り立たない。$a=b=c=2$ では $\gcd=2$、$\operatorname{lcm}=2$ で $2\cdot2=4\neq8=2\cdot2\cdot2$ である。$a=2$、$b=3$、$c=4$ では $\gcd=1$、$\operatorname{lcm}=12$ で $12\neq24$ である。この例は「数が 2 個である」という仮定を破っており、2 個の場合の等式の証明で使った「指数について $\min(x,y)+\max(x,y)=x+y$」が、3 個では $\min(x,y,z)+\max(x,y,z)=x+y+z$ とならないことが原因である。正しい 3 個の場合の公式は prop-gcd-three にある。

反例:最大公約元が存在しない整域

一般の整域では大小がないので、thm-gcd-divisibility の性質「公約元であって、すべての公約元で割り切れる」を最大公約元の定義に採る。整数ではいつも存在するが、整域 $\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]=\{x+y\sqrt{-5}\mid x,y\in\mathbb{Z}\}$ では存在しないことがある。
$N(x+y\sqrt{-5}):=x^2+5y^2$(複素数としての絶対値の 2 乗)とおくと、$N(\alpha\beta)=N(\alpha)N(\beta)$ なので、$\alpha\mid\beta$ なら $N(\alpha)\mid N(\beta)$ である。$\alpha=6$、$\beta=2+2\sqrt{-5}$ を考える。$6=2\cdot3=(1+\sqrt{-5})(1-\sqrt{-5})$、$\beta=2(1+\sqrt{-5})$ なので、$2$ と $1+\sqrt{-5}$ はどちらも $\alpha,\beta$ の公約元である。$\alpha,\beta$ の最大公約元 $g$ があったとすると、$2\mid g$、$1+\sqrt{-5}\mid g$ から $N(2)=4$ と $N(1+\sqrt{-5})=6$ が $N(g)$ を割り切るので $12\mid N(g)$ であり、$g\mid\alpha$、$g\mid\beta$ から $N(g)$ は $N(6)=36$ と $N(\beta)=24$ を割り切るので $N(g)\mid12$ である。よって $N(g)=12$ であるが、$x^2+5y^2=12$ は $y=0$ なら $x^2=12$、$y=\pm1$ なら $x^2=7$ となり、$|y|\ge2$ なら左辺が $20$ 以上なので、整数解をもたない。これは矛盾である。
この環は整域であることを満たし、一意分解整域であることを満たさない(最大公約元が存在しないことと rem-gcd-rings による。$6=2\cdot3=(1+\sqrt{-5})(1-\sqrt{-5})$ はその現れである)。破れるのは「任意の整域で、任意の 2 元に最大公約元が存在する」という含意である。

性質

割り切る関係についての最大性

公約数と最大公約数の約数

$a,b$ を整数とし、$d:=\gcd(a,b)$ とする。$a,b$ の公約数全体は、ちょうど $d$ の約数全体に等しい。特に $a,b$ の任意の公約数は $d$ を割り切る。また $d$ は、「$a,b$ の公約数であり、$a,b$ の任意の公約数で割り切れる」という性質をもつ $0$ 以上の整数としてただ 1 つに定まる。

Bézoutの等式による

$a=b=0$ なら $d=0$ であり、公約数全体も $0$ の約数全体もすべての整数である。以下 $a,b$ の少なくとも一方は $0$ でないとする。Bézoutの等式 の記事の定理「Bézoutの等式」の 1 により $d=ax+by$ となる整数 $x,y$ がある。$c$ が $a,b$ の公約数なら $c$ は $ax+by=d$ を割り切る。逆に $d$ の約数は、$d\mid a$、$d\mid b$ により $a,b$ の公約数である。
一意性を示す。$0$ 以上の整数 $d'$ も同じ性質をもつとすると、$d'$ は公約数なので $d'\mid d$、$d$ は公約数なので $d\mid d'$ である。$d=0$ なら $d\mid d'$ から $d'=0$ である。$d>0$ なら $d'\neq0$ であり、互いに割り切ることから $|d|\le|d'|\le|d|$、$d,d'\ge0$ なので $d=d'$ である。$\square$

同じ主張は、割り算の繰り返しだけを使って Euclidの互除法 の記事の定理「互除法の停止と正しさ」の 3 としても証明される。$\gcd(0,0)=0$ の約束は、この特徴づけを $a=b=0$ でも成り立たせるものである。

計算の規則

最大公約数の計算規則

$a,b,c$ を整数とする。

  1. 任意の整数 $q$ について $\gcd(a,b)=\gcd(a-qb,\,b)$ である。
  2. 任意の整数 $m$ について $\gcd(ma,mb)=|m|\gcd(a,b)$ である。
  3. $a,b$ の少なくとも一方が $0$ でなく $d:=\gcd(a,b)$ なら、$\gcd(a/d,\,b/d)=1$ である。
  4. $\gcd(a,b,c)=\gcd(\gcd(a,b),\,c)$ である。
公約数の集合を比べる
  1. $e\mid a$、$e\mid b$ なら $e\mid a-qb$ であり、逆に $e\mid a-qb$、$e\mid b$ なら $e\mid(a-qb)+qb=a$ である。公約数全体が一致するので、thm-gcd-divisibility の一意性(公約数全体を約数全体とする $0$ 以上の整数は 1 つ)により最大公約数も一致する。
  2. $m=0$ または $a=b=0$ なら両辺とも $0$ である。そうでないとき $d:=\gcd(a,b)$、$e:=\gcd(ma,mb)$ とおく。$|m|d$ は $ma$ と $mb$ を割り切るので、thm-gcd-divisibility により $|m|d\mid e$ である。一方 Bézoutの等式 により $d=ax+by$ と書け、$md=(ma)x+(mb)y$ なので $e\mid md$ である。$e$ と $|m|d$ は互いに割り切り合う正の整数なので等しい。
  3. 2 を $m=d$、$(a/d,b/d)$ に使うと $d=\gcd(a,b)=d\cdot\gcd(a/d,b/d)$ であり、$d>0$ なので $\gcd(a/d,b/d)=1$ である。
  4. thm-gcd-divisibility により、「$e\mid a$ かつ $e\mid b$」は「$e\mid\gcd(a,b)$」と同値である。したがって $a,b,c$ の公約数全体と、$\gcd(a,b)$ と $c$ の公約数全体は一致し、最大公約数も一致する(すべてが $0$ の場合は両辺とも $0$ と約束する)。$\square$

1 を繰り返し使うと $\gcd(a,b)=\gcd(b,r)$($r$ は $a$ を $b$ で割った余り)となり、これが Euclidの互除法 の根拠である。3 は、公約数で割り尽くすと互いに素な 2 数が残ることを述べており、既約分数(prop-gcd-reduced-fraction)や 1 次不定方程式の解の構造(Bézoutの等式 の記事の命題「Bézout係数の全体」)で使われる。

素因数分解による表示

正の整数 $a$ は算術の基本定理により素数の積にただ 1 通りに分解される(素数 の記事の定理「算術の基本定理」)。これを、すべての素数 $p$ にわたる積 $a=\prod_pp^{\alpha_p}$(有限個の $p$ を除いて $\alpha_p=0$)の形に書く。

素因数分解による最大公約数と最小公倍数

$a=\prod_pp^{\alpha_p}$、$b=\prod_pp^{\beta_p}$ を正の整数とする。

  1. 正の整数 $d=\prod_pp^{\delta_p}$ が $a$ を割り切ることは、すべての素数 $p$ について $\delta_p\le\alpha_p$ であることと同値である。
  2. $\gcd(a,b)=\prod_pp^{\min(\alpha_p,\beta_p)}$、$\operatorname{lcm}(a,b)=\prod_pp^{\max(\alpha_p,\beta_p)}$ である。
  3. $a,b$ の公倍数全体は、ちょうど $\operatorname{lcm}(a,b)$ の倍数全体である。
指数を比べる
  1. $\delta_p\le\alpha_p$ がすべての $p$ で成り立てば、$k:=\prod_pp^{\alpha_p-\delta_p}$ は正の整数で $a=dk$ である。逆に $a=dk$($k$ は正の整数)とし、$k=\prod_pp^{\kappa_p}$ と書くと、$dk=\prod_pp^{\delta_p+\kappa_p}$ は $a$ の素因数分解でもあるので、分解の一意性から $\alpha_p=\delta_p+\kappa_p\ge\delta_p$ である。
  2. $g:=\prod_pp^{\min(\alpha_p,\beta_p)}$ とおく。1 により $g$ は $a$ と $b$ を割り切る。$d$ が $a,b$ の正の公約数なら、1 により $\delta_p\le\alpha_p$ かつ $\delta_p\le\beta_p$、すなわち $\delta_p\le\min(\alpha_p,\beta_p)$ なので、再び 1 により $d\mid g$、特に $d\le g$ である。よって $g$ は正の公約数のうち最大であり $g=\gcd(a,b)$ である。
    同様に $L:=\prod_pp^{\max(\alpha_p,\beta_p)}$ とおくと、1 により $a\mid L$、$b\mid L$ である。$M=\prod_pp^{\mu_p}$ が $a,b$ の正の公倍数なら、1 により $\alpha_p\le\mu_p$ かつ $\beta_p\le\mu_p$ なので $\max(\alpha_p,\beta_p)\le\mu_p$、再び 1 により $L\mid M$、特に $L\le M$ である。よって $L=\operatorname{lcm}(a,b)$ である。
  3. 2 の証明で、正の公倍数 $M$ は $L$ で割り切れることを示した。負の公倍数 $M$ については $-M$ に適用し、$0$ は $L$ の倍数である。逆に $L$ の倍数は $a,b$ の公倍数である。$\square$

$a,b$ が負のときは、約数・倍数が符号によらないので $|a|,|b|$ に適用すればよい。公式 2 によって最大公約数を計算するには素因数分解が必要だが、大きな数の素因数分解は一般に難しい。互除法は素因数分解なしに同じ値を与える(ex-gcd-1386-3780)。

最大公約数と最小公倍数の積

任意の整数 $a,b$ について
$$ \gcd(a,b)\cdot\operatorname{lcm}(a,b)=|ab| $$
である。特に $a,b$ が $0$ でなく互いに素なら $\operatorname{lcm}(a,b)=|ab|$ である。

最小と最大の和

$a=0$ または $b=0$ なら、約束により $\operatorname{lcm}(a,b)=0$ で両辺とも $0$ である。$a,b\neq0$ のとき、$\gcd$ と $\operatorname{lcm}$ は符号によらないので $a,b>0$ としてよい。thm-gcd-factorization の 2 と、実数 $x,y$ について $\min(x,y)+\max(x,y)=x+y$ であることから
$$ \gcd(a,b)\operatorname{lcm}(a,b)=\prod_pp^{\min(\alpha_p,\beta_p)+\max(\alpha_p,\beta_p)}=\prod_pp^{\alpha_p+\beta_p}=ab $$
である。$\square$

この等式により $\operatorname{lcm}(a,b)=|ab|/\gcd(a,b)$ であり、最小公倍数も素因数分解なしに互除法で計算できる。冒頭の $\gcd(84,36)=12$ から $\operatorname{lcm}(84,36)=3024/12=252$ である。

3 個以上の整数

3 個以上の正の整数についても、thm-gcd-factorization と同じ議論で、最大公約数は各素数の指数の最小値、最小公倍数は最大値で表される。ex-gcd-three-numbers で見たように積の公式はそのままでは成り立たないが、次の形に直すと成り立つ。

3 個の整数の最小公倍数

$a,b,c$ を $0$ でない整数とすると
$$ \operatorname{lcm}(a,b,c)\cdot\gcd(a,b)\gcd(b,c)\gcd(c,a)=|abc|\cdot\gcd(a,b,c) $$
である。

最大値の包除

$a,b,c>0$ としてよい。素数 $p$ ごとに指数を比べると、$a,b,c$ の $p$ の指数を $x,y,z$ として
$$ \max(x,y,z)+\min(x,y)+\min(y,z)+\min(z,x)=x+y+z+\min(x,y,z) $$
を示せばよい。両辺は $x,y,z$ の入れ替えで変わらないので $x\le y\le z$ としてよく、このとき左辺は $z+x+y+x$、右辺は $x+y+z+x$ で等しい。$\square$

たとえば $a=12$、$b=18$、$c=27$ では $\operatorname{lcm}=108$、$\gcd(12,18)=6$、$\gcd(18,27)=9$、$\gcd(27,12)=3$、$\gcd(12,18,27)=3$ であり、$108\cdot6\cdot9\cdot3=17496=5832\cdot3=12\cdot18\cdot27\cdot3$ である。

既約分数

既約分数による表示の一意性

すべての有理数 $r$ は、$q\ge1$、$\gcd(p,q)=1$ を満たす整数 $p,q$ によって $r=p/q$ とただ 1 通りに書ける。$r=a/b$($a,b$ は整数、$b>0$)なら、$d:=\gcd(a,b)$ として $p=a/d$、$q=b/d$ である。

互いに素な分母は互いを割り切る

存在:$r=a/b$、$b>0$ と書く($b<0$ なら分子と分母に $-1$ を掛ける)。$b\neq0$ なので $d=\gcd(a,b)\ge1$ であり、$p=a/d$、$q=b/d\ge1$ は整数で $p/q=a/b$、prop-gcd-rules の 3 により $\gcd(p,q)=1$ である。
一意性:$p/q=p'/q'$ で $q,q'\ge1$、$\gcd(p,q)=\gcd(p',q')=1$ とすると $pq'=p'q$ である。$q$ は $pq'$ を割り切り、$p$ と互いに素なので $q\mid q'$ である(互いに素 の記事の命題「互いに素な因子の消去」)。同様に $q'\mid q$ であり、どちらも正なので $q=q'$、したがって $p=p'$ である。$\square$

補足

一般の環での最大公約元

整域 $A$ の元 $a,b$ について、$a,b$ をともに割り切り、$a,b$ の任意の公約元で割り切れる元 $d$ を最大公約元という。存在すれば単元倍を除いて一意である。一意分解整域ではいつも存在し、単項イデアル整域では $(a,b)=(d)$ となる生成元 $d$ が最大公約元で $d=ax+by$ と書ける(Bézoutの等式 の記事の定理「単項イデアル整域におけるBézoutの等式」)。体 $K$ 上の多項式環 $K[x]$ では、最大公約元のうちモニックなものを最大公約多項式という。ex-gcd-no-gcd は、一意分解整域でない整域では最大公約元が存在しないことがある例である。

歴史と文献

Euclid『原論』第 VII 巻の命題 2 は 2 数の最大公約数(最大公約量)を求める方法とその系「2 数を割り切る数は最大公約数を割り切る」を、命題 34 は 2 数の最小公倍数を求める方法を、命題 35 は「2 数の公倍数は最小公倍数で割り切れる」ことを述べている。Heath は命題 34 の注で、最小公倍数が $ab/\gcd(a,b)$ であることを注意している(Hea08 Vol. II pp. 298–299、pp. 336–339)。素因数の指数の最小値・最大値による表示と積の公式は Mos11 Chapter 5 の冒頭(p. 43、頁は 2011-07-31 版 PDF の印刷頁)にある。現代的な定義と基本性質は Ste17 の PDF 版 Definition 1.1.8(PDF p. 10)と Lemma 1.1.17($\gcd(an,bn)=\gcd(a,b)|n|$、PDF p. 13)、Cri24 の Definition 2.2.1 と Theorem 2.2.4(PDF p. 35)を参照。最大公約数と最小公倍数に関する 19 世紀までの文献は Dic19 Chapter XI(原本 p. 332 付近)にまとめられている。

関連項目

参考文献

[1]
Euclid, translated with introduction and commentary by Thomas L. Heath, The Thirteen Books of Euclid's Elements, translated with introduction and commentary by T. L. Heath (3 vols., Cambridge University Press, 1908), Cambridge University Press, 1908, 第 VII 巻 命題 2(Vol. II pp. 298–299)、命題 34・35 と Heath の注(Vol. II pp. 336–339)
[5]
Leonard Eugene Dickson, History of the Theory of Numbers, Volume I: Divisibility and Primality, Carnegie Institution of Washington, 1919, Chapter XI(原本 p. 332 付近:最大公約数と最小公倍数の文献)

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