Thom空間

同義語:Thom space

概要

Thom空間(Thom space)とは、Euclid 計量をもつ実ベクトル束 $E\to B$ の円板束 $D(E)$ から球面束 $S(E)$ を 1 点に潰した基点付き空間 $D(E)/S(E)$ である。同相型は計量によらず、底空間がコンパクト Hausdorff なら全空間 $E$ の一点コンパクト化と同相で、射影空間 $\mathbb{RP}^n$・$\mathbb{CP}^n$ のトートロジー直線束の Thom 空間はそれぞれ $\mathbb{RP}^{n+1}$・$\mathbb{CP}^{n+1}$ になる。被約コホモロジーは対 $(E,E_0)$ のコホモロジーに等しく、Thom 同型により底空間のコホモロジーを束の階数だけずらしたものになる。閉多様体の法束の Thom 空間への潰し写像は、Thom による同境群の計算の出発点である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ベクトル束, 一点コンパクト化, スマッシュ積, Thom同型(特異コホモロジー)

Thom 空間(Thom space)とは、位相空間 $B$ 上の実ベクトル束 $\pi\colon E\to B$ に Euclid 計量を入れ、長さ $1$ 以下のベクトルの全体(円板束)$D(E)$ から、長さがちょうど $1$ のベクトルの全体(球面束)$S(E)$ を 1 点に潰した基点付き空間
$$ \mathrm{Th}(E):=D(E)/S(E) $$
である。$B$ が 1 点なら $\mathrm{Th}(E)$ は球面 $S^n$ であり、Thom 空間は「各ファイバーを一点コンパクト化した球面を、無限遠点を 1 点に束ねて貼り合わせたもの」である。$B$ がコンパクト Hausdorff 空間なら $\mathrm{Th}(E)$ は全空間 $E$ の一点コンパクト化と同相になる。
Thom 空間の被約コホモロジーは対 $(E,E_0)$($E_0$ は $0$ でないベクトルの全体)のコホモロジーに等しく、Thom同型(特異コホモロジー) により底空間のコホモロジーを次数 $n$ だけずらしたものになる。Thom 類は $\mathrm{Th}(E)$ の $n$ 次の類であり、向き付けられた束では零切断に引き戻すと Euler 類になる。Thom は、閉多様体を Euclid 空間に埋め込んで法束の Thom 空間へ潰す写像(Pontryagin–Thom 構成)により、同境群を普遍束の Thom 空間のホモトピー群として計算した。
この記事では、Thom 空間が計量によらないこと、コンパクトな底空間では一点コンパクト化と同相であること、射影空間のトートロジー直線束の Thom 空間が 1 次元上の射影空間になること、コホモロジーの同型、直積・懸垂との関係、潰し写像の構成を証明する。Thom の同境定理は引用する。

定義

$\pi\colon E\to B$ を階数 $n$ の実ベクトル束(ベクトル束)とし、$E_b:=\pi^{-1}(b)$、$E_0:=\{v\in E\mid v\ne0\}$ とおく(記号は Thom同型(特異コホモロジー) に合わせる)。Euclid 計量とは、各ファイバー $E_b$ の内積 $\langle\ ,\ \rangle_b$ で、局所自明化 $\pi^{-1}(U)\cong U\times\mathbb R^n$ の下で $\langle v,w\rangle_x=v^{\mathsf T}G(x)w$ となる正定値対称行列 $G(x)$ が $x$ について連続なものをいう。$B$ がパラコンパクト Hausdorff 空間なら、局所的な標準内積を 1 の分割で足し合わせて Euclid 計量が得られる(MS74 Problem 2-C、p. 23)。

Thom 空間

$E$ を Euclid 計量 $|\cdot|$ をもつ階数 $n\ge1$ の実ベクトル束とし、
$$ D(E):=\{v\in E\mid |v|\le1\},\qquad S(E):=\{v\in E\mid |v|=1\} $$
とおく。商空間 $\mathrm{Th}(E):=D(E)/S(E)$ を、$S(E)$ の像を基点とする基点付き空間とみなし、$E$ の Thom 空間 という。$B$ が空でなければ $S(E)$ は空でない。階数 $0$ の束では $\mathrm{Th}(E):=B_+$($B$ に孤立した基点を加えた空間)と定める。

MS74 §18(p. 205)は $|v|\ge1$ の全体 $A$ を潰した $E/A$ を Thom 空間と定めている。包含 $D(E)\to E$ が誘導する $D(E)/S(E)\to E/A$ は連続な全単射であり、その逆は $v\mapsto v/\max(1,|v|)$ が誘導する連続写像なので、両者は同相である。

計量によらないこと

$|\cdot|_0$、$|\cdot|_1$ を $E$ の 2 つの Euclid 計量とする。
$$ h(v):=\frac{|v|_1}{|v|_0}\,v\quad(v\ne0),\qquad h(0_b):=0_b $$
は $E$ の同相写像で、各ファイバーを自身に移し、$|h(v)|_0=|v|_1$ を満たす。とくに $h$ は計量 $|\cdot|_1$ での円板束・球面束を計量 $|\cdot|_0$ でのものに移し、2 つの計量の Thom 空間の間の基点を保つ同相写像を誘導する。

半径方向の伸縮

$|h(v)|_0=\frac{|v|_1}{|v|_0}|v|_0=|v|_1$ である。同じ式で添字 $0,1$ を入れ替えた写像 $h'(w)=\frac{|w|_0}{|w|_1}w$ について $h'(h(v))=\frac{|v|_1}{|v|_1^2/|v|_0}\cdot\frac{|v|_1}{|v|_0}v=v$、同様に $h(h'(w))=w$ なので、$h'$ は $h$ の逆写像である。$E_0$ の上では、ノルムが $E$ 上の連続関数なので $h$ は連続である。
零ベクトル $0_b$ での連続性を示す。$b$ のまわりの局所自明化 $U\times\mathbb R^n$ で計量を $G_0(x)$、$G_1(x)$ とし、$m_i$、$M_i$ を単位球面 $\{e\in\mathbb R^n\mid|e|=1\}$ 上の $e^{\mathsf T}G_i(b)e$ の最小値・最大値とする。$|e^{\mathsf T}G_i(x)e-e^{\mathsf T}G_i(b)e|$ は $G_i(x)-G_i(b)$ の成分の絶対値の和以下なので、$b$ の近傍 $W\subset U$ の上で $e^{\mathsf T}G_i(x)e\in[m_i/2,2M_i]$ となる。よって $\pi^{-1}(W)$ の上で $|v|_1\le c\,|v|_0$ かつ $|v|_0\le c\,|\bar v|$($\bar v$ は自明化の $\mathbb R^n$ 成分、$|\bar v|$ は標準ノルム、$c$ は定数)である。$v\to0_b$ は「$\pi(v)\to b$ かつ $\bar v\to0$」と同値で、このとき $|\overline{h(v)}|\le c'|h(v)|_0=c'|v|_1\le c'c\,|v|_0\to0$ である($c'$ も定数)。よって $h(v)\to0_b$ である。逆写像についても同じである。$\square$

以下、Euclid 計量を 1 つ固定して $\mathrm{Th}(E)$ を考える。束の同型 $E\cong E'$ は計量を移せば Thom 空間の同相を誘導するので、prop-thom-space-metric と合わせて、$\mathrm{Th}(E)$ の同相型は束の同型類だけで決まる。

コンパクトな底空間と一点コンパクト化

$B$ がコンパクト Hausdorff 空間で $n\ge1$ なら、$D(E)\setminus S(E)\to E$、$v\mapsto v/(1-|v|)$ は同相写像で、$S(E)$ の像を $\infty$ に送ることにより同相写像 $\mathrm{Th}(E)\cong E^+$(一点コンパクト化)が得られる。

$v\mapsto v/(1-|v|)$ の逆は $w\mapsto w/(1+|w|)$ で、どちらも連続である。$D(E)$ がコンパクト Hausdorff であることを示せば、一点コンパクト化 の定理「開集合の一点コンパクト化と商」を $K=D(E)$、空でない閉集合 $Z=S(E)$ に当てて $D(E)/S(E)\cong(D(E)\setminus S(E))^+\cong E^+$ を得る。$E$ は Hausdorff であり(異なるファイバーの 2 点は $B$ の交わらない開集合の逆像で分けられ、同じファイバーの 2 点は局所自明化 $U\times\mathbb R^n$ の中で分けられる)、$D(E)$ はその閉集合である。各 $b\in B$ に、prf-prop-thom-space-metric と同じ評価 $|\bar v|\le c\,|v|$ が成り立つ自明化の近傍をとり、その中にコンパクトな近傍 $K_b$ をとる(コンパクト Hausdorff 空間は局所コンパクト)。$D(E)\cap\pi^{-1}(K_b)$ は $K_b\times\{|\bar v|\le c\}$ の閉集合なのでコンパクトであり、有限個の $K_b$ で $B$ が覆えるので $D(E)$ はコンパクトである。$\square$

自明束と 1 点の上の束

$B$ がコンパクト Hausdorff 空間なら、prop-thom-space-compact と 一点コンパクト化 の系「商による一点コンパクト化の帰結」の 3・4 により
$$ \mathrm{Th}(B\times\mathbb R^n)\cong(B\times\mathbb R^n)^+\cong B^+\wedge(\mathbb R^n)^+\cong B_+\wedge S^n $$
である($B$ はコンパクトなので $B^+=B_+$)。とくに $B$ が 1 点なら $\mathrm{Th}(E)\cong S^n$ である。

射影空間のトートロジー直線束

$\mathbb K=\mathbb R$ または $\mathbb C$ とし、$\langle v,x\rangle:=\sum_iv_i\bar x_i$ を $\mathbb K^{n+1}$ の標準内積とする。$\mathbb{KP}^n$ 上の トートロジー直線束 $\gamma_n$ は、全空間 $\{(\ell,v)\in\mathbb{KP}^n\times\mathbb K^{n+1}\mid v\in\ell\}$ をもつ $\mathbb K$ 上の直線束で(Chern類 の定義「複素射影空間の超平面類」の $\mathcal O(-1)$)、標準内積の制限を計量とする。実ベクトル束としての階数は $\mathbb K=\mathbb R$ なら $1$、$\mathbb C$ なら $2$ である。

トートロジー直線束の Thom 空間

$p:=[0:\cdots:0:1]\in\mathbb{KP}^{n+1}$ とする。
$$ \psi\colon\mathbb{KP}^{n+1}\setminus\{p\}\to\gamma_n,\qquad[x:t]\mapsto\Bigl([x],\ \frac{\bar t}{|x|^2}\,x\Bigr)\qquad(x\in\mathbb K^{n+1}\setminus\{0\},\ t\in\mathbb K) $$
は同相写像である。したがって $\mathrm{Th}(\gamma_n)\cong\mathbb{KP}^{n+1}$ であり、基点は $p$ に対応する。とくに $\mathbb{RP}^1\cong S^1$ 上の Möbius の帯の束 $\gamma_1$ について $\mathrm{Th}(\gamma_1)\cong\mathbb{RP}^2$ である。

斉次座標で書く

$[x:t]\ne p$ は $x\ne0$ と同値である。$(x,t)$ を $(\lambda x,\lambda t)$($\lambda\in\mathbb K^\times$)に替えると $\frac{\bar\lambda\bar t}{|\lambda|^2|x|^2}\lambda x=\frac{\bar t}{|x|^2}x$ なので $\psi$ は矛盾なく定まり、$(\mathbb K^{n+1}\setminus\{0\})\times\mathbb K$ 上の連続写像から誘導されるので連続である。逆写像を
$$ \varphi(\ell,v):=[x:\overline{\langle v,x\rangle}]\qquad(x\in\ell,\ x\ne0) $$
で定める。$x$ を $\lambda x$ に替えると $[\lambda x:\overline{\bar\lambda\langle v,x\rangle}]=[\lambda x:\lambda\overline{\langle v,x\rangle}]$ で値は変わらない。$\mathbb{KP}^n$ の開集合 $\{x_i\ne0\}$ の上では $x_i=1$ と正規化した $x$ が $\ell$ について連続なので、$\varphi$ は連続である。$v\in\ell$ なので $v=cx$($c\in\mathbb K$)と書け、$\langle v,x\rangle=c|x|^2$ である。よって $\varphi(\ell,v)=[x:\bar c|x|^2]$、$\psi(\varphi(\ell,v))=(\ell,cx)=(\ell,v)$ であり、$v=\frac{\bar t}{|x|^2}x$ なら $\overline{\langle v,x\rangle}=t$ なので $\varphi(\psi([x:t]))=[x:t]$ である。
$\mathbb{KP}^{n+1}$ はコンパクト Hausdorff 空間なので、一点コンパクト化 の定理「一点コンパクト化の特徴づけ」により $\mathbb{KP}^{n+1}\cong\gamma_n^+$ であり、prop-thom-space-compact により $\gamma_n^+\cong\mathrm{Th}(\gamma_n)$ である。$\square$

$\mathbb K=\mathbb C$ では $\psi$ はファイバーの上で複素共役線形であるが、ここで必要なのは全空間の同相であることだけである。

コホモロジーと Thom 類

Thom 空間のコホモロジー

$E$ を階数 $n\ge1$ の Euclid 計量をもつ実ベクトル束、$G$ をアーベル群とする。すべての $q$ について自然な同型
$$ \tilde H^q(\mathrm{Th}(E);G)\cong H^q(D(E),S(E);G)\cong H^q(E,E_0;G) $$
がある。とくに $\mathbb F_2$ 係数では、任意の底空間について $\tilde H^{k+n}(\mathrm{Th}(E);\mathbb F_2)\cong H^k(B;\mathbb F_2)$ である。

良い対と半径方向の変形

1 つ目.$V:=\{v\in D(E)\mid|v|>\tfrac12\}$ は $S(E)$ の近傍で、$r_s(v):=\bigl((1-s)+s/|v|\bigr)v$($0\le s\le1$)は $V$ から $S(E)$ への強変位レトラクションである。よって $(D(E),S(E))$ は良い対であり(切除定理(特異ホモロジー) の定義「良い対」)、同記事の命題「良い対の相対ホモロジー」により商写像は $H_q(D(E),S(E))\to\tilde H_q(\mathrm{Th}(E))=H_q(\mathrm{Th}(E),\ast)$ の同型を誘導する。普遍係数定理 の定理「特異コホモロジーの普遍係数定理」の短完全列は対の写像について自然なので、五項補題 によりコホモロジーでも同型である。
2 つ目.包含 $(D(E),S(E))\to(E,E_0)$ を考える。$D(E)$ と $E$ はどちらも $v\mapsto(1-s)v$ で零切断に変形レトラクトするので、包含 $D(E)\to E$ はホモトピー同値である。$E_0\to S(E)$、$v\mapsto v/|v|$ は包含 $S(E)\to E_0$ のホモトピー逆である(ホモトピー $(1-s)v+sv/|v|$ は $0$ を通らない)。対の長完全列(特異コホモロジー の定理「対の長完全列」)と 五項補題 により、相対群も同型である。
$\mathbb F_2$ 係数.Thom同型(特異コホモロジー) の定理「mod 2 の Thom 同型」により $H^{k+n}(E,E_0;\mathbb F_2)\cong H^k(B;\mathbb F_2)$ である。$\square$

$E$ の Thom 類 $u\in H^n(E,E_0;\mathbb F_2)$(向き付けられた束では整係数の Thom 類。Euler類 の定理「Thom 類の存在と一意性」)は、prop-thom-space-cohomology により $\tilde H^n(\mathrm{Th}(E))$ の元とみなせる。零切断 $B\to D(E)\to\mathrm{Th}(E)$ による引き戻しは、Thom 類を零切断に制限した類、すなわち Euler 類である(Euler類 の定義「Euler 類と Euler 数」。向き付けられた束では、その mod 2 還元は $w_n(E)$)。$\mathrm{Th}(\gamma_n)\cong\mathbb{RP}^{n+1}$ では $\tilde H^\bullet(\mathbb{RP}^{n+1};\mathbb F_2)$ が $1,\dots,n+1$ 次の $\mathbb F_2$ からなり、$H^\bullet(\mathbb{RP}^n;\mathbb F_2)$ を 1 次ずらしたものに一致している。

直積と懸垂

$E\to B$、$E'\to B'$ をコンパクト Hausdorff 空間上の階数 $1$ 以上の実ベクトル束とし、$E\times E'\to B\times B'$ を直積の束とする。基点付きの同相写像
$$ \mathrm{Th}(E\times E')\cong\mathrm{Th}(E)\wedge\mathrm{Th}(E') $$
がある。とくに $\mathrm{Th}(E\oplus\varepsilon^m)\cong\mathrm{Th}(E)\wedge S^m$($m$ 重の被約懸垂)である。ここで $\varepsilon^m=B\times\mathbb R^m$ は自明束である。

$B\times B'$ はコンパクト Hausdorff なので、prop-thom-space-compact と 一点コンパクト化 の系「商による一点コンパクト化の帰結」の 3 により $\mathrm{Th}(E\times E')\cong(E\times E')^+\cong E^+\wedge E'^+\cong\mathrm{Th}(E)\wedge\mathrm{Th}(E')$ である。$B'$ を 1 点、$E'=\mathbb R^m$ とすると $E\times\mathbb R^m$ は $B\times\{\mathrm{pt}\}=B$ 上の束 $E\oplus\varepsilon^m$ であり、$\mathrm{Th}(\mathbb R^m)\cong S^m$(ex-thom-space-trivial)である。$\square$

潰し写像と同境

Pontryagin–Thom の潰し写像

$M$ を $\mathbb R^{n+k}$ のコンパクトな部分多様体(次元 $n$)、$\nu$ をその法束とする。$M$ の管状近傍 $U$ と同相写像 $U\cong\nu$ を固定すると、$U$ の上では同相写像 $U\cong\nu$、$U$ の外を基点に送る写像
$$ c\colon S^{n+k}=(\mathbb R^{n+k})^+\to\nu^+\cong\mathrm{Th}(\nu) $$
は連続である。

管状近傍定理 の定理「管状近傍定理」で、$M$ はコンパクトなので定数 $\varepsilon>0$ がとれ、$U:=U_\varepsilon$ は $\nu_\varepsilon M=\{(x,v)\in\nu\mid|v|<\varepsilon\}$ と微分同相である。$(x,v)\mapsto(x,v/(\varepsilon-|v|))$ で $\nu_\varepsilon M\cong\nu$ である。一点コンパクト化 の系「商による一点コンパクト化の帰結」の 2(潰し写像)により $(\mathbb R^{n+k})^+\to U^+$ は連続であり、$U^+\cong\nu^+$、さらに prop-thom-space-compact により $\nu^+\cong\mathrm{Th}(\nu)$ である。$(\mathbb R^{n+k})^+\cong S^{n+k}$ は同記事の系の 4 による。$\square$

$\nu$ は Grassmann 多様体 $G_k(\mathbb R^{n+k})$ 上の普遍束 $\gamma^k$ の引き戻しなので(Gauss 写像)、$c$ と合成して $S^{n+k}\to\mathrm{Th}(\gamma^k)$ が得られる。Thom は、この構成が同境類とホモトピー類の対応を与えることを示した。

Thom の同境定理

$BSO(k)$ 上の向き付けられた普遍束の Thom 空間を $MSO(k)$ と書く。$k>n+1$ なら、ホモトピー群 $\pi_{n+k}(MSO(k))$ は向き付けられた同境群 $\Omega_n$(同境)と自然に同型である。向きのない場合も、$BO(k)$ 上の普遍束の Thom 空間 $MO(k)$ について同様である。

出典と証明の筋

MS74 §18 の Theorem of Thom(p. 215)である(この記事では証明しない)。同書は、写像を零切断に横断的に変形して逆像の同境類をとる準同型(Theorem 18.6、p. 211)と、その全射性(Lemma 18.7、p. 215)を証明し、Thom 空間が CW 複体で底空間の $q$ 胞体ごとに $q+k$ 胞体をもつこと(Lemma 18.1、p. 205)と Serre の理論を合わせて、$\Omega_n\otimes\mathbb Q$ が $n\equiv0\pmod4$ 以外で $0$、$\Omega_{4r}$ の階数が $r$ の分割数であることを導いている(Theorem 18.8、p. 216)。とくに $\Omega_\bullet\otimes\mathbb Q$ は複素射影空間 $\mathbb{CP}^{2},\mathbb{CP}^4,\dots$ で生成される多項式環である(Corollary 18.9、p. 216)。これは Hirzebruchの符号数定理 の証明の鍵である。

A¹ホモトピー論 では、滑らかなスキームの閉埋め込み $Z\subset X$ について、法束の Thom 空間を $N_{X,Z}/(N_{X,Z}\setminus Z)$ と定め、$X/(X\setminus Z)$ と比べる(ホモトピー純粋性)。上の潰し写像はその位相的な類似で、管状近傍 $U$ について $X^+/(X^+\setminus U)\cong U^+\cong\mathrm{Th}(\nu)$($Z$ がコンパクトのとき)である。

反例:条件を外すと成り立たない

外す条件反例成り立たなくなること
prop-thom-space-compact の底空間のコンパクト性$B=\mathbb R$ 上の自明束 $\mathbb R\times\mathbb R$$\mathrm{Th}(E)\cong E^+$
整係数の Thom 同型での束の向き$S^1$ 上の Möbius の帯の束 $\gamma_1$(thm-thom-space-projective)$\tilde H^{k+1}(\mathrm{Th}(E);\mathbb Z)\cong H^k(B;\mathbb Z)$
反例の確かめ
  1. $E^+=(\mathbb R^2)^+\cong S^2$ はコンパクトである。一方 $f(x,v):=x(1-|v|)$ は $D(E)=\mathbb R\times[-1,1]$ 上の連続関数で $S(E)$ の上で $0$ なので $\mathrm{Th}(E)$ 上の連続関数を誘導し、$v=0$ で $f=x$ は有界でない。よって $\mathrm{Th}(E)$ はコンパクトでなく、$E^+$ と同相でない。
  2. $\mathrm{Th}(\gamma_1)\cong\mathbb{RP}^2$ で、$\tilde H^1(\mathbb{RP}^2;\mathbb Z)=0$ だが $H^0(S^1;\mathbb Z)=\mathbb Z$ である(特異コホモロジー の例「実射影空間のコホモロジー」)。$\mathbb F_2$ 係数では $\tilde H^1(\mathbb{RP}^2;\mathbb F_2)\cong\mathbb F_2\cong H^0(S^1;\mathbb F_2)$ で、prop-thom-space-cohomology と合っている。

関連項目

参考文献

[1]
John W. Milnor, James D. Stasheff, Characteristic Classes, Annals of Mathematics Studies 76, Princeton University Press, 1974, Problem 2-C(Euclid 計量の存在、p. 23)、§18:Thom 空間の定義と一点コンパクト化の注意・Lemma 18.1(p. 205)、Lemma 18.2(p. 206)、Theorem 18.6(p. 211)、Theorem of Thom・Lemma 18.7(p. 215)、Theorem 18.8・Corollary 18.9(p. 216)

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